(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、コークス乾式消火設備は、その回収電力量(=発電量−消費電力量)が評価される傾向にある。消費電力の最大項目は、循環ブロワの消費電力量である。上記従来技術では、循環ガスの一部を除塵器の入口部までバイパスさせるため、冷却塔に送り出す循環ガスの量は減るものの、循環ブロワの下流側に分岐ダクトを設けているため、循環ブロワの仕事量は殆ど変わらず、消費電力量の低減には結びつかない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ボイラを保護しつつ回収電力量を向上させることができるコークス乾式消火設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、赤熱コークスを循環ガスで冷却する冷却塔と、前記冷却塔を通過した前記循環ガスに含まれる粉塵の少なくとも一部を除塵する除塵器と、前記除塵器を通過した前記循環ガスから熱回収するボイラと、前記ボイラを通過した前記循環ガスを前記冷却塔に送り出す第1の送風機と、前記ボイラと前記第1の送風機との間を接続する循環ダクトと、前記循環ダクトから分岐し、前記冷却塔の出口部及び前記除塵器の入口部の少なくともいずれか一方に接続されるバイパスダクトと、前記バイパスダクトに設けられ、前記第1の送風機よりも低い圧力で前記循環ガスの一部を送り出す第2の送風機と、を有する、コークス乾式消火設備を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、バイパスダクトを接続し、循環ガスを冷却塔に送り出す第1の送風機の上流側から、冷却塔の出口部及び除塵器の入口部の少なくともいずれか一方に循環ガスの一部をバイパスする。これにより、ボイラの入口部における循環ガスの温度を調整し、ボイラを保護することができる。また、第1の送風機の上流側からのバイパスによって、第1の送風機に供給される循環ガスが減り、第1の送風機の仕事量も減るため、消費電力量を低減することができる。バイパスダクトが接続される冷却塔の出口部及び除塵器の入口部は、第1の送風機の上流側よりも高圧側であるため、バイパスダクトに第2の送風機を設ける必要があるが、バイパスダクトを通る循環ガスは冷却塔(コークス層)を通過しないため、第2の送風機による昇圧幅は第1の送風機よりも小さく設定できる。このため、第2の送風機を追加したとしても、第1の送風機とのトータルの消費電力量は、従来の第1の送風機の下流側からバイパスさせる構成と比べて小さくすることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記冷却塔の出口部は、前記冷却塔の周壁部の周方向に沿って設けられる環状煙道を有し、前記環状煙道は、前記除塵器の入口部が接続される出口部を有し、前記バイパスダクトは、前記環状煙道において、前記出口部とは反対側に接続される、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第1の送風機の上流側からバイパスした低温の循環ガスを環状煙道の反出口側に供給して、ボイラの入口部における循環ガスの温度ムラを低減することができる。すなわち、環状煙道の反出口側に供給された低温の循環ガスは、環状煙道の出口部に向かって環状煙道を約半周流れるため、その過程で冷却塔の環状煙道に噴き上がる高温の循環ガスと略均一に混ぜ合わせることができる。循環ガスが略均一に混ざり合うと温度分布が小さくなり、その温度分布の最高温度がボイラの上限温度を超えないようにすることが容易になり、ボイラの入熱量を多くすることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記環状煙道の底部から燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部を有し、前記バイパスダクトは、前記環状煙道の天井部に接続される、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、環状煙道の底部から燃焼用空気を供給して、環状煙道の底部で可燃性ガスを燃焼させると共に、環状煙道の天井部から低温の循環ガスを供給することで、ボイラの入口部における循環ガスの温度ムラを低減させることができる。