特許第6618097号(P6618097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618097
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】食用酵素組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/30 20060101AFI20191202BHJP
   C12N 9/34 20060101ALI20191202BHJP
   C12N 9/62 20060101ALI20191202BHJP
   A23L 33/195 20160101ALI20191202BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20191202BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   C12N9/30
   C12N9/34
   C12N9/62
   A23L33/195
   C12N9/14
   C12N9/00 101
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-74294(P2019-74294)
(22)【出願日】2019年4月9日
(65)【公開番号】特開2019-180407(P2019-180407A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2018-75155(P2018-75155)
(32)【優先日】2018年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513140503
【氏名又は名称】株式会社イノス
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
【審査官】 伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−149667(JP,A)
【文献】 特開2007−319167(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/034670(WO,A1)
【文献】 特開2005−295871(JP,A)
【文献】 野田喜久雄ほか,醸造の事典,1988年11月10日,p.209-210
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00−9/99
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を生産する、食用酵素組成物の製造方法であり、
(i)調整液体培地に、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分と、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹と、を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン添加しない、工程と、
(ii)前記第一の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
(iii)前記第一の通気培養を行った前記調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(iv)前記第二の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
を含み、
前培養工程を含まない、
食用酵素組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一の麹が、前記調整液体培地の容積の2%〜15%の量で添加され、かつ、前記第二の麹が、前記調整液体培地の容積の1%〜10%の量で添加される、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一及び第二の麹が、前記調整液体培地において炭素分となる、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第一及び第二の麹が、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤの少なくとも1つから選定される麹菌により生産される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記酵素が、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、及びプロテアーゼの少なくとも1つである、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
(i)請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた前記食用酵素組成物を培養液として用い、前記培養液を濾過することにより濾過液を得る工程と、
(ii)前記濾過液に溶媒を添加して、沈殿物を得る工程と、
(iii)前記沈殿物から固形分を取り出し、前記固形分を乾燥させる工程と、
を含む食用酵素組成物の製造方法。
【請求項7】
(i)請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた前記食用酵素組成物を培養液として用い、前記培養液を濾過することにより濾過液を得る工程と、
(ii)前記濾過液に、乳製品由来成分、肉類由来成分、豆類由来成分、穀類由来成分、芋類由来成分、及び果実由来成分からなる群より選ばれる少なくとも1つを、添加成分として添加して、添加成分含有液を得る工程と、
(iii)前記添加成分含有液を冷却して、沈殿物を得る工程と、
(iv)前記沈殿物から固形分を取り出し、前記固形分を乾燥させる工程と、
を含む食用酵素組成物の製造方法。
【請求項8】
前記豆類由来成分が、おから、豆乳、及びきな粉からなる群より選ばれる少なくとも1つである、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記添加成分が、前記濾過液の容積の2%〜20%の量で添加される、
請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記食用酵素組成物が、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、及びプロテアーゼからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法あって、
前記食用酵素組成物の酸性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであり、かつ、
