(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂フィルムでなるベースシートにセンサ電極を設けてなり、表示要素を有する成形体内部に組み込み可能であって、成形体内部に設けた内部光源が点灯することで照光する表示要素への接触により入力操作可能なセンサシートにおいて、
内部光源が消灯しているときに内部光源からの光を遮蔽する遮光部に囲まれた表示要素が遮光部と一体化して見え難くなるブラックアウトを生じさせる色調に形成され、表示要素に対して積層して設ける着色透光層と、
凹凸面に形成される表面を内部光源側に露出し、表示要素に対して積層して設ける光拡散層とを有し、
前記光拡散層が前記着色透光層でもあることを特徴とするセンサシート。
成形体に、内部光源によって照光可能な表示要素と、内部光源からの光を遮蔽する遮光部とを有しており、内部光源が点灯しているときに表示要素が照光する加飾部品において、
内部光源が消灯しているときに表示要素がその周囲の遮光部と一体化して見え難くなるブラックアウトを生じさせる色調に形成され、表示要素に対して積層して設ける着色透光層と、
凹凸面に形成される表面を内部光源側に露出し、表示要素に対して積層して設ける光拡散層とを有し、
前記光拡散層が前記着色透光層でもあることを特徴とする加飾部品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について実施形態を示してさらに詳細に説明する。なお、各実施形態で共通する部材・部分については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する材質、作用、効果等についても重複説明を省略する。
【0018】
第1実施形態〔図1〜図6〕:
本実施形態では、入力部品としてオーディオの操作パネル11について説明する。この操作パネル11について、
図1には概略斜視図を、
図2には平面図を、
図3には分解断面図をそれぞれ示す。この
図3で示すように、操作パネル11はその外形を象る成形体12と、成形体12の内面12aに貼着されるセンサシート13とで構成されている。
【0019】
成形体12にはその前面に、ディスプレイに対応した透明な窓12bと、操作領域であり照光領域ともなる表示要素12cとが設けられている。
また、
図3の分解断面図で示すように、成形体12は無色で透明の樹脂成形体でなる本体12dで形成されており、その内面12aには、窓12bと表示要素12cとなる部分を除き遮光層12eが設けられ、本体12dの内側に設けた内部光源(図示せず)を点灯すれば、遮光層12eの部分では遮光され、表示要素12cの部分では光が透過して照光可能としている。
成形体12の本体12dを形成する透明な樹脂は、操作パネル11としての耐久性や信頼性を備えており、生産性や加工性の観点から熱可塑性樹脂が好適である。特に成形性が良く高透明なアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート・ABSアロイ樹脂等を用いることが好ましい。
【0020】
遮光層12eは、成形体12の内部の光が外部に漏れることを防ぐものであるため、遮光性の材質で形成される。ブラックアウト仕様とするためには黒色や暗色が好まれるが、白色や金属調色を除外するものではなく、その色味は限定されない。こうした遮光層12eは塗装や印刷によって形成することが好ましい。遮光層12eの形成は、成形体12の内側面に塗装や印刷によって直接的に1層または複数層設けることで形成できるが、透明な樹脂フィルムに遮光層12eを塗装や印刷によって設け、型内にこの樹脂フィルムをインサートして成形体12となる樹脂を射出し、成形体と樹脂フィルムを一体化する方法で形成しても良い。
【0021】
センサシート13の平面図を
図4で示す。
図3や
図4で示すように、センサシート13はセンサシート本体13aに、導電性塗膜でパターニングされたセンサ電極13bと、センサ電極13bを保護する透光性のレジスト層13cとを備え、センサ電極13bの端部からは配線13dが伸長し基板(図示せず)に接続するための端子13eに繋がっている。
