特許第6618069号(P6618069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6618069複合成形品の設計支援装置、複合成形品の製造方法、コンピュータ・ソフトウェア、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618069
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】複合成形品の設計支援装置、複合成形品の製造方法、コンピュータ・ソフトウェア、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   B29C45/76
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-91198(P2015-91198)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-203571(P2016-203571A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 高光
(72)【発明者】
【氏名】中野 亮
(72)【発明者】
【氏名】廣井 正人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 隼
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−012814(JP,A)
【文献】 特開2008−012807(JP,A)
【文献】 特開2003−112349(JP,A)
【文献】 山田高光 他,インサート成形時におけるインサートした金属板の大変形挙動に関する検討,成形加工,日本,プラスチック成形加工学会,2013年 5月 9日,第25巻/第8号,380-384
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に設置したインサート部品と、金型内の空洞部へ射出した溶融樹脂とを一体化して製造する複合成形品の設計支援装置であって、樹脂部とインサート部品の数値計算用モデルを作成する手段と、流動解析用入力条件を設定する手段と、インサート部品を金型で挟持して固定する部分のクリアランス条件を設定する手段と、樹脂流動解析を実行し、樹脂部の圧力分布を求める手段と、樹脂部の圧力結果からインサート部品の変形を求める手段と、インサート部品と金型表面との接触判定処理を行う手段を有する複合成形品の設計支援装置。
【請求項2】
前記クリアランス条件とは、インサート部品の計算用モデルにおける金型と接触する要素または節点情報と、インサート部品と金型間のクリアランス距離であることを特徴とする請求項1記載の複合成形品の設計支援装置。
【請求項3】
インサート部品の変形結果に応じて、樹脂部の計算モデルを更新する手段を有する請求項1または記載の複合成形品の設計支援装置。
【請求項4】
さらに樹脂部とインサート部品の温度連成機能を有する手段を有する請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形品の設計支援装置。
【請求項5】
複合成形品とは、多色成形法、インサート成形法、アウター成形法、またはフイルム加飾成形法のいずれかの成形法で製造される成形品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形品の設計支援装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された複合成形品の設計支援装置を用いて決定した成形条件に基づいて成形した複合成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された複合成形品の設計支援装置の各手段をコンピュータに実行させるコンピュータ・ソフトウェア。
【請求項8】
請求項7に記載されたコンピュータ・ソフトウェアを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形品の設計支援装置、複合成形品の製造方法、コンピュータ・ソフトウェア、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複合成形の一つであるインサート成形は、コストダウンや機能向上を目的として、産業上で広く活用されている。インサート成形は、あらかじめインサートされる金属や樹脂部品を金型内に設置しておき、その周囲を覆うように溶融樹脂を射出し、冷却・固化させて、樹脂とインサート部品を一体化させる方法である。(図1)自動車に搭載される電装部品においては、樹脂は絶縁体であることから、金属端子を樹脂で封止する目的で利用されている。しかし、射出成形中の溶融樹脂は、高温・高圧であるため、金属端子の剛性が小さい場合、大きな変形が発生し、場合によっては断線を引き起こす。そのような不良現象を回避するために、樹脂の注入点であるゲート位置を変更して、樹脂の流れ方を制御することで、インサート部品に加わる圧力を低減させたり、場合によっては製品肉厚を変更する場合もある。このような対策案を製品設計段階から検討するために、従来より成形シミュレーション技術が活用されてきた(非特許文献1)。この技術によると、インサート部品の変形が大きくても、計算が破綻せずに、充填完了まで計算が可能になる。先行発明である特許文献1では、従来、変位拘束位置において、全方向の変位を完全拘束して解析されていた点を改善するために、金型法線方向のインサート部品の変形は拘束するものの、スライド方向には拘束しない方法を提案している。
【0003】
