(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、を備えるコンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、
前記コンバインドサイクルプラントの負荷を示す負荷スケジュールを受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた前記負荷スケジュールを参照して、負荷が下がる負荷低下時刻を認識し、前記蒸気タービンに供給する蒸気の温度を低下させる温度低下時刻として前記負荷低下時刻より前の時刻を定める低下時刻設定工程と、
前記温度低下時刻に、前記蒸気タービンに供給する蒸気の温度を低下させる温度低下工程と、
前記負荷低下時刻から前記ガスタービンへの燃料供給量を少なくするガスタービン出力低下工程と、
を実行するコンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法。
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンに供給する燃料流量を調節する燃料調節器と、前記ガスタービンから排気された排ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、前記蒸気の温度を調節する蒸気温度調節器と、を備えるコンバインドサイクルプラントの制御装置において、
前記コンバインドサイクルプラントの負荷を示す負荷スケジュールを受け付ける受付部と、
前記負荷スケジュールで負荷が下がる負荷低下時刻より前に、前記蒸気温度調節器に対して、前記蒸気の温度を低下させる操作量を示す指令を出力する蒸気温度制御部と、
前記負荷低下時刻から前記燃料調節器に対して燃料供給量を少なくする操作量を示す指令を出力する燃料制御部と、
を備えるコンバインドサイクルプラントの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインドサイクルプラントは、運用可能な出力範囲(負荷範囲)が広くなることが望まれている。このため、コンバインドサイクルプラントの出力を低下させる際には、できる限り最低出力(最低負荷)を低下させることが望まれる。
【0006】
本発明は、コンバインドサイクルプラントの出力を低下させる際の運用可能な最低出力を低減することができるコンバインドサイクルプラント、その最低出力低減方法、及びその制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのコンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法は、
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、を備えるコンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記コンバインドサイクルプラントの負荷を示す負荷スケジュールを受け付ける受付工程と、前記受付工程で受け付けた前記負荷スケジュールを参照して、負荷が下がる負荷低下時刻を認識し、前記蒸気タービンに供給する蒸気の温度を低下させる温度低下時刻として前記負荷低下時刻より前の時刻を定める低下時刻設定工程と、前記温度低下時刻に、前記蒸気タービンに供給する蒸気の温度を低下させる温度低下工程と、前記負荷低下時刻から前記ガスタービンへの燃料供給量を少なくするガスタービン出力低下工程と、を実行する。
【0008】
蒸気タービンに供給する蒸気の温度が急激に低下すると、蒸気タービンのタービンロータ等に発生する熱応力が高くなり、タービンロータ等の寿命を縮めることになる。このため、蒸気タービンの運用上、蒸気温度の単位時間当たりの低下量である温度低下率が定められている。また、プラント出力の低下開始から、プラント出力が目標出力になるまでの時間は、プラント出力を受ける需要者にとって望ましい。よって、プラント出力を低下させる場合の運用最低出力は、以上の観点から所定の出力に定められている。
【0009】
当該最低出力低減方法では、プラント出力を低下させる際、ガスタービン出力を低下させる前から蒸気温度を低下させる。このため、当該最低出力低減方法では、ガスタービン出力を低下させる前から主蒸気温度を低下させない場合と比べて、蒸気の温度低下率が同じであっても、蒸気温度を低くすることができる。従って、当該最低出力低減方法では、プラントの運用最低出力を、ガスタービン出力を低下させる前から主蒸気温度を低下させない場合の運用最低出力よりも低くすることができる。
【0010】
ここで、前記一態様としての前記コンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記低下時刻設定工程では、予め定められた所定時間分だけ前記負荷低下時刻より前の時刻を前記温度低下時刻として定めてもよい。
【0011】
また、前記一態様としての前記コンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記低下時刻設定工程では、前記負荷スケジュールが示す負荷の低下量に応じた時間分だけ前記負荷低下時刻より前の時刻を前記温度低下時刻として定めてもよい。
