(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617768
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】導電性シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20191202BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20191202BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20191202BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20191202BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20191202BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20191202BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/28
C09J7/38
C09J201/00
C09J9/02
B32B15/08 D
H01B5/14 Z
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-249440(P2017-249440)
(22)【出願日】2017年12月26日
(62)【分割の表示】特願2016-101011(P2016-101011)の分割
【原出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2018-83953(P2018-83953A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2017年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−515802(JP,A)
【文献】
特開2002−350612(JP,A)
【文献】
特開2003−017822(JP,A)
【文献】
特開2008−156547(JP,A)
【文献】
特開2000−123639(JP,A)
【文献】
特開2009−040900(JP,A)
【文献】
特開平11−323275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01B
G02B
G09F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層され、ベース基材が、樹脂フィルムの両面に同種の金属層が形成された構造を有している導電性シートであって、更に該導電性粘着層側に剥離シートが積層されている構造を有し、以下の形状追随性、カール特性及び形状保持性を示す導電性シート:
<形状追随性>
導電性シートを、巾10mm、長さ15mmの長方形に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを取り去り、その長辺側を、厚さ1mmのアルミニウム板の厚み部分を包み込むように、且つアルミニウム板の表面の縁1mmを覆うように貼り付け、残りを90°折り曲げてアルミニウム板の裏面に貼り付け、80℃、95%RHの環境下に72時間放置した際に、剥がれが生じないこと;
<カール特性>
導電性シートを、巾15mm、長さ150mmの短冊状に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを180°方向に1000mm/秒の速さで引き剥がした際に1回転を超えるカールが生じないこと;及び
<形状保持性>
導電性シートを、巾15mm、長さ50mmの短冊状に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを180°方向に1000mm/秒の速さで引き剥がし、サンプルの中心で遮光性絶縁層側に90°に折り曲げ、その状態で10秒間形状を保持できること。
【請求項2】
導電性シートの遮光性絶縁層表面が、1.0×108Ω/□以上の表面抵抗値と、80%以下の光沢度と、1以上の光学濃度とを有する請求項1記載の導電性シート。
【請求項3】
導電性シートの遮光性絶縁層表面が、1.0×1010Ω/□以上の表面抵抗値と、40%以下の光沢度と、1.2以上の光学濃度とを有する請求項1記載の導電性シート。
【請求項4】
ベース基材が、樹脂フィルムの両面にそれぞれ接着剤層を介して金属層を積層した構造を有している請求項1〜3のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項5】
ベース基材を構成する樹脂フィルムの線膨張係数が15〜100ppm/℃であり、金属層の線膨張係数が12〜25ppm/℃である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項6】
ベース基材を構成する樹脂フィルムと金属層との間の線膨張係数の差が、40ppm/℃以下である請求項5記載の導電性シート。
【請求項7】
