(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617103
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】多孔性材料から形成された、または多孔性材料でコーティングされた歯内治療用器具
(51)【国際特許分類】
A61C 5/40 20170101AFI20191125BHJP
A61C 3/02 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C3/02 Z
【請求項の数】26
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-532516(P2016-532516)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2017-500088(P2017-500088A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014066780
(87)【国際公開番号】WO2015108621
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月15日
【審判番号】不服2018-6661(P2018-6661/J1)
【審判請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】590004464
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・ショットン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ダン・アモン
【合議体】
【審判長】
林 茂樹
【審判官】
関谷 一夫
【審判官】
沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0093944(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0185170(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0219927(US,A1)
【文献】
特表2003−501136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
A61C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯根管を清浄化/成形するための歯内治療用器具であって:
多孔性材料で構成された細長い軸を含み、該細長い軸は、
近位端部分と
遠位端と、
外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有し、該加工部分は、近位端部分から遠位端へ延び、中間部分および遠位端部分を含み、該中間部分は、開口部および格子型の構造体を画成する少なくとも2つの螺旋状の切れ刃を含み、該中間部分は中空であり、少なくとも2つの切れ刃の間に延びる内部支持体をさらに含み、
該多孔性材料は、20%〜65%の範囲の多孔度を有し、かつ該テーパ形の加工部分の切れ刃および/または内部支持体は、50ミクロン〜600ミクロンの範囲の厚さを有する、前記歯内治療用器具。
【請求項2】
多孔性材料は、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性金属である、請求項1に記載の歯内治療用器具。
【請求項3】
回転軸と交わる断面の質量中心(重心)が回転軸に位置するように中心に定められた回転軸を有する、請求項1または2に記載の歯内治療用器具。
【請求項4】
質量中心(重心)が回転軸に位置しないような回転軸を有する、請求項1または2に記載の歯内治療用器具。
【請求項5】
加工部分の遠位端部分の外面は複数の縦溝を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項6】
加工部分の外面には縦溝がない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項7】
多孔性材料でコーティングされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項8】
コーティングされる多孔性材料は、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される、請求項7に記載の歯内治療用器具。
【請求項9】
歯根管を清浄化/成形するための歯内治療用器具であって:
近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、近位端部分から遠位端へ延び、中間部分および遠位端部分を含み、該中間部分は、開口部および格子型の構造体を画成する少なくとも2つの螺旋状の切れ刃を含み、該中間部分は中空であり、少なくとも2つの切れ刃の間に延びる内部支持体をさらに含み;
軸の加工部分の外面は、複数の少なくとも2つの縦溝、および幾何学的な断面を有し、該器具が多孔性材料でコーティングされており、
該多孔性材料は、20%〜65%の範囲の多孔度を有し、かつ該テーパ形の加工部分の切れ刃および/または内部支持体は、50ミクロン〜600ミクロンの範囲の厚さを有する、前記歯内治療用器具。
【請求項10】
多孔性材料は、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性金属である、請求項9に記載の歯内治療用器具。
【請求項11】
回転軸と交わる断面において質量中心が回転軸に位置するように中心に置かれた回転軸をさらに含む、請求項9または10に記載の歯内治療用器具。
【請求項12】
質量中心が回転軸のまわりに位置しないような回転軸をさらに含む、請求項9または10に記載の歯内治療用器具。
【請求項13】
回転可能な歯内治療用器具である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項14】
往復運動する歯内治療用器具である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項15】
多孔性材料は、高温、低温および/もしくはひずみによって処理される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項16】