前記食用酵素組成物の中性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gである、
製造方法
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記食用酵素組成物が、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、及びビタミンEからなる群より選ばれる1種以上を含む、
製造方法
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記食用酵素組成物は、タンパク質を分解する作用を有する、
製造方法
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記食用酵素組成物は、グルテンを分解する作用を有する、
製造方法
【請求項15】
請求項〜14のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記食用酵素組成物は、粉末状である、
製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用酵素組成物の製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
麹菌に各種酵素を分泌生産させるための培養方法には、蒸煮等の処理後の原料に麹菌を接種して培養する固体培養方法と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調整し、その後に前培養した麹菌を調整した液体培地に接種し培養する液体培養方法がある。固体培養方法は、多種類の酵素を大量に大規模生産できる培養方法として確立されているが、製造設備の大型化及び温度や湿度の安定的な運転管理の困難性という問題がある。これに対し、液体培養方法は、培養制御や品質管理が容易であるとされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、麹菌の難分解性糖質である難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等を含有する液体培地を用いた麹菌の培養方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、麹菌を該麹菌の難分解性糖質である難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等を含有する液体培地を用いた培養方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−295871号公報
【特許文献2】特許第4087624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の方法では、十分な量の酵素を分泌生産させるために、予め麹菌の菌数を増やす目的で本培養に先立ち前培養を行うことが必要となり、長時間の培養を行う必要があるといった問題がある。
【0007】
さらに、培地中のデンプンは、麹菌により生産されるアミラーゼにより分解、糖化されてしまい、それに伴い培地中のアミラーゼも消費されてしまうため、培地中のアミラーゼの生産性が低下するといった問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要としない食用酵素組成物の製造方法、並びに、食用酵素組成物、タンパク質分解食用酵素組成物、グルテン分解食用酵素組成物、酵素粉末、タンパク質吸収補助食品、及びグルテン吸収補助食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0010】
本発明の第一の態様は、食用酵素組成物の製造方法であり、
酵素を生産する、食用酵素組成物の製造方法であり、
(i)調整液体培地に、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分と、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹と、を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(ii)第一の麹を含有する調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
(iii)第一の通気培養を行った調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(iV)第二の麹を含有する調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
を含み、前培養工程を含まない、食用酵素組成物の製造方法である。
【0011】
本発明の第二の態様は、上述の製造方法によって得られる食用酵素組成物であって、
酸性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであり、かつ、
中性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gである、食用酵素組成物である。
【0012】
本発明の第三の態様は、上述の組成物であって、タンパク質を分解する作用を有する、タンパク質分解食用酵素組成物である。
【0013】
本発明の第四の態様は、上述の組成物であって、グルテンを分解する作用を有する、グルテン分解食用酵素組成物である。
【0014】
本発明の第五の態様は、上述の組成物であって、粉末状である、酵素粉末である。
【0015】
本発明の第六の態様は、タンパク質と、上述の組成物と、を含む、タンパク質吸収補助食品である。
【0016】
本発明の第七の態様は、デンプン質と、上述の組成物と、を含む、デンプン質吸収補助食品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要としない食用酵素組成物の製造方法、並びに、食用酵素組成物、タンパク質分解食用酵素組成物、グルテン分解食用酵素組成物、酵素粉末、タンパク質吸収補助食品、及びグルテン吸収補助食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0019】
<食用酵素組成物の製造方法1>
本実施形態に係る製造方法は、食用酵素組成物の製造方法であり、
(i)調整液体培地に、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分と、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹と、を添加する工程と、