ベース基材を構成する樹脂フィルムの引張弾性率(JIS K7113)が、0.3〜15GPaであり、金属層の引張弾性率が45〜200GPaである請求項1〜6のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項8】
ベース基材を構成する樹脂フィルムと金属層との間の引張弾性率(JIS K7113)差が、100GPa以下である請求項7記載の導電性シート。
【請求項9】
ベース基材を構成する樹脂フィルム、導電性粘着層側の金属層の厚み、及び絶縁層側の金属層の厚みが、いずれも5〜20μmである請求項1〜8のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項10】
導電接着層側金属層の厚み[Mt1]と、樹脂フィルムの厚み[Bt]と、絶縁層側金属層の厚み[Mt2]との比が、[Mt1]:[Bt]:[Mt2]=0.25〜4:1:0.25〜4である請求項9記載の導電性シート。
【請求項11】
遮光性絶縁層が、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂から形成された黒色樹脂層である請求項1〜10のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項12】
黒色着色剤がアニリンブラックである請求項11記載の導電性シート。
【請求項13】
遮光性絶縁層が、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂から形成された黒色樹脂層と、その少なくとも片面に形成された絶縁プライマー層又はマットニス層とからなる請求項1〜12のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項14】
黒色着色剤がカーボンブラックである請求項13記載の導電性シート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の導電性シートで接続された、導通させる部位が起伏のある平面に配置されている画像表示モジュール。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の導電性シートで接続された、導通させる部位が同一の平面には存在しない配置となっている画像表示モジュール。
【請求項17】
表示面操作パネルの表面外縁部に設けられた表面電極と、裏面外縁部に設けられた裏面電極とが、表示面操作パネルの外縁部を包むように配置された請求項1〜14のいずれかに記載の導電性シートで接続されている当該表示面操作パネルと、その表示面操作パネルで操作されている画像表示パネルとを有する画像表示モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示面操作パネルの表示面操作面とその背面との導通をとる場合等に適した導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁波シールドテープとして、アルミニウムや銅などの金属箔の片面に導電性粘着層を設けた導電性シートが提案されている(特許文献1)。このような導電性シートに対し、他の導電体との接触などによるショートが発生してしまうことを防止するため、導電性シートの導電性粘着層が形成されていない面に、絶縁性樹脂層としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積層することにより、導電性シートの片面に絶縁性を付与する改良が行われている。また、導電性粘着層には、剥離フィルムを貼付してハンドリング性を向上させることも行われている。
【0003】
ところで、近年、スマートフォン、携帯ゲーム機、切符販売機等には表示面操作パネル(いわゆるタッチパネル)が適用されており、その表示面操作面からその背面に導通をとるために導電性シートが使用されている。このような導電性シートに対しても、金属筐体等の他の導電体との意図していない接触によりショートが発生してしまうことを防止するために、片面に絶縁性樹脂フィルムを積層したりすることでその片面に絶縁性を付与することが行われている。このような導電性シートで表示面操作パネルの表示面操作面からその背面に導通を取る場合、表示面操作パネルの外縁部を、導電性シートの絶縁性樹脂フィルムが外側となるようにくるむことが試みられている。この場合、表示面操作パネルを通して視認する画像の品質を向上させるために、あるいは画像視認性の低下を防止するために、導電性シートの絶縁性樹脂フィルムが黒枠となるように、絶縁性樹脂フィルム自体を黒く着色することや、絶縁性樹脂フィルム上に更に黒印刷層を形成することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−227985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の導電性シートをコーターに通したり、導電性シートから剥離フィルムを剥がしたりすると、PETフィルムに比べ金属層が塑性変形し易く、他方、PETフィルムは弾性変形し易いため、導電性シートにカールが生じ易くなるという問題があった。また、表示面操作パネルの外縁部をくるむように、導電性シートを表示面操作パネルに貼り付けた場合、貼付部の段差や角部の形状に対する導電性シートの追随性が十分とはいえず、そのため剥がれ易く、必要とする形状保持性が得られないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層されてなる導電性シートに対し、カールのし難さと良好な形状安定性、並びに形状追随性とを付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、樹脂フィルムの両面に同種の金属層を積層した積層体を、導電性シートの厚み方向の中心部分となるベース基材として採用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層されてなる導電性シートであって、ベース基材が、樹脂フィルムの両面に同種の金属層が形成された構造を有している導電性シートを提供する。