多孔性材料は20%〜65%の範囲の多孔度を有する、請求項9〜15のいずれか1項に記載の歯内治療用器具。
【請求項17】
歯内治療用器具を形成する方法であって:
多孔性材料を提供する工程と;
歯内治療用器具を形成するための多孔性材料の成形工程であって、歯内治療用器具は、近位端部分と、遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有し、加工部分は、近位端部分から遠位端へ延び、中間部分および遠位端部分を含み、該中間部分は、開口部および格子型の構造体を画成する少なくとも2つの螺旋状の切れ刃を含み、該中間部分は中空であり、少なくとも2つの切れ刃の間に延びる内部支持体をさらに含む、工程と
を含み、
該多孔性材料は、20%〜65%の範囲の多孔度を有し、かつ該テーパ形の加工部分の切れ刃および/または内部支持体は、50ミクロン〜600ミクロンの範囲の厚さを有する、前記方法。
【請求項18】
多孔性材料は、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性金属である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
成形工程は、研削工程、付加製造工程、3次元印刷工程、エッチング工程およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
加工部分の遠位端部分は複数の縦溝を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
複数の縦溝は連続的な螺旋形の縦溝である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
加工部分には縦溝がない、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
外面の少なくとも一部を多孔性コーティングでコーティングする工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
多孔性コーティングは、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性金属である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
成形工程は、ひずみの下で多孔性材料を加工して歯内治療用器具を形成することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
成形された歯内治療用器具を熱処理および/もしくは焼き入れする工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、すべての目的のために参照によって本明細書に組み入れる、2013年11月21日に出願した米国仮特許出願第61/906,688号の利益および優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、歯内治療用器具(endodontic instrument)に関し、より詳細には、多孔性材料から形成された器具および/またはコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
歯内治療用器具は、人の歯の歯根管系(root canal system)としても知られる歯内治療用窩洞空間(「ECS」:endodontic cavity space)を清浄化および拡張するために用いることができる。未処置の歯根管は、通常は歯根(root of tooth)の中央部分を通って延びる狭い経路である。健康な歯ではその空間を占める組織である歯髄(dental pulp)が死ぬことまたはその壊死によって、ECSの清浄化および拡張が必要になる場合がある。この組織は、虫歯(tooth decay)、歯の深い修復、完全もしくは不完全な歯骨折(dental fracture)、外傷、または通常は加齢現象に伴う組織の石灰化(calcification)および虚血(ischemia)による自然壊死を含む、複数の理由によって衰える可能性がある。壊死性または壊疽性の虫垂(appendix)と同様に、緊急ではない場合も、後で感染症もしくは歯性膿瘍(dental abscess)、敗血症(septicemia)などが発生するため、この組織の完全な除去が重要である。
【0004】
人の歯の歯根管系は、狭く、湾曲し、石灰化していることがしばしばであり、通り抜ける、または清浄化することがきわめて難しい場合がある。実際には、現在利用可能な従来型の歯内治療用または歯根管用の器具は、歯髄の完全な除去およびECSの効果的な拡張には不適切であることがしばしばである。さらに、それらは通常は破損しやすく、さらに歯を破壊する。壊れた器具を取り除くことは、不可能でないとしても通常は困難であり、しばしば歯の除去が必要になる。ECSの自然な解剖学的構造を直截的に穿孔または変更することによって起こる歯の損傷が、歯根管の欠損または歯の喪失につながる可能性もある。
【0005】
未処置の歯根管は、通常は狭く、相対的に平行な経路として始まる。侵入門戸(portal of entry)またはオリフィス、および排泄門戸(portal of exit)または孔の直径は、相対的に等しい。歯管の完全な清浄化および充填に対応し、さらなる感染症を予防するためには、通常は歯管を準備しなければならない。歯内治療用窩洞形成(「ECP」:endodontic cavity preparation)は、一般に、孔を比較的小さく残しながら、歯管のオリフィスおよび本体を漸次拡張することを含む。結果として、通常は連続的な円錐形の処置部(preparation)が得られる。
【0006】
一般に、前述のように、歯内治療用器具を用いて歯内治療用窩洞空間を準備する。歯内治療用器具は、手用器具(hand instrument)およびエンジン駆動器具(engine driven instrument)を含むことができる。エンジン駆動器具は、回転式器具である必要がない場合もある。従来型の手用器具とエンジン駆動の回転式器具の両方の組み合わせは、通常は首尾よく安全にECPを実施するために必要とされる。
【0007】
歯内治療用器具は、先端(tip)およびシャンク(shank)を有する軸を含む。歯内治療用器具は、軸のまわりで全体的に螺旋形になった溝も含む。
図1および
図1の歯内治療用器具の断面図である