センサシート本体13aは、透光性で熱可塑性の樹脂フィルムからなることが好ましい。熱可塑性樹脂であれば、加熱して容易に成形することができるからである。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)などを挙げることができる。
【0022】
センサ電極13bは、導電性物質で形成されるが、導電性高分子を用いて形成することが好ましい。導電性高分子は液状の塗液を形成し印刷形成することができるからである。また、ITO等と比べて安価にセンサ電極13bを得ることができる。
導電性高分子の材質には、透明な層を形成できる種類が用いられ、ポリパラフェニレンまたはポリアセチレン、PEDOT−PSS(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)等が例示できる。
また、導電性高分子を用いないセンサ電極13bの例としては、導電ペーストをメッシュ状にパターニングしたセンサ電極、銀ナノワイヤやカーボンナノチューブを分散した透明導電層からなるセンサ電極とすることもできる。
センサ電極13の層厚は、0.04μm〜1.0μmが好ましく、0.06μm〜0.4μmがさらに好ましい。層厚が0.04μm未満であるとセンサ電極13の抵抗値が高くなるおそれがあり、層厚が1.0μmを超えると透明性が低くなる。
【0023】
配線13dの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、銀またはそれらの金属を含む合金等の高導電性金属を含む導電ペーストや導電インキが好適に挙げられる。また、これらの金属や合金の中でも導電性が高く、銅よりも酸化し難いという理由から銀配線とすることが好ましい。端子13eの先端では配線13dをカーボンインキで覆っている。
【0024】
レジスト層13cとなる樹脂には、硬質の樹脂が選択され、例えば、アクリル系やウレタン系、エポキシ系、ポリオレフィン系の樹脂、その他の樹脂を用いることができ、透明性が求められる場合には透明性のある樹脂が用いられる。
レジスト層13cの厚さは、6μm〜30μm程度であり、好ましくは10μm〜20μmである。その理由は、厚すぎると柔軟性に乏しくなり、薄すぎるとセンサ電極13の保護が不十分となるおそれがあるからである。
【0025】
このセンサシート13には、さらにその上面側に着色透光層14が積層されており、またその裏面側には光拡散層15が積層されている。
着色透光層14は、センサシート13を成形体12に貼り付けた際には、表示要素12cの外観色を構成するものである。そのため、着色透光層14は表示要素12cを内側から覆う必要がある。
図3で示すように、着色透光層14をセンサ電極13bの全体を覆うように設ければ、センサシート13の表面に段差が生じないため、段差に起因する気泡の混入を防ぐことができる。こうして着色透光層14も光拡散層15もセンサシート本体13aのほぼ全体を覆うものとして形成しているが、両層とも少なくともセンサ電極13bや表示要素12cと対応する位置に設けていれば良い。センサ電極13bに対応する成形体12の部位が入力操作部位となり、この入力操作部位が照光部位となる表示要素12cにも対応するからである。
【0026】
着色透光層14は、成形体12内部の内部光源(図示せず)からの光を透過させるため、透光性であることが要求される。また、内部光源を消灯しているときには、成形体12の内部が見えないようにある程度の隠ぺい性も要求され、さらに表示要素12cがその周囲と一体となって目立たなくさせるためには、遮光層12eと略同色であることも要求される。
【0027】
着色透光層14の透光性と隠ぺい性との関係については、分光光度計で測定した波長550nmの光の平行線透過率でみると、10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。20%以上50%以下の範囲では、ブラックアウトの品質と照光の明るさを高いレベルで両立することができるからである。しかしながら、透過率が10%未満の場合には、光を過剰に遮蔽してしまうため、照光輝度が低くなるおそれがある。また、透過率が70%を超えると、隠ぺい性が低下して光拡散層15の凹凸形状が見えるおそれがある。なお、着色透光層14には光拡散性を有する材料にて形成できるが、その場合には前記平行線透過率を全光線透過率で置き換えることができる。
