特許第6617114号(P6617114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6617114関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータを促す、入力装置での力フィードバックの適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617114
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータを促す、入力装置での力フィードバックの適用
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20191125BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A61B34/35
   B25J3/00 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-16583(P2017-16583)
(22)【出願日】2017年2月1日
(62)【分割の表示】特願2014-541317(P2014-541317)の分割
【原出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-80887(P2017-80887A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】13/292,760
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ディオライティ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】リラガン,ポール,イー
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−141580(JP,A)
【文献】 特開2009−039814(JP,A)
【文献】 特表2011−525845(JP,A)
【文献】 特表2009−539573(JP,A)
【文献】 特表2005−515012(JP,A)
【文献】 特表2009−537229(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0040305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30−34/37
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムの作動方法であって、当該作動方法には、
前記ロボットシステムの入力装置からの信号に応答して、前記ロボットシステムに取り付けられた関節器具の姿勢命令を生成するプロセッサが含まれ、
前記プロセッサは、命令された姿勢の第1の方向の投影が仮想障壁の位置を超えるかどうかを判定し、
前記命令された姿勢の前記第1の方向の投影が前記仮想障壁の位置を超えていることを前記プロセッサが判定すると、
前記プロセッサが、仮想的拘束を前記命令された姿勢に適用し、前記仮想障壁の位置に最近接するが該仮想障壁の位置に未だ衝突していないような前記関節器具の少なくとも一部が第1の好適な姿勢に一致するまで、前記関節器具に、前記仮想障壁の位置を越えて移動するような命令をすることを防止することによって修正後の姿勢命令を生成し、
前記プロセッサが、前記関節器具に修正後の命令された姿勢になるように命令し、
前記プロセッサが、前記修正後の命令された姿勢と前記第1の好適な姿勢との間の差を示すように、前記入力装置の複数の自由度について第1力命令を生成し、
前記プロセッサが、第1起動信号に従った前記第1力命令の適用を段階的に入力することによって、前記入力装置の複数の自由度について前記第1力命令を適用するように命令し、
前記プロセッサは、
該プロセッサが前記命令された姿勢と前記修正後の命令された姿勢との間の差を示す変調係数のストリームを生成すること、及び
前記プロセッサが前記第1起動信号を生成するように前記変調係数のストリームをローパスフィルタに通過させること、によって前記第1起動信号を生成する、
作動方法。
【請求項2】
前記プロセッサが前記変調係数のストリームを生成することには、
前記プロセッサが、前記命令された姿勢と前記修正後の命令された姿勢との間の差を決定することと、
前記プロセッサが、前記第1の方向に沿って前記差を投影することと、
前記プロセッサが、前記投影された差が閾値より大きい場合に、現在の変調係数を第1の値に設定し、前記投影された差が前記閾値以下である場合に、現在の変調係数を第2の値に設定することによって、前記投影された差を2進コード化することと、が含まれる、
請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記プロセッサが前記第1力命令を生成することには、
前記プロセッサが、前記第1の好適な姿勢と前記修正後の命令された姿勢と比較して、直交座標位置及び速度誤差を生成することと、
前記プロセッサが、前記第1の方向に沿った成分及び前記関節器具の旋回可能な先端部の軸線の周りの成分を除去することによって、前記直交座標位置及び前記速度誤差を修正することと、
前記プロセッサが、該修正後の直交座標位置及び速度誤差を用いて、6自由度の粘弾性の力命令を生成することと、が含まれる、
請求項1に記載の作動方法。
【請求項4】
前記プロセッサが前記第1起動信号に従った適用を段階的に入力することによって、前記入力装置の複数の自由度について前記第1力命令を適用するように命令することには、前記プロセッサが、前記6自由度の粘弾性の力命令を前記第1起動信号で振幅変調することが含まれる、請求項3に記載の作動方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、第2の好適な姿勢と前記命令された姿勢との間の差の指標となるように、前記入力装置の複数の自由度について第力命令を生成することと、
前記プロセッサが、前記第起動信号に従って前記第力命令の適用を段階的に入力する前に、前記入力装置の複数の自由度について前記第力命令を適用するように命令することと、
前記プロセッサが、起動解除信号に従って前記第力命令の適用を段階的に停止することと、がさらに含まれる、
請求項に記載の作動方法。
【請求項6】
前記第起動信号及び前記起動解除信号は相補的な信号であり、前記起動解除信号が段階的に停止されるときに、前記第起動信号が段階的に入力される、請求項に記載の作動方法。
【請求項7】
ロボットシステムであって、当該システムは、
入力装置と、
関節器具に結合可能な器具マニピュレータと、
プロセッサ、を備えており、
該プロセッサは、
入力装置のオペレータ操作に応答して、前記関節器具の姿勢命令を生成し、
命令された姿勢の第1の方向の投影が仮想障壁の位置を超えるかどうかを判定し、
前記命令された姿勢の前記第1の方向の投影が前記仮想障壁の位置を超えていることを判定すると、
仮想的拘束を前記命令された姿勢に適用し、前記仮想障壁の位置に最近接するが該仮想障壁の位置に未だ衝突していないような前記関節器具の少なくとも一部が第1の好適な姿勢に一致するまで、前記関節器具に、前記仮想障壁の位置を越えて移動するような命令をすることを防止することによって修正後の姿勢命令を生成し、
前記関節器具を修正後の命令された姿勢に移動させるように前記器具マニピュレータに命令し、
前記修正後の命令された姿勢と前記第1の好適な姿勢との間の差を示すように、前記入力装置の複数の自由度について第1力命令を生成し、
第1起動信号に従った前記第1力命令の適用を段階的に入力することにより、前記入力装置の複数の自由度について前記第1力命令の適用を命令する、ように構成され、
前記第1起動信号は、
前記命令された姿勢と前記修正後の命令された姿勢との間の差を示す変調係数のストリームを生成すること、及び
前記第1起動信号を生成するように前記変調係数のストリームをローパスフィルタに通過させること、によって生成される、
システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記命令された姿勢と前記修正後の命令された姿勢との間の差を決定し、前記第1の方向に沿って前記差を投影し、該投影された差が閾値よりも大きい場合に、現在の変調係数を第1の値に設定し、前記投影された差が前記閾値以下である場合に、前記現在の変調係数を第2の値に設定することによって、前記投影された差を2進コード化する、ことにより前記変調係数のストリームを生成するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、第1の好適な姿勢と前記修正後の命令された姿勢とを比較して直交座標位置及び速度誤差を生成し、前記第1の方向に沿った成分及び前記関節器具の旋回可能な先端部の軸線の周りの成分を除去することによって、前記直交座標位置及び前記速度誤差を修正し、該修正後の直交座標位置及び速度誤差を用いて、6自由度の粘弾性の力命令を生成することによって、前記第1力命令を生成するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記6自由度の粘弾性の力命令を前記第1起動信号で振幅変調することによって、前記入力装置の複数の自由度に前記第1力命令を適用するべく命令するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、第2の好適な姿勢と前記命令された姿勢との間の差の指標となるように、前記入力装置の複数の自由度について第力命令を生成し、前記第起動信号に従って前記第力命令の適用を段階的に入力する前に、前記入力装置の複数の自由度について前記第力命令を適用するように命令し、起動解除信号に従って前記第力命令の適用を段階的に停止するようにさらに構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記第起動信号及び前記起動解除信号は相補的な信号であり、前記起動解除信号が段階的に停止されるときに、前記第起動信号が段階的に入力される、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年2月12日に出願された”Medical Robotic System Providing Sensory Feedback Indicating a Difference Between a Commanded State and a Preferred Pose of an Articulated Instrument”という表題の米国特許出願第12/704,669号の一部継続出願であり、この文献は参照することにより本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、2009年11月5日に出願された”Controller Assisted Reconfiguration of an Articulated Instrument During Movement Into and Out of an Entry Guide”という表題の米国特許出願第12/613,328号の一部継続出願であり、この出願は、2009年8月15日に出願された”Smooth Control of an Articulated Instrument Across Areas with Different Work Space Conditions”という表題の米国特許出願第12/541,913号の一部継続出願であり、これらの文献は参照することにより本願に組み込まれる。
【0003】
本発明は、概して医療用ロボットシステムに関し、具体的には関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令を入力装置のオペレータに促すような、入力装置での力フィードバックを適用する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
最小侵襲性外科手術を実施する際に用いられる遠隔手術システム等の医療用ロボットシステムは、従来の切開手術技術に比べて、痛みが少なく、入院期間の短縮が図れ、日常の活動により速く復帰させ、瘢痕を最小限に留め、回復時間を短縮し、そして組織へのより少ない損傷を含むような多くの利点を提供する。その結果、このような医療用ロボットシステムの必要性が強く、且つこの必要性は増大している。
【0005】
このような医療用ロボットシステムの一例としては、カリフォルニア州サニーベールのIntuitive Surgical社から販売されているDA VINCI(登録商標)手術システムがあり、この手術システムは、最小侵襲性ロボット手術システムである。DA VINCI(登録商標)手術システムは、手術部位の撮像装置によって撮影された外科用視覚画像による入力装置の運動に応答して、撮像装置や、外科用器具を関節駆動させるIntuitive Surgical社のENDOWRIST(登録商標)手術システム等の取り付けられた医療装置を移動させるような多数のロボットアームを有している。各医療装置は、最小侵襲性切開部を通して患者に挿入され、手術部位で医療処置を行うように位置付けされる。この切開部は、患者の身体の周りに配置されており、それによって、複数の外科用器具を協働して使用して医療処置を実施することができ、撮像装置は、処置中にそれらロボットアームと衝突することなく、その手術部位を視認することができる。
【0006】
特定の医療処置を行うために、医療装置は、最小侵襲性切開部又は自然な身体開口部等の単一の進入開口部を使用して、患者内に入れて医療処置を実施することが有利である。例えば、まず進入ガイドを挿入して位置付けし、且つこの進入開口を所定の位置に保持させる。関節式カメラ機器や、医療処置を実施するために用いられる複数の関節式外科処置具等の関節器具は、その進入ガイドの先端を超えて延びるように、進入ガイドの基端に挿入される。こうして、進入ガイドは、単一の進入開口で複数の器具を収容しつつ、作業部位に向けてそれら器具を案内するように束ねられた器具を保持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、関節式カメラや処置具の近接によって、このような束ねられたユニットを用いる医療用ロボットシステムで多くの課題が生じる。例えば、カメラ機器は、先端のカメラビューから見えないような基端側関節(例えば、継手)を有しているため、外科医は、カメラを移動させると、つまり利用可能な運動範囲で移動させる際に、このような関節の現在の状態を追跡することができなくなる。また、カメラや処置具の関節部が、カメラの視野の外にある場合に、従ってその撮影した画像を通して外科医には見えない場合に、外科医は、医療処置を実施するために関節器具を遠隔ロボット操作によって移動させる際に、ツール及び/又はカメラ機器のリンク機構を誤って駆動させて互いに衝突させてしまうことがある。いずれかのケースでは、患者の安全性が危険にさらされることがあり、医療処置の成功及び/又は予定通りの完了に、悪影響が及ぶこともある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の1つ又は複数の態様に係る一つの目的は、関節器具の通常操作モードでの好適な姿勢を取らせるような命令をオペレータに促すような医療用ロボットシステムや、このシステムで実施されるような方法を提供することであり、このシステムは、関節器具の通常の動作中に関節器具が命令された移動を行うようにオペレータに付勢力を与えるように機能する。
【0009】
本発明の1つ又は複数の態様の別の目的は、力フィードバックを入力装置に適用して、関節器具の姿勢を好適な姿勢にスムーズに移行させるような命令をするようにその入力装置のオペレータを促すような医療用ロボットシステムや、このシステムで実施されるような方法を提供することである。
【0010】
本発明の1つ又は複数の態様の別の目的は、力フィードバックを入力装置に適用して、関節器具の姿勢が第1の好適な姿勢を取り、次に起動信号に従って第2の好適な姿勢にスムーズに移行させるような命令をするようにその入力装置のオペレータを促すような医療用ロボットシステムや、このシステムで実施されるような方法を提供することである。
【0011】
これら及び追加の目的は、本発明の様々な態様によって達成される。簡潔に述べると、一態様は、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促すための方法であって、当該方法は、入力装置のオペレータ操作に応答して、関節器具に命令された姿勢を取らせるステップと;第1の好適な姿勢と命令された姿勢との間の差の指標となるように、入力装置の複数の自由度について第1力命令を生成するステップと;第1起動信号に従った適用を段階的に入力することによって入力装置の複数の自由度に第1力命令を適用するステップと;を含む。
【0012】
別の態様は、医療用ロボットシステムであって、当該システムは、入力装置と;関節器具と;入力装置のオペレータ操作に応答して、関節器具が命令された姿勢を取り、第1の好適な姿勢と修正後の命令された姿勢との間の差の指標となるように、入力装置の複数の自由度について第1力命令を生成し、第1起動信号に従った適用を段階的に入力するように、入力装置の複数の自由度に第1力命令の適用を命令するように構成された、プロセッサと;を備える。
【0013】
本発明の様々な態様のさらなる目的、特徴及び利点は、添付図面と併せて説明される以下の好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムのブロック図を示す。
図2】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムにおいて、進入ガイドの先端を超えて延びるような複数の関節器具を含む進入ガイドの先端の斜視図を示す。