図2に示すように、本明細書では溝を縦溝(flute)と呼ぶ。
【0008】
図1〜2を参照すると、全体として10で示す歯内治療用器具(たとえば、歯内治療用ファイル(file))は軸12を有し、軸12は、その長部の少なくとも一部15に沿ってテーパが付けられ、先端14で終わる。シャンクのテーパ部分より上の部分は、実質的に円筒形であるように示されている。軸12のテーパ部分15に螺旋形の縦溝(helical flute)16が形成され、螺旋形の切れ刃(cutting edge)20を画成する。
【0009】
縦溝は全体的に、軸のまわりで螺旋形になった螺旋構造体(螺旋体)の両側の間隔である。本明細書では、直線または曲線のように見える縦溝の底部をスプライン22と呼ぶ。本明細書では、スプラインの切削中に切削される面と接触する部分を半径方向領域(radial land)24と呼ぶ。一般的に、右手用の切れ刃を有する器具は、シャンクから先端14を見たとき、時計回りに回転させると材料を切削または除去するものである。本明細書では、回転方向は、シャンクから器具の先端を見たものとして述べる。右手用の歯内治療用器具の場合、切削の回転方向は時計回りである。左手用の切れ刃を有する器具は、反時計回りに回転させると材料を切削または除去するものである。この場合、切削の回転方向は反時計回りである。器具は、往復運動すること、または前後に動き、右手用もしくは左手用の縦溝を有することも可能である。一般的に、往復運動する歯内治療用器具は、一方の方向において他方より大きく動くようになっており、歯内治療用器具のきき手は、より大きい回転角度に関連付けられる。
【0010】
歯内治療用器具は、材料を切削または除去することが可能な部分である加工部分(working portion)26を含む。加工部分は、通常は器具の先端14と縦溝の近位端部分28との間にある、軸に沿った部分である。本明細書では加工部分を切削部分とも呼び、加工する長さを切削長さまたは加工長さと呼ぶ。
【0011】
手用器具は、通常は様々なサイズの金属ワイヤブランクから製造される。こうしたワイヤの冶金的特性は、一般に広範囲の物理特性をもたらすように設計される。その場合、こうしたワイヤは、通常は特定の形状および形式をもたらすようにねじられる、または切削される。手用器具の例は、K型、H型およびR型の手用器具を含む。バーブ付きブローチ(barbed broach)は、テーパおよびノッチが付けられた軟鉄のワイヤから、その表面に沿ってバーブまたは目の粗いやすり(rasp)を形成するように製造される。こうした器具は、一般に歯根管系からの歯髄組織または破片の肉眼での除去(gross removal)に用いられる。もう1つのR型ファイルは、細長いファイル(rat−tail file)である。
【0012】
現在使用されているK型器具は、リーマおよびKファイルを含む。Kファイルは、一般に炭素鋼、ステンレス鋼、より最近ではニッケル−チタンの合金として入手可能である。K型器具を製造するには、通常は様々な直径の丸いワイヤを3面または4面の角錐形のブランクに研削し、次いで適切な形状になるように回転させる、またはねじる。こうした形状は、米国規格協会(「ANSI」)および国際標準化機構(「ISO」)によって規定および管理されている。リーマとファイルの製造プロセスは同様である;しかしながら、ファイルの方が、通常は単位長さあたりの縦溝の数がリーマより多いことを除く。リーマは、回転方向においてのみ使用されるが、ファイルは、回転または押し引きする形で使用することができる。3面または三角形のブランクから作られたファイルは、4面のブランクから作られたファイルより断面積が小さい。したがって、こうした器具は、通常はより可撓性が高く、破損する可能性が小さい。それらはまた、より大きいクリアランス角度を示し、創面切除(debridement)の間、より効率的である。したがって、三角形のファイルは、一般に手用器具の使用により望ましいと考えられる。
【0013】
H型ファイルは、通常は縦溝をテーパ形の丸い金属ブランクに研削し、一連の交差する錐面を形成することによって製造される。H型ファイルは、通常は引張り方向(すなわち、引張り行程)でしか切削することができない。H型ファイルは、主に正の切削角を有するため、きわめて効率的な切削器具となり得る。
【0014】
手用器具は通常、器具の加工部分の長さが16mmであることを規定する、ANSIおよびISOのガイドラインに従って製造される。ANSIおよびISOはさらに、器具の第1の直径またはD
1が先端またはD
0から1mmであることを規定している。他のANSIおよびISOの規格は:器具が加工部分の長さに沿って1mmあたり0.02mmの標準規格のテーパを有すること;先端が直線断面において75度以下の角錐形状を維持すること;ならびに手用器具が、21、25および31mmの長さで利用可能であることを求めている。
【0015】
前述の手用器具に加えて、通常はモータ駆動である回転式器具がある。G型ドリルは、通常は炭素鋼またはステンレス鋼として入手可能である。通常のように、示されるG型ドリル300は、長いシャンクに取り付けられた短い火炎形の頭部を含む。この例では、縦溝はU字形のスプラインを有する。器具は、負のすくい角(rake−angle)を有する切れ刃を含む。一般に、すくい角は、切削工具の前縁と切削される面に対する垂直面との間の角度である。すくい角について、以下にさらに詳しく記載する。火炎形の頭部は、穿孔を防止する非切削面を含む。器具は側面切削用の器具としてのみ使用することができる。器具は比較的剛性があり、したがって、通常は湾曲した空間、たとえばECSで使用することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、改善された歯内治療用器具および/または歯内治療用器具を製造する方法を提供することによって、従来の歯内治療用器具を改善しようとするものである。一態様において、本発明は、歯根管を清浄化/成形するための歯内治療用器具であって:多孔性材料で構成された細長い軸を含み、細長い軸は、近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有し、加工部分は、近位端部分から遠位端へ延びる歯内治療用器具を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、歯根管を清浄化/成形するための歯内治療用器具であって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、近位端部分から遠位端へ延び;軸の加工部分の外面が、複数の少なくとも2つの縦溝、および器具が多孔性金属でコーティングされた幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具を企図している。
