(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−1と、500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−2と、600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−3のうち、1つ以上の光反射層を含み、かつ互いに異なる中心反射波長をもつ少なくとも2つ以上の光反射層が積層され、
積層される前記少なくとも2つ以上の光反射層は、いずれも同じ向きの偏光を反射する特性を有し、
各光反射層の半値幅が、100nm以上500nm以下であることを特徴とする光反射フィルム。
前記少なくとも2つ以上の光反射層は、前記光反射層PRL−1と、前記光反射層PRL−2と、前記光反射層PRL−3のうち、2つもしくは3つの光反射層を含むことを特徴とする請求項1に記載の光反射フィルム。
前記少なくとも2つ以上の光反射層は、700nm以上950nm以下の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下であって、かつ、請求項1または2に記載された前記光反射層PRL−1、前記光反射層PRL−2および前記光反射層PRL−3と同じ向きの偏光を反射する特性を有する光反射層PRL−4を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の光反射フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、3および4の技術では、偏光変調手段として液晶セルを用いている。液晶セルは通常ガラス基板で作製されるために、曲面からなるフロントガラスの合わせガラス内へ適用することが困難である。また、近年、フロントガラス全面に画像を表示することが検討されており、合わせガラス全面に曲面状の液晶セルを用いて偏光変調することは極めて困難である。さらに、可視光透過率の法規制値を満たしつつも明るい画像をフロントガラスに表示し、かつ多彩なカラー表示に対応したHUDは未だ報告されていない。さらにまた、偏光手段および偏光変調手段である液晶セルには角度依存性があり、正面方向と傾けた方向では、偏光変調性能が異なるために、運転席からフロントガラス全面を均一な画質で見ることが困難であり、特にカラー表示の場合には運転手の見る場所によって表示色が変化してしまうという問題が生じてしまう。特許文献2、3、5においても、偏光性反射部材の角度依存性により、表示画像を斜めから見ると表示色が変化するだけでなく、これら偏光性反射部材を含むフロントガラスそのものが斜めから観察することで着色してしまい、自動車としてのデザインへ影響を及ぼすという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、高い可視光透過率を維持しながら、特定の偏光の反射率のみを有効に向上させることのできる光反射フィルム、ならびにこれを用いた光制御フィルム、光学フィルム、機能性ガラスおよびヘッドアップディスプレイを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−1と、500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−2と、600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−3のうち、1つ以上の光反射層を含み、互いに異なる中心反射波長をもつ少なくとも2つ以上の光反射層が積層され、積層される前記少なくとも2つ以上の光反射層は、いずれも同じ向きの偏光を反射する特性を有することを特徴とする光反射フィルムを用いることにより、フロントガラスの垂直方向の可視光透過率の規制値である70%以上を維持し、かつ、偏光を出射する投影機を用いて画像を投影することで、投影画像のみの反射率を通常光の反射率よりも大幅に向上させることができることを新規に見出し、本発明に至った。なお、PRLは、Polarized light Reflection Layerの略記であって、光反射層を意味するアルファベット表記である。
【0011】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−1と、500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−2と、600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−3のうち、1つ以上の光反射層を含み、互いに異なる中心反射波長をもつ少なくとも2つ以上の光反射層が積層され、積層される前記少なくとも2つ以上の光反射層は、いずれも同じ向きの偏光を反射する特性を有することを特徴とする光反射フィルム。
(2)前記少なくとも2つ以上の光反射層は、前記光反射層PRL−1と、前記光反射層PRL−2と、前記光反射層PRL−3のうち、2つもしくは3つの光反射層を含むことを特徴とする、(1)に記載の光反射フィルム。
(3)前記少なくとも2つ以上の光反射層は、700nm以上950nm以下の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下であって、かつ、(1)または(2)に記載された前記光反射層PRL−1、前記光反射層PRL−2および前記光反射層PRL−3と同じ向きの偏光を反射する特性を有する光反射層PRL−4を含むことを特徴とする、(1)または(2)に記載の光反射フィルム。
(4)各光反射層の半値幅が100nm以上、500nm以下であることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の光反射フィルム。
(5)各光反射層が、固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層であることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の光反射フィルム。
(6)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルムと、1/4波長板および光吸収層の少なくとも一方の光制御層とが積層されていることを特徴とする光制御フィルム。
(7)前記光制御層が、1/4波長板であることを特徴とする(6)に記載の光制御フィルム。
(8)前記光制御層が、2枚の1/4波長板であり、前記光反射フィルムは、前記2枚の1/4波長板で挟持されるように積層されていることを特徴とする(7)に記載の光制御フィルム。
(9)前記2枚の1/4波長板は、遅相軸が互いに直交する位置関係で積層されていることを特徴とする、(8)に記載の光制御フィルム。
(10)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルムまたは(6)ないし(9)のいずれか1項に記載の光制御フィルムと、中間膜とを積層してなる光学フィルム。
(11)前記光反射フィルムまたは光制御フィルムが、2枚の中間膜で挟持されるように積層されていることを特徴とする、(10)に記載の光学フィルム。
(12)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルム、(6)ないし(9)のいずれか1項に記載の光制御フィルム、または(10)もしくは(11)に記載の光学フィルムのいずれかを有する機能性ガラス。
(13)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルム、(6)ないし(9)のいずれか1項に記載の光制御フィルム、または(10)もしくは(11)に記載の光学フィルムのいずれかを、2枚のガラス板によって挟持した合わせガラスにしたことを特徴とする、(12)に記載の機能性ガラス。
(14)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルム、(6)ないし(9)のいずれか1項に記載の光制御フィルム、または(10)もしくは(11)に記載の光学フィルム、または(12)もしくは(13)に記載の機能性ガラスのいずれかを用いたヘッドアップディスプレイ。
(15)画像表示するための投影機を有し、該投影機に、(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の光反射フィルムの選択反射する円偏光と同じ向きの円偏光出射手段を設けたことを特徴とする、(14)に記載のヘッドアップディスプレイ。
(16)画像表示するための投影機を有し、該投影機に、P偏光を出射する手段を設けたことを特徴とする(14)に記載のヘッドアップディスプレイ。
(17)(6)ないし(9)のいずれか1項に記載の光制御フィルム、または、(10)もしくは(11)に記載の光学フィルムおよび(12)もしくは(13)に記載の機能性ガラスのうち、1/4波長板を積層した、光学フィルムおよび機能性ガラスのいずれかは、出射されたP偏光に対し、前記1/4波長板の遅相軸が45度になるように積層配置されていることを特徴とする(16)に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光反射フィルムは、高い可視光透過率を有しながら、特定の偏光の反射率のみを有効に向上させることによって、HUDにおける投影画像の視認性を向上させることができ、特にフロントガラスのように可視光透過率が法的に規制されているような場合において、要求される可視光透過率を維持しながら、HUDにおける投影画像の視認性のみを向上させることができる。また、本発明の光反射フィルム、ならびにこれを用いた光制御フィルムおよび光学フィルムのいずれかを有する機能性ガラスは、フロントガラス全面のHUDにおける表示画像を明るく鮮明に映すことができ、運転者はフロントガラスのどの部分でも鮮明な画像を見ることができる。さらには、投影された画像を裸眼で見た場合でも、偏光サングラスをかけて見た場合でも明るい画像を見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光反射フィルムを構成する各光反射層は、特定の偏光に変換された画像表示手段から出射した光に対して高い反射率を有する特徴を持つ。偏光には、主に直線偏光と円偏光があるが、そのような偏光を反射する光反射層としては、例えば、直線偏光に対しては屈折率の異なる2種類以上の高分子からなる高分子多層膜からなる複屈折干渉型の偏光子や、ワイヤーグリッド型と呼ばれる微細な凹凸構造を有する偏光子が挙げられ、また、円偏光に対してはコレステリック液晶層からなる偏光子等が挙げられ、特に円偏光に対しては、コレステリック液晶層からなる偏光子が好ましい。