すなわち、燃焼により発生した高温ガスは、煙突効果により循環ガス経路において底部から天井部に向かって上昇するのに対し、バイパスダクトから供給される低温ガスは、その比重よって天井部から底部に向かって降下するため、循環ガスを略均一に混ぜ合わせることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記バイパスダクトに設けられ、前記冷却塔の出口部及び前記除塵器の入口部の少なくともいずれか一方からの前記循環ガスの逆流を防止する逆止弁を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の出口部及び除塵器の入口部は第1の送風機の上流側よりも高圧側であるため、バイパスダクトに逆止弁を設け、冷却塔の出口部及び除塵器の入口部から第1の送風機の上流側への循環ガスの逆流を防止する。
【0012】
また、本発明においては、前記バイパスダクトは、鉛直方向に延びる鉛直部を有し、前記逆止弁は、前記鉛直部に設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、逆止弁をバイパスダクトの鉛直部に設けることで、逆止弁の上部は比重が小さい高温ガス、逆止弁の下部は比重が大きい低温ガスであるため、例えば第2の送風機を緊急停止させたときでもガスリークを防ぐことができ、設備の安全を確保できる。
【0013】
また、本発明においては、前記冷却塔の内部に前記循環ガスを吹き込むブラストヘッドと、前記ブラストヘッドに接続される分配器と、前記第1の送風機から送り出された前記循環ガスを、前記分配器を介して前記ブラストヘッドに供給する環状ガス供給ダクトと、を有し、前記ブラストヘッドには、前記分配器が少なくとも2本以上接続される、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ブラストヘッドに接続される分配器が通常の2本以上となるため、分配器内部の流路面積が拡大され、通気抵抗が小さくなる。これにより、第1の送風機の昇圧量を小さくし、消費電力量を小さくすることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記冷却塔の内部に前記循環ガスを吹き込むブラストヘッドと、前記ブラストヘッドに接続される分配器と、前記第1の送風機から送り出された前記循環ガスを、前記分配器を介して前記ブラストヘッドに供給する環状ガス供給ダクトと、を有し、前記ブラストヘッドには、前記分配器が鉛直方向に対して斜めに延びて接続される、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ブラストヘッドに接続される分配器が鉛直方向に対して斜めに延びるため、平面視で幅寸法を拡大させることなく、分配器内部の流路面積を拡大することができる。このため、冷却塔におけるコークスの降下速度の均一性を崩すことなく、通気抵抗を小さくし、第1の送風機の消費電力量を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記冷却塔の内部に前記循環ガスを吹き込むブラストヘッドと、前記ブラストヘッドに接続される分配器と、前記第1の送風機から送り出された前記循環ガスを、前記分配器を介して前記ブラストヘッドに供給する環状ガス供給ダクトと、を有し、前記分配器と前記環状ガス供給ダクトとの接続部は、ベルマウス状に形成されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、分配器と環状ガス供給ダクトとの接続部がベルマウス状に形成されているため、環状ガス供給ダクトから分配器への流入抵抗を低減することができ、第1の送風機の消費電力量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ボイラを保護しつつ回収電力量を向上させることができるコークス乾式消火設備が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の装置について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態におけるコークス乾式設備1の構成を示す図である。
