(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排気洗浄手段は、前記チャンバーから排出された雰囲気が流れる方向である排出方向に関して異なる複数の位置に複数の分散領域をそれぞれ形成する複数の除去液ノズルを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
前記排気洗浄手段は、前記複数の除去液ノズルにそれぞれ対応しており、前記複数の除去液ノズルへの除去液の供給と前記複数の除去液ノズルへの除去液の供給停止とを個別に切り替える複数の除去液バルブをさらに含む、請求項2または3に記載の基板処理装置。
前記基板処理装置は、前記排気洗浄手段によって吐出される除去液と同種の液体である洗浄液を前記チャンバー内で吐出することにより、前記チャンバーの内部を洗浄する洗浄液ノズルをさらに含み、
前記チャンバーの底部は、前記洗浄液ノズルから吐出された洗浄液を前記チャンバー内に溜めるバットを形成している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記基板処理装置は、複数の前記チャンバーと、前記複数のチャンバーにそれぞれ対応する複数の前記排気洗浄手段と、前記複数のチャンバーにそれぞれ接続された複数の前記個別排気流路と、前記複数の個別排気流路に接続された集合排気流路と、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記基板処理装置は、前記個別排気流路内に配置されており、前記個別排気流路の流路面積を変更することにより前記チャンバーから前記個別排気流路に排出される雰囲気の流量を変更する弁体をさらに含み、
前記排気洗浄手段は、前記弁体に向けて除去液を吐出することにより、前記分散領域を前記個別排気流路内の位置に形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理装置では、フッ酸、SC1、およびIPAが処理室内で基板に順次供給されるので、フッ酸を含む雰囲気とSC1を含む雰囲気とIPAを含む雰囲気とが集合管を順次通過する。フッ化水素などの薬品を含む雰囲気(以下「薬品雰囲気」という。)が集合管を通過すると、薬品雰囲気に含まれる薬品が集合管の内周面に付着する場合がある。
【0005】
集合管の内周面に付着している薬品とは種類が異なる薬品を含む雰囲気が集合管を通ると、複数種の薬品が集合管内で接触し、パーティクルが発生する場合がある。たとえば、酸性薬品がアルカリ性薬品に接触すると、塩が発生する場合があり、有機薬品(有機化合物を主成分とする薬品)が他種の薬品に接触すると、炭化物が発生する場合がある。集合管内のパーティクルが排気圧の変動等により処理室内に逆流して基板に付着すると、基板が汚染される。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、チャンバーから排出される雰囲気に起因するパーティクルの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数種の薬品が基板に順次供給される内部空間を形成するチャンバーと、前記チャンバー内の雰囲気が流入する排気入口を含み、前記排気入口を通じて前記チャンバー内の雰囲気を排出する個別排気流路と、前記チャンバーから排出される雰囲気に含まれる薬品を当該雰囲気から除去する除去液を空中に吐出することにより、除去液が分散した分散領域を前記排気入口の上流の位置および前記個別排気流路内の位置の少なくとも一方に形成する排気洗浄手段と、を含
み、前記排気洗浄手段は、前記排気入口の少なくとも一部と同じ高さに前記分散領域を形成する、基板処理装置である。
【0008】
この構成によれば、複数種の薬品がチャンバー内で基板に順次供給される。チャンバー内で発生した薬品雰囲気(薬品を含む雰囲気)は、排気入口を通じてチャンバーから個別排気流路に排出される。除去液が分散した分散領域は、排気入口の上流の位置および個別排気流路内の位置の少なくとも一方に形成される。したがって、薬品雰囲気は、チャンバー内または個別排気流路内で除去液に接触する。
【0009】
薬品雰囲気に含まれる薬品がチャンバー内または個別排気流路内で除去液に接触すると、薬品雰囲気中の薬品の含有量が減少する。したがって、個別排気流路の内面に付着する薬品の量を低減できる。そのため、先の薬品雰囲気に含まれる薬品とは種類の異なる薬品を含む雰囲気が個別排気流路を通過する場合でも、個別排気流路内で発生するパーティクルの数を減らすことができる。これにより、個別排気流路からチャンバーに逆流するパーティクルの数を減らすことができ、基板の清浄度を高めることができる。
さらに、この構成によれば、除去液が分散した分散領域が、排気入口の少なくとも一部と同じ高さに形成される。排気入口と分散領域との高さが異なる場合、排気入口から分散領域までの距離が長くなる。これは、薬品成分が除去される前の薬品雰囲気が通過する経路が長くなること意味する。したがって、分散領域を排気入口の少なくとも一部と同じ高さに配置することにより、複数種の薬品が接触し得る領域を小さくすることができる。これにより、個別排気流路内で発生するパーティクルの数を減らすことができる。
【0010】
薬品は、液体(薬液)であってもよいし、気体(薬品ガス)であってもよい。薬品ガスは、薬品の蒸気であってもよいし、薬品のミストを含む気体であってもよい。薬品の具体例は、酸性薬品、アルカリ性薬品、および有機薬品(アルコールなどの有機化合物を主成分とする薬品)である。薬品が水溶性である場合、除去液は、純水などの水を主成分とする水含有液であることが好ましい。
【0011】
排気洗浄手段は、除去液を吐出する除去液ノズルを備えていてもよい。除去液ノズルは、上方または下方に除去液を吐出してもよいし、水平に除去液を吐出してもよい。除去液ノズルが除去液を吐出すると、帯状または円錐状の分散領域が形成される。
除去液ノズルは、複数の円形吐出口から除去液を線状に吐出するシャワーノズルであってもよいし、除去液を噴霧することにより除去液のミストを形成するスプレーノズルであってもよいし、スリット状の吐出口から除去液を吐出することにより帯状の液膜を形成するスリットノズルであってもよい。
【0013】
排気洗浄手段は、排気入口の少なくとも一部と同じ高さ(鉛直方向における位置)に向けて除去液を吐出する除去液ノズルを備えていてもよい。
請求項
2に記載の発明は、前記排気洗浄手段は、前記チャンバーから排出された雰囲気が流れる方向である排出方向に関して異なる複数の位置に複数の分散領域をそれぞれ形成する複数の除去液ノズルを含む、請求項
1に記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、チャンバーから排出された雰囲気が流れる方向に複数の分散領域が並んでいるので、薬品雰囲気が複数の分散領域を順次通過する。これにより、薬品雰囲気と除去液との接触回数および接触時間が増加するので、薬品雰囲気中の薬品の含有量をさらに減らすことができる。これにより、個別排気流路内で発生するパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0015】
複数の分散領域は、排気入口の上流の位置と個別排気流路内の1つ以上の位置とに形成されてもよいし、個別排気流路内の複数の位置に形成されてもよい。
請求項
3に記載の発明は、前記排出方向に交差する交差方向に並んだ複数の除去液吐出口が、前記複数の除去液ノズルのそれぞれに設けられており、前記排出方向に隣接する2つの前記除去液ノズルにおいて、一方の前記除去液ノズルに設けられた前記複数の除去液吐出口は、他方の前記除去液ノズルに設けられた前記複数の除去液吐出口に対して前記交差方向にずれている、請求項
2に記載の基板処理装置である。
【0016】
この構成によれば、交差方向に並んだ複数の除去液吐出口から除去液が吐出される。これにより、除去液の帯状のカーテンが形成され、除去液が帯状の分散領域に分散する。上流側の複数の除去液吐出口が下流側の複数の除去液吐出口に対して交差方向にずれているので、薬品雰囲気が上流側の除去液のカーテンに当たらずに通過したとしても、この薬品雰囲気は下流側の除去液のカーテンに接触する。そのため、薬品雰囲気に含まれる薬品に除去液を確実に接触させることができ、薬品雰囲気中の薬品の含有量を減らすことができる。
【0017】
交差方向は、排出方向に直交する方向であってもよいし、排出方向に対して斜めに傾いた方向であってもよい。すなわち、交差方向は、排出方向と平行でなければよい。
請求項
