(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は請求項2に記載の集光シートが鉛直方向光変向部の光入射面側または光出射面側の何れか片方の面側の少なくとも一部を覆うように設けられていることを特徴とする採光装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照し、説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図面では、分かりやすさのため、寸法や形状を誇張して記載することがある。また、各図面では、見易さのため、繰り返しとなる符号の一部を省略することがある。
【0014】
図1に示すように、建物の壁面1には、開口部Opeが設けられている。以下、鉛直方向をZ軸方向とし、水平方向のうち前記建物の壁面に平行する方向をX軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。また、X軸方向及びY軸方向に沿って広がる平面をXY面とし、X軸方向及びZ軸方向に沿って広がる平面をXZ面とし、Y軸方向及びZ軸方向に沿って広がる平面をYZ面とする。
開口部OpeのX軸方向における幅はWとする。
【0015】
集光シート6は、透光性を有し、開口部OpeのXZ面に設けられている。
図1では、開口部Opeと集光シート6を各々明確に図示するためにY軸方向において位置をずらして記載しているが、実際は開口部Opeと集光シート6は同じ位置に重なっている。特に断りのない限り、以下記載される開口部Opeと集光シート6とは同じ位置に重なっていることを前提とする。
【0016】
図1において、室内Riから開口部Opeを見たとき、開口部Opeの左端をXY面上の原点O(0,0)、座標を構成し、X軸方向に沿って原点Oより右側を正とする実数をxとし、座標を構成し、Y軸方向に沿って原点Oより室内Ri側を正とする実数をy、Z軸方向に沿って原点Oより紙面上側(即ち、紙面より手前側)を正とする実数をzとする。
また、本発明では、太陽光等の光が集光シート6に入射する角度(即ち、光の集光シート6に対する入射角度であり、光の方位)が変わっても、XY面に沿って室内Riに光を採り込むことが可能な集光シートを提供することを目的としている。そのため、XY面、即ち水平方向における光のふるまい等について言及しているため、特に断りのない限り、XY面上の任意の点の座標は、z=0を省略した形式で表記し、例えば、任意の点のxをA、yをBとした場合、(A,B)と表記する。
【0017】
以下では、
図2に示すように、集光シート6に入射する光(以下、入射光とする)及び集光シート6から出射する光(以下、出射光とする)の方向を、Y軸方向を基準として、Y軸方向と各々の光の進行方向とのなす角度で表す。即ち、Y軸方向に沿って進む入射光の集光シート6に対する入射角は0°とし、集光シート6からY軸方向に沿って平行に進む出射光の出射角は0°とする。
また、室外RoからXY面上の任意の角度θ
inで集光シート6に入射した平行光は、ピーク角度θ
outで集光シート6から室内Riへ出射する。θ
inおよびθ
outについては、Z軸方向とは反対方向に(即ち、開口部Ope上方から)見てY軸を基準に時計周りの方向を正とする。
【0018】
図3に示すように、XY面の点の座標は、X軸方向における開口部Opeの幅Wを基準とし、幅Wに係数をかけた実数で表す。このような座標を用いて各々の点の位置関係を示している。
【0019】
図4に示すように、本発明の実施形態における、室内Riの任意の点P
xy(x,y)とX軸上の任意の点P
x0(K,0)とを結ぶ直線L
Kは点P
x0(K,0)を中心としてY軸と角φ
xyをなす。点P
xy(x,y)と点P
x0(K,0)との距離はD
xyである。
X
xyは、点P
xyから点P
x0へのX軸方向のベクトル値を示す。X
xyは、次に示す式(6)で表され、
図4に示すXY面では(即ち、X軸方向とは反対方向に向かう場合は)負の値を取る。
【0021】
Y
xyは、点P
x0から点P
xyへのY軸方向のベクトル値を示す。Y
xyは、次に示す式(7)で表され、開口部Ope上にある任意の点から室内Riにある任意の点P
xy(x,y)へのY軸方向のベクトル値Y
xyは正の値を取る。
【0023】
また、直線L
KがY軸となす角φ
xyは、次に示す式(8)で示すことが出来る。
【0025】
式(6)及び式(8)より、次に示す式(9)が成り立つ。
【0027】
なお、開口部Ope上方から見たときに、直線L
Kが点P
x0(K,0)を中心としてY軸に対し反時計周りの方向に傾斜していることから、
図4に示すφ
xyは、負の値をとる。
【0028】
直線L
KがY軸となす角φ
xyと点P
xyから点P
x0へのX軸方向のベクトル値X
xyは、各々の相対位置によって、負の値を取る場合もあり、正の値を取る場合もある。ここで、室内Riの任意の点P
xy(x,y)とX軸上の任意の点P
x0(K,0)のX軸方向における位置が同じである場合、即ちx=Kである場合、φ
xy及びX
xyはともに0(ゼロ)とする。
【0029】
直線L
KがY軸となす角φ
xyとこれら二点の距離D
xyについては次に示す式(10)の関係が成り立つ。
【0031】
式(10)より、次に示す式(11)が成り立つ。
【0033】
さらに、式(7)及び式(9)から、距離D
xyは次に示す式(12)で示される。
【0035】
図5Aに示すように、室内Riの点P
7(0.75W,0.5W)と原点O(0,0)とを結ぶ直線L
7がY軸となす角度φ
7は、式(9)より、次に示す式(13)で示される。
【0037】
点P
7と原点Oとの距離D
7は、式(12)及び式(13)より、次に示す式(14)で示される。
【0039】
図5Bに示すように、室内Riの点P
7(0.75W,0.5W)と点P
0(W,0)とを結ぶ直線L
8が直線x=Wとなす角度φ
8は、式(9)より、次に示す式(15)で示される。ここで、開口部Ope上方から)見たときに、直線L
8は直線x=Wに対して時計回りの方向に傾斜しているため、角度φ
8は正の値となる。
【0041】
点P
7と点P
0との距離D
8は、式(12)及び式(15)より、次に示す式(16)で示される。
【0043】
本明細書において、平行光とはFWHM(Full Width at Half Maximum)が3°以下である光のことをいう。
平行光が点光源から発せられる場合、FWHMは例えば配光特性測定装置(例えば、GENESIA Gonio Far Field Profiler(株式会社ジェネシア製))を用いて、以下の方法により測定することができる。
【0044】
先ず、平行光を発する点光源から垂直に出光する出射光(出光角度=0°)の照度を基準値E
0とし、出光角度−90°から+90°の範囲内の出射光の照度を、基準値E
0に対する相対値として、例えば1°おきに測定する。そして、各出光角度に対する相対照度の値をプロットして相対照度曲線を得る。得られた相対照度曲線における半値幅(全半値幅)がFWHMである。
【0045】
集光シート6の相対照度分布は、以下の方法により測定することができる。相対照度分布測定に使用する光源は、平行光を発する点光源である。
図6に示すように、XZ面に設置された集光シート6に対して何れか一方の面、即ち平滑面6a側又は反対側の微細凹凸面6b側に、Y軸を基準としたXY面上における任意の角度θ
insで集光シート6へ平行光を点光源20から入射する。任意の角度θ
insで入射した平行光は、集光シート6への光の入射面とは反対側の面からY軸に対してピーク角度θ
outsを有する拡散光として出射する。ピーク角度θ
outsとは、角度θ
insで入射した光が集光シート6から出射する拡散光の中で最大照度の出射光の、XY平面におけるY軸を基準とした出射角度のことをいう。集光シート6から出射した拡散光について、XY面上におけるY軸を基準とした−90°から+90°の範囲内で任意の測定角度φsにおける出射光の照度Eθ
insφ
sを検出器21で測定する。そして、XY面における出射光を基準値E
0の相対照度(E
θinsφs/E
0)としてプロットすれば、相対照度分布が得られる。
上述の測定方法によれば、例えば平行光がY軸を基準として入射角度θ
ins=40°で集光シート6に入射した場合の相対照度E
40°φs/E
0の分布が
図7に示すグラフのように得られる。
【0046】
