(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物揺れを検知し、前記複数台のエレベータのうち少なくとも1台のエレベータの前記長尺物の振れ量が上限レベルに達する虞があると予測される場合に、乗りかごが前記共振階を通過せずに前記退避階に移動可能なエレベータがなければ、乗りかごが無方向待機しているエレベータのうち、乗りかごが前記退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを前記退避号機に選定し、
乗りかごが無方向待機しているエレベータがなければ、乗りかごが移動中のエレベータのうち、最初に乗りかごが目的階に到着したエレベータを前記退避号機に選定する
請求項1に記載の群管理エレベータの運転制御方法。
建物揺れを検知し、前記複数台のエレベータのうち少なくとも1台のエレベータの前記長尺物の振れ量が上限レベルに達する虞があると予測される場合に、乗りかごが前記共振階を通過せずに前記退避階に移動可能なエレベータがなければ、乗りかごが無方向待機しているエレベータのうち、乗りかごが前記退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを前記退避号機に選定し、
乗りかごが無方向待機しているエレベータがなければ、乗りかごが移動中のエレベータのうち、乗りかごが次に着床する階から前記退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを前記退避号機に選定する
請求項1に記載の群管理エレベータの運転制御方法。
前記退避号機に選定したエレベータの乗りかごが前記退避階に到着するまでの間に該エレベータの前記長尺物の振れ量が前記上限レベルに達すると判断した場合、該エレベータの乗りかごを停止させ、他のエレベータを新たに前記退避号機に選定する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の群管理エレベータの運転制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した群管理エレベータの運転制御方法および群管理制御装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、群管理エレベータを構成する各エレベータの概略構成図である。群管理エレベータを構成する各エレベータは、
図1に示すように、複数階を有する建物に設けられた昇降路1内で乗りかご2を昇降させることにより、ある階の乗場3から乗りかご2内に乗車した乗客を別の階の乗場3へと搬送する搬送手段である。乗りかご2は、メインロープ4を介してつり合いおもり5と連結されている。そして、巻上機6の駆動によりメインロープ4が送り動作されることにより、乗りかご2がつり合いおもり5とバランスを取りながら昇降路1内を昇降する。
【0010】
昇降路1の下部には、コンペンシーブ7や図示しない緩衝器などが設けられている。コンペンシーブ7には、両端が乗りかご2の下部とつり合いおもり5の下部に接続されたコンペンロープ8が巻き掛けられている。コンペンロープ8は、乗りかご2が昇降路1内を昇降することに伴って生じるメインロープ4の重量バランスの変化を相殺する役割を持つ。
【0011】
上述の巻上機6は、昇降路1の上部の機械室9に設けられている。この機械室9には、巻上機6のほか、群管理エレベータを構成する各エレベータの単体制御装置10と、群管理制御装置20と、建物揺れを感知する加速度センサなどの建物揺れ感知器11とが設けられている。なお、巻上機6、単体制御装置10、群管理制御装置20、建物揺れ感知器11などを昇降路1内に配置して、機械室9を設けない構成としてもよい。
【0012】
単体制御装置10は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを含み、かご呼びの登録、かご呼びや乗場呼びに応じた乗りかご2の移動制御(巻上機6の駆動制御)、乗りかご2のドアの開閉制御など、エレベータ単体の運転を制御する。単体制御装置10と乗りかご2はテールコード12により接続され、このテールコード12を介して乗りかご2への電力供給や各種信号のやり取りが行われる。
【0013】
群管理制御装置20は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを含み、複数台のエレベータの運転状態を監視しながらエレベータに対する乗場呼びの割当て(群管理制御)を行う。群管理制御装置20は、群管理エレベータを構成する各エレベータの単体制御装置10と接続される。また、群管理制御装置20には、建物揺れ感知器11も接続される。
【0014】
図2は、本実施形態に係る群管理エレベータシステムの概略構成図である。群管理エレベータが設置された建物の各階の乗場3には、
図2に示すように、群管理エレベータを構成する各エレベータに対応して、乗りかご2のドアと連動して開閉する乗場ドア13と、各種情報を表示する乗場表示器14とが設けられている。また、各階の乗場3には、乗客が乗場呼びを行うために操作する乗場操作盤15が設けられている。乗場操作盤15と乗場表示器14は、群管理制御装置20に接続されている。なお、
図2に示す例では、群管理エレベータを構成するエレベータの台数を3台としているが、エレベータの台数は任意である。
【0015】