【0018】
他の態様において、本発明は、歯内治療用器具を形成する方法であって:約15%〜約90%の範囲の多孔度を有する多孔性材料を提供する工程と;多孔性材料を成形して歯内治療用器具を形成する工程であって、歯内治療用器具が、近位端部分と、遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有し、加工部分は、近位端部分から遠位端へ延びる、工程とを含む方法を企図している。
【0019】
さらに別の態様において、本発明の態様のいずれも、以下の特徴の1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができ、その特徴は:多孔性材料が、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性金属である;断面の質量中心(center of mass)(重心(centroid))が回転軸に位置するように、器具が中心に定められた回転軸を有する;質量中心(重心)が回転軸に位置しないように、器具が非対称である回転軸を有する;加工部分の外面が複数の縦溝を含む;加工部分の外面に縦溝がない;器具が多孔性材料でコーティングされる;コーティングされる多孔性材料が、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される;歯内治療用器具が回転可能な歯内治療用器具である;歯内治療用器具が往復運動する歯内治療用器具である;多孔性材料が、高温、低温および/もしくはひずみによって処理される;成形工程が、研削工程、付加製造(additive manufacturing)工程、3次元印刷工程、エッチング工程およびそれらの組み合わせからなる群から選択される;加工部分が複数の縦溝を含む;複数の縦溝が連続的な螺旋形の縦溝である;加工部分に縦溝がない;外面の少なくとも一部を多孔性コーティングでコーティングする工程をさらに含む;多孔性コーティングが、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料およびステンレス鋼ベースの材料からなる群から選択される多孔性材料である;成形工程が、ひずみの下で多孔性材料を加工して歯内治療用器具を形成することを含む;成形された歯内治療用器具を熱処理および/もしくは焼き入れする工程をさらに含む;またはそれらの任意の組み合わせである。
【0020】
本明細書に図示および記載するように、本発明と共に他のものも存在するため、これまでに参照した態様および例は非限定的なものであることを理解されたい。たとえば、本明細書に記載し、図面などで説明するように、前述の本発明の態様または特徴の任意のものを組み合わせて、他の独自の構成を形成することが可能である。
【0021】
本発明の新規な特徴については、添付の特許請求の範囲において詳細に記載される。しかしながら、本発明自体は、本発明のさらなる目的および利点と共に構成および操作方法の両方に関して、添付図面と併せて取り上げる以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1に示す歯内治療用器具の断面斜視図である。
【
図3】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による多孔性の開始構造体(starting structure)の上面図である。
【
図4】
図3に示す少なくとも1つの例示的な実施形態のA−Aを横断して得られる断面の拡大斜視図である。
【
図5】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による、
図3の多孔性の開始事前構造体(starting pre−structure)から成形された歯内治療用器具の上面図である。
【
図6】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による歯内治療用器具の斜視図である。
【
図7】
図6に示す少なくとも1つの例示的な実施形態の拡大斜視図である。
【
図8】本発明の少なくとももう1つの例示的な実施形態による歯内治療用器具の斜視図である。
【
図9】
図8に示す少なくとももう1つの例示的な実施形態の拡大斜視図である。
【
図10】本発明の少なくともさらにもう1つの例示的な実施形態による開始材料の斜視図である。
【
図11】
図10に示す少なくともさらにもう1つの例示的な実施形態の拡大斜視図である。
【
図12】本発明の少なくも2つの他の例示的な実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
歯内治療用器具の場合、治療の標準(standard for care)は、モータ駆動の回転式ファイルまたは往復運動するモータ駆動のファイルである。歯内治療用器具(たとえば、歯内治療用ファイル)を設計するときには、多くの制限を克服する必要がある。特に、RCT中の歯内治療用器具の尖端(apex)から歯内治療用器具の歯冠側(coronal aspect)への生物学的な破片の動きである。破片の輸送が制限される場合、歯内治療用器具は、効率が下がる、つかえた状態になる、棚状の突起になる(ledge)、または折れる可能性がある。生物学的な破片が効率的に輸送されない場合、それによってスメア層(smear layer)の量が増える可能性がある。スメア層は、RCTの間に歯内治療用器具と歯管の壁との間の力によって、歯内治療用器具を介して象牙質の壁に「コーティングされる」生物学的な破片である。スメア層は除去が難しい。スメア層が適切に除去されない場合、それがRCTの失敗/RCTの再処置につながる可能性がある。現在の回転式歯内治療用器具は、主にニチノールで構成される。典型的な歯内治療用ファイルは、RCTの間に生体組織をこすって除去する螺旋状のフィーチャを有する。設計およびファイルの効率は、螺旋が接触する表面積によって制限される。ニチノールは比較的丈夫であるが、サイクル疲労、可撓性またはピークトルクのような歯内治療用ファイルの特性につながる設計および材料特性に関して制限があり、それらは改善される可能性がある。最後に、歯内治療用ファイルが歯管の中で折れ、除去することができないとき、歯根の尖端は生体適合性ニチノールを含むようになるが、尖端はまわりの歯根領域に対して開いた状態のままになる可能性がある。
