(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアゾ化合物は、上記式(1)で表される。上記式(1)において、R
1〜R
4は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、Xは置換基を有するアミノ基、置換基を有するベンゾイルアミノ基、置換基を有するフェニルアミノ基、置換基を有するフェニルアゾ基、又は置換基を有するナフトトリアゾール基を示し、mは3又は4を示し、nは1又は2を示し、pは1、2、又は3を示す。
【0015】
以下、式(1)の化合物につき説明するが、以下の置換基等において、炭素数1〜5は「低級」と称す。
また、以下において、「置換基」は水素原子を含むが、便宜上「置換基」として説明する。
上記式(1)中の構造である下記式(7)は、mは3又は4、nは1又は2のいずれかの整数を示し、mは3が好ましく、nは1が好ましく、特にmが3で且つnが1が好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基の置換位置は2−、4−位のいずれかが好ましく、特に4位が好ましい。スルホ基の置換位置は2−、4−、7−位のいずれか一か所または2か所がより好ましく、より好ましくは2−位、4−位、2,7−位であり、特に好ましくは2−位である。下記式(7)のベンゾイルアミノ基の式(7)中のナフチル基への置換位置は6−、7−位が好ましく、特に好ましくは、6−位である。下記式(7)のベンゾイルアミノ基中の置換基R
1、R
2は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示すが、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、スルホ基であり、又、スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシであり、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であり、さらに好ましくは3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基である。特に好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、3−スルホプロポキシ基である。置換位置として好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、2−位と6−位の組合せ、2−位と5−位の組合せ、3−位と5−位の組合せが好ましく、特に好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、下記式(7)で表される2−位と5−位の組合せである。なお、前記において、2−位のみ、5−位のみとは、2−位または5−位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを示す。
【0016】
【化7】
(式中、R
1、R
2、m、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
【0017】
Xは置換基を有するベンゾイルアミノ基、置換基を有するフェニルアミノ基、置換基を有するフェニルアゾ基、又は置換基を有するナフトトリアゾール基を示すが、Xが置換基を有するベンゾイルアミノ基、置換基を有するフェニルアミノ基、又は置換基を有するフェニルアゾ基の場合、その置換基としては水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基又は置換アミノ基が好ましく、置換基を有するナフトトリアゾール基の場合、その置換基はスルホ基が好ましい。
【0018】
式(1)において、Xとしては、下記式(2)〜(5)の構造が好ましい。
【化8】
(式中、R
5及びR
6は各々独立に水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基又は置換アミノ基を示す。)
【0019】
【化9】
(式中、R
7は水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を示す。)
【0020】
【化10】
(式中、oは1又は2を示す。)
【0021】
【化11】
(式中、R
8〜R
10は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、又は置換アミノ基を示す。)
【0022】
Xが置換基を有するフェニルアミノ基である場合、その置換基は水素原子、メチル基、メトキシ基、アミノ基、置換アミノ基、又はスルホ基が好ましく、置換位置としては特に限定しないが、少なくとも1つの置換基がアミノ基に対してp−位であることが好ましい。
【0023】
Xが置換基を有するベンゾイルアミノ基である場合、その置換基は水素原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、水素原子、アミノ基であることが特に好ましい。置換位置としては特に限定はしないが、p−位であることが好ましい。
【0024】
Xが置換基を有するフェニルアゾ基である場合、その置換基は、ヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、メチル基、メトキシ基、カルボキシ基、カルボキシが好ましく、特にヒドロキシ基であることが好ましい。
【0025】
R
3及びR
4は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示すが、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、スルホ基であり、又、スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシであり、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であり、さらに好ましくは3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基である。特に好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、3−スルホプロポキシ基である。pが2又は3のとき、各々のR
3及び各々のR
4が独立して選択される。置換位置として好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、2−位と6−位の組合せ、2−位と5−位の組合せ、3−位と5−位の組合せが好ましく、特に好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、下記式(6)で表される2−位と5−位の組合せである。なお、前記において、2−位のみ、5−位のみとは、2−位または5−位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを示す。