【0009】
この場合、導電性シートの遮光性絶縁層表面の絶縁性レベルは、表面抵抗値が好ましくは1.0×10
8Ω/□以上、遮光性のレベルは好ましくは光沢度が80%以下且つ光学濃度が1以上である。
【0010】
また、本発明は、表示面操作パネルの表面外縁部に設けられた表面電極と、裏面外縁部に設けられた裏面電極とが、表示面パネルの外縁部を包むように配置された上述の本発明の導電性シートで接続されている当該表示面操作パネルと、その表示面操作パネルで操作されている画像表示パネルとを有する画像表示モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0011】
ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層された本発明の導電性シートは、ベース基材として、樹脂フィルムの両面に同種の金属層が形成された構造を有しているものを使用する。このため、導電性シートにテンションがかかっても、樹脂フィルムの両面での金属層は同じ伸び率を示すために、カールの発生を大きく抑制することができる。また、絶縁フィルムの両側に金属層が配置されているので、曲面や屈折部(角部)等の変化する形状に対して良好な形状追随性で貼付することができ、しかも形状保持性にも優れている。
【0012】
また、遮光性絶縁層の遮光性絶縁層表面の絶縁性レベルを1.0×10
8Ω/□以上の表面抵抗値とすると、他の導電体との接触によるショートの発生を抑制することが可能となる。また、遮光性のレベルを80%以下の光沢度で且つ1以上の光学濃度とすると、表示面操作パネルの外縁部にマット状の黒枠を設けることができ、表示面操作パネルを介して観る画像の視認性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の導電性シートの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の導電性シートの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の導電性シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の導電性シートについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の導電性シート100の断面図であり、この導電性シート100は、ベース基材10の片面に導電性粘着層20が形成され、他面に遮光性絶縁層30が形成された構造を有する。
【0016】
<ベース基材>
本発明の導電性シート100は、ベース基材10が、樹脂フィルム1の両面に同種の金属層2、3が積層された構造を有しているという特徴を有する。これにより、導電性シートにおけるカールの発生を大きく抑制することができると共に、導電性シートに良好な形状追随性と形状安定性とを付与することができる。
【0017】
ベース基材10を構成する樹脂フィルム1としては、導電性シートのベースフィルムとして使用されている樹脂フィルムを好ましく適用することができる。このような樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリスチレンフィルム等を挙げることができる。中でも、入手容易性、機械的強度、耐熱性、コスト、防さび性等の観点からポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを好ましく適用することができる。
【0018】
ベース基材10を構成する樹脂フィルム1の層厚としては、導電性シートの機械的強度を保持し、また、良好な形状追随性並びに形状安定性を確保するために、好ましくは5〜20μm、より好ましくは7〜15μmである。
【0019】
ベース基材10を構成する金属層2、3としては、従来の導電性シートに使用されている金属層を適用することができる。このような金属層2、3としては、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀等を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性、機械的強度、耐熱性、コスト、防さび性等の点からアルミニウムを好ましく適用することができる。
【0020】
導電性粘着層20側の金属層2並びに遮光性絶縁層30側の金属層3の層厚は、導電性シートの機械的強度を保持し、また、良好な形状追随性並びに形状安定性を確保するために、それぞれ好ましくは5〜20μm、より好ましくは7〜15μmである。
【0021】