長周期地震や強風などの影響により建物揺れが発生すると、乗りかご2に連結された長尺物(メインロープ4、コンペンロープ8、テールコード12など)が建物揺れに共振する場合がある。長尺物の共振の度合いは、乗りかご2が位置する階によって異なる。建物揺れに伴う長尺物の振れ量は、建物揺れの大きさと、その大きさの建物揺れが継続している継続時間と、乗りかご2が位置する階とから推定できる。そこで、本実施形態では、予め、群管理エレベータが設置された建物の各階ごとに、その階に乗りかご2がいる場合の長尺物の振れ量を、建物揺れの大きさと継続時間の組合せごとに推定し、その推定結果を振れ量データテーブル31として、群管理制御装置20に保持させている。この振れ量データテーブル31は、特許文献1に開示されるリアルタイムシミュレーションで使用されるデータテーブルと同様のものである。
【0016】
また、本実施形態では、群管理エレベータが設置された建物の各階を、乗りかご2に連結された長尺物が建物揺れに共振しやすい共振階と、長尺物が建物揺れに共振しにくい非共振階とに分類し、非共振階の中で長尺物が建物揺れに最も共振しにくい階を退避階に設定しておく。そして、建物の各階が共振階か非共振階か退避階かを示す情報を建物データ32として、群管理制御装置20に保持させている。
【0017】
本実施形態に係る群管理エレベータシステムでは、建物揺れ感知器11によって建物揺れが検知され、上述の振れ量データテーブル31に基づいて少なくとも1台のエレベータの長尺物の振れ量が上限レベル(例えば、昇降路1内の機器や昇降路1の壁面などに接触するレベル)に達する虞があると予測される場合に、群管理エレベータの運転モードが平常運転から管制運転に移行する。そして、建物揺れが収まると、群管理エレベータの運転モードが管制運転から平常運転に復帰する。
【0018】
管制運転を行っている間、長尺物の振れ量が上限レベルに達したエレベータは運転を停止する。この場合、建物揺れが収束して平常運転に復帰しても、そのエレベータは保守員による点検や部品修理などの復旧作業が必要になるため、すぐに稼働できない。このため、管制運転を行っている間に群管理エレベータを構成するすべてのエレベータにおいて長尺物の振れ量が上限レベルに達してしまうと、建物揺れが収束したとしてもすぐにサービスを再開させることができず、長時間のサービス停止を余儀なくされる。
【0019】
そこで、本実施形態に係る群管理エレベータシステムでは、群管理制御装置20が、上述の群管理制御を行う機能に加えて、少なくとも1台のエレベータの乗りかご2を退避階で待機させるように、各エレベータの運転を制御する機能を持つ。すなわち、本実施形態の群管理制御装置20は、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータのうちの少なくとも1台の乗りかご2を退避階に移動させ、建物揺れが収束するまで、そのエレベータの乗りかご2を退避階で待機させる。これにより、退避階で待機するエレベータ(以下、これを「退避号機」と呼ぶ)の長尺物の振れが増幅することを抑制し、長尺物の振れ量が上限レベルに達することを抑制できる。その結果、建物揺れが収束して平常運転に復帰した後に、少なくとも退避号機はすぐに稼働させることができ、エレベータのサービスが長時間停止してしまう不都合を有効に抑制することができる。
【0020】
本実施形態の群管理制御装置20は、
図2に示すように、運転状態監視部21と、乗場呼び割当て部22と、長尺物振れ推定部23と、退避号機選定部24とを備える。
【0021】
運転状態監視部21は、各エレベータの単体制御装置10からエレベータの運転状態(乗りかご2の現在位置や進行方向、移動中か停止中か、応答が完了していない乗場呼びやかご呼びの有無など)を示す情報を収集し、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータの運転状態を統括的に監視する。そして運転状態監視部21は、乗場呼び割当て部22、長尺物振れ推定部23および退避号機選定部24に対し、これらの各部で必要とされる情報を渡す。
【0022】
乗場呼び割当て部22は、乗場3の乗客による操作に応じて乗場操作盤15から送られる乗場呼び信号と、運転状態監視部21から送られる各エレベータの運転状態とに基づいて、複数台のエレベータのうち乗場呼びの応答に最も適したエレベータを決定し、このエレベータに乗場呼びを割当てる。この処理は群管理制御と呼ばれる。乗場呼び割当て部22は、群管理制御によって乗場呼びを割当てたエレベータの単体制御装置10に対し、乗場呼び応答指令を送る。乗場呼び応答指令を受け取った単体制御装置10は、乗場呼びのあった階(乗場操作盤15が操作された階)に乗りかご2を移動させることにより、乗場呼びに応答する。
【0023】
ここで、本実施形態においては、後述の退避号機選定部24によって退避号機が選定された場合、乗場呼び割当て部22は、この退避号機を群外として乗場呼びを割当てるエレベータの候補から外し、退避号機以外のエレベータを対象として群管理制御を行う。また、乗場呼び割当て部22は、平常運転時に退避号機以外のすべてのエレベータに応答が完了していない呼び(乗場呼びやかご呼び)がある状況で新たな乗場呼びが発生した場合は、退避号機を群中に戻してこのエレベータに新たな乗場呼びを割当てる。
【0024】
長尺物振れ推定部23は、建物揺れ感知器11により建物揺れが検知されたときに、建物揺れの大きさと継続時間、運転状態監視部21からの情報により特定される各エレベータの乗りかご2の現在位置や進行方向の情報などに基づいて、振れ量データテーブル31を用いたリアルタイムシミュレーションにより、群管理エレベータを構成する各エレベータの長尺物の振れ量を推定する。そして、少なくとも1台のエレベータの長尺物の振れ量が上限レベルに達する虞があると予測される場合、長尺物振れ推定部23は、長尺物振れ信号を出力する。少なくとも1台のエレベータの長尺物の振れ量が上限レベルに達する虞があると予測される場合とは、例えば、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータのうちの少なくとも1台が、現在登録されている呼びに応答して乗りかご2を移動させたときに、建物揺れ感知器11により検知された現在の建物揺れの大きさで長尺物の振れ量が上限レベルに達すると予測される階を乗りかご2が通過することになる場合である。なお、長尺物の振れ量のリアルタイムシミュレーションは、例えば特許文献1に記載の技術を用いて実現することができる。