【0026】
【化12】
(式中、m、n、p、R
1〜R
4、Xは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
【0027】
次に、本発明で使用する上記式(1)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。尚、式中のスルホ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基は遊離酸の形で表す。
【0100】
上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩は、特許文献3、非特許文献1に記載されるような通常のスルホ基を有するアルコキシ化、アゾ染料の製法に従い、中間体の合成、ジアゾ化、カップリングを行うことにより容易に製造できる。
具体的な製造方法としては、下記式(A)で示されるようなアミノベンゾイルアミノナフトールスルホン酸類を特許文献3、pp11と同様の製法によりスルホアルキル化して得られる中間体である下記式(B)のアミノベンゾイルアミノ−スルホアルコキシナフタレンスルホン酸類をジアゾ化し、下記式(C)のアニリン類と一次カップリングさせ、下記式(D)で示されるモノアゾアミノ化合物が得られる。
【0101】
【化85】
(式中、n、R
1及びR
2は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0102】
【化86】
(式中、n、m、R
1及びR
2は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0103】
【化87】
(式中、R
3及びR
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0104】
【化88】
(式中、m、n、R
1〜R
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0105】
pが1である上記式(1)のアゾ化合物を得るためには、次いで、このモノアゾアミノ化合物(D)をジアゾ化し、下記式(E)のナフトール類と二次カップリングさせることにより上記式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0106】
【化89】
(式中、Xは上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
【0107】
pが2である上記式(1)のアゾ化合物を得るためには、モノアゾアミノ化合物(D)をジアゾ化し、下記式(F)のアニリン類と二次カップリングさせ、下記式(G)で示されるジスアゾアミノ化合物が得られる。
【0108】
【化90】
(式中、R
3及びR
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0109】
【化91】
(式中、m、n、R
1〜R
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0110】
このジスアゾアミノ化合物(G)をジアゾ化し、上記式(E)のナフトール類と三次カップリングさせることにより上記式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0111】
pが3である上記式(1)のアゾ化合物を得るためには、上記式(G)で示されるジスアゾアミノ化合物をジアゾ化し、下記式(H)のアニリン類と三次カップリングさせ、下記式(I)で示されるトリスアゾアミノ化合物が得られる。
【0112】
【化92】
(式中、R
3及びR
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0113】
【化93】
(式中、m、n、R
1〜R
4は上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。)
【0114】
このトリスアゾアミノ化合物(I)をジアゾ化し、上記式(E)で表されるナフトール類と四次カップリングさせることにより上記式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0115】
上記反応において、ジアゾ化工程はジアゾ成分の塩酸、硫酸などの鉱酸水溶液又はけん濁液に亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を混合するという順法によるか、あるいはジアゾ成分の中性もしくは弱アルカリ性の水溶液に亜硝酸塩を加えておき、これと鉱酸を混合するという逆法によって行われる。ジアゾ化の温度は、−10〜40℃が適当である。また、アニリン類とのカップリング工程は塩酸、酢酸などの酸性水溶液と上記各ジアゾ液を混合し、温度が−10〜40℃でpH2〜7の酸性条件で行われる。
【0116】
カップリングして得られたモノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、及びトリスアゾ化合物はそのままあるいは酸析や塩析により析出させ濾過して取り出すか、溶液又はけん濁液のまま次の工程へ進むこともできる。ジアゾニウム塩が難溶性でけん濁液となっている場合は濾過し、プレスケーキとして次のカップリング工程で使うこともできる。
【0117】
一次、二次、又は三次カップリングで用いられるR
3及びR
4の置換基を有するアニリン類において、スルホ基を有するアルコキシ基を有するアニリン類の具体的な製造方法としては、フェノール類を特許文献3、pp35で示される製法によりスルホアルキル化及び還元によりスルホアルコキシアニリン類を得られ、カップリング工程で使うことができる。
【0118】
モノ、ジス、又はトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、式(E)で表されるナフトール類との二次、三次、又は四次カップリング反応は、温度が−10〜40℃でpH7〜10の中性からアルカリ性条件で行われる。反応終了後、塩析により析出させ濾過して取り出す。また精製が必要な場合には、塩析を繰り返すか又は有機溶媒を使用して水中から析出させればよい。精製に使用する有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等の水溶性有機溶媒があげられる。
【0119】
尚、本発明において上記式(1)で表されるアゾ化合物は遊離酸として用いられるほか、アゾ化合物の塩を用いることができる。そのような塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の有機塩が挙げられる。一般的にはナトリウム塩が用いられる。
【0120】
