(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の力覚センサのように、アーム部の両面に設けられる歪みゲージによってブリッジ回路が構成される場合、表面の歪みゲージと裏面の歪みゲージとが対称(平面視で一致)に設けられることが、検出精度を確保する上で重要である。しかしながら、例えばアーム部の片面ずつに歪みゲージを貼り付けて設けようとしても位置ズレが生じてしまうおそれがあり、また高精度の位置調整を行うと生産性が低下してしまう。
【0005】
本発明の一目的は、位置ズレを防止して複数の歪みゲージが起歪体に設けられる力覚センサを提供することにある。なお、本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにしていく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0007】
本発明の一解決手段に係る力覚センサは、複数の歪みゲージと、前記複数の歪みゲージが設けられる主面を有する起歪体と、を備え、前記起歪体が、力を受ける受力部と、前記受力部に対して固定される固定部と、前記受力部と前記固定部とを連結するビーム部と、を有して構成され、前記複数の歪みゲージが、前記ビーム部における前記主面にのみ設けられるとともに、前記複数の歪みゲージのうちの前記ビーム部の中心線に対して互いに対称となる位置の4つによって所定方向の力成分を検出するブリッジ回路が構成されるように設けられ
、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、y軸周りのモーメント成分My、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出するにあたり、前記複数の歪みゲージが、Fz、Mx、およびMyを検出する複数の前記ブリッジ回路を含む第1ブリッジ回路群と、Fx、Fy、およびMzを検出する複数の前記ブリッジ回路を含む第2ブリッジ回路群とに分けて構成されることを特徴とする。
この構成によれば、一つの面(ここでは主面)に対してのみ複数の歪みゲージを設けるので位置ズレを防止して検出精度を確保することができる。
本発明の一解決手段に係る力覚センサのブリッジ回路構成方法は、複数の歪みゲージと、前記複数の歪みゲージが設けられる主面を有する起歪体と、を備え、前記起歪体が、力を受ける受力部と、前記受力部に対して固定される固定部と、前記受力部と前記固定部とを連結するビーム部と、を有して構成され、前記複数の歪みゲージが、前記ビーム部における前記主面に設けられるとともに、前記ビーム部の中心線に対して互いに対称となる位置に設けられる力覚センサのブリッジ回路構成方法であって、前記複数の歪みゲージのうちの前記ビーム部の中心線に対して互いに対称となる位置の4つによって所定方向の力成分を検出するブリッジ回路を構成
し、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、y軸周りのモーメント成分My、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出するにあたり、前記複数の歪みゲージを、Fz、Mx、およびMyを検出する複数の前記ブリッジ回路を含む第1ブリッジ回路群と、Fx、Fy、およびMzを検出する複数の前記ブリッジ回路を含む第2ブリッジ回路群とに分けて構成することを特徴とする。
【0008】
また
、第1ブリッジ回路群および第2ブリッジ回路群を構成する複数の歪みゲージの位置ズレを防止すると共に、6軸方向の力成分(モーメント成分含む)を切り分けて検出することができる。
【0009】
また、前記力覚センサにおいて、前記ビーム部が、前記受力部と連結されるアームと、前記アームの延在方向と交差する方向に延在し、前記固定部と連結されるフレクシャと、を有して構成されることがより好ましい。これによれば、フレクシャのないビーム部(すなわちアームのみ)と比較して、曲げ、せん断および捩りによる歪みをより大きく発生させることができ、検出精度を確保することができる。
【0010】
また、前記力覚センサにおいて、前記複数の歪みゲージのいずれかが、前記フレクシャに設けられることがより好ましい。これによれば、一つの面(ここでは主面)に対してのみ複数の歪みゲージを設けるにあたり、アームの他にも歪みを検出し易いフレクシャにも設けることとで、その自由度を向上させることができる。
【0011】
また、前記力覚センサにおいて、前記複数の歪みゲージが、前記ビーム部の中心線に対して互いに対称となる位置に設けられることがより好ましい。これによれば、対称位置関係にある歪みゲージの抵抗値を同様に変化させることができ、また歪みゲージでブリッジ回路を構成することでその出力(不要な情報)をキャンセルさせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段によれば、位置ズレを防止して複数の歪みゲージを起歪体に設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0015】
(基本構造)