着色透光層14は塗布や印刷で形成することができ、生産性や材料調整の容易さからスクリーン印刷で形成することが好ましい。
【0028】
光拡散層15は、成形体12内部の内部光源と表示要素12cとの間に設けることで、内部光源からの光を屈折や乱反射させ、表示要素12cから均一な光を照光させるように設けたものである。そのため、光拡散層15は、透過率が高く且つ表面に凹凸を備えるものとしている。光拡散層15の透過率は0.5%以上であることが好ましく、2.0%以上であることがより好ましい。透過率が0.5%未満であると光拡散層15自体の色味が強くなり、着色透光層14で隠ぺいし難くなる。透過率が2.0%以上であれば、光拡散層15の色味が目立たず、着色透光層14の透明性を高めてもブラックアウト仕様を容易に満足することができる。透過率の上限としては80%を超えると光拡散性が不十分となり、均一に照光できないおそれがある。なお、光拡散層15の前述の透過率も、分光光度計で測定した波長550nmの光の平行線透過率である。全光線透過率では50%以上であることが好ましい。
光拡散層15は無色であることが特に好ましいが、無色以外では着色透光層14と同系統の色であることが好ましい。
【0029】
光拡散層15の表面の凹凸は、JIS B0601で定められた算術平均表面粗さRaの値が、0.3μm以上であることが好ましい。Raが0.3μm未満の場合には、光拡散性が低く均一に照光しないおそれがあるためである。Ra値の上限については、個々の凹凸の反射面が視認できない程度には細かいことが要求され、この点からRaの値は50μm以下であることが好ましい。
光拡散層15は、塗布や印刷で形成することができ、生産性や材料調整の容易さからスクリーン印刷で形成することが好ましい。粒径が1μm〜100μm程度の透明な充填材を含む塗液を用いることが好ましく、この塗液の塗布や印刷で上記表面粗さを有する凹凸を備えた光拡散層15を形成することができる。また、エンボス加工などを施す方法で光拡散層15を形成しても良い。
【0030】
図5は、成形体12とセンサシート13とを一体化した操作パネル11の断面図である。
図3で示す成形体12とセンサシート13は、
図5で示すように、接着層16を間に挟んで一体化する。接着層16としては、液状接着剤や両面粘着テープを用いることができるが、厚みを均一にし易い両面粘着テープを用いることが好ましい。接着層16は、遮光層12eどうしの間に生じた隙間を埋めるよう形成することが好ましい。
【0031】
図6は、
図5の一点鎖線で囲まれたR部を拡大した部分拡大断面図であり、操作パネル11の積層構成を示す図である。この
図6で示すように、操作パネル11の層構成をまとめると、センサシート13の上面側(操作パネル11の表側)に着色透光層14が設けられ、下面側(操作パネル11の裏側)に光拡散層15が設けられている。
【0032】
内部光源による均一な照光を行わせるため、従来技術を応用して成形体12の内面12aに光拡散層を形成することも考えられるが、センサシート13を利用する本発明では、成形体12の内面12aにセンサシート13を貼着すると、光拡散層の凹凸が埋まり光拡散性が損なわれる。そのため、成形体の内面12aに光拡散層を設けることはできない。しなしながら、センサシート13の下面に光拡散層15を設けることで、光拡散層の凹凸を損なうことなく、また透明性を高めても十分な光拡散効果を発揮することができる。
そして、光拡散層15の透過率が高まるため、着色透光層14の透過率を高めても光拡散層15の色味や外光に起因する光の拡散を隠ぺいすることができる。さらに、光拡散層15の透過性とともに、着色透光層14の透過性をも高めることができるため、明るい照光を行わせることができる。
【0033】
変形例1〜7〔図7〜図13〕:
着色透光層14を設ける部位については、次に説明するような種々の変更形態を採用することができる。
(1)着色透光層14を成形体12に設ける
