(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618118
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定装置
(51)【国際特許分類】
G01G 19/18 20060101AFI20191202BHJP
G01G 19/14 20060101ALI20191202BHJP
B66C 13/16 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
G01G19/18 Z
G01G19/14 A
B66C13/16 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-169675(P2016-169675)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36152(P2018-36152A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−011765(JP,U)
【文献】
特開平07−053180(JP,A)
【文献】
特開2002−284481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/14−19/20
B66C 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定装置において、低速速度到達信号及び定格速度到達信号を出力するようにした速度制御装置と、巻上げ起動した直後の速度制御装置から低速速度到達信号が出力された時に1回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて1回目の荷重換算を行う低速用荷重換算手段と、その後、加速し、速度制御装置から定格速度到達信号が出力された時に2回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて2回目の荷重換算を行う定格速度用荷重換算手段とを備えてなることを特徴とする電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定装置。
【請求項2】
前記低速用荷重換算手段による1回目の荷重換算により得られた荷重値を暫定操作用の概略荷重値として、定格速度用荷重換算手段による2回目の荷重換算により得られた荷重値を荷重値管理及び記録用の正規荷重値として、それぞれ取り扱うようにすることを特徴とする請求項1に記載の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置に関し、特に、クレーン巻上げモータに供給した電力値が吊上げ荷重値に比例することを応用し、クレーン巻上げモータの電力量を検出することで吊上げ荷重値を計測するようにした電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン巻上げモータに供給した電力値が吊上げ荷重値に比例することを応用し、クレーン巻上げモータの電力量を検出することで吊上げ荷重値を計測するようにした電力式荷重計が提案され、実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
この電力式荷重計は、通常、クレーンの巻上げモータの加速が終了し、定格速度に達して電力値が安定したところで計測を行うようにしているため、加速動作を行った後に、初めて吊上げ荷重が解ることになる。
このため、巻上げ起動した初期の安全性や操作性で不都合が生じるという問題があった。
【0003】
クレーンの吊上げ荷重の測定には、このほか、ロードセル式荷重計が汎用されている(例えば、特許文献2参照。)。
このロードセル式荷重計は、吊上げ荷重が常時計測可能であるという利点を有する反面、設備コストが高くつくという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−284481号公報
【特許文献2】特開2004−123248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の電力式荷重計及びロードセル式荷重計の有する問題点に鑑み、安価な電力式荷重計を利用し、かつ、計測時間の短縮化を行うことにより、巻上げ起動した初期の安全性や操作性を向上するようにした電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置は、電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置において、
低速速度到達信号及び定格速度到達信号を出力するようにした速度制御装置と、巻上げ起動した直後の
速度制御装置から低速速度到達信号が出力された時に1回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて1回目の荷重換算を行
う低速用荷重換算手段と、その後、加速し
、速度制御装置から定格速度到達信号が出力された時に2回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて2回目の荷重換算を
行う定格速度用荷重換算手段とを備えてなることを特徴とする。
【0007】
ここで、1回目の電力測定を、一旦加速を停止し、一定速度状態で測定を行うようにするとともに、2回目の電力測定を、指定速度に到達し、一定速度状態で測定を行うようにすることができる。
【0008】
この場合において、
前記低速用荷重換算手段による1回目の荷重換算により得られた荷重値を暫定操作用の概略荷重値として、