【0024】
本発明は、たとえば、ニチノールまたはニチノール誘導体(NiTiCr、NiTiCo、NiTiFeもしくはNiTiX、ここで、Xは第3以降の元素である)、銅ベースの材料(たとえば、CuZnAlもしくはCuAlNi)、ステンレス鋼および他のチタン誘導体など、少なくとも1つの多孔性金属で構成された歯内治療用器具を開示する。歯内治療用器具は、歯内治療用器具の体積全体を多孔性ニチノールで構成することができる。歯内治療用器具を、同様のもしくは様々な深さの複数の開口部を含む構造/設計を有する多孔性材料または非多孔性材料で形成することができ、複数の開口部の1つまたはそれ以上が、多孔性材料または非多孔性材料である1つまたはそれ以上の第2の材料を含むことができることを理解されたい。含まれるとき、全体的に対称な歯内治療用器具の設計物の回転軸に沿った重量配分を変え、歯内治療用器具の回転または往復運動の間、全体的に対称な器具の断面に関して、質量中心(重心)が回転軸に位置しないようにすることができると考えられる。さらに、歯内治療用器具に関して、加工部分全体に沿ってまたは加工部分全体を通して可変的に、半径方向および/または長手方向の所定の位置/場所における歯内治療用器具の可撓性を変えるように、歯内治療用器具内の加工部分全体にわたって、またはその1つもしくはそれ以上の部分の範囲内で、複数の多孔性材料、非多孔性材料または両方の材料の組み合わせを含むことにより可撓性を最適化することができる。
【0025】
歯内治療用器具は、螺旋状の設計を有すること、および/または螺旋状の設計を伴わない円錐形とすること、および/または可変のテーパを有することが可能である。多孔性ニチノールは、歯内治療用器具の表面上の薄いフィルムコーティングとすることができる。歯内治療用器具は、螺旋を含むこと、および/または螺旋を伴わない円錐形の設計とすること、および/または可変のテーパを有することが可能である。
【0026】
歯内治療用器具は、ミクロン単位の厚さの多孔性ニチノールのコーティングで構成することもできる。多孔性材料(たとえば、ニチノール材料)は、(たとえば、歯内治療用ファイルの表面上の)少なくとも約0.05ミクロン(たとえば、0.25ミクロン)、典型的には少なくとも約0.5ミクロン、好ましくは少なくとも約1ミクロンの厚さのフィルムコーティングとすることができる。さらに、多孔性材料は、約500ミクロン未満(たとえば、250ミクロン)、典型的には約100ミクロン未満、好ましくは約50ミクロン未満、より好ましくは15ミクロン未満の厚さのフィルムコーティングとすることが可能であることを理解されたい。たとえば、多孔性材料は、約0.05ミクロン〜約500ミクロン(たとえば、約0.25ミクロン〜約250ミクロン)、典型的には約0.5ミクロン〜約100ミクロン、好ましくは約1ミクロン〜約50ミクロンの厚さのフィルムコーティングの範囲で提供することができる。
【0027】
当技術分野で知られている様々な手順を用いて、コーティングされた多孔体を、多孔性の開始構造体および/または歯内治療用器具に形成および/または適用することが可能であることを理解されたい。多孔性の開始構造体および/または歯内治療用器具に多孔性コーティングを形成および/または適用する手順の例は、それだけに限らないが、医療用のエポキシ/接着剤、従来型の焼結(CS:conventional sintering)、レーザ溶接、レーザ溶融、選択的レーザ溶融(SLM:selective laser melting)、レーザ焼結、選択的レーザ焼結(SLS:selective laser sintering)、自己伝搬高温合成(SHS:self−propagating high−temperature synthesis)、放電焼結(SPS:spark plasma sintering)、ホットアイソスタティック成形(HIP:hot isostatic pressing)、カプセルフリーHIP(CF−HIP:capsule free HIP)、レーザマイクロ穴パンチ(laser micro−holes punch)などを含むことができる。
【0028】
望ましくは、多孔性材料(たとえば、ニチノール)は、少なくとも約5%、典型的には少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約35%(たとえば、少なくとも約45%)の多孔度を有する。さらに、多孔性材料は、約95%未満、典型的には約90%未満、好ましくは85%未満、より好ましくは約80%未満(たとえば、約75%未満)の多孔度を有することができる。たとえば、多孔性材料は、約5%〜約95%、典型的には約15%〜約90%、好ましくは約25%〜約85%、より好ましくは約35%〜約80%(たとえば、約45%〜約75%)の範囲の多孔度を有することができる。異なる形で表現すると、多孔性材料は、約20%〜約65%の間、より好ましくは25%〜55%の間の金属の表面積または割合を有することが好ましい。
【0029】
歯内治療用器具は、螺旋を含むこと、および/または螺旋を伴わない円錐形の設計とすること、および/または可変のテーパを有することが可能である。多孔性ニチノールを含む、または多孔性ニチノールで構成される歯内治療用器具の断面は、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、星形の設計とすること、または凹面を含むことができる。断面は、質量中心に回転軸を有すること、または質量中心に対して中心を外れた回転軸を有することができる。
【0030】
これまでに開示した本発明によって、歯内治療用器具の設計およびRCTに関連する問題の多くを解決することができる。まず、従来の螺旋状の設計物と比べて多孔性の面を提供する面の量はずっと多く、結果として、切削の効率が高まる。表面積または歯管の壁との接触が増加することによって、スメア層の形成も低減される。RCTの間に材料が孔の中に蓄積する可能性があるため、多孔性の歯内治療用器具(たとえば、ファイル)または表面をコーティングした多孔性の歯内治療用器具は、材料の生物学的な輸送への依存をより小さくしなければならない。多孔性ニチノールの器具が歯管の中でつかえた状態になり、取り出すことができなくなった場合、多孔性ニチノールは、ヒドロキシアパタイトまたは骨を形成することが知られている。これにより、歯根管の尖端領域が封止される。