コークス乾式消火設備1は、
図1に示すように、循環ガス2(
図1において白抜き矢印で示す)を循環させ、赤熱コークスを冷却すると共に、赤熱コークスの顕熱を熱回収する設備である。循環ガス2は、不活性ガス(例えば窒素)を主成分とするガスである。コークス乾式消火設備1は、冷却塔3と、除塵器4と、ボイラ5と、循環ブロワ6(第1の送風機)等を有する。
【0020】
冷却塔3は、赤熱コークスを循環ガス2で冷却する設備である。冷却塔3は、上部が予備室3A(プリチャンバ、貯留帯)となり、下部が冷却室3B(冷却帯)となっている。冷却室3Bは、小煙道3C(ガス吸引帯)の上端までの領域であり、その上は、予備室3Aとなる。冷却塔3においては、予備室3Aの上部を介して装入される赤熱コークスが、冷却室3Bの下部から吹き込まれる循環ガス2の対向流によって冷却(消火)される。
【0021】
除塵器4は、冷却塔3を通過した循環ガス2に含まれる粉塵2aの少なくとも一部を除塵する設備である。この除塵器4は、重力沈降式の除塵器である。重力沈降式の除塵器4には、邪魔板反転式の除塵器と異なり、邪魔板が存在しない。重力沈降式の除塵器4においては、循環ガス2に含まれる循環ガス2よりも比重の大きい粉塵2a(主としてコークス粉、その他のダスト)が、重力によって除塵される。
【0022】
重力沈降式の除塵器4には、循環ガス2が水平方向に通過する煙道4Aが形成されている。循環ガス2に含まれる粉塵2aは、煙道4Aを通過する過程で、粒径の大きく重いものから順(優先的)に落下し除塵される。重力沈降式の除塵器4は、煙道4Aに邪魔板を備えず、上流側よりも下流側の方が流路面積が大きくなっている。このため、重力沈降式の除塵器4では、邪魔板反転式の除塵器に比べて、ボイラ5の入口部5a(除塵器4の出口部4b)における循環ガス2の流速が遅く、均一となり、また、ボイラ5の入口部5aにおける粉コークス濃度が均一となる、という特徴がある。
【0023】
ボイラ5は、除塵器4を通過した循環ガス2から赤熱コークスの顕熱を熱回収する設備である。ボイラ5においては、循環ガス2との熱交換により蒸気が生成される。ボイラ5の入口部5aには、蒸気を生成するボイラチューブの一部であるスクリーン管5Aが配置されている。スクリーン管5Aは、循環ガス2が通過可能となるように、幅方向(
図1において紙面奥行方向)に隙間をあけて並列に配列されている。このスクリーン管5Aには、不燃性の耐火プロテクターを巻いてもよい。
【0024】
循環ブロワ6は、ボイラ5を通過した循環ガス2を冷却塔3の下部から吹き込む設備である。循環ブロワ6は、ボイラ5と循環ダクト7を介して接続されている。循環ダクト7は、ボイラ5の出口部5bに一端が接続され、循環ブロワ6の入口部6aに他端が接続される。また、循環ブロワ6は、冷却塔3と循環ダクト8を介して接続されている。循環ダクト8は、循環ブロワ6の出口部6bに一端が接続され、冷却塔3の入口部3aに他端が接続される。
【0025】
冷却塔3の下部には、冷却塔3の内部に循環ガス2を吹き込むブラストヘッド9Aと、ブラストヘッド9Aに接続される分配器9Bと、循環ブロワ6から送り出された循環ガス2を、分配器9Bを介してブラストヘッド9Aに供給する環状ガス供給ダクト9Cと、が設けられている。循環ブロワ6から送り出された循環ガス2は、環状ガス供給ダクト9C、分配器9Bを介してブラストヘッド9Aから冷却塔3の下部に吹き込まれ、循環ガス2は、冷却塔3、除塵器4、ボイラ5の順に循環する。なお、ブラストヘッド9Aの円筒部下端は開口となっており、当該開口からも循環ガス2が吹き込まれる。
【0026】
図2は、本発明の実施形態におけるブラストヘッド9A、分配器9B、環状ガス供給ダクト9Cを示す概略平面図である。
ブラストヘッド9Aは、上下二段のスカート9A1,9A2を備えている。スカート9A1,9A2は、循環ガス2を案内するものであり、下側のスカート9A2の外径が上側のスカート9A1の外径よりも大きくなっている。このブラストヘッド9Aには、2本以上(本実施形態では4本)の分配器9Bが接続される。