本発明の実施形態では、三次元空間の直交座標系(x軸、y軸、z軸)の3軸方向の力成分Fx、Fy、Fzと、その3軸回りのモーメント成分Mx、My、Mzの計6成分を同時に検出することができる6軸力覚センサに適用して説明する。まず、力覚センサ10(6軸力覚センサ)を構成する起歪体11の基本構造について、主に
図1を参照して説明する。
図1は、力覚センサ10を構成する起歪体11の基本構造の説明図(要部模式的平面図)である。
【0016】
起歪体11は、力を受ける受力部12と、受力部12に対して固定される固定部13と、受力部12と固定部13とを連結するビーム部14と、を有して板状体として構成される。また、ビーム部14は、受力部12と連結されるアーム15(第1構造部材)と、アーム15の延在方向と交差する方向(
図1では直交方向)に延在し、固定部13と連結されるフレクシャ16(第2構造部材)と、を有して構成される。
図1にはアーム15の延在する方向と平行なアーム15の中心線a(ビーム部14の中心線aでもある)およびフレクシャ16の延在する方向と平行なフレクシャ16の中心線b(中心線aに対しての交差線bでもある)を示している。ビーム部14がアーム15に対してフレクシャ16を有して構成されることで、フレクシャ16のないビーム部(すなわちアームのみ)と比較して、ビーム部14で曲げ、せん断および捩りによる歪みをより大きく発生させることができ、検出精度を確保することができる。
【0017】
また、
図1では、1本のビーム部14において1つのアーム15について2つのフレクシャ16が連結されている。アーム15と受力部12との連結箇所、アーム15とフレクシャ16との連結箇所、およびフレクシャ16と固定部13との連結箇所は、力覚センサ10の特性を調整するためにフィレット状に形成されている。これら連結箇所は、面取り状でもよく、特性の調整ができれば、形状は任意である。なお、連結箇所でも歪みが発生するので連結箇所はビーム部14に含まれるものとする。
【0018】
ここで、アーム15およびフレクシャ16を角柱状の構造部材とみなして、角柱に発生する応力の検出方法について、
図2を参照して説明する。
図2は、角柱に発生する応力についての説明図であり、
図2(a)が角柱を座標系に適用した状態を示す。
図2(b)〜
図2(f)では、AB面が固定された角柱に力(モーメントを含む)がかかるときの歪み方が示されている。
図2(b)はFx(−:マイナス方向、以下同じ)による歪み、
図2(c)はFx(+:プラス方向、以下同じ)による歪みを示す。また、
図2(d)はMy(−)による歪み、
図2(e)はMx(−)による歪み、
図2(f)はMz(−)による歪みを示す。
【0019】
以下では、歪みを検出する素子(歪みゲージ)が角柱のBC面(起歪体11の片面である主面11a)にブリッジ回路を構成して設けられるものとして説明する。角柱にFxの力がかかった際(例えば
図2(b)および
図2(c)参照)、BC面に設けられている全ての歪みゲージの抵抗値が同様に変化する。このため、BC面にブリッジ回路を構成しておくことで、ブリッジ回路の出力(不要な情報)をキャンセルすることができる。また、例えばMxがかかった際は、角柱が
図2(e)に示すように捻れる。このとき、角柱のBC面に設けられた歪みゲージ自体が捻れるため、歪みゲージの抵抗値変化は0または無視できる程度である。他方、曲げ歪み(
図2(d))とせん断歪み(
図2(f))に対しては、BC面に設けられた歪みゲージで検出することができる。
【0020】
6軸方向の力成分(モーメント成分を含む)を切り分けて検出する力覚センサ10(6軸力覚センサ)を構成するには、ビーム部14を持つ構造が3本以上あり、それぞれの構造において曲げ歪みとせん断歪みの組みを1つ以上検出することができればよい。また、ビーム部14において曲げ歪みおよびせん断歪みを検出することができれば、歪みゲージは、ビーム部14を構成するアーム15またはフレクシャ16の少なくともいずれか一方に設けられればよい。このように、複数の歪みゲージをビーム部14(起歪体11)における主面11a(片面)のみに設けても曲げ歪みとせん断歪みを検出することができるので、6軸方向の力成分を検出する力覚センサ10を成立させることができる。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態における力覚センサ10において、
図3〜
図6を参照して説明する。
図3は力覚センサ10の要部である起歪体11の模式的平面図である。
図4は
図3に示す円c箇所の拡大図である。
図5は力覚センサ10が備えるブリッジ回路20、21の説明図であり、
図5(a)がFz、MxおよびMyを検出するFzMxMyブリッジ回路20(第1ブリッジ回路)、
図5(b)がFx、FyおよびMzを検出するFxFyMzブリッジ回路21(第2ブリッジ回路)を示す。
図6は力覚センサ10のFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の検出表である。なお、力覚センサ10は、ブリッジ回路20、21の出力信号を処理(例えば行列演算など)するために、CPU(中央演算処理装置)およびROM、RAMなどの記憶部を有する処理部(不図示)を備える。