【0015】
また、本発明の光反射フィルムは、画像表示手段から出射される光の波長に対して反射する必要があるため、可視光における青、緑、赤色の偏光に対して反射させる必要がある。一方で、自動車のフロントガラスのように法的に可視光透過率の規制があるような場合は、偏光フィルタ等によって特定の偏光成分だけを取りだす処理が施されていない光、いわゆる通常光に対する反射率が高すぎると透過率が低下し、使用できなくなってしまうため、通常光に対する光反射フィルムの反射率を適切に制御しなければならない。そのような光反射フィルムは、400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−1と、500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−2と、600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層PRL−3のうち1つ以上を含み、互いに異なる中心反射波長をもつ少なくとも2つ以上の光反射層が積層されている。このことは、本発明の光反射フィルムが、例えば、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちのいずれか1つの光反射層しか含んでいない場合には、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のいずれか1つのみの光反射層と、これらの光反射層とは異なる中心反射波長をもつ他の光反射層からなる群から選択される少なくとも1つ以上の光反射層との積層構造で構成されることを意味しており、光反射フィルムを構成する光反射層の層数は、少なくとも2つ以上であることが必要である。また、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のそれぞれの通常光に対する反射率は、好ましくは、10%以上25%以下、さらに好ましくは、15%以上20%以下程度とするのがよい。なお、各光反射層の中心反射波長での通常光に対する反射率は、上記の範囲内に調整できれば、いずれも同じあっても異なっていてもよい。
【0016】
本発明における中心反射波長とは、各光反射層の最大反射率の80%に相当する短波長側の波長と長波長側の波長の平均となる波長を意味する。例えば、PRL−1の最大反射率が20%であった場合、その80%に相当する16%の反射率を示す短波長側の波長をλ1、長波長側の波長をλ3とすると、下記式(1)で示されるλ2が中心反射波長となる。
(λ1+λ3)/2=λ2 (1)
【0017】
また、本発明では、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち1つ以上を用いていれば、これらの光反射層は、各光反射層の反射帯域の広さに応じて積層数を調整することが可能である。HUDの画像表示手段からの光を所望とする分反射することが可能であれば、PRL−1、PRL−2、PRL−3のいずれか1層であってもよく、2層を積層してもよいし、3層共に積層してもよい。さらに、反射帯域を調整したい場合は、積層される光反射層には、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3とは異なる中心反射波長をもつさらなる光反射層を用いることも可能であるが、後述する1/4波長板による円偏光から直線偏光への変換の際に、同じ向きの直線偏光に変換する必要性があるために、積層される各光反射層は、いずれも同じ向きの偏光を反射する特性を有することが必要である。
【0018】
本発明での光反射フィルムは、光反射層がコレステリック液晶層である場合、入射してくる偏光が直線偏光であっても、円偏光であってもよいが、円偏光を入射させる方が好ましい。コレステリック液晶層は右回り円偏光もしくは左回り円偏光のいずれかを反射するように構成することができるが、円偏光には軸がないために、入射してくる偏光を光反射層が反射する右回り円偏光か左回り円偏光のいずれかを選択するだけで容易に、かつ、安定した高い反射率を得ることができる。
【0019】
円偏光を得る手段としては、例えば、染料系やヨウ素系といった吸収型の偏光板と1/4波長板とを、偏光板の吸収軸あるいは透過軸が、該1/4波長板の遅相軸あるいは進相軸に対して45度となるように配置すればよい。本発明においては、光反射層に到達するまでに円偏光となっていれば高い反射率を得ることができるため、偏光板と1/4波長板とを積層した、いわゆる円偏光板として、光反射層に入射させてもよいし、1/4波長板を光反射層とともに積層し、1/4波長板が偏光板側に位置するように配置してもよい。このような光反射フィルムと1/4波長板とを積層することによって、本発明の光制御フィルムを得ることができる。
【0020】
光反射層に用いられるコレステリック液晶とは、キラリティを持つネマチック液晶やネマチック液晶にカイラル剤を添加した配合物からなる。カイラル剤の種類や量により、螺旋の向きや反射波長を任意に設計できることから、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック液晶を得る方法が好ましい。本発明で使用されるネマチック液晶は、いわゆる電界で操作する液晶とは異なり、螺旋配向状態を固定化して使用されるため、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いることが好ましい。
【0021】
重合性基を有するネマチック液晶モノマーとは、分子内に重合性基を有し、ある温度範囲あるいは濃度範囲で液晶性を示す化合物である。重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコニル基、シンナモイル基、またはエポキシ基などが挙げられる。また、液晶性を示すためには分子内にメソゲン基があることが好ましく、メソゲン基とは、例えばビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基、またはアセナフトキノキサリン基等のロッド状、板状、あるいはトリフェニレン基、フタロシアニン基、またはアザクラウン基等の円盤状の置換基、即ち液晶相挙動を誘導する能力を有する基を意味する。ロッド状または板状基を有する液晶化合物はカラミティック液晶として当該技術分野で既知である。このような重合性基を有するネマチック液晶モノマーは具体的には特開2003−315556号公報および特開2004−29824号公報に記載の重合性液晶や、PALIOCOLORシリーズ(BASF社製)、RMMシリーズ(Merck社製)等が挙げられる。これら重合性基を有するネマチック液晶モノマーは単独でも、あるいは複数混合して用いることができる。
【0022】
カイラル剤としては、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーを右巻きあるいは左巻き螺旋配向させることができ、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと同様に重合性基を有する化合物が好ましい。そのようなカイラル剤としては、例えば、Paliocolor LC756(BASF社製)、特開2002−179668号公報に記載されている化合物などが挙げられる。このカイラル剤の種類により、反射する円偏光の向きが決まり、さらには、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量に応じて、光反射層の反射波長を変えることができる。例えば、カイラル剤の添加量を多くするほど、短波長側の波長を反射する光反射層を得ることができる。カイラル剤の添加量は、カイラル剤の種類と反射させる波長によっても異なるが、通常光に対する光反射層の中心反射波長λ2を、所望の波長領域に調整するため、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100重量部に対し、0.5〜30重量部程度が好ましく、より好ましくは1〜20重量部程度であり、さらに好ましくは3〜10重量部程度である。
【0023】
さらに、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと反応可能な液晶性を有しない重合性化合物を添加することも可能である。そのような化合物としては例えば紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、プロピレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−ジ−(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサンジオール−ジ−(メタ)アクリレート、グリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールA−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でもあるいは複数混合して用いることができる。これら液晶性を持たない紫外線硬化型樹脂は液晶性を失わない程度に添加しなければならず、好ましくは、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは1.0〜10重量部程度がよい。