【0025】
本実施形態に係る群管理エレベータシステムでは、長尺物振れ推定部23から長尺物振れ信号が出力されると、群管理エレベータの運転モードが平常運転から管制運転に移行する。そして、建物揺れが収束すると(つまり、建物揺れ感知器11が建物揺れを検知しなくなる、もしくは検知する建物揺れの大きさが基準値を下回ると)、群管理エレベータの運転モードが管制運転から平常運転に復帰する。
【0026】
また、長尺物振れ推定部23は、上述のリアルタイムシミュレーションにより推定した長尺物の振れ量が上限レベルに達したエレベータがある場合、つまり、いずれかのエレベータで長尺物の振れ量が上限レベルに達したと判断した場合、そのエレベータに対する運転停止信号を出力する。この長尺物振れ推定部23が出力する運転停止信号は、退避号機選定部24から対象のエレベータの単体制御装置10に伝えられ、そのエレベータは運転を停止する。この場合、運転を停止したエレベータは、建物揺れが収束した後に保守員による点検や部品修理などの復旧作業を行う必要があるため、群管理エレベータの運転モードが管制運転から平常運転に復帰してもすぐに稼働させることができない。
【0027】
退避号機選定部24は、平常運転時においては、所定時間継続して乗場呼びが割当てられていないエレベータがあれば、そのエレベータを退避号機に選定する。また、平常運転から管制運転に移行したときに退避号機がない場合、つまり、平常運転時に退避号機を群中に戻した状態で長尺物振れ推定部23から長尺物振れ信号が出力され、平常運転から管制運転に移行した場合、退避号機選定部24は、例えば、以下の手順で退避号機を選定する。
【0028】
すなわち、退避号機選定部24は、平常運転から管制運転に移行したときに退避号機がない場合、運転状態監視部21からの情報により特定される各エレベータの乗りかご2の現在位置や進行方向の情報と、上述の建物データ32とに基づいて、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあるかどうかを判断する。そして、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあれば、退避号機選定部24はさらに、そのようなエレベータの中に無方向待機しているエレベータがあるかどうかを判断する。そして、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータであって無方向待機しているエレベータがあれば、退避号機選定部24は、退避階に最も近い階で乗りかご2が無方向待機しているエレベータを退避号機に選定する。また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータの中に無方向待機しているエレベータがなければ、退避号機選定部24は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータを退避号機に選定する。なお、無方向待機とは、呼びの応答が完了して乗りかご2が乗客を降ろした階で待機している状態をいう。
【0029】
また、退避号機選定部24は、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがないと判断した場合は、無方向待機しているエレベータがあるかどうかを判断し、無方向待機しているエレベータがあれば、無方向待機しているエレベータのうち、乗りかご2が退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを退避号機に選定する。また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがなく、無方向待機しているエレベータもない場合は、退避号機選定部24は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータを退避号機に選定する。
【0030】
退避号機選定部24は、以上のようにして退避号機に選定したエレベータの単体制御装置10に対し退避階への移動指令を送ることにより、この退避号機の乗りかご2を退避階に移動させる。このとき、退避号機選定部24は、退避号機に選定したエレベータに対応する乗場表示器14の表示を制御し、この乗場表示器14に例えば「退避階で待機中」といった情報を表示させることが望ましい。また、退避号機選定部24は、エレベータ監視室に退避号機の号機番号などの識別情報を通知し、エレベータ監視室で各エレベータの運転状態を監視するためのエレベータ監視盤の運転表示灯のうち、退避号機に選定したエレベータに対応する運転表示灯を消灯させるようにしてもよい。乗りかご2が退避階に移動した退避号機は、上述のように群外とされて乗場呼び割当て部22による乗場呼び割当ての候補から除外される。そして、建物揺れが収束するまで、乗りかご2を退避階で待機させる。
【0031】
次に、本実施形態の群管理制御装置20により実行される群管理エレベータの運転制御方法の一例について、
図3および
図4を参照して説明する。
図3は、平常運転時における群管理制御装置20の処理手順の一例を示すフローチャートであり、
図4は、管制運転時における群管理制御装置20の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0032】
