特許第6617156号(P6617156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617156
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】磁界検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20191202BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20191202BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01R33/09
   H01L43/08 Z
   G01R15/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-553670(P2017-553670)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2016078454
(87)【国際公開番号】WO2017094336
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236845(P2015-236845)
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】井出 洋介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 彰
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−049184(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/156260(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/011306(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/011859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G01R 15/20
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定磁場の強度に応じて検知出力が変化する磁気検知部と、前記磁気検知部に前記測定磁場と逆向きのフィードバック磁界を与えるコイルと、前記磁気検知部の検知出力に応じて前記コイルに対して前記フィードバック磁界を誘導するフィードバック電流を供給するコイル通電部と、前記コイルに流れる電流量を検知する検知部、とが設けられた磁界検知装置において、
第1の検知ユニットと第2の検知ユニットが設けられ、前記第1の検知ユニットに、第1の磁気検知部と、前記第1の磁気検知部に前記フィードバック磁界を与える第1のコイルとが設けられ、前記第2の検知ユニットに、第2の磁気検知部と、前記第2の磁気検知部に前記フィードバック磁界を与える第2のコイルが設けられており、
前記第1の磁気検知部と前記第2の磁気検知部は、自由磁性層と固定磁性層との磁化方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子を少なくとも2個ずつ備えており、
前記第1の磁気検知部に設けられた少なくとも2個の前記磁気抵抗効果素子は前記固定磁性層の固定磁化の向きが互いに同じで、前記第2の磁気検知部に設けられた少なくとも2個の前記磁気抵抗効果素子は前記固定磁性層の固定磁化の向きが互いに同じで、
前記第1の磁気検知部に設けられた前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向と、前記第2の磁気検知部に設けられた前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向のうちの一方は、前記フィードバック磁界に沿う方向に向けられ、他方が前記フィードバック磁界と逆方向に向けられており、
前記第1の磁気検知部に設けられた磁気抵抗効果素子と、前記第2の磁気検知部に設けられた磁気抵抗効果素子とが直列に接続された直列部が2組設けられ、この2組の直列部でブリッジ回路が構成されて、前記ブリッジ回路からの出力に応じて前記フィードバック電流が決められることを特徴とする磁界検知装置。
【請求項2】
前記第1のコイルと前記第2のコイルが直列に接続されている請求項1記載の磁界検知装置。
【請求項3】
前記第1のコイルと前記第2のコイルが並列に接続されている請求項1記載の磁界検知装置。
【請求項4】
前記第1のコイルと前記第2のコイルの接続を直列と並列とに切替える切替え部が設けられている請求項1記載の磁界検知装置。
【請求項5】
前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向と交差する電流路が設けられ、前記電流路に流れる被測定電流によって前記測定磁場が誘導される請求項1ないし4のいずれかに記載の磁界検知装置。
【請求項6】
前記第1の検知ユニットと前記第2の検知ユニットが、前記電流路に対して同じ側に配置されており、
前記第1の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向と、前記第2の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向とが、逆向きである請求項5記載の磁界検知装置。