しかし、実際の金型とインサート部品の間には通常数10ミクロン程度のクリアランス距離があいており、その間ではインサート部品は自由に動くことができる。射出開始後、溶融樹脂がインサート部品に部分的にしか接していない時と、その後充填領域が進みインサート部品の大部分がオーバーモールドされている状態とでは、クリアランス部における金型との接触状態が異なっている。しかし、従来の技術では、時々刻々と変化するインサート部品の拘束状態の影響を考慮していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−12807号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】成形加工、Vol.25(2013)、No.8、p380−384、“インサート成形時におけるインサートした金属板の大変形挙動に関する検討”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題点を鑑みてなされたものであって、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測し、高品質な複合成形品の設計を支援する装置を提供することにある。
【0007】
本発明においては、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測し、高品質な複合成形品を製造する方法を提供することにある。
【0008】
本発明においては、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測できるコンピュータ・ソフトウェアを提供することにある。
【0009】
本発明においては、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測できるコンピュータ・ソフトウェアを記憶した媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
金型内に設置したインサート部品と、金型内の空洞部へ射出した溶融樹脂とを一体化して製造する複合成形品の設計支援装置であって、樹脂部とインサート部品の数値計算用モデルを作成する手段と、流動解析用入力条件を設定する手段と、インサート部品を金型で挟持して固定する部分のクリアランス条件を設定する手段と、樹脂流動解析を実行し、樹脂部の圧力分布を求める手段と、樹脂部の圧力結果からインサート部品の変形を求める手段と、インサート部品と金型表面との接触判定処理を行う手段を有する複合成形品の設計支援装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記クリアランス条件とは、インサート部品の計算用モデルにおける金型と接触する要素または節点情報と、インサート部品と金型間のクリアランス距離であることを特徴とする請求項1記載の複合成形品の設計支援装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
インサート部品の変形結果に応じて、樹脂部の計算モデルを更新する手段を有する請求項1または記載の複合成形品の設計支援装置である。

【0013】
請求項4に記載の発明は、
さらに樹脂部とインサート部品の温度連成機能を有する手段を有する請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形品の設計支援装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
複合成形品とは、多色成形法、インサート成形法、アウター成形法、またはフイルム加飾成形法のいずれかの成形法で製造される成形品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形品の設計支援装置である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載された複合成形品の設計支援装置を用いて決定した成形条件に基づいて成形した複合成形品の製造方法である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載された複合成形品の設計支援装置の各手段をコンピュータに実行させるコンピュータ・ソフトウェアである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、
請求項7に記載されたコンピュータ・ソフトウェアを記憶した記憶媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測し、高品質な複合成形品の設計を支援する装置を提供可能になる。
【0019】
本発明によれば、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測し、高品質な複合成形品を製造する方法を提供可能になる。
【0020】
本発明によれば、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測できるコンピュータ・ソフトウェアを提供可能になる。
【0021】
本発明によれば、インサート成形中の樹脂圧力によってインサート部品が変形する現象に対して、金型とインサート部品のクリアランス条件を利用することで、金型内でのインサート部品の変形状態を高精度に予測できるコンピュータ・ソフトウェアを記憶した媒体を提供可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】複合成形(インサート成形)の一例である。
図2】本発明の複合成形品の設計支援装置の一例を示す構成図である。
図3】クリアランス設定領域を示す図である。
図4】クリアランス距離を示す図である。
図5】本発明の一実施形態のハードウェア構成例を示す図である。
図6】本発明の実施手順を示すフローチャートである。
図7】樹脂部(キャビティ部)の計算モデルの図である。
図8】インサート部品の計算モデルの図である。