上記操作パネル11では、着色透光層14をセンサシート13の上面に設けたが、その態様に変えて、成形体12の内面12aに設ける態様とすることができる。
成形体12に着色透光層14を設ける場合には、遮光層12eよりも下面に設けても良いし、上面に設けても良い。
図7には、遮光層12eよりも下面に着色透光層14を設ける場合を示す。この場合には、遮光層12eを設ける部位と設けない部位との境界にできる段差を、着色透光層14で埋めることができ、センサシート13を貼付するときに段差があれば混入しやすい気泡の発生を抑制することができる。
【0034】
図8には、遮光層12eよりも上面に着色透光層14を設ける場合を示す。この場合には、遮光層12eと着色透光層14の色味が僅かに異なった場合でも、着色透光層14が隠ぺい性を有しているため、色味の違いが分かり難いというメリットがある。
【0035】
図9には、成形体12それ自体を着色透光層14とする場合を示す。即ち、上述の例では透明な樹脂成形体でなる成形体12としていたが、所定の透光性、隠ぺい性をもつように着色すれば、成形体12自体を着色透光層14とすることができる。別途着色透光層14を形成する必要がないため、製造工程を少なくしてコストを下げることができる。
【0036】
(2)着色透光層14をセンサシート13に設ける
上述の実施形態で説明した例では、着色透光層14をセンサシート13の上面に設けたが、その態様に変えて、
図10で示すように、センサシート13を構成するレジスト層13cを着色透光層14とすることができる。
即ち、レジスト層13cを所定の透光性、隠ぺい性をもつように着色すれば、レジスト層13cが着色透光層14を兼ねることができ、別途着色透光層14を形成する必要がない。そのため、製造工程を少なくしてコストを下げることができる。
【0037】
別の態様として、
図11で示すように、センサシート13の下面に着色透光層14を設けることができる。この場合には、センサシート本体13aに着色透光層14を積層し、さらに光拡散層15を積層する。
一方、
図12で示すように、センサシート本体13aに光拡散層15、着色透光層14の順に積層することもできる。しかしながら、凹凸面が内部光源側、即ち下面側に露出する必要があるため、この場合は光拡散層15と着色透光層14の2種の層が一つの層として機能し“着色透光拡散層”が生じたものと捉えることができる。
【0038】
(3)着色透光層14を光拡散層15に設ける
図13で示すように、光拡散層15を所定の透光性、隠ぺい性があるように着色して着色透光層14を兼ねるようにすることができる。換言すれば、このような着色透光層14と光拡散層15とが一体となった層である着色透光拡散層を形成しても良い。
図12では別の2つの層で一つの着色透光拡散層を形成したが、ここでは一つの層で着色透光拡散層を形成している。このようにしてもブラックアウト仕様を満足し、明るく照光できる。その理由は次のとおりである。
内部光源からの光は、最初に凹凸面に入射して拡散され、その後に肉厚を通して上面側に至る。そのため、光拡散層15を着色した場合と、別に着色透光層14を設けた場合とで光の吸収に差が生じることがほとんどなく、光の拡散効果と照光の明るさは同様である。また、照光しないときに上面側から表示要素12cを見たときには、光拡散層15の着色された肉厚を介して凹凸を隠ぺいできるからである。
【0039】
その他の変形例〔図14〜図15〕:
上記以外にも種々の変更が可能であり、その一例として、
図14で示すように、透明な成形体12に変えて、遮光性の成形体12を用いても良い。即ち成形体12の本体12dを着色樹脂で形成することができる。こうした形態では、表示要素12cとする部分を貫通させて透孔12fを設ける必要がある。
また別の例として、遮光層12eを成形体12に設ける態様に代えて、センサシート13の表面に設けても良い。
さらに別の例として、成形体12とセンサシート13との一体化は、接着層16を用いる代わりに、センサシート13の型内にインサートして成形体12を射出して成形し一体化することもできる。
【0040】
さらにまた別の例としては、成形体12とセンサシート13を固着せず、成形体12と別に用意した押さえパーツで挟み込むように構成してもよい。