【0012】
以上のいずれかの前記コンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記温度低下工程では、前記蒸気の温度の単位時間当たり変化量である変化率が予め定められた範囲内に収まるよう、前記蒸気の温度を低下させてもよい。
【0013】
前述したように、蒸気タービンの運用上、蒸気タービンに供給する蒸気の温度低下率が定められている。当該最低出力低減方法では、温度低下工程における蒸気の温度の低下率を、この運用上の温度低下率以下にする。この結果、当該最低出力低減方法では、タービンロータ等の寿命を長くすることができる。
【0014】
以上のいずれかの前記コンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記温度低下工程では、前記蒸気中に水を噴射してもよい。
【0015】
前記蒸気中に水を噴射する前記コンバインドサイクルプラントの最低出力低減方法において、前記温度低下工程では、前記水の噴射量を時間経過に伴って徐々に低下させてもよい。
【0016】
当該最低出力低減方法では、蒸気タービンに供給する蒸気の温度が低下しすぎて、蒸気タービンの出力が必要以上に低下することを防ぐことができる。
【0017】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのコンバインドサイクルプラントの制御装置は、
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンに供給する燃料流量を調節する燃料調節器と、前記ガスタービンから排気された排ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、前記蒸気の温度を調節する蒸気温度調節器と、を備えるコンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記コンバインドサイクルプラントの負荷を示す負荷スケジュールを受け付ける受付部と、前記負荷スケジュールで負荷が下がる負荷低下時刻より前に、前記蒸気温度調節器に対して、前記蒸気の温度を低下させる操作量を示す指令を出力する蒸気温度制御部と、前記負荷低下時刻から前記燃料調節器に対して燃料供給量を少なくする操作量を示す指令を出力する燃料制御部と、を備える。
【0018】
当該制御装置でも、前述の最低出力低減方法と同様、プラントの運用最低出力を低くすることができる。
【0019】
ここで、前記一態様としての前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記受付部が受け付けた前記負荷スケジュールから負荷が下がる負荷低下時刻を認識し、前記負荷低下時刻より前の時刻であって前記蒸気の温度を低下させる温度低下時刻を定め、前記温度低下時刻から前記蒸気温度制御部に前記指令を前記蒸気温度調節器へ出力させる温度低下タイミング指示部を備えてもよい。
【0020】
前記温度低下タイミング指示部を備える前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記温度低下タイミング指示部は、予め定められた所定時間を記憶しており、前記所定時間分だけ前記負荷低下時刻より前の時刻を前記温度低下時刻として定めてもよい。
【0021】
前記温度低下タイミング指示部を備える前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記温度低下タイミング指示部は、負荷の低下量と先行時間との関係を記憶しており、前記関係を用いて、前記負荷スケジュールが示す負荷の低下量に応じた先行時間を定め、前記先行時間分だけ前記負荷低下時刻より前の時刻を前記温度低下時刻として定めてもよい。
【0022】
前記温度低下タイミング指示部を備える、以上のいずれかの前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記蒸気温度制御部は、前記蒸気の温度の単位時間当たり変化量である変化率が予め定められた範囲内に収まるよう、前記蒸気温度調節器の操作量を定めてもよい。
【0023】
前記温度低下タイミング指示部を備える、以上のいずれかの前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記蒸気温度制御部は、前記蒸気温度調節器の操作量を時間経過に伴って徐々に小さくしてもよい。
【0024】
また、前記一態様としての前記コンバインドサイクルプラントの制御装置において、前記受付部が受け付けた前記負荷スケジュールを出力する出力部と、前記蒸気温度制御部に対して、前記蒸気温度調節器の操作量の指示を与える操作端と、を備えてもよい。
【0025】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのコンバインドサイクルプラントは、
以上のいずれかの前記制御装置と、前記ガスタービンと、前記燃料調節器と、前記排熱回収ボイラーと、前記蒸気タービンと、前記蒸気温度調節器と、を備える。
【0026】