図3】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムにおいて、進入ガイドの先端を超えて延びるような関節器具の上面図を示す。
図4】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムにおいて、進入ガイドの先端を超えて延びるような関節器具の右側面図を示す。
図5】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような関節器具マニピュレータや関節器具の相互作用する構成要素のブロック図を示す。
図6】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムにおいて、関節器具にオペレータが命令した移動をさせる器具コントローラのブロック図を示す。
図7】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような通常の操作の好適な姿勢において、進入ガイドの先端を超えて延びる関節器具の側面図を示す。
図8】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような進入ガイド内に再び後退するような好適な姿勢において、進入ガイドの先端を超えて延びる関節器具の側面図を示す。
図9】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような、図6の器具コントローラのシミュレートされた器具ブロックのブロック図を示す。
図10】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような、図6の器具コントローラの姿勢データ及び姿勢微調整ブロックのブロック図を示す。
図11】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような、通常動作モード及び後退モードの起動信号を時間の関数として示す。
図12】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような、図10の後退モードの微調整ブロックのブロック図を示す。
図13】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで用いられるような、図10の通常モードの微調整ブロックのブロック図を示す。
図14】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで使用されるような、図12及び図13の力変換ブロックのブロック図を示す。
図15】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法において使用されるような、拘束として仮想障壁を適用することにより関節器具の命令された姿勢を修正する方法のフロー図を示す。
図16】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法において使用されるような、後退モードの起動信号を生成する方法のフロー図を示す。
図17】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法において使用されるような、通常モードの解除信号を生成する方法のフロー図を示す。
図18】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法の第1実施形態のフロー図を示す。
図19】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法の第2実施形態のフロー図を示す。
図20】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法の第3実施形態のフロー図を示す。
図21】本発明の態様を利用する、関節器具に好適な姿勢を取らせるような命令をするように入力装置のオペレータ操作を促す方法の第4実施形態のフロー図を示す。
図22】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムにおいて、関節器具にオペレータが命令した移動をさせる代替的な器具コントローラのブロック図を示す。
図23】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで使用されるような、力が入力コントローラ装置に対して加えられるように、段階的に入力されるような第1微調整力命令を提供する「段階的な入力」微調整ブロックのブロック図を示す。
図24】本発明の態様を利用する医療用ロボットシステムで使用されるような、力が入力コントローラ装置に対して加えられるように、段階的に停止されるような第2微調整力命令を提供する「段階的な停止」微調整ブロックのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、医療用ロボットシステム100のブロック図が示されている。進入ガイド(EG)200は、最小侵襲性切開部又は自然な身体開口部等の進入開口を通じて患者に挿入されるように構成されている。第1の関節式外科用ツール(TOOL1)231や、第2の関節式外科用ツール(TOOL2)241、及び関節式ステレオカメラ(CAM)211等の関節器具が、進入ガイド200の先端を通して挿入され、且つこの先端を超えて延びている。図2に示されるように、カメラ211は、その先端に収められた撮像装置311,312と、(基端で光源に連結される)光ファイバケーブル313とのステレオペアを有している。外科用ツール231,241は、エンドエフェクタ331,341を有する。2つのツール231,241のみが示されているが、進入ガイド200は、患者の作業部位で医療処置を行うために必要とされる追加のツールを案内してもよい。関節器具211,231,241についての更なる詳細が、以下で図3及び図4を参照して説明される。
【0016】
各装置231,241,211,200は、それ自体のマニピュレータやコントローラによって操作され、且つ制御される。具体的には、関節式カメラ機器211は、カメラ機器コントローラ(CTRLC)213によって制御されるカメラマニピュレータ(ECM)212によって操作され、第1の関節式外科用ツール231は、器具コントローラ(CTRL1)233によって制御される第1ツールマニピュレータ(PSM1)232によって操作され、第2の関節式外科用ツール241は、器具コントローラ(CTRL2)243によって制御される第2のツールマニピュレータ(PSM2)242によって操作され、進入ガイド200は、進入ガイドコントローラ(CTRLG)203によって制御される進入ガイドマニピュレータ(EGM)202によって操作される。コントローラ203,233,243,213は、以下で図6を参照して説明するようにマスタ/スレーブ制御システムとしてプロセッサ102に実装されている。
【0017】
各関節器具マニピュレータ232,242,212は、アクチュエータを担持するとともに、それぞれの関節器具に運動を伝達するような機械的な、無菌性インターフェイスを提供するような機械的アセンブリである。各関節器具231,241,211は、そのマニピュレータから運動を受け取り、ケーブル伝達により、その運動を先端関節(例えば、継手)に伝えるような機械的アセンブリである。このような継手は、直動(例えば、直線運動)又は回転(例えば、機械軸線を中心に旋回する)してもよい。さらに、器具は、力を複数の継手に加えて所定の態様で一緒に移動させるような機械式内部拘束(例えば、ケーブル、ギヤ、カム、ベルト等)を有してもよい。機械的に拘束された継手の各セットは、特定の運動軸を有しており、拘束部は、ペアの回転継手(例えば、段付継手)となるように考案することができる。このように、器具は、利用可能なアクチュエータよりも多く継手を有していることに留意されたい。
【0018】
進入ガイドマニピュレータ(EGM)202を使用して、ロボット制御によって、進入開口の内外に進入ガイド200を挿入及び後退させることができる。このマニピュレータを使用して、ロボット制御によって、旋回点(すなわち、遠隔中心(RC)とも称される)の周りの進入ガイド200の長手方向軸線に対してピッチ、ロール及びヨー方向に進入ガイド200を旋回させることができる。セットアップアームを使用して進入ガイド200を保持し且つ位置付けすることによって、その遠隔中心RCは進入開口に位置付けすることができる。
【0019】
2つの入力装置108,109が、外科医による操作のために提供されている。各入力装置108,109は、装置211,231,241,200のうちの1つに選択的に関連付けることができ、それによって、関連付けられた装置は、そのコントローラ及びマニピュレータを介して入力装置によって制御することができる。外科医(又はアシスタント)は、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)上のメニューと相互作用させ、音声認識システムによって認識された音声命令を提供し、タッチパッド等の入力装置を使用してこのような関連付けをシステム100に入力し、入力装置108,109に設けられた特殊目的ボタンとの相互作用させる等の従来の方法でこのような選択を行う。このような関連する機構のいずれかを使用して、選択入力が生成され、プロセッサ102に実装されるマルチプレクサ(MUX)280に提供される。選択入力の値(例えば、1と0との組合せ)が、関連性(すなわち、クロススイッチング)を示すように選択される。