あるいはまた、センサシート本体13aのセンサ電極13b等を設けた面に着色透光層14を設け、その反対面に光拡散層15を設ける態様に代えて、
図15で示すように、センサ電極13b等を設けた面に光拡散層15を設け、その反対面に着色透光層14を設けることもできる。即ち、センサシート本体13aに対して、操作パネル11の上面側にセンサ電極13b等を設ける代わりに、操作パネル11の下面側にセンサ電極13b等を設けることができる。
【0041】
第2実施形態〔図16〕:
本実施形態では、加飾部品としてのオーディオの表示パネル21について説明する。本実施形態の表示パネル21が先の実施形態で説明した操作パネル11と異なるのは、センサシート13を備えず、入力機能を有しない点である。表示パネル21の外観は操作パネル11と同じであり、
図1や
図2と同様に示される。
即ち、表示パネル21はその外形を形成する成形体12を有して構成され、より具体的には、
図16で示すように、表示パネル21は成形体12の内面12aに、表示要素12cと窓12bを形成する部分以外に遮光層12eを設け、さらに表示要素12cの部分を含めて成形体12の内面12aに着色透光層14と光拡散層15とをこの順に積層したものである。
こうした表示パネル21は、成形体12の内部に設けた内部光源(図示せず)を光らせば、表示要素12cが均一に照光し、内部光源を消灯すれば、表示要素12cが背景に溶け込んで見え難い表示要素12cを備えたものとすることができる。
【0042】
変形例〔図17、図18〕:
図17で示すように、着色透光層14の有する所定の透光性、隠ぺい性を光拡散層15が備えることで、光拡散層15と着色透光層14とを一体化することができる。こうした光拡散層15の平行線透過率もまた0.5%〜20%であることが好ましい。
図18で示すように、遮光性の成形体12を用いて良い点も先の実施形態と同様である。また、本実施形態では、センサシート13が無く静電相互作用を無視することができるため、成形体12を金属製材料で形成することもできる。
【0043】
上記実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度において、各部材の形状、材質、製造方法等の変更形態を含むものである。
【実施例】
【0044】
実験例1: 実施形態で示した操作パネル(11)の構成に準じる試料を作製し、視認性と光拡散性とを評価した。視認性に関連して、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−1600」)を使用して透過率を測定した。透過率は波長550nmの測定値を採用した。また、光拡散性に関連して、レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「UK−8510」)を使用して算術平均表面粗さRaを測定した。
【0045】
<試料1A>: 透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに、表示要素(12c)となる部分を除き、黒色で遮光性のポリエステル系インキで遮光層(12e)を印刷した。次いで、これを型内にインサートして、透明なポリカーボネート樹脂を射出成形した。こうしてポリカーボネート樹脂からなる成形体(12)の表面に遮光層(12e)を設けた。
そうした一方で、別の透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方面に、銀インキで配線(13d)を、透明導電性インキでセンサ電極(13b)を、透明なポリウレタン系インキでレジスト層(13c)をこの順で塗布形成した。そしてさらにその表面に凹凸形成のためのフィラーとして粒径2μmのシリカを含むポリエステル系インキで光拡散層(15)を印刷形成した。また、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの他方面には黒色透明のポリエステル系インキで着色透光層(14)を印刷形成した。こうしてセンサシート(13)を作製した。
【0046】
