(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超音波を受信する超音波デバイスからの信号を受信して処理信号を生成する受信回路部と、所定のスイッチング周期で駆動されて前記受信回路部に電力を供給するスイッチング電源と、を備えた超音波モジュールの制御方法であって、
前記受信回路部を、前記スイッチング周期における第一駆動タイミングで駆動させて、前記受信回路部から第一処理信号を出力させる工程と、
前記受信回路部を、前記第一駆動タイミングよりも、前記スイッチング電源におけるスイッチングノイズの半周期分だけ遅延させた第二駆動タイミングで駆動させて、前記受信回路部から第二処理信号を出力させる工程と、
前記第一処理信号と、前記第二処理信号とを加算処理する工程と、
を実施することを特徴とする超音波モジュールの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1、2に示す従来の構成では、スイッチングノイズを分散させることで、アーチファクトは低減するが、スイッチングノイズそのものが低減するものではない。したがって、部分的に粒状のアーチファクトが残留することがあり、アーチファクトを十分に低減することができず、精度の高い測定結果が得られないとの課題がある。
【0006】
本発明は、高精度な超音波測定結果が得られる超音波モジュール、超音波装置、及び超音波モジュールの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一適用例の超音波モジュールは、超音波を受信する超音波デバイスからの信号を受信して処理信号を生成する受信回路部と、所定のスイッチング周期で駆動されて前記受信回路部に電力を供給するスイッチング電源と、前記受信回路部を前記スイッチング周期における第一駆動タイミングで駆動させた際に出力される第一処理信号と、前記受信回路部を、前記第一駆動タイミングよりも前記スイッチング電源におけるスイッチングノイズの半周期分だけ遅延させた第二駆動タイミングで駆動させた際に出力される第二処理信号と、加算処理する信号加算部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本適用例では、スイッチング電源のスイッチング周期における第一駆動タイミングで受信回路部を駆動させた際に、当該受信回路部から出力される第一処理信号と、スイッチング周期における第二駆動タイミングで受信回路部を駆動させた際に、当該受信回路部から出力される第二処理信号とを加算処理する。ここで、第二駆動タイミングは、第一駆動タイミングよりも、スイッチングノイズの半周期分だけずれたタイミングである。このため、第一処理信号に重畳するスイッチングノイズと、第二信号処理に重畳するスイッチングノイズとは、半周期分ずれている。よって、これらの第一処理信号と第二処理信号とを加算処理すると、スイッチングノイズ同士が打ち消し合うことで、当該スイッチングノイズを低減させることができる。つまり、従来のように、スイッチングノイズを分散させる構成に比べて、スイッチングノイズそのものを減衰させることができるので、高精度な超音波測定結果を得ることができる。
【0009】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記第二駆動タイミングは、前記スイッチング電源のスイッチングN次高調波の周期に対して半周期分だけ遅延させたタイミングであることが好ましい。
本適用例では、第二駆動タイミングを、スイッチング電源のスイッチングN次高調波の周期に対して(N次のスイッチングノイズに対して)半周期分だけ遅延させるタイミングとする。スイッチング電源から発生するスイッチングノイズは、1次からN次まで発生し、このうち低次のスイッチングノイズは、帯域外となるので、例えばハイパスフィルターにより容易に除去することが可能となる。一方、N次のスイッチングノイズは、ハイパスフィルターにより除去することができず、第一処理信号や第二処理信号に重畳されたまま残留する。ここで、本適用例では、このようなN次のスイッチングノイズの半周期分だけ第二駆動タイミングを遅延させるので、第一処理信号に重畳されるN次のスイッチングノイズと、第二処理信号に重畳されるN次のスイッチングノイズとを打ち消し合うことができる。
【0010】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記超音波デバイスは、第一超音波受信部と、前記第一超音波受信部とは異なる第二超音波受信部とを含み、前記受信回路部は、前記第一超音波受信部からの信号を受信して、前記第一処理信号を出力する第一受信回路と、前記第二超音波受信部からの信号を受信して、前記第二処理信号を出力する第二受信回路と、を含み、前記スイッチング電源は、前記第一受信回路に前記第一駆動タイミングから前記スイッチング周期で電力を供給する第一スイッチング電源と、前記第二受信回路に前記第二駆動タイミングから前記スイッチング周期で電力を供給する第二スイッチング電源と、を含むことが好ましい。
【0011】
本適用例では、受信回路部は、第一受信回路及び第二受信回路を有し、超音波デバイスに設けられた第一超音波受信部からの受信信号が第一受信回路に入力され、超音波デバイスの第二超音波受信部からの受信信号が第二受信回路に入力される。また、第一受信回路は、第一スイッチング電源により駆動され、第二受信回路は第二スイッチング電源により駆動される。ここで、第二スイッチング電源は、第一スイッチング電源が第一受信回路を駆動させる第一駆動タイミングよりも、スイッチングノイズの半周期分遅延させた第二駆動タイミングで第二受信回路を駆動させる。すなわち、第一スイッチング電源のスイッチング周期と、第二スイッチング電源のスイッチング周波数は、スイッチングノイズの半周期分だけずれが生じている。
このため、上記適用例と同様に、第一処理信号に重畳されるスイッチングノイズに対して、第二処理信号に重畳されるスイッチングノイズも、スイッチングノイズの半周期分だけずれており、これらを加算処理することで、各スイッチングノイズを低減できる。
また、本適用例では、第一スイッチング電源及び第二スイッチング電源の駆動タイミングを制御することで容易にスイッチングノイズの低減を図れ、ノイズを除去するためのフィルター等の構成を簡略化できる。よって、超音波モジュールの構成の簡素化を図れる。
【0012】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記超音波デバイスは、一方向に沿って複数の超音波素子群が配列され、前記第一超音波受信部は、前記一方向に沿う奇数番目に位置する前記超音波素子群により構成され、前記第二超音波受信部は、前記一方向に沿う偶数番目に位置する前記超音波素子群により構成されていることが好ましい。
【0013】
一般に、対象物で反射された超音波を複数の超音波素子群にて受信する場合、隣り合う超音波素子群の受信信号は類似した信号波形となる。一方、超音波素子群間の距離が離れるほど、超音波が遅延伝達されるため、超音波の受信タイミングにも遅延し、信号波形に差が生じる。ここで、超音波の処理信号同士と加算処理する場合、各超音波素子群の受信タイミングまでの時間を、遅延時間を考慮して位相シフトさせた上で信号加算する。このため、上記のように、離れた超音波素子群からの処理信号を加算する場合、遅延時間に基づく位相シフト量が多くなり、スイッチングノイズの位置もシフトされる。この場合でも、スイッチングノイズが分散されることになるため、アーチファクトが顕著に現れることがない。しかしながら、スイッチングシフトが十分に低減できないために、ノイズ成分が残留することになり、十分な精度向上とはならない。
これに対して、本適用例では、超音波デバイスは、一方向に並ぶ複数の超音波素子群を有し、このうち、奇数番目の超音波素子群が第一受信回路に接続され、偶数番目の超音波素子群が第二受信回路に接続されている。よって、奇数番目の超音波素子群からの受信信号に基づく第一処理信号と、偶数番目の超音波素子群からの受信信号に基づく第二処理信号とを加算することで、類似する信号同士を加算することになる。これにより、効果的にスイッチングノイズを低減することができ、超音波測定の測定精度を向上できる。