本明細書において、平行光が太陽のような光源から発せられるとすると、平行光は単一の点光源ではなく、無数の点光源の集合体から発せられると考えられる。XY平面に限定すると、平行光はXY平面に多くの点光源が並んで存在しているところから発せられると考えられる。本来であれば、多数存在する点光源の各々について説明が必要であるが、本明細書においては簡略化し、複数の点光源の集合体を一つの点光源とみなして説明する。また、本明細書中では「平行光の点光源から」と記載しているが、この記載についても、上記のように複数の点光源の集合体からなる光源から平行光が発せられるという考え方に基づいている。
【0047】
図8では、本発明の一実施形態である集光シート6に太陽光等の平行光L1がXY面上においてY軸に対して角度θ
inmで入射した際に、集光シート6からピーク角度θ
outmで出射する拡散光L2が測定点P
m(x
m,y
m)に到達する状況を示している。
なお、
図8では、説明の簡略化のため、XY面上で一列に存在する多数の点光源の各々から発せられる平行光L1のうち、三つの平行光L1α,L1β,L1γを例示している。
【0048】
図8に示すように、各々の平行光L1α、L1β、L1γは集光シート6に角度θ
inmで入射し、室内Riで集光シート6からピーク角度θ
outmを持つ拡散光L2α、L2β、L2γとして、X軸上の点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)から出射する。
【0049】
集光シート6から出射した拡散光L2αは点α(x
α,0)からY軸に対する角度φm=α、L2βは点β(x
β,0)から角度φm=β、L2γは点γ(x
γ,0)から角度φm=γで測定点P
m(x
m,y
m)に届く。
【0050】
角度α(即ち、室内Riの測定点P
m(x
m,y
m)とX軸上の点α(x
α,0)とを結ぶ直線がY軸に対してなす角度)は、式(9)より、次に示す式(17)で示される。
【0052】
同様に、角度β,γ(各々、室内Riの測定点P
m(x
m,y
m)とX軸上の各々の点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)とを結ぶ直線がY軸に対してなす角度)は、式(9)より、次に示す式(18)及び式(19)で示される。
【0055】
図8を簡略化した
図9に示すように、室内Riの測定点P
m(x
m,y
m)とX軸上の点α(x
α,0)との距離D
αは、式(12)より、次に示す式(20)で示される。
【0057】
同様にして、室内Riの測定点P
m(x
m,y
m)とX軸上の各々の点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)との距離D
β,D
γは、式(12)より、次に示す式(21)及び式(22)で示される。
【0060】
図10は、集光シート6への平行光の入射角度θ
inmにおける相対照度E
θinmφm/E
0の相対照度分布は
図10のように表される。
図8において、点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)の各々の点から点Pm(xm,ym)に向かう光の相対照度は、
図10の相対照度分布から読み取ることができる。即ち、L2αのうち点P
m(x
m,y
m)に向かう光の相対照度は、
図10の角度αに対する相対照度の読み取り値E
θinmα/E
0となる。同様に、L2βのうち点P
m(x
m,y
m)に向かう光の相対照度は、
図10の角度βに対する相対照度の読み取り値E
θinmβ/E
0となる。L2γのうち点P
m(x
m,y
m)に向かう光の相対照度は、
図10の角度γに対する相対照度の読み取り値E
θinmγ/E
0となる。
【0061】
一般に、拡散光の相対照度(照度)は、光源と測定点との距離の2乗に反比例する(距離の逆二乗の法則)。また、光源が測定点に対して法線方向に対して角度(入射角)を持つとき、測定点の照度は、光の入射角の余弦に比例することが知られている(入射角の余弦法則)。(例えば、照明学会編、ライティングハンドブック、第1版、オーム社、1994、223p等を参照。)
本発明においては、集光シート6に入射した平行光は、集光シート6の出射点(例えば、点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)等)から拡散光として出射することから、集光シート6の出射点を拡散光の光源とみなすことができる。
【0062】
上述の原理に基づき、X軸上の点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)からピーク角度θ
outmで出射する拡散光L2の測定点P
m(x
m,y
m)における相対照度は、
図10に示す相対照度分布図から読み取った相対照度E
θinmφm/E
0に、距離D
α、D
β、D
γの二乗の逆数を乗じ、さらに、点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)の各々と測定点P
m(x
m,y
m)とを結ぶ直線が測定点P
m(x
m,y
m)の位置で各々、「開口部OpeのXZ平面に対する垂線」(即ち、x=x
m)に対してなす角度α、β、γの余弦値を乗ずることにより、算出することができる。
【0063】
例えば、点α(x
α,0)から出射した拡散光L2αの測定点P
m(x
m,y
m)における相対照度値の百分率I
αは、次に示す式(23)で表される。
【0065】
式(20)を変形すると、次に示す式(24)が得られる。
【0067】
また、式(17)によれば、次に示す式(25)が得られる。
【0069】
そこで、式(24)及び式(25)の値を式(23)に代入すると、次に示す式(26)となる。
【0071】
同様に、点β(xβ、0)から出射した拡散光L2βの測定点P
m(x
m,y
m)における相対照度値の百分率I
βは、次に示す式(27)で表される。
【0073】
また、点γ(x
γ,0)から出射した拡散光L2γの測定点P
m(x
m,ym)における相対照度値の百分率I
γは、次に示す式(28)で表される。
【0075】
ここで、相対照度分布から読み取った相対照度E
θinmα/E
0、E
θinmβ/E
0、E
θinmγ/E
0に関する角度α、β、γを、式(17)、式(18)、式(19)の値を用いて表記すると、式(26)、式(27)、式(28)は、次に示す式(29)、式(30)、式(31)となる。
【0079】
式(29)、式(30)及び式(31)は、
図8における点α(x
α,0)、点β(x
β,0)及び点γ(x
γ,0)と測定点P
m(x
m,y
m)について、各点からの拡散光の測定点P
m(x
m,y
m)における相対照度の百分率を求める式である。これらの式を
図4の構成に当てはめると、点α(x
α,0)、点β(x
β,0)、点γ(x
γ,0)は、X軸上の任意の点Px0(K,0)に、測定点Pm(xm,ym)は、室内Riの任意の点P
xy(x,y)に置き換えることが可能である。また、入射角度についても任意の角度とすると、平行光L1が集光シート6に入射する角度θ
inmは任意の角度θ
insに置き換えられる。
即ち、式(31)中のx
α、x
β、x
γはそれぞれKに、x
mはxに、y
mはy、θ
inmはθ
insとなり、式(29)、式(30)、式(31)は、次に示す式(32)で表される。
【0081】
式(32)中のI
xyは、任意の入射角θ
insで集光シート6に入射した平行光が集光シート6のX軸上の任意の点P
x0(K,0)からピーク角度θ
outsの拡散光として出射された拡散光を、室内Riの任意の点P
xy(x,y)で測定した相対照度値の百分率を示す。
【0082】
式(32)において、左辺中の掛け算の順序を入れ替えると、次に示す式(33)が得られる。
【0084】
本明細書において、例えば平行光を太陽のような光源から発せられる光とすると、前述の通り平行光は単一の点光源ではなく、無数の点光源の集合体と考えられる。ここで、XY平面に限定すると、平行光はXY平面に多くの点光源が一列に存在していると考えられる。太陽のような光源から出光する平行光がXY面上で集光シート6に入射した場合、室内RiのXY面上の任意の点P
xy(x,y)で測定される相対照度の百分率は、集光シート6のX軸上の全ての位置から出射される拡散光の合計となる。つまり、室内RiのXY面上の任意の点P
xy(x,y)で測定される相対照度の百分率は、X軸上の任意の点P
x0(K,0)のKが0からWまでの範囲における全ての点から出射された拡散光の合計(即ち、積算値)となる。このような考えによれば、式(33)は次に示す式(1)となる。
【0086】
式(1)において、I(x,y)は、室外Roから開口部Ope、或いは、集光シート6に入射した平行光が集光シート6から室内Riへ出射する拡散光を、XY面上の点(x,y)の位置で、開口部OpeのXZ面に対する垂線(即ち、XY面上の点(x,y)を通るようにY軸方向に沿ってXZ面に対して引いた垂線)に沿う方向を基準として測定したときのXY面における相対照度の百分率を示す。