なお、着色透光層(14)は、それ自体の層厚は6μmで透過率50%であった。また、光拡散層(15)は、透過率4.0%で、表面の算術表面粗さRaは0.63μmであった。
このセンサシート(13)について、着色透光層(14)を設けた面に透明な両面粘着テープを貼り付けて成形体12に貼付して
図15で示す構成の試料1Aを得た。
【0047】
<試料1B>: 試料1Aと同様の構成で成形体(12)とセンサシート(13)とを作製した。このようにして得たセンサシート(13)について、試料1Aとは反対に、光拡散層(15)を設けた面に両面粘着テープを貼り付けて成形体(12)に貼着した。こうして
図19で示す構成の試料1Bを得た。
この試料の裏面を構成する着色透光層(14)の算術表面粗さRaは0.23μmであった。
【0048】
<試料2A>: センサシート本体(13a)のレジスト層(13c)を設けた側とは反対の表面に光拡散層(15)を形成し、さらにその上に着色透光層(14)を形成した。それ以外は試料1Aと同様にして
図20で示す構成の試料2Aを得た。
試料2Aの裏面であるセンサシート本体(13a)のレジスト層(13c)表面の算術表面粗さRaは0.21μmであった。
【0049】
<試料2B>: センサシート本体(13a)の着色透光層(14)を設けた面とは反対面に対して両面粘着テープで成形体12に貼着した以外は試料2Aと同様にして
図21で示す構成の試料2Bを得た。
また、試料2Bの裏面である着色透光層(14)の表面の算術表面粗さRaは0.34μmであった。
【0050】
<試料3A>: センサシート本体(13a)のレジスト層(13c)を設けた側とは反対の表面に着色透光層(14)を形成し、さらにその上に光拡散層(15)を形成した。そして、レジスト層(13c)を設けた面を成形体(13)に貼着した以外は試料1Aと同様にして
図11で示す構成の試料3Aを得た。試料3Aの裏面である光拡散層(15)表面の算術表面粗さRaは0.46μmであった。
【0051】
<試料3B>: センサシート本体(13a)のレジスト層(13c)を設けた面とは反対面を両面粘着テープで成形体12に貼着した以外は試料3Aと同様にして
図22で示す構成の試料3Bを得た。試料3Bの裏面であるレジスト層(13c)表面の算術表面粗さRaは0.21μmであった。
【0052】
<試料4A>: センサシート本体(13a)のレジスト層(13c)を設けた側とは反対の表面に着色透光層(14)と光拡散層(15)とを兼ねる着色透光拡散層を形成した。この着色透光拡散層には、凹凸形成のためのフィラーとして粒径2μmのシリカを含むポリエステル系インキを主体に、乾燥塗膜の透過率が約2.0%になるように黒色顔料を添加量を調整して構成した。それ以外は試料1Aと同様にして
図23で示す構成の試料4Aを得た。試料4Aの裏面であるレジスト層(13c)表面の算術表面粗さRaは0.21μmであった。
【0053】
<試料4B>: センサシート本体(13a)のレジスト層(13c)を設けた面を両面粘着テープで成形体12に貼着した以外は試料4Aと同様にして
図24で示す構成の試料4Bを得た。試料4Bの裏面である着色透光拡散層表面の算術表面粗さRaは0.58μmであった。
【0054】
<試料5A、5B>: 着色透光層(14)を形成せず、また光拡散層(15)を成形体(12)に貼着した以外は試料1Aと同様にして
図25で示す構成の試料5Aを作製した。
また、着色透光層(14)を形成せず、また光拡散層(15)を設けた側とは反対側を成形体(12)に貼着した以外は試料1Aと同様にして
図26で示す構成の試料5Bを作製した。
【0055】
<試料6A、6B>: 光拡散層(15)を形成しなかった以外は試料1Aと同様にして
図27で示す構成の試料6Aを作製した。
また、光拡散層(15)を形成せず、着色透光層(14)を設けた側とは反対側を成形体(12)に貼着した以外は試料1Aと同様にして
図28で示す構成の試料6Bを作製した。
【0056】
このようにして作製した試料1Aから試料6Bについて、その層構成を一覧表にして
図29に示す(但し、
図29ではセンサ電極やレジスト層については省略した)。また、この一覧表には、後述する視認性と光拡散性の評価結果も併せて示す。
【0057】