まず、
図3のフローチャートに沿って、平常運転時における群管理制御装置20の処理手順を説明する。群管理制御装置20は、平常運転時においては、
図3のステップS101〜ステップS106の処理を繰り返し行い、1台のエレベータを退避号機に選定して、退避号機の乗りかご2をできるだけ退避階に待機させる。
【0033】
すなわち、群管理制御装置20は、まず、乗場呼びの割当てがない状態が所定時間継続したエレベータがあるかどうかを確認し(ステップS101)、乗場呼びの割当てがない状態が所定時間継続したエレベータがあれば(ステップS101:No)、そのエレベータを退避号機に選定し(ステップS102)、そのエレベータの単体制御装置10に対して退避階への移動指令を送ることにより、選定した退避号機の乗りかご2を退避階に移動させる(ステップS103)。なお、乗場呼びの割当てがない状態が所定時間継続したエレベータがない場合は(ステップS101:No)、ステップS101の判定が繰り返される。
【0034】
その後、群管理制御装置20は、ステップS102で選定した退避号機を群外として群管理制御を行う(ステップS104)。ステップS104の群管理制御を行っている間、群管理制御装置20は、退避号機以外のすべてのエレベータの呼びの状況と乗場呼びの発生を監視し、退避号機以外のすべてのエレベータに応答が完了していない呼びがある状況で新たな乗場呼びが発生したか否かを判定する(ステップS105)。そして、退避号機以外のすべてのエレベータに応答が完了していない呼びがある状況で新たな乗場呼びが発生した場合(ステップS105:Yes)、群管理制御装置20は、退避号機に新たな乗場呼びを割当てる(ステップS106)。この場合、退避号機が乗場呼びに応答するために退避階から移動するため、ステップS101に戻って以降の処理が繰り返される。なお、ステップS101およびステップS102で新たに退避号機を選定する代わりに、ステップS106で割当てられた乗場呼びとその後のかご呼びの応答が完了した退避号機の乗りかご2を退避階に戻すように制御してもよい。
【0035】
次に、
図4のフローチャートに沿って、管制運転時における群管理制御装置20の処理手順を説明する。建物揺れ感知器11により建物揺れが検知され、長尺物振れ推定部23から長尺物振れ信号が出力されて平常運転から管制運転に移行すると、群管理制御装置20は、
図4のステップS201〜ステップS212の処理を行い、建物揺れが収束して平常運転に復帰したときに、少なくとも1台のエレベータはすぐに稼働できるようにする。
【0036】
群管理エレベータの運転モードが平常運転から管制運転に移行すると、群管理制御装置20は、まず、退避号機の乗りかご2が退避階で待機しているか否かを判定する(ステップS201)。ここで、退避号機の乗りかご2が退避階で待機している場合は(ステップS201:Yes)、ステップS211に進む。一方、退避号機の乗りかご2が退避階で待機していない場合は(ステップS201:No)、群管理制御装置20は、ステップS202〜ステップS209の手順に従って退避号機を選定する。
【0037】
すなわち、群管理制御装置20は、まず、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあるかどうかを判定する(ステップS202)。そして、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあれば(ステップS202:Yes)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータの有無を判定し(ステップS203)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがあれば(ステップS203:Yes)、退避階に最も近い階で乗りかご2が無方向待機しているエレベータを退避号機に選定する(ステップS204)。なお、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが1台のみの場合、あるいは、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータであって、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが1台のみの場合は、そのエレベータが退避号機に選定される。
【0038】
一方、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータの中に無方向待機しているエレベータがない場合(ステップS203:No)、つまり、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがすべて呼びに応答中の場合は、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータを退避号機に選定する(ステップS205)。このとき、退避号機に選定したエレベータの乗りかご2内のすべての乗客が目的階で降車するように、乗客の降車を促すアナウンスを行うことが望ましい。
【0039】
また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがない場合は(ステップS202:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が無方向待機しているエレベータの有無を判定し(ステップS206)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがあれば(ステップS206:Yes)、乗りかご2が退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを退避号機に選定する(ステップS207)。なお、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが1台であれば、そのエレベータが退避号機に選定される。