ここで、前記一態様としての前記コンバインドサイクルプラントにおいて、前記蒸気タービンに供給する蒸気が流れる蒸気ラインを備え、前記蒸気温度調節器は、前記蒸気ライン中に水を噴射するノズルと、前記ノズルに供給する水の流量を調節する噴射水調節器と、を有してもよい。
【0027】
前記ノズルを有する前記コンバインドサイクルプラントにおいて、前記排熱回収ボイラーは、蒸気を過熱する複数の過熱器を有し、複数の前記過熱器は、相互に蒸気ラインで接続され、前記ノズルは、複数の前記過熱器相互を接続する蒸気ライン、又は最も蒸気流れの下流側の過熱器と前記蒸気タービンとを接続する蒸気ラインのうち、いずれかの蒸気ラインに設けられていてもよい。
【0028】
この場合、複数の前記過熱器のうち、最も蒸気流れの下流側の最下流過熱器と、前記最下流過熱器よりも蒸気流れの上流側の次下流過熱器とを接続する蒸気ラインに、前記ノズルが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
発明に係る一態様では、コンバインドサイクルプラントの出力を低下させる際の運用可能な最低出力を低減するプラント出力の低下量を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るコンバインドサイクルプラントの各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
「第一実施形態」
本発明に係るコンバインドサイクルプラントの第一実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0033】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、
図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10から排気される排ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラー20と、排熱回収ボイラー20からの蒸気で駆動する蒸気タービン30と、各タービン10,30の駆動で発電する発電機40と、蒸気タービン30から排気された蒸気を水に戻す復水器35と、復水器35からの水を排熱回収ボイラー20に送る給水ポンプ36と、これらを制御する制御装置100と、を備えている。
【0034】
ガスタービン10は、外気Aを圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機11と、燃料Fに圧縮空気中で燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器15と、燃焼ガスにより駆動するタービン16と、を備えている。
【0035】
圧縮機11は、軸線を中心として回転する圧縮機ロータ12と、この圧縮機ロータ12を覆う圧縮機ケーシング13と、外気Aの吸気流量を調節する吸気量調節器14と、を有する。吸気量調節器14は、圧縮機ケーシング13の吸込み口内に設けられているIGV(inlet guide vane)14aと、このIGV14aを駆動して、IGV14aの開度を調節する駆動器14bとを有する。
【0036】
燃焼器15には、燃料供給源からの燃料Fを燃焼器15に供給する燃料ライン51が接続されている。この燃料ライン51には、燃焼器15に流入する燃料Fの流量を調節する燃料調節弁(燃料調節器)52が設けられている。
【0037】
タービン16は、燃焼器15からの燃焼ガスにより、軸線を中心として回転するタービンロータ17と、このタービンロータ17を覆うタービンケーシング18と、を有する。タービンロータ17と圧縮機ロータ12とは、同一の軸線を中心として一体回転する。タービンロータ17と圧縮機ロータ12とは、相互に連結されて、ガスタービンロータ19を成している。タービン16の排気口は、排熱回収ボイラー20に接続されている。よって、タービン16から排気された排ガスEGは、排熱回収ボイラー20に導かれる。
【0038】
排熱回収ボイラー20は、水を加熱する節炭器21と、節炭器21で加熱された水を蒸気にする蒸発器22と、蒸発器22で発生した蒸気を過熱する過熱器23と、を有する。過熱器23は、第一過熱器23aと第二過熱器23bとを有する。第二過熱器(最下流過熱器)23b、第一過熱器(次下流過熱器)23a、蒸発器22、節炭器21は、この順序で、タービン16から煙突59に向かう排ガスEGの下流側に向かって設置されている。節炭器21と蒸発器22とは、加熱水ライン24で接続されている。蒸発器22と第一過熱器23aとは、第一蒸気ライン25aで接続されている。第一過熱器23aと第二過熱器23bとは、第二蒸気ライン25bで接続されている。第二蒸気ライン25bには、この第二蒸気ライン25b内に水を噴射するノズル26が設けられている。ノズル26には、噴射水ライン27が接続されている。この噴射水ライン27には、噴射水調節弁28が設けられている。第二過熱器23bには、ここで過熱された蒸気を蒸気タービン30に導く主蒸気ライン29が接続されている。なお、本実施形態では、ノズル26と噴射水調節弁28とで、蒸気温度調節器を構成する。
【0039】
