特許第6617512号(P6617512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617512
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   B60C11/12 C
   B60C11/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-203075(P2015-203075)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-74844(P2017-74844A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳恵
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−330319(JP,A)
【文献】 特開2014−193629(JP,A)
【文献】 特開2013−086726(JP,A)
【文献】 特開2006−123786(JP,A)
【文献】 特開2006−315579(JP,A)
【文献】 特開2011−000991(JP,A)
【文献】 特開2009−241882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝と、前記主溝間を接続する複数本の横溝とによって区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤであって、
少なくとも1つの前記ブロックは、タイヤ軸方向に前記ブロックを横切る第1サイプと、前記第1サイプで区画された各領域にそれぞれ配された第2サイプとを有し、
前記第2サイプは、両端が前記領域内で終端するクローズドサイプであり、
前記第2サイプの最大深さは、前記第1サイプの最大深さよりも小さく、
前記第1サイプは、タイヤ軸方向の一端を含む第1部分と、タイヤ軸方向の他端を含む第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、
前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれ、タイヤ周方向に振幅しながらタイヤ軸方向にのびる波状であり、
前記第1部分と前記第2部分とは、互いにタイヤ周方向に位置ずれし、
前記第3部分は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのび、
前記第3部分のタイヤ軸方向の長さは、前記第2サイプのタイヤ軸方向の長さよりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1サイプの最大深さは、前記主溝の最大深さの0.50〜0.90倍であり、
前記第2サイプの最大深さは、前記主溝の最大深さの0.20〜0.50倍である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ブロックは、両側の前記主溝に沿ってそれぞれのびる第1ブロック壁及び第2ブロック壁を有し、
前記第1ブロック壁及び前記第2ブロック壁は、それぞれ、ブロック外方に最も突出する頂点を有して凸となる略V字状でのびており、
前記第1サイプは、タイヤ軸方向の一端が前記第1ブロック壁の前記頂点のタイヤ周方向の一方側に位置し、タイヤ軸方向の他端が前記第2ブロック壁の前記頂点のタイヤ周方向の他方側に位置している請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1ブロック壁の前記頂点から前記第1サイプの前記一端までのタイヤ周方向の距離は、前記第1ブロック壁の頂点から前記第1ブロック壁のタイヤ周方向の一方側の端までのタイヤ周方向の距離の0.05〜0.20倍である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記主溝は、タイヤ赤道の両側に配された一対のセンター主溝と、前記各センター主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝とを含み、
前記横溝は、前記一対のセンター主溝の間を連通するセンター横溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通するミドル横溝と、前記ショルダー主溝から少なくともトレッド端までのびるショルダー横溝とを含み、
前記センター横溝及び前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向に沿って直線状にのび、
前記ミドル横溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、少なくとも一部が曲がっている請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー横溝の深さは、前記ショルダー主溝の深さの0.05〜0.25倍である請求項5記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に設けられたブロックの耐偏摩耗性を向上させ得る空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、六角形状の踏面を有するブロックが複数設けられた空気入りタイヤが提案されている。特許文献1の各ブロックには、接地時の踏面の歪みを緩和するために、踏面をタイヤ軸方向に横切るサイプが設けられている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のブロックは、上記サイプのみでは十分に接地時の踏面の歪みを緩和できない傾向があり、上記サイプで区画された各領域に偏摩耗が発生する傾向があった。