【0027】
分配器9Bは、ブラストヘッド9Aを支持するものであり、環状ガス供給ダクト9Cから周方向に等間隔に4本設けられ、それぞれがブラストヘッド9Aに接続される。分配器9Bには、ガス流量調節弁9B1が設けられており、各分配器9Bを流れる循環ガス2の流量を個別に調整できるようになっている。分配器9Bと環状ガス供給ダクト9Cとの接続部9Dは、ベルマウス状に形成されている。なお、分配器9Bを流通するガス流量は、
図1に示す上部ファンネル9Eに配置した図示しない温度センサで判断しているが、各分配器9Bにガス流量センサを配置して判断してもよい。
【0028】
図3は、本発明の実施形態における分配器9Bと環状ガス供給ダクト9Cとの接続部9Dの形状による作用を説明するための図である。
図3(a)では、接続部9Dがベルマウス状ではなく、直角に形成されている。仮に、循環ガス2が速度vで流れ、分配器9Bが直径dの直管であるとした場合、接続部9Dの抵抗形状係数ζは、0.4〜0.45となる。
【0029】
図3(b)では、接続部9Dが曲率半径rを有し、r/d=1/7とされている。この場合、接続部9Dの抵抗形状係数ζは、0.04となる。
図3(c)では、接続部9Dが曲率半径rを有し、r/d=0.6とされている。この場合、接続部9Dの抵抗形状係数ζは、0.01〜0.02となる。
このように、接続部9Dをベルマウス状に形成することにより、環状ガス供給ダクト9Cから分配器9Bへの循環ガス2の流入抵抗を大幅に低減することができる。
【0030】
図2に戻り、スカート9A2には、分配器9Bが配置されている部分に対し、分配器9Bが配置されている部分が拡径した拡径部9A3が設けられている。これにより、分配器9B上に降下するコークスも、分配器9Bのない箇所を降下するコークスも同程度の抵抗が生じる。したがって、分配器9Bの本数を増大しても、分配器9Bのある部分とない部分のコークスの降下速度比を小さくでき、冷却塔3内部のコークス降下速度を均一化することができる。
【0031】
また、コークス乾式消火設備1は、
図1に示すように、循環ガス2に含まれる可燃成分を燃焼させる燃焼用空気供給部10を有する。燃焼用空気供給部10は、環状煙道11の底部から燃焼用空気を供給する。また、コークス乾式消火設備1は、循環ブロワ6の上流側の循環ダクト7から分岐し、冷却塔3の出口部3bに接続されるバイパスダクト30を有する。バイパスダクト30は、環状煙道11の天井部11aに接続される。
【0032】
図4は、
図1の矢視A−A断面図である。
図5は、
図4の矢視B−B断面図である。
冷却塔3の出口部3bは、冷却塔3の周壁部13の周方向に沿って設けられた環状煙道11を有する。環状煙道11の出口部11bは、循環ガス2をボイラ5に導く除塵器4の入口部4aと接続される。環状煙道11の底部は、
図4に示すように、周方向に略等間隔に設けられた複数の仕切壁12によって形成されており、隣り合う仕切壁12の間には小煙道3Cが形成されている。この小煙道3Cは、冷却塔3の内部に連通している。
【0033】
燃焼用空気供給部10は、環状煙道11の底部に開口し、且つ、環状煙道11の周方向に沿って並ぶ複数の空気供給口14を有する。空気供給口14は、複数の仕切壁12のそれぞれに設けられている。
図5に示すように、仕切壁12の上部には、ノズル12aが設けられている。ノズル12aは、棒状の耐火材に空気通路を形成したものであり、冷却塔3の周壁部13と交差する方向に延び、上方に向かって開口する空気供給口14が形成されている。
【0034】
空気供給口14は、分岐管15に連通している。分岐管15は、周壁部13を貫通して冷却塔3の外部に引き出され、冷却塔3の周壁部13を取り囲む主配管16に連通している。この主配管16は、冷却塔3の外部において支持梁16aに支持されている。また、主配管16上には、点検用の足場16bが設けられている。この主配管16は、空気供給源であるファン19(
図1参照)に接続されている。
【0035】