【0024】
本発明で用いられる重合性基を有するネマチック液晶モノマーや他の重合性化合物が紫外線硬化型である場合、これらを含んだ組成物を紫外線により硬化させるために、光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(BASF社製イルガキュアー907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製イルガキュアー184)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(BASF社製イルガキュアー2959)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製ダロキュアー953)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製ダロキュアー1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製イルガキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASF社製イルガキュアー651)等のベンゾイン系化合物、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬製カヤキュアーMBP)等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーCTX)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(カヤキュアーRTX)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロオチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーCTX)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDETX)、または2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDITX)等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。好ましくは、例えば、Irgacure TPO、Irgacure TPO−L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 379、Irgacure 819、Irgacure 127、Irgacure 907またはIrgacure 1173(いずれもBASF社製)、特に好ましくはIrgacure TPO、Irgacure TPO−L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300またはIrgacure 907が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種類でも複数でも任意の割合で混合して使用することができる。
【0025】
光重合開始剤としてベンゾフェノン系化合物やチオキサントン系化合物を用いる場合には、光重合反応を促進させるために、助剤を併用することも可能である。そのような助剤としては例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’―ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、または4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物が挙げられる。
【0026】
前記光重合開始剤および助剤の添加量は、本発明で用いられるネマチック液晶モノマーを含む組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましく、その量は、当該組成物中の紫外線で硬化する化合物100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部以下、より好ましくは2重量部以上8重量部以下程度がよい。また、助剤は光重合開始剤に対して、0.5倍から2倍量程度がよい。
【0027】
上記コレステリック液晶を用いて、本発明の光反射フィルムに用いる光反射層を作製する方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーに、所望とする波長を反射するように右巻きもしくは左巻きとなるカイラル剤を必要量添加する。次にこれらを溶剤に溶解し、光重合開始剤を添加する。このような溶剤は、使用する液晶モノマーやカイラル剤等を溶解できれば、特に限定されるものではないが、シクロペンタノンの使用が好ましい。その後、この溶液をPETフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱にて溶剤を除去させながら、基板上でコレステリック液晶となって所望の螺旋ピッチで配向するような温度条件で一定時間放置させる。このとき、プラスチックフィルム表面を塗布前にラビングあるいは延伸等の配向処理をしておくことで、コレステリック液晶の配向をより均一にすることができ、光反射層としてのヘーズ値を低減することが可能となる。次いでこの配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等で紫外線を照射し、配向を固定化させることにより、本発明の光反射フィルムを構成するのに用いられる各光反射層が得られる。ここで、右巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層は右回り円偏光を選択的に反射し、左巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層は、左回り円偏光を選択的に反射する。この特定の円偏光を選択的に反射する現象を選択反射と言い、選択反射している波長帯域を選択反射領域という。
【0028】
本発明の光反射フィルムに用いる光反射層の通常光に対する反射率を調整する他の方法としては、上記光反射層作製時における光反射層の厚さを変えることが挙げられる。通常、光反射層が厚くなればなるほど、反射率は向上するが、理論的な最大反射率である50%以上にはならない。従って、本発明における通常光に対する反射率を5%以上25%以下にするためには、理論的な最大反射率における厚さの約半分以下にすることが好ましく、使用するコレステリック液晶やカイラル剤の種類などに応じて、各光反射層の厚さは、例えば0.1〜3μm程度であり、また、通常光に対する各光反射層の反射率を所望の範囲内に調整できれば、各光反射層の厚さは、いずれも同じあっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明の光反射フィルムは、上記の方法で作製した光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち、1つ以上を含んでいる。各光反射層の半値幅が広い場合は、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちいずれか1層または2層が含まれることにより可視光領域の大部分をカバーできるが、各光反射層の半値幅が狭い場合は、反射させる偏光の多色化を実現するため、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の3つ全てを積層させることがより好ましい。例えば、半値幅が100nm以上200nm未満の狭い範囲の場合には、光反射フィルムは、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の3層全てを含み、また、半値幅が200nm以上500nm未満の場合には、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちいずれか1層または2層を含む等、半値幅に応じて光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の積層数を適宜調整することができる。また、積層する光反射層の中心反射波長は、例えば100〜300nm程度離れている場合には、積層された反射スペクトルが、可視光領域全体、好ましくは400〜700nmの波長領域全体に渡って例えば5%以上、好ましくは10%以上となるように、適度に重なり合うように設計する。光反射層を積層する手段は、特に制限はなく、例えば、光反射層上に直接他の光反射層を積層したり、粘着剤や接着剤からなる接着層を介して間接的に積層する方法等が挙げられる。
【0030】
図2には、本発明の光反射フィルムの構成図の一例が示してある。光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のそれぞれに対応する光反射層7、8、9を、接着剤または粘着剤からなる接着層10により積層することで本発明の光反射フィルム11を得ることができる。接着層10に用いられる粘着剤としては、アクリル系やゴム系の粘着剤が挙げられるが、接着性や保持力等を調整しやすいアクリル系粘着剤が好ましい。また、接着層10に用いられる接着剤としては、紫外線硬化型樹脂組成物や熱硬化型樹脂組成物、およびこれらの混合物が挙げられる。紫外線硬化型樹脂の場合は、アクリロイル基、あるいはエポキシ基を有するモノマーを複数混合した組成物を光重合開始剤の存在下で、紫外線を照射することにより硬化させて接着させることができる。熱硬化型樹脂組成物の場合は、エポキシ基を有するモノマーを複数混合した組成物を酸触媒の存在下で加熱することにより硬化させて接着することができる。あるいは、アミノ基、カルボキシル基、水酸基を有する複数のモノマーやポリマーからなる組成物をイソシアネート基やメラミンを有する化合物の存在下で加熱することにより硬化させて接着することができる。