このため、特許文献1の空気入りタイヤは、ブロックの耐偏摩耗性の向上については、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−30415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、サイプの形状等を改善することを基本として、ブロックの耐偏摩耗性を向上させ得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝と、前記主溝間を接続する複数本の横溝とによって区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤであって、少なくとも1つの前記ブロックは、タイヤ軸方向に前記ブロックを横切る第1サイプと、前記第1サイプで区画された各領域にそれぞれ配された第2サイプとを有し、前記第2サイプは、両端が前記領域内で終端するクローズドサイプであり、前記第2サイプの最大深さは、前記第1サイプの最大深さよりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1サイプの最大深さは、前記主溝の最大深さの0.50〜0.90倍であり、前記第2サイプの最大深さは、前記主溝の最大深さの0.20〜0.50倍であるのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1サイプは、タイヤ軸方向の一端を含む第1部分と、タイヤ軸方向の他端を含む第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれ、タイヤ周方向に振幅しながらタイヤ軸方向にのびる波状であり、前記第1部分と前記第2部分とは、互いにタイヤ周方向に位置ずれし、前記第3部分は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのびるのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3部分のタイヤ軸方向の長さは、前記第2サイプのタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ブロックは、両側の前記主溝に沿ってそれぞれのびる第1ブロック壁及び第2ブロック壁を有し、前記第1ブロック壁及び前記第2ブロック壁は、それぞれ、ブロック外方に最も突出する頂点を有して凸となる略V字状でのびており、前記第1サイプは、タイヤ軸方向の一端が前記第1ブロック壁の前記頂点のタイヤ周方向の一方側に位置し、タイヤ軸方向の他端が前記第2ブロック壁の前記頂点のタイヤ周方向の他方側に位置しているのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1ブロック壁の前記頂点から前記第1サイプの前記一端までのタイヤ周方向の距離は、前記第1ブロック壁の頂点から前記第1ブロック壁のタイヤ周方向の一方側の端までのタイヤ周方向の距離の0.05〜0.20倍であるのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記主溝は、タイヤ赤道の両側に配された一対のセンター主溝と、前記各センター主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝とを含み、前記横溝は、前記一対のセンター主溝の間を連通するセンター横溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通するミドル横溝と、前記ショルダー主溝から少なくともトレッド端までのびるショルダー横溝とを含み、前記センター横溝及び前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向に沿って直線状にのび、前記ミドル横溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、少なくとも一部が曲がっているのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー横溝の深さは、前記ショルダー主溝の深さの0.05〜0.25倍であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤの少なくとも1つのブロックは、タイヤ軸方向に前記ブロックを横切る第1サイプと、第1サイプで区画された各領域にそれぞれ配された第2サイプとを有している。第2サイプは、両端が前記領域内で終端するクローズドサイプである。第2サイプの最大深さは、第1サイプの最大深さよりも小さい。
【0015】
このような第1サイプ及び第2サイプは、 接地時のブロックの踏面の歪みを十分に緩和することができ、その偏摩耗を抑制することができる。しかも、第2サイプは、第1サイプよりも最大深さが小さいクローズドサイプであるため、第1サイプで区分された各領域の剛性が維持され、操縦安定性の低下を招くことなく、各領域の均一な摩耗が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のセンター陸部の拡大図である。
図3】(a)は、図2の第1サイプのA−A線断面図であり、(b)は、図2の第2サイプのB−B線断面図である。
図4図2のセンターブロックの拡大図である。
図5図1のミドル陸部の拡大図である。
図6図1のショルダー陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態の空気入りタイヤ1は、例えば、トラックやバス等の重荷重用のものとして好適に使用される。