4に記載の発明は、前記排気洗浄手段は、前記複数の除去液ノズルにそれぞれ対応しており、前記複数の除去液ノズルへの除去液の供給と前記複数の除去液ノズルへの除去液の供給停止とを個別に切り替える複数の除去液バルブをさらに含む、請求項
2または3に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、除去液の吐出および吐出停止が、複数の除去液バルブの開閉によって除去液ノズルごとに切り替えられる。除去液は、開状態の除去液バルブと同数の除去液ノズルから吐出される。分散領域に分散した除去液はチャンバーから排出される雰囲気に抵抗を加えるので、除去液ノズルが除去液を吐出すると、チャンバーから排出される雰囲気の流量(排気流量)が変化する。たとえば、全ての除去液ノズルが除去液を吐出しているときの排気流量は、一部の除去液ノズルしか除去液を吐出していないときの排気流量よりも小さい。したがって、複数の除去液ノズルからの除去液の吐出を個別に切り替えることにより、排気流量を調節することができる。
【0019】
除去液バルブは、流路を形成するバルブボディと、流路内に配置された弁体と、弁体を移動させるアクチュエータとを含む。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。基板処理装置の制御装置は、アクチュエータを制御することにより、除去液バルブを開閉させる。
【0020】
請求項
5に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記チャンバー内で基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、前記基板保持手段に保持されている基板に処理液を供給する処理液供給手段と、前記排気洗浄手段と前記基板回転手段と前記処理液供給手段とを制御する制御装置と、をさらに含み、前記制御装置は、前記チャンバー内の基板に処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理液供給工程で基板に供給された処理液を前記基板の回転によって除去することにより前記基板を乾燥させる乾燥工程と、前記処理液供給工程と並行して、1以上で全数未満の第1本数の前記除去液ノズルに除去液を吐出させる第1排気洗浄工程と、前記乾燥工程と並行して、前記第1本数よりも大きい第2本数の前記除去液ノズルに除去液を吐出させる第2排気洗浄工程と、を実行する、請求項
4に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板に処理液を供給する処理液供給工程の後に、処理液供給工程で基板に供給された処理液を基板から除去する乾燥工程が実行される。基板の熱は、基板上の処理液が蒸発するときに処理液に奪われる。そのため、基板の温度は、乾燥工程が実行されているときに低下する。また、チャンバーから排出される雰囲気の流量が大きいと、強い気流が基板の近くに形成されるので、処理液の蒸発が促進されると共に、気流によって基板が冷却される。基板の温度が急激に低下すると、基板上での結露により、ウォーターマークが形成されるおそれがある。
【0022】
除去液は、処理液を基板に供給する期間と基板を乾燥させる期間とに吐出される。乾燥工程が実行されているときに除去液を吐出する除去液ノズルの本数(第2本数)は、処理液供給工程が実行されているときに除去液を吐出する除去液ノズルの本数(第1本数)よりも多い。除去液を吐出する除去液ノズルの本数が増えると、分散領域の数が増えるので、チャンバーから排出される雰囲気に加わる抵抗が増加する。したがって、乾燥工程中に基板の近くの気流を弱めることができる。これにより、乾燥工程中における基板の温度低下を軽減することができる。
【0023】
制御装置は、演算部と記憶部とを含むコンピュータである。制御装置は、基板の処理条件および処理手順を示すレシピにしたがって基板処理装置を制御することにより、処理液供給工程等を基板処理装置に実行させる。処理液は、純水などの水を主成分とする水含有液であってもよいし、水よりも揮発性の高い有機溶剤の液体であってもよい。このような有機溶剤の一例は、イソプロピルアルコールである。イソプロピルアルコールは、水よりも沸点が低く、水よりも表面張力が小さいアルコールである。
【0024】
請求項
6に記載の発明は、前記処理液供給手段は、処理液としてのイソプロピルアルコールの液体を吐出する有機薬液ノズルを含む、請求項
5に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板上のイソプロピルアルコールの液体が基板の回転によって除去され、基板が乾燥する。イソプロピルアルコールの揮発性が高いので、基板を乾燥させるときに、基板の温度が急激に低下し易い。したがって、乾燥工程が実行されているときに除去液を吐出する除去液ノズルの本数を増やすことにより、乾燥工程中における基板の急
激な温度低下を抑制または防止することができる。これにより、ウォーターマークの発生を抑制または防止できる。
【0025】
請求項
7に記載の発明は、
複数種の薬品が基板に順次供給される内部空間を形成するチャンバーと、前記チャンバー内の雰囲気が流入する排気入口を含み、前記排気入口を通じて前記チャンバー内の雰囲気を排出する個別排気流路と、前記チャンバーから排出される雰囲気に含まれる薬品を当該雰囲気から除去する除去液を空中に吐出することにより、除去液が分散した分散領域を前記排気入口の上流の位置および前記個別排気流路内の位置の少なくとも一方に形成する排気洗浄手段と、を含み、前記チャンバーの底部は、前記排気洗浄手段から吐出された除去液を前記チャンバー内に溜めるバットを形成している
、基板処理装置である。
この構成によれば、排気洗浄手段から吐出された除去液が、チャンバーの底部に設けられたバットに溜められる。チャンバー内を漂う薬品雰囲気に含まれる薬品は、チャンバーの底部で除去される。したがって、薬品雰囲気が個別排気流路に入る前に、薬品雰囲気中の薬品を除去できる。さらに、分散領域を形成するために吐出された除去液をバットで再利用するので、除去液の消費量を低減できる。
【0026】
排気洗浄手段は、チャンバー内の位置に向けて除去液を吐出する除去液ノズルを備えていてもよい。個別排気流路の内面は、個別排気流路内の除去液をチャンバー内に案内する傾斜部を備えていてもよい。
請求項8に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記排気洗浄手段によって吐出される除去液と同種の液体である洗浄液を前記チャンバー内で吐出することにより、前記チャンバーの内部を洗浄する洗浄液ノズルをさらに含み、前記バットは、前記洗浄液ノズルから吐出された洗浄液を前記チャンバー内に溜める、請求項7に記載の基板処理装置である。
請求項9に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記排気洗浄手段によって吐出される除去液と同種の液体である洗浄液を前記チャンバー内で吐出することにより、前記チャンバーの内部を洗浄する洗浄液ノズルをさらに含み、前記チャンバーの底部は、前記洗浄液ノズルから吐出された洗浄液を前記チャンバー内に溜めるバットを形成している、請求項1〜
6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0027】
請求項8および請求項9に記載の構成によれば、排気洗浄手段によって吐出される除去液と同種の液体である洗浄液がチャンバー内で吐出される。これにより、チャンバーの内部が洗浄される。チャンバーの内部を洗浄した洗浄液は、チャンバーの底部に設けられたバットに溜められる。チャンバー内を漂う薬品雰囲気に含まれる薬品は、チャンバーの底部で除去される。したがって、薬品雰囲気が個別排気流路に入る前に、薬品雰囲気中の薬品を除去できる。さらに、チャンバーの内部を洗浄するために吐出された洗浄液をバットで再利用するので、除去液の消費量を低減できる。
【0028】
チャンバーの内部、すなわち、洗浄液で洗浄される対象は、チャンバーの内面であってもよいし、チャンバー内に配置された内部部材あってもよい。内部部材は、基板からその周囲に飛散した処理液を受け止める筒状のガードであってもよいし、水平な姿勢で基板の上方に配置される遮断板であってもよいし、基板に向けて処理液を吐出する処理液ノズルがその先端部に取り付けられたノズルアームであってもよい。
【0029】