【0031】
本発明の光反射フィルムは、入射する光の角度によって反射波長が変化する場合がある。例えば、コレステリック液晶層からなる光反射層の場合、中心反射波長λ2は、光反射層の正面方向から傾けていくに従って短波長側へシフトする。このとき、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3が短波長側へシフトしても、それよりも長波長側にある光反射層が、代わりに反射することで、表示画像の色変化を抑制できるが、大きく傾けた場合は、PRL−3の帯域を反射することができなくなり、表示画像の色、特に赤色表示が不鮮明となって正しい色で映すことができないという問題が発生することがある。こうした現象は、自動車用のフロントガラス全面でHUDを行う場合、運転者から最も離れた助手席側やフロントガラス上方に表示された画像を見る際に起こりうる。そのような場合、中心反射波長が700nm以上950nm以下、好ましくは720nm以上900nm以下、より好ましくは730nm以上900nm以下、さらに好ましくは730nm以上850nm以下であって、中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下、好ましくは10%以上20%以下、より好ましくは15%以上、20%以下であって、かつ、PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じ向きの偏光を反射する特性をもつ光反射層PRL−4をさらに積層することによって改善することができる。
【0032】
本発明で用いられる光反射層PRL−4は、中心反射波長が近赤外線領域にあること以外は、他の光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じである。光反射層PRL−4は正面方向では可視光域に反射域を持たないため、透明であるが、光反射層PRL−4を傾けることによって、反射帯域が短波長側へシフトし、可視光域で反射するようになる。その際、光反射層PRL−3の反射帯域にシフトするように中心反射波長を設定することで、斜めから見た場合においても、正面方向と同じ色の画像を見ることができる。
【0033】
図3には、光反射層PRL−4を含む本発明の光反射フィルム13の構成が示してある。PRL−4である光反射層12は、接着層10を介して他の光反射層7、8、9と共に積層される。光反射層PRL−4の中心反射波長での通常光に対する反射率は他の光反射層、特にPRL−3と同じにすることが好ましく、反射率5%以上25%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、10%以上25%以下、さらに好ましくは、15%以上20%以下程度とするのがよい。また偏光の向きは、一緒に積層した他の光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じ向き、特に光反射層PRL−3と同じ向きにするのがよい。光反射層PRL−4を積層する順番に特に制限はなく、厚さ方向に任意の位置に配置することができる。
【0034】
本発明で用いる光反射層PRL−4は近赤外線領域に反射帯域を持つため、太陽光に対して遮熱効果も有する。従って、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちの1つ以上と、光反射層PRL−4とを含む本発明の光反射フィルムは、自動車のフロントガラスに用いることで、高い可視光透過率を有しながら、HUDにおける投影画像の視認性を向上させることができるだけでなく、HUDにおける表示画像の角度依存性をも改善し、さらには、遮熱効果により車内の温度の上昇抑制にも寄与することができる。特に、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち1層のみを用いる場合には、PRL−4をさらに積層することが好ましい。光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちのいずれか1層と、光反射層PRL−4との2層の積層により、少ない積層数で、多色表示及び近赤外領域からのシフトによる可視光反射の補正効果の両方を実現することが可能となる。
【0035】
本発明の光反射フィルムを構成する各光反射層の反射帯域は、少ない積層数で効率よく光源からの複数の波長の光を反射させることと、傾斜に伴う短波長シフトによる反射帯域の変化を抑制するために、広い方が好ましく、半値幅で100nm以上、500nm以下、より好ましくは150nm以上、400nm以下、さらに好ましくは150nm以上、350nm以下程度がよい。半値幅が100nm未満になると、傾斜に伴う波長シフトにより、反射波長が光源の波長と大きくずれてしまい、明るさを向上する効果が低下するだけでなく、上記PRL−4のような近赤外領域からのシフトによる可視光反射の補正効果が限定的となる傾向がある。また、半値幅を100nm未満、特に50nm以下に維持したまま反射率を下げることは困難である場合が多い。一方、半値幅が500nmを超えると、反射率が大幅に低下するため、5%以上の反射率を得ることが困難になり、望ましくない。また、例えば、各光反射層において同一材料のコレステリック液晶を使用した場合、各光反射層の半値幅が広ければ反射率が低くなり、半値幅が狭いと反射率が高くなる傾向がある。よって、各光反射層の半値幅を適切に調整することにより、特定の偏光の反射率をより有効に向上させることができる。なお、ここでいう半値幅とは、光反射層の最大反射率の50%に相当する、長波長側の波長と短波長側の波長とで区画された波長の幅のことを意味する。例えば、最大反射率の50%に相当する短波長側の波長が450nm、長波長側の波長が550nmである場合には、半値幅は100nmである。最大反射率の50%に相当する波長は、選択反射領域の最大反射率から選択反射領域以外の反射率の平均値(例えば、350nm〜950nmにおける平均値)を引くことにより、選択反射由来の反射率を基準として求めることができる。例えば、選択反射領域の最大反射率の値が30%で、選択反射率以外の反射率の平均値(反射率のベースライン)が6%である場合、最大反射率の50%に相当する波長は、30%から(30−6)/2を引いた18%の反射率を示す波長を意味する。
【0036】
こうして得られた本発明の光反射フィルムを車のフロントガラスのような合わせガラスに挿入し、HUDとして表示する場合、車内側のガラスと車外側のガラスに投影された画像がずれて見える、いわゆるゴースト現象(二重写り)の問題が発生することがある。このようなゴースト現象を改善する方法としては、例えば、
図7に示すように本発明の光反射フィルムの一方に、光制御層として1/4波長板23と呼ばれる位相差素子を積層した本発明の光制御フィルム20を用いる方法が好ましい。1/4波長板とは、円偏光を直線偏光に変換する機能を持つ位相差素子であり、例えば、ポリカーボネートやシクロオレフィンポリマーからなるフィルムを位相差が波長の1/4となるように一軸延伸したり、水平配向する重合性液晶を位相差が波長の1/4となるような厚さで配向させたりすることによって得ることができる。この1/4波長板は単独で用いてもよいし、波長分散による位相差のずれが大きい場合には、広帯域1/4波長板と呼ばれる位相差素子を用いてもよい。広帯域1/4波長板とは位相差の波長依存性が低減した位相差素子であり、例えば、同じ波長分散をもつ1/2波長板と1/4波長板とをそれぞれの遅相軸の成す角が60度となるように積層したものや、位相差の波長依存性を低減したポリカーボネート系位相差素子(帝人社製:ピュアエースWR−S)等が挙げられる。さらには、ヘッドアップディスプレイのように、光の入射角が1/4波長板に対して斜めから入射する場合、位相差素子によっては、光の入射角度によって位相差が変化する場合がある。このような場合に、より厳密に位相差を合わせる方法として、例えば、位相差素子の屈折率を調整した位相差素子を用いることにより、入射角に伴う、位相差の変化を抑制することができる。そのような例としては、位相差素子の面内での遅相軸方向の屈折率をnx、面内でnxと直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとするとき、下記式(2)で示されるNz係数が、好ましくは0.3〜1.0、より好ましくは0.5〜0.8程度となるように制御する。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
【0037】
また、用いる位相差フィルムの遅相軸あるいは進相軸がロール状の1/4波長板の長尺方向に対して45度となっている場合、ロール状の1/4波長板と、同様にロール状の本発明の光反射フィルムとをロールツウロールで積層することにより、ロールの長尺方向に対し、遅相軸あるいは進相軸が45度である本発明の光制御フィルムを得ることができる。さらには、例えば、
図8に示すように、
図7において光反射フィルムの一方に積層した光制御層としての1/4波長板23とは反対側に、もう一つの光制御層である1/4波長板23をそれぞれの遅相軸あるいは進相軸が直交するように積層することで、光反射フィルムが各々の遅相軸あるいは進相軸が直交した1/4波長板23に挟持された本発明の光制御フィルム24を得ることができる。本発明のHUDの画像表示手段からの出射光がP偏光である場合、車のフロントガラスに本発明の機能性ガラスを用いるためには、1/4波長板の遅相軸あるいは進相軸がP偏光に対して、45度とならなければならない。ロール状の光反射フィルムに対して、1/4波長板の遅相軸あるいは進相軸が0度もしくは90度となるように積層すると、所望の大きさに切り出す時に、ロールの長尺方向に対して45度となるようにしなければならないため、使用できない部分が多数発生してしまい、歩留りを低下させてしまう。しかしながら、上述したように、ロールの長尺方向に対して、1/4波長板の遅相軸あるいは進相軸が45度となるような積層方法を用いることで、ロール状の本発明の光制御フィルムの長尺方向と平行あるいは直交方向に所望の大きさで切り出すことができるため、歩留りが大幅に向上し、本発明の光学フィルムあるいは機能性ガラスを効率的に得ることができる。なお、ここでいうP偏光とは、本発明の光反射フィルム、光制御フィルム、光学フィルム、機能性ガラスといった対象物に入射する光の電気スペクトルの振動方向が入射面内に含まれる直線偏光を意味する。