(ii)第一の麹を含有する調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
(iii)第一の通気培養を行った調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加する工程と、
(iV)第二の麹を含有する調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、を含むものである。
【0020】
そして、本実施形態に係る製造方法によれば、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要としない。
【0021】
さらに、本実施形態に係る製造方法によれば、第一及び第二の通気培養において、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランといった難消化性糖質を液体培地等に添加せずとも、酵素を生産させる食用酵素組成物を製造することができる。
【0022】
従来、デンプン等を難消化性の物質、例えば難消化性のデンプン質、玄米、粟、稗、又はアマランサス等に置き換えなければならないといった制限があるが、本実施形態に係る製造方法は、必ずしもこのような難分解性物質を積極的に添加せずとも、炭素分として難消化性糖質の代わりに穀類麹や芋麹を用いることができる。その結果、酵素類を生産性高く製造することができ、これにより得られる食用酵素組成物は、高い酵素活性を有する。ここで、本実施形態における、「難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない」とは、地下茎デンプン類や穀類に由来する成分や第一及び第二の麹以外の成分として、これらを積極的に添加しないことをいう。すなわち、上記成分(地下茎デンプン類及び穀類由来の成分)並びに第一及び第二の麹以外の、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しないことをいう。そして、本実施形態では、第一及び第二の培養工程で、かかる難消化性糖質を積極的に添加しなければよく、以降の工程において別途新たに難消化性糖質を添加することは許容される。
【0023】
以下、本実施形態に係る製造方法の各要素について説明する。
【0024】
(穀類麹・芋麹)
本実施形態で用いる穀類麹や芋麹は、例えば、以下の(i)〜(V)の工程により得られる。
(i)穀類又は芋類を数個に分割(例えば、2分割〜4分割)すること、又は破砕すること。
(ii)穀類又は芋類を常温水に約12時間〜約48時間(冬季であれば、約48時間)浸漬し、その後約1時間水切りをすること。
(iii)水切りをした穀類又は芋類を後蒸しすることにより柔らかくし、その後に約20℃〜約40℃まで放冷すること。
(iV)放冷した穀類又は芋類に麹菌アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤの少なくとも1つから選定される麹菌を散布すること。
(V)麹菌を散布した穀類又は芋類を、約48時間〜約72時間、温度が40℃以下に管理された麹室内に静置し、その後に出麹すること。
【0025】
本実施形態で用いる穀類麹や芋麹は、(i)〜(V)の工程以外の方法で製造されたものであってもよいし、商業的に入手可能なものでもよい。
【0026】
本実施形態で用いる穀類麹としては、玄米麹、大豆麹、米糠麹、粟麹、及び稗麹等が挙げられる。穀類麹は、既に穀類中で麹菌を増殖させた状態にあるので、当該方法では、このような穀類麹を調整液体培地に添加することにより、前培養を行わずに酵素を生産させることが可能となる。
【0027】
本実施形態で用いる芋麹としては、酵素活性の観点から、薩摩芋麹(例えば、紅赤麹、紅あずま芋麹、紅はるか芋麹等)が好ましく、その中でも、紅赤麹、紅あずま麹がより好ましい。芋麹は、既に芋中で麹菌を増殖させた状態にあるので、当該方法では、このような芋麹を調整液体培地に添加することにより、前培養を行わずに酵素を生産させることが可能となる。
【0028】
本実施形態における麹菌は、菌糸の先端からデンプンやタンパク質等を分解する様々な酵素を生産・放出する。生産・放出された酵素は、培地中の炭素分を分解してグルコースやアミノ酸を生産する。麹菌は、ここで生産されたグルコースやアミノ酸を栄養源として増殖する。本実施形態にかかる麹菌は、アスペルギルス属に分類される不完全菌の一群であり、これらに限定されないが、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤ等が挙げられる。特に好ましい麹菌は、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、又はアスペルギルス・ニガーである。
【0029】
(調整液体培地)
本実施形態における調整液体培地は、例えば、ポリペプトン(登録商標)、酵母エキスパウダー、シクロース、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄七水和物、及び水等の麹菌の繁殖に有効な成分を含んで成る濃縮培地組成に調整水等を加えることにより、培地中のpHが3〜6(より好ましくはpHが4〜5)になるように調整した培地であることが好ましい。
【0030】
ポリペプトン(登録商標)は、日本製薬株式会社から販売されている大豆生成物を原料とする培養基材であり、植物性タンパク質の分解物を供給するために培地に添加される。これに限らず、他の植物由来又は動物由来のペプトン等も使用され得る。
【0031】
酵素エキスパウダーは、酵母の自己消化物で、アミノ酸等を供給するために培地に添加される。これに限らず、他の植物由来又は動物由来のエキス等も使用され得る。
【0032】
シクロースは、糖質を供給するために培地に添加される。
【0033】
硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸鉄七水和物は、ミネラル等を供給するために培地に添加される。これらに限らず、他の無機塩等のミネラル源も使用され得る。
【0034】
例えば、20L用の調整液体培地は、表1に示す濃縮培地組成を、表2に示す調整液によりpH4.4に調整したものである。各成分の量、割合は、培養を阻害しない範囲で、適宜変更することができる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
本実施形態における調整液体培地は、上記以外の組成であってもよく、例えば一般的に麹菌の培養に用いられるCzapek−Dox(CD)培地等も使用され得る。
【0038】
本実施形態における調整液体培地は、あらかじめ80℃〜95℃で、10分間〜40分間、好ましくは15分間〜35分間、より好ましくは20分間〜30分間加熱滅菌され、その後20℃〜50℃、好ましくは25℃〜45℃、より好ましくは30℃〜40℃に冷却されたものであり得る。