【0014】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記超音波デバイスは、一方向に沿って複数の超音波素子群が配列され、前記第一超音波受信部は、前記一方向に沿う前記複数の超音波素子群のうちの、前記一方向における中心位置から一方側に配置された前記超音波素子群により構成され、前記第二超音波受信部は、前記一方向に沿う前記複数の超音波素子群のうちの、前記一方向における中心位置から他方側に配置された前記超音波素子群により構成されていることが好ましい。
本適用例では、一方向に並ぶ複数の超音波素子群のうち、一方向の中心位置から一方側の超音波素子群が第一受信回路に接続され、他方側の超音波素子群が第二超音波素子群に接続されている。このような構成では、超音波デバイスと、各受信回路部との接続配線の簡略化を図れる。
【0015】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記第一スイッチング電源及び前記第二スイッチング電源の駆動タイミングを制御するクロック制御部を備えていることが好ましい。
通常、スイッチング電源のスイッチング周期は、スイッチング電源に内蔵されているクロックから出力される。これに対して、本適用例では、上記のように、第一スイッチング電源と第二スイッチング電源とを、スイッチングノイズの半周期分ずらして駆動させる必要がある。各スイッチング電源に内蔵されたクロックに基づいて制御を行う場合、第一スイッチング電源のクロック信号(クロック周期)を第二スイッチング電源に出力し、かつ、第二スイッチング電源において、入力されたクロック周期から半周期分ずれたタイミングでスイッチング周期を同期させるクロック制御回路等の構成が必要となる。これに対して、本適用例では、別途設けられたクロック制御部により、第一スイッチング電源及び第二スイッチング電源の駆動タイミングを制御する。このような構成では、第一スイッチング電源及び第二スイッチング電源に対して、駆動タイミングを指令するだけでよく、構成及び処理の簡略化を図れる。
【0016】
本適用例の超音波モジュールにおいて、前記超音波デバイスは、超音波を送信する超音波送信部を含み、前記超音波デバイスによる超音波の送信処理及び受信処理を同期させて実施する超音波制御部を有し、前記超音波制御部は、前記第一駆動タイミングで前記超音波デバイスによる前記送信処理及び前記受信処理を同期して実施させて、前記受信回路部から前記第一処理信号を出力させ、前記第二駆動タイミングで前記超音波デバイスによる前記送信処理及び前記受信処理を同期して実施させて、前記受信回路部から前記第二処理信号を出力させることが好ましい。
【0017】
本適用例では、スイッチング電源のスイッチング周期における第一駆動タイミングで超音波の送受信処理を実施させた際に得られる第一処理信号と、スイッチング周期における第二駆動タイミングで送受信処理を実施させた際に得られた第二処理信号とを加算処理する。
例えば、スイッチング周期における第一駆動タイミングで超音波の送受信処理を実施し、受信回路部から1フレーム分の第一処理信号を取得する。この後、スイッチング周期における第一駆動タイミングとは、スイッチングノイズの半周期分遅延した第二駆動タイミングで超音波の送受信処理を実施し、受信回路部から1フレーム分の第二処理信号を取得する。そして、これらの第一処理信号と第二処理信号とを加算する。このような場合、2フレーム分の処理信号を受信可能な時間で、1フレーム分の画像を形成するための処理信号を取得することになる。しかしながら、上記適用例と同様に、各処理信号を加算処理することでスイッチングノイズを低減でき、高精度な測定結果を得ることができ、例えば、これらの処理信号に基づいて、高精度な画像を形成することが可能となる。
また、複数のスイッチング電源や、複数の受信回路部が不要となるので、構成の簡略化を図れ、超音波モジュールの小型化を図れる。
【0018】
本発明に係る一適用例の超音波装置は、超音波を受信する超音波デバイスからの信号を受信して処理信号を生成する受信回路部と、所定のスイッチング周期で駆動されて前記受信回路部に電力を供給するスイッチング電源と、前記受信回路部を第一駆動タイミングで駆動させた際に出力される第一処理信号と、前記受信回路部を前記第一駆動タイミングよりも前記スイッチング電源におけるスイッチングノイズの半周期分遅延させた第二駆動タイミングで駆動させた際に出力される第二処理信号と、を加算処理する信号加算部と、前記信号加算部により加算処理された信号に基づいて、対象物の内部断層画像を生成する画像処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本適用例では、上述した適用例の超音波モジュールと、当該超音波モジュールの信号加算部において第一処理信号及び第二処理信号を加算処理した信号(加算信号)に基づいて、画像を形成する画像処理部と、を備えている。
上述したように、超音波モジュールでは、スイッチング電源のスイッチングノイズが各処理信号に重畳された場合でも、これらのスイッチングノイズを低減できる。よって、スイッチングノイズが低減された加算信号に基づいて画像を形成することで、アーチファクトの発生を抑制した、高精度な画像を形成できる。
【0020】
本発明に係る一適用例の超音波モジュールの制御方法は、超音波を受信する超音波デバイスからの信号を受信して処理信号を生成する受信回路部と、所定のスイッチング周期で駆動されて前記受信回路部に電力を供給するスイッチング電源と、を備えた超音波モジュールの制御方法であって、前記受信回路部を、前記スイッチング周期における第一駆動タイミングで駆動させて、前記受信回路部から第一処理信号を出力させる工程と、前記受信回路部を、前記第一駆動タイミングよりも、前記スイッチング電源におけるスイッチングノイズの半周期分だけ遅延させた第二駆動タイミングで駆動させて、前記受信回路部から第二処理信号を出力させる工程と、前記第一処理信号と、前記第二処理信号とを加算処理する工程と、を実施することを特徴とする。
【0021】
本適用例では、上記適用例と同様に、第一処理信号に重畳されるスイッチングノイズと、第二処理信号に重畳されるスイッチングノイズとは、半周期分だけずれているので、これらの第一処理信号と第二処理信号を加算することで、スイッチングノイズを低減することができる。これにより、高精度な超音波測定の測定結果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の超音波装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の超音波装置1は、超音波プローブ2(超音波モジュール)と、制御部3と、表示部4とを含んで構成されている。なお、超音波プローブ2と制御部3と表示部4とがそれぞれ別体として構成される構成としてもよく、例えば筐体内に、超音波プローブ2、制御部3、及び表示部4が組み込まれて一体構成されているものであってもよい。
この超音波装置1は、超音波プローブ2の超音波デバイス21から、生体等の対象物に対して超音波を送信し、対象物の内部組織により反射された超音波を超音波デバイス21にて受信する。そして、超音波デバイス21にて超音波を受信した際に出力される受信信号を受信回路23により処理してエコー信号とし、そのエコー信号を整相加算回路24で加算処理する。そして、制御部3は、整相加算回路により加算処理された加算信号に基づいて、対象物の内部断層画像(Bモード画像)を生成し、表示部4にて表示させる。
以下、超音波装置1の各構成について、詳細に説明する。
【0024】
[超音波プローブ2の構成]
超音波プローブ2は、
図1に示すように、超音波デバイス21と、送受信部20(配線基板)と、電源部26と、を備えている。また、送受信部20には、選択回路22と、受信回路23と、整相加算回路24と、送信回路25と、が設けられている。
(超音波デバイスの構成)
図2は、本実施形態の超音波デバイス21の概略構成を示す断面図である。
図3は、超音波デバイス21における素子基板41の概略構成を示す平面図である。
超音波デバイス21は、
図2に示すように、素子基板41と、封止板42と、音響整合層43と、音響レンズ44と、により構成されている。