導電性粘着層20側の金属層2の厚み[Mt1]と、樹脂フィルム1の厚み[Bt]と、遮光性絶縁層30側の金属層3の厚み[Mt2]との比は、形状追随性と形状保持性とを両立させる観点から、好ましくは[Mt1]:[Bt]:[Mt2]=0.25〜4:1:0.25〜4、より好ましくは0.4〜2.4:1:0.4〜2.4である。
【0022】
樹脂フィルム1への金属層2、3の形成は常法により行うことができる。例えば、樹脂フィルム1に、イソシアネート系架橋剤等を含有するポリエステル系接着剤やポリウレタン系接着剤等のドライ接着剤から形成される接着剤層(図示せず)を介して金属層として金属箔を積層する方法や、樹脂フィルム1の両面に無電解金属メッキを行い、更に電解金属メッキを行うことにより金属層2、3を形成する方法や、樹脂フィルム1の両面に真空蒸着法により金属層2、3を積層する方法等が挙げられる。中でも、高い量産性、低い製造コストという点から、接着剤層を介して金属層を積層する方法を好ましく適用することができる。
【0023】
また、ベース基材10を構成する樹脂フィルム1の線膨張係数[ppm/℃]は、大きすぎるとカールが発生し易くなり、また小さすぎると熱環境下で積層構造が不安定になる傾向から、層間剥離の発生が懸念されるので、好ましくは15〜100ppm/℃、より好ましくは20〜70ppm/℃である。
【0024】
また、金属層2、3の線膨張係数[ppm/℃]は、樹脂フィルム1との積層構造の安定性の観点から、好ましくは12〜25ppm/℃、より好ましくは16〜23ppm/℃である。
【0025】
樹脂フィルム1の線膨張係数と金属層2、3の線膨張係数との差は、大きすぎるとカールが発生し易くなる傾向があるので、好ましくは40ppm/℃以下、より好ましくは25ppm/℃以下である。
【0026】
ベース基材10を構成する樹脂フィルム1のJIS K7113による引張弾性率[GPa]は、小さすぎるとカールしやすくなる傾向があり、大きすぎると形状追随性を損なう傾向があるので、好ましくは0.3〜15GPa、より好ましくは2〜7GPaである。
【0027】
また、金属層2、3のJIS K7113による引張弾性率[GPa]は、小さすぎるとカールし易くなる傾向があり、大きすぎると形状追随性を損なう傾向があるので、好ましくは45〜200GPa、より好ましくは75〜130GPaである。
【0028】
ベース基材10を構成する樹脂フィルム1と金属層2、3とのJIS K7113による引張弾性率の差は、大きすぎるとカールが発生し易くなる傾向があるので、好ましくは100GPa以下、より好ましくは80GPa以下である。
【0029】
<遮光性絶縁層>
本発明の導電性シート100を構成する遮光性絶縁層30は、導電性シート100に遮光性と絶縁性とを付与する層である。ここで、導電性シート100の遮光性絶縁層30表面の絶縁性レベルは、低すぎるとショートの発生が懸念されるので、表面抵抗値が好ましくは1.0×10
8Ω/□以上、より好ましくは1.0×10
10Ω/□以上である。
【0030】
また、遮光性絶縁層30の遮光性のレベルは、画像の視認性を向上させるために、JIS Z8741(入射角60°)による光沢度が好ましくは80%以下、より好ましくは40%以下であり、且つJIS K7605による光学濃度が好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、更により好ましいのは1.4以上である。
【0031】
遮光性絶縁層30の層厚としては、薄すぎると意図した光学特性を損なう傾向があり、厚すぎるとクラックが発生し易くなる傾向があるので、好ましくは3〜15μm、より好ましくは5〜11μmである。
【0032】
このような遮光性絶縁層30としては、その表面の表面抵抗値、光沢度、光学濃度が上述の範囲である種々の構成を取ることができる。例えば、
図1に示すように、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂から形成された単層の黒色樹脂層である構成、
図2や
図3に示すように、黒色着色剤で着色された絶縁性樹脂から形成された黒色樹脂層30aと、その片面に形成された絶縁プライマー層30bやマットニス層30cとからなる構成を挙げることができる。
【0033】
遮光性絶縁層30を構成する黒色樹脂層の絶縁性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン−エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。更に、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴム等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。光硬化性樹脂を適用することも可能である。
【0034】
また、黒色着色剤としては、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の公知の黒色染料、黒色顔料を挙げることができる。これらの着色剤の平均粒径は、小さすぎると製造時における絶縁性樹脂へ均一に混合することが困難になる可能性が高まる傾向があり、大きすぎると遮光性絶縁層30の平滑性が低下する傾向があるので、好ましくは10〜500nm、より好ましくは50〜100nmである。また、黒色着色剤の黒色樹脂層中の含有量は、少なすぎると意図した光学特性が得られない傾向があり、多すぎると隣接する層に対する密着性が低下したり、脱落したりすることが懸念されるので、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%である。