【請求項7】
前記第1の検知ユニットと前記第2の検知ユニットが、前記電流路を挟む位置に配置されており、
前記第1の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向と、前記第2の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向とが、同じ向きである請求項5記載の磁界検知装置。
【請求項8】
前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の磁化の向きが、前記固定磁性層と反強磁性層との反強磁性結合により設定されている請求項1ないし7のいずれかに記載の磁界検知装置。
【請求項9】
前記磁気抵抗効果素子は、前記自由磁性層の磁化がIr−Mn合金との反強磁性結合により、前記固定磁化の方向と直交する向きに設定されている請求項8記載の磁界検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック磁界を与えるコイルを使用したいわゆる磁界平衡式の磁気検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、磁気検知装置としていわゆる磁界平衡式の電流センサに関する発明が記載されている。
【0003】
この電流センサは、被測定電流が通過する導体に磁気抵抗効果素子とフィードバックコイルとが対向している。導体に流れる被測定電流で励起された電流磁界は磁気抵抗効果素子で検知され、その検知出力の大きさに対応したフィードバック電流が前記フィードバックコイルに与えられるように制御される。フィードバックコイルから磁気抵抗効果素子へは、前記電流磁界とは逆向きのフィードバック磁界(キャンセル磁界)が与えられ、電流磁界とフィードバック磁界とが平衡状態となったときに、フィードバックコイルに流れている電流が検知され、電流の検知出力が被測定電流の測定値となる。
【0004】
前記電流センサでは、導体に流れる被測定電流の方向に沿って4個の磁気抵抗効果素子が配列している。4個の磁気抵抗効果素子は、強磁性固定層と軟磁性自由層とが非磁性中間層を挟んで積層されたGMR素子である。2個の磁気抵抗効果素子の強磁性固定層の磁化方向であるPin方向と、他の2個の磁気抵抗効果素子の強磁性固定層のPin方向は、互いに180度逆向きであり、それぞれが、被測定電流の方向と直交する向きに設定されている。
【0005】
そして、Pin方向が逆向きとなる2個の磁気抵抗効果素子が直列に接続され、この直列部の2組が並列に接続されてブリッジ回路が構成されている。このブリッジ回路では、電流磁界が与えられたときに、Pin方向が相違する磁気抵抗効果素子の抵抗値が逆極性で変化する。よって、一方の直列部での2個の磁気抵抗効果素子の中点の出力Out1と、他方の直列部での2個の磁気抵抗効果素子の中点の出力Out2との差を求めることで、電流磁界の強度を検知することができる。
【0006】
特許文献2に記載された磁気平衡式電流センサは、被測定電流が通過する導体を挟んで2個のセンサ素子A,Bが設けられている。2個のセンサ素子A,Bのそれぞれは、特許文献1に記載された電流センサと構造が同じであり、2個のセンサ素子A,Bのそれぞれは、4個の磁気抵抗効果素子とフィードバックコイルを有している。
【0007】
特許文献2に記載された磁気平衡式電流センサは、2個のセンサ素子A,Bの出力の差動をとることで、温度上昇による誤差をキャンセルし、線形性を高く保つ、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2011/111493号公報
【特許文献1】WO2011/043193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された電流センサと、特許文献2に記載された2個のセンサ素子A,Bのそれぞれは、いずれも4個の磁気抵抗効果素子が、導体において被測定電流が流れる方向に沿って一列に並んで配置されており、この4個の磁気抵抗効果素子がそれぞれのキャンセルコイルに対向している。
【0010】
前述のように、4個の磁気抵抗効果素子でブリッジ回路を構成するためには、強磁性固定層のPin方向を、2個の磁気抵抗効果素子と他の2個の磁気抵抗効果素子とで、互いに180度逆向きとすることが必要である。
【0011】
強磁性固定層のPin方向を、反強磁性層を使用した反強磁性結合で決めようとすると、強磁性固定層と反強磁性層を積層した後に磁場中でアニール処理することが必要になる。そのため、同じ基板上に形成した複数の磁気抵抗効果素子で強磁性固定層のPin方向を逆向きに設定することは難しい。そこで、1つの電流センサに並んで設けられる4個の磁気抵抗効果素子の固定磁性層のPin方向を反強磁性結合で決めたものにするには、Pin方向が相違する磁気抵抗効果素子を異なる基板上に2個ずつ形成し、2個ずつの磁気抵抗効果素子を電流センサに別々に組み込むことが必要となる。ただし、この場合には、1つの電流センサに2種類の基板を組み込むことになるため、組立工程や配線工程が煩雑になる。
【0012】
この点に関し、特許文献1と特許文献2に記載された磁気抵抗効果素子は第1の強磁性層と第2の強磁性層を反平行結合膜を介して積層した、いわゆるセルフ止め型の強磁性固定層が使用されている。この強磁性固定層は、磁場中成膜工程で形成でき、アニール処理が不要であるため、Pin方向が逆方向となる磁気抵抗効果素子を共通の基板上に形成することが可能になる。