【0025】
素子基板41は、
図2に示すように、基板本体部411と、基板本体部411の封止板42側に設けられる振動膜412と、振動膜412に積層された圧電素子413と、を備えている。素子基板41は、
図3に示すような基板厚み方向から見た平面視において、素子基板41の中央領域はアレイ領域Ar1を備えており、このアレイ領域Ar1には、複数の超音波素子45がマトリックス状に配置されている。
【0026】
基板本体部411は、例えばSi等の半導体基板である。基板本体部411におけるアレイ領域Ar1内には、各々の超音波素子45に対応した開口部411Aが設けられている。また、各開口部411Aは、基板本体部411の背面41A側(封止板42側)に設けられた振動膜412により閉塞されている。
振動膜412は、例えばSiO
2や、SiO
2及びZrO
2の積層体等より構成され、基板本体部411の背面41A側全体を覆って設けられている。この振動膜412の厚み寸法は、基板本体部411に対して十分小さい厚み寸法となる。
【0027】
そして、各開口部411Aを閉塞する振動膜412上には、
図2に示すように、それぞれ下部電極414、圧電膜415、及び上部電極416の積層体である圧電素子413が設けられている。ここで、開口部411Aを閉塞する振動膜412及び圧電素子413により、1つの超音波素子45が構成される。
このような超音波素子45では、下部電極414及び上部電極416の間に所定周期の矩形波電圧が印加されることで、開口部411Aの開口領域内の振動膜412を振動させて超音波が送出することができる。また、対象物から反射された超音波により振動膜412が振動されると、圧電膜415の上下で電位差が発生する。したがって、下部電極414及び上部電極416間に発生する前記電位差を検出することで、受信した超音波を検出することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、
図3に示すように、上記のような超音波素子45が、素子基板41の所定のアレイ領域Ar1内に、X方向(スライス方向)、及びX方向に交差(本実施形態では直交)するY方向(スキャン方向であり、本発明における一方向)に沿って複数配置されることで、超音波アレイ46を構成する。
ここで、下部電極414は、X方向に沿う直線状に形成されている。すなわち、下部電極414は、X方向に沿って並ぶ複数の超音波素子45に跨って設けられており、アレイ領域Ar1外の端子領域Ar2において、第一電極パッド414Pを構成する。
一方、上部電極416は、アレイ領域Ar1内の各圧電素子413同士で接続され、その一部が端子領域Ar2まで引き出されて、第二電極パッド416Pを構成する。
【0029】
上記のような構成では、下部電極414で連結されたX方向に並ぶ超音波素子45により1つの超音波素子群45Aが構成され、当該超音波素子群45AがY方向に沿って複数並ぶ1次元アレイ構造の超音波アレイ46を構成する。
【0030】
封止板42は、素子基板41の背面41A側に接合され、素子基板41の強度を補強する。この素子基板41のアレイ領域Ar1に対向する領域には、素子基板41の開口部411Aに対応した複数の凹溝421が形成されている。これにより、振動膜412のうち、超音波素子45により振動される領域(開口部411A内)では、素子基板41との間に所定寸法のギャップが設けられることになり、振動膜412の振動が阻害されない。また、1つの超音波素子45からの背面波が他の隣接する超音波素子45に入射される不都合(クロストーク)を抑制することができる。
【0031】
また、振動膜412が振動すると、開口部411A側(作動面41B側)の他、封止板42側(背面41A側)にも背面波として超音波が放出される。この背面波は、封止板42により反射され、再びギャップを介して振動膜412側に放出される。この際、反射背面波と、振動膜412から作動面41B側に放出される超音波との位相がずれると、超音波が減衰する。したがって、本実施形態では、ギャップにおける音響的な距離が、超音波の波長λの4分の1(λ/4)の奇数倍となるように、各凹溝421の溝深さが設定されている。言い換えれば、超音波素子45から発せられる超音波の波長λを考慮して、素子基板41や封止板42の各部の厚み寸法が設定される。
【0032】
音響整合層43は、
図2に示すように、素子基板41の作動面41B側に設けられている。具体的には、音響整合層43は、素子基板41の開口部411A内に充填され、かつ、基板本体部411の作動面41B側から所定の厚み寸法で形成される。
音響レンズ44は、音響整合層43上に設けられ、その表面が超音波送受信端面となる。
これらの音響整合層43や音響レンズ44は、超音波素子45から送信された超音波を対象物に効率よく伝搬させ、また、対象物内で反射した超音波を効率よく超音波素子45に伝搬させる。このため、音響整合層43及び音響レンズ44は、素子基板41の超音波素子45の音響インピーダンスと、対象物の音響インピーダンスとの中間の音響インピーダンスに設定されている。対象物が生体である場合、上記のような音響インピーダンスの素材としては、例えばシリコーン等を挙げることができる。
【0033】
上記のような超音波デバイス21は、送受信部20上に配置され、各電極パッド414P,416Pは、送受信部20上に設けられた接続端子に接続されている。ここで、第二電極パッド416Pは、基準電位回路に接続されており、基準電位 (例えば0電位)に設定されている。一方、第一電極パッド414Pが接続された接続端子は、選択回路22に接続されている。
【0034】
(送受信部20及び電源部26の構成)
以下、送受信部20に設けられた選択回路22、受信回路23、受信回路23等に電力を供給する電源部26、整相加算回路24、及び送信回路25について説明する。また、図示は省略するが、送受信部20には、超音波の送信処理時において、受信回路23に所定電圧以上の信号が入らないようにクランプする機能を有するスイッチ回路等が設けられている。
【0035】
選択回路22は、第一電極パッド414Pに接続された各接続端子(駆動接続端子)と、受信回路23及び送信回路25との接続状態を切り替えるスイッチング回路である。すなわち、超音波デバイス21から超音波を送信する送信処理時には、選択回路22は、各駆動接続端子と、送信回路25とを接続する。また、対象物からの超音波を受信する受信処理時には、選択回路22は、各駆動接続端子と、受信回路23とを接続する。
【0036】
受信回路23は、第一受信回路231と、第二受信回路232とを含んで構成されている。
図4は、受信回路23の各受信回路231,232と、超音波デバイス21の各超音波素子群45Aとの接続関係を示す図である。なお、
図4において、選択回路22の図示は省略している。
受信回路23は、
図1及び
図4に示すように、第一受信回路231と、第二受信回路232とを備える。第一受信回路231は、超音波デバイス21のスキャン方向に並ぶ超音波素子群45Aのうちの奇数番目の超音波素子群45Aと電気的に接続されている。また、第二受信回路232は、超音波デバイス21のスキャン方向に並ぶ超音波素子群45Aのうちの偶数番目の超音波素子群45Aと電気的に接続されている。
【0037】
第一受信回路231は、奇数番目の各超音波素子群45Aに対して、それぞれ設けられた複数の受信部を備えている。これらの受信部は、各超音波素子群45Aから入力された受信信号(アナログ信号)から、エコー信号(デジタル信号)を生成する回路であり、具体的には、アンプ23Aと、ハイパスフィルター(HPF23B)と、A/Dコンバーター(A/D23C)と、を備えている。
第二受信回路232も同様の構成を有し、偶数番目の各超音波素子群45Aに対して、それぞれ設けられた複数の受信部を備え、これらの受信部は、アンプ23Aと、ハイフィルター(HPF23B)と、A/Dコンバーター(A/D23C)と、を備えている。
第一受信回路231の各受信部により処理された各受信信号は、それぞれ第一エコー信号として、整相加算回路24に出力される。本実施形態において、この第一エコー信号は、本発明における第一処理信号に相当する。