【0039】
(通気培養)
本実施形態に係る製造方法では、第一の通気培養と第二の通気培養とを少なくとも行う。第一の通気培養では、第一の麹を用い、第二の通気培養では、第二の麹を用いる。本実施形態における通気培養とは、撹拌を伴う培養である。これによって、空気を麹菌に与えることができる。
【0040】
第一の通気培養では、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分を添加するが、その種類は限定されない。例えば、原料となる地下茎デンプン類としては、芋類(例えば、紅赤芋、紅東芋、小金千貫芋等の薩摩芋、ジャガ芋等)、ニンジン、大根、レンコン等が挙げられる。原料となる穀類としては、米、麦、稗、粟等が挙げられる。これらの中でも、芋類が好ましく、薩摩芋がより好ましい。そして、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分は、例えば、濃縮培地や調整液体培地等の培地の含有成分として配合・使用させることができる。さらに、この成分は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等の難消化性糖質でないことが好ましい。これらを第一及び第二の麹と併用することで、酵素を効率よく増殖させ、酵素組成物としての酵素活性を一層向上させることができる。さらにまた、必要に応じて、第二の通気培養等においても、これらを追加してもよい。
【0041】
第一及び第二の麹の麹菌の種類は、特に限定されないが、アスペルギルス属に分類される麹菌により作られたものを用いることができる。本実施形態における麹菌は、これらに限定されないが、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアスペルギルス・ソーヤからなる群より選ばれる少なくとも1つの麹菌であることが好ましい。これらの中でも、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、及びアスペルギルス・ニガーからなる群より選ばれる少なくとも1つの菌類であることがより好ましい。
【0042】
第一及び第二の麹は、それぞれ玄米麹、大豆麹、米糠麹、粟麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つから選定され得る。そして、第二の麹は、第一の麹と異なる種類であることが好ましい。第一及び第二の麹の組み合わせは、特に限定されないが、第一の麹及び第二の麹の少なくともいずれかに大豆麹を用いることが好ましく、第一の麹は玄米麹、米糠麹、粟麹、稗麹、及び芋麹等の少なくとも1つから選定され、かつ、第二の麹は大豆麹であることがより好ましい。
【0043】
第一及び第二の麹は、それ自体が調整液体培地において炭素分となるので、難消化性糖質等を炭素分として使用せずとも、酵素を生産させることができる。また、本実施形態により得られる培養液には、アミラーゼやプロテアーゼをはじめとする多くの種類の酵素、特にα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、及びプロテアーゼ等が多く含まれる。
【0044】
本実施形態における第一の麹の添加量は、特に限定されないが、調整液体培地の容積の2%〜15%であることが好ましく、3%〜12%であることがより好ましく、5%〜10%であることが更に好ましい。
【0045】
本実施形態における第二の麹の添加量は、特に限定されないが、調整液体培地の容積の1%〜10%であることが好ましく、2%〜8%であることがより好ましく、3%〜5%であることが更に好ましい。
【0046】
第一の通気培養を行う時間は、麹菌の繁殖状況に応じて、10時間〜80時間であり、好ましくは24時間〜60時間であり、より好ましくは24時間〜54時間であり、更に好ましくは24時間〜48時間である。そして、第二の通気培養を行う時間は、麹菌の繁殖状況に応じて、10時間〜30時間であり、好ましくは12時間〜30時間であり、より好ましくは12時間〜27時間、更に好ましくは12時間〜24時間である。
【0047】
第一の通気培養の温度は、8℃〜50℃であり、好ましくは20℃〜40℃であり、より好ましくは25℃〜40℃であり、更に好ましくは30℃〜40℃である。そして、第二の通気培養の温度は、8〜45℃であり、好ましくは10℃〜40℃であり、より好ましくは15℃〜35℃であり、更に好ましくは20℃〜30℃である。例えば、大豆麹を用いる場合、雑菌に侵されないようにする観点等から、比較的低温領域で行うことが好ましく、培養温度の上限を40℃以下とすることが好ましく、30℃以下とすることがより好ましい。
【0048】
本実施形態に係る製造方法により得られる食用酵素組成物の状態は、特に限定されず、培養液等を含んだ液体(酵素含有液体)であってもよいし、液体成分を除去・留去して、固形状、半固形状、粉末状(パウダー(状)や顆粒(状)等と呼ばれることもある。)等としてもよい。食用酵素組成物は、その用途等を考慮して、それに適した状態とすることができる。
【0049】
<食用酵素組成物の製造方法2>
上述した製造方法1により得られた食用酵素組成物が培養液である場合、この培養液から、固形状の酵素成分を食用酵素組成物として取り出すこともできる。ここでいう固形状とは、固体、半固体、粉末等のものを包含する。また、特に断りがない限り、上述した製造方法の条件を採用することができる。かかる製造方法の好適例としては、
(i)上述した製造方法により得られた食用酵素組成物を培養液として用い、この培養液を濾過することにより濾過液を得る工程と、
(ii)濾過液に溶媒を添加して、沈殿物を得る工程と、
(iii)沈殿物から固形分を取り出し、固形分を乾燥させる工程と、
を含む製造方法が挙げられる。
【0050】
かかる製造方法では、溶媒沈殿法によって固形分を取り出すことができる。使用する溶媒や沈殿条件等は、特に限定されず、用途に応じて適宜好適なものを選択することができる。溶媒としては、例えば、エチルアルコール等のアルコール類や、アセトン等の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、エチルアルコールを用いることが好ましい。
【0051】
そして、沈殿物から固形分を取り出す方法は、例えば、精密濾過、限外濾過等を採用することができ、これらを併用してもよい。その結果、必要に応じて、乾燥や溶媒留去等を行うことで、酵素粉末等として得ることができる。
【0052】
溶媒沈殿法としてエチルアルコールを用いて、酵素粉末を得る場合の具体例としては、例えば、以下の方法を行うことができる。
【0053】
(ア)上述した製造方法により生産された酵素組成物を培養液として用い、この培養液を濾布濾過することにより濾布濾過液を得る工程と、
(イ)濾布濾過液を精密濾過することにより精密濾過液を得る工程と、