【0087】
本発明の集光シート6や光散乱シートとしては、表面の少なくとも一部に微細な凹凸が形成されたシート(微細凹凸形成シート)を用いることができる。以下では、説明を簡単にするため、集光シート6と表現するが、特に断りのない限り、光散乱シートを含んで微細凹凸形成シートについて説明する。
図11に示すように、集光シート6は、所定の第1方向(X軸方向)に複数の凸条部10が並んだ凹凸構造11を含む。複数の凸条部10は、それぞれ、第1方向(X軸方向)に直交する第2方向(Z軸方向)に延在している。
【0088】
複数の凸条部10の延在方向(即ち、Z軸方向)に直交する面(即ち、XY面)における凹凸構造11の断面形状は、
図12に例示されている。複数の凸条部10のそれぞれは、ピークP1と、ピークP2と、を有する。凸条部10の延在方向(即ち、Z軸方向)に沿った各位置におけるXY面での断面毎に、このようなピークP2の位置が求まる。各々の凸条部10について、凸条部10の延在方向の各位置におけるピークP2同士を結ぶ線は、凸条部10の稜線に相当する。なお、ピークP2の位置の分布は、例えば原子間力顕微鏡(AFM)、電界放射顕微鏡(FEM)等の表面形状測定装置を用いて、凹凸構造11の表面形状を測定すること等によって得られる。
【0089】
図12に示すように、Z軸に直交するXY面における複数の凸条部10の断面形状は、互いに同一ではなく、第1方向(X軸方向)において隣り合う一対の凸条部10のピークP2(即ち、稜線)の間隔d(例d1及びd2)は、複数の凸条部10のうち何れの一対の凸条部10に着目するかにより、不規則に変化する。
【0090】
図12に示すように、Z軸に直交するXY面における複数の凸条部10の断面形状は、互いに同一ではない。ここで、複数の凸条部10から任意に一つの凸条部10を選択し、第1の凸条部10aとする。第1の凸条部10aとX軸に沿って並ぶ凸条部10を順に、第2の凸条部10b、第3の凸条部10c、…、とする。複数の凸条部10において、第1の凸条部10aと第2の凸条部10bとの第1の間隔d1は、第2の凸条部10bと第3の凸条部10cとの第2の間隔d2とは異なる。
【0091】
また、Z軸に沿った任意の位置における第1の間隔d1と第2の間隔d2との大小関係は、複数の凸条部10の何れかを第1の凸条部10aとして選択するかによって、変化する。また、Z軸に沿った任意の位置における第1の間隔d1から第2の間隔d2への変化量も、複数の凸条部10の何れかを第1の凸条部10aとして選択するかによって、変化する。
【0092】
なお、Z軸に直交するXY面における複数の凸条部10の断面形状は、上述のように多様に変化しており、第1の間隔d1が第2の間隔d2と同一である部分もありえるが、このような部分の出現頻度は、第1の間隔d1が第2の間隔d2とは異なる部分の出現頻度よりも十分に低い。以下の本実施形態において、「間隔が略異なる」とは、第1の間隔d1と第2の間隔d2とが異なる部分の出現頻度が、第1の間隔d1と第2の間隔d2が同一である部分の出現頻度に比べて大きいことを意味する。
【0093】
例えば、
図13は、試作例の集光シート6の厚み方向(即ち、Y軸方向)に沿って微細凹凸面6b側から)表面光学顕微鏡の一種であるデジタルマイクロスコープ(型番KH−2700、株式会社ハイロックス製)により撮影した画像をグレースケール変換したものである。
図13に示すように、複数の凸条部10のそれぞれは、Z軸方向に延在している。言い換えると、Z軸方向における複数の凸条部10の各々の寸法(長さ)は、X軸方向における複数の凸条部10の各々の寸法(幅)よりも大きい。凸条部10の大部分は波形状に蛇行しているが、略直線状の部分を含む場合が稀にある。
【0094】
図14に示すように、第1の凸条部10aの稜線P3a、第2の凸条部10bの稜線P3b及び第3の凸条部10cの稜線P3cは、それぞれ蛇行している。三つの稜線P3a、P3b、P3cは各々、−X側に近づくピークP4及び+X側に近づくピークP5を有する。稜線P3aにおけるピークP4のZ軸方向の位置は、稜線P3bにおけるピークP4のZ軸方向の位置とは異なり、稜線P3cにおけるピークP4のZ軸方向の位置とも異なる。同様に、稜線P3aにおけるピークP5のZ軸方向の位置は、稜線P3bにおけるピークP5のZ軸方向の位置とは異なり、稜線P3cにおけるピークP5のZ軸方向の位置とも異なる。
【0095】
稜線P3a、P3b、P3cのそれぞれの形状は、フーリエ級数で表すことができる「。稜線P3aをフーリエ級数で表現したときの各項の係数の組は、稜線P3bをフーリエ級数で表現したときの各項の係数の組とは異なり、稜線P3cをフーリエ級数で表現したときの各項の係数の組とも異なる。言い換えると、稜線P3aの形状を表す関数をフーリエ変換したときのスペクトルは、稜線P3bの形状を表す関数をフーリエ変換したときのスペクトルとは異なり、稜線P3cの形状を表す関数をフーリエ変換したときのスペクトルとも異なる。
【0096】
例えば、Z軸方向において任意に選択される位置を位置Z1、位置Z2とする。位置Z1において、X軸方向における稜線P3aと稜線P3bとの間隔d3は、同方向における稜線P3bと稜線P3cとの間隔d4とは略異なる。また、位置Z1と異なる位置Z2においても同様に、X軸方向における稜線P3aと稜線P3bとの間隔d5は、同方向における稜線P3bと稜線P3cとのX軸方向の間隔d6と略異なる。このように、Z軸方向の任意の位置において、凸条部10の稜線の間隔は、X軸方向に不規則に変化する。
【0097】
また、X軸方向に並ぶ二つの稜線(例えば、稜線P3aと稜線P3b)は、互いに異なる形状(波形)で形成されていることから、稜線P3aと稜線P3bとの間隔は、Z軸方向においても不規則に変化する。即ち、位置Z1とは異なる位置Z2における間隔d5は、間隔d3とは略異なる。
図6に示す稜線P3a、P3bは、それぞれ連続的な形状で形成されていることから、稜線P3aと稜線P3bとの間隔は、Z軸方向において連続的に、且つ不規則に変化する。
【0098】
図15Aに例示するように、凹凸構造11は、枝分かれした凸条部10dを含む場合がある。凸条部10dの稜線P3dは、稜線P3eと稜線P3fとに分岐している。X軸方向における稜線P3eと稜線P3fとの間隔d7は、凸条部10dが枝分かれする位置からZ軸方向に進むに従い、連続的に増加又は減少する。このように、枝分かれした凸条部10dにおいても稜線P3eと稜線P3fとの間隔d7は、Z軸方向において不規則に変化する。
【0099】
また、
図15Bに例示するように、凹凸構造11は、X軸方向に並ぶ3つの凸条部10g、10h、10iを含んでいる。凸条部10hの稜線P3hのZ軸方向における寸法(長さ)は、凸条部10gの稜線P3gの同方向における寸法よりも短い。そのため、Z軸方向における稜線P3hの端部の位置は、同方向における稜線P3gの端部の位置とは、互いに異なる。同様に、凸条部10hの稜線P3hのZ軸方向における寸法と端部の位置が凸条部10iの稜線P3iの同方向における寸法と端部の位置とも異なる。上述の例では、Z軸方向において凸条部10hの稜線P3hが延在する範囲の外側の領域においては、凸条部10gと凸条部10iがX軸方向に沿って並ぶ。即ち、稜線P3gと隣の稜線との間隔は、稜線P3hのZ軸方向における端部の位置において、稜線P3gと稜線P3hとの間隔d8から、稜線P3gと稜線P3iとの間隔d9に切り替わることになり、不連続に変化する。このように、X軸方向において隣り合う凸条部10の稜線の間隔は、凸条部10のZ軸方向の端部の位置が凸条部10毎に異なることによって、Z軸方向において不規則に変化する。
【0100】
図1等に示す構成では、集光シート6の凸条部10は、室内Riに接して配置され、室外Ro及び室内Riの空気と屈折率が異なっている。但し、集光シート6の凸条部10は、室外Ro(即ち、平行光の入射側)に接して配置されていても構わない。
【0101】
室外Roから集光シート6に入射した平行光は、凸条部10と室内Ri又は室外Roとのとの界面で屈折する。凸条部10の表面は、
図11及び
図13に示したように波状に湾曲しているので、平滑面6a又は凸条部10から入射する平行光は、凸条部10と室内Ri又は室外Roとの界面で屈折して出射角度を変え、さらに拡散光として出射する際にX軸方向に広げられる。また、
図14及び
図15等を参照して説明したように、X軸方向において隣り合う凸条部10同士の間隔は、Z軸方向において不規則に変化している。そのため、凸条部10又は平滑面6aから入射する平行光は僅かに、凸条部10と室内Ri又は室外Roとの界面で屈折して出射角度を変え、さらに拡散光として出射する際にZ軸方向にも広げられる。