また、第二受信回路232の各受信部により処理された各受信信号は、それぞれ第二エコー信号として、整相加算回路24に出力される。本実施形態において、この第二エコー信号は、本発明における第二処理信号に相当する。
【0038】
また、これらの第一受信回路231及び第二受信回路232は、電源部26から供給される電力により駆動される。
具体的には、電源部26は、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262を備えている。これらの第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262は、それぞれ同様の構成を有する。すなわち、これらのスイッチング電源261,262は、半導体スイッチング素子によるオン、オフ制御により、当該オン、オフの切り替え周期(スイッチング周期)で駆動電圧を安定供給する。
【0039】
ところで、このようなスイッチング電源261,262は、1次からN次周期のスイッチングノイズが発生する。ここで、帯域外の低い周波数ノイズは、HPF23Bによりカットされるが、帯域内のN次のスイッチングノイズは、HPF23Bによりカットされずに残留することになる。したがって、電源部26から電力が供給される各受信回路231,232からのエコー信号(第一エコー信号、第二エコー信号)にも、当該N次のスイッチングノイズが重畳されることになる。このようなスイッチングノイズは、高次(N次)ほど小さくなるものの、整相加算によりスイッチングノイズが重畳されることで大きくなり、アーチファクトが発生する。
ここで、本実施形態では、後述する制御部3の制御により、第一スイッチング電源261の駆動タイミング(第一駆動タイミング)、及び第二スイッチング電源262の駆動タイミング(第二駆動タイミング)が、前記スイッチングノイズの半周期分ずらされる。すなわち、第一駆動タイミングにより第一スイッチング電源261が駆動された後、スイッチングノイズの半周期分遅延した第二駆動タイミングで第二スイッチング電源262が駆動される。
このため、第二受信回路232から出力される第二エコー信号に重畳されるスイッチングノイズは、第一受信回路231から出力される第一エコー信号に重畳されるスイッチングノイズよりも、スイッチングノイズの半周期分だけ遅延して重畳される。
【0040】
整相加算回路24は、第一受信回路231から入力された第一エコー信号と、第二受信回路232から入力された第二エコー信号とを整相加算処理し、加算信号を制御部3に出力する。この際、整相加算回路24は、深さ方向における測定位置(超音波反射位置)と各超音波素子群45Aとの間の距離や、超音波の送信タイミング等に応じて、エコー信号の位相を適宜調整して加算し、各信号を加算処理する。すなわち、本実施形態において、整相加算回路24は、本発明の信号加算部に相当する。
ここで、超音波デバイス21の近傍の反射位置で超音波が反射される場合、当該反射位置から各超音波素子群45Aまでを結ぶ線分の為す角度が大きくなる。すなわち、超音波デバイス21の近傍では、各超音波素子群45Aにおける超音波の受信タイミングに比較的大きなディレイが発生する。このため、エコー信号(第一エコー信号、第二エコー信号)を整相加算する場合、整相処理時において、各エコー信号の位相シフト量も比較的大きくなる。この場合、上記のように、各エコー信号にスイッチングノイズが重畳されていても、当該スイッチングノイズが分散されることになり、スイッチングノイズの影響は無視できる程度となる。
【0041】
一方、超音波デバイス21からの距離が遠い(所定値以上となる)反射位置で超音波が反射される場合、当該反射位置からの各超音波素子群45Aまでを結ぶ線分の為す角度が小さくなる。この場合、各超音波素子群45Aにおける超音波の受信タイミングは、ほぼ同時となる(ディレイがほぼ発生しない)。このため、エコー信号(第一エコー信号、第二エコー信号)を整相加算する場合、整相処理時において、各エコー信号の位相シフト量が小さく、上述したスイッチングノイズが分散されない。
図5は、従来の受信回路及び整相加算回路を示す図である。また、
図6は、
図5により処理された加算信号に基づいて生成された内部断層画像の一例である。
ここで、
図5に示すような従来の受信回路では、受信回路部から出力される各エコー信号の略同一位置に、スイッチングノイズが重畳される。この場合、整相加算回路にて各エコー信号が加算されると、スイッチングノイズが加算されて、
図6に示すように、内部断層画像に、アーチファクトAが発生する。
【0042】
図7(A)は、本実施形態における第一スイッチング電源261のスイッチング周期、(B)は、第一エコー信号の信号波形、(C)は、第二スイッチング電源262のスイッチング周期、(D)は、第二エコー信号の信号波形、(E)は、加算信号の信号波形を示す図である。
図7(D)における破線は、第一エコー信号を示している。
本実施形態では、
図7(A)(C)に示すように、第一スイッチング電源261がスイッチング周期Tで駆動された後(第一駆動タイミング)、スイッチングノイズの半周期分だけ遅延した第二駆動タイミングで第二スイッチング電源262が、第一スイッチング電源261と同じスイッチング周期Tで駆動される。なお、
図7に示す例では、スイッチング3次周期のスイッチングノイズが重畳される例である。
このため、
図7(B)(D)に示すように、第一エコー信号に重畳されるスイッチングノイズに対して、第二エコー信号に重畳されるスイッチングノイズも半周期分遅延する。
このため、整相加算回路24において、第一エコー信号と第二エコー信号とを加算処理すると、
図7(E)に示すように、各スイッチングノイズ同士がそれぞれ打ち消し合って減衰する。
【0043】
送信回路25は、制御部3の制御に基づいて、超音波デバイス21の各超音波素子群45Aに対して駆動信号(パルス信号)を出力する。これにより、各超音波素子群45Aから超音波が出力される。この際、各超音波素子群45Aに対して出力される駆動信号を順次遅延させることで、超音波デバイス21から送信される超音波の出力方向を制御することが可能となる。
【0044】
[制御部3の構成]
制御部3は、メモリー等の記憶部や、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を含んで構成されており、メモリーに記憶された各種プログラムを読み込み実行することで、
図1に示すように、送受信制御手段31、クロック制御手段32、及び画像処理手段33として機能する。
送受信制御手段31は、例えば操作手段(図示略)から超音波測定を実施する旨の操作信号が入力されると、選択回路22及び送信回路25に対して駆動指令信号を出力する。
【0045】
クロック制御手段32は、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262に対して、クロック信号を出力する。すなわち、クロック制御手段32は、第一スイッチング電源261に対して第一駆動タイミングt1(
図7参照)で、スイッチング周期Tの駆動を開始させる旨のクロック信号を出力する。また、クロック制御手段32は、第二スイッチング電源262に対して、第一駆動タイミングt1よりも、スイッチングノイズの半周期tnだけ遅延させた第二駆動タイミングt2で、スイッチング周期Tの駆動を開始させる旨のクロック信号を出力する。
【0046】
画像処理手段33は、本発明の画像処理部であり、整相加算回路24から入力された各加算信号に基づいて、内部断層画像を生成する。
【0047】
[超音波装置1の駆動方法]
次に、上記のような超音波装置1を用いた超音波測定方法(駆動方法)について説明する。
図8は、本実施形態の超音波装置1の駆動方法を示すフローチャートである。
超音波装置1に、例えば図示略の操作手段から超音波測定を開始する旨の操作信号が入力されると、制御部3の送受信制御手段31は、駆動指令信号を生成して超音波プローブ2に出力する(ステップS1)。
超音波プローブ2の選択回路22は、駆動指令信号に基づいて、まず、各駆動接続端子(各第一電極パッド414Pに接続される接続端子)と、送信回路25とを接続する(ステップS2)。