蒸気タービン30は、タービンロータ32と、このタービンロータ32を覆うタービンケーシング33と、を有する。主蒸気ライン29は、このタービンケーシング33に接続されている。主蒸気ライン29には、蒸気タービン30に蒸気を流入させる主蒸気弁34が設けられている。
【0040】
蒸気タービン30の蒸気出口には、復水器35が設置されている。この復水器35と排熱回収ボイラー20の節炭器21とは、給水ライン37で接続されている。この給水ライン37には、前述の給水ポンプ36が設けられている。前述の噴射水ライン27は、例えば、この給水ポンプ36の吐出側に接続されている。
【0041】
発電機40は、軸線を中心として回転する発電機ロータ42と、この発電機ロータ42を覆う発電機ケーシング43を有する。
【0042】
ガスタービンロータ19、蒸気タービンロータ32、及び発電機ロータ42は、同一軸線上に並び、相互に連結されて、一体回転する。よって、本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、一軸式のコンバインドサイクルプラントである。なお、本実施形態のコンバインドサイクルプラントは一軸式であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ガスタービンロータ19と蒸気タービンロータ32とが連結されていなくてもよい。具体的には、ガスタービンロータ19と第一発電機のロータとが連結され、蒸気タービンロータ32と第二発電機のロータとが連結されている多軸式であってもよい。
【0043】
制御装置100は、外部から情報を受け付ける受付部101と、蒸気タービン30に流入する主蒸気の温度を制御する蒸気温度制御部103、主蒸気の温度を下げるタイミングを蒸気温度制御部103に指示する温度低下タイミング指示部102と、燃料流量を制御する燃料制御部104と、ガスタービン10の吸気量を制御するIGV制御部105と、を有する。
【0044】
受付部101は、通信網Nを介して外部から負荷指令LC及び負荷スケジュールLSを受け付ける。負荷指令LCとは、現時点で必要な電力負荷を示す指令、言い換えると、現時点で必要なプラント出力を示す指令である。また、負荷スケジュールLSは、将来の各時刻での必要な電力負荷を示す。また、ここでのプラント出力とは、ガスタービン出力と蒸気タービン出力とを併せた出力である。言い換えると、プラント出力とは、発電機出力である。負荷指令LC及び負荷スケジュールLSは、例えば、電力供給会社等から通信網Nを介して送られてくる。受付部101は、負荷指令LC等の他、コンバインドサイクルプラントの各機器に設けられている計測器等からの計測信号等も受け付ける。
【0045】
燃料制御部104は、負荷指令LCが示す負荷に対応したプラント出力を出せるよう、燃焼器15に供給する燃料流量を定める。燃料制御部104は、この燃料流量に応じた弁開度指令(操作量を示す指令)を燃料調節弁52に出力する。
【0046】
IGV制御部105は、燃料制御部104が定めた燃料流量に対応した吸気量が得られるIGV開度を定める。IGV制御部105は、このIGV開度を示すIGV開度指令を吸気量調節器14の駆動器14bに出力する。IGV制御部105は、燃料流量(∝ガスタービン出力)とIGV開度との関係を示すマップ等を有する。IGV制御部105は、このマップ等を参照して、燃料流量(∝ガスタービン出力)に対応したIGV開度を定める。このマップ等は、例えば、ガスタービン出力が0〜50%までは一定の最少開度を示し、ガスタービン出力が50%以上になると、ガスタービン出力に増加に伴って増加する開度を示す。すなわち、ガスタービン出力が例えば50%以上である場合、IGV開度の変化は、燃料流量(∝ガスタービン出力)の変化に対して正の相関性を持っている。
【0047】
温度低下タイミング指示部102は、受付部101が受け付けた負荷スケジュールLSを参照して、負荷が下がる負荷低下時刻を認識する。温度低下タイミング指示部102は、蒸気タービン30に供給する主蒸気の温度を低下させる温度低下時刻として負荷低下時刻より前の時刻を定める。温度低下タイミング指示部102は、例えば、予め定められた所定時間を記憶しており、この所定時間分だけ負荷低下時刻より前の時刻を温度低下時刻として定める。温度低下タイミング指示部102は、温度低下時刻に主蒸気の温度を下げるよう蒸気温度制御部103に指示する。
【0048】
蒸気温度制御部103は、温度差低下モードと出力低下時モードとを実行する。蒸気タービン30では、蒸気タービン30に流入する主蒸気の温度と、この蒸気タービン30のタービンロータ等の部材との温度差が大きいと、タービンロータ等に熱応力が発生して、タービンロータ等の寿命を縮めることになる。このため、蒸気タービン30の起動時等において、タービンロータ等の温度よりも主蒸気の温度が高く、且つ両温度の温度差が大きい場合には、主蒸気温度を下げることが好ましい。蒸気温度制御部103は、蒸気タービン30の起動時等の場合に、温度差低下モードになる。蒸気温度制御部103は、この温度差低下モードでは、タービンロータ等の温度よりも主蒸気の温度が高く、且つ両温度の温度差が予め定められた値よりも大きくなった場合に、この温度差に応じて、噴射水調節弁28の弁開度を定める。