【0013】
ところが、セルフ止め型の強磁性固定層は、強い外部磁化が作用するとPin方向が変化する欠点があり、強磁場中で使用していると、感度低下や、検知出力にオフセット出力が重畳し、しかもオフセット出力が変動するなどの問題が生じやすくなる。
【0014】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、1つのコイルに対向する磁気抵抗効果素子の固定磁性層の磁化方向を揃えるように構成できる磁界検知装置を提供することを目的としている。
【0015】
また、本発明は、2個のコイルを使用することで、感度を高めたり、ダイナミックレンジを広げることが可能な磁界検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、測定磁場の強度に応じて検知出力が変化する磁気検知部と、前記磁気検知部に前記測定磁場と逆向きのフィードバック磁界を与えるコイルと、前記磁気検知部の検知出力に応じて前記コイルに対して前記フィードバック磁界を誘導するフィードバック電流を供給するコイル通電部と、前記コイルに流れる電流量を検知する検知部、とが設けられた磁界検知装置において、
第1の検知ユニットと第2の検知ユニットが設けられ、前記第1の検知ユニットに、第1の磁気検知部と、前記第1の磁気検知部に前記フィードバック磁界を与える第1のコイルとが設けられ、前記第2の検知ユニットに、第2の磁気検知部と、前記第2の磁気検知部に前記フィードバック磁界を与える第2のコイルが設けられており、
前記第1の磁気検知部と前記第2の磁気検知部は、自由磁性層と固定磁性層との磁化方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子を少なくとも2個ずつ備えており、
前記第1の磁気検知部に設けられた少なくとも2個の前記磁気抵抗効果素子は前記固定磁性層の固定磁化の向きが互いに同じで、前記第2の磁気検知部に設けられた少なくとも2個の前記磁気抵抗効果素子は前記固定磁性層の固定磁化の向きが互いに同じで、
前記第1の磁気検知部に設けられた前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向と、前記第2の磁気検知部に設けられた前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向のうちの一方は、前記フィードバック磁界に沿う方向に向けられ、他方が前記フィードバック磁界と逆方向に向けられており、
前記第1の磁気検知部に設けられた磁気抵抗効果素子と、前記第2の磁気検知部に設けられた磁気抵抗効果素子とが直列に接続された直列部が2組設けられ、この2組の直列部でブリッジ回路が構成されて、前記ブリッジ回路からの出力に応じて前記フィードバック電流が決められることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の磁界検知装置は、前記第1のコイルと前記第2のコイルが直列に接続されているものとして構成できる。あるいは、前記第1のコイルと前記第2のコイルが並列に接続されているものとして構成できる。
【0018】
さらに、本発明の磁界検知装置は、前記第1のコイルと前記第2のコイルの接続を直列と並列とに切替える切替え部が設けられているものとすることが可能である。
【0019】
本発明の磁界検知装置は、前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁化の方向と交差する電流路が設けられ、前記電流路に流れる被測定電流によって前記測定磁場が誘導されるものとして構成できる。すなわち電流検知装置(電流センサ)として構成することが可能である。
【0020】
本発明の磁界検知装置は、前記第1の検知ユニットと前記第2の検知ユニットが、前記電流路に対して同じ側に配置されており、
前記第1の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向と、前記第2の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向とが、逆向きである。
【0021】
または、本発明の磁界検知装置は、前記第1の検知ユニットと前記第2の検知ユニットが、前記電流路を挟む位置に配置されており、
前記第1の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向と、前記第2の検知ユニットに設けられた前記磁気抵抗効果素子の固定磁化の方向とが、同じ向きである。
【0022】
本発明の磁界検知装置での前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の磁化の向きが、前記固定磁性層と反強磁性層との反強磁性結合により設定されているものが好ましい。
【0023】
さらに、本発明の磁界検知装置での前記磁気抵抗効果素子は、前記自由磁性層の磁化がIr−Mn合金との反強磁性結合により、前記固定磁化の方向と直交する向きに設定されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の磁界検知装置は、第1の検知ユニットと第2の検知ユニットが設けられ、それぞれがコイルを有している。それぞれの検知ユニットでは、同じコイルに対向する少なくとも2個の磁気抵抗効果素子の固定磁性層の磁化の方向が同じ向きに揃えられている。そのため、同じ検知ユニット内において、共通の基板上に複数の磁気抵抗効果素子を容易に形成することができる。