【0102】
平行光の波長が可視域である場合、集光シート6における凸条部10のピークP2同士の間隔dは、その最頻値(以下、最頻ピッチAとする)が、1μmより大きく、30μm以下であることが好ましく、5μmより大きく、20μm以下であることがより好ましい。間隔dの最頻値が前述の範囲外になると、光の屈折による出射角度の変化が少なくなり、さらに光拡散性が低下する。
また、集光シート6におけるピークP1とピークP2とのZ軸方向における距離の平均値(以下、平均深さBとする)の最頻ピッチAに対する比(所謂、アスペクト比である)は、0.1以上が好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が0.1未満であると、凸条部10と室内Ri又は室外Roとの界面での光の屈折が不十分となる。即ち、室内Riに接して配置された凸条部10から出射する光が室内Riに向けて進むための屈折角、あるいは、室外Roに接して配置された凸条部10から入射する光が室内Riに向けて進むための屈折角が得にくくなる)。そのため、太陽光の方位が変わっても室内の水平方向に太陽光を採り込むことが困難になる。また、アスペクト比が高い程、光が十分に屈折される(即ち、集光シート6の凸条部10から出射する光が室内Riに向けて進むための屈折角が得られる)ため、アスペクト比は0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましいが、製造の容易性の観点から、アスペクト比は3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
平均深さBを測定する方法としては、AFMにより撮影した集光シート6の凹凸構造11の断面の画像にて複数の凸条部10の深さを測定し、それらの平均値を求める方法等が挙げられる。
【0103】
集光シート6のX軸方向におけるFWHMは、
図6に示した構成を用いて測定することができる。即ち、
図6において、XY面上における角度θ
insを0°とし、集光シート6へ平行光を点光源20から入射する。平行光の入射面とは反対側の面から拡散光として出射した拡散光について、XY面上においてY軸を基準とした−90°から+90°までの範囲内で任意の測定角度φ
sにおける出射光の照度E
θφsを検出器21で測定する。そして、平行光の照度E
0を基準とした出射光のXY面における相対照度(E
θφs/E
0)としてプロットし、相対照度分布を得る。得られた相対照度分布の半値幅(全半値幅)がX軸方向のFWHMとなる。
【0104】
また、集光シート6のZ軸方向におけるFWHMは、
図16に示す構成を用いて測定することができる。
図17に示すように、YZ面上における入射角度θ
zinsを0°とし、集光シート6へ平行光を点光源20から入射する。平行光の入射面とは反対側の面から拡散光として出射した拡散光について、YZ面上においてY軸を基準とした−90°から+90°までの範囲内で任意の測定角度φ
zsにおける出射光の照度E
zθinsφzsを検出器21で測定する。そして、YZ面における出射光を平行光の照度E
0zを基準とした相対照度(E
zθinsφzs/E
0z)としてプロットして相対照度分布を得る。得られた相対照度分布の半値幅(全半値幅)がZ軸方向のFWHMとなる。
また、
図16に示すYZ面において、点光源からの平行光の入射角度θ
zinsを−90°から+90°まで範囲内の任意の角度から入射して相対照度分布を得ることもできる。
【0105】
集光シート6はX軸方向だけではなく、Z軸方向にも拡散光として出射する。ここで、X軸方向のFWHMをXH、Z軸方向のFWHMをZHとする。Z軸方向における光の拡散が大きくなる、即ちZHが大きくなると、X軸方向における光の拡散、即ちXHが相対的に小さくなる。
逆に、X軸方向における光の拡散が大きくなる、即ちXHが大きくなると、Z軸方向における拡散、即ちZHが相対的に小さくなる。本発明において、太陽光等の平行光の方位(即ち、集光シート6への平行光の入射角度)が変わっても、室内Riの水平方向(即ち、XY面)に平行光を採り込み可能とするためには、Z軸方向(上下方向)に拡散される光の角度よりも、X軸方向(水平方向)に拡散される光の角度が大きいことが好ましい。また、Z軸方向(上下方向)に拡散される光の相対照度の積分値よりも、X軸方向(水平方向)に拡散される光の相対照度の積分値が高いことが好ましい。これにより、室内RiのX軸方向(水平方向)に採り込める平行光が多くなる、つまり相対照度が高くなる。
【0106】
上述のように室内RiのX軸方向(水平方向)に平行光をより多く採り込むために、集光シート6のXHとZHとの比XH/ZHは1.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。前述の条件は、平行光の方位が変わっても室内Riの水平方向に平行光をより多く採り込むことを可能にするための好ましい条件の一つである。
【0107】
X軸方向(水平方向)への光の出射を得るためには、ピークP2(稜線)がある程度蛇行し、隣り合った凸条部10同士のピッチがピークP2の延在方向に沿ってばらついていることが好ましい。ここで、ピークP2の配向のばらつきのことを配向度とする。配向度が大きいほど、ピークP2の配向がばらついていることを示す。
【0108】
ピークP2の配向度は、以下の方法で求められる。
まず、デジタルマイクロスコープ等を用いて凹凸構造11の平面パターンを撮影し、得られた画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケール変換画像では、白度が低い程、凹凸構造11の微細凹凸面6bにおける相対高さが低く(即ち、ピークP1が深く)、白度が高いところ程、凹凸構造11の微細凹凸面6bにおける相対高さが高い(即ち、ピークP2が高い)ことを表している。次に、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。フーリエ変換画像を解析することにより、ピークP2の配向度が得られる。
【0109】
ピークP2の配向度は、0.3以上1.0以下であることが好ましい。配向度が前述の範囲内であれば、ピークP2のピッチのばらつきが大きくなり、X軸方向における光の拡散がより大きくなる。配向度が1.0を超えると、凹凸構造11の凸条部10の延在方向がある程度ばらつくため、X軸方向の光の拡散が小さくなる傾向にある。
配向度を0.3以上1.0以下にするためには、例えば微細凹凸形成シートの製造の際に必要なシート基材への圧縮応力の作用のさせ方を適宜選択・調整すればよい。
なお、上述のようにフーリエ変換を利用して求めた凹凸構造11の最頻ピッチAは、平均ピッチと略同等となる。
【0110】
本発明の目的の一つは、太陽光等の平行光の方位が変わっても室内Riの水平方向に太陽光をより多く採り込むことが可能な集光シート6の提供にある。前述したように、集光シート6は、凸条部10と室内Riとの界面で屈折する拡散光の出射角度を変えることができる。特に太陽や光源等の方位、つまり、太陽や光源等から出光した平行光の入射角度θ
insの角度が大きい場合、集光シート6の拡散光のピーク照度が得られる角度θ
outsが小さくなると、室内Riに採り込める太陽光が増え、相対照度が高くなる。従って、平行光の入射角度θ
insと拡散光のピーク照度が得られる角度θ
outsとは、次に示す式(5)の関係にあることがより好ましい。
【0112】
集光シート6については、アスペクト比が8以上であり、且つ、式(5)を満たすと、平行光の方位が変わっても室内Riの水平方向に太陽光を採り込む効果が高まるのでより好ましい。
【0113】
図17において、θ
inlsとθ
inls‘は、点P2と点P5とを結ぶ線、つまりX=0.5Wの位置における線Lsを中心に線対称の関係にある。また、点P7と点P9、点P4と点P6は、同様に線Lsを中心に線対称の関係にある。
【0114】
θ
inls‘、θ
outls’及び点P9と、θ
inls、θ
outls及び点P7との組合せは、線対称の関係にある。このような組合せにある場合、点P9、点P7に到達する拡散光同士の相対照度は同じである。また、点P9、点P7に到達する拡散光の到達角度は互いに正負が逆の関係にある。点P9、点P7の各々と線Lsとの距離も同じであることから、各々の点P9、P7でのXY面における相対照度の百分率の値は等しくなる。これは、線Lsに対して線対称にある各点(位置)について同様である。
【0115】
上述のことから、本発明においては集光シート6への平行光の入射角θ
insを正(θ