請求項10に記載の発明は、前記基板処理装置は、複数の前記チャンバーと、前記複数のチャンバーにそれぞれ対応する複数の前記排気洗浄手段と、前記複数のチャンバーにそれぞれ接続された複数の前記個別排気流路と、前記複数の個別排気流路に接続された集合排気流路と、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、複数のチャンバーから複数の個別排気流路に排出された薬品雰囲気が、集合排気流路に流入する。集合排気流路に流入する薬品雰囲気は、複数の排気洗浄手段によって予め薬品の含有量が低減されている。したがって、複数種の薬品が集合排気流路で接触することを抑制または防止できる。さらに、複数の個別排気流路が集合排気流路に集合しているので、吸引力を発生する吸引設備等を個別排気流路ごとに設けなくてもよい。
【0030】
前記複数の個別排気流路の排気出口は、同じ位置で集合排気流路に接続されていてもよいし、前記排出方向に関して異なる複数の位置で集合排気流路に接続されていてもよい。
請求項11に記載の発明は、
複数のチャンバーと、前記複数のチャンバーにそれぞれ対応する複数の排気洗浄手段と、前記複数のチャンバーにそれぞれ接続された複数の個別排気流路と、前記複数の個別排気流路に接続された集合排気流路と、を含み、前記チャンバーは、複数種の薬品が基板に順次供給される内部空間を形成するものであり、前記個別排気流路は、前記チャンバー内の雰囲気が流入する排気入口を含み、前記排気入口を通じて前記チャンバー内の雰囲気を排出するものであり、前記排気洗浄手段は、前記チャンバーから排出される雰囲気に含まれる薬品を当該雰囲気から除去する除去液を空中に吐出することにより、除去液が分散した分散領域を前記排気入口の上流の位置および前記個別排気流路内の位置の少なくとも一方に形成するものであり、前記複数の個別排気流路は、それぞれ、前記複数のチャンバーから排出された雰囲気を前記集合排気流路内に排出する複数の排気出口を含み、前記複数の排気出口は、前記集合排気流路の内面で開口しており、水平に見ると間隔を空けて鉛直方向に並んでおり、前記排気出口の上縁から前記集合排気流路内に突出する庇部が、前記複数の排気出口の少なくとも一つに設けられている、基板処理装置である。
【0031】
この構成によれば、個別排気流路の排気出口で薬品の液滴が発生した場合、この液滴は、排気出口から集合排気流路内に排出され、集合排気流路の内面に沿って下方に流れる。水平に見ると複数の排気出口が間隔を空けて鉛直方向に並んでいるので、集合排気流路の内面に沿って下方に流れる液滴が、下側の排気出口に入るおそれがある。しかしながら、排気出口の上縁から集合排気流路内に突出する庇部が設けられているので、上側の排気出口から排出された薬品の液滴が、下側の排気出口に進入することを抑制または防止できる。
【0032】
水平に見たときに鉛直方向に並んでいるのであれば、複数の排気出口は、鉛直面上に配置されていてもよいし、鉛直方向に対して斜めに傾いた平面上に配置されていてもよい。庇部は、排気出口の上縁から斜め下方向に延びていることが好ましい。この場合、薬品の液滴が庇部の上面に沿って斜め下方に案内されるので、薬品の液滴を下側の排気出口から遠ざけながら下流に送ることができる。
【0033】
請求項12に記載の発明は、
鉛直方向に隣接する2つの前記排気出口にそれぞれ2つの前記庇部が設けられており、前記2つの庇部を上から鉛直に見ると、
下側の前記庇部の少なくとも一部は、
上側の前記庇部で隠れている、請求項11に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、
下側の庇部の全部または一部が
上側の庇部で隠れている。庇部上の薬品の液滴は、庇部の縁から下方に落下する。鉛直に見たときに、
下側の庇部が
上側の庇部から突出していると、
上側の庇部から落下した液滴が、
下側の庇部に付着する。そのため、異種の薬品同士が
下側の庇部で接触するおそれがある。したがって、
下側の庇部を
上側の庇部で隠すことにより、このような薬品の接触を抑制または防止できる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記個別排気流路内に配置されており、前記個別排気流路の流路面積を変更することにより前記チャンバーから前記個別排気流路に排出される雰囲気の流量を変更する弁体をさらに含み、前記排気洗浄手段は、前記弁体に向けて除去液を吐出することにより、前記分散領域を前記個別排気流路内の位置に形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0035】
この構成によれば、チャンバー内の雰囲気を個別排気流路内に吸引する負の圧力(排気圧)が、排気ダンパーの弁体によって調節される。排気洗浄手段は、弁体に向けて除去液を吐出することにより、除去液が分散した分散領域を個別排気流路内に形成する。除去液の一部は、弁体の表面に保持される。個別排気流路内の薬品雰囲気は、空気中に分散した除去液に接触するだけでなく、弁体の表面に保持された除去液にも除去する。これにより、薬品雰囲気中の薬品の含有量をさらに減らすことができる。さらに、個別排気流路内に通常設けられる部材(弁体)に除去液を保持させるので、部品点数の増加を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
図1において、チャンバー4、カップ17、および仕切板23については鉛直断面を示している。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスなどの処理流体で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、複数の処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。図示はしないが、複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの塔を構成している。各塔は、上下方向に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2で構成されている(
図2参照)。
【0038】
処理ユニット2は、内部空間を有するチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック7と、基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルとを含む。処理ユニット2は、さらに、基板Wの上方で水平な姿勢で保持された円板状の遮断板12と、基板Wから外方に飛散する処理液を受け止めるカップ17と、カップ17のまわりでチャンバー4の内部空間を上下方向に並んだ2つの空間に分割する仕切板23とを含む。
【0039】
チャンバー4は、スピンチャック7等を収容する箱形の隔壁5と、隔壁5の上方から隔壁5内に清浄空気(フィルターでろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU6(ファン・フィルタ・ユニット)とを含む。隔壁5は、基板Wの上方に配置される上壁と、基板Wの下方に配置される底壁と、底壁の外縁から上壁の外縁に延びる側壁とを含む。FFU6は、隔壁5の上方に配置されている。図示はしないが、FFU6と遮断板12との間には複数の貫通穴がその全域に形成された整流板が配置されている。FFU6が清浄空気をチャンバー4内に下方に送ると、ダウンフロー(下降流)がチャンバー4内に形成される。基板Wの処理は、ダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0040】
スピンチャック7は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース9と、スピンベース9の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン8と、複数のチャックピン8を開閉させるチャック開閉機構(図示せず)とを含む。スピンチャック7は、さらに、スピンベース9の中央部から下方に延びるスピン軸10と、スピン軸10を回転させることにより基板Wおよびスピンベース9を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ11とを含む。スピンチャック7は、複数のチャックピン8を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース9の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0041】
遮断板12は、基板Wの直径よりも大きい外径を有する円板状である。遮断板12は、上下方向に延びる支軸13によって水平な姿勢で支持されている。支軸13は、遮断板12の上方で水平に延びる支持アーム14に支持されている。遮断板12は、支軸13の下方に配置されている。遮断板12の中心軸は、回転軸線A1上に配置されている。遮断板12の下面は、基板Wの上面に平行に対向している。