上記式(1)で表される水溶性染料を合成するための出発原料であるアミノベンゾイルアミノ-スルホアルコキシナフタレンスルホン酸類の置換基は、具体的には、ナフタレン側にはスルホ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、置換基を有するアミノベンゾイル基、が挙げられる。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシが好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端にあることが好ましい。ここで、低級アルコキシ基とは、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基を示し、スルホ基を有する低級アルコキシ基においては、3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基のいずれかであることが好ましい。置換基を有するアミノベンゾイル基の置換基には、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示すが、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、スルホ基であり、又、スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシであり、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であり、さらに好ましくは3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基である。特に好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、3−スルホプロポキシ基である。置換位置として好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、2−位と6−位の組合せ、2−位と5−位の組合せ、3−位と5−位の組合せが好ましく、特に好ましくは、2−位のみ、5−位のみ、上記式(7)で表されるベンゾイル側の2−位と5−位の組合せである。なお、前記において、2−位のみ、5−位のみとは、2−位または5−位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを示す。上記式(B)で示されるアミノベンゾイルアミノ-スルホアルコキシナフタレンスルホン酸類としては、
7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、3−(4−アミノベンゾイルアミノ)−5−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、3−(4−アミノベンゾイルアミノ)−5−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−3−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−1−スルホン酸、6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−3−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−1−スルホン酸、6−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−[4−アミノ−2−メチル−5−(3−スルホプロポキシ)ベンゾイルアミノ]−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、3−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−5−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、3−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−5−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、3−(4−アミノ−3−メチルベンゾイルアミノ)−5−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、6−(4−アミノ−2,5−ジメチルベンゾイルアミノ)−3−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−1−スルホン酸、6−(4−アミノ−3−メトキシベンゾイルアミノ)−3−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−1−スルホン酸等が挙げられる。
【0121】
一次、二次、又は三次カップリング成分である、置換基(R
3及びR
4)を有するアニリン類における置換基としては、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示すが、好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3−スルホプロポキシ基である。これらの置換基は1つ又は2つ結合してもよい。その結合位置は、アミノ基に対して、2−位、3−位、及び2−位と5−位、3−位と5−位、又は2−位と6−位であるが、3−位及び2−位と5−位が好ましい。スルホン基を有する低級アルコキシル基を有するアニリン類としては、3−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(2−アミノフェノキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)ブタン−1−スルホン酸等が挙げられる。それ以外のアニリン類としては、例えばアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン又は3,5−ジメトキシアニリン等が挙げられる。これらのアニリン類はアミノ基が保護されていてもよい。保護基としては、例えばそのω−メタンスルホン基が挙げられる。pが2のとき、一次カップリングに使用するアニリン類と二次に使用するアニリン類は同じであっても異なっていてもよい。pが3のとき、一次カップリングに使用するアニリン類と二次及び/又は三次カップリングに使用するアニリン類は同じであっても異なっていてもよい。
【0122】
二次、三次、又は四次カップリング成分であるXを有するナフトール類におけるXとしては、置換基を有するフェニルアミノ基、置換基を有するベンゾイルアミノ基、置換基を有するフェニルアゾ基、又は置換基を有するナフトトリアゾール基であり、その置換基はそれぞれ水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基又は置換アミノ基が好ましい。
【0123】
Xが置換基を有するフェニルアミノ基の場合、式(2)に示される置換基(R
5、R
6)を有するフェニルアミノ基であることが好ましい。置換基(R
5、R