ins≧0)の範囲で評価を行うことにした。この条件である測定点(例えば、点P7)で測定を行った場合、別の測定点(例えば、点P9)が線対称の位置関係であれば、その位置においてθ
insを負(θ
ins≦0)の範囲で評価を行ったのと同じ評価結果となる。
【0116】
図2において、平行光として太陽光が建物に対して斜めに入射する、つまり、入射角−90°≦θ
ins<−60°、または、60°<θ
ins≦90°の範囲になると、室内Riに平行光を行き渡らせることが非常に困難になる。そのため、室内Riに太陽光が行き渡りにくい入射角−60°≦θ
ins<−45°、及び、45°<θ
ins≦60°の範囲を含む入射角0°以上60°以内の範囲で評価を行うことにした。
【0117】
太陽光の照度は、周りの環境にも左右されるが、昼光では快晴120,000ルクス以上100,000ルクス以下であり、晴天では100,000ルクス以上50,000ルクス以下であり、曇天では50,000ルクス以上10,000ルクス以下であり、雨天で20,000ルクス以上5,000ルクス以下である(例えば、桑野幸徳、太陽電池博士による太陽電池もの知り博士になる本、太陽電池Q and A、第1版、パワー社、1993年、38p等を参照)。
また、労働安全衛生法の第604条によると、精密な作業では300ルクス以上、普通の作業では150ルクス以上、粗な作業では70ルクス以上であることが推奨され、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によると、「書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。」となっている。
【0118】
晴天時(太陽光の照度が50,000ルクス以上100,000ルクス以下である)の場合、室内Riのある測定点P
xy(x,y)において、精密な作業を行う場合、VDT作業の基準である300ルクス以上の照度を満たす相対照度の百分率I
t(x,y)は、0.3以上0.6以下である。また、普通の作業の基準である150ルクス以上を満たすI
t(x,y)は0.15以上0.3以下、粗な作業の基準を満たすI
t(x,y)は0.07以上0.14以上である。そのため、相対照度の百分率I
t(x,y)は、0.07以上であることが好ましく、0.14以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。
【0119】
太陽のような大面積の光源から照射される平行光は、XZ平面に設置された集光シート6の全面に入射する。この場合、集光シート6から出射する拡散光は、集光シート6の全面から出射する。測定点P
xy(x,y)における相対照度の百分率I
t(x,y)は、XY平面だけではなく、あらゆる方向から測定点P
xy(x,y)に向けて到達する拡散光を加味した相対照度の百分率を示す。
【0120】
そして、数値計算等による検討の結果、本発明者らは、前述の相対照度の百分率I
t(x,y)が上述の粗な作業の基準を満たす0.07以上になるためには、XY平面における相対照度I(x,y)を0.025以上とすることが好ましいことを見出した。
上記のことから本発明における集光シート6から出射する拡散光のXY平面における相対照度の百分率I(x,y)は0.025以上が好ましい。
【0121】
本発明において、入射角度θ
insの範囲を0°から60°までとして、集光シート6における集光特性の評価を行うのに最適な点は、太陽光の入射角度θ
insが直接照射しない位置、より具体的には、
図4における座標(x,y)が(0.75W,0.5W)の点P
7(
図17参照)である。点P
7における相対照度I(0.75W,0.5W)で集光シート6における集光特性を評価することで、集光シート6による効果がより明確になる。
点P
7に太陽光のような光を室内Riに到達させるためには、集光シート6はZ軸方向に光を広げずにX軸方向に光を広げる、つまり、XHとZHとの比(XH/ZH)が8以上であり、且つ、θ
insで入射する光の向きをY軸方向に向けること、即ち、式(5)を満たすことが好ましい。これにより、と太陽光の方位が変わっても室内Riの水平方向に太陽光をより多く採り込むことが可能になる。
【0122】
本発明において、X軸方向における開口部Opeの幅Wは建物の窓の幅に相当する。幅Wは、例えば2m以内とされ、式(4)が満たされる。一般には、X軸方向における窓一枚あたりの寸法は、0mから2m程度である。オフィスビルや開口部Opeの広い窓では、0mから2m程度の窓が複数並べられていることが多い。
【0123】
集光シート6や光散乱シートとして使用される微細凹凸形成シートは、例えば以下の方法により良好に製造することができる。
(i)加熱収縮可能な樹脂層と硬質層が積層した積層シートの、樹脂層を加熱収縮させて得た凹凸構造体を集光シート6とする方法。
(ii)加熱収縮可能な樹脂層と硬質層とが積層された積層シートの、樹脂層を加熱収縮させて得た凹凸構造体の凹凸構造を転写する方法。
上記各方法における硬質層としては、加熱収縮させる樹脂層よりガラス転移温度が高い樹脂層、金属又は金属化合物の層が挙げられる。
以下、(i)及び(ii)の各々の方法について説明する。
【0124】
(i−1・・・第1の樹脂層(加熱収縮可能な樹脂層)と第2の樹脂層(硬質層)が積層された積層体の、前記第1の樹脂層を加熱収縮させて得た凹凸構造体を集光シート6とする方法)
先ず、ガラス転移温度以上に加熱することにより収縮可能な第1の樹脂層(ガラス転移温度Tg1)の片面に、表面が平滑な第2の樹脂層(ガラス転移温度Tg2)を設けて積層シートを形成する。
ここで、(Tg2−Tg1)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。また、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度Tg1は、−150℃以上300℃以下であることが好ましく、−120℃以上200℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度Tg2は40℃以上400℃以下であることが好ましく、80℃以上250℃以下であることがより好ましい。
第1の樹脂層の厚みは、0.3μm以上500μm以下であることが好ましい。第2の樹脂層の厚みは、0.05μmよりも大きく、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0125】
その後、Tg1以上Tg2未満の温度に加熱し、第1の樹脂層を熱収縮させ、この熱収縮に伴い、第2の樹脂層を変形させる。
これにより、第2の樹脂層の表面に凹凸構造11が形成された凹凸構造体が得られる。なお、第2の樹脂層は、第1の樹脂層を熱収縮させる際の温度では軟化しないため、折りたたまれるように変形する。そのため、第1の樹脂層の第2の樹脂層側も凹凸構造11に追従した凹凸構造11が形成される。
【0126】
得られた凹凸構造体をそのまま集光シート6や光散乱シートとするためには、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を透明樹脂で構成することが好ましい。なお、凹凸構造体を後述の転写型として用いる場合は、第1の樹脂層と第2の樹脂層の何れにおいても、透明性は要求されない。
第1の樹脂層を構成する透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等が挙げられる。
第1の樹脂層を構成する樹脂の種類にもよるが、第2の樹脂層を構成する透明樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0127】
(i−2・・・加熱収縮可能な樹脂層と金属または金属化合物の層(硬質層)が積層した積層体の、前記樹脂層を加熱収縮させて得た凹凸構造体を集光シート6や光散乱シートとする方法)
まず、ガラス転移温度以上に加熱することにより収縮可能な樹脂層(ガラス転移温度Tg1)の片面に、表面が平滑な金属または金属化合物の層を設けて積層シートを形成する。
ここで、Tg1は−150℃以上300℃以下であることが好ましく、−120℃以上200℃以下であることがより好ましい。
樹脂層の厚みは、0.3μm以上500μm以下であることが好ましい。金属または金属化合物の層の厚みは、0.01μmより大きく、0.2μm以下であることが好ましく、0.02μm以上0.1μm以下であることがより好ましい。
【0128】
その後、Tg1以上の温度に加熱することで樹脂層を熱収縮させ、この熱収縮に伴い、金属または金属化合物の層を変形させる。