【0042】
遮断板12は、遮断板12を支持アーム14に対して回転軸線A1まわりに回転させる遮断板回転ユニット15と、遮断板12および支軸13と共に支持アーム14を鉛直に昇降させる遮断板昇降ユニット16とに連結されている。遮断板昇降ユニット16は、処理位置と退避位置(
図1に示す位置)との間で遮断板12を鉛直に昇降させる。退避位置は、ノズルが基板Wと遮断板12との間に進入できるように遮断板12の下面が基板Wの上面から上方に離れた上位置である。処理位置は、ノズルが基板Wと遮断板12との間に進入できないように遮断板12の下面が基板Wの上面に近接した下位置である。
【0043】
カップ17は、スピンチャック7の周囲を取り囲んでいる。カップ17は、基板Wから外方に飛散する処理液を受け止める複数のガード18と、複数のガード18によって下方に案内される処理液を受け止める複数のトレー21とを含む。複数のガード18は、スピンチャック7の周囲を取り囲むように同心円状に配置されている。ガード18は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる筒状の傾斜部19と、傾斜部19の下端部(外端部)から下方に延びる円筒状の案内部20とを含む。ガード18の上端に相当する傾斜部19の上端は、基板Wおよび遮断板12の外径よりも大きい内径を有している。複数の傾斜部19は、上下方向に重なっている。複数のトレー21は、それぞれ、複数のガード18に対応している。トレー21は、案内部20の下端の下方に位置する環状の溝を形成している。
【0044】
複数のガード18は、複数のガード18を個別に昇降させるガード昇降ユニット22に接続されている。ガード昇降ユニット22は、処理位置と退避位置との間でガード18を鉛直に昇降させる。処理位置は、ガード18の上端が基板Wよりも上方に位置する上位置である。退避位置は、ガード18の上端が基板Wよりも下方に位置する下位置である。
図1は、外側の2つのガード18が処理位置に配置され、残り2つのガード18が退避位置に配置されている状態を示している。回転している基板Wに処理液が供給されるとき、ガード昇降ユニット22は、いずれかのガード18を処理位置に位置させ、基板Wの周端面に対してガード18の内周面を水平に対向させる。
【0045】
仕切板23は、カップ17のガード18とチャンバー4の側壁との間に配置されている。仕切板23は、チャンバー4の底壁から上方に延びる複数の支柱(図示せず)によって支持されている。
図1は、仕切板23の上面が水平な例を示している。仕切板23の上面は、回転軸線A1に向かって斜め下に延びるように傾斜していてもよい。また、仕切板23は、一枚の板であってもよいし、同じ高さに配置された複数枚の板であってもよい。仕切板23の外縁は、チャンバー4の内面から水平に離れており、仕切板23の内縁は、ガード18の外周面から水平に離れている。仕切板23は、スピンモータ11よりも上方に配置されている。
【0046】
複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する複数の薬液ノズルと、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル34とを含む。複数の薬液ノズルは、基板Wの上面に向けて酸性薬液を吐出する酸性薬液ノズル24と、基板Wの上面に向けてアルカリ性薬液を吐出するアルカリ性薬液ノズル29と、基板Wの上面に向けて有機薬液を吐出する有機薬液ノズル37とを含む。酸性薬液、アルカリ性薬液、および有機薬液は、いずれも水溶性である。
【0047】
酸性薬液ノズル24は、酸性薬液ノズル24に供給される酸性薬液を案内する酸性薬液配管25に接続されている。酸性薬液ノズル24に対する酸性薬液の供給および供給停止を切り替える酸性薬液バルブ26は、酸性薬液配管25に介装されている。酸性薬液バルブ26が開かれると、酸性薬液が、酸性薬液ノズル24から下方向に連続的に吐出される。酸性薬液は、たとえば、SPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)である。酸性の薬液であれば、酸性薬液は、SPM以外の液体であってもよい。たとえば、酸性薬液は、フッ酸およびリン酸等であってもよい。
【0048】
酸性薬液ノズル24は、チャンバー4内で移動可能なスキャンノズルである。酸性薬液ノズル24は、仕切板23よりも上方で水平に延びるノズルアーム27の先端部に取り付けられている。酸性薬液ノズル24は、ノズルアーム27を移動させることにより、酸性薬液ノズル24を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に移動させるノズル移動ユニット28に接続されている。ノズル移動ユニット28は、カップ17のまわりで鉛直に延びる回動軸線まわりに酸性薬液ノズル24を回動させる旋回機構である。第1ノズル移動機構は、酸性薬液ノズル24から吐出された液体が基板Wの上面に着液する処理位置と、平面視で酸性薬液ノズル24がスピンチャック7のまわりに位置する退避位置との間で、酸性薬液ノズル24を移動させる。
【0049】
アルカリ性薬液ノズル29は、アルカリ性薬液ノズル29に供給されるアルカリ性薬液を案内するアルカリ性薬液配管30に接続されている。アルカリ性薬液ノズル29に対するアルカリ性薬液の供給および供給停止を切り替えるアルカリ性薬液バルブ31は、アルカリ性薬液配管30に介装されている。アルカリ性薬液バルブ31が開かれると、アルカリ性薬液が、アルカリ性薬液ノズル29から下方向に連続的に吐出される。アルカリ性薬液は、たとえば、SC−1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合液)である。アルカリ性の薬液であれば、アルカリ性薬液は、SC−1以外の液体であってもよい。
【0050】
アルカリ性薬液ノズル29は、スキャンノズルである。アルカリ性薬液ノズル29は、仕切板23よりも上方で水平に延びるノズルアーム32の先端部に取り付けられている。アルカリ性薬液ノズル29は、ノズルアーム32を移動させることにより、アルカリ性薬液ノズル29を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に移動させるノズル移動ユニット33に接続されている。ノズル移動ユニット33は、カップ17のまわりで鉛直に延びる回動軸線まわりにアルカリ性薬液ノズル29を回動させる旋回機構である。第2ノズル移動機構は、処理位置と退避位置との間でアルカリ性薬液ノズル29を移動させる。
【0051】
リンス液ノズル34は、チャンバー4内の所定位置に固定された固定ノズルである。リンス液ノズル34は、スキャンノズルであってもよい。リンス液ノズル34は、リンス液ノズル34に供給されるリンス液を案内するリンス液配管35に接続されている。リンス液ノズル34に対するリンス液の供給および供給停止を切り替えるリンス液バルブ36は、リンス液配管35に介装されている。リンス液バルブ36が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル34から基板Wの上面中央部に向けて下方に吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0052】
有機薬液ノズル37は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。有機薬液ノズル37は、スピンチャック7の上方に配置されている。有機薬液ノズル37は、遮断板12、支軸13、および支持アーム14と共に昇降する。有機薬液ノズル37は、支持アーム14に対して回転不能である。有機薬液ノズル37は、支軸13内に挿入されている。有機薬液ノズル37は、支軸13内に設けられた筒状流路41に取り囲まれている。筒状流路41は、遮断板12の下面の中央部に設けられた中央吐出口40に繋がっている。有機薬液ノズル37の下端は、中央吐出口40の上方に配置されている。
【0053】
有機薬液ノズル37は、有機薬液ノズル37に供給される有機薬液を案内する有機薬液配管38に接続されている。有機薬液ノズル37に対する有機薬液の供給および供給停止を切り替える有機薬液バルブ39は、有機薬液配管38に介装されている。有機薬液バルブ39が開かれると、有機薬液が、有機薬液ノズル37から下方向に連続的に吐出され、遮断板12の中央吐出口40を介して基板Wの上面に供給される。有機薬液は、たとえば、IPAである。有機薬液は、IPA以外のアルコールであってもよいし、アルコール以外の有機溶剤であってもよい。たとえば、有機薬液は、HFE(ハイドロフロロエーテル)であってもよい。