【0018】
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝3で区画された陸部10が設けられている。
【0019】
主溝3は、例えば、一対のセンター主溝4、4、及び、ショルダー主溝5を含んでいる。センター主溝4は、例えば、タイヤ赤道の両側に1本ずつ設けられている。ショルダー主溝5は、例えば、最もトレッド端Te側に配されている。
【0020】
「トレッド端Te」は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0024】
各主溝3は、例えば、互いに逆向きに傾斜した第1傾斜部6aと第2傾斜部6bとがタイヤ周方向に交互に設けられたジグザグ状である。本実施形態の各主溝3において、第1傾斜部6aと第2傾斜部6bとは、例えば、タイヤ周方向の長さが同一である。各傾斜部6a、6bのタイヤ周方向に対する角度θ1は、例えば、5〜15°である。但し、主溝3は、このような態様に限定されるものではなく、直線状でも良い。
【0025】
各主溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド接地幅TWの1.5%〜5.0%であるのが望ましい。トレッド接地幅TWは、前記正規状態のタイヤ1のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。各主溝3の溝深さは、重荷重用空気入りタイヤの場合、例えば、20〜30mmであるのが望ましい。このような各主溝3は、ウェット性能と耐偏摩耗性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0026】
前記陸部10は、例えば、センター陸部11、ミドル陸部12、及び、ショルダー陸部13を含んでいる。センター陸部11は、一対のセンター主溝4、4の間に区画されている。ミドル陸部12は、センター主溝4とショルダー主溝5との間に区画されている。ショルダー陸部13は、ショルダー主溝5のタイヤ軸方向外側に区画されている。各陸部10は、主溝間を接続する横溝で区画されたブロック20がタイヤ周方向に並ぶブロック列である。
【0027】
図2には、センター陸部11の拡大図が示されている。図2に示されるように、センター陸部11には、センターブロック21がタイヤ周方向に隔設されている。センターブロック21は、例えば、一対のセンター主溝4、4の間をタイヤ軸方向に沿って直線状にのびるセンター横溝16で区画されている。
【0028】
各ブロック20は、例えば、各主溝に沿ってのびる第1ブロック壁25及び第2ブロック壁26と、横溝に沿ってのびる第3ブロック壁34、34とを有している。本実施形態の第1ブロック壁25及び第2ブロック壁26は、それぞれ、ブロック外方に最も突出する頂点27a、27bを有して凸となる略V字状でのびている。第3ブロック34は、例えば、トレッド部の平面視において、直線状である。これにより、各ブロック20は、例えば、六角形状の踏面を有している。
【0029】
本実施形態の各ブロック20は、タイヤ周方向の最大長さL1がタイヤ軸方向の最大長さL2よりも大きい縦長ブロックである。このようなブロック20は、タイヤ周方向の剛性が高く、転がり抵抗を低減するのに役立つ。
【0030】
少なくとも1つのブロック20は、第1ブロック壁25から第2ブロック壁26までタイヤ軸方向にブロック20を横切る第1サイプ30を有している。本明細書において「サイプ」とは、幅が0.5〜1.5mmの切り込みを意味し、排水用の溝とは区別される。本実施形態の第1サイプ30は、例えば、ブロック20のタイヤ周方向の中央部をタイヤ周方向にのびている。第1サイプ30の詳細な構成は、後述される。
【0031】
ブロック20は、第1サイプ30で区画された各領域35a、35bにそれぞれ配された第2サイプ38を有している。第2サイプ38は、両端が前記領域内で終端するクローズドサイプである。
【0032】
図3(a)には、図2の第1サイプ30のA−A線断面図が示されている。図3(b)には、図2の第2サイプ38のB−B線断面図が示されている。図3(a)及び(b)に示されるように、第2サイプ38の最大深さd2は、第1サイプ30の最大深さd1よりも小さい。
【0033】
このような第1サイプ30及び第2サイプ38は、 接地時のブロックの踏面の歪みを十分に緩和することができ、その偏摩耗を抑制することができる。しかも、第2サイプ38は、第1サイプ30よりも最大深さが小さいクローズドサイプであるため、第1サイプ30で区分された各領域の剛性が維持され、操縦安定性の低下を招くことなく、各領域の均一な摩耗が得られる。
【0034】
上述の効果をさらに発揮するために、第2サイプ38の最大深さd2と第1サイプ39の最大深さd1との比d2/d1は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上であり、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.45以下である。
【0035】
より具体的には、第1サイプ30の最大深さd1は、主溝3(図1に示され、以下、同様である。)の最大深さd3(図示省略)の0.50〜0.90倍であるのが望ましい。第2サイプ38の最大深さd2は、主溝3の最大深さd3の0.20〜0.50であるのが望ましい。このような第1サイプ30及び第2サイプ38は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0036】