【0040】
一方、無方向待機しているエレベータがない場合(ステップS206:No)、つまり、すべてのエレベータが呼びに応答中の場合は、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータを退避号機に選定する(ステップS208)。このとき、退避号機に選定したエレベータの乗りかご2内のすべての乗客が目的階で降車するように、乗客の降車を促すアナウンスを行うことが望ましい。
【0041】
次に、群管理制御装置20は、ステップS204、ステップS205、ステップS207、ステップS208のいずれかで退避号機に選定したエレベータの単体制御装置10に対して退避階への移動指令を送ることにより、選定した退避号機の乗りかご2を退避階に移動させる(ステップS209)。このとき、退避号機に選定されたエレベータに未応答の呼びが残っている場合は、その未応答の呼びをキャンセルした上で、退避号機に選定されたエレベータの乗りかご2を退避階に移動させる。
【0042】
その後、群管理制御装置20は、退避号機を群外として群管理制御を行い(ステップS210)、建物揺れが継続している間は(ステップS211:No)、退避号機の乗りかご2を退避階で待機させる。そして、建物揺れが収束したら(ステップS211:Yes)、平常運転に復帰する(ステップS212)。退避号機の乗りかご2は、建物揺れが収束して平常運転に復帰するまで退避階で待機しているので、長尺物の振れが抑制される。
【0043】
なお、退避号機の乗りかご2が退避階に到着するまでの間に、長尺物振れ推定部23によって退避号機の長尺物の振れ量が上限レベルに達したと判断され、退避号機に対して運転停止信号が出力されて退避号機の乗りかご2が停止する場合もある。この場合、群管理制御装置20は、ステップS202〜ステップS208の手順を繰り返すことにより、運転が停止したエレベータ以外の他のエレベータを新たな退避号機に選定することが望ましい。
【0044】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る群管理エレベータシステムでは、群管理制御装置20が、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータのうちの1台を退避号機に選定し、選定した退避号機の乗りかご2を退避階に移動させて、建物揺れが収束するまで、その退避号機の乗りかご2を退避階で待機させるようにしている。したがって、本実施形態によれば、少なくとも退避号機に選定されたエレベータについては、長尺物の振れ量が上限レベルに達することを有効に抑制し、建物揺れが収束して平常運転に復帰した後に、少なくとも退避号機はすぐに稼働させることができ、エレベータのサービスが長時間停止してしまう不都合を有効に抑制することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、管制運転時における群管理制御装置20の処理手順が、上述の第1実施形態と異なるものである。すなわち、本実施形態では、建物揺れ感知器11が建物揺れを検知し、長尺物振れ推定部23が長尺物振れ信号を出力して、平常運転から管制運転に移行したときに、退避号機の乗りかご2が退避階で退避していなければ、2台のエレベータを退避号機に選定する。そして、退避号機に選定した2台のエレベータのうち、乗りかご2が先に退避階に到着したエレベータを退避号機として、建物揺れが収束するまで退避階に待機させる。一方、乗りかご2が遅れて退避階に到着したエレベータは、群外とせずに他のエレベータと同様に群管理制御による乗場呼び割当ての候補とする。
【0046】
図5−1および
図5−2は、本実施形態の管制運転時における群管理制御装置220の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、建物揺れ感知器11により建物揺れが検知され、長尺物振れ推定部23から長尺物振れ信号が出力されて平常運転から管制運転に移行すると、群管理制御装置20が、
図5−1および
図5−2のステップS301〜ステップS322の処理を行い、建物揺れが収束して平常運転に復帰したときに、少なくとも1台のエレベータはすぐに稼働できるようにする。
【0047】
群管理エレベータの運転モードが平常運転から管制運転に移行すると、群管理制御装置20は、まず、退避号機の乗りかご2が退避階で待機しているか否かを判定する(ステップS301)。ここで、退避号機の乗りかご2が退避階で待機している場合は(ステップS301:Yes)、ステップS321に進む。一方、退避号機の乗りかご2が退避階で待機していない場合は(ステップS301:No)、群管理制御装置20は、ステップS302〜ステップS317の手順に従って2台の退避号機を選定する。
【0048】