図9】インサート成形解析用の計算モデルである。
図10】クリアランス設定状態のインサート部品の計算モデルである。
図11】樹脂の流れパターンを示す図である。
図12】インサート部品の変形結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の複合成形品の設計支援装置、複合成形品の製造方法、コンピュータ・ソフトウェアおよび記憶媒体の一例である、インサート成形品の設計支援装置の好ましい態様の例を図面を参照しながら詳細に説明する。また、インサート成形品の製造方法の好ましい態様の例を合わせて説明する。
【0024】
図2に本発明のインサート成形品の設計支援装置を示した構成図を示す。大きく分けて4つのモジュールに分けられる。計算モデル作成手段1は、プリ・プロセッサー部であり、解析対象物をCADデータから、3次元の微小要素に分割し、樹脂部とインサート部品の計算モデルを作成する。
【0025】
この時、金型冷却解析の実行により、金型内の温度分布も計算する場合、金型部の計算モデルも作成しておく。条件設定手段2は、計算モデル作成手段1で作成した計算モデルに対して、成形条件設定手段8、成形機データ設定手段9、解析パラメータ設定手段10、樹脂物性データ設定手段11、インサート部品物性データ設定手段12、インサート部品拘束条件設定手段13を設定する。
【0026】
インサート部品物性データ設定手段12は、インサート部品のヤング率、ポアソン比、線膨張係数を設定する。
【0027】
インサート部品拘束条件設定手段13は、充填開始時のインサート部品の拘束条件や、インサート部品と金型とのクリアランス領域を表す要素・節点情報や、クリアランス距離を設定する。
【0028】
樹脂部解析実行手段3はソルバー部である。ソルバー部は、次のようなモジュール群から構成されている。金型冷却解析手段14、充填工程解析手段15、保圧・冷却解析手段16、繊維配向解析手段17、物性解析手段18、変形解析手段19である。
【0029】
金型冷却解析手段14は、金型内の冷却のばらつきによる発生する金型表面温度を算出する。ここで求められた金型表面温度は以降の解析手段の金型境界温度として使われる。充填工程解析手段15は、金型内に樹脂が射出され、樹脂部(キャビティ部)の計算モデルが100%充填されるまで計算する。保圧・冷却解析手段16は、保圧工程解析手段と冷却工程解析手段とからなる。保圧工程解析手段は、充填工程終了後、2次圧を加え、収縮分を補填する工程を解析する。この際、樹脂のPVT特性を用いることによって、樹脂の圧縮性を考慮し、収縮ひずみのばらつきを算出する。冷却工程解析手段は、保圧工程が終わり、金型内で冷却される間の温度・圧力変化を計算する。繊維配向解析手段17は、強化繊維が含有されている場合に限り実行され、充填解析手段から算出される流速分布等の結果により、配向テンソルを算出する。物性解析手段18は、成形品の物性値を計算するものであり、強化繊維が含有されている場合には、前記繊維配向解析結果から、異方性を考慮した物性値(ヤング率、ポアソン比、線膨張係数)を算出する。変形解析手段19は、成形後、金型から離型された後の成形品の収縮ひずみ分布を初期ひずみ分布として、物性解析手段18から算出された物性値で、熱応力解析を実行し、樹脂部だけの節点の移動量を求める。
【0030】
インサート部品変形解析手段4は、充填工程中のインサート部品の変形や、インサート成形による樹脂部とインサート部品が一体化した計算モデルで変形解析を実行するものである。充填中のインサート部品変形解析手段20、金型との接触判定処理手段21、樹脂部の計算モデル更新手段22、樹脂部との一体変形解析手段23である。充填中のインサート部品変形解析手段20は、充填工程解析手段15が出力した樹脂部計算モデルの時系列の充填率、樹脂圧力、温度、せん断応力等のデータを受け取り、インサート部品に圧力荷重を付与して、変形解析を実施する。金型との接触判定手段21では、二つの点を判定する必要がある。一つ目は、インサート部品がクリアランス距離を越えて、金型にめり込んだ状態の結果になっていないこと、二つ目はクリアランス条件を設定していない領域でも、インサート部品が金型内にめり込んだり、金型の外に飛び出した状態になっていないことである。インサート部品と金型との位置関係が不適切と判断された場合は、追加処理を行う。その処理方法として、たとえば非特許文献1に記載されているように、強制変位をインサート部品に付与して、金型内に押し戻す方法でも良い。このように、インサート部品と金型とが適切な接触状態が再現されている時点で、現時点でのインサート部品の変形量として決定する。
【0031】
樹脂部の計算モデル更新手段22は、現時点におけるインサート部品の変形量から、樹脂部の計算モデルを更新する。これはリメッシュと呼ばれる樹脂部(キャビティ部)の空間内を再度要素分割するか、非特許文献1のように、重ねあわせ法による手法を用いてもよい。
【0032】
樹脂部との一体変形解析手段23とは、離型後、室温・大気圧に至るまでの樹脂部とインサート部品の変形量を求めるものである。
【0033】
このような解析を実行する成形シミュレーション・ソフトウェアの例として、東レエンジニアリング株式会社製3次元樹脂流動解析ソフトウェア「3D TIMON(登録商標)」がある(以下では、3D TIMONと呼ぶ)。
【0034】
図5は、本発明のインサート射出成形品の変形特性の表示装置のハードウェア構成例を示す図である。コンピュータ101に、補助記憶装置102、入力装置103、表示装置104、CAD装置105、X線CT測定器106が接続されている。
【0035】