図4には、本実施形態のブロック20を説明するための図として、図2のセンターブロック21の拡大図が示されている。図4に示されるように、第2サイプ38は、例えば、タイヤ周方向に振幅してタイヤ軸方向にのびる波状であるのが望ましい。このような第2サイプ38は、互いに向き合うサイプ壁同士が強く噛み合うことにより、ブロックの剛性を高めることができ、ひいてはブロックの耐偏摩耗性を向上させる。
【0037】
上述の効果をさらに発揮させるために、第2サイプ38のタイヤ周方向のピークトゥピークの振幅量A2は、ブロック20のタイヤ周方向の最大長さL1(図2に示す)の0.03〜0.15倍であるのが望ましい。
【0038】
第2サイプ38のタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、ブロック20のタイヤ軸方向の最大長さL2(図2に示す)の0.30〜0.40倍である。このような第2サイプ38は、転がり抵抗の増加を抑制しつつ、ブロックの耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態の第1サイプ30は、例えば、タイヤ軸方向の一端30aを含む第1部分31と、タイヤ軸方向の他端30bを含む第2部分32と、第1部分31と第2部分32との間の第3部分33とを含んでいる。
【0040】
第1部分31及び第2部分32は、それぞれ、タイヤ周方向に振幅しながらタイヤ軸方向にのびる波状であるのが望ましい。即ち、第1部分31は、同じ振幅でタイヤ軸方向にのびている。第2部分32も、同じ振幅でタイヤ軸方向にのびている。このような第1部分31及び第2部分32は、互いに向き合うサイプ壁同士が強く噛み合うことにより、ブロックの剛性を高めることができ、ひいてはブロックの耐偏摩耗性を向上させる。
【0041】
第1部分31及び第2部分32のタイヤ周方向のピークトゥピークの振幅量A1は、例えば、第2サイプ38の振幅量A2よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1部分31及び第2部分32の前記振幅量A1は、第2サイプ38の前記振幅量A2の好ましくは1.30倍以上、より好ましくは1.35倍以上であり、好ましくは1.50倍以下、より好ましくは1.45倍以下である。これにより、ブロック20が接地し、各サイプの各サイプ壁同士が接触したとき、ブロック20の中央部のタイヤ軸方向の剛性が相対的に高められる。このため、第1ブロック壁25及び第2ブロック26の頂点27a、27b付近の偏摩耗が抑制される。
【0042】
望ましい態様として、本実施形態の第1部分31と第2部分32とは、例えば、互いにタイヤ周方向に位置ずれしている。このような第1部分31及び第2部分32は、第1サイプ30で区画された各領域35a、35bのタイヤ周方向の剛性を緩和し、ひいてはブロック20の踏面の踏み込み側の端縁及び蹴り出し側の端縁に作用する衝撃を小さくすることができる。従って、ブロック20のヒールアンドトー摩耗が効果的に抑制される。
【0043】
さらに望ましい態様として、第1部分31のタイヤ軸方向の長さは、第2部分32のタイヤ軸方向の長さと同一である。これにより、ブロック20が均一に摩耗し、耐偏摩耗性がさらに向上する。
【0044】
第3部分33は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのびている。第3部分33のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、40〜60°である。このような第3部分33は、接地時の踏面の歪みを効果的に緩和することができる。
【0045】
第3部分33のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、第2サイプ38のタイヤ軸方向の長さL10よりも小さいのが望ましい。具体的には、第3部分33の前記長さL3は、第2サイプ38のタイヤ軸方向の長さL10の好ましくは0.70倍以上、より好ましくは0.75倍以上であり、好ましくは0.85倍以下、より好ましくは0.80倍以下である。このような第3部分33は、ブロックの中央部の剛性を高め、転がり抵抗の増加を抑制するのに役立つ。
【0046】
望ましい態様として、第1サイプ30は、例えば、前記一端30aが第1ブロック壁25の頂点27aのタイヤ周方向の一方側(図4では上側)に位置し、前記他端30bが第2ブロック壁26の頂点27bのタイヤ周方向の他方側(図4では下側)に位置している。このような第1サイプ30の一端30a及び他端30bは、大きな応力が作用するブロック壁25、26の頂点27a、27bからずれた位置に設けられるため、ブロック壁の頂点付近の偏摩耗を抑制することができる。また、第1サイプ30で区画された各領域35a、35bは、それぞれ、ブロック壁の1つの頂点を含んでいるため、各領域の剛性がバランス良く高められ、均一な摩耗が得られる。
【0047】
第1サイプ30の端とブロック壁の頂点との距離が小さい場合、前記頂点付近が偏摩耗するおそれがある。前記距離が大きい場合、第1サイプ30と第3ブロック壁34との距離が小さくなり、ブロックの剛性が低下するおそれがある。このため、第1ブロック壁25の頂点27aから第1サイプ30の一端30aまでのタイヤ周方向の距離L5は、第1ブロック壁25の頂点27aから第1ブロック壁25のタイヤ周方向の一方側の端28までのタイヤ周方向の距離L4の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.10倍以上であり、好ましくは0.30倍以下、より好ましくは0.20倍以下である。
【0048】