そして、送信回路25は、駆動指令信号に基づいて、各超音波素子群45Aに対して駆動信号を印加し、超音波を送信させる(ステップS3)。この際、超音波素子群45Aに対して駆動信号を遅延させて印加することで、各超音波素子群45Aの超音波の出力タイミングが遅延され、超音波の出力方向をスキャン方向に沿って変化させることが可能となる。すなわち、超音波アレイ46を中心とした扇状の測定範囲に対して超音波を走査させることができる。
【0048】
また、ステップS1で送受信制御手段31から、超音波プローブ2に駆動指令信号が出力されると、クロック制御手段32は、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262に対してクロック信号を出力する(ステップS4)。つまり、クロック制御手段32は、上述したように、第一スイッチング電源261に対して第一駆動タイミングt1でクロック信号を出力し、第二スイッチング電源262に対して、第一駆動タイミングt1よりもスイッチングノイズの半周期tnだけ遅延させた第二駆動タイミングt2でクロック信号を出力する。
なお、ステップS4の処理は、ステップS1と同時であってもよく、後述の超音波受信処理(ステップS5)の前に実施されれば、如何なるタイミングであってもよい。
【0049】
ステップS3の超音波の送信処理の後、選択回路22は、制御部3からの駆動指令信号に基づいて、各駆動接続端子と受信回路23とを接続する。これにより、
図4に示すように、スキャン方向に並ぶ奇数番目の超音波素子群45Aは第一受信回路231に接続され、偶数番目の超音波素子群45Aは第二受信回路232に接続される。すなわち、奇数番目の超音波素子群45Aは、本発明における第一超音波受信部を構成し、偶数番目の超音波素子群45Aは、本発明における第二超音波受信部を構成する。
そして、ステップS3により送信された超音波が対象物の内部の組織により反射されると、その反射超音波は、各超音波素子群45Aにて受信されて受信信号が受信回路23(第一受信回路231、第二受信回路232)に入力される(ステップS5)。
【0050】
そして、第一受信回路231にて処理された第一エコー信号、及び第二受信回路232にて処理された第二エコー信号は、整相加算回路24に入力され、整相加算回路24は、これらのエコー信号を整相加算処理する(ステップS6)。
この時、ステップS4により、第一受信回路231には、第一駆動タイミングt1からスイッチング周期Tの電力が供給され、第二受信回路232には、第二駆動タイミングt2からスイッチング周期Tの電力が供給されている。したがって、第一受信回路231から出力される第一エコー信号に重畳されるスイッチングノイズと、第二受信回路232から出力される第二エコー信号に重畳されるスイッチングノイズとは、
図7(B)(D)に示すように、当該スイッチングノイズの半周期分だけずれたタイミングで現れる。
よって、
図7(E)に示すように、これらのエコー信号を加算すると、スイッチングノイズが減衰された加算信号が出力されることになる。
【0051】
そして、整相加算回路24により整相加算処理が実施され、その加算信号が制御部3に入力されると、画像処理手段33は、当該加算信号に基づいて、対象物の内部断層画像を生成し(ステップS7)、表示部4に表示させる(ステップS8)。
なお、加算信号に基づいた画像生成処理については、従来の方法を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0052】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波装置1では、超音波プローブ2(超音波モジュール)は、超音波を受信する超音波デバイス21からの受信信号を受信し、エコー信号を生成する受信回路23を備える。この受信回路23は、第一受信回路231及び第二受信回路232を備え、第一受信回路231は、第一スイッチング電源261により、第一駆動タイミングt1からスイッチング周期Tで駆動されて第一エコー信号を出力する。また、第二受信回路232は、第二スイッチング電源262により、第一駆動タイミングよりもスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延した第二駆動タイミングから、スイッチング周期Tで駆動されて第二エコー信号を出力する。
【0053】
このため、第一エコー信号の重畳されるスイッチングノイズと、第二エコー信号に重畳されるスイッチングノイズは、当該スイッチングノイズの半周期tn分だけずれている。よって、整相加算回路24にて、これらの第一エコー信号及び第二エコー信号を加算処理すると、スイッチングノイズ同士が打ち消し合って減衰する。これにより、加算信号におけるスイッチングノイズを抑制することができ、精度の高い超音波測定を実施できる。
また、超音波装置1の画像処理手段33は、このような加算信号に基づいて、画像を生成する。この場合、生成された画像に、スイッチングノイズに起因するアーチファクトが発生せず、精度の高い測定結果に基づいた対象物の内部断層画像を生成できる。
【0054】
また、本実施形態では、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262の駆動タイミングを制御することで容易にスイッチングノイズの低減を図れる。よって、各エコー信号に含まれるノイズを除去するためのフィルター等の構成を簡略化でき、また、画像処理手段33において、スイッチングノイズを除去するためのフィルタリング処理も不要となるので、処理の簡略化も図れる。
【0055】
本実施形態の超音波プローブ2は、超音波デバイス21は、スキャン方向に沿って並ぶ複数の超音波素子群45Aを有し、これらの超音波素子群45Aのうちの奇数番目の超音波素子群45Aが第一受信回路231に接続され、偶数番目の超音波素子群45Aが第二受信回路232に接続されている。
一般に、遠く離れた超音波素子群45A同士では、所定の反射位置で反射された超音波を受信した際にディレイが発生する。この場合、整相加算回路24による整相加算処理において、当該受信超音波の位相を合わせる際に、位相シフト量が多くなる場合がある。この場合、スイッチングノイズも同程度シフトされるため、互いにスイッチングノイズの位置がずれ、十分に減衰できない場合がある。これに対して、本実施形態では、隣り合う超音波素子群45A同士のエコー信号を加算処理するため、整相加算時の位相シフト量が小さく、スイッチングノイズを効果的に低減できる。
【0056】
本実施形態では、制御部3は、各スイッチング電源261,262の駆動タイミングt1,t2及びスイッチング周期Tを指令するクロック制御手段32を備えている。
通常、スイッチング電源は、クロックを内蔵しており、当該クロックから出力されるクロック周期にて駆動される。しかしながら、この場合、第一スイッチング電源261のクロック周期を第二スイッチング電源262に出力し、かつ、第二スイッチング電源262において、入力されたクロック周期からスイッチングノイズの半周期tn分ずれたタイミングに同期させて駆動させる必要があり、回路構成や制御が複雑となる。これに対して、本実施形態では、制御部3のクロック制御手段32により、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262の駆動タイミングを制御するため、各スイッチング電源261,262に対して、駆動タイミングを指令するだけでよく、構成及び処理の簡略化を図れる。
【0057】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について、以下説明する。
上記第一実施形態では、スキャン方向に並ぶ複数の超音波素子群45Aのうち、奇数番目の超音波素子群45Aを第一受信回路231に接続し、偶数番目の超音波素子群45Aを第二受信回路232に接続した。これに対して、本実施形態では、第一受信回路231及び第二受信回路232に接続される超音波素子群45Aが、スキャン方向における中心に対して一方側と他方側で分ける点で相違する。なお、以降の説明にあたり、既に説明した構成や処理については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0058】