【0054】
遮断板12の中央吐出口40は、中央吐出口40に供給される不活性ガスを案内するガス配管42に接続されている。中央吐出口40に対する不活性ガスの供給および供給停止を切り替えるガスバルブ43は、ガス配管42に介装されている。ガスバルブ43が開かれると、不活性ガスが、筒状流路41を介して中央吐出口40に供給され、中央吐出口40から下方向に連続的に吐出される。遮断板12の下面が基板Wの上面に近接している状態で、中央吐出口40が不活性ガスを吐出すると、基板Wと遮断板12との間の空間が不活性ガスで満たされる。不活性ガスは、たとえば、窒素ガスである。不活性ガスは、アルゴンガスなどの窒素ガス以外の不活性ガスであってもよい。
【0055】
次に、処理ユニット2で行われる基板Wの処理について説明する。
制御装置3は、プログラム等の情報を記憶する記憶部と、記憶装置に記憶された情報にしたがって基板処理装置1を制御する演算部とを含む。基板Wの処理手順および処理工程を示すレシピは、記憶部に記憶されている。制御装置3は、レシピに基づいて基板処理装置1を制御することにより、以下に説明する各工程を処理ユニット2に実行させ、各処理ユニット2に基板Wを処理させる。
【0056】
具体的には、制御装置3は、遮断板12、複数のガード18、および複数の薬液ノズルがそれぞれの退避位置に位置している状態で、搬送ロボット(図示せず)に基板Wをチャンバー4内に搬入させる(搬入工程)。制御装置3は、搬送ロボットが基板Wをスピンチャック7上に置いた後、複数のチャックピン8に基板Wを把持させる。その後、制御装置3は、スピンモータ11に基板Wの回転を開始させる。これにより、基板Wが液処理回転速度(たとえば、10〜1000rpm)で回転する。
【0057】
制御装置3は、基板Wがスピンチャック7の上に置かれた後、酸性薬液ノズル24を退避位置から処理位置に移動させ、酸性薬液バルブ26を開く。これにより、酸性薬液の一例であるSPMが、回転している基板Wの上面に向けて酸性薬液ノズル24から吐出される。このとき、制御装置3は、酸性薬液ノズル24を移動させることにより、基板Wに対するSPMの着液位置を移動させてもよい。SPMは、基板Wの上面全域に供給される。これにより、基板Wの上面がSPMで処理される(SPM供給工程)。基板Wの周囲に飛散したSPMは、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。
【0058】
制御装置3は、酸性薬液バルブ26を閉じて、酸性薬液ノズル24を処理位置から退避位置に移動させた後、リンス液バルブ36を開くことにより、リンス液の一例である純水を回転している基板Wに向けてリンス液ノズル34に吐出させる。リンス液ノズル34から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、純水が基板Wの上面全域に供給され、基板Wに付着しているSPMが洗い流される(リンス液供給工程)。基板Wの周囲に飛散した純水は、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。
【0059】
制御装置3は、リンス液バルブ36を閉じてリンス液ノズル34に純水の吐出を停止させた後、アルカリ性薬液ノズル29を退避位置から処理位置に移動させ、アルカリ性薬液バルブ31を開く。これにより、アルカリ性薬液の一例であるSC−1が、回転している基板Wの上面に向けてアルカリ性薬液ノズル29から吐出される。このとき、制御装置3は、アルカリ性薬液ノズル29を移動させることにより、基板Wに対するSC−1の着液位置を移動させてもよい。SC−1は、基板Wの上面全域に供給される。これにより、基板Wの上面がSC−1で処理される(SC−1供給工程)。基板Wの周囲に飛散したSC−1は、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。
【0060】
制御装置3は、アルカリ性薬液バルブ31を閉じて、アルカリ性薬液ノズル29を処理位置から退避位置に移動させた後、リンス液バルブ36を開くことにより、リンス液の一例である純水を回転している基板Wに向けてリンス液ノズル34に吐出させる。リンス液ノズル34から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、純水が基板Wの上面全域に供給され、基板Wに付着しているSC−1が洗い流される(リンス液供給工程)。基板Wの周囲に飛散した純水は、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。
【0061】
制御装置3は、リンス液バルブ36を閉じてリンス液ノズル34に純水の吐出を停止させた後、遮断板12を退避位置から処理位置に下降させ、有機薬液バルブ39を開く。これにより、有機薬液の一例であるIPAが、回転している基板Wの上面中央部に向けて遮断板12の中央吐出口40から吐出される。このとき、制御装置3は、ガスバルブ43を開いて、遮断板12の中央吐出口40に窒素ガスを吐出させてもよい。IPAは、基板Wの上面全域に供給される。これにより、基板W上の純水がIPAに置換され、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜が形成される(IPA供給工程)。基板Wの周囲に飛散したIPAは、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。
【0062】
制御装置3は、有機薬液バルブ39を閉じて遮断板12のIPAの吐出を停止させた後、遮断板12が処理位置に位置しており、遮断板12の中央吐出口40が窒素ガスを下方に吐出している状態で、スピンモータ11に基板Wを回転方向に加速させる。これにより、液処理速度よりも大きい乾燥速度(たとえば、数千rpm)で基板Wが回転する。基板W上のIPAは、基板Wの高速回転によって基板Wの周囲に排出される。基板Wから外方に飛散したIPAは、処理位置に位置するガード18の内周面に受け止められる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥工程)。
【0063】
制御装置3は、所定時間にわたって基板Wを高速で回転させた後、スピンモータ11に基板Wの回転を停止させる。その後、制御装置3は、複数のチャックピン8に基板Wの把持を解除させる。さらに、制御装置3は、ガスバルブ43を閉じて、遮断板12からの窒素ガスの吐出を停止させる。さらに、制御装置3は、遮断板12を処理位置から退避位置に上昇させ、複数のガード18を処理位置から退避位置に下降させる。その後、制御装置3は、搬送ロボット(図示せず)に基板Wをチャンバー4から搬出させる(搬出工程)。制御装置3は、搬入工程から搬出工程までの一連の工程を繰り返すことにより、複数枚の基板Wを基板処理装置1に処理させる。
【0064】
次に、チャンバー4の内部の洗浄について説明する。
処理ユニット2は、チャンバー4内で洗浄液を吐出することにより、チャンバー4の内部を洗浄する複数の洗浄液ノズルを備えている。複数の洗浄液ノズルは、遮断板12の上面に向けて洗浄液を吐出する上洗浄液ノズル51と、遮断板12の下面に向けて洗浄液を吐出する下洗浄液ノズル54と、チャンバー4の内面に向けて洗浄液を吐出する内面洗浄液ノズル57とを含む。下洗浄液ノズル54および内面洗浄液ノズル57は、チャンバー4に対して固定されている。上洗浄液ノズル51は、チャンバー4に対して固定されていてもよいし、遮断板12を支持する支軸13に対して固定されていてもよい。複数の洗浄液ノズルは、いずれも、仕切板23よりも上方に配置されている。
【0065】
上洗浄液ノズル51は、上洗浄液バルブ53が介装された上洗浄液配管52に接続されている。同様に、下洗浄液ノズル54は、下洗浄液バルブ56が介装された下洗浄液配管55に接続されており、内面洗浄液ノズル57は、内面洗浄液バルブ59が介装された内面洗浄液配管58に接続されている。これらの洗浄液バルブは、制御装置3によって開閉される。洗浄液は、たとえば、純水である。水を主成分とする水含有液であれば、洗浄液は、純水以外の液体であってもよい。たとえば、洗浄液は、純水以外のリンス液であってもよい。
【0066】
制御装置3は、基板Wがチャンバー4の中に存在しないときに、上洗浄液ノズル51等にチャンバー4の内部を洗浄させる。制御装置3は、一枚または複数枚の基板Wの処理が完了する度にチャンバー洗浄処理を実行してもよいし、基板処理装置1のメンテナンスの際にチャンバー洗浄処理を実行してもよい。