【0020】
例えば、マルチプレクサ280に対する選択入力の第1の値が、「ツール追従モード」において左右の入力装置108,109に配置され、ここで、それら左右の入力装置は、それぞれ第1及び第2の手術用ツール241,231に関連付けられ、それによって、外科医は、進入ガイド200を所定の位置に固定させながら、患者に医療処置を行うことができる。この構成では、マルチプレクサ280は、入力装置108の出力及び入力251,252をツールコントローラ243の入力及び出力260,261にそれぞれ接続し、且つ入力装置109の出力及び入力253,254をツールコントローラ233の入力及び出力268,269にそれぞれ接続するようにクロススイッチを制御する。
【0021】
カメラ211が外科医によって再配置される場合に、左右の入力装置108,109の一方又は両方を、選択入力のための第2の値を使用してカメラ211に関連付けることができ、それによって、外科医は、そのコントローラ213及びマニピュレータ212を介してカメラ211を移動させることができる。同様に、進入ガイド200が外科医によって再配置される場合に、左右の入力装置108,109の一方又は両方を、選択入力のための第3の値を使用して進入ガイド200に関連付けることができ、それによって、外科医は、そのコントローラ203及びマニピュレータ202を介して進入ガイド200を移動させることができる。いずれの場合でも、関連付けが切られた装置は、それぞれのコントローラによって所定の位置に仮固定(soft-lock)される。
【0022】
カメラ211で撮影した画像は、”Camera Referenced Control in a Minimally Invasive Surgical Apparatus”という表題の米国特許第6,671,581号に説明される(この文献は参照として本願に組み込まれる)ように、画像プロセッサ214によって処理され、ディスプレイ画面104に表示される。こうして、外科医は、ディスプレイ画面104上の作業部位の画像を視ながら、医療用ロボットシステム100を使用する外科医は、操作入力装置108,109によって患者に医療処置を行うことができ、関連する外科用ツール231,241の対応する移動を生じさせることができる。
【0023】
プロセッサとして説明されているが、プロセッサ102は、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアの任意の組み合わせによって実際に実装することができることを認識されたい。また、本明細書で説明されるようにその機能は、一つのユニットにより実行される、又は異なるコンポーネント間で分割されてもよい。名機能は、システム全体を通して分散されるハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアの任意の組み合わせによって実装されてもよい。
【0024】
本明細書で説明するような医療用ロボットシステムの一般的な態様の構造及び操作に関する更なる詳細については、例えば、”Aspects of a Control System of a Minimally Invasive Surgical Apparatus”という表題の米国特許第6,493,608号、及び”Minimally Invasive Surgical System”という表題の米国特許出願公開第2008/007,129を参照されたい。これらの文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0025】
図3及び図4には、例として、外向きに延びる関節式カメラ機器211や関節式外科用ツール231,241を含む進入ガイド200の先端の上面図及び右側面図がそれぞれ示されている。関節式カメラ211は、通路321を通じて延びており、関節式外科用ツール231,241は、それぞれ進入ガイド200の通路431,441を通じて延びている。カメラ211は、先端部311と、第1、第2及び第3リンク322,324,326と、第1及び第2継手アセンブリ(単に「継手」としても参照される)323,325と、手首アセンブリ327とを含む。第1継手アセンブリ323は、第1及び第2リンク322,324を連結し、第2継手アセンブリ325は、第2及び第3リンク324,326を連結し、それによって、第1及び第3リンク322,326が互いに平行でありながら、第2リンク324は、第1継手アセンブリ323の周りでピッチ及びヨー方向に旋回する。
【0026】
第1及び第2継手323,325は、第2リンク324が第1継手323の周りでピッチ及び/又はヨー方向に旋回するときに、第3リンク326は相補的な態様で第2継手325の周りを旋回し、それによって、第1及び第3リンク322,326が常に互いに平行な状態に留まるので、「段付継手(joggle joints)」と称される。第1リンク322は、その長手方向軸線の周りでロール方向に回転するだけでなく、通路321を通って出入りする(例えば、作業部位に向けて挿入され作業部位から後退される)ように移動する。手首アセンブリ327は、ピッチ及びヨー方向の角運動能力も有しており、それによってカメラ先端311が、上下方向や、左右方向及びこれらの組み合わせで向き合わせされる。
【0027】
ツール231,241の継手やリンクは、カメラ211の継手やリンクと同様の構造及び動作を有している。具体的には、ツール231は、図5を参照して説明されるようなアクチュエータによって駆動される(エンドエフェクタ331を作動させるための追加アクチュエータを付け加える)ような、(顎部338,339を有する)エンドエフェクタ331と、第1、第2及び第3リンク332,334,336と、第1及び第2継手アセンブリ333,335と、手首アセンブリ337とを含む。同様に、ツール241は、図5を参照して説明されるようなアクチュエータによっても駆動される(エンドエフェクタ341を作動させるための追加のアクチュエータを付け加える)ような、(顎部348,349を有する)エンドエフェクタ341と、第1、第2及び第3リンク342,344,346と、第1及び第2継手アセンブリ343,345と、手首アセンブリ347とを含む。
【0028】
図5には、例えば、(関節式カメラ211や関節式外科用ツール231,241等の)関節器具、及び(カメラマニピュレータ212やツールマニピュレータ232,242等の)対応する器具マニピュレータの相互作用部分の図が示されている。各器具は、(そのエンドエフェクタを含む)器具の移動を生じさせるような多数のアクチュエータ・アセンブリ521〜523,531〜533,570を含んでおり、対応するマニピュレータは、アクチュエータ・アセンブリを作動させるような多数のアクチュエータ501〜503,511〜513,560を含んでいる。
【0029】
また、多数のインターフェイス機構を設けてもよい。例えば、(それぞれ、ピッチ/ヨー方向段付継手及びピッチ/ヨー方向手首のための)ピッチ/ヨー連結機構540,550、及び(それぞれ、ロール方向の器具作動及びエンドエフェクタ作動のための)ギヤ比545,555が、無菌のマニピュレータ/器具インターフェイスに提供されており、マニピュレータ・アクチュエータ空間でコンパクトな拘束を充足するとともに、インタフェイスに亘って正確な動作伝達を維持しながら、器具継手空間の器具継手の必要な動作範囲を達成する。単一のブロック540として示されているが、段付継手アクチュエータ501,502(#1及び#2として区別される)とピッチ/ヨー方向段付継手アセンブリ521,522との間の連結は、無菌インターフェイスの各側に1つずつ(すなわち、インターフェイスのマニピュレータ側に1つとインターフェイスの器具側に1つとを含む)連結機構のペアを含んでもよい。同様に、単一のブロック550として示されているが、手首アクチュエータ512,513(#1と#2として区別される)とピッチ/ヨー方向手首継手アセンブリ532,533との間の連結は、(無菌インターフェイスの両側に1つずつ含む)連結機構のペアを含んでもよい。
【0030】
ピッチ方向段付継手アセンブリ521及びヨー方向段付継手アセンブリ522の両方は、第1、第2、第3リンク(例えば、関節式カメラ211のリンク322,324,326)と、第1及び第2継手(例えば、関節式カメラ211の継手323,325)とを共有する。これらの共有された構成部品に加えて、ピッチ及びヨー方向段付継手アセンブリ521,522は、第1及び第2継手を(段付連結540を介して)ピッチ及びヨー方向段付継手アクチュエータ501,502に連結するような機械的連結も含んでおり、それによって、第2リンクは、第1継手を通過するラインの周りで、第1リンク(例えば、関節式カメラ211のリンク322)の長手方向軸線に対して緯度方向である軸線に沿って制御可能に旋回し、第2リンクは、第1継手を通過するラインの周りで、第1リンクの緯度方向方及び経度方向軸線の両方に直交する軸線に沿って制御可能に旋回する。