図9は、受信回路23の第一受信回路231及び第二受信回路232と、超音波デバイスの各超音波素子群との接続状態を示す図である。
本実施形態では、
図9に示すように、超音波アレイ46のスキャン方向(Y方向)における中心位置Y
0から一方側(
図9におけるY
1側)に配置された各超音波素子群45Aは、第一受信回路231に接続される。また、中心位置Y
0から他方側(
図9におけるY
2側)に配置された各超音波素子群45Aは、第二受信回路232に接続される。すなわち、Y
1側に配置された各超音波素子群45Aは、本発明の第一超音波受信部を構成し、Y
2側に配置された各超音波素子群45Aは、本発明の第二超音波受信部を構成する。
なお、他の構成については、上記第一実施形態と同様である。
本実施形態では、送受信部20において、各駆動接続端子と、受信回路23との配線構成の簡略化を図れる。
【0059】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、受信回路23が第一受信回路231及び第二受信回路232により構成され、これらに対応して第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262を設け、第一スイッチング電源261を第二スイッチング電源262の駆動タイミング(スイッチング周期)をずらすことで、スイッチングノイズを抑制した。これに対して、第三実施形態では、単一の受信回路部及び単一のスイッチング電源により構成され、信号取得タイミングを遅延させることでスイッチングノイズを低減する点で、上記第一実施形態と相違する。
【0060】
図10は、第三実施形態の超音波装置1Aの概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の超音波装置1Aは、
図10に示すように、超音波プローブ2Aと、制御部3Aと、表示部4とを備える。
超音波プローブ2Aは、第一実施形態と同様の構成の超音波デバイス21と、送受信部20と、スイッチング電源263と、を含んで構成されている。
送受信部20には、選択回路22と、受信回路233と、整相加算回路24と、送信回路25と、が配置されている。選択回路22、整相加算回路24、送信回路25は、第一実施形態と同様の構成を有する。
また、受信回路233は、第一受信回路231及び第二受信回路232と同様の構成を有する。この受信回路233は、超音波の受信処理において、選択回路22により、各超音波素子群45Aの各第一電極パッド414Pが接続される各駆動接続端子と電気的に接続される。そして、受信回路233には、各超音波素子群45Aからの受信信号を、それぞれ処理可能な複数の受信部(アンプ23A、HPF23Bと、A/D23C)を備えている。
【0061】
この受信回路233は、本発明の受信回路部に相当し、スイッチング電源263から供給される電力により駆動される。スイッチング電源263は、第一スイッチング電源261や第二スイッチング電源262と同様のスイッチング電源であり、スイッチング周期Tにより駆動され、受信回路233等に電力を供給する。本実施形態においても、制御部3Aからクロック信号が入力されることで、スイッチング電源263が当該クロック信号のクロック周期をスイッチング周期として駆動される。
なお、本実施形態では、スイッチング電源263にクロックが内蔵されている構成としてもよい。この場合、スイッチング電源263から制御部3Aに対してクロック周期を含むクロック信号が入力される。
【0062】
制御部3Aは、メモリー34と、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を含んで構成されており、メモリー34に記憶された各種プログラムを読み込み実行することで、
図10に示すように、送受信制御手段31A、クロック制御手段32、及び画像処理手段33Aとして機能する。
送受信制御手段31Aは、本発明における超音波制御部を構成し、第一実施形態と同様、例えば操作手段(図示略)から超音波測定を実施する旨の操作信号が入力されると、選択回路22及び送信回路25に対して駆動指令信号を出力する。また、送受信制御手段31Aは、超音波の送信処理と、受信処理とを同期して実施して1フレームの画像に対応したエコー信号を取得する。
【0063】
ここで、本実施形態の送受信制御手段31Aは、前記1フレームの画像に対応したエコー信号を取得する超音波の送受信処理を、タイミングをずらしながら複数回実施する。
すなわち、送受信制御手段31Aは、スイッチング電源263のスイッチング周期と同期して、各走査方向に対するエコー信号を取得する第一フレーム信号取得処理と、スイッチング周期に対してスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延したタイミングで、各走査方向に対するエコー信号を取得する第二フレーム信号取得処理とを、交互に実施する。
【0064】
具体的には、送受信制御手段31Aは、タイミング出力手段311と、送信指令手段312と、受信指令手段313として機能する。
タイミング出力手段311は、スイッチング電源263のスイッチング周期に同期して、第一フレームタイミング信号を出力する。第一フレームタイミング信号は、第一フレーム信号取得処理の開始を示すタイミング信号である。
また、タイミング出力手段311は、第一フレームタイミング信号の出力から所定の期間経過後に、スイッチング電源263のスイッチング周期に対してスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延させたタイミングで、第二フレームタイミング信号を出力する。
さらに、タイミング出力手段311は、第二フレームタイミング信号の出力から所定の期間経過後に、スイッチング電源263のスイッチング周期に同期して第一フレームタイミング信号を出力する。このように、タイミング出力手段311は、第一フレームタイミング信号と第二フレームタイミング信号とを交互に出力する。
【0065】
なお、前記所定の期間は、第一フレーム信号取得処理及び第二フレーム信号取得処理に係る時間であり、超音波を走査する対象エリアによって設定される。すなわち、超音波を対象エリアに走査させる際に、各超音波素子群45Aを順次遅延させて駆動させて超音波を所定の送信方向に送信する送信処理を実施し、対象物にて反射された超音波を受信する受信処理を実施する。以上の送受信処理を、送信時における超音波素子群45Aの駆動タイミングの遅延時間を変化させることで、超音波の送信方向を変化させ、対象エリア内の全ての範囲に対する、反射超音波の受信処理を実施する。よって、第一フレーム信号取得処理及び第二フレーム信号取得処理に係る期間は、上記処理が完了するまでの期間となる。
【0066】
送信指令手段312は、超音波プローブ2Aに対して超音波を送信させる旨の送信指令を出力する。この送信指令には、超音波の出力方向、即ち、各超音波素子群45Aに駆動信号を印加する際の遅延情報を含む。超音波プローブ2Aの選択回路22は、送信指令が入力されると、各駆動接続端子と送信回路25とを接続し、送信回路25から駆動信号を各超音波素子群45Aに出力する。
受信指令手段313は、超音波プローブ2Aに対して超音波を送信させる旨の送信指令を出力する。超音波プローブ2Aの選択回路22は、受信指令が入力されると、各駆動接続端子と受信回路233とを接続する。これにより、受信回路233から受信信号が整相加算回路24に出力され、整相加算回路から加算信号が制御部3に出力される。
なお、送受信制御手段31Aの具体的な動作については、後述する。
【0067】
画像処理手段33Aは、第一フレーム信号取得処理により取得された第一エコー信号に基づく第一加算信号と、第二フレーム信号取得処理により取得された第二エコー信号に基づく第二加算信号とを加算して、加算処理信号を生成し、この加算処理信号に基づいて、画像(内部断層画像)を形成する。
【0068】
ここで、本実施形態では、第一フレーム信号取得処理により取得された各第一エコー信号は、整相加算回路24により整相加算処理され、第一加算信号として制御部3Aに出力される。第一加算信号は、制御部3Aのメモリー34に適宜記憶される。