【0035】
また、
図2に示す絶縁プライマー層30bとしては、黒色樹脂層で例示した絶縁性樹脂に、必要に応じてブロッキングを防止するためにシリカ等のフィラーを配合したものを挙げることができる。
【0036】
絶縁プライマー層30bの層厚は、薄すぎると意図した絶縁性が得られなくなる傾向があり、厚すぎると意図した形状保持性が得られなくなる傾向があるので、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜7μmである。
【0037】
また、
図3に示すマットニス層30cとしては、黒色樹脂層で例示した絶縁性樹脂に、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ等の平均粒子径0.1〜10μmのフィラーを、マット調の好ましい外観と良好な塗膜強度とをバランスよく実現するために好ましくは30〜80質量%含有させて成膜したものを挙げることができる。
【0038】
マットニス層30cの層厚は、薄すぎると意図した絶縁性が得られなくなる傾向があり、厚すぎると意図した形状保持性や光学特性が得られなくなる傾向があるので、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜7μmである。
【0039】
なお、遮光性絶縁層30が
図1に示すような単層の黒色樹脂層である場合、黒色着色剤としては、黒色着色剤そのものが絶縁性であるという点からアニリンブラックを使用することが好ましい。また、
図2又は
図3に示すような2層構造である場合、黒色樹脂層30aの黒色着色剤としてはアニリンブラックでもよいが、絶縁性を担保する絶縁プライマー層30bやマットニス層30cが存在するために、それ自体導電性を示すカーボンブラックを本発明の効果を損なわない範囲で使用することもできる。
【0040】
<導電性粘着層>
導電性シート100を構成する導電性粘着層20としては、従来の導電性シートの導電性粘着層を適用することができる。例えば、黒色樹脂層で例示した絶縁性樹脂に、カーボンブラックや金属粒子などの導電粒子を、表面抵抗値が500mΩ/□以下となる導電性を確保するに十分な量で配合して成膜したものを挙げることができる。
【0041】
導電性粘着層20の層厚は、薄すぎると意図した粘着性が得られなくなる傾向があり、厚すぎると意図した導通特性が得られなくなる傾向があるので、好ましくは10〜35μm、より好ましくは15〜25μmである。
【0042】
<導電性シートの製造>
本発明の導電性シートは、公知の手法を使用して製造することができる。例えば、PETフィルム等の樹脂フィルムの片面にイソシアネート硬化剤を含有するウレタン系接着剤等のドライ接着剤を塗布し、アルミニウム箔等の金属層を積層した後、他面に同様にドライ接着剤を塗布し、金属層を積層することにより、両面に金属層が積層されたベース基材を作成する。次に、剥離シート上に導電性粘着層用塗料を塗布し、乾燥して導電性粘着層を形成し、そこにベース基材を積層する。続いて、そのベース基材上に、黒色樹脂層形成用黒インクを塗布し、乾燥することにより遮光性絶縁層を形成する。これにより、
図1の導電性シートが得られる。
【0043】
図2及び
図3の導電性シートも、黒色樹脂層とマットニス層又は絶縁プライマー層とをそれぞれ塗布・乾燥して成膜すること以外、基本的に
図1の導電性シートと同様に製造することができる。
【0044】
本発明の導電性シートは、導通させる部位が起伏のある平面に配置されている画像表示モジュールや、導通させる部位が同一の平面には存在しない配置となっている画像表示モジュールに好ましく適用することができる。
【0045】
前者の例としては、ノートパソコンなどのような表示パネルを、導電性シートで任意な屈曲部と段差を隔てて別途設けられた基板へ接続するように配置された画像表示モジュールを例示することができる。このノートパソコンに例示されるような画像表示モジュールも本願発明の一部である。
【0046】
また、後者の例としては、タッチパネルなどの表示面操作パネルの表面外縁部に設けられた表面電極と、裏面外縁部に設けられた裏面電極とを、導電性シートで表示面操作パネルの外縁部を包むように配置して接続された表示面操作パネルを、その操作対象となる液晶表示パネル等の画像表示パネルと組み合わせた画像表示モジュールを例示することができる。この画像表示モジュールも本願発明の一部である。
【実施例】
【0047】
実施例1
5μm厚のPETフィルム(マイラー、帝人デュポンフィルム(株))の片面に、イソシアネート系硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株))を使用したポリエステル樹脂(UE3220、ユニチカ(株))を3g/m
2(乾燥塗布量換算)で塗布し、7μm厚の軟質アルミニウム箔(1030N−0材、日本製箔(株))を積層した。同様にPETフィルムの他面に7μm厚の軟質アルミニウム箔(1030N−0材、日本製箔(株))を積層し、ベース基材を作成した。
【0048】