燃焼用空気供給部10は、複数の空気供給口14のそれぞれから供給される一次燃焼用空気の流量を個別に調節する複数の流量調節弁17を有する。流量調節弁17は、分岐管15のそれぞれに設けられている。本実施形態の流量調節弁17は、手動弁から構成されており、
図5に示すように、足場16bからアクセス可能な位置に設けられている。なお、分岐管15が接続された主配管16の流量は、
図1に示す流量制御系18により制御する。流量制御系18は、制御バルブを絞り、主配管16に供給する流量を調節する。
【0036】
コークス乾式消火設備1においては、赤熱コークスが、冷却塔3において不活性ガスを主体とした循環ガス2により、約1000℃から約200℃以下に冷却される。赤熱コークスは、水素(H
2)を主体とするボラタイルマターを有しており、冷却塔3内で、その一部を放出する。水素は可燃性ガスであるため、燃焼用空気供給部10は空気を供給し、その水素を燃焼させ、下記の反応式(1)に示す反応によって水蒸気(H
2O)に変えることにより、水素濃度を下げる。
H
2 + 1/2・O
2 → H
2O …(1)
【0037】
この燃焼により発生した水蒸気が例えば冷却塔3の高温のコークス層を通過する際、下記の反応式(2)に示す水性ガス反応が生じる。
C + H
2O → H
2 + CO …(2)
この水性ガス反応で発生した一酸化炭素は水素と同様に可燃性ガスであるため、空気の供給により、下記の反応式(3)に示す燃焼反応が生じる。
CO + 1/2・O
2 → CO
2 …(3)
そして、この燃焼により発生した二酸化炭素が例えば冷却塔3の高温のコークス層を通過する際、下記の反応式(4)に示すソリューション反応が生じる。
C + CO
2 → 2CO …(4)
【0038】
燃焼用空気供給部10では、環状煙道11の底部に設けられた空気供給口14から燃焼用空気が供給される。供給された燃焼用空気は、小煙道3Cを通過した直後の高温の循環ガス2と混合し、循環ガス2に含まれる可燃性ガス(水素、一酸化炭素)を燃焼させる。また、燃焼により発生した高温ガスは、煙突効果により環状煙道11の底部から天井に向かって上昇し、その過程で循環ガス2と均一に混ざり合う。
【0039】
図1に示すように、バイパスダクト30は、循環ダクト7から分岐し、冷却塔3の出口部3bに接続される。本実施形態のバイパスダクト30は、
図4に示すように環状煙道11において、出口部11bとは反対側(反出口側)に接続される。環状煙道11の反出口側とは、環状煙道11を基準線L1で二分した領域のうち出口部11bが配置されていない領域を意味する。基準線L1は、冷却塔3の半径中心と出口部11bとを結ぶ基準線L2に対し、冷却塔3の半径中心において直交する線である。
【0040】
バイパスダクト30は、下流側で分岐し、環状煙道11に対して複数箇所で接続される。環状煙道11の天井部11aには、バイパスダクト30が接続される循環ガス供給口30aが複数形成されている。循環ガス供給口30aは、環状煙道11に沿って等間隔で配置される。本実施形態の循環ガス供給口30aは、
図4に示すように、周方向で隣り合う空気供給口14の間、すなわち小煙道3Cに対向するように配置される。また、循環ガス供給口30aは、基準線L2を挟んで2つずつ、計4つ配置される。
【0041】
バイパスダクト30には、
図1に示すように、開閉弁31と、バイパスファン32(第2の送風機)と、電動弁33と、逆止弁34と、流量制御系35とが設けられている。開閉弁31は、例えば、手動弁であり、バイパスダクト30の上流側に配置される。バイパスファン32は、バイパスダクト30において開閉弁31よりも下流側に配置される。バイパスファン32は、循環ブロワ6よりも低い圧力で循環ガス2の一部(バイパスガス)を送り出すものであり、循環ブロワ6よりも小容量のファンからなる。
【0042】
電動弁33は、バイパスダクト30においてバイパスファン32よりも下流側に配置される。また、逆止弁34は、バイパスダクト30において電動弁33よりも下流側に配置される。流量制御系35は、電動弁33と逆止弁34との間の循環ガス2の流量に基づいて、バイパスファン32の駆動を制御する。バイパスファン32は、例えば、VVVF制御される。
【0043】