【0031】
入力/出力(I/O)アセンブリ523は、第1リンク(例えば、関節式カメラ211のリンク322)を含むとともに、入力/出力(I/O)アクチュエータ503を第1リンクに連結する駆動トレイン(train)を介して相互接続されており、それによって、第1リンクは、I/Oアクチュエータ503の作動によってその経度方向軸線に沿って直線状に制御可能に移動する。ロール方向アセンブリ531は、第1リンクを含んでおり、(モータのロータ等の)ロール方向アクチュエータ511の回転要素を第1のリンクに連結するような1つ以上のギヤ(すなわち、ギヤ比545を有する)を介して相互接続しており、それによって、第1リンクは、ロール方向アクチュエータ511の作動によってその経度方向軸線周りに制御可能に回転される。
【0032】
器具マニピュレータ(例えば、カメラマニピュレータ212)は、手首連結550を介して作動する手首アクチュエータ512,513と、手首アセンブリ(例えば、関節式カメラ211の手首アセンブリ327)のピッチ及びヨー方向継手532,533とを含んでおり、それによって、器具先端(例えば、カメラ先端311)を、手首アセンブリに対して上下方向(すなわち、ピッチ方向)や左右方向(すなわち、ヨー方向)に制御可能に旋回させる。把持アセンブリ570は、エンドエフェクタ(例えば、外科用ツール231のエンドエフェクタ331)を含んでおり、把持アクチュエータ560をこのエンドエフェクタに連結するような1つ以上のギヤ(すなわち、ギヤ比555を有する)を介して相互接続し、それによって、エンドエフェクタを制御可能に作動させる。
【0033】
器具継手500のグループは、これら継手の組み合わせを作動させることによって、器具の手首アセンブリが、必要に応じて円弧補間を用いた3次元空間内で平行移動するように位置付けすることができるので、「並継手(translational joints)」と称される。器具継手510のグループは、これらの継手を作動させることによって、器具の先端が、手首アセンブリの周りに向き合せされるので、「向合せ継手(orientational joints)」と称される。
【0034】
様々な段階において、医療処置の実施前に、実施中に、及び実施後に、関節器具211,231,241が、その時点で実施されるタスを最も良く達成するための好適な姿勢が存在する。例えば、図3及び図4に示されるように、通常動作中に、各外科用ツール231,241の好適な姿勢は、他の器具との不注意の衝突の可能性を最小限に留めながら、良好な動作範囲を提供するような「肘を外側に向け(elbow out)、手首を内側に向ける(wrist in)」姿勢とすることができる。同様に、図3及び図4に示されるように、通常動作中に、カメラ機器211の好適な姿勢は、外科用器具231,241のエンドエフェクタ331,341の良好なビューが、カメラの撮像端部に提供されるような「コブラ形状」の姿勢を取ってもよい。別の例として、器具を進入ガイド200内に再び後退させてツール交換を行う場合(すなわち、器具やそのエンドエフェクタを別の器具やエンドエフェクタに交換する)や、或いは遠隔中心周りにその進入ガイドを旋回させることにより、進入ガイド200を再向き合せすることが所望される場合に、進入ガイド200内へ器具を後退させる前のその器具の好適な姿勢は、器具のリンクが図8に示されるように直線状に整列するような「真っ直ぐな」姿勢である。
【0035】
図6には、例として、カメラ機器コントローラ(CTRLC)213のブロック図が示されており、このコントローラ213は、入力装置108が、図1を参照して以前説明したように、マルチプレクサ280を介してカメラ機器211に選択的に関連付けられるときに、外科医による入力装置108の移動について命令されるように関節式カメラ機器211の姿勢(すなわち、並進及び向合せの両方)を制御する。入力装置108は、複数の自由度の運動を容易にするように、継手によって接続された多数のリンクを含む。例えば、外科医/オペレータが、ある位置から別の位置に入力装置108を移動させる際に、入力装置108の継手に関連付けられたセンサは、サンプリング間隔におけるこのような移動を検知し(プロセッサ102の処理速度及びカメラ制御目的を最適にする)、継手空間でのこのようなサンプリングされた移動を示すデジタル情報631を入力処理ブロック610に提供する。
【0036】
入力処理ブロック610は、入力装置108の継手センサから受信した情報631を処理して、継手位置情報から継手速度を計算するとともに、ヤコビ行列及び周知の変換技術を使用する眼に関連する情報を使用して変換を実行することにより、外科医の目の位置に関連した基準フレーム(「眼基準フレーム」)に対する直交座標空間のカメラ機器211について、この受信した情報を対応する所望の位置及び速度に変換する。
【0037】
スケール及びオフセット処理ブロック601は、入力処理610から処理された情報611を受信し、スケール及びオフセット調整をこの情報に適用して、それによって、カメラ機器211の得られた移動、つまり、ディスプレイ画面104上に表示される画像が、自然に、入力装置108のオペレータによって予想されるように表示される。このスケール調整は、作業部位をビュー(視認する)ときにカメラ機器211のより正確な移動を可能にするために、カメラ機器211の小さな移動が、入力装置108のより大きな移動に対して所望される場合に有用である。また、オフセット調整は、外科医が入力装置108を操作してカメラ機器211に移動を命令し、その結果、その撮影された画像がディスプレイ画面104上にその時点で表示されるように、外科医の目に対して入力装置108を整列させるように適用される。
【0038】
シミュレート器具ブロック604は、命令された継手位置及び速度を制限する、逆運動学を用いて、カメラ機器211の命令された姿勢621を、直交座標空間からその継手空間に変換して、患者の組織又は他の部分との有害な接触を避けるように、物理的な制限やその他の拘束を回避し、且つ医療用ロボットシステム100を用いて外科医によってその時点で実施される医療処置時のパフォーマンスを改善するために規定される仮想の拘束を適用する。具体的には、図9に示されるように、命令された姿勢621は、命令された姿勢621で仮想的拘束を実行して、修正後の命令された姿勢623を生成するような仮想障壁ロジック901(以下で図15を参照してより詳細に説明する)によって修正される。逆運動学及び制限ブロック902は、次に、修正後の命令された姿勢623を器具直交座標空間から器具継手空間に変換し、継手位置及び/又は速度を、関節式カメラ機器211の継手に関連付けらた又は置かれた物理的な制限やその他の拘束に制限する。
【0039】
(カメラ機器211の各継手について命令された値を含む)シミュレートされた器具ブロック604の出力622は、継手制御ブロック605及び順方向運動学ブロック606に提供される。継手制御ブロック605は、カメラ機器211の各制御された継手(又は「段付継手」等の動作可能に連結された継手)についての継手制御システムを含む。フィードバック制御を目的として、カメラ機器211の各制御された継手に関連するセンサは、カメラ機器211の各継手の現在の位置及び/又は速度を示す継手制御ブロック605にセンサデータ632を再び提供する。センサは、直接的に(例えば、カメラ機器211上の継手から)又は間接的に(例えば、継手を駆動するカメラマニピュレータ212のアクチュエータから)継手情報を感知する。継手制御ブロック605内の各継手制御システムは、次に、従来のフィードバック制御システムのように、命令された継手の値と感知された継手の値との間の差をゼロになるように駆動させるために、カメラマニピュレータ212のそれぞれのアクチュエータについてトルク命令633を生成する。
【0040】
順方向運動学ブロック606は、シミュレートされた器具ブロック604の出力622を、カメラ機器の継手空間から、カメラ機器211の順方向運動学を使用して眼基準フレームに対する直交座標空間に再び変換する。順方向運動学ブロック606の出力641を、スケール及びオフセット処理ブロック601に提供するだけでなく、その内部計算の目的のためにシミュレートされた器具ブロック604にも再び提供する。
【0041】
スケール及びオフセット処理ブロック601は、エラー値がその出力611と入力612との間で計算される場合に、その出力612を入力処理ブロック610に渡す前に、順方向運動学ブロック606の出力641で逆スケール及びオフセット関数を実行する。制限又は他の拘束がシミュレートされた器具ブロック604に対して入力621に与えられない場合に、次に、計算されるエラー値は、ゼロとなる。これに対して、制限又は拘束が与えられた場合には、このエラー値はゼロではなく、その出力は、外科医の手によって感じ取られる力フィードバックを提供するように入力装置108内のアクチュエータを駆動させるトルク命令634に変換される。こうして、外科医は、入力装置108の移動がその移動方向で抵抗を受けるように感じる力によって与えられる制限又は拘束を認識するようになる。