【0031】
最後に、多孔性ニチノールで構成された、または多孔性ニチノールでコーティングされた歯内治療用ファイルは、従来のニチノールから同様に設計された歯内治療用ファイルより質量が小さくなる。これにより、サイクル疲労および可撓性が改善される。
【0032】
本発明は、多孔性の開始(未加工)構造体から歯内治療用器具を形成することを企図している。
図3に示す一具体例では、多孔性ワイヤ30が提供される。望ましくは、ワイヤ30は、細長い円筒形の構造体として成形することができる;しかしながら、他の開始構造体も企図される。
図4〜5に示すように、多孔性の開始構造体は、その周りの様々な位置に提供された1つまたはそれ以上の開口部32を含む。開口部32は、構造体周りの同じ間隔を置いた位置、または可変の間隔を置いた位置に配置することができる。さらに、開口部32は、同じもしくは異なる形状および/またはサイズで提供することが可能であることを理解されたい。望ましくは、多孔性の開始構造体は、全体を通してほぼ均一に分散した開口部32を含むことができるが、それは必要ではない。
図5に示すように、多孔性ワイヤ30から(本明細書に記載される)製造プロセスによって成形された歯内治療用器具40が提供される。この具体例では、開口部32の(たとえば、外面に沿った)縁部は、歯(たとえば、歯根管)を清浄化/成形するための切れ刃34として働く。
【0033】
図6〜7は、ハイブリッド型の歯内治療用器具50を提供する、本発明の別の実施形態の少なくとも1つの例を示している。ハイブリッド型の器具50は、近位端52、近位端部分54、遠位端(たとえば、先端)56、近位端部分54から遠位端56へ延びるテーパ形の加工部分58、および器具の軸57を含むことができる。加工部分58は、中間部分60および遠位端部分62を含む。一具体例において、中間部分60は、開口部66および全体的に格子型の構造体を画成する少なくとも2つの(螺旋状の)切れ刃64を含むことができる。望ましくは、中間部分は実質的に中空であり、少なくとも2つの切れ刃64の間に延びる内部支持体68(
図7)をさらに含む。遠位端部分は、中間部分60から延び、少なくとも2つの螺旋形の縦溝70を含むことができ、縦溝70は、テーパが付いた部分として形成され、少なくとも2つの第2の切れ刃72を画成することができる。第2の切れ刃72は、切れ刃64から延びるようにすること、または切れ刃64とは別個にすることができる。望ましくは、遠位端部分62には実質的に開口部66がなく、それによって、多孔性材料または非多孔性材料の実質的に中実な(切削)部分を形成することができる。
【0034】
切れ刃64および/または内部支持体68は、少なくとも約1ミクロン(たとえば、25ミクロン)、典型的には少なくとも約50ミクロン、好ましくは少なくとも約100ミクロンの幅/厚さを含むことができる(たとえば、直径など)。さらに、切れ刃64および/または内部支持体68は、約1000ミクロン未満(たとえば、800ミクロン)、典型的には約600ミクロン未満、好ましくは約500ミクロン未満、より好ましくは150ミクロン未満とすることが可能であることを理解されたい。たとえば、切れ刃64および/または内部支持体68は、約1ミクロン〜約1000ミクロン(たとえば、約25ミクロン〜約800ミクロン)、典型的には約50ミクロン〜約600ミクロン、好ましくは約100ミクロン〜約500ミクロンの範囲の幅/厚さを含むことができる。
【0035】
図8〜9は、テーパ形の歯内治療用器具50bを提供する、本発明の別の例を示している。この具体例では、中間部分60bの切れ刃64bは、遠位端部分62bへ続き、それを経て先端56bに至る。望ましくは、中間部分と遠位端部分はどちらも実質的に中空であり、全体にわたって開口部66bを有する。切れ刃64bは、器具の軸57bに向かってテーパが付いた加工部分に沿って先端56bまで延びる。先端56bには実質的に開口部がなく、それによって、多孔性材料または非多孔性材料の実質的に中実な(切削)部分を形成することができる。
【0036】
図10〜11は、(全体的に歯内治療用器具40と同様の形状を有する)歯内治療用器具50cを形成するための多孔性(未加工材料)構造体74を提供する、本発明の別の実施形態を示している。一具体例において、多孔性構造体74は、歯内治療用ファイルなどの歯内治療用器具を形成するための多孔性ワイヤとすることができる。多孔性構造体は、多孔性材料および/または非多孔性材料で形成することができる。開口部66cは、任意の様々な幾何学的形状として提供することができ、幾何学的形状は、全体を通して同じもしくは異なるサイズの同じ形状または異なる形状とすることができる。一具体例において、開口部66cは、全体的にハニカム格子型の構造体(たとえば、ハニカム構造体)を画成するように、六角形状で全体的に同じサイズのものとすることができる。66cの1つまたはそれ以上が器具の軸57cに対して(少なくとも部分的または完全に)半径方向に延びることを理解されたい。さらに、多孔性構造体74は、1つまたはそれ以上の内部支持体68cによって隔てられた1つまたはそれ以上の層を含み、それによって、長手方向および/または半径方向の開口部が画成されることを理解されたい。開口部は、含まれる場合には、(半径方向に)整列すること、または層ごとに(長手方向に器具の軸に平行に)オフセットすることが可能である。その後、本明細書に記載される製造プロセスによって、多孔性の(開始)構造体74を成形して歯内治療用器具を形成することが可能であることを理解されたい。
【0037】
図12は、歯内治療用器具50dおよび歯内治療用器具50eを提供する、本発明の別