図6は、本発明の実施形態における逆止弁34の構成を示す側断面図である。
図7は、本発明の実施形態における逆止弁34の構成を示す平断面図である。
逆止弁34は、
図1及び
図6に示すように、バイパスダクト30の鉛直部30bに設けられている。本実施形態の逆止弁34は、バイパスダクト30の上流側配管30Aと、バイパスダクト30の下流側配管30Bとを接続する接続継手30Cに設けられている。
【0044】
逆止弁34は、
図7に示すように、上流側配管30Aを閉塞可能な大きさの円盤状の弁体34aと、弁体34aを水平方向に延びる軸回りに回転自在に支持する回転軸34bと、
図6に示すように、弁体34aの開度を規制する開度規制ロッド34cと、を有する。開度規制ロッド34cは、接続継手30Cに設けられた取付部30B1に対してネジ固定される。開度規制ロッド34cの長さは、予め決められた長さとなっており、弁体34aの開度を変更したい場合には、異なる長さの開度規制ロッド34cと交換可能とされている。
【0045】
また、コークス乾式消火設備1には、
図1に示すように、ボイラ5の入口部5aの上流側に温度センサ20が設けられ、ボイラ5の出口部5bの下流側(循環ダクト7)に流量計21が設けられている。また、循環ブロワ6の出口部6bの下流側(循環ダクト8)には、余剰ガスを系外に排出する排出ダクト22と、排出ダクト22を開閉する開閉弁23とが設けられている。また、コークス乾式消火設備1には、系内に不活性ガス(循環ガス2)を補給する不図示のタンクを有する。
【0046】
続いて、
図8を参照しつつ、上記構成のコークス乾式消火設備1の動作(制御)と作用について説明する。
図8は、本発明の実施形態におけるコークス乾式消火設備1の動作を示すフローチャートである。
【0047】
コークス乾式消火設備1においては、冷却塔3の下部から切り出されるコークスの切出速度Aを設定する(ステップS1)。次に、冷却塔3の下部から切り出されるコークスの温度を図示しない温度センサにより監視する(ステップS2)。コークスの温度が200℃以上であったら、循環ガス2の冷却風量原単位を1450Nm
3/T−Cを上限として増やす(ステップ3)。すなわち、循環ブロワ6の負荷を上げる。一方、コークスの温度が200℃以下であったら、ステップS4に移行する。
【0048】
ステップS4では、冷却塔3の冷却室3Bの出口(小煙道3C若しくは環状煙道11)の温度を図示しない温度センサにより監視する。冷却塔3の冷却室3Bの出口温度が600℃未満であったら自動切替によりN
2希釈(図示しないタンクから不活性ガスを補給)する(ステップS5)。一方、冷却塔3の冷却室3Bの出口温度が600℃以上であったら手動切替によりN
2希釈しつつ、また、手動切替によりステップS6に移行する。
【0049】
ステップS6では、燃焼用空気供給部10における空気供給量(希釈AIR流量D)を設定する。次に、バイパスダクト30における循環ガス2の流量(バイパスガス流量F)を設定する(ステップS7)。次に、ボイラ5の入口部5aの温度を温度センサ20により監視する(ステップS8)。ボイラ5の入口部5aの温度が980℃(ボイラ5の上限温度)を超える場合、流量制御系35によって、バイパスダクト30における循環ガス2の流量(バイパスガス流量原単位F/A)を監視する(ステップS9)。
【0050】
バイパスダクト30における循環ガス2の流量が250Nm
3/T−C以下である場合、ステップS7に戻り、バイパスダクト30における循環ガス2の流量を増やす。すなわち、バイパスファン32の負荷を上げる。一方、バイパスダクト30における循環ガス2の流量が250Nm
3/T−Cを超える場合、ステップS6に戻り、燃焼用空気供給部10における空気供給量を減らす。ステップS8において、ボイラ5の入口部5aの温度が980℃以下である場合、ステップS10に移行する。
【0051】
ステップS10では、ボイラ5の出口部5b若しくは冷却塔3の入口部3aにおける循環ガス2に含まれる残存O
2濃度を図示しないガス分析装置により監視する。循環ガス2に含まれる残存O
2濃度が0.3vol.%を超える場合、ステップS6に戻り、燃焼用空気供給部10における空気供給量を減らす。一方、循環ガス2に含まれる残存O