また、蒸気温度制御部103は、温度低下タイミング指示部102から主蒸気の温度を下げるタイミングが指示された場合、出力低下時モードになる。蒸気温度制御部103は、この出力低下時モードでは、予め定められたルールに従って噴射水調節弁28の弁開度を定める。蒸気温度制御部103は、いずれのモードの場合も、自身が定めた弁開度を示す弁開度指令(操作量を示す指令)を噴射水調節弁28に出力する。蒸気温度制御部103には、例えば、出力低下時モードになったときの固定弁開度が記憶されている。さらに、蒸気温度制御部103には、出力低下時モードになった後の時間経過に伴う開度変化ルールも記憶されている。よって、蒸気温度制御部103は、出力低下時モードになると、噴射水調節弁28に対して、固定弁開度を示す弁開度指令を出力し、その後、開度変化ルールに従った弁開度を示す弁開度指令を出力する。
【0049】
次に、
図2に示すフローチャートに従って、コンバインドサイクルプラントの動作について説明する。
【0050】
制御装置100の受付部101は、外部から負荷スケジュールLSを随時受け付ける(S1:負荷スケジュール受付工程)。温度低下タイミング指示部102は、前述したように、受付部101が受け付けた負荷スケジュールLSを参照して、負荷が下がる負荷低下時刻を認識する。温度低下タイミング指示部102は、
図3の(a)及び(b)に示すように、自身が記憶している所定時間ΔT分だけ負荷低下時刻t1より前の時刻t0を温度低下時刻として定める(S2:温度低下時刻設定工程)。
【0051】
温度低下タイミング指示部102は、温度低下時刻t0を定めると、この温度低下時刻t0に主蒸気の温度を下げるよう蒸気温度制御部103に指示する。蒸気温度制御部103は、この指示を受けると、出力低下時モードになる。蒸気温度制御部103は、この出力低下時モードになると、予め定められたルールに従って噴射水調節弁28の弁開度を定める。そして、蒸気温度制御部103は、温度低下時刻t0に、この弁開度を示す弁開度指令(操作量を示す指令)を噴射水調節弁28に出力する。このため、噴射水調節弁28の弁開度は、この弁開度指令が示す弁開度になり、水が噴射水ライン27及びノズル26を経て、第二蒸気ライン25b中に噴射される(S3:蒸気温度低下工程)。この結果、
図3の(b)に示すように、温度低下時刻t0に第二蒸気ライン25bへの水の噴射が開始される。
【0052】
温度低下時刻t0における噴射水調節弁28の開度は、前述したように、例えば、予め定められた固定弁開度である。蒸気温度制御部103は、例えば、負荷スケジュールLSが示す負荷低下時刻t1に基づいて、プラント出力が目標の出力、つまり負荷指令LCが示す負荷に対応した出力になる時刻t3を推定する。蒸気温度制御部103は、この時刻t3で水噴射量が0になるよう、弁開度指令が示す弁開度を温度低下時刻t0から時間の経過に伴って徐々に小さくする。このため、第二蒸気ライン25bへの水噴射量は、
図3の(b)に示すように、温度低下時刻t0から徐々に少なくなり、プラント出力が目標の出力になる時刻t3で実質的に0になる。
【0053】
図3の(c)中の破線で示すように、第二蒸気ライン25b中に水が噴射すると(t0)、この第二蒸気ライン25bを流れる過熱蒸気の温度が低下する結果、蒸気タービン30に流入する主蒸気の温度も低下する。このため、蒸気タービン出力が低下し、ガスタービン出力が仮に一定であっても、
図3の(d)中の破線で示すように、プラント出力が低下する。
【0054】
ところで、主蒸気の温度が急激に低下すると、蒸気タービン30のタービンロータ等に発生する熱応力が高くなり、タービンロータ等の寿命を縮めることになる。このため、蒸気タービン30の運用上、主蒸気の温度の単位時間当たりの低下量である温度低下率が定められている。本実施形態では、第二蒸気ライン25b中に水を噴射することで主蒸気温度が低下する際の温度低下率が、運用上で定められている温度低下率より大きくならないよう、例えば、温度低下時刻t0における噴射水調節弁28の固定弁開度が定められている。また、本実施形態では、主蒸気温度が低下しすぎて、蒸気タービン30の出力が必要以上に低下することを防ぐために、水噴射量を時間経過に伴って徐々に少なくしている。
【0055】
その後、制御装置100の受付部101は、外部から、負荷スケジュールLSが示す負荷低下時刻t1に、負荷低下を示す負荷指令LCを受け付ける(S4:負荷指令受付工程)。燃料制御部104は、この負荷指令LCに基づいて、燃焼器15に供給する燃料流量を定める。燃料制御部104は、この燃料流量に応じた弁開度指令(操作量を示す指令)を燃料調節弁52に出力する。ガスタービン出力を低下させる場合、時間経過に伴う出力低下率は予め定められている。このため、燃料制御部104は、負荷低下を示す負荷指令LCを受付部101から受け付けると、弁開度が時間経過に伴って一定の割合で徐々に小さくなる弁開度指令を燃料調節弁52に出力する(S5:ガスタービン出力低下工程)。この結果、燃焼器15に供給される燃料流量は、
図3の(e)に示すように、負荷低下時刻t1から一定の割合で徐々に少なくなる。
【0056】