剥離PETフィルムに、導電性黒色粘着剤(カーボンブラックを10質量%含有するアクリル系接着剤)を乾燥厚で25μm厚となるように塗布し乾燥することにより導電性の黒色粘着層を形成し、この導電性黒色粘着層に、先に作成したベース基材を積層した。
【0049】
続いて、このベース基材上に、絶縁黒インク{アニリンブラック(東京色材工業(株))をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株))に分散させたインク(デクセリアルズ(株))}を、乾燥厚で3μmとなるように塗布し乾燥し、遮光性絶縁層を形成した。これにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0050】
実施例2
ベース基材の5μm厚のPETフィルムに代えて、12μm厚のPETフィルム(E5100、東洋紡績(株))を使用すること以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0051】
実施例3
遮光性絶縁層として、ベース基材側から3μm厚の絶縁プライマー層(ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株)))とその上に形成されたカーボンブラック黒インク層{カーボンブラック(MA8、三菱化学(株))をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株))に分散させたインク(デクセリアルズ(株))}との積層物を使用すること以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0052】
実施例4
遮光性絶縁層として、ベース基材側から3μm厚のカーボンブラック黒インク層{カーボンブラック(MA8、三菱化学(株))をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株))に分散させたインク(デクセリアルズ(株))}と、3μm厚のマットニス層(LG6620、東京インキ(株))の積層物を使用すること以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0053】
比較例1
遮光性絶縁層として、3μm厚のカーボンブラック黒インク層{カーボンブラック(MA8、三菱化学(株))をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株))に分散させたインク(デクセリアルズ(株))}を使用すること以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0054】
比較例2
カーボンブラック黒インク層を形成する前のベース基材の金属層に、実施例1で使用したウレタン系接着剤を塗布し、5μm厚のPETフィルム(マイラー、帝人デュポンフィルム(株))を積層した後に、カーボンブラック黒インク層を形成すること以外、比較例1と同様の操作を繰り返すことにより、表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0055】
比較例3
ベース基材のアルミニウム箔に挟まれた5μm厚のPETフィルムに代えて、12μm厚のPETフィルム(E5100、東洋紡績(株))を使用すること以外、比較例2と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0056】
比較例4
ベース基材として、5μm厚のPETフィルムの片面だけに実施例1で使用した接着剤を介して軟質アルミニウム箔を積層したものを使用し、軟質アルミニウム箔が積層されていないベース基材面に直接カーボンブラック黒インク層{カーボンブラック(MA8、三菱化学(株))をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株))に分散させたインク(デクセリアルズ(株))}との積層物を使用すること以外、比較例1と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0057】
比較例5
ベース基材の5μm厚のPETフィルムに代えて、12μm厚のPETフィルム(E5100、東洋紡績(株))を使用すること以外、比較例4と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0058】
比較例6
剥離PETフィルムに導電性粘着層を形成することに代えて、30μm厚の導電性不織布強化粘着フィルム(Sui−80−M30、セーレン(株))を積層すること以外、比較例非4の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0059】
比較例7
ベース基材の5μm厚のPETフィルムに代えて、12μm厚のPETフィルム(E5100、東洋紡績(株))を使用すること以外、比較例6と同様の操作を繰り返すことにより表1に示す構成の導電性シートを得た。
【0060】
<評価>
得られた導電性シートについて、以下に説明するように、「カール特性」、「形状保持
性」、「形状追随性(反発性)」、「絶縁性(表面抵抗値)」、「遮光性(光沢度並びに
光学濃度)」を試験評価した。得られた結果を表1に示す。
【0061】
「カール特性」