2濃度が0.3vol.%以下である場合、ステップS11に移行する。
【0052】
ステップS11では、ボイラ5における蒸発量を監視する。ボイラ5における蒸発量が、ボイラ5の性能の上限を超える場合、ステップS6に戻り、燃焼用空気供給部10における空気供給量を減らす。一方、ボイラ5における蒸発量が、ボイラ5の性能の上限以下である場合、ステップS2に戻り、上述したプロセスを自動監視することとなる。
【0053】
本実施形態のコークス乾式消火設備1は、
図1に示すように、ボイラ5と循環ブロワ6との間を接続する循環ダクト7から分岐し、冷却塔3の出口部3bに接続されるバイパスダクト30を有する。この構成によれば、循環ガス2を冷却塔3に送り出す循環ブロワ6の上流側から、冷却塔3の出口部3bに循環ガス2の一部をバイパスすることができる。バイパスされる循環ガス2は、ボイラ5で熱回収されて低温となっているため、これにより、ボイラ5の入口部5aにおける循環ガス2の温度を調整し、ボイラ5を保護することができる(ステップS6,S9参照)。
【0054】
また、循環ブロワ6の上流側からバイパスすると、循環ブロワ6に供給される循環ガス2が減る。そうすると、循環ブロワ6の仕事量も減るため、循環ブロワ6の消費電力量を低減することができる。なお、バイパスダクト30が接続される冷却塔3の出口部3bは、循環ブロワ6の上流側よりも高圧側であるため、バイパスダクト30にバイパスファン32を設ける必要があるが、バイパスダクト30を通る循環ガス2は冷却塔3(コークス層)を通過しないため、バイパスファン32による昇圧幅(例えばΔP=220mmH
2O)は循環ブロワ6による昇圧幅(例えばΔP=1160mmH
2O)よりも小さく設定できる。このため、バイパスファン32を追加したとしても、循環ブロワ6とのトータルの消費電力量は、従来の循環ブロワ6の下流側からバイパスさせる構成と比べて小さくすることができる。概略試算すると従来よりも消費電力量を約14%程度低減できる。
【0055】
また、本実施形態においては、冷却塔3の出口部3bは、冷却塔3の周壁部13の周方向に沿って設けられる環状煙道11を有し、環状煙道11は、
図4に示すように、除塵器4の入口部4aが接続される出口部11bを有し、バイパスダクト30は、環状煙道11において、出口部11bとは反対側に接続される。この構成によれば、循環ブロワ6の上流側からバイパスした低温の循環ガス2を環状煙道11の反出口側に供給して、ボイラ5の入口部5aにおける循環ガス2の温度ムラを低減することができる。すなわち、環状煙道11の反出口側に供給された低温の循環ガス2は、環状煙道11の出口部11bに向かって環状煙道11を約半周流れるため、その過程で冷却室3Bからの環状煙道11に噴き上がる高温の循環ガス2と略均一に混ぜ合わせることができる。循環ガス2が略均一に混ざり合うと温度分布が小さくなり、その温度分布の最高温度がボイラ5の上限温度を超えないようにすることが容易になり、ボイラ5の入熱量を多くすることができる。
【0056】
さらに、本実施形態においては、
図1に示すように、環状煙道11の底部から燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部10を有し、バイパスダクト30は、環状煙道11の天井部11aに接続される。この構成によれば、環状煙道11の底部から燃焼用空気を供給して、環状煙道11の底部で可燃性ガスを燃焼させると共に、環状煙道11の天井部11aから低温の循環ガス2を供給することで、ボイラ5の入口部5aにおける循環ガス2の温度ムラを低減させることができる。すなわち、燃焼により発生した高温ガスは、煙突効果により循環ガス2経路において底部から天井部11aに向かって上昇するのに対し、バイパスダクト30から供給される低温ガスは、その比重よって天井部11aから底部に向かって降下するため、循環ガス2を略均一に混ぜ合わせることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、