すなわち、群管理制御装置20は、まず、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあるかどうかを判定する(ステップS302)。そして、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがあれば(ステップS302:Yes)、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが複数台かどうかを判定する(ステップS303)。ここで、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが複数台あれば(ステップS303:Yes)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータの有無を判定し(ステップS304)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがあれば(ステップS304:Yes)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが複数台かどうかを判定する(ステップS305)。
【0049】
ここで、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能で、かつ、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが複数台ある場合(ステップS305:Yes)、群管理制御装置20は、これら複数台のエレベータのうち、退避階に最も近い階で乗りかご2が無方向待機しているエレベータと、次に近い階で乗りかご2が無方向待機しているエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS306)。一方、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータは複数台あるが、乗りかご2が無方向待機しているエレベータは1台のみの場合は(ステップS305:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が無方向待機しているエレベータと、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS307)。
【0050】
また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが複数台あるが、いずれのエレベータも乗りかご2が無方向待機しておらず、呼びに応答中の場合は(ステップS304:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータと、次に乗りかご2が目的階に到着したエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS308)。
【0051】
また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが1台のみの場合は(ステップS303:No)、群管理制御装置20は、まず、共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータを1台目の退避号機に選定する(ステップS309)。そして、群管理制御装置20は、残りのエレベータについて、乗りかご2が無方向待機しているエレベータの有無を判定する(ステップS310)。
【0052】
ここで、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがあれば(ステップS310:Yes)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータのうち、乗りかご2が退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータを2台目の退避号機に選定する(ステップS311)。一方、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがなければ(ステップS310:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータを2代目の退避号機に選定する(ステップS312)。
【0053】
また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがない場合は(ステップS302:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が無方向待機しているエレベータの有無を判定し(ステップS313)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがあれば(ステップS313:Yes)、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが複数台かどうかを判定する(ステップS314)。
【0054】
ここで、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが複数台ある場合(ステップS314:Yes)、群管理制御装置20は、これら複数台のエレベータのうち、乗りかご2が退避階に移動するまでに通過する共振階の数が最も少ないエレベータと、次に少ないエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS315)。一方、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが1台のみの場合は(ステップS314:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が無方向待機しているエレベータと、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS316)。
【0055】