第一加算信号は、超音波反射位置で反射された超音波を各超音波素子群45Aにて受信した際に出力される受信信号を整相加算した信号である。所定の対象エリアに対して超音波の送信方向を走査させる場合、対象エリア内の各超音波反射位置に対して複数の第一加算信号が得られる。
なお、この第一加算信号では、各第一エコー信号に重畳されるスイッチングノイズが重ね合わされて増幅される。すなわち、第一加算信号は、スイッチングノイズを含んだ信号となる。本実施形態では、第一加算信号が本発明における第一処理信号に相当する。
【0069】
また、第二フレーム信号取得処理により取得された第二エコー信号も、第一エコー信号と同様に、整相加算回路24により整相加算処理され、第二加算信号として制御部3Aに出力される。この第二加算信号では、第二エコー信号のスイッチングノイズが重ね合わされて増幅される。当該スイッチングノイズは、第一加算信号におけるスイッチングノイズに対して、当該スイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延した位置に現れる。本実施形態では、第二加算信号は、本発明における第二処理信号に相当する。第二加算信号は、制御部3Aのメモリー34に適宜記憶される。
【0070】
そして、画像処理手段33Aは、メモリー34に記憶された第一加算信号及び第二加算信号を読み出し、これらの第一加算信号及び第二加算信号を加算することで、1フレーム分の内部断層画像に対応した加算処理信号を生成する。また、画像処理手段33Aは算出された加算処理信号に基づいて、内部断層画像を生成する。この際、第一加算信号に含まれるスイッチングノイズと、第二加算信号に含まれるスイッチングノイズとは、位相が半周期分ずれているため、互いに打ち消し合い、減衰される。
すなわち、本実施形態において、画像処理手段33Aは、本発明における画像処理部及び信号加算部として機能する。また、本発明の超音波プローブ2A及び制御部3Aにより本発明の超音波モジュールが構成される。
以上のように、本実施形態では、2フレーム分の画像に対応した加算信号(第一加算信号及び第二加算信号)を加算することで、1フレーム部の画像に対応した加算処理信号を生成する。
【0071】
[超音波装置1Aの駆動方法]
次に、上記のような超音波装置1Aを用いた超音波測定方法(駆動方法)について説明する。
図11は、本実施形態の超音波装置1の駆動方法を示すフローチャートである。
図12は、スイッチング電源263のスイッチング周期、フレームタイミング信号、超音波の送信タイミング信号、及び超音波の受信タイミング信号のタイミングチャートである。
超音波装置1Aの超音波測定処理では、例えば図示略の操作手段から超音波測定を開始する旨の操作信号が入力されると、制御部3の送受信制御手段31は、クロック制御手段32により、スイッチング電源263に対してクロック信号を出力する(ステップS21)。これにより、
図12(A)に示すように、スイッチング周期Tでスイッチング電源263が駆動される。
【0072】
次に、送受信制御手段31Aのタイミング出力手段311は、フレームタイミング信号を出力する(ステップS22)。具体的には、タイミング出力手段311は、
図12(B)に示すように、スイッチング周期に同期して第一フレームタイミング信号を出力する。また、タイミング出力手段311は、第一フレームタイミング信号の出力タイミングから、第一フレーム信号取得処理に係る所定期間の経過後、スイッチング周期からスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延したタイミングで、第二フレームタイミング信号を出力する。以降、タイミング出力手段311は、第一フレームタイミング信号と、第二フレームタイミング信号の出力を継続する。
【0073】
また、送受信制御手段31Aは、第一フレームタイミング信号が出力されたか否かを判定する(ステップS23)。
ステップS23において、Noと判定された場合は、ステップS23に戻り、第一フレームタイミング信号の検出を継続する。
ステップS23においてYesと判定された場合(
図12におけるタイミングt21)、第一フレーム信号取得処理が開始される。
この第一フレーム信号取得処理では、送信指令手段312は、スイッチング周期に同期して(スイッチング周期の立ち上がりに同期して)、送信指令信号を出力する。すなわち、選択回路22が各駆動接続端子と送信回路25とを接続し、送信処理が実施される(ステップS24)。また、送信指令手段312は、
図12(C)に示すように、送信指令信号と同時に送信タイミング信号を出力する。送信タイミング信号の出力期間は、超音波プローブ2から所定方向への超音波の送信が終了するまでの時間であり、例えば各超音波素子群45Aから1〜3パルス分の超音波が出力される。
【0074】
次に、受信指令手段313は、
図12(D)に示すように、送信タイミング信号の立下りタイミングt22と同期して、超音波プローブ2に受信指令信号を出力する。すなわち、選択回路22が各駆動接続端子と受信回路233とを接続し、受信処理が実施される(ステップS25)。また、受信指令手段313は、
図12(D)に示すように、受信指令信号と同時に受信タイミング信号を出力する。受信タイミング信号の出力期間は、超音波プローブ2にて、対象エリアからの反射超音波を受信可能な期間である。このステップS25により、超音波の送信方向における各深さでの反射超音波が検出され、受信回路233から第一エコー信号が整相加算回路24に出力される。これにより、第一加算信号が整相加算回路24から制御部3に出力され、当該第一加算信号がメモリー34に記憶される。
【0075】
この後、送受信制御手段31Aは、対象エリアに対する超音波走査が終了したか否かを判定する(ステップS26)。なお、ステップS26では、対象エリアに対して設定された全ての方向に対する超音波の送受信処理(ステップS24及びステップS25)が終了したか否かを判定してよく、第一フレーム信号取得処理に対して予め設定された時間が経過したか否かを判定してもよい。
【0076】
ステップS26において、Noと判定された場合は、ステップS24に戻り、
図12のタイミングt23,t24に示すように、スイッチング周期に同期した超音波の送受信処理を継続する。
一方、ステップS26において、Yesと判定された場合、送受信制御手段31Aは、タイミング出力手段311により、第二フレームタイミング信号が出力されたか否かを判定する(ステップS27)。
ステップS27において、Noと判定された場合、ステップS27に戻り、第二フレームタイミング信号の出力検出を継続する。
ステップS27においてYesと判定された場合(
図12のタイミングt25)、第二フレーム信号取得処理が開始される。
【0077】
この第二フレーム信号取得処理では、送信指令手段312は、スイッチング周期に対してスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延したタイミングt25で、送信指令信号を出力する。すなわち、送信処理を実施する(ステップS28)。また、送信指令手段312は、第一フレーム信号取得処理と同様、送信指令信号と同時に送信タイミング信号を出力する。
【0078】
次に、受信指令手段313は、
図12(D)に示すように、送信タイミング信号の立下りタイミングt26と同期して、超音波プローブ2に受信指令信号を出力する。すなわち、受信処理を実施する(ステップS29)。また、受信指令手段313は、第一フレーム信号取得処理と同様、受信指令信号と同時に受信タイミング信号を出力する。このステップS29により、超音波の送信方向における各深さでの反射超音波が検出され、受信回路233から第二エコー信号が整相加算回路24に出力される。これにより、第二加算信号が整相加算回路24から制御部3に出力され、当該第二加算信号がメモリー34に記憶される。
【0079】
この後、送受信制御手段31Aは、対象エリアに対する超音波走査が終了したか否かを判定する(ステップS30)。なお、ステップS30では、ステップS26と同様、対象エリアに対して設定された全ての方向に対する超音波の送受信処理(ステップS28及びステップS29)が終了したか否かを判定してよく、第二フレーム信号取得処理に対して予め設定された時間が経過したか否かを判定してもよい。
【0080】