【0022】
本実施形態における力覚センサ10は、複数の歪みゲージ22と、複数の歪みゲージ22が設けられる主面11aを有する起歪体11とを備える。起歪体11は、外形が例えば円形(他に矩形、多角形であってもよい)の板状体であり、主面11a(表面、第1面ともいう)、その反対面(裏面、第2面)および外側面(外周面、第3面)を有する。本実施形態では、起歪体11は受力部12としての中央部12と、固定部13として中央部12の周りの同心状(環状)の枠部13と、中央部12と枠部13とを連結する複数のビーム部14とを有して構成される。ビーム部14は、中央部12の中心Oから枠部13へ向かって放射状に設けられ、アーム15と、フレクシャ16とを有して構成される。
【0023】
より具体的に起歪体11では、ビーム部14が4本で平面視クロス状(X字状、十字状)となるように、中央部12および枠部13の周方向に等間隔(中心Oの周方向に90°ごと)で配置される。そして、ビーム部14を構成するアーム15が中心Oから放射状に延在し、ビーム部14を構成するフレクシャ16がアーム15の延在方向と交差する方向に延在する。このように起歪体11では、中央部12および枠部13を剛体とみなしたときにビーム部14が弾性体とみなせるように、枠部13とアーム15との間にフレクシャ16を介在させたビーム部14を設けている。
【0024】
このような起歪体11は、例えば、NC(Numerical Control)加工機を用いてアルミニウム合金、合金鋼、ステンレス鋼などバネ性のある材料に貫通孔などを形成することによって得られる。これにより、起歪体11には、中央部12、枠部13およびビーム部14のそれぞれを区画するための空間(貫通部)が形成される。これら空間が形成されることにより、起歪体11は、外側面に対して内側面(主面11aおよび反対面と直交する面、貫通部の内壁面)を有する。
【0025】
力覚センサ10では、起歪体11の中央部12(受力部12)に力が加えられることでビーム部14に応力(曲げ、せん断、捩りといった歪み)を発生させることができる。例えば、ビーム部14の放射方向(延在方向)およびこれと直交する方向に曲げ(撓み)が発生し、ビーム部14の放射方向に対して45°方向にせん断が発生し、そしてビーム部14の周方向に捩りが発生する。力覚センサ10では、これら歪みを検出するにあたり、ビーム部14における主面11aにのみ複数の歪みゲージ22が設けられる構成である。
【0026】
歪みゲージ22としては、例えば、Cu(銅)−Ni(ニッケル)系合金やNi−Cr(クロム)系合金の金属薄膜(金属箔など)の配線パターンを、可撓性を有するポリイミドやエポキシ樹脂フィルムで覆ったものを用いることができる。このような歪みゲージ22は、接着剤を用いてビーム部14に貼り付けられ、金属薄膜がビーム部14の歪みを受けて変形したときの抵抗変化から歪みを検知、検出することができる。また、歪みゲージ22としては、歪み(曲げ・せん断)を分けて検出することができればよいので、金属薄膜ではなく半導体薄膜を用いた半導体歪みゲージを用いることもできる。また、歪みゲージ22の接着によらない搭載方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法を用いてビーム部14(起歪体11)における主面11aに金属薄膜ゲージを直接形成しても良い。このように種々の歪みゲージ22であっても、力覚センサ10では、起歪体11の一つの面(すなわち主面11a)に対してのみ設けるので、位置ズレを防止して検出精度を確保することができる。
【0027】
ここで、力覚センサ10は、FzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21を備え、複数の歪みゲージ22がFzMxMyブリッジ回路20とFxFyMzブリッジ回路21とに分けられて構成されるよう設けられる。これによれば、FzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21を構成する複数の歪みゲージ22の位置ズレを防止すると共に、6軸方向の力成分(モーメント成分含む)を切り分けて検出することができる。本実施形態では、6軸方向の力成分を切り分けるために、4本のビーム部14のそれぞれにFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21を設けている(少なくとも1組以上あればよい)。
【0028】
具体的には、
図4および
図5(a)に示すように、4つの歪みゲージ22(22a、22b、22c、22d)によって、FzMxMyブリッジ回路20が構成される。歪みゲージ22a、22b、22c、22dのそれぞれが、
図5(a)に示すFzMxMyブリッジ回路20中の符号a、b、c、dに示す位置に対応する。後述する
図6の検出表のように捉えられるように歪みゲージ22a、22b、22c、22dによってFzMxMyブリッジ回路20が構成される。
【0029】