(ウ)精密濾過液を限外濾過することにより濃縮液を得る工程と、
(エ)濃縮液にエチルアルコールを添加して撹拌する工程と、
(オ)撹拌したエチルアルコールと濃縮液の混合液を冷却することにより沈殿物を得る工程と、
(カ)冷却した混合液から沈殿物を単離する工程と、
(キ)単離した沈殿物を遠心分離にかけることにより固形分を得る工程と、
(ク)固形分を乾燥させることにより粉末を得る工程と、
を含む製造方法が挙げられる。
【0054】
培養液は、100メッシュ〜400メッシュ、好ましくは150メッシュ〜350メッシュ、より好ましくは200メッシュ〜300メッシュの濾布を用いて濾過されることにより濾布濾過液が得られる。濾布濾過液は、その後に内部温度が4℃〜14℃、好ましくは6℃〜12℃、より好ましくは8℃〜10℃に設定された沈澱タンクに入れられる。
【0055】
濾布濾過液を入れた沈澱タンクは、澱下げ剤等を使用せずに冷蔵庫内で12時間〜60時間、好ましくは18時間〜54時間、より好ましくは24時間〜48時間静置されることにより澱下げされる。冷蔵庫内で澱下げされた濾布濾過液は、精密濾過されることにより精密濾過液が得られる。さらに精密濾過液は、限外濾過されることにより濃縮液が得られる。限外濾過では、濃縮液が精密濾過液の容積の5分の1〜25分の1、好ましくは8分の1〜20分の1、より好ましくは10分の1〜15分の1の量になるまで濃縮され、また限外濾過では、液温は15℃以下、好ましくは12℃以下、より好ましくは10℃以下に設定される。限外濾過で濃縮された濃縮液は、エチルアルコールとともに殺菌タンクに入れられ穏やかに撹拌される。
【0056】
ここで、エチルアルコールは、殺菌タンク内のエチルアルコールの濃度が少なくとも70%以上(例えば、75%)になるように殺菌タンクに入れられる。その後殺菌タンク内のエチルアルコールと濃縮液の混合液は、冷蔵庫内で12時間〜60時間、好ましくは18〜54時間、より好ましくは24〜48時間静置される。このとき殺菌タンク内では、エチルアルコールと濃縮液の混合液中の酵素、タンパク質、又はその他物質が結晶化して沈澱する。その後に沈殿物は、エチルアルコールと濃縮液の混合液から分離される。
【0057】
分離された沈殿物は、2000回転〜4500回転、好ましくは2500回転〜4000回転、より好ましくは3000回転〜3500回転で、3分間〜20分間、好ましくは5分間〜15分間、より好ましくは7分間〜10分間遠心分離にかけられることにより酵素を含む層とエチルアルコールを含む上澄み層とに分離される。エチルアルコールを含む上澄み層が酵素を含む層から除去されることにより固形分が得られる。ここで得られた固形分は乾燥機内で常温乾燥され、さらに粉砕されることにより酵素含有粉末が得られる。
【0058】
<食用酵素組成物の製造方法3>
さらに、本実施形態によれば、上述した製造方法1により得られた食用酵素組成物を培養液として用い、この培養液に、例えば豆類由来成分等を添加した食用酵素組成物を得ることができる。かかる食用酵素組成物の好適な製造方法としては、
(i)上述の製造方法において得られた食用酵素組成物を培養液として用い、この培養液を濾過することにより濾過液を得る工程と、
(ii)濾過液に、乳製品由来成分、肉類由来成分、豆類由来成分、穀類由来成分、芋類由来成分、及び果実由来成分からなる群より選ばれる少なくとも1つを、添加成分として添加して、添加成分含有液を得る工程と、
(iii)添加成分含有液を冷却して、沈殿物を得る工程と、
(iV)沈殿物から固形分を取り出し、固形分を乾燥させる工程と、
を含む製造方法が挙げられる。
【0059】
かかる製造方法では、栄養源として、乳製品由来成分、肉類由来成分、豆類由来成分、穀類由来成分、果実由来成分を用いることができる。これらは、乳製品(例えば、牛乳、チーズ、バター等)、肉類(例えば、豚肉、鶏肉、牛肉等)、豆類(例えば、大豆、小豆、インゲン豆、落花生等)、穀類(例えば、米、大麦や小麦等の麦類、トウモロコシ、ソバ等)、芋類(例えば、紅赤芋、紅東芋、小金千貫芋等の薩摩芋、ジャガ芋等)、果実類等が挙げられ、これらは、天然物そのものでもよいし、加工品であってもよい。また、上述した各成分の形態は、特に限定されず、液体、固体等であってもよい。これらの中でも、豆類由来成分が好ましく、大豆由来成分がより好ましい。
【0060】
例えば、大豆由来成分として大豆由来粉末を用いる場合、以下の工程によって製造することが挙げられる。
(a)上述した精密濾過液に大豆由来粉末を添加して撹拌することにより大豆由来粉末添加液を得る工程。
(b)大豆由来粉末添加液を冷却することにより沈殿物を得る工程。
(c)沈殿物から上澄み液を除去する工程。
(d)上澄み液を除去した沈殿物を遠心分離にかけることにより固形分を得る工程。
(e)固形分を乾燥させることにより粉末を得る工程。
【0061】
本実施形態で用いる大豆由来粉末としては、例えば、大豆、豆乳、又は豆腐を作るときの副産物として製造されるおから等を乾燥させて、さらに細かい粉状にしたものを用いることができる。本実施形態で用いる大豆由来粉末は、これらに限定されず、例えば、おからパウダー、豆乳パウダー、及びきな粉等であってもよい。
【0062】
本実施形態で用いる大豆由来粉末添加液は、大豆由来粉末が精密濾過液の容積の2%〜20%、好ましくは3%〜15%、より好ましくは5%〜10%の量で精密濾過液へ添加されることにより得られる。得られた大豆由来粉末添加液は、冷蔵庫内で3時間〜40時間、好ましくは6時間〜30時間、さらに好ましくは12時間〜24時間静置されることにより沈殿物が得られる。精密濾過液中に含まれる酵素等は、この間に大豆由来粉末に吸着され得る。
【0063】
得られた沈殿物から上澄み液が除去されることにより、ウェットな状態にある沈殿物が得られる。上澄み液が除去された沈殿物は、2000回転〜4500回転、好ましくは2500回転〜4000回転、より好ましくは3000回転〜3500回転で、1分〜10分、好ましくは2分〜8分、より好ましくは3分〜7分間遠心分離にかけられて脱水される。その後に半乾燥状態にある沈殿物は、乾燥機内で常温乾燥されて、さらに粉砕されることにより酵素含有粉末が得られる。
【0064】
<食用酵素組成物>
このようにして得られる、本実施形態に係る食用酵素組成物は、低分子から高分子までの麹菌生産物をはじめとして、多くの種類の酵素が含まれる。特に、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ及びプロテアーゼ等が多く含まれる。
【0065】
本実施形態に係る食用酵素組成物は、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養素を豊富に含有し、かつ、種々の酵素活性が高いレベルで維持されている。かかる食用酵素組成物の好適な成分組成としては、タンパク質と、脂質と、食物繊維と、を含むものである。特に、タンパク質に対して、脂質や食物繊維を一定の割合以上に含有することが可能であり、一層栄養価の高いものとすることができる。例えば、タンパク質は、燃焼法によって計測することができる。脂質は、酸分解法によって計測することができる。食物繊維は、酵素−HPLC法によって計測することができる。