【0042】
姿勢微調整ブロック625は、コントローラ213に含められ、入力処理ブロック610に提供される微調整力命令627を生成する。この力命令は、入力処理ブロック610は、次に微調整力命令627をモータトルクに変換し、それによって、命令された微調整力は、カメラ機器211の姿勢が、姿勢データ626に提供された好適な姿勢を取るような命令をするように外科医に促す態様で、入力装置108の外科医によって感じ取られる。
【0043】
カメラ機器211について、少なくとも2つの好適な姿勢が存在する。通常動作モード中に、例えば外科医が患者に医療処置を実施しているときに、カメラ機器211の好適な姿勢は、図3及び図4に示されるような「コブラ形状」の姿勢である。図3の「コブラ形状」の姿勢を見下ろすと、カメラ機器211の全てのリンク322,324,326は、第1のリンク322の長手方向軸線401に整列されており、それによって、それらリンクは、横方向運動の可能な最大範囲を有しており、カメラ機器211の主挿入方向に対する基準を提供する。さらに、段付継手323,325は、図4に示されるように「上方に揃え(joggle up)」られ、それによって、第3リンク326が、長手方向軸線401の上方のある距離に変位され、手首アセンブリ327は、カメラ先端311が、ある角度で下方に向き合せされるように負のピッチ角で回転され、それによって、カメラは、好適には、その時点で進入ガイド200の先端を超えて延びるような器具231及び241のエンドエフェクタ331及び341について、作業空間の中心をビューする。この場合には、外科医は、好適には、長手方向軸線401に沿った入力/出力(I/O)方向において、カメラ211を前後に自由に移動させることができ、それによって、カメラ211は、それらエンドエフェクタが、使用中に進入ガイド200の先端から離れて再び先端に向けて移動するときに、エンドエフェクタ331,341の良好なビューを得る。
【0044】
後退モードの際に、カメラ機器211の好適な姿勢は、「真っ直ぐな」姿勢である。図7及び図8には、それぞれ、「コブラ形状」姿勢及び「真っ直ぐな」姿勢のカメラ機器211の簡略化した側面図が示されている。「コブラ形状」姿勢から「真っ直ぐな」姿勢を変化するには、段付継手323,325は、リンク324が第1のリンク322の長手方向軸線401と整列するまで、そのリンク324を回転させる。リンク326は、段付継手322,325の動作によって第1リンクに対して常に平行であることから、リンク324が長手方向軸線401と整列する場合に、リンク326も、長手方向軸線401と整列される。なお、手首継手327は、カメラ先端の中心軸線が長手方向軸線401と整列するまで、そのカメラ先端311も回転させる。
【0045】
図10には、例として、姿勢微調整ブロック625とこれに連結される姿勢データブロック626とのブロック図が示されている。この例では、姿勢データブロック626は、プロセッサ102にアクセス可能な不揮発性メモリに記憶されたデータを含む。カメラ機器211の記憶されたデータは、カメラ機器211の後退のために使用される「真っ直ぐな」姿勢1001のデータと、カメラ機器211の通常動作モード運転中に使用される「コブラ形状」姿勢1002のデータとを含む。
【0046】
姿勢微調整ブロック625は、後退モードの微調整ブロック1003と、通常モードの微調整ブロック1004と、加算ノード1005とを有している。後退モードの微調整ブロック1003及び通常モードの微調整ブロック1004の主な特徴は、移行期間中に、一方からの微調整力命令が段階的に入力される間に、他方からの微調整力命令が段階的に停止されることである。後退モードの微調整ブロック1003のより詳細な説明は、以下で図12を参照して説明し、通常モードの微調整ブロック1004のより詳細な説明は、図13を参照して説明する。
【0047】
図12には、例として、受信データを継続的に処理する後退モードの微調整ブロック1003のブロック図が示されている。加算ノード1201は、好適な「真っ直ぐな」姿勢1001(すなわち、カメラ機器211の後退構成)と、機器コントローラ213のシミュレートされた器具608ブロックの仮想障壁ロジック901によって生成された修正後の命令された姿勢(XSLV, VSLV)623との間の差(XERR, VERR)を計算する。本明細書で使用される場合に、用語「姿勢」は、器具の位置及び向きだけでなくそれらの位置及び回転速度の両方を意味する。そのため、命令された姿勢は、位置(XCMD)及び速度(VCMD)成分を両方とも含み、修正後の命令された姿勢は、位置(XSLV)及び速度(VSLV)成分を両方とも含み、好適な姿勢は、位置(XPP)及び速度(VPP)成分を両方とも含み、好適な姿勢と修正後の命令された姿勢との間の計算された差は、位置(XERR)及び速度(VERR)成分を両方とも含む。しかしながら、加算ノード1201で実行される計算では、好適な姿勢(VPP)の速度(VPP)成分は、全てゼロであると推定される。
【0048】
修正後の命令された姿勢(XSLV, VSLV)がどのように生成されるかを説明するために、仮想障壁ロジック901の例を、図15を参照して説明する。ブロック1501では、ロジック901は、スケール及びオフセットブロック621から命令された姿勢(XCMD)を受信し、ブロック1502では、ロジック901は、この例では、カメラ機器211の第1リンク322の長手方向軸線401に沿った器具後退方向である第1方向における命令された姿勢621の投影を決定する。ブロック1503では、第1方向に沿った投影によって、カメラ機器211が仮想障壁位置を越えて移動するような命令がされたか否かの判定が行われる。この場合に、仮想障壁位置は、進入ガイド200の先端から閾値距離にある、或いは安全マージンを含んだ距離にあるような長手方向軸線401に沿った位置にある。米国特許出願公開第2011/0040305号A1に説明されるように、安全マージンを取る目的は、その時点で物理的に収まらない構成になっている間に、強制的に関節器具211を再び進入ガイド200内に押し込む場合に、進入ガイド200及び関節器具211のいずれか又は両方に発生する損傷を防止することである。ブロック1503での判定がいいえ(NO)ならば、次に、仮想障壁ロジック901は、ブロック1501にジャンプして戻り、次の処理サイクルのデータを処理する。これに対して、ブロック1503の判定がはい(YES)であれば、次にブロック1504では、カメラ機器211の現在の姿勢が、その継手位置を感知し且つ順方向運動学を適用しているかを判定して、それらの対応する直交座標姿勢を決定する。ブロック1505では、次に、カメラ機器211の現在の姿勢が好適な姿勢(すなわち、この場合には「真っ直ぐな」姿勢)であるかどうかの判定が行われる。ブロック1505での判定がはい(YES)であれば、次に、仮想障壁ロジック901は、命令された姿勢(XCMD)を修正せず、ブロック1501にジャンプして戻って、次の処理サイクルのデータを処理する。これに対して、ブロック1505での判定がいいえ(NO)であれば、次に、命令された姿勢(XCMD)は、拘束として仮想障壁を適用することによって修正され、それによって、カメラ機器211は、第1方向への更なる移動が防止される。次に、この方法は、ブロック1501に戻って、次の処理サイクルのデータを処理するようにループする。こうして、カメラ機器211は、現在の姿勢が、カメラ機器211の好適な後退姿勢になるまで、このように、仮想障壁位置を越えて移動することを防止することができる。
【0049】
再び図12すると、ブロック1202では、計算された差(XERR,VERR)の非微調整成分が除去される。具体的には、第1方向に沿った並進成分と先端310の周りのロール方向回転成分が除去される。それは、これらの成分のいずれも、好適な姿勢に影響を及ぼさないからである(すなわち、それらの成分の値に拘わらず、カメラ機器は図8に示されるような「真っ直ぐな」姿勢で配置される)。ブロック1203では、ブロック1202で生成された修正後の差(XERR’, VERR’)を変換して、入力装置108に適用される1つ又は複数の力をもたらすような力命令を生成し、それによって、カメラ器具211に好適な姿勢を取らせるような命令をするように外科医を促す。好ましくは、このような力命令は、入力装置108の対応する自由度に適用されるような6自由度の粘弾性の力である。
【0050】