【0038】
また、ロール状の1/4波長板とロール状の本発明の光反射フィルムとをロールツウロールで積層する以外にも、1/4波長板上に直接光反射層を積層してもよい。1/4波長板上に直接光反射層が積層されることにより、ラビングなどの配向処理無しにヘーズ値の低い光反射層を得ることができる。このような場合、コレステリック液晶との優れた密着性および偏光に対する反射率の向上の観点から、重合性液晶から作製した1/4波長板の使用が特に好ましい。
【0039】
ゴースト現象を低減する他の方法としては、例えば、
図9に示すように本発明の光反射フィルムの一方に、光制御層として光吸収層21をさらに設けた本発明の光制御フィルム22を用いる方法が挙げられる。光吸収層21により、積層した光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3を透過した光が、ガラスで反射する前に吸収されることによりゴースト現象が低減される。光を吸収する方法は特に限定されないが、例えば、色素をアクリル樹脂等に混合させて光反射層上に塗布する方法や、偏光フィルムを用いる方法が挙げられる。車のフロントガラスに光吸収層を用いる場合は、透過率が合わせガラスとして70%以上であることが法規的に求められるため、光吸収層の透過率も70%以上90%以下、より好ましくは75%以上85%以下程度がよい。このように本発明の光反射層に1/4波長板や光吸収層を新たに積層した本発明の光制御フィルムを、車のフロントガラスとして合わせガラスにする際に、1/4波長板あるいは光吸収層が車外側に配置されるように用いることで、ゴースト現象を低減することが可能となる。但し、画像表示手段からの出射光がP偏光である場合は、本発明の光制御フィルムを車のフロントガラスとして合わせガラスにする際に、当該光制御フィルムの1/4波長板の遅相軸あるいは進相軸がP偏光に対して、HUDにおける投影画像が明るくなるような向きの45度となるように、かつ、車内側に1/4波長板が配置されるように用いるのが望ましい。この1/4波長板の軸配置を誤ると本発明の効果が十分に発現しなくなるため、軸配置は実際に画像を投影し、本発明の効果が十分発揮される軸配置を確認してから合わせガラスを作製することが好ましい。
【0040】
こうして得られた本発明の光反射フィルムもしくは光制御フィルムを、2枚の中間膜によってラミネートすることで本発明の光学フィルムを得ることができる。
図4には、本発明の光学フィルムの一例が示されており、光学フィルム16は、光反射フィルムもしくは光制御フィルム14が2枚の中間膜15により挟持された構成をなし、光反射フィルム14は、例えば、
図2の光反射フィルム11または
図3の光反射フィルム13に相当し、光制御フィルム14は、例えば、
図7の光制御フィルム20、
図8の光制御フィルム24または
図9の光制御フィルム22に相当する。中間膜としては、ポリビニルブチラール系樹脂(PVB)、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂(EVA)を用いることができる。これらは合わせガラス用中間膜として汎用的であるために好ましく、合わせガラスとしての品質をニーズに整合し得るようなものであれば、特に限定されるものではない。
【0041】
中間膜には、紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、着色剤、接着調整剤等が適宜添加配合されていても良く、とりわけ、赤外線を吸収する微粒子が分散された中間膜は、高性能な遮熱合わせガラスを作製する上で重要である。赤外線を吸収する微粒子には、Sn、Ti、Zn、Fe、Al、Co、Ce、Cs、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物あるいはSbやFをドープした各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を含む複合物などの導電性を有する材料の超微粒子を用いる。特に可視光線の領域では透明である錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫が、特に透明性が求められる建築用や自動車用の窓として用いる場合には、特に好ましい。中間膜に分散させる赤外線を吸収する微粒子の粒径は、0.2μm以下にするのが好ましい。このサイズであれば可視光線の領域での光の散乱を抑制しつつ赤外線を吸収でき、ヘーズを発生させず、電波透過性と透明性を確保しつつ、接着性、透明性、耐久性等の物性を未添加の中間膜と同等に維持し、さらには通常の合わせガラス製造ラインでの作業で合わせガラス化処理を行うことができる。なお、中間膜にPVBを用いる場合には、中間膜の含水率を最適に保つために、恒温恒湿の部屋で合わせ化処理を行う。また、中間膜には、その一部が着色したもの、遮音機能を有する層をサンドイッチしたもの、HUDにおけるゴースト現象(二重写り)を軽減するため、膜厚に傾斜があるもの(楔形)などが使用できる。
【0042】
中間膜によって光反射フィルムもしくは光制御フィルムをラミネートする方法は特に制限はないが、例えば、ニップロールを用いて、中間膜、光反射フィルムもしくは光制御フィルム、中間膜を同時に圧着によりラミネートする方法が挙げられる。ラミネートする際にニップロールが加熱できる場合は、加熱しながら圧着することも可能である。また、中間膜と光反射フィルムとの密着性が劣る場合は、コロナ処理やプラズマ処理などによる表面処理を予め行ってからラミネートしてもよい。
【0043】
本発明の光反射フィルム、光制御フィルムまたは光学フィルムをガラスと組み合わせることで、本発明の機能性ガラスを得ることができる。本発明の光反射フィルム、光制御フィルムまたは光学フィルムをガラスに貼り合わせる方法としては、粘着剤もしくは接着剤を該光反射フィルム、光制御フィルムまたは光学フィルムの片側あるいは両側に塗布し、次いで、ガラス板を貼り合わせることによって得ることができる。粘着剤や接着剤には特に制限はないが、後に剥がすことがある場合は、リワーク性に優れた粘着性がよく、例えばシリコーン粘着剤やアクリル系粘着剤等が好ましい。
【0044】
本発明の光学フィルムを用いる場合は、2枚のガラス板の間に、該光学フィルムを配置し、高温・高圧にて圧着することにより合わせガラス内に光学フィルムが配置した本発明の機能性ガラスを得ることができる。
図5には、本発明の機能性ガラスの一例を示している。
図5に示す機能性ガラス18は、光学フィルム16が、2枚のガラス17により挟持された構成をなす。この時、光反射フィルムもしくは光制御フィルム14が挟持されている光学フィルム16における中間膜15は、ガラス17と光反射フィルムとの密着性を保持するための粘着剤もしくは接着剤としての機能も有する。
【0045】
上記光学フィルム16を用いて本発明の機能性ガラスを作製する方法の一例を具体的に説明する。まず、2枚のガラス板を準備する。自動車のフロントガラス用の合わせガラスとして用いる場合は、フロート法で作られたソーダライムガラスを使用する。ガラスは透明、緑色に着色されたもの、いずれでもよく、特に制限はない。これらのガラス板の厚さは、通常、約2mmtのものを使用するが、近年のガラスの軽量化の要求に応じて、これよりも若干薄い厚さのガラス板も使用できる。ガラス板を所定の形状に切り出し、ガラスエッジに面取りを施し洗浄する。黒色の枠状やドット状のプリントが必要な際には、ガラス板にこれを印刷する。フロントガラスのように曲面形状が必要とされる場合には、ガラス板を650℃以上に加熱し、その後、モールドによるプレスや自重による曲げなどで2枚が同じ面形状となるように整形し、ガラスを冷却する。このとき、冷却速度を早くしすぎると、ガラス板に応力分布が生じて強化ガラスとなるために、徐冷する。このように作製したガラス板のうちの1枚を水平に置き、その上に本発明の光学フィルムを重ね、さらにもう一方のガラス板を置く。あるいは、ガラス板の上に中間膜、本発明の光反射フィルムもしくは光制御フィルム、中間膜を順に重ね、最後にもう一方のガラス板を置くといった方法でもよい。このとき、本発明の光制御フィルムを用いる場合は、光制御層としての1/4波長板や光吸収層は、車外側になるように配置する。次いで、ガラスのエッジからはみ出した光学フィルムや中間膜、光反射フィルムは、カッターで切断・除去する。その後、サンドイッチ状に積層したガラス、中間膜、光反射フィルムもしくは光制御フィルムとの間に存在する空気を脱気しながら温度80℃から100℃に加熱し、予備接着を行う。空気を脱気する方法にはガラス/中間膜/光反射フィルムもしくは光制御フィルム/中間膜/ガラスの積層物を耐熱ゴムなどでできたゴムバッグで包んで行うバッグ法と、ガラスの端部のみをゴムリングで覆ってシールするリング法の2種があり、どちらの方法を用いてもよい。予備接着が終了後、ゴムバッグから取り出したガラス/中間膜/光反射フィルムもしくは光制御フィルム/中間膜/ガラスの積層物、もしくはゴムリングを取り外した積層物をオートクレーブに入れ、10〜15kg/cm
2の高圧下で、120℃〜150℃に加熱し、この条件で20分〜40分間、加熱・加圧処理する。処理後、50℃以下に冷却したのちに除圧し、ガラス/中間膜/光反射フィルムもしくは光制御フィルム/中間膜/ガラスからなる本発明の機能性ガラスをオートクレーブから取り出す。
【0046】
こうして得られた本発明の機能性ガラスは、普通自動車、小型自動車、軽自動車などともに、大型特殊自動車、小型特殊自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラスとして使用できる。さらには、鉄道車両、船舶、航空機の窓としても、また、建材用および産業用の窓材としても使用できる。使用の形態であるが、UVカットや調光機能を有する部材と、積層あるいは貼合して用いることができる。