【0066】
さらに、本実施形態に係る食用酵素組成物は、好ましくは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、及びビタミンEからなる群より選ばれる1種以上を更に含有するものとすることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る食用酵素組成物は、糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ活性、中性プロテアーゼ活性、アルカリ性プロテアーゼ活性といった種々の酵素活性を高いレベルで両立させることができる。
【0068】
糖化力は、好ましくは18U/g〜40U/gであり、より好ましくは20U/g〜40U/gであり、更に好ましくは23U/g〜40U/gであり、より更に好ましくは23U/g〜35U/gである。
【0069】
α−アミラーゼ活性は、好ましくは125U/g〜300U/gであり、より好ましくは140U/g〜300U/gであり、更に好ましくは150U/g〜400U/gであり、より更に好ましくは150U/g〜350U/gであり、より一層好ましくは150U/g〜300U/gである。
【0070】
酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは4U/g〜20U/gであり、より好ましくは5U/g〜20U/gであり、更に好ましくは6U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは6U/g〜15U/gである。
【0071】
中性プロテアーゼ活性は、好ましくは5U/g〜20U/gであり、より好ましくは6U/g〜20U/gであり、更に好ましくは7U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは7U/g〜15U/gである。
【0072】
アルカリ性プロテアーゼ活性は、好ましくは5U/g〜20U/gであり、より好ましくは6U/g〜20U/gであり、更に好ましくは7U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは7U/g〜15U/gである。
【0073】
とりわけ、本実施形態に係る食用酵素組成物の好適な態様としては、酸性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであり、かつ、中性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであるものが挙げられる。本実施形態に係る食用酵素組成物のより好適な態様としては、糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ活性、及びアルカリ性プロテアーゼ活性のいずれもが、上述した範囲にあるものが挙げられる。
【0074】
このように、本実施形態に係る食用酵素組成物には種々の酵素活性を付与することができるため、タンパク質やグルテンといった種々の栄養素を分解させることができる。例えば、糖化力、α−アミラーゼ活性が高ければ、デンプンの分解酵素として好適に作用させることができる。また、プロテーゼ活性が高ければ、タンパク質やポリペプチドの分解酵素として好適に作用させることができる。
【0075】
よって、食用酵素組成物は、タンパク質を分解する作用を有するタンパク質分解食用酵素組成物として好適に用いることができる。また、食用酵素組成物は、グルテンを分解する作用を有するグルテン分解食用酵素組成物として好適に用いることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る食用酵素組成物を、タンパク質に配合することで、タンパク質吸収補助食品として好適に使用することができる。例えば、プロテインと本実施形態に係る食用酵素組成物とを併用する、栄養補助食品等として用いることができる。もちろん、本実施形態に係る食用酵素組成物単独で、タンパク質吸収補助食品として用いることもできる。
【0077】
さらには、本実施形態に係る食用酵素組成物を、デンプン質に配合することで、グルテン吸収補助食品として好適に使用することができる。もちろん、本実施形態に係る食用酵素組成物単独で、グルテン吸収補助食品として用いることもできる。
【0078】
本実施形態に係る食用酵素組成物の製造方法、並びに、食用酵素組成物、タンパク質分解食用酵素組成物、グルテン分解食用酵素組成物、及び酵素粉末は、各種食品、サプリメント、飲料等の製造方法や材料等として好適に使用できる。
【実施例】
【0079】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0080】
<実施例1>
(玄米麹の製造)
以下の要領にて玄米麹を準備した。まず、5kgの玄米を2分割〜4分割にした。この分割した玄米を常温水に48時間浸漬した後に約1時間水を切り、次いで、玄米が柔らかくなるまで後蒸しした。後蒸し終了後の玄米を約30℃まで放冷し、この玄米に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後、麹菌を散布した玄米を麹室に入れ、麹室内の温度が40℃以上にならないように6〜8時間毎に監視した。48時間後に5kgの玄米麹を出麹した。
【0081】
(大豆麹の製造)
以下の要領にて大豆麹を準備した。まず、2kgの大豆を2分割〜4分割にした。この分割した大豆を常温水に24時間浸漬した後に約1時間水を切り、次いで、大豆を指でつぶせる程度にまで後蒸しした。後蒸し終了後の大豆を約20℃まで放冷し、この大豆に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後麹菌を散布した大豆を麹蓋にのせた状態で大豆麹箱に入れた。大豆麹箱内の温度が約25℃〜約27℃に保たれるように監視した。72時間後に2kgの大豆麹を出麹した。
【0082】
(酵素含有液体1の製造)
表3に示す濃縮培地組成を、表4に示す調整液によりpH4.4になるように調整して調整液体培地とした。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
2000mLの調整液体培地をあらかじめ95℃で30分間加熱滅菌し、その後に35℃まで冷却した。この冷却した調整液体培地に第一の麹として200gの玄米麹を添加した。この玄米麹を添加した調整液体培地を撹拌しながら48時間、35℃〜37℃で第一の通気培養を行った。玄米麹の麹菌の繁殖が十分であることを確認した後に、第一の通気培養を行った調整液体培地に、さらに第二の麹として100gの大豆麹を添加した。この大豆麹を添加した調整液体培地を撹拌しながらさらに24時間、20℃〜30℃で第二の通気培養を行った。