力変換ブロック1203の例を、比例−微分(PD)開ループシステムのブロック図で14に示す。このPDシステムでは、修正後の位置の差(XERR’)を位置ゲイン(KP)1401によって乗算し、リミッタ1402によって第1の飽和値(SATP)に制限して、第1力命令の寄与を生成する。同時に、修正後の速度差(VERR’)を微分ゲイン(KD)1403によって乗算し、第2力命令の寄与を生成する。加算ノード1404は、第2及び第1力命令の寄与の間の差を計算し、リミッタ1405が、この差を第2の飽和値(SATF)に制限する。こうして、第2及び第1力命令の寄与の間の制限された差によって、好適な姿勢を取らせるような命令をするために、入力装置108を移動させるように外科医を微調整するような6自由度の直交座標の粘弾性の力が得られる。入力装置108のモータ上の命令されたモータトルクが最大定格値を超えないことを保証するように、第1及び第2の飽和値の値が選択される。
【0051】
再び図12を参照すると、振幅変調器1207は、力変換ブロック1203によって生成された6自由度の直交座標の粘弾性の力を、図11の曲線1101に類似する後退起動信号で変調する。後退起動信号を生成するために、加算ノード1204は、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令された姿勢(XSLV)の差を計算する、速度の寄与を無視して、変調係数生成器1205は、計算された差を使用して変調係数のストリームを生成し、及びローパスフィルタ1206は、変調係数のストリームをフィルタ処理する。
【0052】
後退モードの起動信号の生成の例が、図16に示されるフロー図に提供されている。ブロック1601及び1602は、加算ノード1204によって実行される動作(アクション)を説明する。具体的には、ブロック1601では、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令された姿勢(XSLV)とが受信され、ブロック1602では、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令された姿勢(XSLV)との間の差が計算される。ブロック1603〜1607は、次に、変調係数生成器1205によって実行される動作を説明する。ブロック1603では、第1方向(すなわち、長手方向軸線401に沿った後退方向)の計算された差の投影が決定され、ブロック1604では、投影が閾値を超えるかどうかの判定が行われる。この場合に、閾値は、外科医が、実際にカメラ機器211を後退させるのを意図しており且つそれが手の震えからもたらされるような不注意アクションではないことを保証するのに十分な大きさとすべきである。ブロック1604の判定がはい(YES)である場合に、次にブロック1605では、現在の変調係数を整数値「1」に設定する。これに対して、ブロック1604の判定がいいえ(NO)である場合には、次にブロック1606では、現在の変調係数を整数値「0」に設定する。ブロック1607では、現在の変調係数は、次に、以前のプロセス期間で生成された変調係数のストリームに付加される。ブロック1608は、ローパスフィルタ1206によって実行される動作を説明する。具体的には、ブロック1608では、後退作動信号は、ローパスフィルタ1206を介して変調係数のストリームを通過させることによって生成され、プロセスは、次にブロック1601にジャンプして戻り、次の処理サイクルのデータを処理する。
【0053】
図13には、例として、受信データを継続的に処理する通常モードの微調整ブロック1004のブロック図が示されている。加算ノード1301は、好適な「コブラ形状」姿勢1002(すなわち、カメラ機器211の通常モード構成)と、機器コントローラ213のシミュレートされた器具ブロック608の仮想障壁ロジック901によって生成される修正後の命令された姿勢623(XSLV, VSLV)との間の差(XERR, VERR)を計算する。
【0054】
ブロック1302では、計算された差(XERR, VERR)の非微調整成分が除去される。具体的には、第1方向に沿った並進成分と先端311周りのロール方向回転成分が除去される。これは、これらの成分のいずれも好適な姿勢に影響を及ぼさないからである(つまり、これら成分の値に拘わらず、カメラ機器は、図7に示されるような「コブラ形状」姿勢で配置される)。ブロック1303では、ブロック1302で生成された修正後の差(XERR’, VERR’)を変換して、入力装置108に適用される1つ以上の力をもたらすような力命令を生成し、それによって、カメラ器具211に好適な姿勢を取らせるような命令をするように外科医を促す。好ましくは、このような力命令は、入力装置108の対応する自由度に適用されるような6自由度の粘弾性の力であり、図14を参照して以前説明したのと同様に生成される。
【0055】
振幅変調器1307は、力変換ブロック1303によって生成された6自由度の直交座標の粘弾性の力を、図11の曲線1102に類似するような通常モードの解除信号を用いて変調する。通常モードの解除信号を生成するために、加算ノード1304は、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令された姿勢(XSLV)との差を計算し、速度の寄与を無視して、変調係数生成器1305は、この計算された差を用いて変調係数のストリームを生成し、及びローパスフィルタ1306は、変調係数のストリームをフィルタ処理する。
【0056】
通常モードの解除信号の生成の例が、図17に示されるフロー図に提供される。ブロック1701及び1702は、加算ノード1304によって実行される動作(アクション)を説明する。具体的には、ブロック1701では、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令され姿勢(XSLV)とが受信され、ブロック1702では、命令された姿勢(XCMD)と修正後の命令された姿勢(XSLV)との間の差が計算される。ブロック1703〜1707は、次に、変調係数生成器1305によって実行される動作を説明する。ブロック1703では、第1方向(すなわち、長手方向軸線401に沿った後退方向)における計算された差の投影が決定され、ブロック1704では、投影が閾値を超えたか否かの判定が行われる。この場合に、閾値は、外科医がカメラ機器211を後退させるのを実際に意図しており且つ手の震えによる不注意アクションでないことを保証するように十分な大きさにすべきである。ブロック1704での判定がはい(YES)である場合に、次にブロック1705では、現在の変調係数を整数値「0」に設定する。これに対して、ブロック1704での判定がいいえ(NO)である場合に、次にブロック1706では、現在の変調係数を整数値「1」に設定する。変調係数値の割り当ては、後退起動信号の生成に用いられる割り当てとは反対であることに留意されたい。つまり、後退及び通常モードの起動信号の一方が段階的に入力される間に、他方が段階的に停止される。ブロック1707では、現在の変調係数が、その後、以前のプロセス期間で生成された変調係数のストリームに付加される。ブロック1708は、最終的に、ローパスフィルタ1306によって実行される動作を説明する。具体的に、ブロック1708では、通常動作の解除信号が、変調係数のストリームをローパスフィルタ1306に通過させることによって生成される。プロセスは、次にブロック1701にジャンプして戻り、次の処理サイクルのためのデータを処理する。
【0057】
後退モードの微調整ブロック1003におけるローパスフィルタ1206及び通常モードの微調整ブロック1004におけるローパスフィルタ1306の時定数は、好ましくは、図11に示されるような移行期間中に、段階的な入力と段階的な停止とが一致するように同じにされる。ここで、時間「t(k)」は、ブロック1804及び1704における閾値の決定が、最初にはい(YES)の判定がもたらされる時間を表しており、時間「t(k - m)」は、ブロック1804及び1704における閾値の決定が、いいえ(NO)の判定が得られ場合の「t(k)」以前の時間を表しており、時間「t(k + m)」は、ブロック1804及び1704における閾値の決定が、依然としてはい(YES)の判定が得られる場合の「t(k)」後の時間を表している。
【0058】
図18には、上記に詳細に説明したように、本発明の第1実施形態を要約するフロー図が示されている。ブロック1801では、その時点で、命令された姿勢(XCMD)が、この命令された姿勢を取るような関節器具に関連した入力装置から受信される。ブロック1802では、命令された姿勢は、(図15を参照して説明されるように)仮想拘束を使用して修正される。ブロック1803〜1807では、入力装置のオペレータを微調整するように段階的に入力される第1力命令を生成して、(図12を参照して説明したような)第1の(新しい)好適な姿勢を取らせるような命令をする一方、ブロック1808〜1812でも同時に、入力装置のオペレータを微調整するように段階的に停止される第2力命令を生成して、(図13を参照して説明したような)第2の(現在の)好適な姿勢を取らせるような命令をする。ブロック1813では、第1及び第2力命令が入力装置に適用されて、それによって、最初に、入力装置のオペレータは、第2の好適な姿勢を取らせるような命令をするように促され、段階的な入力及び段階的な停止の移行期間の後に、そのオペレータは、第1の好適な姿勢を取らせるような命令をするように促される。