導電性シートを、巾15mm、長さ150mmの短冊状に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを180°方向に1000mm/秒の速さで引き剥がし、生じたカールを目視確認した。生じたカールが1回転以内の場合を良好と判定し、1回転を超える場合を不良と判定した。
【0062】
「形状保持性」
導電性シートを、巾15mm、長さ50mmの短冊状に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを180°方向に1000mm/秒の速さで引き剥がし、サンプルの中心で遮光性絶縁層側に90°に折り曲げ、その状態で10秒間形状を保持できるかを目視確認した。形状を保持できた場合を良好と判定し、形状を保持できなかった場合を不良と判定した。
【0063】
「形状追随性(反発性)」
導電性シートを、長さ15mm、巾10mmの長方形に切り出した試験サンプルの導電性粘着層側の剥離シートを取り去り、その長辺側を、厚さ1mmのアルミニウム板の厚み部分を包み込むように、且つアルミニウム板の表面の縁1mmを覆うように貼り付け、残りを90°折り曲げてアルミニウム板の裏面に貼り付け、80℃、95%RHの環境下に72時間放置した際に、剥がれが生じたか否かを目視観察した。剥がれが生じていない場合を良好と判定し、剥がれが生じた場合を不良と判定した。
【0064】
「絶縁性(表面抵抗値)」
導電性シートの遮光生絶縁層表面の表面抵抗値を、電気抵抗測定器(ハイレスター、(株)三菱アナリテック)を用いて測定した。実用上、1×10
8Ω/□以上であることが求められる。
【0065】
「遮光性(光沢度並びに光学濃度)」
導電性シートの遮光性絶縁層表面の光沢度を、JIS Z8741(入射角60°)に従って光沢度計(グロスチェッカーIG−320、(株)堀場製作所)を用いて測定した。実用上、80%以下であることが求められる。また、遮光性絶縁層表面の光学濃度を、JIS K7605に従って光学濃度計(反射濃度計RT924、Macbeth製)を用いて測定した。実用上、1.4以上であることが求められる。両方の性能を満足するものを良好と判断した。
【0066】
なお、実施例1〜4及び比較例1〜5の導電性シートの導電性粘着層、比較例6、7の導電性不織布強化粘着フィルムの導電性については、100×25mmの短冊状に切り出したサンプルを、50mm離隔して平行に配置した2枚の銅箔(1×25×100mm)の端部に橋渡しするように貼り付け、電気抵抗測定器(ミリオームメータ4332B、Agillent社)を用いて2枚の銅箔間の抵抗値を測定した。その結果、いずれのサンプルも500mΩを大きく下回る50〜60mΩという非常に低い抵抗値を示した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1〜4の導電性シートは、いずれの評価項目についても良好な結果が得られた。
【0069】
それに対し、比較例1の導電性シートの場合、絶縁黒インクを使用せずに、導電性を示すカーボンブラック黒インクを使用して遮光性絶縁層を形成したため、表面抵抗値が低く、実用上満足できる絶縁性を示さなかった。
【0070】
また、比較例2の導電性シートの場合、絶縁黒インクを使用せずに、カーボンブラック黒インクを使用して遮光性絶縁層を形成しているにも関わらず、カーボンブラック黒インク層の下層に絶縁性のPETフィルムを配置しているので、良好な絶縁性を示したが、ベース基材の厚み方向の対称性が失われているため、カール特性に問題が生じた。
【0071】
比較例3の導電性シートの場合、比較例2の導電性シートのベース基材の樹脂フィルム厚を5μmから12μmに厚くしたので、ベース基材の厚み方向の対称性が比較例2よりも劣っており、その結果、形状追随性に問題が生じた。
【0072】
比較例4及び5の導電性シートの場合、いずれもアルミニウム箔が片面にしか積層されていないベース基材を使用しているため、形状追随性は良好であるものの、カール特性、形状保持性に問題が生じた。
【0073】
比較例6及び7の導電性シートの場合、導電性粘着層として不織布強化粘着フィルムを使用しているので、カール特性に問題は生じないものの、いずれもアルミニウム箔が片面にしか積層されていないベース基材を使用しているため、形状保持性と形状追随性とに問題が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層された本発明の導電性シートは、ベース基材として、樹脂フィルムの両面に同種の金属層が形成された構造を有しているものを使用する。このため、導電性シートにテンションがかかっても、樹脂フィルムの両側の金属層は同じ伸び率を示すために、カールの発生を大きく抑制することができ、しかも曲面や屈折部(角部)等の変化する形状に対しても良好な形状追随性で貼付することができ、しかも形状保持性にも優れている。よって、本発明の導電性シートは、導通させる部位が起伏のある平面に配置されている画像表示モジュールや、導通させる部位が同一の平面には存在しない配置となっている画像表示モジュールの製造に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 樹脂フィルム
2 導電性粘着層側の金属層
3 遮光性絶縁層側の金属層
10 ベース基材
20 導電性粘着層
30 遮光性絶縁層
30a 黒色樹脂層
30b 絶縁プライマー層
30c マットニス層
100 導電性シート