【0047】
さらに、本発明の機能性ガラス18を
図1のフロントガラス4と置き換えるか、あるいは本発明の光反射フィルムまたは光制御フィルムをフロントガラスの車内側ガラスに貼り付けることで、本発明のヘッドアップディスプレイ(HUD)を得ることができる。光反射層がコレステリック液晶層からなる場合は、
図6における画像表示手段2からは直線偏光もしくは円偏光を出射させることにより、本発明の効果を得ることができ、特に円偏光の方がより高い反射率を得ることができる。円偏光出射手段としては、具体的には、
図6に示すように、光反射層がコレステリック液晶層からなる本発明の機能性ガラス18に対し、画像表示手段2から出射される光が直線偏光である場合には、1/4波長板19を画像表示手段2と反射鏡3との間、もしくは反射鏡3と機能性ガラス18との間もしくは光反射層と車内側の中間膜との間に配置し、さらに、直線偏光の偏光軸に対して、光反射層であるコレステリック液晶層が反射する円偏光と同じ向きの円偏光となるように1/4波長板19の進相軸または遅相軸を合わせることにより、画像表示手段2から出射された光は、本発明の機能性ガラス18に到達するまでに円偏光となり、機能性ガラス内のコレステリック液晶層によって反射することにより、観察者1へ到達する。
【0048】
本発明の効果は、上記構成に限定されない。例えば、光制御層としての1/4波長板を本発明の光反射層と積層した本発明の光制御フィルムを、1/4波長板が車内側になるように、なおかつ、1/4波長板の遅相軸または進相軸が投影されるP偏光に対してHUDにおける投影画像が明るくなるような向きの45度となるように配置されるように用い本発明の機能性ガラスを作製する。次に画像表示手段からの出射光をP偏光とし、さらにブリュースター角近傍で本発明の機能性ガラスへ入射して投影させると、車内側のガラスでの反射は大幅に低減され、透過した光は、1/4波長板で円偏光となって光反射層で反射し、再び1/4波長板でP偏光となって観察者へ明るい画像を投影することができる。上記の構成において本発明の機能性ガラスを使用した場合、HUDの投影画像を見た際に発生するゴースト現象を、大幅に軽減させることができる。さらに、偏光サングラスをかけて投影画像を見ることにより、投影画像の視認性は高いまま、かつ、ゴースト現象をほとんど消失させることができる。通常のHUDシステムは、P偏光の反射率が低いため、S偏光を利用する。また、路面の反射はS偏光であることから、偏光サングラスは、S偏光を吸収できるように偏光軸が設計されている。従って、偏光サングラスをかけて通常のHUDの投影画像を見ると、投影画像の視認性は極端に低下してしまう。一方、本発明の光制御フィルムを用いて、上記の如くP偏光の反射率を向上させたHUD、すなわち、P偏光を利用したHUDを作製することで、HUDの投影画像の視認性を高め、ゴースト現象を低減し、かつ、偏光サングラス着用時においても、投影画像の視認性は高く、ゴースト現象をほぼ解消できるという極めて優れた効果を得ることができる。
【0049】
さらに、本発明の機能性ガラス内にある光反射フィルムが、近赤外線領域を反射する光反射層PRL−4をさらに含む場合、HUDにおける角度依存性を解消し、観察者がフロントガラスを斜め方向から観察しても、PRL−4が反射波長域を近赤外線領域から可視光の赤色領域へとシフトさせるため、正面方向と同じ表示色を見ることが可能となる。さらには、光反射層PRL−4は、遮熱効果もあるために、太陽光入射による車内の温度上昇抑制にも寄与できる。
【0050】
本発明の光制御フィルムを、光反射層の車外側に光制御層として1/4波長板が積層されるように配置した場合には、光反射層を通過した円偏光は、1/4波長板により直線偏光に変換される。このとき、直線偏光がP偏光となるように1/4波長板の遅相軸または進相軸を調整して変換し、さらに、車外側のガラスへの入射角をブリュースター角あるいはその近傍になるように光路を調整することで、車外側ガラスでの反射率を大幅に低減することができるため、ゴースト現象が改善される。この時、入射光を円偏光にする手段として、光反射層と車内側の中間膜との間に光制御層として1/4波長板を配置する場合は、光反射層が2枚の1/4波長板に挟持された構成となる。これも本発明の光制御フィルムの一実施形態である。この時、2枚の1/4波長板の遅相軸は直交するように配置することが好ましく、より好ましくは、2枚の1/4波長板の遅相軸は直交するように、かつ、入射するP偏光に対して45度となるように配置するのがよい。このように配置することで、例えば、投射する光をP偏光とし、さらにブリュースター角近傍で本発明の合わせガラスへ入射させると、車内側のガラスでの反射は大幅に低減され、車内側のガラスを透過した光は、1/4波長板で円偏光となって光反射層で反射し、再び1/4波長板でP偏光となって観察者へ明るい画像を投影することができる。また、光反射層を通過した光は、車外側にある1/4波長板によりP偏光となり、車内側と同様にブリュースター角近傍であるために車外側のガラスでの反射を大幅に低減することができる。このことは、合わせガラスにおける車内側、車外側それぞれで発生するゴースト現象を改善し、投影された画像の視認性を向上させることができるため、特に好ましい。以上のように観察される光が円偏光、もしくはP偏光にすることにより、偏光サングラスをかけていても投影画像が暗くなることを防ぐことができるので好ましく、より好ましくはP偏光とするのがよい。
【0051】
本発明の光制御フィルムにおいて、光制御層として光吸収層を用いた場合、光反射層の車外側に光吸収層が配置されているため、光反射層を通過した光は、この光吸収層にて吸収されるため、車外側のガラスで反射されることなく、あるいは極めて僅かな反射しかしないため、ゴースト現象を改善することができる。なお、光吸収層を上記光反射層に、光吸収層が上記光反射層の車内側になるように積層した1/4波長板と併用することも可能であり、例えば、1/4波長板によってP偏光となった直線偏光を吸収するように、偏光板との吸収軸をP偏光の偏光軸合わせて1/4波長板のさらに車外側で、かつ、車外側のガラスの内側に光吸収層を配置することにより、さらにゴースト現象を低減することができる。このように光反射フィルムを1/4波長板と光吸収層で挟持するような構成の他に、1/4波長板にて挟持された光制御フィルムの一方にさらに光吸収層を設けた構成も本発明の光制御フィルムの一形態であり、これらの光制御フィルムの光吸収層が車外側になるように配置して合わせガラス、およびHUDを作製することにより、上記のブリュースター角近傍からのP偏光入射によるゴースト現象の改善効果と光吸収層による透過した光の吸収効果により、ゴースト現象をさらに低減することが可能となる。
【0052】
本発明のHUDにおいて使用される画像表示手段は、最終的に機能性ガラスに到達するまでに、所望の偏光となっていれば特に制限はないが、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ等が挙げられる。画像表示装置が液晶表示装置である場合、出射光は通常直線偏光となっているため、そのまま用いるか、
図6のように1/4波長板19を設置して円偏光に変換することが可能である。あるいは自動車の場合は例えばダッシュボードのような光出射口に偏光板や円偏光板、1/4波長板を配置して最適な偏光に調整することも可能である。有機ELの場合は、1/4波長板19と画像表示手段2との間に偏光板を配置すればよい。あるいは上記液晶ディスプレイと同様に、光出射口に偏光板や円偏光板、1/4波長板を配置して最適な偏光に調整すればよい。また使用される光源もレーザー光源やLED光源等特に制限はない。本発明で用いる光反射層において、これら光源の発光スペクトルに対応するように中心反射波長を設定することで、より効果的に表示画像を明るく投影できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により、本発明を詳細に例示する。実施例において部は重量部を意味する。
【0054】
塗布液(液晶組成物)の調製
下記表に示す組成の塗布液(R1)、(R2)、(R3)、(R4)をそれぞれ調製した。
【0055】
塗布液(R1)の組成表
【表1】
【0056】
次に、塗布液(R1)のカイラル剤の処方量を下表に示す量に変更する以外は同様の処方にて塗布液(R2)、(R3)、(R4)を調整した。
【0057】
【表2】
【0058】
[実施例1]
<光反射フィルムの作製>
調製した塗布液(R1)、(R2)、(R3)を用い、下記の手順にてそれぞれ光反射層PRL−1、光反射層PRL−2、光反射層PRL−3を作製し、次いでそれらを積層して本発明の光反射フィルムを作製した。プラスチック基板としては、特開2002−90743号公報の実施例1に記載された方法で下塗り層無し面を予めラビング処理した東洋紡績製PETフィルム(商品名 A4100、厚さ50μm)を使用した。
【0059】
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後にそれぞれ得られる各光反射層の厚みが0.5μmになるように、各PETフィルムのラビング処理面上に室温にて塗布した。
(2)各塗布膜を、150℃にて5分間加熱して溶剤を除去するとともに、コレステリック液晶相とした。次いで、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製)を120W出力、5〜10秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、PETフィルム上に光反射層を得た。
(3)(1)〜(2)にて作製した、PETフィルム上の光反射層PRL−1(塗布液(R1)使用)と光反射層PRL−2(塗布液(R2)使用)の光反射層側同士を、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、アクリル粘着剤SKダイン906)を用いて積層した。