また、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがなく、いずれのエレベータも呼びに応答中で、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがない場合は(ステップS313:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、最初に乗りかご2が目的階に到着したエレベータと、次に乗りかご2が目的階に到着したエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS317)。
【0056】
次に、群管理制御装置20は、ステップS306、ステップS307、ステップS308、ステップS309およびステップS311、ステップS309およびステップS312、ステップS315、ステップS316、ステップS317のいずれかで退避号機に選定した2台のエレベータの単体制御装置10に対して退避階への移動指令を送ることにより、退避号機に選定した2台のエレベータの乗りかご2を退避階に移動させる(ステップS318)。そして、退避号機に選定した2台のエレベータのうち、先に乗りかご2が退避階に到着したエレベータを退避号機とする(ステップS319)。
【0057】
その後、群管理制御装置20は、退避号機を群外として群管理制御を行い(ステップS320)、建物揺れが継続している間は(ステップS321:No)、退避号機の乗りかご2を退避階で待機させる。そして、建物揺れが収束したら(ステップS321:Yes)、平常運転に復帰する(ステップS322)。退避号機の乗りかご2は、建物揺れが収束して平常運転に復帰するまで退避階で待機しているので、長尺物の振れが抑制される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態においても、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータのうちの1台を退避号機に選定し、選定した退避号機の乗りかご2を退避階に移動させて、建物揺れが収束するまで、その退避号機の乗りかご2を退避階で待機させるようにしている。したがって、第1実施形態と同様に、建物揺れが収束して平常運転に復帰した後に少なくとも退避号機はすぐに稼働させることができ、エレベータのサービスが長時間停止してしまう不都合を有効に抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、群管理エレベータを構成する複数台のエレベータのうちの2台を退避号機に選定し、これら2台のうち乗りかご2が最初に退避階に到着したエレベータを退避号機として、建物揺れが収束するまでその乗りかご2を退避階に退避させるようにしている。したがって、退避号機に選定した2台のエレベータの乗りかご2が退避階に到着するまでの間に、いずれかのエレベータの長尺物の振れ量が上限レベルに達したと判断されて、そのエレベータの運転が停止した場合であっても、退避号機を選定し直す必要がない。
【0060】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、管制運転時に退避号機を選定する基準の一部が、上述の第1実施形態と異なるものである。すなわち、上述の第1実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から退避号機を選定する基準として、乗りかご2が目的階に到着する順序を基準としたが、本実施形態では、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数を基準とする。以下では、上述の第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0061】
図6は、本実施形態の管制運転時における群管理制御装置220の処理手順の一例を示すフローチャートである。この
図6のフローチャートで示す一連の処理において、ステップS401〜ステップS407、ステップS409〜ステップS412の処理は、
図4のフローチャートで示したステップS201〜ステップS207、ステップS209〜ステップS212の処理と同様である。つまり、本実施形態は、ステップS408の処理のみが上述の第1実施形態と異なる。
【0062】
本実施形態では、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがなく、かつ、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがない場合(ステップS406:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数が最も少ないエレベータを退避号機に選定する(ステップS408)。すなわち、上述の第1実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から退避号機を選定する際に、できるだけ早く退避階に移動できるエレベータを選ぶようにしていたが、本実施形態では、退避階に移動する間に長尺物の振れ量が大きくならないエレベータを選ぶようにしている。
【0063】
なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、退避号機の乗りかご2が退避階に到着するまでの間に、長尺物振れ推定部23によって退避号機の長尺物の振れ量が上限レベルに達したと判断され、退避号機に対して運転停止信号が出力されて退避号機の乗りかご2が停止した場合、群管理制御装置20は、ステップS402〜ステップS408の手順を繰り返すことにより、運転が停止したエレベータ以外の他のエレベータを新たな退避号機に選定することが望ましい。