【0086】
(酵素組成物(酵素含有粉末)1の製造)
上述した方法において得られた酵素を含む10Lの培養液(酵素含有液体)を300メッシュの濾布を用いて濾過することにより7Lの濾布濾過液を得た。この濾布濾過液を沈澱タンクに入れて、次いで冷蔵庫内で24時間静置することにより澱下げした。その後に、この濾布濾過液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、さらに0.45μmカートリッジフィルタを用いてプレ濾過した。次いで、0.45μmメンブレンカートリッジフィルタを用いて精密濾過することにより6Lの精密濾過液を得た。
【0087】
精密濾過液の一部(1L)を後述の酵素組成物(酵素含有粉末)2の製造で用いるために分取した。分取後、残りの5Lの精密濾過液を限外濾過(分子量:6,000〜100,000)することにより500mLの濃縮液を得た。限外濾過の際には、液温が15℃を上回らないようにした。限外濾過後の濃縮液及び冷却した88%エチルアルコールを殺菌タンクに入れて穏やかに撹拌した。このときに殺菌タンク内のエチルアルコール濃度が70%以下にならないようにした。その後に殺菌タンク内のエチルアルコールと濃縮液の混合液を24時間冷蔵庫内で静置した。
【0088】
このとき殺菌タンク内では、エチルアルコールと濃縮液の混合液中の酵素類、タンパク質、又はその他物質が結晶化して沈澱した。この沈殿物をエチルアルコールと濃縮液の混合液から分離した。さらに、この沈殿物を、3500回転で10分間遠心分離にかけることにより酵素等を含む層とエチルアルコールを含む上澄み層とに分離した。そして、酵素等を含む層から上澄み層を除去することにより固形分を得た。ここで得られた固形分を乾燥機内で常温乾燥させて、さらに粉砕することにより5gの酵素含有粉末1を得た。
【0089】
(酵素組成物(酵素含有粉末)2の製造)
上述した酵素組成物(酵素含有粉末)1の製造において分取した1Lの精密濾過液に、100gのおからパウダーを添加して撹拌することにより、おからパウダー添加液を得た。得られたおからパウダー添加液を冷蔵庫内で12時間静置することにより、沈殿物を得た。その後に沈殿物の上澄み液を除去し、ウェットな状態にある沈殿物を、3500回転で5分間遠心分離にかけることにより脱水した。その後に半乾燥状態にある遠心分離後の沈殿物を、乾燥機内で常温乾燥させて、さらに粉砕することにより95gの酵素含有粉末2を得た。
【0090】
酵素組成物(酵素含有粉末)1及び2には、低分子から高分子までの麹菌生産物をはじめとして、多くの種類の酵素、特にα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ及びプロテアーゼが多く含まれていたことが確認された。
【0091】
(酵素活性の測定)
実施例1において得られた酵素含有液体(精密濾過液)1のグルコアミラーゼ活性、α−グルコシダーゼ活性、α−アミラーゼ活性、及び酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性を測定した。比較検証のため、玄米麹より得られた精密濾過液、大豆麹より得られた精密濾過液、及び比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液の各活性についてもそれぞれ測定した。
【0092】
(参照例1)
(比較検証用の精密濾過液の調製)
玄米麹:
0.5%食塩水及び玄米麹を約5:1の容積比で混合した。この食塩水と玄米麹の混合液を冷蔵庫内で定期的に撹拌した後に約4時間静置した。その後に、この食塩水と玄米麹の混合液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより、比較検証用の精密濾過液を得た。
【0093】
大豆麹:
0.5%食塩水及び大豆麹を約5:1の容積比で混合した。この食塩水と大豆麹の混合液を冷蔵庫内で定期的に撹拌した後に約4時間静置した。その後に、この食塩水と大豆麹の混合液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで、0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより、比較検証用の精密濾過液を得た。
【0094】
比較検証用としての液体培養方法:
麹菌アスベルギルス・オリゼーの前培養を行い、麹菌が十分に繁殖した後に前培養液を本培養液に混合した。混合した培養液を48時間撹拌しながら通気培養を行った。通気培養終了後に培養液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより比較検証用の精密濾過液を得た。
【0095】
(測定結果)
糖化力:
キッコーマン糖化力測定キットにより、糖化力(グルコアミラーゼ活性及びα−グルコシダーゼ活性)の測定を行った。比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液は、16U/g〜19U/g、玄米麹より得られた精密濾過液は、15U/g〜17U/g、そして、実施例1により得られた精密濾過液は、25U/g〜27U/gという結果であった。
【0096】
α−アミラーゼ活性:
独立行政法人酒類総合研究所標準分析法により、α−アミラーゼ活性の測定を行った。比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液は、70U/g〜120U/g、玄米麹より得られた精密濾過液は、65U/g〜120U/gであった。そして、実施例1により得られた精密濾過液は、180U/g〜200U/gという結果であった。
【0097】
酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性:
独立行政法人酒類総合研究所標準分析法により、プロテアーゼの測定を行った。大豆麹より得られた精密濾過液は、酸性:1U/g〜3U/g、中性:8U/g〜10U/g、アルカリ性:7U/g〜9U/gであり、そして、実施例1により得られた精密濾過液は、酸性:7U/g〜10U/g、中性:8U/g〜12U/g、アルカリ性:4U/g〜8U/gという結果であった。
【0098】
上述の結果より、実施例1により得られた酵素含有液体1は、比較検証で用いたいずれの精密濾過液よりも高い酵素活性を有し、特に有意に高いα−アミラーゼ活性を有することが認められた。
【0099】