より具体的には、歪みゲージ22aと歪みゲージ22cとは、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられる。また、歪みゲージ22bと歪みゲージ22dとは、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられる。そして、歪みゲージ22aと歪みゲージ22bとは、ビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に並ぶ位置に設けられる。また、歪みゲージ22cと歪みゲージ22dとは、ビーム部14の延在方向に並ぶ位置に設けられる。これら歪みゲージ22a、22b、22c、22dがFzMxMyブリッジ回路20として電気的に接続(配線)される。これによれば、対称位置関係にある歪みゲージ22の抵抗値を同様に変化させることができ、また歪みゲージ22でFzMxMyブリッジ回路20を構成することでその出力(不要な情報)をキャンセルさせることができる。
【0030】
FzMxMyブリッジ回路20では、
図5(a)に示すように、位置a、dの直列接続の歪みゲージ22a、22dと、位置b、cの直列接続の歪みゲージ22b、22cとが、入力信号BVに対して並列接続される。また、位置a、bの直列接続の歪みゲージ22a、22bと、位置c、dの直列接続の歪みゲージ22c、22dとが、出力信号Voに対して並列接続される。そして、入力信号BVが印加されたFzMxMyブリッジ回路20では、各歪みゲージ22a、22b、22c、22dの抵抗値の変化により非平衡状態となったときに出力信号Voが変化する。力覚センサ10ではビーム部14に応力が発生するが、FzMxMyブリッジ回路20を構成することで、干渉除去機能や温度保証機能を持たせると共に、例えば曲げ(撓み)による応力を検出する際には、せん断による応力をキャンセルさせている。
【0031】
また、
図4および
図5(b)に示すように、4つの歪みゲージ22(22A、22B、22C、22D)によって、FxFyMzブリッジ回路21が構成される。歪みゲージ22A、22B、22C、22Dのそれぞれが、
図5(b)に示すFxFyMzブリッジ回路21中の符号A、B、C、Dに示す位置に対応する。後述する
図6の検出表のように捉えられるように歪みゲージ22A、22B、22C、22DによってFxFyMzブリッジ回路21が構成される。また、起歪体11の一つの面(ここでは主面11a)に対してのみ複数の歪みゲージ22を設けるにあたり、本実施形態では、アーム15の他にも歪みを検出し易いフレクシャ16にも設けている。これにより、複数の歪みゲージ22を設けるための自由度を向上させることができる。なお、
図4では、歪みゲージ22A、22B、22C、22Dはその検出方向に関係なく模式的に示されている。
【0032】
より具体的には、歪みゲージ22Aと歪みゲージ22Dとは、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられる。また、歪みゲージ22Bと歪みゲージ22Cとは、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられる。そして、歪みゲージ22Aと歪みゲージ22Bとは、ビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に並ぶ位置に設けられ、フレクシャ16の中心線bに対して互いに対称となる位置に設けられる。また、歪みゲージ22Dと歪みゲージ22Cとは、ビーム部14の延在方向に並ぶ位置に設けられ、フレクシャ16の中心線bに対して互いに対称となる位置に設けられる。これら歪みゲージ22A、22B、22C、22DがFxFyMzブリッジ回路21として電気的に接続(配線)される。これによれば、対称位置関係にある歪みゲージ22の抵抗値を同様に変化させることができ、また歪みゲージ22でFxFyMzブリッジ回路21を構成することでその出力(不要な情報)をキャンセルさせることができる。
【0033】
FxFyMzブリッジ回路21では、
図5(b)に示すように、位置A、Dの直列接続の歪みゲージ22A、22Dと、位置B、Cの直列接続の歪みゲージ22B、22Cとが、入力信号BVに対して並列接続される。また、位置A、Bの直列接続の歪みゲージ22A、22Bと、位置C、Dの直列接続の歪みゲージ22C、22Dとが、出力信号Voに対して並列接続される。そして、入力信号BVが印加されたFxFyMzブリッジ回路21では、各歪みゲージ22A、22B、22C、22Dの抵抗値の変化により非平衡状態となったときに出力信号Voが変化する。力覚センサ10ではビーム部14に応力が発生するが、FxFyMzブリッジ回路21を構成することで、干渉除去機能や温度保証機能を持たせると共に、例えばせん断による応力を検出する際には、曲げ(撓み)による応力をキャンセルさせている。
【0034】
図6は、力覚センサ10の起歪体11の受力部12に各成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzを加えたときのFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の検出結果を示す検出表となっている。
【0035】