遮断板12を洗浄するときは、制御装置3が、遮断板12を回転させながら、上洗浄液ノズル51および下洗浄液ノズル54に洗浄液を吐出させる。上洗浄液ノズル51から吐出された洗浄液は、遮断板12の上面に着液した後、遮断板12の上面に沿って外方に流れる。同様に、下洗浄液ノズル54から吐出された洗浄液は、遮断板12の下面に着液した後、遮断板12の下面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの処理の際に遮断板12に付着した処理液の飛沫等が洗浄液によって洗い流され、遮断板12の上面および下面が洗浄液で洗浄される。
【0067】
チャンバー4の内面を洗浄するときは、制御装置3が、内面洗浄液ノズル57に洗浄液を吐出させる。内面洗浄液ノズル57から吐出された洗浄液は、チャンバー4の内面に着液した後、チャンバー4の内面に沿って下方に流れる。これにより、基板Wの処理の際にチャンバー4に付着した処理液の飛沫等が洗浄液によって洗い流され、チャンバー4の内面が洗浄液で洗浄される。
【0068】
また、制御装置3は、遮断板12を洗浄するときに、遮断板12から外方に飛散した洗浄液の一部がチャンバー4の内面に供給されるように、遮断板12の回転速度を制御する。さらに、制御装置3は、回転している遮断板12に向けて上洗浄液ノズル51および下洗浄液ノズル54の少なくとも一方が洗浄液を吐出している状態で、遮断板12を昇降させる。遮断板12から外方に飛散した洗浄液がチャンバー4の内面に当たる位置は、遮断板12の昇降により鉛直に移動する。これにより、チャンバー4の内面の広い範囲に洗浄液が直接当たり、チャンバー4の内面が効果的に洗浄される。
【0069】
チャンバー4の底部は、チャンバー4内で液体を溜めるバット60を形成している。バット60は、上向きに開いた浅い箱形である。仕切板23やカップ17は、バット60の上方に配置されている。複数の洗浄液ノズルは、いずれも、仕切板23の上方で洗浄液を吐出する。洗浄液は、仕切板23の外縁とチャンバー4との間の隙間や、仕切板23の内縁とカップ17との間の隙間を通って、仕切板23の下方に移動する。仕切板23の下方に移動した洗浄液は、バット60に溜められる。
【0070】
バット60内の液体を排出する排液口61は、バット60の底面から上方に離れた位置に配置されている。同様に、後述する個別排気流路71の排気入口71aは、バット60の底面から上方に離れた位置に配置されている。バット60内の液面が排液口61に達すると、液体の一部が排液口61を通じて排液流路62に排出される。そのため、一定量の洗浄液が常にバット60内に保持される。チャンバー4内で発生した薬品雰囲気がバット60内の洗浄液(純水)に接触すると、薬品雰囲気に含まれる薬品が洗浄液に溶け込み、薬品雰囲気から除去される。
【0071】
次に、排気の流れについて説明する。
以下では、
図1および
図2を参照する。
図2は、基板処理装置1の排気系統について説明するための模式図である。
チャンバー4は、個別排気流路71、集合排気流路72、および気液分離器73をこの順番に介して、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気処理設備に接続されている。個別排気流路71は、個別排気ダクト74によって形成されており、集合排気流路72は、集合排気ダクト75によって形成されている。排気処理設備の吸引力は、個別排気流路71等を介して各チャンバー4に伝達される。チャンバー4から排出された雰囲気は、個別排気流路71および集合排気流路72によって排出方向D1に案内される。集合排気流路72内の雰囲気は、気液分離器73で液体成分が除去された後、排気処理設備に流入する。
【0072】
同じ塔の3つの処理ユニット2にそれぞれ接続された3つの個別排気流路71は、同じ集合排気流路72に接続されている。集合排気流路72は、上下方向に延びている。同じ塔の3つのチャンバー4のそれぞれは、集合排気流路72の側方に位置している。3つの個別排気流路71は、3つのチャンバー4から集合排気流路72までに水平に延びている。3つの個別排気流路71は、上下方向に関して異なる3つの位置で集合排気流路72に接続されている。そのため、排気処理設備からチャンバー4までの距離は、3つのチャンバー4で異なる。排気処理設備からチャンバー4に伝達される吸引力は、圧力損失のばらつきにより3つのチャンバー4で異なる。
【0073】
チャンバー4に伝達される吸引力のばらつきは、3つの個別排気流路71にそれぞれ配置された3つの排気ダンパー76によって低減される。排気ダンパー76は、個別排気流路71内に配置された弁体77を含む。排気ダンパー76は、弁体77を人力で移動させる手動ダンパーであってもよいし、弁体77を移動させるアクチュエータを備えたオートダンパーであってもよい。
図2は、弁体77が円板状である例を示している。
図2に示す弁体77がその直径に沿って延びる回転軸線まわりに回転すると、個別排気流路71の流路面積が増減し、チャンバー4から個別排気流路71に排出される雰囲気の流量(排気流量)が変化する。したがって、3つの排気ダンパー76の開度を調節することにより、吸引力(排気圧)のばらつきを低減できる。
【0074】
個別排気流路71は、チャンバー4内の雰囲気が流入する排気入口71aを含む。排気入口71aは、個別排気流路71の上流端に相当する。
図2は、排気入口71aがチャンバー4の内面によって形成されている例を示している。排気入口71aは、チャンバー4以外の部材によって形成されていてもよい。たとえば、個別排気ダクト74の上流端がチャンバー4の内面からチャンバー4内に突出している場合は、個別排気ダクト74の上流端が、排気入口71aを形成していてもよい。
【0075】
個別排気流路71は、排気入口71aに流入した雰囲気を集合排気流路72に排出する排気出口71bを含む。排気出口71bは、個別排気流路71の下流端に相当する。複数の排気出口71bを水平に見ると、複数の排気出口71bは、間隔を空けて鉛直方向に並んでいる。
図2は、3つの排気出口71bが同じ鉛直な平面上に配置されている例を示している。排気出口71bで液滴が発生した場合、この液滴は、排気出口71bから集合排気流路72内に排出され、集合排気流路72の内面に沿って下方に流れる。水平に見ると複数の排気出口71bが間隔を空けて鉛直方向に並んでいるので、集合排気流路72の内面に沿って下方に流れる液滴が、下側の排気出口71bに入るおそれがある。
【0076】
排気出口71bへの液滴の流入を防止する庇部78は、排気出口71bの上縁から集合排気流路72内に延びている。2つの庇部78は、それぞれ、下側の2つの排気出口71bに接続されている。庇部78は、集合排気流路72の下流に向かって排気出口71bから斜め下に延びる上面78aと、上面78aの先端(下端)から鉛直に下方に延びる先端面78bとを含む。2つの庇部78の突出量、つまり、排気出口71bから庇部78の先端までの水平方向への距離D3は、集合排気流路72の下流に近づくにしたがって減少している。2つの庇部78を上から鉛直に見ると、下側の庇部78は、上側の庇部78で隠れている。
【0077】
一番上の排気出口71bから下流に排出された液滴(
図2の黒点参照)は、この排気出口71bの下縁から集合排気流路72の内面に沿って下方に流れ、上側の庇部78に到達する。この液滴は、上側の庇部78の上面78aによって斜め下方に案内される。同様に、真ん中の排気出口71bから下流に排出された液滴は、下側の庇部78に到達した後、下側の庇部78の上面78aによって斜め下方に案内される。したがって、ある排気出口71bから排出された薬品の液滴が、他の排気出口71bに進入することを抑制または防止できる。
【0078】
また、庇部78の上面78aによって案内される液滴は、庇部78の先端面78bから下方に落下し、気液分離器73の中に入る。鉛直に見たときに、下側の庇部78が上側の庇部78から突出していると、上側の庇部78から落下した液滴が、下側の庇部78に付着する。各チャンバー4では独立して処理を行っているため、異種の薬品同士が下側の庇部78で接触するおそれがある。したがって、下側の庇部78を上側の庇部78で隠すことにより、このような薬品の接触を抑制または防止できる。
【0079】
次に、排気の洗浄について説明する。
以下では、
図3〜
図5を参照する。
図3は、排気洗浄装置81の複数の除去液ノズル82を水平に見た模式図である。
図4は、複数の除去液ノズル82を下から見た模式図である。
図5は、薬品雰囲気を除去液で洗浄する一例を示すタイムチャートである。
図4において、クロスハッチングされた領域は、除去液吐出口83を示している。
【0080】