入力装置103により、例えば解析する射出成形品の射出成形条件と3次元的な形状のCADデータが受け付けられ、入力データを作成後、そのデータは補助記憶装置102に格納される。次に、オペレータの指示により、コンピュータ101がこれらのデータを内部のRAM(ランダムアクセス可能な揮発メモリ)に読み込み、解析を行う。得られた結果は表示装置104により、表示される。必要に応じてオペレータが射出成形条件を変更し、再び解析を行うことができる。また、解析結果の出力は別途用意したプリンタ装置に対して行ってもよく、補助記憶装置102に格納してもよい。
【0036】
CAD装置105は、3次元的な形状を作成する装置であり、作成した3次元形状は、例えばIGESデータ形式またはSTLデータ形式などのデータとして出力され、補助記憶装置102に保存される。
【0037】
X線CT可視化装置は、一体化された成形品の中で、内部でインサート部品がどのように変形しているかを可視化する目的で利用される。
【0038】
図6は、本発明のインサート射出成形シミュレーションによるインサート部品の変形特性の設計装置と、それに基づいて決定した射出成形条件による射出成形品の製造方法における手順の例を示したフローチャートである。
【0039】
射出成形過程の解析では、はじめに、CAD装置105により3次元的な形状を作成し、補助記憶装置102に保存する。次に、入力装置103が補助記憶装置102から樹脂部とインサート部品の3次元CADデータを読み込み、入力装置103がそれぞれの3次元形状を微小な要素に分割し、計算モデルを作成する(ステップ1001)。次に、入力装置103において、インサート成形の射出成形条件(たとえば材料射出温度、成形型温度、射出成形材料、射出時間、保圧圧力、冷却時間など)を入力する。(ステップ1002)。次に、入力装置102から、インサート部品と金型部のクリアランス条件を設定する。具体的には、インサート部品における金型とのクリアランス距離が設定される要素または節点を指定する。そして、クリアランス距離を入力する。初期のインサート部品の拘束条件を決定し、補助記憶装置102へ保存する(ステップ1003)。射出成形シミュレーションを行い、ノズル部から注入された樹脂がランナー部を経由して、樹脂部(キャビティ部)に樹脂が進行する状態を時々刻々と計算していく(ステップ1004)。充填済み領域における樹脂部の圧力分布を算出する(ステップ1005)。
【0040】
次に、樹脂部の圧力分布を、インサート部品の各微小要素へ付与し、インサート部品全体の変形を計算する(ステップ1006)。次に、金型とインサート部品の位置関係を計算する。具体的には、インサート部品がキャビティ部を突き抜け金型にめり込んだ位置関係になっていないか、インサート部品と金型とのクリアランス距離が設定されている領域においては、インサート部品の節点の変位量がクリアランス距離以内に収まっているかを確認する。収まっていない場合は、それらの値が許容値に入るまでインサート部品と金型面との接触状態を更新しながら、計算を繰り返す。ここで決定した拘束条件は、次の計算ステップにおけるインサート部品の拘束条件として利用される(ステップ1007)。インサート部品の変形状態が決まれば、樹脂部の計算モデルを更新する(ステップ1008)。充填工程が終了したかどうかを確認する(ステップ1009)。充填工程が継続中なら、現在の時間に時間増分を加えて、再びステップ1004に戻る。その結果、得られたインサート部品の変形量を表示装置104で確認する。X線CT画像106で撮影した画像と、解析結果が比較される。
【実施例1】
【0041】
インサート成形品への実施例について示す。成形シミュレーション・ソフトウェアには、3D TIMON(登録商標)を用いた。まず、図6のステップ1001において、射出成形品形状とインサート部品形状をCADデータで作成し、複数の6面体微小要素に分割することによって計算モデルを構築した(図7図8図9)。
【0042】
次に、ステップ1002において、射出成形条件(使用材料:PPS樹脂、材料射出温度:320℃、成形型温度:130℃、材料射出時間:0.5sec、保圧力50MPa、保圧時間:10sec、型内冷却時間:20sec、インサート部品の材質:銅)を入力した。
【0043】
次に、ステップ1003において、インサート部品に対して、クリアランス領域とクリアランス距離0.05mmを設定した(図10)。
【0044】
次に、ステップ1004の射出成形シミュレーションを行った。図6にシミュレーションにより得られた充填パターンを示す(図11)。
【0045】
図12にシミュレーションにより得られたインサート部品の変形を示す。射出成形シミュレーションは充填工程から離型工程までを行ったが、パーソナル・コンピュータを用いて約5分で終了した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、金型とインサート部品とのクリアランス距離を考慮し、実現象に近い接触状態での複合成形品の変形予測が可能であり、品質が高い複合成形品の製造が可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1 計算モデル作成手段
2 条件設定手段
3 樹脂部解析実行手段
4 インサート部品解析変形解析手段
5 データ解析装置
6 樹脂部の計算モデル作成手段
7 インサート部品の計算モデル作成手段
8 成形条件設定手段
9 成形機データ設定手段
10 解析パラメータ設定手段
11 樹脂物性データ設定手段
12 インサート部品物性データ設定手段
13 インサート部品拘束条件設定手段
14 金型冷却解析手段
15 充填工程解析手段
16 保圧・冷却工程解析手段
17 繊維配向解析手段
18 物性解析手段
19 変形解析手段
20 充填中のインサート部品変形解析手段
21 金型との接触判定解析手段
22 樹脂部の計算モデル更新手段
23 樹脂部との一体変形解析手段
101 コンピュータ
102 補助記憶装置
103 入力装置
104 表示装置
105 CAD装置
106 X線CT装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12