図6では、例えば起歪体11の平面視において時計回りに1本目のビーム部14に設けられるFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21をそれぞれ「20−1」、「21−1」としている。同様に2本目のものを「20−2」「21−2」、3本目のものを「20−3」、「21−3」、4本目のものを「20−4」、「21−4」としている。
【0036】
また、例えばFzMxMyブリッジ回路20−1の「a1」、「b1」、「c1」、「d1」はそれぞれ、1本目のビーム部14に設けられる歪みゲージ22a、22b、22c、22dに対応している。FzMxMyブリッジ回路20−2、20−3、20−4についても同様である。また、例えばFxFyMzブリッジ回路21−1の「A1」、「B1」、「C1」、「D1」はそれぞれ、1本目のビーム部14に設けられる歪みゲージ22A、22B、22C、22Dに対応している。FxFyMzブリッジ回路21−2、21−3、21−4についても同様である。
【0037】
そして、FzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21を構成する各歪みゲージ22の抵抗値が増加するときを「+」、減少するときを「−」、0また値が小さいときを「0」として検出結果を示している。また、FzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の出力信号Voは、ブリッジ出力(非平衡出力)があるときを「1」、0または値が小さいときを「0」としている。
【0038】
図6に示す検出表から、FzMxMyブリッジ回路20によれば、Fz、Mx、Myを検出することができる。また、FxFyMzブリッジ回路21によれば、Fx、Fy、Mzを検出することができる。力覚センサ10では、FxFyMzブリッジ回路21では検出し難い成分(Fz、Mx、My)をFzMxMyブリッジ回路20で検出し、FzMxMyブリッジ回路20では検出し難い成分(Fx、Fy、Mz)をFxFyMzブリッジ回路21で検出する相補的な構成となっている。このようにFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21(複数の歪みゲージ22)がビーム部14における主面11aに設けられた力覚センサ10によれば、位置ズレを防止して6軸方向の力成分を切り分けて検出することができる。
【0039】
なお、ビーム部14における主面11aにのみにFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21を構成する複数の歪みゲージ22の配置は、
図4に示す場合に限らず、
図7、
図8、
図9に示す場合であってもよい。
図7、
図8、
図9は、複数の歪みゲージ22を起歪体11のビーム部14に配置する一例の説明図であり、起歪体11の要部模式的平面図である。
図7〜
図9に示すように、FzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の組み合わせ(形状、方向)は、歪みゲージ22がビーム部14の主面11aのみに設けることができ、6軸方向の力成分を切り分けて検出することができればよい。
【0040】
図7では、FzMxMyブリッジ回路20を構成する歪みゲージ22a、22b、22c、22dおよびFxFyMzブリッジ回路21を構成する歪みゲージ22A、22B、22C、22Dがビーム部14のアーム15に設けられる。特に、ビーム部14の中心線aの近傍で中央部12側から順に歪みゲージ22a、歪みゲージ22A、歪みゲージ22Bおよび歪みゲージ22bがビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に設けられる。また、ビーム部14の中心線aの近傍で中央部12側から順に歪みゲージ22c、歪みゲージ22D、歪みゲージ22Cおよび歪みゲージ22dがビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に設けられる。
【0041】
図8では、FzMxMyブリッジ回路20を構成する歪みゲージ22a、22b、22c、22dおよびFxFyMzブリッジ回路21を構成する歪みゲージ22A、22B、22C、22Dがビーム部14のアーム15に設けられる。特に、中央部12側から順にアーム15外側(連結箇所)の歪みゲージ22A、中心線a近傍の歪みゲージ22a、22b、アーム15外側(連結箇所)の歪みゲージ22Bがビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に設けられる。また、中央部12側から順にアーム15外側(連結箇所)の歪みゲージ22D、中心線a近傍の歪みゲージ22c、22d、アーム15外側(連結箇所)の歪みゲージ22Cがビーム部14の延在方向(中心線aに沿う方向)に設けられる。
【0042】