【0064】
このように、本実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から退避号機を選定する際に、退避階に移動する間に長尺物の振れ量が大きくならないエレベータを選ぶようにしているので、上述の第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、退避号機に選定したエレベータの乗りかご2が退避階に到着するまでの間に長尺物の振れ量が上限レベルに達して停止してしまう不都合を有効に抑制することができる。
【0065】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、管制運転時に退避号機を選定する基準の一部が、上述の第2実施形態と異なるものである。すなわち、上述の第2実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から退避号機を選定する基準として、乗りかご2が目的階に到着する順序を基準としたが、本実施形態では、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数を基準とする。以下では、上述の第2実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0066】
図7−1および
図7−2は、本実施形態の管制運転時における群管理制御装置220の処理手順の一例を示すフローチャートである。この
図7−1および
図7−2のフローチャートで示す一連の処理において、ステップS501〜ステップS511、ステップ513〜ステップS515、ステップS518〜ステップS522の処理は、
図5−1および
図5−2のフローチャートで示したステップS301〜ステップS311、ステップS313〜ステップS315、ステップS318〜ステップS322の処理と同様である。つまり、本実施形態は、ステップS512、ステップS516およびステップS517の処理のみが上述の第2実施形態と異なる。
【0067】
本実施形態では、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータが1台しかなく、残りのエレベータから2台目の退避号機を選定する際に、乗りかご2が無方向待機しているエレベータがなければ(ステップS510:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数が最も少ないエレベータを2台目の退避号機に選定する(ステップS512)。
【0068】
また、本実施形態では、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがなく、乗りかご2が無方向待機しているエレベータが1台のみの場合(ステップS514:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が無方向待機しているエレベータと、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数が最も少ないエレベータを退避号機に選定する(ステップS516)。
【0069】
また、本実施形態では、乗りかご2が共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータがなく、乗りかご2が無方向待機しているエレベータもない場合(ステップS513:No)、群管理制御装置20は、乗りかご2が移動中のエレベータのうち、乗りかご2が次に着床する階から退避階に移動するまでの間に通過する共振階の数が最も少ないエレベータと、次に少ないエレベータの2台を退避号機に選定する(ステップS517)。
【0070】
すなわち、上述の第2実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から2台目もしくは2台の退避号機を選定する際に、できるだけ早く退避階に移動できるエレベータを選ぶようにしていたが、本実施形態では、退避階に移動する間に長尺物の振れ量が大きくならないエレベータを選ぶようにしている。
【0071】
このように、本実施形態では、乗りかご2が移動中のエレベータの中から退避号機を選定する際に、退避階に移動する間に長尺物の振れ量が大きくならないエレベータを選ぶようにしているので、上述の第2実施形態と同様の効果が得られることに加え、退避号機に選定したエレベータの乗りかご2が退避階に到着するまでの間に長尺物の振れ量が上限レベルに達して停止してしまう不都合を有効に抑制することができる。
【0072】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、建物揺れが収束した後に少なくとも1台のエレベータはすぐに稼働できるようにして、長時間のサービス停止といった不都合を有効に抑制することができる。
【0073】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【解決手段】建物の各階を共振階と非共振階とに分類するとともに、非共振階の中で長尺物が建物揺れに最も共振しにくい階を退避階に設定しておく。建物揺れを検知し、少なくとも1台のエレベータの長尺物の振れ量が上限レベルに達する虞があると予測される場合に、共振階を通過せずに退避階に移動可能なエレベータのうち、退避階に最も近い階で無方向待機しているエレベータを退避号機に選定する。無方向待機しているエレベータがなければ、移動中のエレベータのうち、最初に目的階に到着したエレベータを退避号機に選定する。そして、退避号機に選定したエレベータを退避階に移動させ、建物揺れが収まるまで該エレベータを退避階で待機させる。