これにより、金属または金属化合物の層の表面に凹凸構造11が形成された凹凸構造体が得られる。なお、金属または金属化合物の層は、樹脂層を熱収縮させる程度の温度では軟化しないため、折りたたまれるように変形する。そのため、樹脂層の金属または金属化合物の層側も凹凸構造11に追従した凹凸構造が形成される。
【0129】
得られた凹凸構造体をそのまま集光シート6や光散乱シートとするためには、樹脂層を透明樹脂で構成すると共に、金属または金属化合物の層を、光透過性が得られる程度に薄く構成する。なお、前述のように、凹凸構造体を後述の転写型として用いる場合は、樹脂層と金属または金属化合物の層のいずれにおいても、透明性は要求されない。
樹脂層を構成する透明樹脂としては、第1の樹脂層を構成する透明樹脂と同様のものが挙げられる。金属または金属化合物の層を構成する金属としては、金、アルミニウム、銀、炭素、銅、ゲルマニウム、インジウム、マグネシウム、ニオブ、パラジウム、鉛、白金、シリコン、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛、ビスマスよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属が好ましい。
【0130】
(ii・・・加熱収縮可能な樹脂層と硬質層が積層した積層シートの、前記樹脂層を加熱収縮させて得た凹凸構造体の凹凸構造を転写する方法)
本方法は、上述の(i−1)、(i−2)の製造方法において得られた凹凸構造体を転写型として、凹凸構造体の凹凸構造11を転写した転写物を集光シート6や光散乱シートとする方法である。或いは、本方法は、上述の(i−1)、(i−2)において得られた凹凸構造体を射出成形用の型の一部として、凹凸構造体の凹凸構造11を転写した射出成形物を集光シート6や光散乱シートとする方法であってもよい。
転写回数は、特に限定されず、偶数回であっても奇数回であってもよい。電気鋳造法が利用できる観点から、転写回数は二回が好ましい。電気鋳造法は、(i−1)、(i−2)において得られた凹凸構造体の凹凸構造11の面に、ニッケル等でめっきを施し、ニッケルスタンパーを作製し、得られたニッケルスタンパーを型として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂に転写させる方法である。なお、ニッケルスタンパーに替えて樹脂スタンパーを作製し、得られた樹脂スタンパーを用いて熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂に凹凸構造11を転写してもよい。
なお、転写により凹凸構造11が形成される面の反対側の面に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のポリマーからなる基材が積層されていてもよい。
【0131】
上述のように転写により凹凸構造11を形成する樹脂は、透明樹脂であることが好ましい。透明樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂(熱硬化性プレポリマーまたはモノマーの硬化物)であってもよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。熱硬化性プレポリマーとしては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコーンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等が挙げられる。熱硬化性モノマーとしては、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等が挙げられる。
【0132】
微細凹凸形成シートの生産性を高める目的で、微細凹凸形成シートは、ロール・ツー・ロール方式(RtoR方式)によって、例えば以下の方法により良好に製造することができる。
<i>(i)の方法で得られる微細凹凸形成シート等そのものを使う方法。
<ii>(i)の方法で得られる凹凸構造体の転写物をスタンパーとして使用する方法。
【0133】
<i・・・(i)の方法で得られる微細凹凸形成シート等そのものを使う方法>
(i−1)又は(i−2)の構成で積層された積層体のロールを巻き出すと共に所定の搬送方向に搬送しながら連続的に加熱収縮させ、得られた凹凸構造体をロールとして巻き取ることで、搬送方向に沿って長尺な微細凹凸形成シートを製造することができる。
また、(i−1)又は(i−2)の方法で得られる微細凹凸形成シートを所定の搬送方向に搬送されている樹脂フィルム等の基材に貼り合わせる、或いは別の基材等を用いて挟み込み、熱加工によって貼着してもよい。これにより、搬送方向に沿って長尺な微細凹凸形成シートを製造することができる。
【0134】
上述のように、本発明では、ロール状に巻回された長尺な基材を巻き出し、所定の搬送方向に搬送する工程と、基材を搬送方向に沿って連続的に加熱収縮させる工程と、加熱収縮により表面に凹凸構造11が形成された基材をロール状に巻き取る工程と、を備えた集光シート6の製造方法を採用してもよい。
【0135】
<ii・・・(i−1),(i−2)の方法で得られた転写物(即ち、凹凸構造体の凹凸構造11を転写した転写物や射出成形物)をスタンパーとして使用する方法>
本方法では、(i−1),(i−2)の方法で得られた転写物を転用し、ニッケルスタンパー、又は、樹脂スタンパーを転写ロールの外周面に設け、紫外線硬化樹脂を用いた賦形或いは熱賦形、或いは、射出成形等の方法によって、所定の搬送方向に搬送されている樹脂フィルム等の基材表面に転写物と同様の凹凸構造11を形成する。これにより、搬送方向に沿って長尺な微細凹凸形成シートを製造することができる。
熱賦形、射出成形による製造方法では、転写ロールの代わりにスタンパーをベルト状に繋げたものを元型として、ベルトプレス機により凹凸構造体の凹凸構造11を基材に形成することも可能である。
上述の熱賦形、射出成形による製造方法に使用するスタンパーとしては、ニッケルスタンパーが加熱による変形の恐れが少ないことから好ましい。
【0136】
即ち、本発明では、ロール状に巻回された長尺な基材を巻き出し、所定の搬送方向に搬送する工程と、搬送される基材の表面に、微細凹凸を有する部材の該微細凹凸パターンを転写する工程、又は、搬送される基材の表面に、微細凹凸を有する部材をプレスする工程と、転写又はプレスにより表面に凹凸構造11が形成された基材をロール状に巻き取る工程と、を備えた集光シート6の製造方法を採用してもよい。
【0137】
上述の<i>及び<ii>の何れの方法においても、凸条部10を長尺の素材や積層シートの長手方向(即ち、搬送方向と平行な方向)に延在させてもよく、長尺の素材や積層シートの短手方向に延在させてもよい。
【0138】
微細凹凸形成シートを集光シート6として、集光シート6を所望の寸法に切断し、窓ガラスに貼着すれば、窓材となる。凸条部10を長尺の素材や積層シートの長手方向に延在させた微細凹凸形成シートは、所謂CD拡散タイプと呼ばれる現行に多いものである。
即ち、本発明では、長尺な基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された微細凹凸と、を備え、前記微細凹凸は前記基材の長手方向に互いに非平行に蛇行しながら延在し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とを有する集光シート6を採用してもよい。
CD拡散タイプの微細凹凸形成シートで窓材を構成した場合、窓ガラスのX軸方向の寸法が長尺の素材や積層シートの幅寸法以下であれば、長手方向において任意の寸法で切り出した微細凹凸形成シートを、凸条部が鉛直方向に延びるように、窓ガラスに対して容易に貼着することができる(
図18参照)。
【0139】
一方、凸条部10を長尺の素材や積層シートの短手方向に延在させた微細凹凸形成シートは、所謂MD拡散タイプと呼ばれるものである。
即ち、本発明では、長尺な基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された微細凹凸と、を備え、前記微細凹凸は前記基材の長手方向に直交する方向に互いに非平行に蛇行しながら延在し、不規則に形成された複数の凸条部と、該複数の凸条部間の凹条部とを有する集光シート6を採用してもよい。
MD拡散タイプの微細凹凸形成シートで窓材を構成した場合、窓ガラスのX軸方向の寸法によらず、長手方向において微細凹凸形成シートを窓ガラスのX軸方向の寸法に合わせて切り出し、凸条部が鉛直方向に延びるように、窓ガラスに対して容易に貼着することができる(
図19参照)。
【0140】