IGV制御部105には、燃料制御部104が定めた燃料流量が入力する。IGV制御部105は、前述したように、マップ等を参照して、燃料流量に対応したIGV開度を定める。IGV制御部105は、このIGV開度を示すIGV開度指令を吸気量調節器14の駆動器14bに出力する。マップ等により定まるIGV開度の変化は、前述したように、ガスタービン出力が例えば50%以上である場合、燃料流量(∝ガスタービン出力)の変化に対して正の相関性を持っている。このため、ガスタービン出力が例えば50%以上である場合、
図3の(f)に示すように、負荷低下時刻t1から燃料流量が徐々に少なくなると、これに伴ってIGV開度が徐々に小さくなる。
【0057】
IGV開度が小さくなると、ガスタービン10の吸気量が少なくなる。よって、燃料流量の減少に伴って吸気量も減少するため、ガスタービン10から排気される排ガスEGの温度は、燃料流量が減少してもほぼ一定に保たれる。主蒸気温度の変化は、排ガスEGの温度の変化に対して高い正の相関性を有する。このため、主蒸気温度は、
図3の(c)に示すように、燃料流量が少なくなっても、基本的に一定である。
【0058】
負荷低下時刻t1後の時刻t2でガスタービン出力が例えば50%になると、
図3の(f)に示すように、IGV開度は、ガスタービン出力がさらに低下しても、最小IGV開度を維持し続ける。このため、時刻t2以降でも、燃料流量が減少すると、ガスタービン10から排気される排ガスEGの温度は、燃料流量が減少に伴って低下する。よって、
図3の(e)及び(c)に示すように、時刻t2以降でも、燃料流量が減少すると、主蒸気温度は、排ガスEGの温度と同様に、燃料流量が減少に伴って低下する。
【0059】
時刻t2より前では、燃料流量の低下に伴ってガスタービン出力が低下するものの、主蒸気温度がほぼ一定であるため、蒸気タービン出力はほぼ一定である。一方、時刻t2以降では、燃料流量の減少に伴ってガスタービン出力が低下する上に、主蒸気温度低下に伴って蒸気タービン出力も低下する。このため、プラント出力の低下率は、
図3の(d)に示すように、時刻t2より前よりも、時刻t2以降の方が大きくなる。
【0060】
図3の(e)及び(d)に示すように、燃料流量が目標流量になると、プラント出力が目標出力になる(t3)。また、前述したように、プラント出力が目標出力になると(t3)、
図3の(b)に示すように、第二蒸気ライン25bへの水噴射量が実質的に0になる。さらに、
図3の(c)に示すように、主蒸気温度が一定になる。
【0061】
本実施形態の制御装置100は、通信網Nを介して、外部から負荷指令LCを受け付ける。このため、外部側で先に送信した負荷スケジュールLSが示す負荷低下のタイミングに合せて、負荷低下を示す負荷指令LCを送信したとしても、通信網Nの状態等によっては、負荷スケジュールLSが示す負荷低下のタイミングに完全に一致したタイミングで、制御装置100がこの負荷指令LCを受信するとは限らない。そこで、本実施形態の制御装置100は、負荷スケジュールLSが示す負荷低下のタイミングを基準にして、数秒間の範囲内で、負荷低下を示す負荷指令LCを受信した場合には、負荷スケジュールLSが示す負荷低下に関する負荷指令LCを受け付けたものとして扱う。一方、本実施形態の制御装置100は、負荷スケジュールLSが示す負荷低下のタイミングを基準にして、数秒間の範囲内で、負荷低下を示す負荷指令LCを受信しなかった場合には、負荷スケジュールLSが変更になったと判断する。この場合、制御装置100は、その後に受信した負荷スケジュールLSが、先に受信した負荷スケジュールLSが示す負荷低下のタイミングから、例えば、数十分以内に負荷低下を予定していない限り、第二蒸気ライン25bへの水噴射を中止する。
【0062】
ここで、
図4を参照して、プラント出力と主蒸気温度との関係について説明する。なお、
図4中、破線は、負荷低下時刻t1より前の時刻t0から第二蒸気ライン25b中に水を噴射している場合を示し、実線は、第二蒸気ライン25b中に水を噴射していない場合を示す。
【0063】
コンバインドサイクルプラントでは、プラント効率を高めるために、プラント出力が変動しても、基本的に主蒸気温度が一定になるように運用される。具体的には、例えば、プラント出力が100%の状態からプラント出力を下げる場合、前述したように、燃料流量を減少させると共に、IGV開度を小さくして吸気量も減少させ、主蒸気温度を一定に保つ。しかしながら、IGV開度が最少開度になってしまうと、以降、燃料流量が減少しても、吸気量は減少しない。すなわち、IGV開度が最少開度になった以降では、燃料流量に対する吸気量の割合が大きくなる。このため、
図4の実線で示すように、IGV開度が最少開度Vminになった以降では、燃料流量が一定の割合で少なくなるに伴って、排ガス温度及び主蒸気温度も一定の割合で低くなる。
【0064】
前述したように、蒸気タービン30の運用上、主蒸気の温度の単位時間当たりの低下量である温度低下率が定められている。また、プラント出力の低下開始から、プラント出力が目標出力になるまでの時間は、プラント出力を受ける需要者にとって短時間であることが望ましい。よって、プラント出力を低下させる場合の運用最低出力は、以上の観点から所定の出力に定められている。仮に、第二蒸気ライン25b中に水を噴射していない場合のプラントの運用最低出力をa%であるとする。