の実施形態を示している。歯内治療用器具50dおよび50eは、本明細書に記載されるように、多孔性材料から形成すること、および/または多孔性コーティングでコーティングすることができる。歯内治療用器具50dの構造は全体的に対称とし、それによって中央に配置された回転軸57dを有することができ、したがって、第1の断面76d(たとえば、A−A、B−Bおよび/またはC−C)は、全体的に回転軸57dのまわりに位置する質量中心78d(重心)を有するが、これと比べて、歯内治療用器具50eの構造は全体的に非対称とし、それによって、第2の断面76e(たとえば、D−D、E−Eおよび/またはF−F)内で回転軸57eのまわりに位置しない第2の質量中心78e(重心)を有することができることを理解されたい。より詳細には、この第1の幾何学的形状(50d)を対称とし、第2の幾何学的形状(50e)を非対称として、第1の断面76dが先端部よりシャンクの端部に近くなるようにすることができると考えられる。第1の断面は、第2の断面と異なる数の加工面を有することができる。第2の断面76eでは、第2の重心78eを回転軸からオフセットすることができる。第1の幾何学的形状および第2の幾何学的形状は、異なる数の加工面を含むことができる。本体は可撓性があるようにすることができる。本体は十分に可撓性があり、したがって、本体が回転または往復運動するときに本体の先端が決められた位置で拘束されると、本体の第2の断面と交わる部分が、第1の回転角度および第2の回転角度で実質的に等しい量だけ回転軸から離れるように曲がる。第1の回転角度は、第2の回転角度から180°とすることができる。第2の断面76eは、それぞれの回転角度で実質的に等しい量だけ回転軸57eから離れるように曲がることができる。本体の先端が決められた位置で拘束され、本体が回転するとき、本体の傾がない部分(non−swaggering portion)は、実質的に回転軸57d上にあって少なくとも1つの加工面と交わる重心78dを有することができる。少なくとも1つの加工面は、切削用の縦溝を含むことができる。本体の先端は、切削面を有していないことがある。回転軸と交わる断面では、質量中心を回転軸からオフセットすることができる。加工面は、材料の歯管の中で本体を回転または往復運動させるときに材料を除去するように構成することができる。本体の先端を適所に保持し、本体を回転または往復運動させるとき、本体の少なくとも一部が螺旋状の起伏を形成することができる。
【0038】
製造
金属ワイヤが適切なファイルの設計によって研削された、従来のニチノールのファイルにより多孔性の金属ファイルを製造することができる。この場合、多孔性金属ベースのワイヤが研削される。また、従来のニチノールワイヤをエッチングして多孔性材料を形成することも可能である。多孔性ファイルは、たとえば金属の3D印刷などの付加製造技法、または表面コーティングを利用することによって製造することも可能である。
【0039】
多孔性材料、および/または多孔性材料の製造方法の例は、それだけに限らないが、すべての目的のために参照によって本明細書に組み入れる、Porous NiTi for bone implants:A review、(Bansiddhi、Sargeant、StuppおよびDunand)に記載されるものを含むことができる。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、フライス加工(milling)、旋削、研削、レーザ切削、光化学的機械加工などの従来の製造技法を用いる限り困難を有していた、様々な回転式ファイルの設計および/または未加工材料を提供することができる。有利には、3D印刷、光造形法(Rapid Prototyping)などとして知られる付加製造技術および/または周知の付加技術を用いて、こうした困難を実質的に軽減するまたは排除することができる。
【0041】
多孔性の開始構造体および/もしくは歯内治療用器具の製造ならびに/または成形は、周知の形成プロセスによって達成することができる。そうした形成プロセスの例は、それだけに限らないが、3D印刷、付加製造、および金属射出成形を含む。3D印刷および付加製造は、デジタルモデルによる実質的に任意の形状から3次元の固体物を作るプロセスである。3D印刷は、材料の連続層を異なる形状で形成する付加プロセスを用いて達成される。3D印刷は、主にフライス加工、穿孔、研削などの方法による材料の除去に依拠する従来の機械加工技法(サブトラクティブプロセス(substractive process))とは異なるとも考えられる。異なるタイプの付加プロセスがあるが、選択的レーザ溶融、直接金属レーザ焼結、選択的レーザ焼結および熱溶融積層法(fused deposition molding)など、そのいくつかは、層を作製するために材料を溶融または軟化させ、ステレオリソグラフィなどの他のプロセスは、液体材料を硬化させる。
【0042】
3D印刷された回転式ファイルを有することの1つの利点は、解剖学的構造にありながら様々な機能を達成することが可能な製品を作る際の設計の自由を可能にすることにあると考えられる。たとえば、
図6はハイブリッド型の設計を示しているが、歯内治療用器具は、尖端で(apically)歯根管を成形して、洗浄剤(irrigant)が尖端で歯管を完全に清浄化することを可能にし、閉塞のための形状を提供することができ、一方、歯根中央側および歯冠側では、歯内治療用器具を、自然の解剖学的構造に適応することを可能にするために、拡張することおよび折り畳むことが可能である。この設計において、3Dプリンタは、尖端に中実な金属ブランクを、設計物の残りの部分にステントタイプの設計物を印刷することができる。次いで、従来型の研削プロセスを用いて、尖端に従来のファイルの設計を可能にする鋭い縁部および縦溝を作成することができる。
【0043】
3D印刷技術を用いる別の方法は、内部で構造体の支持を可能にすることである。たとえば、
図7には、ステントの設計物の構造を支持する内部ストラットの一例が示されている。構造的に設計物を支持する他の代替形態は、支持を高めることまたは可撓性を高めることを可能にするように、異なるステント片の幅および厚さを変えることである(支持体を厚くすると剛性が高まり、支持体を薄くするとより高い可撓性が提供される)。
【0044】
図8は、テーパ形の歯内治療用器具(たとえば、ステントファイル)を印刷することができる一例を示している。一具体例では、レーザ切削によって管状のステント設計物を成形することができる。管状の設計物を有することによって、設計物に最初にテーパを付けられなくなり、歯管の尖端側に適応するにはより大きく加圧しなければならないため、ステント設計物には尖端でより高い応力が生じる。3D印刷されたテーパ形のステント型設計物を有することにより、直径が小さくなって必要な加圧が小さくなるため、歯内治療用器具が尖端で低減された応力を有することが可能になる。
図9は、こうしたタイプの設計物の拡大図を示しており、切削用の先端を閉じ/接合し、歯内治療用器具が、すべての目的のために参照によって本明細書に組み入れる米国特許第7,713,059号に記載される開放端/中空の先端の設計物に対して、尖端でより高い構造上の支持を有することを可能にすることができる。
【0045】