薬液が基板Wに着液すると、薬液のミストや液滴が発生する。薬液が基板Wから飛散したり、飛散した薬液がガード18に衝突したときも、薬液のミストや液滴が発生する。そのため、薬品雰囲気(薬品を含む雰囲気)がチャンバー4内に発生する。さらに、複数種の薬液がチャンバー4内で基板Wに順次供給されるので、複数種の薬品雰囲気がチャンバー4内で順次発生する。
【0081】
基板処理装置1は、薬品雰囲気に含まれる薬品を除去する複数の排気洗浄装置81を備えている。複数の排気洗浄装置81は、それぞれ、複数のチャンバー4に対応している。排気洗浄装置81は、除去液を吐出する複数の除去液ノズル82を含む。複数の除去液ノズル82は、チャンバー4内に配置されている。複数の除去液ノズル82は、個別排気流路71の排気入口71aの上流に配置されている。複数の除去液ノズル82は、排出方向D1に並んでいる。複数の除去液ノズル82は、基板Wよりも下方に配置されている。複数の除去液ノズル82は、仕切板23の下方に位置している。
【0082】
図4は、複数の除去液ノズル82を下から見た図である。除去液ノズル82は、複数の線状の液流を形成するシャワーノズルである。除去液ノズル82は、排出方向D1に直交する水平な交差方向D2に延びる棒状である。除去液ノズル82は、排出方向D1に直交する水平な交差方向D2に等間隔で並んだ複数の除去液吐出口83を含む。各除去液吐出口83は、たとえば、除去液を下方向に鉛直に吐出する。複数の除去液ノズル82は、互いに平行であり、排出方向D1に並んでいる。
【0083】
複数の除去液ノズル82は、3本の第1除去液ノズル82Aと、3本の第1除去液ノズル82Aの間に配置された2本の第2除去液ノズル82Bとを含む。第2除去液ノズル82Bの複数の除去液吐出口83は、第1除去液ノズル82Aの複数の除去液吐出口83に対して交差方向D2にずれている。第2除去液ノズル82Bの除去液吐出口83の少なくとも一部は、交差方向D2に関して、第1除去液ノズル82Aの複数の除去液吐出口83の間に位置している。第1除去液ノズル82Aの複数の除去液吐出口83と、第2除去液ノズル82Bの複数の除去液吐出口83とは、互い違いに配置されている。
【0084】
除去液ノズル82は、除去液バルブ85が介装された除去液配管84に接続されている。除去液バルブ85および除去液配管84は、除去液ノズル82ごとに設けられている。制御装置3が除去液バルブ85を開くと、この除去液バルブ85に対応する除去液ノズル82から除去液が吐出される。また、制御装置3が除去液バルブ85の開度を増減すると、この除去液バルブ85に対応する除去液ノズル82から吐出される除去液の流量が変更される。複数の除去液ノズル82からの除去液の吐出は、個別に切り替えられる。各除去液配管84は、同じ除去液供給源に接続されている。除去液は、たとえば、純水である。水を主成分とする水含有液であれば、除去液は、純水以外の液体であってもよい。たとえば、除去液は、純水以外のリンス液であってもよい。除去液の温度は、室温(20〜30℃)未満であってもよいし、室温以上であってもよい。
【0085】
一つの除去液ノズル82が複数の除去液吐出口83から除去液を吐出すると、除去液の帯状のシャワーが形成され、除去液が分散した帯状の分散領域が、排気入口71aの前に形成される。複数の除去液ノズル82が除去液を吐出すると、排出方向D1に積層された複数の分散領域が排気入口71aの前に形成される。排気入口71aは、除去液の帯状のカーテンによって実質的に塞がれる。そのため、チャンバー4から個別排気流路71に排出される薬品雰囲気は、排気入口71aの前で除去液に接触する。薬品雰囲気に含まれる薬品は、除去液(純水)に溶け込み、薬品雰囲気から除去される。
【0086】
制御装置3は、基板Wの処理が行われているときに、少なくとも一つの除去液バルブ85を開いて、1つ以上の除去液ノズル82に除去液を吐出させる。
図5は、薬品雰囲気を除去液で洗浄する一例を示すタイムチャートである。この例では、制御装置3は、IPAが基板Wに供給されるときに(IPAが有機薬液ノズル37から吐出されるときに)、3本(第1本数)の第1除去液ノズル82Aだけに除去液を吐出させる。そして、制御装置3は、基板Wを乾燥させるためにIPAを基板Wから除去するときに、5本(第2本数)の除去液ノズル82に洗浄液を吐出させる。
【0087】
IPAは、水との親和性が極めて高い。したがって、
図5に示す例のように、IPAを含む薬品雰囲気を除去液(純水)に接触させることにより、薬品雰囲気に含まれるIPAを効果的に除去することができる。さらに、基板Wを乾燥させるときは、基板Wから排出されたIPAがガード18に激しく衝突するので、IPAのミストの発生量が増加し、薬品雰囲気におけるIPAの濃度が増す。したがって、基板Wを乾燥させるときに除去液を吐出する除去液ノズル82の本数を増やすことにより、洗浄後の薬品雰囲気に含まれるIPAの量が増加することを抑制または防止できる。
【0088】
以上のように本実施形態では、複数種の薬品(酸性薬液、アルカリ性薬液、および有機薬液)がチャンバー4内で基板Wに順次供給される。チャンバー4内で発生した薬品雰囲気(薬品を含む雰囲気)は、排気入口71aを通じてチャンバー4から個別排気流路71に排出される。除去液が分散した分散領域は、排気入口71aの上流の位置および個別排気流路71内の位置の少なくとも一方に形成される。したがって、薬品雰囲気は、チャンバー4内または個別排気流路71内で除去液に接触する。
【0089】
薬品雰囲気に含まれる薬品がチャンバー4内または個別排気流路71内で除去液に接触すると、薬品雰囲気中の薬品の含有量が減少する。したがって、個別排気流路71の内面に付着する薬品の量を低減できる。そのため、先の薬品雰囲気に含まれる薬品とは種類の異なる薬品を含む雰囲気が個別排気流路71を通過する場合でも、個別排気流路71内で発生するパーティクルの数を減らすことができる。これにより、個別排気流路71からチャンバー4に逆流するパーティクルの数を減らすことができ、基板Wの清浄度を高めることができる。
【0090】
本実施形態では、除去液が分散した分散領域が、排気入口71aの少なくとも一部と同じ高さに形成される。排気入口71aと分散領域との高さが異なる場合、排気入口71aから分散領域までの距離が長くなる。これは、薬品成分が除去される前の薬品雰囲気が通過する経路が長くなること意味する。したがって、分散領域を排気入口71aの少なくとも一部と同じ高さに配置することにより、複数種の薬品が接触し得る領域を小さくすることができる。これにより、個別排気流路71内で発生するパーティクルの数を減らすことができる。
【0091】
本実施形態では、チャンバー4から排出された雰囲気が流れる方向に複数の分散領域が並んでいるので、薬品雰囲気が複数の分散領域を順次通過する。これにより、薬品雰囲気と除去液との接触回数および接触時間が増加するので、薬品雰囲気中の薬品の含有量をさらに減らすことができる。これにより、個別排気流路71内で発生するパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0092】
本実施形態では、交差方向D2に並んだ複数の除去液吐出口83から除去液が吐出される。これにより、除去液の帯状のカーテンが形成され、除去液が帯状の分散領域に分散する。上流側の複数の除去液吐出口83が下流側の複数の除去液吐出口83に対して交差方向D2にずれているので、薬品雰囲気が上流側の除去液のカーテンに当たらずに通過したとしても、この薬品雰囲気は下流側の除去液のカーテンに接触する。そのため、薬品雰囲気に含まれる薬品に除去液を確実に接触させることができ、薬品雰囲気中の薬品の含有量を減らすことができる。
【0093】
本実施形態では、除去液の吐出および吐出停止が、複数の除去液バルブ85の開閉によって除去液ノズル82ごとに切り替えられる。また、除去液ノズル82から吐出される除去液の流量は、制御装置3が除去液バルブ85の開度を変更することにより調整される。除去液は、開状態の除去液バルブ85と同数の除去液ノズル82から吐出される。分散領域に分散した除去液はチャンバー4から排出される雰囲気に抵抗を加える。そのため、除去液ノズル82が除去液を吐出したり、除去液ノズル82から吐出される除去液の流量が変更されると、チャンバー4から排出される雰囲気の流量(排気流量)が変化する。たとえば、全ての除去液ノズル82が除去液を吐出しているときの排気流量は、一部の除去液ノズル82しか除去液を吐出していないときの排気流量よりも小さい。したがって、複数の除去液ノズル82からの除去液の吐出を個別に切り替えることにより、排気流量を調節することができる。
【0094】