【0065】
本実施形態では、仮に、プラント出力が100%の状態からプラント出力を低下させる場合、
図4の破線に示すように、負荷低下時刻t1より前の時刻t0から第二蒸気ライン25b中に水を噴射するため、負荷低下時刻t1より前の時刻t0から主蒸気温度が下がる。このため、本実施形態では、プラント出力が100%に近い状態でも、第二蒸気ライン25b中に水を噴射していない場合と比べて、主蒸気温度が低い。その後、燃料流量が一定の割合で小さくなるに伴って、プラント出力も下がる。但し、IGV開度が最少開度Vminになるまで、プラント出力が低下しても、主蒸気温度はほぼ一定に維持される。本実施形態でも、IGV開度が最少開度Vminになった以降、燃料流量が一定の割合で少なくなるに伴って、排ガス温度及び主蒸気温度も一定の割合で低くなる。
【0066】
なお、本実施形態において、IGV開度が最少開度Vminになったときのプラント出力は、第二蒸気ライン25b中に水を噴射しない場合(実線)よりも低い。例えば、IGV開度は、ガスタービン出力が50%になると最少開度Vminになるとする。本実施形態では、ガスタービン出力を低下させる前から、主蒸気温度を低下させている。このため、本実施形態では、ガスタービン出力を低下させる前から蒸気タービン出力及びプラント出力が低下している。よって、本実施形態では、主蒸気温度を低下させない場合と比べて、ガスタービン出力が同じであっても、プラント出力が低い。このため、本実施形態では、ガスタービン出力が50%になったとき、つまりIGV開度が最少開度Vminになったときのプラント出力が、主蒸気温度を低下させない場合よりも低い。
【0067】
本実施形態では、プラント出力を低下させる際、ガスタービン出力を低下させる前から主蒸気温度を低下させる。このため、本実施形態では、ガスタービン出力を低下させる前から主蒸気温度を低下させない場合と比べて、主蒸気の温度低下率が同じであっても、主蒸気温度を低くすることができる。従って、本実施形態におけるプラントの運用最低出力は、ガスタービン出力を低下させる前から主蒸気温度を低下させない場合のa%よりも低いb%になる。すなわち、本実施形態では、プラント出力を低下する際におけるプラント出力の低下量を大きくすることができる。言い換えると、本実施形態では、運用出力範囲(運用負荷範囲)を広げることができる。
【0068】
プラントの運用最低出力を低下させる方法として、プラント出力を低下させる際、予定の負荷低下時刻t1より前から、燃料流量を減らす一方で、燃料流量の減少量よりも吸気量の減少量を少なくすることで、主蒸気温度を低下させておく方法が考えられる。この方法では、予定の負荷低下時刻t1より前から蒸気タービン出力と共にガスタービン出力が低下する。一方、本実施形態では、予定の負荷低下時刻t1より前から蒸気タービン出力が低下するものの、ガスタービン出力は低下しない。よって、本実施形態では、この方法よりも、予定の負荷低下時刻t1より前におけるプラント出力の低下量を小さくすることができる。
【0069】
「第二実施形態」
本発明に係るコンバインドサイクルプラントの第二実施形態について、
図5を参照して説明する。
【0070】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、上記第一実施形態のコンバインドサイクルプラントと比べて、制御装置100のみが異なっている。このため、以下では、本実施形態のコンバインドサイクルプラントにおける制御装置100aについて、主として説明する。
【0071】
本実施形態の制御装置100aは、制御装置本体110と、通信網Nを介して外部から負荷スケジュールLSを受け付ける受付装置107と、この受付装置107が受け付けた負荷スケジュールLSを表示する表示装置108と、を有する。
【0072】
制御装置本体110は、上記第一実施形態の制御装置100と同様、受付部101aと、蒸気温度制御部103aと、燃料制御部104と、IGV制御部105と、を有する。但し、制御装置本体110は、上記第一実施形態の制御装置100における温度低下タイミング指示部102を有していない。このかわり、制御装置本体110は、蒸気温度制御部103aに対して、蒸気温度調節器である噴射水調節弁28の操作量の指示を与える操作端106を有する。また、本実施形態の制御装置100aは、受付装置107が負荷スケジュールLSを受け付ける関係上、制御装置本体110の受付部101aは、負荷スケジュールLSを受け付けない。
【0073】
本実施形態では、
図2に示すフローチャートにおいて、受付装置(受付部)107が外部から負荷スケジュールLSを受け付けると(S1:負荷スケジュール受付工程)、表示装置108は、この負荷スケジュールLSを表示する。運転員は、この負荷スケジュールLSを見て、負荷が下がる負荷低下時刻を認識する。運転員は、この負荷低下時刻より前の時刻を温度低下時刻として定める(S2:温度低下時刻設定工程)。その後、運転員は、温度低下時刻になると、操作端106を操作して、蒸気温度制御部103aに噴射水調節弁28の操作量(弁開度)の指示を与える。蒸気温度制御部103aは、この指示に応じた弁開度を示す弁開度指令を噴射水調節弁28に出力する。その後も、運転員は、操作端106を操作して、蒸気温度制御部103aにその時点で適切な噴射水調節弁28の操作量の指示を与える。以降、制御装置100aは、上記第一実施形態と基本的に同様に動作する。