同様の観点から、第2ブロック壁26の頂点27bから第1サイプ30の他端30bまでのタイヤ周方向の距離L7は、第2ブロック壁26の頂点27bから第2ブロック壁26のタイヤ周方向の他方側の端29までのタイヤ周方向の距離L6の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.10倍以上であり、好ましくは0.30倍以下、より好ましくは0.20倍以下である。
【0049】
さらに望ましい態様として、第1サイプ30の一端30a及び他端30bは、ブロック壁25、26に含まれるスリット37に連なるのが望ましい。なお、スリット37は、ブロック壁25、26のうち、部分的にタイヤ半径方向に対する角度が大きくなり、踏面に連なる傾斜面である。これにより、第1サイプ30の端を起点とした偏摩耗がさらに抑制される。
【0050】
図5には、図1のミドル陸部12の拡大図が示されている。図5に示されるように、ミドル陸部12には、例えば、ミドルブロック22がタイヤ周方向に隔設されている。ミドルブロック22は、例えば、センター主溝4とショルダー主溝5との間を接続するミドル横溝17で区画されている。
【0051】
ミドル横溝17は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜15°の角度θ3で傾斜してのび、かつ、少なくとも一部が曲がっている。さらに望ましい態様として、本実施形態のミドル横溝17は、一対の第1横溝部41、41と第2横溝部42とを含んでいる。第1横溝部41は、例えば、センター主溝4又はショルダー主溝5に連なっている。第2横溝部42は、例えば、各第1横溝部41、41の間に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して第1横溝部41よりも大きい角度で傾斜している。これにより、ウェット走行時、第1横溝部41内の水が滑らかに主溝側に案内され、ひいてはウェット性能が高められる。
【0052】
本実施形態のミドルブロック22は、例えば、上述したセンターブロック21と同様の構成を有している。即ち、ミドルブロック22は、上述した各ブロック壁25、26、並びに、第1サイプ30及び第2サイプ38を有している。なお、図5に示されたミドルブロック22において、図4に示されたセンターブロック21と共通する構成には、同一の符号が付されている。
【0053】
図6には、図1のショルダー陸部13の拡大図が示されている。図6に示されるように、ショルダー陸部13には、例えば、ショルダーブロック23がタイヤ周方向に隔設されている。ショルダーブロック23は、ショルダー主溝5から少なくともトレッド端Teまでのびるショルダー横溝18で区画されている。
【0054】
ショルダー横溝18は、例えば、タイヤ軸方向に沿ってのびる直線状である。望ましい態様として、本実施形態のショルダー横溝18の深さは、ショルダー主溝5の深さの0.05〜0.25倍である(図示省略)。これにより、高い剛性を有するショルダー陸部13がトレッド部の両側に配され、ひいてはセンター陸部11及びミドル陸部12(図1に示す)に作用する接地荷重が緩和される。従って、センター陸部11及びミドル陸部12の耐偏摩耗性がさらに高められる。
【0055】
本実施形態のショルダーブロック23は、例えば、略五角形状の踏面を有する。望ましい態様として、ショルダーブロック23の踏面には、サイプが設けられていない。このようなショルダーブロック23は、優れた耐久性を発揮することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0057】
図1の基本パターンを有するサイズ11R22.5の重荷重用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、第1サイプの最大深さと第2サイプの最大深さとが同一の空気入りタイヤが試作された。テストタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性、及び、偏摩耗の有無がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0058】
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用い、下記の条件での転がり抵抗を測定した。結果は、比較例1を100とする指数で示されている。数値が小さい程、転がり抵抗が小さく、良好である。
装着リム:22.5×8.25
タイヤ内圧:830kPa
縦荷重:25.01N
速度:80km/h
【0059】
<耐摩耗性>
下記テスト車両で乾燥路面を一定距離走行した後のセンターブロックの摩耗量が測定された。結果は、比較例のセンターブロックの摩耗量を100とする指数で表示されている。数値が小さい程、耐摩耗性が優れていることを示す。
テスト車両:10t積トラック、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載
タイヤ装着位置:全輪
タイヤ内圧:720kPa
【0060】
<偏摩耗の有無>
上記テスト車両で乾燥路面を一定距離走行した後、第2サイプ付近の偏摩耗の有無が確認された。
テスト結果が表1に示される。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から明らかなように、実施例の空気入りタイヤは、偏摩耗が抑制されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0063】
2 トレッド部
3 主溝
20 ブロック
30 第1サイプ
38 第2サイプ
d1 第1サイプの最大深さ
d2 第2サイプの最大深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6