6)は各々独立に水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基又は置換アミノ基を示すが、水素原子、メチル基、メトキシ基又はアミノ基であることがより好ましく、少なくとも1つの置換基がアミノ基に対してp−位にあることがより好ましい。例えば、フェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−メトキシフェニルアミノ基、4−アミノフェニルアミノ基、4−アミノ−2−スルホフェニルアミノ基、4−アミノ−3−スルホフェニルアミノ基、4−スルホメチルアミノフェニルアミノ基又は4−カルボキシエチルアミノフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
Xが置換基を有するベンゾイルアミノ基の場合、式(3)に示される置換基(R
7)を有するベンゾイルアミノ基が好ましい。置換基(R
7)は水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を示すが、水素原子、アミノ基、置換アミノ基であることが好ましく、置換位置としてはp−位であることがより好ましい。置換基を有するベンゾイルアミノ基としては例えば、ベンゾイルアミノ基、4−アミノベンゾイルアミノ基、4−ヒドロキシベンゾイルアミノ基又は4−カルボキシエチルアミノベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0125】
Xが置換基を有するナフトトリアゾール基の場合、式(4)に示されるスルホン基を有するナフトトリアゾール基が好ましい。oは1又は2を示すが、2であることが好ましく、例えば、6,8−ジスルホナフトトリアゾール基、7,9−ジスルホナフトトリアゾール基、7−スルホナフトトリアゾール基又は5−スルホナフトトリアゾール基等が挙げられる。
【0126】
Xが置換基を有するフェニルアゾ基の場合、式(5)に示される置換基(R
8〜R
10)を有するフェニルアゾ基が好ましい。置換基(R
8〜R
10)は、各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、又は置換アミノ基を示すが、1置換であることが好ましく、置換基としてはヒドロキシ基、アミノ基、又は置換アミノ基であることがより好ましい。置換基を有するフェニルアゾ基としては例えば、2−メチルフェニルアゾ基、3−メチルフェニルアゾ基、2,5−ジメチルフェニルアゾ基、3−メトキシフェニルアゾ基、2−メトキシ−5−メチルフェニルアゾ基、2,5−ジメトキシフェニルアゾ基、4−アミノフェニルアゾ基、4−ヒドロキシフェニルアゾ基又は4−カルボキシエチルアミノフェニルアゾ基等が挙げられるが、4−アミノフェニルアゾ基、4−ヒドロキシフェニルアゾ基、又は4−カルボキシエチルアミノフェニルアゾ基であることが好ましい。
【0127】
また、本発明の染料系偏光膜又は染料系偏光板には、上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩が単独又は複数併用で使用される他、必要に応じて他の有機染料を一種以上併用してもよい。併合する有機染料に特に制限はないが、本発明のアゾ化合物もしくはその塩の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する染料であって二色性の高いものが好ましい。例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ71、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59および特許文献1〜7に記載された染料等が代表例として挙げられるが、目的に応じて特許文献1〜7に記載されているような偏光板用に開発された染料を用いることがより好ましい。これらの色素は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0128】
必要に応じて、他の有機染料を併用する場合、目的とする偏光膜が、中性色の偏光膜、液晶プロジェクター用カラー偏光膜、その他のカラー偏光膜により、それぞれ配合する染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、上記式(1)のアゾ化合物又はその塩の質量を基準として、前記の有機染料の少なくとも一種以上の合計で0.1〜10質量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0129】
式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を、必要に応じて他の染料と共に偏光膜基材(例えば、高分子フィルム)に公知の方法で含有させ配向させる、液晶と共に混合させる、もしくは塗工方法により配向させることにより、各種の色、または中性色を有する偏光膜を製造することが出来る。得られた偏光板は、保護膜を付けて、偏光板として、必要に応じて保護層又はAR(反射防止)層及び支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、カーナビゲーション及び屋内外の計測器や表示器等、レンズやメガネに使用される。
【0130】
本発明の染料系偏光膜に使用する偏光膜基材(高分子フィルム)は、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体からなるフィルムが良く、具体例としてはポリビニルアルコール又はその誘導体、及びこれらのいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸などで変性したもの等があげられる。なかでも、ポリビニルアルコール又はその誘導体からなるフィルムが、染料の吸着性および配向性の点から、好適に用いられる。基材の厚さは通常30〜100μm、好ましくは50〜80μm程度である。
【0131】
このような偏光膜基材(高分子フィルム)に、上記式(1)のアゾ化合物又はその塩を含有せしめるにあたっては、通常、高分子フィルムを染色する方法が採用される。染色は、例えば次のように行われる。まず、本発明のアゾ化合物又はその塩、及び必要によりこれ以外の染料を水に溶解して染浴を調製する。染浴中の染料濃度は特に制限されないが、通常は0.001〜10質量%程度の範囲から選択される。また、必要により染色助剤を用いてもよく、例えば、芒硝を0.1〜10質量%程度の濃度で用いるのが好適である。このようにして調製した染浴に高分子フィルムを1〜10分間浸漬し、染色を行う。染色温度は、好ましくは40〜80℃程度である。
【0132】