ステップS30において、Noと判定された場合は、ステップS28に戻り、
図12のタイミングt27,t28に示すように、スイッチング周期に同期した超音波の送受信処理を継続する。
【0081】
一方、ステップS30において、Yesと判定された場合、画像処理手段33Aは、メモリー34に記憶された第一加算信号と、第二加算信号とをそれぞれ読み出す(ステップS31)。
そして、画像処理手段33Aは、これらの第一加算信号及び第二加算信号のうち、超音波反射方向(送信方向)が同一である信号同士を加算して、加算処理信号を生成する(ステップS32)。ここで、第一加算信号及び第二加算信号は、共に、スイッチングノイズが重畳され、整相加算処理により、当該スイッチングノイズが重ね合わされた信号となっている。しかしながら、第一加算信号におけるスイッチングノイズと、第二加算信号におけるスイッチングノイズは、半周期tnだけずれた位置に存在するため、上記のように第一加算信号及び第二加算信号を加算処理することで、これらのスイッチングノイズが互いに打ち消し合い減衰される。
【0082】
この後、画像処理手段33Aは、ステップS31にて算出された各加算処理信号に基づいて、対象物の内部断層画像を生成し、表示部4に表示させる(ステップS33)。
また、制御部3は、超音波による内部断層画像の測定を継続するか否かを判定する(ステップS34)。ステップS34において、Yesと判定された場合は、ステップS23に戻る。
【0083】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波装置1Aは、超音波プローブ2Aは、超音波デバイス21と、超音波デバイス21を用いた超音波の送信処理を実施する送信回路25と、超音波デバイス21の各超音波素子群45Aからの受信信号を処理し、エコー信号を出力する受信回路233と、を備えている。この受信回路233は、所定のスイッチング周期Tで駆動されるスイッチング電源263からの電力により駆動する。
そして、制御部3Aの送受信制御手段31Aは、スイッチング周期に同期して超音波の送受信処理を実施する。この時、受信回路233から出力された第一エコー信号を整相加算回路24により整相加算処理し、第一加算信号として、メモリー34に記憶する。また、制御部3Aの送受信制御手段31Aは、スイッチング周期に対してスイッチングノイズの半周期tn分だけ遅延したタイミングで超音波の送受信処理を実施する。この時、受信回路233から出力された第二エコー信号を整相加算回路24により整相加算処理し、第二加算信号として制御部3に出力する。そして、画像処理手段33Aは、メモリー34に記憶された第一加算信号と、第二加算信号とを加算処理し、加算処理信号として出力する。
【0084】
このような構成の超音波装置1Aでは、第一加算信号(第一エコー信号)に重畳されるスイッチングノイズと、第二加算信号(第二エコー信号)に重畳されるスイッチングノイズとが、スイッチングノイズの半周期tn分だけずれて現れる。このため、これらの第一加算信号と第二加算信号とを加算すると、互いのスイッチングノイズを打ち消し合い、その結果スイッチングノイズが低減される。したがって、第一実施形態と同様に、高精度な超音波測定結果を得ることができ、対象物に対する高精度な内部断層画像を生成することができる。
さらに、第一実施形態に比べて、単一の受信回路233、及び単一のスイッチング電源263により、スイッチングノイズを効果的に低減でき、構成の簡略化を図れる。また、従来の受信回路と、スイッチング電源を備えた超音波装置に対しても、上記のように対しても、送受信制御手段31A、クロック制御手段32、及び画像処理手段33Aを組み込むだけで、容易にスイッチングノイズの低減を図ることができる。このような送受信制御手段31A、クロック制御手段32、及び画像処理手段33Aは、例えばメモリー34等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPU等の演算回路が読み込み実行することで、構成することができる。したがって、既存の超音波プローブ2に対して、例えばこれらの機能を有するアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、容易に実現することも可能となる。
【0085】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0086】
例えば、上記第三実施形態において、第一加算信号を本発明の第一処理信号とし、第二加算信号を本発明の第二処理信号とし、画像処理手段33Aを本発明の信号加算部として、第一加算信号と第二加算信号とを加算する構成とした。これに対して、例えば、超音波プローブ2において、第一エコー信号及び第二エコー信号を記憶するメモリーを設け、整相加算回路により、これらの第一エコー信号及び第二エコー信号を整相加算処理して、制御部3に出力する構成としてもよい。この場合、第一エコー信号が本発明における第一処理信号、第二エコー信号が本発明における第二処理信号となり、整相加算回路24が本発明における信号加算部となる。このような場合でも、各第一エコー信号に重畳されるスイッチングノイズと、第二エコー信号に重畳されるスイッチングノイズが、当該スイッチングノイズの半周期tn分ずれる。したがって、これらを加算処理することで、スイッチングノイズを効果的に低減できる。
【0087】
上記第一実施形態において、制御部3のクロック制御手段32により、第一スイッチング電源261及び第二スイッチング電源262に対してクロック信号を出力して、第一スイッチング電源261と、第二スイッチング電源262との駆動周期をスイッチノイズの半周期分だけ遅延させた。これに対して、上述したように、第一スイッチング電源261から第二スイッチング電源262にクロック信号を出力し、第二スイッチング電源262において、入力されたクロック信号のクロック周期に対して、スイッチングノイズの半周期だけ遅延させて駆動させてもよい。
【0088】
第三実施形態において、クロック制御手段32からスイッチング電源263にクロック信号を出力する例を示すが、例えば、従来のクロックを内蔵したスイッチング電源を用いてもよい。この場合、スイッチング電源からクロック信号を制御部3に出力する。これにより、送受信制御手段31Aは、当該入力されるクロック信号のクロック周期(スイッチング周期)に基づいて、第一加算信号及び第二加算信号を取得することが可能となる。
【0089】
第三実施形態において、第一フレーム信号取得処理と、第二フレーム信号取得処理とを実施して、第一加算信号と、第二加算信号とを加算処理する例を示したが、これに限定されない。
例えば、スイッチング周波数に同期した第一フレーム信号取得処理、スイッチング周波数に対してスイッチングノイズの半周期分遅延させた第二フレーム信号取得処理、スイッチング周波数に同期した第三フレーム信号取得処理、及びスイッチング周波数に対してスイッチングノイズの半周期分遅延させた第四フレーム信号取得処理を実施してもよい。この場合、第一フレーム信号取得処理において取得される第一加算信号、第二フレーム信号取得処理において取得される第二加算信号、第三フレーム信号取得処理において取得される第三加算信号、及び第四フレーム信号取得処理において取得される第四加算信号を加算処理して、加算処理信号を生成する。
【0090】
上記各実施形態では、超音波デバイス21として、振動膜412上に、薄膜状の圧電素子413を積層することで、超音波を出力する超音波デバイス21を備える構成を例示したが、これに限定されない。超音波デバイスとしては、例えばバルク型の圧電体のスキャン方向に配置して超音波の送受信を行う構成などとしてもよい。その他、超音波デバイス21の構成としては、如何なる構成をも例示でき、例えば、ギャップを介して対向する一対の電極間に交流電圧を印加することで、振動膜を振動させる超音波素子等であってもよい。
【0091】
また、スキャン方向に沿って超音波素子群45Aが配置された1次元アレイ構造を例示したが、各超音波素子45がそれぞれ独立して駆動可能な2次元アレイ構造に構成されていてもよい。
【0092】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。