<視認性の評価>: 測定に用いた実験器具の概略を
図30に示す。各試料(30)を遮光性の材質でなる箱状の測定治具(31)に置き、上面側から蛍光灯(外部光源(32))で照らしたときの表示要素(12c)の視認し難さを5段階で評価した。具体的には、表示要素(12c)が背景に溶け込んで視認できなかったものを“5”、光の角度等によって僅かに視認できるが、ほとんど視認できなかったものを“4”、視認し難かったものを“3”、容易に視認できたものを“2”、表示要素(12c)が特に視認し易かったものを“1”とした。
【0058】
試料6A、6Bについて“5”であった。これらの試料は光拡散層(15)を有していないため、表示要素(12c)から光拡散層(15)が見えるという不都合が生じなかったものと考えられる。
試料1A、2A、3A、4A、4Bの評価は“4”であった。これらの試料についても、表示要素(12c)はほとんど視認できず、良好な結果であった。この中で試料4Aおよび4Bを除くものは着色透光層(14)が光拡散層(15)よりも上面に位置するものであった。このことから、着色透光層(14)が光拡散層(15)を隠ぺいする構成であれば表示要素(12c)が背景から浮き出ることがないものと思われる。また、試料4A、4Bについても、光拡散層(15)自体が着色されていることから、表示要素における上面からの入射光での光の拡散を抑制したものと思われる。
【0059】
試料1B、2B、3B、5Aの評価結果は“3”であった。これらの試料は、表示要素(12c)がわずかに浮き出て見えていたものの視認し難く“4”との差はわずかであった。試料5Aを除いた試料は共通して光拡散層(15)が着色透光層(14)よりも上面に位置するため、その隠ぺい効果を奏することができなかったものと思われる。しかし、試料1Bと3Bについては、光拡散層(15)の表面と成形体(12)とが両面粘着テープで貼付されており、光拡散層(15)の凹凸に粘着剤が侵入して光拡散効果が失われている様子が見えた。試料5Aについても同様であった。一方、試料2Bについては、光拡散層(15)の凹凸面に着色透光層(14)が積層しているが、この試料もまた上面からの光を拡散する効果は抑制されているように見えた。各試料の光拡散層(15)は透過率が4.0%と高いため、前記のように拡散反射が抑えられたこれらの試料では、表示要素(12c)は見え難かったものと思われる。
試料5Bの評価は“1”であった。この試料は、光拡散層(15)が上面からの光を反射する様子が見え、表示要素(12c)を視認できた。
【0060】
<光拡散性の評価>: 視認性の評価で用いた測定治具(31)を用い、その内部に配置したLED(内部光源(33))を照光し、上面から観察したときの表示要素(12c)の照光の均一性を評価した。特に点光源であるLEDの外形がわからない程度に光を拡散していたものを“5”、光拡散効果がまったくないものを“1”として、全試料を相対的に5段階に分けた。
試料1Aおよび5Bは、評価が“5”であった。これらの試料は、試料の裏面に光拡散層(15)が露出しており、且つ算術平均表面粗さRaが0.63μmと、他の試料と比較して大きな値だった。そのため、良好な光拡散性を示したものと思われる。
試料3Aおよび4Bは、評価が“4”であった。試料3Aは、裏面に光拡散層(15)が露出しており、算術平均表面粗さRaが0.46μmであった。一方、試料4Bは、裏面に着色透光拡散層(15)が露出しており、その算術平均表面粗さRaは0.58μmであった。試料1Aと比較して、Ra値は若干低いものの、裏面の凹凸により十分な光拡散効果を得ることができたものと思われる。
【0061】
次に、試料2Bの評価結果が“3”であった。試料2Bの裏面は光拡散層(15)に着色透光層(14)が積層した構成であり、光拡散層(15)は露出していない。しかし、着色透光層(14)は光拡散層(15)の凹凸を埋めることはなく、算術平均表面粗さRaは0.34μmであった。また、着色透光層(14)の透過率も50%と比較的高かったこともあり、一定の光拡散効果が得られていた。