上記式(1)のアゾ化合物又はその塩の配向は、上記のようにして染色された高分子フィルムを延伸することによって行われる。延伸する方法としては、例えば湿式法、乾式法など、公知のいずれの方法を用いてもよい。高分子フィルムの延伸は、場合により、染色の前に行ってもよい。この場合には、染色の時点で水溶性染料の配向が行われる。水溶性染料を含有・配向せしめた高分子フィルムは、必要に応じて公知の方法によりホウ酸処理などの後処理が施される。このような後処理は、偏光膜の光線透過率および偏光度を向上させる目的で行われる。ホウ酸処理の条件は、用いる高分子フィルムの種類や用いる染料の種類によって異なるが、一般的にはホウ酸水溶液のホウ酸濃度を0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲とし、処理は30〜80℃、好ましくは40〜75℃の温度範囲で、0.5〜10分間浸漬して行われる。更に必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理を併せて行ってもよい。
【0133】
このようにして得られた本発明の染料系偏光膜は、その片面又は両面に、光学的透明性および機械的強度に優れる透明保護膜を貼合して、偏光板とすることができる。保護膜を形成する材料としては、例えば、セルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルムのほか、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が用いられる。好ましくはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムやシクロオレフィン系フィルムが用いられる。保護膜の厚さは通常40〜200μmである。
偏光膜と保護膜を貼り合わせるのに用いうる接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルーイソシアネート系接着剤などが挙げられ、ポリビニルアルコール系接着剤が好適である。
【0134】
本発明の染料系偏光板の表面には、さらに透明な保護層を設けてもよい。保護層としては、例えばアクリル系やポリシロキサン系のハードコート層やウレタン系の保護層等があげられる。また、単板光透過率をより向上させるために、この保護層の上にAR層を設けることが好ましい。AR層は、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着又はスパッタリング処理によって形成することができ、またフッ素系物質を薄く塗布することにより形成することができる。なお、本発明の染料系偏光板は、位相差板を貼付した楕円偏光板として使用することも出来る。
【0135】
このように構成した本発明の染料系偏光板は中性色を有し、可視光領域の波長領域において直交位の色もれがなく、偏光性能に優れ、さらに高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こさず、可視光領域における直交位での光もれが少ないという特徴を有する。
【0136】
本発明における車載用途用ニュートラルグレー偏光板は、二色性分子として、上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を、必要に応じて更に前記の他の有機染料と共に含有するものである。また、本発明の液晶プロジェクター用カラー偏光板に使用される偏光膜も、前記の本発明の染料系偏光膜の製造法の箇所で記載した方法で製造され、さらに保護膜を付け偏光板とし、必要に応じて保護層又はAR層及び支持体等を設け、車載用途用ニュートラルグレー偏光板として用いられる。
【0137】
液晶プロジェクター用カラー偏光板としては、該偏光板の必要波長域(A.超高圧水銀ランプを用いた場合;青色チャンネル用420〜500nm、緑色チャンネル500〜580nm、赤色チャンネル600〜680nm、B.3原色LEDランプを用いた場合のピーク波長;青色チャンネル用430〜450nm、緑色チャンネル520〜535nm、赤色チャンネル620〜635nm)における、単板平均光透過率が39%以上、直交位の平均光透過率が0.4%以下で、より好ましくは該偏光板の必要波長域における単板平均光透過率が41%以上、直交位の平均光透過率が0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。さらに好ましくは、該偏光板の必要波長域における単板平均光透過率が42%以上、直交位の平均光透過率が0.1%以下である。本発明の液晶プロジェクター用カラー偏光板は上記のように明るさと優れた偏光性能を有するものである。
【0138】
なお、単板平均光透過率は、AR層及び透明ガラス板等の支持体の設けていない一枚の偏光板(以下単に偏光板と言うときは同様な意味で使用する)に自然光を入射したときの特定波長領域における光線透過率の平均値である。直交位の平均光透過率は、配向方向を直交位に配した二枚の偏光板に自然光を入射したときの特定波長領域における光線透過率の平均値である。
【0139】
本発明の車載用途用ニュートラルグレー偏光板は、偏光膜と保護膜からなる偏光板に、前記AR層を設け、AR層付き偏光板としたものが好ましく、さらに透明樹脂などの支持体に貼付したAR層及び支持体付き偏光板はより好ましい。
【0140】
本発明の車載用途用ニュートラルグレー偏光板は、通常支持体付偏光板として使用される。支持体は偏光板を貼付するため、平面部を有しているものが好ましく、また光学用途であるため、透明基板が好ましい。透明基板としては、大きく分けて無機基板と有機基板があり、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶基板、サファイヤ基板、スピネル基板等の無機基板や、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー等の有機基板が挙げられるが、有機基板が好ましい。透明基板の厚さや大きさは所望のサイズでよい。また、透明基板付き偏光板には、単板光透過率をより向上させるために、その支持体面又は偏光板面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
【0141】
車載用途用支持体付カラー偏光板を製造するには、例えば支持体平面部に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に本発明の染料系偏光板を貼付すればよい。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。尚、この偏光板を楕円偏光板として使用する場合、位相差板側を支持体側に貼付するのが通常であるが、偏光板側を透明基板に貼付してもよい。
【0142】
即ち、本発明の染料系偏光板を用いた車載用途用液晶ディスプレイでは、液晶セルの入射側又は出射側のいずれか一方もしくは双方に本発明の染料系偏光板が配置される。該偏光板は液晶セルに接触していても、接触していなくてもよいが、耐久性の観点からすると接触していないほうが好ましい。出射側において、偏光板が液晶セルに接触している場合、液晶セルを支持体とした本発明の染料系偏光板を使用することができる。偏光板が液晶セルに接触していない場合、液晶セル以外の支持体を使用した本発明の染料系偏光板を使用することが好ましい。また、耐久性の観点からすると、液晶セルの入射側又は出射側のいずれにも本発明の染料系偏光板が配置されることが好ましく、さらに本発明の染料系偏光板の偏光板面を液晶セル側に、支持体面を光源側に配置することが好ましい。なお、液晶セルの入射側とは、光源側のことであり、反対側を出射側という。