【0074】
上記第一実施形態では、制御装置100の温度低下タイミング指示部102が、負荷低下時刻の認識、温度低下時刻の設定、蒸気温度制御部103へ指示を実行する。一方、本実施形態では、運転員が、負荷低下時刻の認識、温度低下時刻の設定、蒸気温度制御部103aへ指示を実行する。
【0075】
このように、本実施形態では、上記第一実施形態よりも、運転員の負担が多くなる。しかしながら、本実施形態では、既存の制御装置を利用して、上記第一実施形態における最低出力低減方法を実行する場合でも、制御装置の改造を最小限に抑えることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、負荷スケジュールLSを出力する装置が表示装置108である。しかしながら、この表示装置108のかわりに、印刷装置を設けてもよい。
【0077】
「各種変形例」
上記実施形態では、蒸気が流れるラインのうち、第二蒸気ライン25b中に水を噴射する。しかしながら、主蒸気ライン29中に水を噴射してもよい。このように、主蒸気ライン29中に水を噴射すると、蒸気タービン30に流入する主蒸気の温度を正確に且つ容易に管理することができる。但し、主蒸気ライン29中に噴射した水が気化することなく、蒸気タービン30に流入するのを防ぐために、主蒸気ライン29中で蒸気タービン30から遠く過熱器に近い位置に水を噴射することが好ましい。
【0078】
上記実施形態の排熱回収ボイラー20は、二つの過熱器23a,23bを有する。しかしながら、過熱器は一つであってもよい。この場合、蒸気が流れるライン中で、過熱器を基準にして、蒸気流れの上流側に水を噴射してもよいし、前述したように、下流側に水を噴射してもよい。また、過熱器は三つ以上であってもよい。この場合、蒸気が流れるライン中で、三以上の過熱器のうち隣り合ういずれか二つの過熱器の間に水を噴射してもよいし、三以上の過熱器よりも下流側に水を噴射してもよい。なお、三以上の過熱器のうち隣り合ういずれか二つの過熱器の間に水を噴射する場合、最下流の過熱器と、この過熱器の上流側に隣接する次下流過熱器との間を接続するライン中に水を噴射することが好ましい。
【0079】
上記実施形態では、所定時間ΔT分だけ負荷低下時刻t1より前の時刻t0を温度低下時刻t0にする。しかしながら、負荷スケジュールLSが示す負荷の低下量に応じた先行時間分だけ負荷低下時刻t1より前の時刻を温度低下時刻t0にしてもよい。すなわち、負荷の低下量が大きければ、より長い時間分だけ負荷低下時刻t1より前の時刻を温度低下時刻t0にしてもよい。これを制御装置100で実行する場合、温度低下タイミング指示部102は、負荷の低下量と先行時間との関係を記憶しており、この関係を用いて、負荷スケジュールLSが示す負荷の低下量に応じた先行時間を定める。
【0080】
上記実施形態では、出力低下時モード時、温度低下時刻t0に噴射水調節弁28に対して、予め定められた固定弁開度を示す弁開度指令を出力する。しかしながら、温度低下時刻t0における噴射水調節弁28の弁開度は、固定弁開度でなくてもよい。温度低下時刻t0における噴射水調節弁28の弁開度は、例えば、主蒸気温度に応じた弁開度であってもよい。但し、この場合、第二蒸気ライン25b中に水を噴射することで主蒸気温度の温度低下率が、運用上で定められている温度低下率より大きくならないことを前提条件として、このときの弁開度が定められる。
【0081】
上記実施形態において、出力低下時モードにおける噴射水調節弁28の弁開度を変化させるルールは、温度低下時刻t0のときから時間経過に伴い徐々に弁開度が小さくなり、時刻t3で弁開度が0になるルールである。しかしながら、このルールは、他のルールであってもよい。例えば、負荷変低下時刻t1や時刻t2で弁開度が0になるルールであってもよい。また、このルールは、当初の固定弁開度を所定時間維持した後に、弁開度を徐々に小さくするルールであってもよい。
【0082】
上記実施形態において、出力低下時モードにおける噴射水調節弁28の弁開度の制御、言い換えると、主蒸気温度の制御は、いわゆるフィードフォワード制御である。しかしながら、この制御は、フィードバック制御であってもよい。この場合、主蒸気温度を検知する温度計を設け、この温度計で検知される主蒸気温度が目標温度になるよう、噴射水調節弁28の開度を制御する。但し、このようにフィードバック制御を行う場合でも、主蒸気温度の温度低下率が、運用上で定められている温度低下率より大きくならないよう、制御ゲインを定めておくことが好ましい。
【0083】
上記実施形態では、蒸気中に液体の水を噴射して、主蒸気の温度を下げる。しかしながら、主蒸気の温度を下げる方法は、これに限定されない。例えば、蒸気と冷却媒体とを熱交換させる熱交換器を設け、冷却媒体の流量を調節することで、主蒸気の温度を下げてもよい。すなわち、蒸気と冷却媒体とを熱交換させる熱交換器と、この熱交換器に流入する冷却媒体の流量を調節する調節弁とで、蒸気温度調節器を構成してもよい。