【0025】
本発明は、磁気抵抗効果素子の固定磁性層の磁化の向きを反強磁性層との反強磁性結合で固定することが可能となるため、強磁場が与えられても検知出力にバイアス出力が重畳するなどの問題が生じなくなる。
【0026】
また、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルを直列に接続したり並列に接続することで、検知感度を向上させたり、ダイナミックレンジを広げることなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態の磁界検知装置を示す平面図であり、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが直列に接続された状態を示す、
図2】本発明の第1の実施の形態の磁界検知装置を示す平面図であり、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが並列に接続された状態を示す、
図3】本発明の第2の実施の形態の磁界検知装置を示す平面図であり、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが直列に接続された状態を示す、
図4】本発明の第1の実施の形態の磁界検知装置を示す平面図であり、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが並列に接続された状態を示す、
図5】第1の検知ユニットをY1−Y2方向に延びる切断面で切断した拡大断面図、
図6】(A)は第1の実施の形態の磁界検知装置と電流路との対向関係を示す説明図、(B)は第2の実施の形態の磁界検知装置と電流路との対向関係を示す説明図、
図7】(A)は、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが直列に接続された回路図、(B)は、第1の検知ユニットのコイルと第2の検知ユニットのコイルとが並列に接続された回路図、
図8】磁気抵抗効果素子の成膜工程を示す断面説明図、
図9】磁気抵抗効果素子の他の成膜工程を示す断面説明図、
図10】(A)(B)は、比較例と実施の形態とで磁界検知装置の検知出力を比較する線図、
図11】2つのコイルの接続形態とその効果を説明する線図、
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図2に本発明の第1の実施の形態の磁界検知装置10が平面図で示されている。
この磁界検知装置10は、例えば図6(A)に示すように、電流センサIS1として使用される。この電流センサIS1では、X方向に延びる電流路30が設けられており、電流路30に被測定電流I0がX方向に流れる。被測定電流I0は交流電流または直流電流である。
【0029】
磁界検知装置10は、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bとを有している。第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bは、共に電流路30に対して同じ側で対向している。図6(A)に示す配置例では、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bが、電流路30の下側(Z1側)に対向し、第1の検知ユニット1AがY2側に位置し、第2の検知ユニット1BがY1側に位置している。
【0030】
図1に示すように、第1の検知ユニット1Aは基板2Aを有しており、第2の検知ユニット1Bは基板2Bを有している。
【0031】
図5に、第1の検知ユニット1Aの第1の磁気検知部3Aが設けられた部分をY1−Y2方向に延びる切断面で切断した拡大断面図が示されている。
【0032】
図5に示すように、基板2AのZ2側に向けられる表面に第1の磁気検知部3Aが設けられ、第1の磁気検知部3Aが下部絶縁層4で覆われている。下部絶縁層4の上に第1のコイル(フィードバックコイル)C1を構成する導体層5が形成されている。図1図2に示すように、第1のコイルC1の導体層5は基板2Aの表面に沿ってX−Y平面と平行な平面パターンで螺旋軌跡に形成されている。導体層5は金や銅などの低抵抗金属材料をメッキすることで形成されている。
【0033】
図5に示すように、第1のコイルC1を構成する導体層5は上部絶縁層6に覆われており、上部絶縁層6の上にシールド層7が形成されている。シールド層7はNi−Fe合金(ニッケルー鉄合金)などの軟磁性金属材料で形成されたメッキ層である。このメッキ層7を設けることで、被測定電流I0で誘導される測定磁場が、第1の磁気検知部3Aに減衰して与えられ、その結果、測定値のダイナミックレンジを広げることが可能になる。
【0034】
第2の検知ユニット1Bの積層構造は第1の検知ユニット1Aと同じであり、基板2Bの表面に第2の磁気検知部3Bが形成されている。第2の検知ユニット1Bにおいても、第2の磁気検知部3Bが下部絶縁層4で覆われ、下部絶縁層4の上に第2のコイル(フィードバックコイル)C2を構成する導体層5が平面パターンで螺旋軌跡に形成されている。そして、第2のコイルC2を覆う上部絶縁層6が形成され、上部絶縁層6の上にシールド層7が形成されている。
【0035】