【0143】
本発明の染料系偏光板を用いた車載用途用液晶ディスプレイでは、使用する液晶セルは、例えばアクティブマトリクス型で、電極及びTFTが形成された透明基板と対向電極が形成された透明基板との間に液晶を封入して形成されるものが好ましい。冷陰極管ランプ又は白色LED等の光源から放射された光は、ニュートラルグレー偏光板を通過し、ついで液晶セル、カラーフィルター、さらにニュートラルグレー偏光板を通過し表示画面上に投影される。
【0144】
このように構成した車載用途用ニュートラルグレー偏光板は、偏光性能に優れ、さらに社内の高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こさないという特徴を有する。
【実施例】
【0145】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。例中にある%および部は、特にことわらないかぎり質量基準である。
【0146】
(実施例1)
6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸39.8部を水400部に加え、次に無水酢酸11.3部を加え、30〜50℃で3時間撹拌した。さらプロパンスルトンを12.7部加え、炭酸ナトリウムによりpH7〜10を維持しながら70〜90℃で4時間反応させた。そこへ、35%塩酸15.6部を加え、40〜80℃で2時間撹拌し、10〜20℃に放冷後、ろ過し、下記式(80)で示されるアミノベンゾイルアミノ−スルホプロポキシナフタレンスルホン酸48.1部を得た。
【0147】
【化94】
6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸48.1部を水500部に加え、冷却し10℃以下で、35%塩酸31.3部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、5〜10℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。そこへ、希塩酸水に溶解した3−メチルアニリン12.1部を加え、10〜30℃で撹拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに撹拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(81)で示されるモノアゾアミノ化合物49.0部を得た。
【0148】
【化95】
得られたモノアゾアミノ化合物49.0部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、10〜30℃で35%塩酸25.0部を、次に亜硝酸ナトリウム5.5部を加え、20〜30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。一方7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸28.7部を水50部に加え、炭酸ナトリウムで弱アルカリ性として溶解し、この液に先に得られたトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物をpH8〜10に保って注入し、撹拌して、カップリング反応を完結させた。塩化ナトリウムで塩析し、濾過して上記式(8)で示されるジスアゾ化合物38.7部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は516nmであった。
【0149】
(実施例2)
6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸39.8部を7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸39.8部に変更した以外は、実施例1の第一工程と同様にして下記式(82)で示されるアミノベンゾイルアミノ−スルホプロポキシナフタレンスルホン酸48.1部を得た。
【0150】
【化96】
6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸48.1部を7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸48.1部に変更し、3−メチルアニリン12.1部を2,5−ジメチルアニリン12.1部に変更した以外は、実施例1の第二工程と同様にして下記式(83)で示されるモノアゾアミノ化合物49.0部を得た。
【0151】
【化97】
得られたモノアゾアミノ化合物49.0部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、10〜30℃で35%塩酸25.0部を、次に亜硝酸ナトリウム5.5部を加え、20〜30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。そこへ、希塩酸水に溶解した2,5−ジメチルアニリン9.7部を加え、20〜30℃で撹拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに撹拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(84)で示されるジスアゾアミノ化合物41.7部を得た。
【0152】
【化98】
得られたジスアゾアミノ化合物41.7部を水250部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、20〜30℃で35%塩酸17.5部を、次に亜硝酸ナトリウム3.9部加え、20〜30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。一方7−フェニルアミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸17.7部を水50部に加え、炭酸ナトリウムで弱アルカリ性として溶解し、この液に先に得られたトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物をpH8〜10に保って注入し、撹拌して、カップリング反応を完結させた。塩化ナトリウムで塩析し、濾過して上記式(32)で示されるトリスアゾ化合物30.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は564nmであった。
【0153】
(実施例3)
実施例2の三次カップラーを7−フェニルアミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸17.7部から7−(4−アミノ−3−スルホフェニルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸23.0部に変更した以外は、実施例2と同様にして上記式(33)で示されるトリスアゾ化合物32.7部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は575nmであった。