本実施形態では、基板WにIPAを供給するIPA供給工程の後に、IPA供給工程で基板Wに供給されたIPAを基板Wから除去する乾燥工程が実行される。基板Wの熱は、基板W上のIPAが蒸発するときにIPAに奪われる。そのため、基板Wの温度は、乾燥工程が実行されているときに低下する。また、チャンバー4から排出される雰囲気の流量が大きいと、強い気流が基板Wの近くに形成されるので、IPAの蒸発が促進されると共に、気流によって基板Wが冷却される。基板Wの温度が急激に低下すると、基板W上での結露により、ウォーターマークが形成されるおそれがある。
【0095】
除去液は、IPAを基板Wに供給する期間と基板Wを乾燥させる期間とに吐出される。乾燥工程が実行されているときに除去液を吐出する除去液ノズル82の本数(第2本数)は、IPA供給工程が実行されているときに除去液を吐出する除去液ノズル82の本数(第1本数)よりも多い。除去液を吐出する除去液ノズル82の本数が増えると、分散領域の数が増えるので、チャンバー4から排出される雰囲気に加わる抵抗が増加する。したがって、乾燥工程中に基板Wの近くの気流を弱めることができる。これにより、乾燥工程中における基板Wの温度低下を軽減することができる。
【0096】
本実施形態では、排気洗浄装置81から吐出された除去液が、チャンバー4の底部に設けられたバット60に溜められる。チャンバー4内を漂う薬品雰囲気に含まれる薬品は、チャンバー4の底部で除去される。したがって、薬品雰囲気が個別排気流路71に入る前に、薬品雰囲気中の薬品を除去できる。さらに、分散領域を形成するために吐出された除去液をバット60で再利用するので、除去液の消費量を低減できる。
【0097】
本実施形態では、排気洗浄装置81によって吐出される除去液と同種の液体である洗浄液がチャンバー4内で吐出される。これにより、チャンバー4の内部が洗浄される。チャンバー4の内部を洗浄した洗浄液は、チャンバー4の底部に設けられたバット60に溜められる。チャンバー4内を漂う薬品雰囲気に含まれる薬品は、チャンバー4の底部で除去される。したがって、薬品雰囲気が個別排気流路71に入る前に、薬品雰囲気中の薬品を除去できる。さらに、チャンバー4の内部を洗浄するために吐出された洗浄液をバット60で再利用するので、除去液の消費量を低減できる。
【0098】
本実施形態では、複数のチャンバー4から複数の個別排気流路71に排出された薬品雰囲気が、集合排気流路72に流入する。集合排気流路72に流入する薬品雰囲気は、複数の排気洗浄装置81によって予め薬品の含有量が低減されている。したがって、複数種の薬品が集合排気流路72で接触することを抑制または防止できる。さらに、複数の個別排気流路71が集合排気流路72に集合しているので、吸引力を発生する排気設備等を個別排気流路71ごとに設けなくてもよい。
【0099】
本実施形態では、個別排気流路71の排気出口71bで薬品の液滴が発生した場合、この液滴は、排気出口71bから集合排気流路72内に排出され、集合排気流路72の内面に沿って下方に流れる。水平に見ると複数の排気出口71bが間隔を空けて鉛直方向に並んでいるので、集合排気流路72の内面に沿って下方に流れる液滴が、下側の排気出口71bに入るおそれがある。しかしながら、排気出口71bの上縁から集合排気流路72内に突出する庇部78が設けられているので、上側の排気出口71bから排出された薬品の液滴が、下側の排気出口71bに進入することを抑制または防止できる。
【0100】
本実施形態では、下流側の庇部78の全部または一部が上流側の庇部78で隠れている。庇部78上の薬品の液滴は、庇部78の縁から下方に落下する。鉛直に見たときに、下流側の庇部78が上流側の庇部78から突出していると、上流側の庇部78から落下した液滴が、下流側の庇部78に付着する。そのため、異種の薬品同士が下流側の庇部78で接触するおそれがある。したがって、下流側の庇部78を上流側の庇部78で隠すことにより、このような薬品の接触を抑制または防止できる。
【0101】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、SPMを基板Wに供給した後に、基板W上のSPMを純水で洗い流す場合について説明したが、純水を供給する前に、過酸化水素水を供給してもよい。
【0102】
前述の実施形態では、遮断板12が設けられている場合について説明したが、遮断板12を省略してもよい。
図6に示すように、排気洗浄装置81は、チャンバー4内で除去液を吐出するチャンバー内除去液ノズル82に代えてまたは加えて、個別排気流路71内で除去液を吐出する流路内除去液ノズル92を備えていてもよい。
【0103】
図6は、除去液ノズル92が除去液のミストを生成するスプレーノズルである例を示している。除去液ノズル92は、除去液バルブ85が介装された除去液配管84に接続されている。除去液ノズル92が除去液を吐出すると、除去液のミストが円錐状に広がり、円錐状の分散領域が個別排気流路71内に形成される。除去液ノズル92は、たとえば、個別排気流路71内に配置された排気ダンパー76の弁体77に向けて除去液を下方に吐出する。除去液ノズル92は、弁体77の上流または下流の位置に向けて個別排気流路71内で除去液を吐出してもよい。
【0104】
この構成によれば、流路内除去液ノズル92は、弁体77に向けて除去液を吐出することにより、除去液が分散した分散領域を個別排気流路71内に形成する。除去液の一部は、弁体77の表面に保持される。個別排気流路71内の薬品雰囲気は、空気中に分散した除去液に接触するだけでなく、弁体77の表面に保持された除去液にも除去する。これにより、薬品雰囲気中の薬品の含有量をさらに減らすことができる。さらに、個別排気流路71内に通常設けられる部材(弁体77)に除去液を保持させるので、部品点数の増加を防止できる。
【0105】
前述の実施形態では、IPAが基板Wに供給される期間(IPA供給工程)と基板Wを乾燥させる期間(乾燥工程)とに、除去液を吐出する場合について説明したが、これら以外の期間に除去液を吐出してもよい。たとえば、IPA供給工程および乾燥工程に加えてまたは代えて、SPMおよびSC−1の少なくとも一方が基板Wに供給される期間(薬液供給工程)に除去液が吐出されてもよい。また、基板Wがチャンバー4の中にある全期間において除去液が吐出されてもよいし、基板Wがチャンバー4の中にあるか否かにかかわらず除去液が吐出されてもよい。
【0106】
前述の実施形態では、基板Wを乾燥させるときに除去液を吐出する除去液ノズル82の本数(第2本数)が、IPAが基板Wに供給されるときに除去液を吐出する除去液ノズル82の本数(第1本数)よりも多い場合について説明したが、第1本数は、第2本数よりも多くてもよいし、第2本数と等しくてもよい。また、IPA供給工程および乾燥工程以外の工程において、除去液を吐出する除去液ノズル82の本数を調整してもよい。
【0107】
除去液ノズル82は、下方向に限らず、上方向に除去液を吐出してもよいし、水平方向に除去液を吐出してもよい。
前述の実施形態では、除去液が分散した分散領域が、排気入口71aの上流の位置または個別排気流路71内の位置に形成される場合について説明したが、排気ダンパー76の下流の位置に分散領域が形成されてもよい。たとえば、
図2に示す最も上側の処理ユニット2に対応する分散領域が、当該処理ユニット2に対応する排気ダンパー76から当該処理ユニット2に対応する上側の庇部78までの範囲に形成されてもよい。この場合、分散領域は、排気入口71aの少なくとも一部と等しい高さに位置していなくてもよい。たとえば、分散領域の全体を、排気入口71aよりも上方または下方の位置に形成してもよい。
【0108】
前述の実施形態では、上流側の複数の除去液吐出口83が下流側の複数の除去液吐出口83に対して交差方向D2にずれている場合について説明したが、上流側の複数の除去液吐出口83は、複数の除去液吐出口83に対して交差方向D2にずれていなくてもよい。
前述の実施形態では、複数の除去液ノズル82にそれぞれ対応する複数の除去液バルブ85が設けられている場合について説明したが、一つの除去液バルブ85で全ての除去液ノズル82からの除去液の吐出、吐出停止、および流量を切り替えてもよい。
【0109】
前述の実施形態では、2つの庇部78を上から鉛直に見ると、下流側の庇部78が上流側の庇部78で隠れている場合について説明したが、下流側の庇部78が上流側の庇部78から突出していてもよい。全部または一部の庇部78が省略されてもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
【0110】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。