図1図2に示すように、第1の検知ユニット1Aに設けられた第1の磁気検知部3Aに2個の磁気抵抗効果素子R2,R3が設けられている。磁気抵抗効果素子R2と磁気抵抗効果素子R3は、被測定電流I0が流れる方向であるX方向に間隔を空けて配置されている。第2の検知ユニット1Bに設けられた第2の磁気検知部3Bに2個の磁気抵抗効果素子R1,R4が設けられている。磁気抵抗効果素子R1と磁気抵抗効果素子R4は、被測定電流I0が流れる方向であるX方向に間隔を空けて配置されている。
【0036】
それぞれの磁気抵抗効果素子R1,R2,R3,R4は、Y方向の幅寸法よりもX方向の長手寸法が大きいストライプ形状の複数本のGMR素子により構成されている。複数本のストライプ形状のGMR素子がいわゆるミアンダパターンで配列されて直列に接続されている。
【0037】
図1図5に示すように、第1の検知ユニット1Aに設けられた第1のコイルC1のうちのX方向に延びる直線部Caが、磁気抵抗効果素子R2,R3の真上に位置しており、ストライプ形状のGMR素子の長手方向と直線部Caでの導体層5とがX方向に向けて平行に対向している。同様に、第2の検知ユニット1Bに設けられた第2のコイルC2のうちのX方向に延びる直線部Cbが、磁気抵抗効果素子R1,R4の真上に位置しており、ストライプ形状のGMR素子の長手方向と直線部Cbでの導体層5とがX方向に向けて平行に対向している。
【0038】
磁気抵抗効果素子R1,R2,R3,R4を構成するGMR素子は、巨大磁気抵抗効果を発揮する巨大磁気抵抗効果素子である。GMR素子の積層構造は図8図9に基づき後に詳細に説明するが、GMR素子は、固定磁性層と非磁性層と自由磁性層とが順に積層されている。
【0039】
固定磁性層の磁化はY方向に向けて固定されている。すなわち、固定磁性層の固定磁化は被測定電流I0の方向と直交する向きである。第1の検知ユニット1Aに設けられた第1の磁気検知部3Aを構成する磁気抵抗効果素子R2,R3は、固定磁性層の磁化の固定方向PaがY2方向である。また、磁気抵抗効果素子R2,R3は、自由磁性層が単磁区に近い状態に制御され、後に説明する反強磁性結合のバイアス磁界により、磁化の向きFaがX2方向に揃えられている。
【0040】
第2の検知ユニット1Bに設けられた第2の磁気検知部3Bを構成する磁気抵抗効果素子R1,R4は、固定磁性層の磁化の固定方向PbがY1方向である。また、磁気抵抗効果素子R1,R4では、自由磁性層が単磁区に近い状態に制御され、後に説明する反強磁性結合のバイアス磁界により、磁化の向きFbがX1方向に揃えられている。
【0041】
磁気抵抗効果素子R1,R2,R3,R4は、固定磁性層の磁化の固定方向Pa,Pbが感度軸方向である。
【0042】
前記磁気抵抗効果素子R1,R2,R3,R4に、感度軸(PaまたはPb)方向に沿う向きの測定磁場が与えられると、自由磁性層においてX方向に単磁区化されている磁化FaまたはFbがY方向へ傾けられる。自由磁性層の磁化のベクトル(FaまたはFb)と固定磁性層の磁化の固定方向PaまたはPbとの角度が小さくなると、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値が低下し、前記角度が大きくなると、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値が大きくなる。
【0043】
図1図2に示すように、第1の検知ユニット1Aでは、基板2Aの表面に、電源パッド11A、接地パッド12A、出力パッド13Aおよび中継パッド14Aが形成されている。これら各パッド11A、12A、13A、14Aと、磁気抵抗効果素子R2,R3は、破線で示す複数本の配線層15Aによって接続されている。各パッド11A、12A、13A、14Aと複数本の配線層15Aは、基板2Aの表面において、銅箔層や銀ペーストなどで形成されている。
【0044】
同様にして、第2の検知ユニット1Bでは、基板2Bの表面に、電源パッド11B、接地パッド12B、出力パッド13Bおよび中継パッド14Bが形成されている。これら各パッド11B、12B、13B、14Bと、磁気抵抗効果素子R1,R4は、破線で示す複数本の配線層15Bによって接続されている。
【0045】
図1図2に示すように、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bは、前述した各要素から成る基本構造と基本形状が互いに同じであり、第2の検知ユニット1Bは、第1の検知ユニット1AをY方向に向けて180度回転させたものである。よって、同じ構造の検知ユニットの向きを変えて配置することで、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bを組み合わせた磁界検知装置10を構成することができる。
【0046】
図1図2に示すように、第1の検知ユニット1Aの各パッド11A,12A,13A,14Aと、第2の検知ユニット1Bの各パッド11B,12B,13B,14Bは、外部配線16によって接続されている。
【0047】
図7(A)(B)の回路図に示すように、電源パッド11A,11Bに電源電圧Vddが印加されている。第2の検知ユニット1Bに設けられた磁気抵抗効果素子R1と第1の検知ユニット1Aに設けられた磁気抵抗効果素子R2は直列に接続されており、この直列部では、磁気抵抗効果素子R1と磁気抵抗効果素子R2の中点に出力パッド(Out1)13Bが設けられている。第1の検知ユニット1Aに設けられた磁気抵抗効果素子R3と第2の検知ユニット1Bに設けられた磁気抵抗効果素子R4は直列に接続されており、この直列部では、磁気抵抗効果素子R3と磁気抵抗効果素子R4の中点に出力パッド(Out2)13Aが設けられている。
【0048】