図9では、FxFyMzブリッジ回路21を構成する歪みゲージ22A、22B、22C、22Dがアーム15に、FzMxMyブリッジ回路20を構成する歪みゲージ22a、22b、22c、22dがフレクシャ16の連結箇所に設けられる。特に、順に歪みゲージ22b、22a、22c、22dがフレクシャ16の中心線b上に設けられる。そして、歪みゲージ22aと歪みゲージ22cとが、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられ、歪みゲージ22bと歪みゲージ22dとが、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に設けられる。
【0043】
(実施形態2)
前記実施形態1では、4本のビーム部14が平面視クロス状(X字状、十字状)に構成される場合について説明した。本実施形態では、3本のビーム部14が平面視Y字状に構成される場合について、
図10および
図11を参照して説明する。
図10は力覚センサ10Aの要部である起歪体11Aの模式的斜視図である。
図11は力覚センサ10Aが備えるFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の検出表である。以下では、前記実施形態1とは相違する点を中心に説明する。
【0044】
本実施形態では、ビーム部14が3本で平面視Y字状となるように、中央部12および枠部13の周方向に等間隔(中心Oの周方向に120°ごと)で配置される。そして、ビーム部14を構成するアーム15が中心Oから放射状に延在し、ビーム部14を構成するフレクシャ16がアーム15の延在方向と交差する方向に延在する。このように起歪体11Aでは、中央部12および枠部13を剛体とみなしたときにビーム部14が弾性体とみなせるように、枠部13とアーム15との間にフレクシャ16を介在させたビーム部14を設けている。なお、
図10では図示していないが、前記実施形態1(
図4参照)と同様に、複数の歪みゲージ22がビーム部14における主面11aにのみ設けられる。
【0045】
図11は、力覚センサ10Aの起歪体11Aの受力部12に各成分Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzを加えたときのFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21の検出結果を示す検出表となっている。
【0046】
図11では、例えば起歪体11Aの平面視において時計回りに1本目のビーム部14に設けられるFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21をそれぞれ「20−1」、「21−1」としている。同様に2本目のものを「20−2」「21−2」、3本目のものを「20−3」、「21−3」としている。
【0047】
また、例えばFzMxMyブリッジ回路20−1の「a1」、「b1」、「c1」、「d1」はそれぞれ、1本目のビーム部14に設けられる歪みゲージ22a、22b、22c、22dに対応させている(
図4参照)。FzMxMyブリッジ回路20−2、20−3についても同様である。また、例えばFxFyMzブリッジ回路21−1の「A1」、「B1」、「C1」、「D1」はそれぞれ、1本目のビーム部14に設けられる歪みゲージ22A、22B、22C、22Dに対応させている(
図4参照)。FxFyMzブリッジ回路21−2、21−3についても同様である。
【0048】
図11に示す検出表から、FzMxMyブリッジ回路20によれば、Fz、Mx、Myを検出することができる。また、FxFyMzブリッジ回路21によれば、Fx、Fy、Mzを検出することができる。このようにFzMxMyブリッジ回路20およびFxFyMzブリッジ回路21(複数の歪みゲージ22)がビーム部14における主面11aに設けられた力覚センサ10Aによれば、位置ズレを防止して6軸方向の力成分を切り分けて検出することができる。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0050】
例えば、前記実施形態では、6軸力覚センサに適用した場合について説明した。これに限らず、物体が受ける力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出(計測)する力覚センサ(慣性力を検出するのであれば、加速度センサや角速度センサなどの運動センサとも呼ばれている。)にも適用することができる。
【0051】
例えば、前記実施形態では、受力部として中央部、固定部として枠部を適用した場合について説明した。これに限らず、受力部として枠部、固定部として中央部にも適用することができる。この場合、ビーム部を構成するフレクシャは固定部としての中央部側に設けられることとなる。
【0052】
例えば、前記実施形態では、ブリッジ回路を構成する複数の歪みゲージをビーム部に設けるにあたり、所定数の歪みゲージを貼り付けてブリッジ回路を構成するようにそれぞれを接続することも考えられる。これに限らず、予めブリッジ回路を構成するよう接続された所定数の歪みゲージを一体もの(ブリッジ形成ゲージ)として貼り付けることもできる。本発明は、起歪体の主面にのみ歪みゲージを設ける構成であるので、更に作業性が良く、生産性を向上させることができる。また、接続不良を防止することができ、力覚センサの信頼性を向上させることもできる。