試料1B、2A、4A、5Aは、評価が“2”であった。これらの試料は共通して、センサシート(13)の上面に光拡散層(15)が配置されており、その表面と成形体(12)とが両面粘着テープで貼付されている点である。実際に、これらの試料の光拡散層(15)の凹凸は帳面粘着テープで埋まってしまっており、光拡散効果はほとんど失われていた。また、裏面を構成するレジスト層(13c)表面の算術表面粗さRaは0.21μmであり、その表面における拡散効果は確認できなかった。
光拡散層(15)を有しない試料6A、6Bについては、光拡散効果がなく評価が“1”であった。
【0062】
上記結果より、光拡散性は算術平均粗さの大きさと相関があるように見えた。特に算術平均粗さが0.21μmの試料で評価が“2”であるのに対して、0.34μmである試料2Bでは一定の光拡散効果が見られたことから、算術平均表面粗さの値は概ね0.30μm以上であることが好ましいものと思われる。
こららの視認性の評価と、光拡散性の評価とを考慮すると、試料1Aが高レベルに両者の特性を両立しており、次いで試料3A、4Bが良い結果であった。また、評価が共に3以上であった試料2Bも及第点と言える。他の試料については、何れか一方が2点以下であり、要求を満足するものではなかった。
【0063】
実験例2: ブラックアウトの程度と、照光時の明るさの程度に対する着色透光層(14)の透過率の影響について調べる実験を行った。
実験例2で用いる試料は次のように作製した。透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(ベースシート13a)に、
図31で示す種々の透過率になるようにそれぞれ調製した光拡散性を有していない黒色のポリエステル系インキを印刷した。透過率の程度はメジウム(透明)色と黒色のインキの混合割合によって調整した。次に、この着色透光層(14)の上にさらに光拡散層(15)を印刷した。光拡散層(15)としては2種類用意し、凹凸形成のためのフィラーとして粒径2μmのシリカを含む実験例1で用いたのと同じポリエステル系インキを用いて光拡散層(A)とした。また、比較用として白色インキを用いて光拡散層(B)とした。光拡散層(A)単独の透過率は4.0%、光拡散層(B)単独の透過率は0.3%であった。そして、これらの積層フィルムを実験例1と同様の成形体(12)に両面テープで貼着することで、評価用の各試料を得た。そして、以下に説明する視認性の評価と、照光の明るさの評価とともに、
図31、
図32に示した。
【0064】
<視認性の評価>: 視認性の評価基準は実験例1と同様とした。光拡散層(A)との組合せにおいて、着色透光層(14)の透過率が70%以下であれば表示要素(12c)を視認し難くでき、特に50%以下あればほぼ視認できず良好な結果であった。一方、光拡散層(B)を用いた試料では、着色透光層(14)の透過率が3%であっても、下地の白色が浮き出てしまい、表示要素(12c)が視認しやすいという結果であった。
【0065】
<明るさの評価>: 照光の明るさについては、充分な明るさを有していたものを“○”、やや明るかったものを“△”、暗く見えたものを“×”とした。光拡散層(A)との組合せにおいては、着色透光層(14)の透過率が10%以上で充分な明るさであった。また、着色透光層(14)の透過率が20%以上であれば、着色透光層(14)による輝度の低下も僅かであった。対して光拡散層(B)との組合せにおいては、着色透光層(14)の透過率が35%のときに光拡散層(A)の10%のときの明るさとほぼ同等の明るさであった。なお、光拡散層(A)と光拡散層(B)において、光拡散層(A)を用いた試料の方が均一な照光であり、光拡散層(A)の方が光拡散性に優れていた。
【0066】
以上のことから、光拡散層(A)においては、着色透光層(14)の透過率が10%以上70%以下で、照光時には均一な明るい照光が可能でありながら、非照光時には表示要素(12c)が背景に溶け込んで見え難い構成であった。また、着色透光層(14)の透過率が20%以上50%以下の範囲で、特に非照光時には表示要素(12c)の視認し難くさと照光時の明るさとを高いレベルで両立していた。一方、光拡散層(B)では、非照光時には表示要素(12c)の視認し難くさと照光時の明るさの両方を満足する構成は得られなかった。