【0059】
図19〜21には、図18を参照して説明する全てのブロックを含まないが、いくつかの様々な組み合わせを含む本発明の更なる実施形態が示されている。具体的に、図19には、第1実施態様の変形である第2実施形態が示されている。ここで、命令された姿勢は、第1実施形態の他の全てのブロックを実行するが、ブロック1802を削除することによって、仮想拘束を用いて修正されない。図20には、第1実施形態の変形である第3実施形態が示されている。ここで、第2の(現在の)好適な姿勢は、段階的に停止される力命令が存在しないので、修正後のブロック813を含む第1実施形態の他の全てのブロックを実行するが、ブロック808〜812を削除することによって、アクティブでなくなる。図21には、第3実施形態の変形である第4実施形態が示されている。ここで、命令された姿勢は、第3実施形態の他の全てのブロックを実行するが、ブロック1802を削除することによって、仮想拘束を使用して修正されない。
【0060】
図22〜24には、以前説明した実施形態のいくつかを発展させた本発明のさらに他の実施形態が示されている。具体的には、以前の実施形態は、単一好適な姿勢が(移行期間外で)同時にアクティブであることを開示しているのに対し、図22〜24に示されている実施形態では、複数の好適な姿勢の実現性が、同時にアクティブにされ、アクティブな好適な姿勢は、1つ又はいくつかの姿勢が他の姿勢よりも支配的となるように重み付けされる。さらに、重み付けは、それぞれの重みを動的に変更することによって好適な姿勢が内外に移行することができるような追加の機構を提供する(例えば、「0」の重みから「1」の重みに徐々に変化させて対応する好適な姿勢を取るように段階的に入力する、その逆に、「1」の重みから「0」の重みに徐々に変化させて対応する好適な姿勢を取るように段階的に停止させる)。また、従来の実施形態は、異なる動作モード用の固定された好適な姿勢を開示しているのに対して、図22〜24に示した実施形態は、現在の又は命令された姿勢を取るような他の関節器具等のシステムデータに基づいて好適な姿勢を動的に変化させる実現性を企図している。例えば、カメラ機器211の好適な姿勢は、器具231,241のエンドエフェクタ331,341の姿勢が変化するように、動的に変更され、それによって、エンドエフェクタ331,341は、カメラ機器211の視野内に十分に位置付けされるように維持される。別の例として、各関節器具211,231,241の好適な姿勢は、関節器具211,231,241を用いる医療処置の実施中に、他の関節器具211,231,241との衝突を避けるために動的に変化する。
【0061】
図22には、例えば、オペレータが命令して関節器具を移動させるような代替器具コントローラのブロック図が示されている。これはカメラコントローラ213についての例であるが、同じ一般構造を、医療用ロボットシステム100の他の装置コントローラ203,233,243に用いることができることを理解されたい。機能ブロック610,601,605,606は、図6を参照して以前に説明したものと同様である。シミュレートされた器具の機能ブロック2204は、逆運動学及び制限に関して図6のブロック604と略同一であるが、異なる動作モード及び/又は好適な姿勢によって、修正後の命令された姿勢2205を生成するために、命令された姿勢621に与えられる仮想拘束に関して異なっていてもよい。同様に、姿勢微調整機能ブロック2201は、2つの姿勢微調整の寄与を加算することに関するブロック625と略同一であり、それぞれの起動信号に従って、第1の(新しい)好適な姿勢が段階的に入力される一方、第2の(現在の)好適な姿勢が、段階的に停止される。
【0062】
姿勢生成ブロック2202は、コントローラ213に含まれており、それによって、姿勢微調整ブロック2201に提供される1つ以上の好適な姿勢を動的に生成するだけでなく、適切なときに静止した好適な姿勢を通過させる。具体的に、姿勢データブロック626によって提供される静止した好適な姿勢は、通常通過するが、関節式カメラ機器211の好適な姿勢は、他の器具231,241の姿勢をその周りで変化させる条件として、静止した好適な姿勢から動的に変化させることができる。一例として、カメラ機器211の好適な姿勢は、器具231,241との衝突を回避するために、通常動作モード中に動的に変化しており、器具231,241が使用されて、こうして、その時点で移動して患者の解剖学的構造で医療処置を実施する。段階的に入力すべき1つ以上の好適な姿勢(図23の好適な姿勢2301,2303,2305)及び段階的に停止すべき1つ以上の好適な姿勢(好適な姿勢2401,2403,2405)を動的に生成するために、姿勢生成器ブロック2202は、各好適な姿勢を動的に変更するために、システムの1つ以上の異なる状態関数を使用してもよい。この場合に、システム状態情報は、システムデータ2203によって提供される。一例として、システムデータ2203は、システム100の他の器具231,241の命令された姿勢を含んでもよい。別の例として、システムデータ2203は、順方向運動学をそれらの感知された関節位置に適用することで決定されるような他の器具231,241の実際の姿勢を含んでもよい。
【0063】
姿勢微調整ブロック2201は、それぞれ微調整力を発生させるような「段階的な入力」及び「段階的な停止」微調整ブロックを含んでおり、これらは、図10の後退モード及び通常モードの微調整ブロック1003及び1004に関して以前説明したような同様な方法で、入力装置108で段階的に入力され且つ段階的に停止されるようにされている。
【0064】
図23には、例えば、「段階的な入力」微調整ブロックのブロック図が示されている。好適な姿勢は、複数の好適な姿勢(例えば、好適な姿勢2301,2303,2305)の加重平均によって生成されており、それによって、各好適な姿勢2320は、対応する重み(例えば、重み2302,2304,2306)によって乗算されて、「1」に等しい重み付けの合計を有する。重みは、固定値であってもよく、又は好適な姿勢の1つ以上が、異なる時間で、異なる動作モードで、又は別のシステム条件下で支配的となるような動的な値であってもよい。好適な姿勢2320と修正後の命令された姿勢2205との間の差が、加算ノード2314によって計算される。非微調整成分の差が、ブロック2315で除去され、この結果が、図12のブロック1203を参照して説明したような力命令を生成するような力変換ブロック2316に提供される。段階的に入力される起動信号が、図11の後退モードの起動信号1101に類似するように、段階的な入力信号生成ブロック2317によって生成される。入力装置108に段階的に入力されるような振幅変調された力命令は、振幅変調器2318によって、次に力変換ブロック2316によって生成された力命令を段階的に入力される起動信号で振幅変調することによって生成される。
【0065】
同様の構成を用いて、図24には、例えば、「段階的な停止」微調整ブロックのブロック図が示されている。この場合に、好適な姿勢2420は、複数の好適な姿勢(例えば、好適な姿勢2401,2403,2405)の加重平均によって生成され、それによって、各好適な姿勢は、対応する重み(例えば、重み2402,2404,2406)によって乗算されて、「1」に等しい重み付けの合計を有する。重みは、固定値であってもよく、又は好適な姿勢の1つ以上が、異なる時間で、異なる動作モードで、又は別のシステム条件下で支配的となるような好適な動的な値であってもよい。好適な姿勢2420と修正後の命令された姿勢2205との間の差が、加算ノード2414によって計算される。非微調整成分の差が、ブロック2415で除去され、この結果が、図12のブロック1203を参照して説明したような力命令を生成する力変換ブロック2416に提供される。段階的に停止させる起動信号が、図11の通常モードの起動信号1102に類似するように、段階的な停止信号生成ブロック2417によって生成される。入力装置108に提供され且つ段階的に停止されるような振幅変調された力命令は、振幅変調器2418によって、次に力変換ブロック2416によって生成された力命令を段階的に停止される起動信号で振幅変調することによって生成される。
【0066】
本明細書で説明した実施形態に加えて、他の実施形態は、種々の実施形態の教示の様々な組合せを介して、本発明の範囲内にあることが完全に企図され且つそのように考えられると理解すべきである。具体的には、本発明の様々な態様を、好適な実施形態及び代替実施形態に関して説明してきたが、本発明は、添付の特許請求の範囲の全範囲内の完全な保護を受ける権利を有することを理解されたい。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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