そして、実施例1の食用酵素組成物は、それだけで、高い糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ活性、中性プロテアーゼ活性、アルカリ性プロテアーゼ活性といった種々の酵素活性の全てを高いレベルで両立させることができており、優れた効果を有する。そのため、タンパク質分解作用が高い酵素組成物とすることや、グルテン分解作用が高い酵素組成物とすることができる。
【0100】
<実施例2>
続いて、上述した実施例1において、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養を行ったことの優位性を検証した。具体的には、第二の通気培養を行わない参照例2を用意し、その結果を実施例1と対比した。
【0101】
(参照例2)
まず、第二の通気培養を行わなかった点以外は実施例1と同様の方法で、培養液cを準備し、これを用いて精密濾過液cを作製した。
【0102】
そして、得られた精密濾過液cについて、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「糖化力」、「α−アミラーゼ活性」、「酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性」をそれぞれ測定した。その結果、精密濾過液cの糖化力は14〜16U/gであり、α−アミラーゼ活性は58〜68U/gであり、酸性プロテアーゼ活性は1〜3U/gであり、中性プロテアーゼ活性は8〜9U/gであり、アルカリ性プロテアーゼ活性は8〜9U/gであった。
【0103】
このことから、第一の通気培養と第二の通気培養を行った実施例1が、第二の通気培養を行わなかった参照例2よりも、酵素活性の全てを高いレベルで両立させることができており、優れた効果を有することが確認された。すなわち、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養も行ったことの優位性が少なくとも確認された。
【0104】
<実施例3>
さらに、芋麹を使用して、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養を行った場合の効果を検証した。
【0105】
(芋麹の製造)
以下の要領にて芋麹を準備した。まず、5kgの薩摩芋を貝殻焼成カルシウム溶液に15分間浸漬させた後、水洗いした。その後、薩摩芋を厚さ5mmにスライスカットし、次いで、90〜95℃の蒸気で45〜60分間蒸した。そして、約30℃まで放冷し、乾燥庫内で8時間常温乾燥させた。この薩摩芋に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後、麹菌を散布した薩摩芋を麹室に入れ、麹室内の温度35〜40℃で、48〜72時間培養した。こうして得られた芋麹(薩摩芋麹)を出麹した。
【0106】
(酵素含有液体3の製造)
まず、表3に示す濃縮培地組成を、表4に示す調整液によりpH4.4になるように調整して調整液体培地とした。そして、2000mLの調整液体培地をあらかじめ95℃で30分間加熱滅菌し、その後に35℃まで冷却した。この冷却した調整液体培地に第一の麹として200gの芋麹(薩摩芋麹)を添加した。この芋麹を添加した調整液体培地を撹拌しながら48時間、35℃〜37℃で第一の通気培養を行った。芋麹の麹菌の繁殖が十分であることを確認した後に、第一の通気培養を行った調整液体培地に、さらに第二の麹として100gの大豆麹を添加した。この大豆麹を添加した調整液体培地を撹拌しながらさらに24時間、20℃〜30℃で第二の通気培養を行った。
【0107】
上述した方法において得られた酵素を含む10Lの培養液を300メッシュの濾布を用いて濾過することにより7Lの濾布濾過液を得た。この濾布濾過液を沈澱タンクに入れて、次いで冷蔵庫内で24時間静置することにより澱下げした。その後に、この濾布濾過液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、さらに0.45μmカートリッジフィルタを用いてプレ濾過した。次いで、0.45μmメンブレンカートリッジフィルタを用いて精密濾過することにより6Lの酵素含有液体(精密濾過液)3を得た。
【0108】
そして、得られた酵素含有液体(精密濾過液)3について、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「α−アミラーゼ活性」を測定したところ、13〜18U/gであった。
【0109】
(酵素含有液体4の製造)
第一の通気培養において、第一の麹として100gの芋麹(薩摩芋麹)と100gの玄米麹との混合麹を用いた点以外は、酵素含有液体(精密濾過液)3の製造と同様にして、酵素含有液体(精密濾過液)4を得た。
【0110】
そして、得られた酵素含有液体(精密濾過液)4について、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「α−アミラーゼ活性」を測定したところ、15〜20U/gであった。
【0111】
<実施例4>
上述した実施例1の酵素組成物(酵素含有粉末)1を用いて、小麦粉(強力粉)からパンを作製した。
【0112】
(小麦粉パンの製造)
小麦粉(市販の強力粉)130g、ドライイースト3g、砂糖5g、食塩3g、ぬるま湯70g、当該酵素含有粉末(酵素含有粉末1)1gを加え、混錬して、パン生地を準備した。そして、パン生地を容器に入れ、35〜45℃で60分間の条件で発酵させた。発酵後、パン生地のガス抜きを行い、再度捏ねて、所定の形状に成型した。成型後のパン生地をオーブンに入れて、180℃で25分間焼いた。その後、パンをオーブンから取り出し、放冷した。
【0113】
(参照例4)
上述した酵素組成物(酵素含有粉末)1を加えなかった点以外は、実施例3と同様にしてパンを作製した。
【0114】
参照例4のパンと異なり、実施例4のパンではグルテンの残留が確認されなかった。このことから、上述した酵素含有粉末の添加によって小麦粉に含まれるグルテンが分解されたことが確認された。
【0115】
<実施例5>
上述した実施例1の酵素含有液体(精密濾過液)1を用いて、玄小麦(精麦していない小麦)からパンを作製した。
【0116】
(玄小麦パンの製造)
まず、玄小麦を実施例1の酵素含有液体1に一昼夜浸漬させた。この玄小麦130g、ドライイースト3g、砂糖5g、食塩3g、ぬるま湯70gを加え、混錬して、パン生地を準備した。そして、パン生地を容器に入れ、35〜45℃で60分間の条件で発酵させた。発酵後、パン生地のガス抜きを行い、再度捏ねて、所定の形状に成型した。成型後のパン生地をオーブンに入れて、180℃で25分間焼いた。その後、パンをオーブンから取り出し、放冷した。
【0117】
(参照例5)
玄小麦を上述した酵素含有液体1に浸漬させなかった点以外は、実施例4と同様にしてパンを作製した。
【0118】
実施例4と同様にしてパンのグルテン含有量を分析したところ、参照例5のパンと比べて、実施例5のパンはグルテンがほぼ半減したことが確認された。