以上説明した本発明に係る集光シート6によれば、太陽光等の平行光の方位が変わっても室内Riの水平方向に集光シート6からの拡散光をより多く採り込むことができる。従って、集光シート6は、水平方向に入光する平行光を室内Riの水平方向において広範囲に行き渡らせることができる。特に、太陽の方位によって、光が直接照射され難くなる位置(即ち、点P
7(0.75W,0.5W))にも、太陽光を採りこむことが可能である。このとき、水平方向において集光シート6に入光する光が多い程、同方向において室内Riに採り込まれる光も多くなり、集光シート6の効果がより発揮される。そのため、集光シート6は、Z軸方向とは反対方向(即ち、上方)から入射する太陽光の向きを水平方向に変える構成と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0141】
上方から入射する太陽光の向きを水平方向に変える方法としては既知の方法、例えば、反射型ブラインド、ライトシェルフ(照明学会編、ライティングハンドブック、第1版、オーム社、1994、219p等を参照)、或いは、上述の特許文献1から特許文献3に記載のプリズムシート等がある。
【0142】
微細凹凸形成シートを使用した集光シート6と、上方から入射する光の向きを水平方向に変える鉛直方向光変向部とを組み合せて採光装置とすることにより、本発明の集光シートの持つ、太陽光の方位が変わっても室内の水平方向に太陽光を採り込む効果をより発揮することが可能となる。
【0143】
図20等に示すように、上方から入射する太陽光の向きを水平方向(水平方向より上向き方向も含む)に変える鉛直方向光変向部28としては、前述のように反射型ブラインド、ライトシェルフ、プリズムシート等が挙げられる。これらは、上方から入射する平行光を室内Riの水平方向のみならず、上部へ導く効果もある。そのため、室内Riの天井方向に平行光を反射するように鉛直方向光変向部28を設置し、本発明に係る集光シート6と組み合わせることで、水平方向における広範囲、且つ室内Ri及び天井に平行光を効果的に導くことができる。天井の材質、表面形状、色によって光の反射特性が異なるが、室内天井に導かれた光が天井で反射(例えば乱反射、拡散反射)されることで、光を天井から照らし、室内Riをより明るくすることができる。
【0144】
以下、集光シート6と鉛直方向光変向部30とを備えた採光装置の例について、説明する。
図20に示す採光装置50Aでは、開口部Ope近傍(
図20では、開口部Opeの室内Ri側)に集光シート6を配置し、集光シート6の室内Ri側に、間隔をあけて鉛直方向光変向部30として反射型ブラインド30を配置する。即ち、採光装置50Aでは、反射型ブラインド30の光の入射面側の少なくとも一部を覆うように集光シート6を設置する。このとき、集光シート6と反射型ブラインド30との距離が大きいと集光シート6で集光、拡散された光の一部が、反射型ブランド30に到達せず、反射型ブランド30で反射されない場合がある。集光シート6で拡散された太陽光をより多く反射型ブラインド30で室内Riの天井方向に反射させるためには、集光シート6と反射型ブラインド30との距離は、5cm以内であることが好ましく、3cm以内であることがより好ましい。また、反射型ブラインド30の開口部Opeに対する面積は、集光シート6の開口部Opeに対する面積より広いことがより好ましい。なお、開口部Opeには所謂窓ガラス等が装着されることが殆どなので、上述の説明では、開口部Ope近傍と記載し、以下同様とする。また、開口部Opeに窓ガラス等が装着されている場合、接着剤、粘着剤により、集光シート6を窓ガラス等に直接設置することもできる。
【0145】
図21に示す採光装置50Bでは、開口部Ope近傍に設置された反射型ブラインド30の室内Ri側に、間隔をあけて集光シート6を設置する。採光装置50Bでは、反射型ブラインド30の室内Ri側、即ち太陽光出射面側の少なくとも一部を覆う。このとき、反射型ブラインド30と集光シート6との距離が大きくなると、反射型ブラインド30で室内Riの天井方向に反射させた光L3の一部が集光シート6で集光、拡散されない場合がある。反射型ブラインド30で室内Riの天井に向けて反射させた光をより多く集光シート6で集光、拡散させるためには、反射型ブラインド30と集光シート6との距離は、5cm以内であることが好ましく、3cm以内であることがより好ましい。また、そのとき集光シート6の開口部Opeに対する面積は、反射型ブラインド30の開口部Opeに対する面積より広いことが好ましい。
採光装置50A,50Bにおいては、構造が複雑な反射型ブラインド30を大面積にするより、集光シート6を大面積にする方が容易である点から、集光シート6の面積がより大きい方が好ましい。
【0146】
図22に示す採光装置50Cでは、ライトシェルフ32と集光シート6が用いられ、ライトシェルフ32は建物の壁面1から室外Roに向けて突出するように、壁面1に取り付けられている。ライトシェルフ32は、太陽光等の光を天井に向けて反射させる効果があれば、特に建物の外部における設置位置や形状は限定されない。採光装置50Cのようにライトシェルフ32と集光シート6とを組み合わせて用いる場合、集光シート6の凹凸構造11を構成する複数の凸状部10の延在方向が、鉛直方向(Z軸方向)に略一致するように設置することが好ましい。これにより、ライトシェルフ32により天井に向けて反射された光L3を室内Riの水平方向の広範囲に亘って効果的に導くことができる。
【0147】
前述した採光装置50A、50B、50Cのように、天井に向けて光が反射されている場合、天井の室内Ri側に反射拡散機能を持つ部材を設けることで、天井に向けて反射された光を室内Riの下方に(即ち、床に向けて)反射させて室内を明るくすることができる。天井の室内Ri側に反射拡散機能を付与する方法としては、例えば天井の室内Ri側に光透過性の拡散シートを貼付する方法が挙げられる。
【0148】
微細凹凸形成シートを光散乱シートとして使用し、鉛直方向光変向部28の一例である反射型ブラインド30と組み合わせて採光装置50Dとすることができる。具体的には、
図23に示すように、反射型ブラインド30を構成するスラット31の反射面の少なくとも一部を覆うように微細凹凸形成シートからなる光散乱シートを設けることができる。スラット31は、鉛直方向光変向部28の光反射部材といえる。
スラット31の反射面全体が光散乱シート6Bによって覆われることが好ましいが、スラット31の反射面の少なくとも一部が光散乱シート6Bによって覆われていれば、有る程度の光は天井に向けて散乱される。また、スラット31毎に光散乱シート6Bの設置面積を変える、或いは、設置パターンを変えてもよい。そのような変更等により、光の散乱がより、ランダムになり、好ましい。
【0149】
光散乱シート6Bをスラット31の反射面に設置する場合、光散乱シート6Bの複数の凸状部10の延在方向はスラット31の短手方向(
図23の例では、Y軸方向)と略平行に延在するように設置することが好ましい。これにより、反射型ブラインド30によって室内Riの水平方向の広範囲に光を効果的に導くことができる。また、光散乱シート6Bを反射型ブラインド30の各スラット31に設置するためには、一般に、接着剤、粘着剤等により、光散乱シート6Bをスラット31に貼着してもよい。特に、光学部材用の透明粘着剤層を光散乱シート6Bに設け、各スラットに貼付する方法が好ましい。このような透明粘着剤は、光散乱シート6Bの微細凹凸面と反対側の面(即ち、平滑面)に設けられることが好ましく、これにより光散乱シート6Bの光拡散性が損なわれない。
【0150】
光学部材用の透明粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂等が挙げられる。これらは一種のみで用いてもよく、二種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。また、光学部材用の透明粘着剤には、添加剤として架橋剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、充填剤、イオン性液体等が含まれてもよい。
【0151】
なお、粘着剤を光散乱シート6Bの微細凹凸面に設けて反射型ブラインド30のスラット31に設けることも可能である。この場合、光散乱シート6Bの微細凹凸が暴露されないため、凹凸構造11に汚れ、キズが付かないという利点がある。この場合、凹凸構造11を形成する材料と粘着剤との屈折率差は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。凹凸構造11を形成する材料と粘着剤との屈折率差が前述の範囲内にあれば、十分な光拡散性を得られる。なお、凹凸構造11を形成する材料と粘着剤との屈折率差の上限は1.0程度であればよい。
【0152】