(4)光反射層PRL−2のPETフィルムを剥離した。
(5)(1)〜(2)と同様に作製したPETフィルム上の光反射層PRL−3(塗布液(R3)使用)の光反射層側と、(4)における光反射層PRL−2のうちPETフィルムを剥離させた光反射層側同士を、(3)と同じアクリル系粘着剤を用いて積層した。
(6)最後に、積層した光反射層PRL−1と、PRL−3の両外側にあるPETフィルムを剥離した。
【0060】
こうして、光反射層PRL−1、光反射層PRL−2、光反射層PRL−3の順序で積層された3層からなる、厚さが1.5μmの本発明の光反射フィルムを得た。
図10は、単一の各光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3、PRL−4を形成したときに波長と反射率の関係をプロットした図である。光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の中心反射波長は、
図10および下記の表3からもわかるように、それぞれ450nm(半値幅は123nm)、540nm(半値幅は131nm)、650nm(半値幅は148nm)であり、かつ光反射層PRL−1、PRL2、PRL−3の中心反射波長における反射率は、それぞれ約20%、約21%、約22%であった。
【0061】
【表3】
【0062】
得られた光反射フィルムの透過率と反射率の分光特性を
図11に示した。光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は、約77%であり、一般に視感度の高い550nm付近における反射率は、約23%であった。一方、得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ると、赤色領域(650nm付近)の透過率が上昇し、正面方向とは異なる色味となった。
【0063】
<光学フィルムの作製>
厚さが0.38mmの透明なポリビニルブチラール中間膜を2枚用い、上記本発明の光反射フィルムをポリビニルブチラールフィルム間に配置し、次いで、ラミネーターにて加圧圧着することにより、本発明の光学フィルムを得た。
【0064】
<機能性ガラスの作製>
1枚の厚さが2mmのガラス板2枚の間に、上記光学フィルムを配置し、次いで、加圧・加熱することにより、本発明の機能性ガラスを得た。まず、透明なガラス板上に、上記本発明の光学フィルム、透明なガラス板を重ねた。次にガラス板のエッジ部からはみ出した光学フィルムの余分な部分を切断・除去した。これをゴムバッグで包み、90℃に加熱したオートクレーブ中で10分間脱気し、予備接着した。これを室温まで冷却後、ゴムバッグから取り出し、再度、オートクレーブ中で135℃、12kg/cm
2の高圧下で30分間加熱・加圧し、外観が良好な本発明の光学フィルムを挿入した本発明の機能性ガラスを作製した。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は72%であった。
【0065】
<ヘッドアップディスプレイの作製および表示画像の評価>
図6に示すような配置でヘッドアップディスプレイを作製した。なお、画像表示手段2としては液晶プロジェクター、1/4波長板19としては、高帯域1/4波長板(帝人社製:ピュアエースWR−S)、反射鏡3は市販の鏡を用い、機能性ガラス18は、上記で作製した合わせガラスを用いた。次に、暗室内にて、液晶プロジェクターから、機能性ガラスへ画像を投影したところ、表示画像は極めて明るく鮮明に投影された。一方、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けたところ、表示画像の赤色表示がやや不鮮明であった。
【0066】
[実施例2]
塗布液(R4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の作製法により、PETフィルム上に光反射層PRL−4(塗布液(R4)使用)を得た。実施例1の(1)〜(5)により得られた光反射フィルムの光反射層PRL−3側にあるPETフィルムを剥離し、PETフィルム上の光反射層PRL−4の光反射層側と、光反射層PRL−3のうちPETフィルムを剥離させた光反射層側同士を、アクリル系粘着剤を用いて積層し、次いで積層した光反射層PRL−1と、光反射層PRL−4の両外側にあるPETフィルムを剥離することにより、光反射層PRL−1、光反射層PRL−2、光反射層PRL−3、光反射層PRL−4の順序で積層された4層からなる本発明の光反射フィルムを得た。光反射層PRL−4の中心反射波長は、
図10および表3からもわかるように、800nm(半値幅は178nm)であり、かつ光反射層PRL−4の中心反射波長における反射率は、約20%であった。
【0067】
得られた光反射フィルムの透過率と反射率の分光特性を
図12に示した。光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は約77%であり、550nm付近における反射率は約22%であった。また、得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ても、赤色領域の透過率の変化はなく、正面方向と同様の色味であった。
【0068】
次に、実施例1と同様の作製法により、2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持することにより、本発明の光学フィルムを得た。さらには、実施例1と同様の作製法により、2枚のガラスを用いて本発明の光学フィルムを挟持して合わせガラスとすることにより、本発明の機能性ガラスを得た。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は72%であった。次に、実施例1と同様の作製法により、HUDを作製し、同様の評価を行ったところ、正面方向の表示画像は極めて明るく鮮明であった。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。
【0069】
[実施例3]
実施例2で得られた光反射フィルムの光反射層PRL−4側に、光制御層としての広帯域1/4波長板(帝人社製:ピュアエースWR−S)を粘着剤にて貼り合わせて、本発明の光制御フィルムを得た。この光学フィルムを実施例1と同様の作製法により、2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持することにより、本発明の光学フィルムを得た。さらには、実施例1と同様の作製法により、2枚のガラスを用いて本発明の光学フィルムを1枚の1/4波長板が車外側のガラス側になるように挟持して合わせガラスとすることにより、本発明の機能性ガラスを得た。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は72%であった。次に、実施例1と同様の作製法により、HUDを作製し、同様の評価を行ったところ、正面方向の表示画像は極めて明るく鮮明であった。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。さらには、表示画像が明るくなるように、かつ、1/4波長板の遅相軸が45度となるように配置し、表示画像を裸眼にて観察したところ、ゴースト現象が実施例1および2よりも軽減し、表示画像の視認性がさらに向上した。次に、この表示画像を市販の偏光サングラス(吸収軸が地面と水平方向)をかけて観察したところ、ゴーストは大幅に軽減し、表示画像を鮮明に見ることができた。
【0070】
[実施例4]
実施例3で得られた光制御フィルムの光反射層PRL−1側に、実施例3で用いた光制御層としての広帯域1/4波長板をそれぞれの1/4波長板の遅相軸が直交に配置されるように同様の方法にてさらに貼り合せ、光反射フィルムを2枚の1/4波長板で挟持した本発明の光制御フィルムを得た。この光学フィルムを実施例1と作製法の操作により、2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持することにより、本発明の光学フィルムを得た。さらには、実施例1と作製法の操作により、2枚のガラスを用いて本発明の光学フィルムを挟持するようにして合わせガラスとすることにより、本発明の機能性ガラスを得た。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は72%であった。次に、画像表示手段として実施例1と同じ液晶プロジェクターを用い、
図6における1/4波長板19を取り除き、反射鏡3と機能性ガラス18との間に、偏光板(ポラテクノ製:SHC−13U)を配設して、機能性ガラス18に入射する光をP偏光とする以外は実施例1と同様の作製法により、本発明のHUDを作製した。次に本発明の機能性ガラス内にある位相差素子の遅相軸を投影した画像が明るくなるような位置(入射P偏光に対して約45度)となるように配置し、さらには、P偏光の入射角度を本発明の機能性ガラスの正面方向から約60度の位置から投影し、表示画像を裸眼にて観察したところ、ガラスに投影された正面方向の表示画像は極めて明るく鮮明であった。また、投影された反射光はP偏光であった。次に、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けたところ、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。さらには、ゴースト現象が実施例1〜3よりも軽減し、表示画像の視認性がさらに向上した。次に、この表示画像を市販の偏光サングラス(吸収軸が地面と水平方向)をかけて観察したところ、ゴーストは大幅に軽減し、表示画像を鮮明に見ることができた。
【0071】
[実施例5]
光反射層PRL−1〜PPL−4の代わりに、光反射層PRL−1、光反射層PRL−3、光反射層PRL−4の3層を積層した以外は、実施例2と同様の作製法により本発明の光反射フィルムを得た。光反射層PRL−1、PRL−3、PRL−4の中心反射波長は、