磁気抵抗効果素子R1,R2の直列部と、磁気抵抗効果素子R3,R4の直列部とが並列に接続されてブリッジ回路が構成されており、このブリッジ回路に電源電圧Vddが印加されている。そして、2つの直列部は接地パッド12A,12Bによって接地電位に設定されている。
【0049】
図7(A)(B)に示すように、外部配線16によって、出力パッド(Out1)13Bからの検知出力と、出力パッド(Out2)13Aからの検知出力がコイル通電部17に与えられている。コイル通電部17は、差動増幅部18と補償回路19とを有している。差動増幅部18はオペアンプを主体として構成されており、入力された2つの検知出力の差(Out1−Out2)が検出電圧Vdとして求められる。この検出電圧Vdが補償回路19に与えられてフィードバック電流Idが生成され、フィードバック電流Idが、第1の検知ユニット1Aに設けられた第1のコイルC1と第2の検知ユニット1Bに設けられた第2のコイルC2に与えられる。
【0050】
なお、差動増幅部18と補償回路19とが一体となったものが、補償型の差動増幅部と呼ばれることがある。
【0051】
図1図2に示すように、外部配線16を介して接続されるコイル通電部17と第1のコイルC1ならびに第2のコイルC2との間に、第1の切替え部SW1と第2の切替え部SW2が設けられている。
【0052】
前記切替え部SW1,SW2が図1の状態に切替えられると、図7(A)に示すように、第1のコイルC1と第2のコイルC2とが直列に接続され、さらに検出抵抗Rが直列に接続されて接地される。前記切替え部SW1,SW2が図2の状態に切替えられると、図7(B)に示すように、第1のコイルC1と第2のコイルC2とが並列に接続され、さらに検出抵抗Rが直列に接続されて接地される。
【0053】
切替え部SW1,SW2はトランジスタなどのスイッチング素子で構成され、図示しない制御部からの切替え信号によって、図1および図7(A)の直列構成と、図2および図7(B)に示す並列構成とに切替えられる。あるいは、切替え部SW1,SW2が手動式のスイッチ機構で構成されていてもよい。または、切替え部SW1,SW2は、図1の状態または図2の状態となるように半田付けなどで配線を固定することで、機器に応じて図7(A)の直列構成と、図7(B)に示す並列構成とを選択して固定してもよい。
【0054】
図7(A)(B)に示すように、磁界検知装置10には、検出抵抗Rを含む電流検出部(電圧検出部)21が設けられている。
【0055】
次に、磁界検知装置10の動作を説明する。
図6(A)に示すように、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bは、共に電流路30の下側(Z1側)に並んで配置されている。電流路30に被測定電流I0がX方向に流れると、電流路30の回りに測定用の電流磁界H0が誘導される。図1図2に示すように、この電流磁界H0によって、第1の検知ユニット1Aに測定磁場Haが作用し、第2の検知ユニット1Bに測定磁場Hbが作用する。測定磁場Haと測定磁場Hbは、交流磁界であっても直流磁界であってもその方向が互いに同じ向きである。
【0056】
第1のコイルC1の直線部Caの下に対向している磁気抵抗効果素子R2,R3と、第2のコイルC2の直線部Cbの下に対向している磁気抵抗効果素子R1,R4とでは、固定磁性層の固定磁場の向きPaとPbが180度相違しており、自由磁性層で単磁区化された磁化の向きFaとFbが180度相違している。
【0057】
例えば、測定磁場Haで、磁気抵抗効果素子R2,R3の自由磁性層の磁化の向きFaがY2方向へ傾けられて、磁気抵抗効果素子R2,R3の抵抗値が下がると、測定磁場Hbで、磁気抵抗効果素子R1,R4の自由磁性層の向きFbが同じY2方向へ傾けられるので、磁気抵抗効果素子R1,R4の抵抗値が高くなる。測定磁場Ha,Hbの向きが変ると、抵抗値の変化は前記と逆になる。いずれにせよ、磁気抵抗効果素子R2,R3と磁気抵抗効果素子R1,R4とで、抵抗値が逆極性となるように変化する。
【0058】
そのため、図7(A)(B)に示すブリッジ回路では、測定磁場Ha,Hbの大きさと向きに応じて、出力パッド(Out1)13Bと出力パッド(Out2)13Aの電位が変化し、一方の電位が高くなると他方の電位が低くなり、これに応じて差動増幅部15aの出力値である検出電圧Vdが変化する。検出電圧Vdは被測定電流I0が大きくなって誘導される電流磁界H0が大きくなるにしたがって増大していく。
【0059】
検出電圧Vdの増減に応じて補償回路19から、第1のコイルC1と第2のコイルC2にフィードバック電流(キャンセル電流)Idが与えられる。
【0060】
第1のコイルC1と第2のコイルC2が図1のように直列に接続されているときと、図2に示すように並列に接続されているときのいずれにおいても、第1のコイルC1の直線部Caと第2のコイルC2の直線部Cbに、フィードバック電流Idが同じ向きに流れる。したがって、直線部Caに流れるフィードバック電流Idで誘導されて第1の磁気検知部3Aに作用するフィードバック磁界Hdと、直線部Cbに流れるフィードバック電流Idで誘導されて第2の磁気検知部3Bに作用するフィードバック磁界Heは同じ向きである。
【0061】