図1に示すように、バイパスダクト30に設けられ、冷却塔3の出口部3b及び除塵器4の入口部4aの少なくともいずれか一方からの循環ガス2の逆流を防止する逆止弁34を有する。この構成によれば、冷却塔3の出口部3bは循環ブロワ6の上流側よりも高圧側であるため、バイパスダクト30に逆止弁34を設け、冷却塔3の出口部3b及び除塵器4の入口部4aから循環ブロワ6の上流側への循環ガス2の逆流を防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態においては、バイパスダクト30は、
図1及び
図6に示すように、鉛直方向に延びる鉛直部30bを有し、逆止弁34は、鉛直部30bに設けられている。この構成によれば、逆止弁34の上部は比重が小さい高温ガス、逆止弁34の下部は比重が大きい低温ガスであるため、例えばバイパスファン32を緊急停止させたときでもガスリークを防ぐことができ、設備の安全を確保できる。
【0059】
また、本実施形態においては、
図2に示すように、冷却塔3の内部に循環ガス2を吹き込むブラストヘッド9Aと、ブラストヘッド9Aに接続される分配器9Bと、循環ブロワ6から送り出された循環ガス2を、分配器9Bを介してブラストヘッド9Aに供給する環状ガス供給ダクト9Cと、を有し、ブラストヘッド9Aには、分配器9Bが4本接続される。この構成によれば、ブラストヘッド9Aに接続される分配器9Bが4本となり、通常の2本よりも増設したため、分配器9B内部の流路面積が拡大され、通気抵抗が小さくなる。これにより、循環ブロワ6の昇圧量を小さくし、消費電力量を小さくすることができる。
さらに、本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、分配器9Bと環状ガス供給ダクト9Cとの接続部9Dは、ベルマウス状に形成されている。この構成によれば、環状ガス供給ダクト9Cから分配器9Bへの流入抵抗を低減することができ、循環ブロワ6の消費電力量を小さくすることができる。
【0060】
このように、上述の本実施形態によれば、赤熱コークスを循環ガス2で冷却する冷却塔3と、冷却塔3を通過した循環ガス2に含まれる粉塵2aの少なくとも一部を除塵する除塵器4と、除塵器4を通過した循環ガス2から熱回収するボイラ5と、ボイラ5を通過した循環ガス2を冷却塔3に送り出す循環ブロワ6と、ボイラ5と循環ブロワ6との間を接続する循環ダクト7と、循環ダクト7から分岐し、冷却塔3の出口部3b及び除塵器4の入口部4aの少なくともいずれか一方に接続されるバイパスダクト30と、バイパスダクト30に設けられ、循環ブロワ6よりも低い圧力で循環ガス2の一部を送り出すバイパスファン32と、を有する、コークス乾式消火設備1を採用することによって、ボイラ5を保護しつつ回収電力量を向上させることが可能となる。
【0061】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、以下のような構成を採用し得る。
図9は、本発明の別実施形態における冷却塔3の下部の構成を示す図である。
図9に示す別実施形態において、ブラストヘッド9Aには、分配器9B´が鉛直方向に対して斜めに延びて接続される。このように、ブラストヘッド9Aに接続される分配器9B´が鉛直方向に対して斜めに延びるため、スカート9A2と分配器9B´との隙間s1を確保し、また、分配器9B´の天端と上部ファンネル9Eの下端との干渉を回避しつつ、平面視で幅寸法を拡大させることなく、分配器9B内部の流路面積を拡大することができる。このため、冷却塔3におけるコークスの降下速度の均一性を崩すことなく、通気抵抗を小さくし、循環ブロワ6の消費電力量を小さくすることが可能となる。
【0063】
また、例えば、上記実施形態では、バイパスダクト30を冷却塔3の出口部3b(環状煙道11)に接続した形態について説明したが、バイパスダクト30は除塵器4の入口部4aに接続してもよい。バイパスダクト30を除塵器4の入口部4aに接続しても上記実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、除塵器4に重力沈降式(循環ガス2の流速が遅い形態)を採用する場合には、循環ガス2を均一に混合できる位置、すなわち、環状煙道11の反出口側にバイパスダクト30を接続することが好ましい。