上述のように、微細凹凸形成シートを光散乱シート6Bとして使用し、鉛直方向光変向部28の一例である反射型ブラインド30と組み合わせた場合に、先に述べたような、微細凹凸形成シートを使用した集光シート6を、更に組合せて採光装置とすることも可能であり、そのような場合はより多くの効果が得られる。
【0153】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができるものである。
【0154】
また、集光シート6を所望の寸法に切断し、窓ガラス以外の建材(例えば扉のガラス部分)等に貼着することも可能であり、窓材と同様、室内Riに平行光をより多く導入することができる。このように、集光シート6を様々な建材と組み合わせることで、導光性を有する建材が得られ、幅広く応用することもできる。
【実施例】
【0155】
以下、本発明について、実施例を例示して具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0156】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルム(製品名:ヒシペットLX−14S、厚さ:30μm、ガラス転移温度75℃、三菱樹脂株式会社製)の片面に、トルエンで希釈したアクリル樹脂A(ガラス転移温度128℃)を塗工乾燥後の硬質層の厚みが1μmになるようにバーコーターにより塗工し、積層シートを得た。
次いで、熱風式オーブンを用いて積層シートを95℃で1分間加熱することにより、ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルムを、加熱前の長さの40%に熱収縮させ(変形率として60%)、硬質層を折り畳むように変形させた。これにより、波状の凹凸構造が層の表面に形成された波状凹凸パターンシート(原版)を得た。
波状凹凸パターンの凸条部は、それぞれが略平行であるが蛇行し、不規則に形成された。
【0157】
次に、得られた波状凹凸パターンシート(原版)の表面に、ニッケル電気鋳造法にて、ニッケルを500μmの厚さになるように堆積させた。次いで、堆積させたニッケルを波状凹凸パターンシート(原版)から剥離し、表面に波状凹凸パターンシートの波状凹凸反転パターンが形成されたニッケル二次原版を得た。
次に、透明ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名:A4300、厚さ:188μm、東洋紡株式会社製)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、ニッケル二次原版の反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させた。硬化後、ニッケル二次原版を剥離することにより、透明PET基材上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物を材料とする表面層が形成され、該表面層の表面に、上述の波状凹凸パターンシート(原版)と同じ波状凹凸パターンが形成されたシートAを得た。
シートAの波状凹凸パターン形成面のAFMによる表面及び断面の画像から求めた凸条部の平均ピッチおよび平均深さは、それぞれ10μm、7μmであり、アスペクト比は0.7であった。
【0158】
(実施例2)
実施例1で得られた波状凹凸パターンシート(原版)を、熱風式オーブンを用いて120℃で2分間加熱しながら、収縮方向と直交する方向に張力をかけ、収縮方向と直交する方向の長さが張力をかける前の2倍になるように延伸し、波状凹凸パターンシート(原版2)を得た以外は、実施例1と同様の方法によりシートBを得た。
シートBの波状凹凸パターン形成面のAFMによる表面及び断面の画像から求めた凸条部の平均ピッチおよび平均深さは、それぞれ5μm、4μmであり、アスペクト比は0.8であった。
【0159】
(比較例1)
シートCとして等方性拡散シート(製品名:オパルスBS530、恵和株式会社製)を用意した。
シートCの粒子状凹凸パターン形成面のAFMによる表面および断面の画像から求めた凹凸の平均ピッチおよび平均深さは、それぞれ5μm、0.4μmであり、アスペクト比は0.08であった。
【0160】
シートA、B及びCを、凹凸パターン形成面と反対側の面が室外Roに面するように、即ち、平行光が平滑面に入射するように、建物の開口部Opeに設置した。このとき、建物の開口部Opeの幅Wは2mとした。
【0161】
(比較例2)
前述の建物の開口部Opeにシートを設置しない状態を比較例2とした。
【0162】
実施例1、2及び比較例1、2について、前述の方法にて求めた相対照度分布を
図24から
図28に示す。ここで、
図24は、実施例1において、Y軸方向を基準としたXY面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のXY面における出射光の相対照度分布である。
図25は、実施例1において、Y軸方向を基準としたYZ面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のYZ面における出射光の相対照度分布である。
図26は、実施例2のY軸方向を基準としたXY面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のXY面における出射光の相対照度分布である。
図27は、実施例2のY軸方向を基準としたYZ面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のYZ面における出射光の相対照度分布である。また、
図28は、比較例1のY軸方向を基準としたXY面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のXY面における出射光の相対照度分布である。なお、比較例1は等方性拡散シートであり、Y軸方向を基準としたYZ面上におけるθ
insが30°及び60°の場合のYZ面における出射光の相対照度分布は、XY面における出射光の相対照度分布と同一のため省略する。
また、実施例1、2及び比較例1、2について、前述の方法により、比XH/ZHについても検討した。
【0163】
実施例1,2及び比較例1,2について、前述の方法を基本として入射角度θ
insが30°及び60°の場合のI(0.75W,0.5W)を求めた。ただし、式(1)の定積分計算の代わりに、次に示す式(34)の区分求積法を使用した。
【0164】
【数36】
【0165】
具体的には、0≦W≦2の範囲内を200個に分割し、各分割位置に対応するE
θinstan-1((K−x)/y)/E
0の値を相対照度分布曲線より読み取り、式(34)に代入し、200点の分割位置について合計した次に示す式(35)により、入射角度θ
insが30°及び60°の場合のI(0.75W,0.5W)を求めた。
【0166】
【数37】
【0167】
I(0.75W,0.5W)の算出結果を表1に示す。
【0168】
【表1】
【0169】
実施例1,2のシートA,Bは、波状凹凸形状の凸条部が互いに略平行に形成されているため、XH/ZHが大きい。また、
図24と
図25とを比較すると、或いは
図26と
図27とを比較すると、入射角が30°、60°の何れの場合でも、X方向の拡散性の方がZ方向の拡散性より大きい。また、波状凹凸形状の凸条部のアスペクト比が大きいため、θ
insとθ
outsとの差が大きい。そのため、I(0.75W,0.5W)が0.025以上と大きくなり、シートA,Bを窓用の集光シートとして用いた場合、太陽光の方位が変わっても室内Riの水平方向により多くの太陽光を採り込み、室内Ri全体で十分な照度を維持することが可能であった。
【0170】
一方、比較例1のシートCは、等方性拡散シートであり、XHとZHに差がなく、また、θ
insとθ
outsとの差も小さいため、I(0.75W,0.5W)が0.025より小さく、シートCを窓用の集光シートとして用いた場合、太陽光の方位が変わった場合に室内Riの水平方向に太陽光を採り込む能力が不十分であり、室内Ri全体で十分な照度を維持することが不可能であった。
また、比較例2はシートを使用しないため、照度の変化が極端であり、太陽光の方位が変わった場合に、室内Riの水平方位に光を取り込む能力が不十分であり、室内Ri全体で十分な照度を維持することが不可能であった。
【0171】
以上の実施例及び比較例により、本発明に係る集光シートによれば、I(0.75W,0.5W)が0.025以上と大きくなり、集光シートに入射する太陽光等の平行光の方位が変わっても室内Riの水平方向により多くの太陽光を採り込み、室内Ri全体で十分な照度を維持できることを確認した。