【0154】
(実施例4)
実施例2の第一工程の出発原料を7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸から6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸に変更した以外は、実施例2の第一工程と同様にして6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸48.1部を得た。
【0155】
第二工程以降において、上記式(82)で示されるアミノベンゾイルアミノ−スルホプロポキシナフタレンスルホン酸48.1部から6−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸48.1部に変更し、一次カップラーを2,5−ジメチルアニリン12.1部から3−メチルアニリン10.7部に変更し、二次カップラーを2,5−メチルアニリン9.7部から3−メチルアニリン6.0部に変更し、三次カップラーを7−フェニルアミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸17.7部から7−(4−アミノベンゾイルアミノ)−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸20.1部に変更した以外は、実施例2と同様にして上記式(34)で示されるトリスアゾ化合物30.4部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は528nmであった。
【0156】
(実施例5)
実施例2の第一工程と同様にして上記式(82)で示されるアミノベンゾイルアミノ-スルホプロポキシナフタレンスルホン酸48.1部を得た。
【0157】
2,5−ジメチルアニリン12.1部を2−スルホプロポキシ−5−メチルアニリン24.5部に変更した以外は、実施例2の第二工程と同様にして下記式(85)で示されるモノアゾアミノ化合物58.9部を得た。
【0158】
【化99】
上記式(83)のモノアゾアミノ化合物49.0部を上記式(85)のモノアゾアミノ化合物58.9部に変更した以外は、実施例2の第三工程と同様にして下記式(86)で示されるジスアゾアミノ化合物48.6部を得た。
【0159】
【化100】
得られたジスアゾアミノ化合物48.6部を水250部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、20〜30℃で35%塩酸17.5部を、次に亜硝酸ナトリウム3.9部加え、20〜30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。そこへ希塩酸水に溶解した2,5−ジメチルアニリン6.8部を加え、20〜30℃で撹拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3.5とし、さらに撹拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(87)で示されるトリスアゾアミノ化合物33.6部を得た。
【0160】
【化101】
得られたトリスアゾアミノ化合物33.6部を水200部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、20〜30℃で35%塩酸10.5部を、次に亜硝酸ナトリウム2.3部加え、20〜30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。一方7−フェニルアミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸10.6部を水50部に加え、炭酸ナトリウムで弱アルカリ性として溶解し、この液に先に得られたトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物をpH8〜10に保って注入し、撹拌して、カップリング反応を完結させた。塩化ナトリウムで塩析し、濾過して上記式(56)で示されるテトラキスアゾ化合物22.3部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は575nmであった。
【0161】
(実施例6)
実施例1で得られた上記式(8)の化合物を0.03%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。
得られた偏光膜の極大吸収波長は531nmであり、偏光率は99.9%であり、高い偏光率を有していた。
なお、試験方法を以下に記す。
【0162】
偏光膜の極大吸収波長の測定及び偏光率の算出は、偏光入射時の平行透過率、ならびに直交透過率を分光光度計(日立製作所製 U−4100)を用いて測定し、算出した。
ここで平行透過率(Ky)とは、絶対偏光子の吸収軸と偏光膜の吸収軸が、平行時の透過率であり、直交透過率(Kz)とは、絶対偏光子の吸収軸と偏光膜の吸収軸が、直交時の透過率を示す。
各波長の平行透過率及び直交透過率は、380乃至780nmにおいて、1nm間隔で測定した。それぞれ測定した値を用いて、下記式(i)より各波長の偏光率を算出し、380乃至780nmにおいて最も高い時の偏光率と、その極大吸収波長(nm)を得た。
【0163】
【数1】
【0164】
(実施例7、8、9、及び10)
上記式(8)の化合物と同様に、実施例2、3、4、及び5に記載のアゾ化合物を用いて、実施例6と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の極大吸収波長及び偏光率を表1に示す。表1の通り、これらの化合物を用いて作成した偏光膜は、いずれも高い偏光率を有していた。
【表1】
【0165】
(実施例11)
画像の質を表す一つの指標として、白表示と黒表示での輝度の差を示すコントラストがあり、実施例1で得られた化合物を原料として実施例6で得られた偏光膜の510nm〜560nm間の平均コントラストを表2に示す。ここで510nm〜560nm間の平均コントラストとは、510nm〜560nm間のそれぞれ各波長ごとの平行透過率と直交透過率を測定し、それぞれ平均平行透過率と平均直交透過率を算出する。平均平行透過率は、510nm〜560nm間の平均平行透過率(Ave.
510−560nm Ky)=510nm〜560nm間の各波長ごとのKyの和/測定点数、平均直交透過率は、510nm〜560nm間の平均直行透過率(Ave.
510−560nm Kz)=510nm〜560nm間の各波長ごとのKzの和/測定点数、によりそれぞれ算出する。その平均平行透過率と平均直交透過率の比(510nm〜560nm間の平均コントラスト=510nm〜560nm間の平均平行透過率(Ave.
510−560nm Ky)/510nm〜560nm間の平均直行透過率(Ave.