図10および11は、3D印刷を用いてどのように未加工材料を作成することができるかを示し、また多孔性の面を有するブランクワイヤを有している。その場合、多孔性の未加工材料を、完成した回転式ファイルとして所望される先端およびテーパに研削することができる。このタイプの設計物の利点は、この場合、ファイルがより小さいコア質量(core mass)を有し、それが可撓性およびサイクル疲労耐性を高めることにある。また、粗い表面が提供され、ならびに切削材料用の空間が機能することが可能になる。未加工材料の実施形態のための設計物の代替的なタイプは多数あるが、内部の波形ワイヤ、ランダム空孔のワイヤ、中空のテーパ形ワイヤなどを含むことができる。
【0046】
多くの付加製造技法、およびこうした付加製造技法に用いられる多くの異なるタイプの材料が存在する。好ましくは、こうした設計物は金属材料から製造されるが、技術が発展すると、プラスチックから印刷することも可能になるであろう。直接金属レーザ焼結、電子ビーム溶融などを含む、いくつかのタイプの金属の3D印刷技術が存在する。こうした技術と共に利用可能な材料は:コバルト、クロム、チタン、インコネル、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼などを含む。筆者の知るところでは、ニッケルチタンは、現在のところこうした技術と共に利用できる材料ではないが、こうした技術によって部品を製造する際の論点にはならないと思われる。
【0047】
本発明は以下の組み合わせの1つまたはそれ以上を参照して記述することも可能であることを理解することができる。
【0048】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、複数の少なくとも2つの螺旋体、およびファイルが多孔性金属で構成された幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0049】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、螺旋体を有さず、ファイルが多孔性金属で構成された幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0050】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、複数の少なくとも2つの螺旋体、およびファイルが多孔性金属でコーティングされた幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0051】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、螺旋体を有さず、ファイルが多孔性金属でコーティングされた幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0052】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、複数の少なくとも2つの螺旋体、およびファイルが多孔性金属を形成するようにエッチングされた幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0053】
歯根管を清浄化/成形するための回転可能な歯内治療用ファイルであって:近位端部分と遠位端と、外面および回転軸を有するテーパ形の加工部分とを有する細長い軸を含み、加工部分は、前記近位端部分から前記遠位端へ延び;前記軸の加工部分の外面が、螺旋体を有さず、ファイルが多孔性金属を形成するようにエッチングされた幾何学的な断面を有する、歯内治療用器具。
【0054】
多孔性金属が、ニチノールベースの材料、銅ベースの材料、チタンベースの材料またはステンレス鋼ベースの材料で構成される、歯内治療用ファイル。
【0055】
材料が、高温、低温および/またはひずみによって処理される、歯内治療用ファイル。
【0056】
断面の質量中心(重心)が回転軸に位置するように中心に定められた回転軸を有する、歯内治療用ファイル。
【0057】
質量中心(重心)が回転軸に位置しないように非対称である回転軸を有する、歯内治療用ファイル。
【0058】
研削プロセスによって製造される歯内治療用ファイル。
【0059】
付加製造プロセスによって製造される歯内治療用ファイル。
【0060】
3D印刷などの付加製造プロセスまたはコーティング技法によって製造される歯内治療用ファイル。
【0061】
エッチング製造プロセスによって製造される歯内治療用ファイル。
【0062】
本明細書に記載される本発明は、多くの他の利点を有する。歯内治療用器具は、単一の連続する流路を有することができ、それによって、可能性のある漏れ経路が排除される。固有応力の集中を低減する、または実質的に排除することができ、それによって、振動中、先端および/または遠位端部分を信頼性のあるものにすることが可能になる。先端および/または遠位端部分の構成は、運動面内で超音波振動およびエネルギーを案内および伝達し、それによって洗浄剤に適切な攪拌が与えられる。先端組立体は、使い捨てにすることも可能であり、それによって患者ごとに新しい先端組立体を使用することが必要になり、先端組立体は使用前に確実に滅菌した状態になる。
【0063】
別段明示的に述べられていない限り、(任意の添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)本明細書において開示される各機能を、同じ、等価なまたは類似の目的を有する代替的機能によって置き換えることができる。したがって、別段明示的に述べられていない限り、開示される各機能は、一般的な一連の等価なまたは類似の機能の一例にすぎない。
【0064】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を図示および記載してきたが、そうした実施形態は、例示のためにのみ示されていることが当業者には明らかになるであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には多くの変形、変更および置換が明らかになるであろう。本発明について他に予測される実施形態または使用は、水晶体超音波液化吸引(phacoemulsification)の分野における本発明の使用を含み、本発明のような先端組立体は、多くの利点をもたらすことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ制限されることが意図される。