図13および下記の表4からもわかるように、それぞれ481nm(半値幅は192nm)、613nm(半値幅は246nm)、843nm(半値幅は242nm)であり、かつ光反射層PRL−1、PRL3、PRL−4の中心反射波長における反射率は、それぞれ約16%、約16%、約18%であった。
【0072】
【表4】
【0073】
得られた光反射フィルムの透過率と反射率の分光特性を
図14に示した。光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は約82%であり、550nm付近における反射率は約18%であった。また、得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ても、赤色領域の透過率の変化はなく、正面方向と同様の色味であった。
【0074】
また、この光反射フィルムに、光制御層としての1/4波長板(カネカ製:PCR−140)を実施例3と同様の作製法により積層して、本発明の光制御フィルムを得た。この光学フィルムを実施例1と同様の作製法により、2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持することにより、本発明の光学フィルムを得た。さらには、実施例1と同様の作製法により、2枚のガラスを用いて本発明の光学フィルムを1枚の1/4波長板が車内側のガラス側になるように挟持して合わせガラスとすることにより、本発明の機能性ガラスを得た。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は77%であった。次に、実施例4と同様の作製法により、HUDを作製し、実施例4と同様の方法により表示画像を裸眼にて観察したところ、正面方向の表示画像は極めて明るく鮮明であった。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。さらには、ゴースト現象が実施例4と同様、実施例1〜3よりも軽減し、表示画像の視認性がさらに向上した。次に、この表示画像を市販の偏光サングラス(吸収軸が地面と水平方向)をかけて観察したところ、ゴーストはほとんど観察されず、ゴースト現象は実施例4に比べてより軽減され、表示画像を極めて鮮明に見ることができた。
【0075】
[実施例6]
光反射層PRL−1〜PPL−4の代わりに、光反射層PRL−2とPRL−4の2層のみを積層したこと以外は、実施例2と同様の作製法により本発明の光反射フィルムを得た。光反射層PRL−2、PRL−4の中心反射波長は、
図15および下記表5からもわかるように、それぞれ540nm(半値幅は158nm)、732nm(半値幅は170nm)であり、かつ光反射層PRL−2、PRL−4の中心反射波長における反射率は、それぞれ約17%、約18%であった。
【0076】
【表5】
【0077】
得られた光反射フィルムの透過率と反射率の分光特性を
図16に示した。光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は約82%であり、550nm付近における反射率は約17%であった。また、得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ても、赤色領域の透過率の変化は少なく、正面方向との色味の違いもわずかであった。
【0078】
また、この光反射フィルムに、実施例5と同様の作製法により光制御層としての1/4波長板(カネカ製:PCR−140)を積層して、本発明の光制御フィルムを得た。この光制御フィルムを実施例1と同様の作製法により、2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持することにより、本発明の光学フィルムを得た。さらには、実施例1と同様の作製法により、2枚のガラスを用いて本発明の光学フィルムを1枚の1/4波長板が車内側のガラス側になるように挟持して合わせガラスとすることにより、本発明の機能性ガラスを得た。得られた本発明の機能性ガラスの可視光透過率は77%であった。次に、実施例4と同様の作製法により、HUDを作製し、実施例4と同様の方法により表示画像を裸眼にて観察したところ、正面方向の表示画像は明るく鮮明であった。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。さらには、ゴースト現象が実施例4と同様、実施例1〜3よりも軽減し、表示画像の視認性がさらに向上した。次に、この表示画像を市販の偏光サングラス(吸収軸が地面と水平方向)をかけて観察したところ、ゴーストはほとんど観察されず、ゴースト現象は実施例4に比べてより軽減され、表示画像を極めて鮮明に見ることができた。
【0079】
[比較例1]
本発明の光反射フィルムの代わりに、可視光域での反射率が23%となるようにアルミニウムを蒸着したPETフィルムを用いる以外は実施例1と同様の作製法により、合わせガラスを作製した。次に、実施例1と同様の作製法により、HUDを作製し、同様の評価を行ったところ、正面方向の表示画像は実施例に比べて暗く、鮮明さに劣るものであった。
【0080】
[比較例2]
実施例1と同様の作製法により、実施例1とは異なる半値幅を有する3つの光反射層を用いて、3つの光反射層を積層した光反射フィルムを得た。各光反射層の中心反射波長は、それぞれ450nm(半値幅は40nm)、540nm(半値幅は40nm)、650nm(半値幅は50nm)であり、かつ各光反射層の中心反射波長における反射率は、それぞれ約40%、約40%、約40%であった。得られた光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は約55%であり、550nm付近における反射率は約40%であった。次に得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ると、赤味を帯びており、正面方向とは異なる色味となった。次に、実施例1と同様の作製法により、得られた光反射フィルムを2枚のポリビニルブチラール中間膜に挟持し、次いで2枚のガラスを用いて合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスの可視光透過率は50%であった。次に、実施例1と同様の作製法により、HUDを作製し、同様の評価を行ったところ、透過率の増大により表示画像の視認性が悪くなったが、正面方向の表示画像は非常に明るくなった。しかしながら、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けると明るさは低下し、さらには表示画像の色が変化した。特に赤色表示が不鮮明であった。
【0081】
[比較例3]
本発明における光反射フィルムを用いることなく、実施例1で用いた2枚のガラス板の間に、中間膜としてイソブチレン樹脂(BASF社製:オパノールB10)を100℃の溶融状態で挟み込み、合わせガラスの一方の端において樹脂層の厚さを約100μm、合わせガラスの他方の端において当該樹脂層の厚さを約400μmになるように成形して室温で冷却することにより、厚さ方向の断面が楔型である擬似的な楔型中間膜を挟持した合わせガラスを作製した。この1/4波長板を含んでいない合わせガラスを、樹脂層の厚さが薄い方(約100μm)を下向にして、
図6の機能性ガラス18の代わりに配置し、当該合わせガラスに入射する光をS偏光とする以外は実施例4と同様の作製法により、HUDを作製した。これを実施例4と同様の方法により裸眼にて観察したところ、観察位置によっては、ゴースト現象が低減する場所があるものの、観察位置をわずかに変えるだけでゴースト現象が現われてしまい、表示画像の視認性の評価にバラツキが生じた。さらに、この表示画像を市販の偏光サングラス(吸収軸が地面と水平方向)をかけて観察したところ、表示画像はほとんど見えなくなり、HUDとしての機能を有してはいなかった。
【0082】
実施例1〜6と比較例1とを比較すると、比較例1は特定の偏光に対する反射特性がないために、投射光が偏光であっても通常光の反射率相当の明るさにしかならず、投影画像も暗くなってしまう。一方、実施例1〜6の場合は、特定の偏光に対する反射が大きいために、偏光となった投射光のみが通常光の反射率よりも高い反射率で反射するために、明るく鮮明な投影画像を見ることができる。また、実施例1では
図11からも分かるように、見る位置を正面から傾けていくと、赤色領域の透過率が上昇するために、投影画像の色味が変化してしまうが、さらに光反射層PRL−4が積層された実施例2〜6では
図12、14、16からも明らかなように、見る位置を傾けても、透過率に変化はなく、正面方向と同様の投影画像を見ることができる。また、実施例3〜6では、比較例3との対比からも明らかなように、1/4波長板を用いることにより、投影画像は明るく、しかもゴースト現象を軽減し、さらには偏光サングラスをかけても表示画像が鮮明に見えているため、さらに投影画像の視認性が向上していることが分かる。特に、実施例5、6においては、偏光サングラスをかけた状態でのゴースト現象がさらに改善されており、極めて良好な視認性を得ることができていることが分かる。
【0083】
さらには、比較例2において、高い反射率を有する光反射層を用いると、透過率が低下するために自動車のフロントガラスには適さない。また、各光反射層の半値幅が狭いため、正面方向で明るくても、傾けることで光源の波長と反射波長とがずれることで、明るい表示画像を得ることが出来なくなってしまう。一方、実施例1〜6の場合は、透過率は合わせガラス時においても自動車用フロントガラスの透過率規制値以上であり、さらには、各光反射層の半値幅が広いため、正面方向であっても、観察位置を傾けた場合でも明るい表示画像を見ることができる。特に実施例2〜6のように、傾斜に伴う波長シフトをPRL−4が補うことにより、正面方向であっても、観察位置を傾けた場合でも、明るい表示画像を色変化することなしに見ることができる。