510−560nm Kz))を示し、この値が大きいほど510nm〜560nm間の偏光板の偏光性能が優れているということを表す。すなわちニュートラルグレー偏光板において、ある特定の波長範囲の偏光性能が優れていることを意味する。表1に示した通り、実施例1の化合物を用いて作成した偏光膜は高いコントラストを有していた。
【0166】
(比較例1)
実施例1の化合物に代えて、特許文献4の実施例2と同様に合成した化合物(4)を用いて、本発明の実施例6と同様に偏光膜を作成し、実施例11と同様に510nm〜560nm間の平均コントラストを算出した。
表1に示した通り、本発明の化合物は、比較例1に対して高いコントラストを示し、偏光性能が優れていた。
【0167】
(比較例2)
実施例1の化合物に代えて、特許文献5の段落[0077]に記載された方法と同様に合成した化合物(I−3)を用いて、本発明の実施例6と同様に偏光膜を作成し、実施例11と同様に510nm〜560nm間の平均コントラストを算出した。
表1に示した通り、本発明の化合物は、比較例2に対して高いコントラストを示し、偏光性能に優れていた。
【0168】
【表2】
【0169】
(実施例12及び13)
実施例11と同様に、実施例2で得られた化合物を原料として実施例7で得られた偏光膜の560nm〜600nm間の平均コントラスト(実施例12)及び実施例3で得られた化合物を原料として実施例8で得られた偏光膜の560nm〜600nm間の平均コントラスト(実施例13)を表3に示す。
【0170】
(比較例3)
実施例2の化合物に代えて、特許文献4の実施例2と同様に合成した化合物(4)を用いて、本発明の実施例6と同様に偏光膜を作成し、実施例12及び13と同様に560nm〜600nm間の平均コントラストを算出した。
表3に示した通り、本発明の化合物はいずれも、比較例3に対して高いコントラストを示し、偏光性能が優れていた。
【0171】
(比較例4)
実施例2の化合物に代えて、特許文献5の段落[0077]に記載された方法と同様に合成した化合物(I−3)を用いて、本発明の実施例6と同様に偏光膜を作成し、実施例12及び13と同様に560nm〜600nm間の平均コントラストを算出した。
表3に示した通り、本発明の化合物はいずれも、比較例4に対して高いコントラストを示し、偏光性能に優れていた。
【0172】
【表3】
【0173】
(実施例14)
実施例11と同様に、実施例5で得られた化合物を原料として実施例10で得られた偏光膜の550nm〜600nm間の平均コントラストを表2に示す。
【0174】
(比較例5)
実施例5の化合物に代えて、特許文献4の実施例2と同様に合成した化合物(4)を用いて、本発明の実施例10と同様に偏光膜を作成し、実施例14と同様に550nm〜600nm間の平均コントラストを算出した。
表4に示した通り、本発明の化合物は、比較例5に対して高いコントラストを示し、偏光性能が優れていた。
【0175】
(比較例6)
実施例5の化合物に代えて、特許文献5の段落[0077]に記載された方法と同様に合成した化合物(I−3)を用いて、本発明の実施例10と同様に偏光膜を作成し、実施例14と同様に550nm〜600nm間の平均コントラストを算出した。
表4に示した通り、本発明の化合物は、比較例6に対して高いコントラストを示し、偏光性能に優れていた。
【0176】
【表4】
【0177】
(実施例15)
「実施例1で得られた上記式(8)の化合物を0.03%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液」を「実施例1で得られた上記式(8)の化合物を0.2%、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39を0.07%、シー・アイ・ダイレクト・ブルー67を0.02%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液に変更した以外は実施例6と同様にして偏光膜を作成した。得られた偏光膜の極大吸収波長は555nmであり、380〜600nmにおける単板平均透過率は42%、直交位の平均光透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光膜の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム;富士写真フィルム社製;商品名TD−80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR支持体付きの本発明の染料系偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。本実施例の偏光板は、高い偏光率を有し、かつ高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。また長時間暴露に対する耐光性も優れていた。
【0178】
(実施例16)
「実施例1で得られた上記式(8)の化合物を0.03%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液」を「実施例2で得られた上記式(32)の化合物を0.2%、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39を0.07%、シー・アイ・ダイレクト・レッド81を0.02%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液」に変更した以外は実施例6と同様にして偏光膜を作成した。得られた偏光膜の極大吸収波長は555nmであり、380〜600nmにおける単板平均透過率は42%、直交位の平均光透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光膜の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム;富士写真フィルム社製;商品名TD−80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR支持体付きの本発明の染料系偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。本実施例の偏光板は、高い偏光率を有し、かつ高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。また長時間暴露に対する耐光性も優れていた。
【0179】
(実施例17)
「実施例1で得られた上記式(8)の化合物を0.03%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液」を「実施例5で得られた上記式(56)の化合物を0.2%、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39を0.07%、シー・アイ・ダイレクト・レッド81を0.02%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液」に変更した以外は実施例6と同様にして偏光膜を作成した。得られた偏光膜の極大吸収波長は555nmであり、380〜600nmにおける単板平均透過率は42%、直交位の平均光透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光膜の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム;富士写真フィルム社製;商品名TD−80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR支持体付きの本発明の染料系偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。本実施例の偏光板は、高い偏光率を有し、かつ高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。また長時間暴露に対する耐光性も優れていた。