定格速度用荷重換算手段による2回目の荷重換算により得られた荷重値を荷重値管理及び記録用の正規荷重値として、それぞれ取り扱うようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置によれば、巻上げ起動した直後の低速時に1回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて1回目の荷重換算を行い、その後、加速した高速時に2回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて2回目の荷重換算をすることにより、安価な電力式荷重計を利用して、ブレーキ解放後直ちに荷重判断を行うことができ、計測時間の短縮化を行うことが可能となり、巻上げ起動した初期運転時の安全性や操作性を向上するようにすることができる。
ここで、1回目の荷重換算により得られる吊上げ荷重値は、2回目の荷重換算により得られる吊上げ荷重値に比べて精度が低いため、概略荷重値として、巻上げ起動した初期運転時の判断材料、すなわち、荷重の目安(重すぎるかや軽すぎるか等)として利用することができる。
【0010】
また、1回目の電力測定を、一旦加速を停止し、一定速度状態で測定を行うようにするとともに、2回目の電力測定を、指定速度に到達し、一定速度状態で測定を行うようにすることにより、吊上げ荷重の測定を、安定した状態で、正確に行うことができる。
【0011】
また、1回目の荷重換算により得られた荷重値を暫定操作用の概略荷重値として、2回目の荷重換算により得られた荷重値を荷重値管理及び記録用の正規荷重値として、それぞれ取り扱うようにすることにより、巻上げ起動した初期の安全性や操作性を向上するとともに、荷重値管理及び記録を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置を
具備するクレーンの一実施例を示すシステム構成図である。
【
図2】本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置の
動作の一例
を示すタイムチャート図である。
【
図3】本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置の
動作の一例
を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図3に、本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置の一実施例を示す。
【0015】
本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置を
具備するクレーンは、
図1に示すように、巻上げモータMをインバータ等の速度制御装置Iを用いて駆動するようにされるとともに、計器用変圧器T、計器用変流器CT及び電力計Pを配置するようにしている。
【0016】
そして、クレーンの巻上げモータMの電力値がクレーンの吊上げ荷重値に比例することを利用した電力値Wを荷重値に変換する電力式荷重計として、高速用荷重換算手段としての定格速度用荷重換算手段Gに加え、低速用荷重換算手段Dを備えるようにしている。
【0017】
速度制御装置Iには、速度指令Fが与えられ、速度制御装置Iからは低速速度到達信号Lと定格速度到達信号Hが出力され、低速速度到達信号Lが出力した時は、低速用荷重換算手段Dで演算し、定格速度到達信号Hが出力した時は、定格速度用荷重換算手段Gで演算するように構成されている。
【0018】
この場合において、低速時に測定された電力値は、測定精度が悪いため、低速用荷重換算手段Dの演算結果は、概略荷重値Aとして取り扱い、巻上げ起動した初期運転時の判断材料、すなわち、荷重の目安(重すぎるかや軽すぎるか等)として利用することができる。
また、定格速度で測定した電力値は、精度が良いので、定格速度用荷重換算手段Gの検算結果は、正規荷重値Bとして取り扱い、荷重値管理及び記録用として利用することができる。
【0019】
この一連の流れを、
図2のタイムチャート及び
図3のフローチャートに示す。
S01〜S03の巻上げ起動プロセスを行い、S04低速速度到達信号を受けると、低速速度概略荷重値測定点で、S05〜S07の1回目の概略荷重の測定プロセスを実施する。
S05電力測定(1回目)が終了すると、S08定格速度指令を出力し、定格速度まで加速させる。
S09定格速度到達信号を受けると、定格速度正規荷重値測定点でS10〜S12の2回目の正規荷重の測定プロセスを実施する。
【0020】
この電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置によれば、巻上げ起動した直後の低速時に1回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて1回目の荷重換算を行い、その後、加速した高速時に2回目の電力測定を行い、測定した電力値に基づいて2回目の荷重換算をすることにより、安価な電力式荷重計を利用して、ブレーキ解放後直ちに荷重判断を行うことができ、計測時間の短縮化を行うことが可能となり、巻上げ起動した初期運転時の安全性や操作性を向上するようにすることができる。
そして、1回目の荷重換算により得られる吊上げ荷重値は、2回目の荷重換算により得られる吊上げ荷重値に比べて精度が低いため、概略荷重値として、巻上げ起動した初期運転時の判断材料、すなわち、荷重の目安(重すぎるかや軽すぎるか等)として利用することができる。
【0021】
以上、本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の電力値によるクレーンの吊上げ荷重の測定
装置は、安価な電力式荷重計を利用し、かつ、計測時間の短縮化を行うことにより、巻上げ起動した初期の安全性や操作性を向上することができるという特性を有していることから、電力式荷重計を利用する各種クレーンに、新設、既設の区別なく適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
I 速度制御装置(インバータ)
M 巻上げモータ
T 計器用変圧器
C 計器用変流器
P 電力計
W 電力値
F 速度指令
L 低速速度到達信号
H 定格速度到達信号
D 低速用荷重換算手段
G 定格速度用荷重換算手段(高速用荷重換算手段)
A 概略荷重値
B 正規荷重値