第1の磁気検知部3Aと第2の磁気検知部3Bに対しては、フィードバック磁界HdとHeが、電流磁界H0による測定磁場Ha,Hbを打ち消す方向に作用する。被測定電流I0で誘導される測定磁場Ha,Hbが、フィードバック磁界Hd,Heよりも大きいときは、検出電圧Vdの絶対値が大きくなり、補償回路19で、フィードバック電流Idが増大させられ、フィードバック磁界Hd,Heが大きくなって測定磁場Ha,Hbをキャンセルするように作用する。第1の磁気検知部3Aと第2の磁気検知部3Bに作用する測定磁場Ha,Hbとフィードバック磁界Hdと,Heとが平衡状態となったときに、第1のコイルC1と第2のコイルC2に流れるフィードバック電流Idの電流値が、図7(A)(B)に示す電流検知部21で検知され、これが被測定電流I0の電流測定値となる。
【0062】
図11は、被測定電流I0で誘導される電流磁界H0と、電流検知部21で検知されるフィードバック電流Idの関係を示している。図1図7(A)に示すように第1のコイルC1と第2のコイルC2が直列に接続されたときの電流磁界H0とフィードバック電流Idの関係が直線αで示されている。図2図7(B)に示すように第1のコイルC1と第2のコイルC2が並列に接続されたときの電流磁界H0とフィードバック電流Idの関係が直線βで示されている。
【0063】
図2図7(B)に示すように第1のコイルC1と第2のコイルC2が並列に接続されているときは、測定磁場Ha,Hbをキャンセルするのに必要なフィードバック電流Idが、直列に接続されているときの2倍必要になる。これは、電流磁界H0が所定の幅で変化したときに電流検知部21で検知されるフィードバック電流Idの変化幅が、直列のときに比べて並列のときが2倍になることを意味している。よって、第1のコイルC1と第2のコイルC2を並列に接続することで、被測定電流I0で誘導される電流磁界H0を検知する検知感度が高くなる。
【0064】
一方で、フィードバック電流Idが所定の幅で変化するときの、電流磁界H0の変化幅は、コイルが並列のときよりも直列のときの方が広くなる。よって、第1のコイルC1と第2のコイルC2を直列に接続することで、被測定電流I0の検知幅が広がり測定のダイナミックレンジを広げることが可能になる。
【0065】
図3図4に本発明の第2の実施の形態の磁界検知装置20が示されている。図6(B)に示すように、磁界検知装置20は、電流センサIS2として使用される。この電流センサIS2は、第1の検知ユニット1Aが電流路30よりも下側(Z1側)に対向し、第2の検知ユニット1Bが電流路30よりも上側(Z2側)に対向している。
【0066】
図3図4に示す第2の実施の形態の磁界検知装置20における第1の検知ユニット1Aは、図1図2に示した第1の検知ユニット1Aと構造が同じである。図3図4に示す第2の検知ユニット1Bは、図1図2に示した第2の検知ユニット1Bと同じである。ただし、図3図4に示す第2の検知ユニット1Bは、図1図2に示す第1の検知ユニットをY1−Y2方向へ180度回転させたものである。すなわち、図3図4に示す第2の実施の形態では、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bが、同じ構造で同じ向きで使用されていることになる。
【0067】
したがって、この磁界検知装置20では、第1の検知ユニット1Aに設けられた磁気抵抗効果素子R2,R3での固定磁性層の磁化の固定方向Paおよび自由磁性層の磁化の向きFaと、第2の検知ユニット1Bに設けられた磁気抵抗効果素子R1,R4での固定磁性層の磁化の固定方向Pbおよび自由磁性層の磁化の向きFbとが、同じである。
【0068】
ただし、図6(B)に示すように、被測定電流I0で誘導される電流磁界H0によって、第1の検知ユニット1Aに作用する測定磁場Haと第2の検知ユニット1Bに作用する測定磁場Hcは逆向きである。
【0069】
図3図4に示すように、第1の検知ユニット1Aと第2の検知ユニット1Bは外部配線26によってコイル通電部17と接続されている。また、外部配線26には、第3の切替え部SW3と第4の切替え部SW4が設けられている。図3では、切替え部SW3とSW4の切替え動作によって、第1のコイルC1と第2のコイルC2が直列に接続されている。このときの回路図は図7(A)と同じである。図4では、切替え部SW3とSW4の切替え動作によって、第1のコイルC1と第2のコイルC2が並列に接続されている。このときの回路図は図7(B)と同じである。
【0070】
図3の直列接続と図4の並列接続の双方において、第1のコイルC1の直線部Caと第2のコイルC2の直線部Cbでは、フィードバック電流IdはX方向において互いに逆向きに流れる。直線部CaとCbの一方でフィードバック電流I0がX1方向に流れるとき、他方ではX2方向に流れる。
【0071】
第1の検知ユニット1Aに設けられた磁気抵抗効果素子R2,R3と第2の検知ユニット1Bに設けられた磁気抵抗効果素子R1,R4とで構成されるブリッジ回路は、図7(A)(B)と同じである。よって、第2の実施の形態の磁界検知装置20では、被測定電流I0に対して第1の実施の形態の磁界検知装置10と同じ検知出力を得ることができる。
【0072】
すなわち、第1の実施の形態と第2の実施の形態の双方において、第1の磁気検知部3Aに設けられた2個の磁気抵抗効果素子R2,R3は、固定磁性層の固定磁化Paの向きが互いに同じで、第2の磁気検知部3Bに設けられた2個の磁気抵抗効果素子R1,R4も固定磁性層の固定磁化Pbの向きが互いに同じである。また、第1の磁気検知部3Aに設けられた磁気抵抗効果素子R2,R3の固定磁化Paの方向と、第2の磁気検知部3Bに設けられた磁気抵抗効果素子R1,R4の固定磁化Pbの方向のうちの一方は、フィードバック磁界Heに沿う方向に向けられ、他方が前記フィードバック磁界Hdと逆方向に向けられている。
【0073】
第1の検知ユニット1Aに設けられた第1の磁気検知部3Aでは、2個の磁気抵抗効果素子R2,R3において、固定磁性層の磁化の固定方向Paと自由磁性層の磁化の方向Faが同じであるため、同じ基板上に少なくとも2個の磁気抵抗効果素子R2,R3を一緒に形成することができる。これは、第2の検知ユニット1Bに設けられた第2の磁気検知部3Bにおける少なくとも2個の磁気抵抗効果素子R1,R4においても同じである。ここで、少なくとも2個の磁気抵抗効果素子とは、それぞれの検知ユニット1A,1Bに例えば4個の磁気抵抗効果素子を、固定磁性層の固定磁化の方向と自由磁性層の磁化の方向と同じ向きに揃えて形成することが可能であることを意味している。
【0074】
それぞれの検知ユニット1A,1Bにおいて、磁気抵抗効果素子の固定磁性層の固定磁化の方向を同じ向きにできるため、固定磁性層と反強磁性層を積層して、固定磁性層の固定磁化を反強磁性結合で決めることが可能になる。すなわち、同じ検知ユニット内で同じ基板上に形成される磁気抵抗効果素子は、固定磁性層の固定磁化の向きが同じであるため、磁場中アニール処理によって固定磁化の向きを一緒に揃えることが可能になる。
【0075】
図8図9には、反強磁性結合を利用したGMR素子の製造方法が示されている。
図8(A)では、Ni−Fe−Crのシード層41の上に、Ir−Mnの反強磁性層42を成膜し、その上にCo−Feの第1の強磁性層43とRuの中間層44とCo−Feの第2の強磁性層45の3層構造の固定磁性層を形成する。固定磁性層を構成する第2の強磁性層45の上にCuの非磁性中間層46を形成し、その上にCo−Fe層とNi−Fe層の2層構造の自由磁性層47を形成し、さらにRuの酸化防止層48を形成する。
【0076】
図8(B)では、磁場中のアニール処理を行う。このアニール処理の結果、反強磁性層42と第1の強磁性層43との間の反強磁性結合により第1の強磁性層43の磁化が決められる。Ruの中間層44の厚さを適正に設定することで、第2の強磁性層45の磁化を第1の強磁性層43と逆向きに固定することが可能になる。このようにして、固定磁性層の固定磁化(Pin)が決められる。
【0077】
図8(C)では、エッチング処理によって、酸化防止層48を完全に除去し、自由磁性層47のNi−Fe層の上方の一部まで除去する。その後、図8(D)に示すように、連続して自由磁性層の一部であるCo−Feの強磁性層49と、Ir−Mnの反強磁性層51を磁場中で成膜する。さらにTaのキャップ層52を形成する。Ir−Mnの反強磁性層51を磁場中で成膜することで、アニール処理を経ることなく、層47と層49とが重ねられた自由磁性層にバイアス磁界を与えることができ、自由磁性層を単磁区化しその磁化の向きを固定磁性層の固定磁化の方向と直交する向きに揃えることができる。
【0078】
次に、図9に示す製造方法は、(A)においてシード層41、反強磁性層42、第1の強磁性層43、中間層44、第2の強磁性層45、非磁性中間層46、自由磁性層47を形成し、その後に、酸化防止層53としてRu層ではなくPt層を形成する。図9(B)では、磁場中アニールを行って、反強磁性結合により第1の強磁性層43と第2の強磁性層45の磁化を固定し、固定磁性層の固定磁化(Pin)が決められる。
【0079】
図9(D)では、Pt層の酸化防止層53を除去することなく、その上にNi−Fe層54と強磁性層49とIr−Mnの反強磁性層51を磁場中で成膜する。Pt層は強磁性結合を行うため、47,54,49の各層から成る自由磁性層の磁化が、固定磁性層の固定磁化(Pin)と直交する向きに決められる。
【0080】
図10(A)は、特許文献1や特許文献2に示すセルフ止め型の強磁性固定層を使用したGMR素子を使用した磁界検知装置を比較例として示し、図10(B)は、図8図9に示すように、磁場中アニール処理を行って反強磁性結合により固定磁性層の磁化方向を固定した実施例を示している。
【0081】
図10(A)(B)は、横軸に測定磁場の強度を示し、縦軸に電流センサでの検知出力(電圧出力)を示している。比較例と実施例において実線は初期の動作特性を示しており、破線は、500mTの強磁場に晒した後の動作特性を示している。図10(A)に示す比較例では、強磁場に晒されると、固定磁性層の磁化の固定が不安定になり、出力にバイアス値が重畳する。一方で、図10(B)に示す実施例では、固定磁性層の磁化の固定が安定し、バイアスによるノイズが重畳しない出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1A 第1の検知ユニット
1B 第2の検知ユニット
2A,2B 基板
3A 第1の磁気検知部
3B 第2の磁気検知部
10 磁界検知装置
17 コイル通電部
20 磁界検知装置
21 電流検知部
30 電流路
42 反強磁性層
43 第1の強磁性層
44 中間層
45 第2の強磁性層
46 非磁性中間層
47 自由磁性層
51 反強磁性層
C1 第1のコイル
C2 第2のコイル
Ca,Cb 直線部
Fa,Fb 自由磁性層の磁化の向き
H0 電流磁界
Ha,Hb 測定磁場
Hd,He フィードバック磁界
I0 被測定電流
IS1,IS2 電流センサ
Id フィードバック電流
Pa,Pb 固定磁性層の磁化の固定方向
R1,R2,R3,R4 磁気抵抗効果素子
R 検出抵抗
SW1,SW2,SW3,SW4 切替え部
Vd 検出電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11