特許第6618130号(P6618130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6618130炉内自動循環流動層ガス化炉およびその多層風案内板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618130
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】炉内自動循環流動層ガス化炉およびその多層風案内板
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/56 20060101AFI20191202BHJP
   C10J 3/54 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   C10J3/56
   C10J3/54 H
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-532765(P2018-532765)
(86)(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公表番号】特表2019-512557(P2019-512557A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】CN2017088042
(87)【国際公開番号】WO2018157502
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】201710116272.1
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201710116686.4
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518087258
【氏名又は名称】中科聚信潔能熱鍛装備研発股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHONGKEJUXIN CLEAN ENERGY &HOT FORGING EQUIPMENT RESEARCH AND DEVELOPMENT CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張 連華
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏金
(72)【発明者】
【氏名】王 季
(72)【発明者】
【氏名】張 暉
(72)【発明者】
【氏名】仇 云龍
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−157663(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/149061(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46− 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流動層ガス化炉の内板であって、前記内板は、案内板本体と、前記案内板本体内に形成される気体原料混合部貫通孔および複数個の通気孔とを含み、
前記気体原料混合部貫通孔は前記案内板本体の上面から前記案内板本体の内部に延伸し、前記複数個の通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔の底部は連通し、前記複数個の通気孔の気体入口は前記案内板本体の底面に位置し、
前記通気孔曲折するように設けられていることを特徴とする循環流動層ガス化炉の内板。
【請求項2】
前記気体原料混合部貫通孔は円柱形孔と上が小さく下が大きな中空円錐部とを含み、前記円柱形孔の上端口は前記案内板本体の上面に位置し、その下端口は前記中空円錐部の上部の辺縁に接続され、前記中空円錐部は前記気体原料混合部貫通孔の接続部として前記複数個の通気孔の気体出口と連通していることを特徴とする請求項1に記載の内板。
【請求項3】
記気体原料混合部貫通孔の底部は平面であり、該平面には原料阻止部が設けられるか、または、前記内板の底面は内板側へ窪んでいる球面形面であることを特徴とする請求項2に記載の内板。
【請求項4】
前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、垂直方向の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含み、または、
前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含むことを特徴とする請求項1に記載の内板。
【請求項5】
前記通気孔の各通気孔部分は、垂直方向に対して傾斜することにより放射形をなし、その傾斜の度合いは、案内板へ送入される気体容量と速度に基づいて設定され、かつ内板がされるガス化炉内の固体粒子の沈降速度、固体粒子の直径および/または固体粒子の密度に基づいて設けられることを特徴とする請求項4に記載の内板。
【請求項6】
炉本体と該炉本体に覆われる炉内室とを含む炉内自動循環流動層ガス化炉であって、前記炉内室は上部に形成されるキャビティとキャビティの下方に形成される内板とを含み、
前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記内板の下部に形成される気体混合室をさらに含み、
前記内板は、案内板本体と、前記案内板本体内に形成される気体原料混合部貫通孔および複数個の通気孔とを含み、前記内板の上面は前記キャビティの底部の出口を覆い、前記内板の底面は前記気体混合室の上部になり、
前記気体原料混合部貫通孔は前記案内板本体の上面から前記案内板本体の内部に延伸し、前記複数個の通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔の底部は連通し、前記複数個の通気孔の気体入口は前記案内板本体の底面に位置し、前記通気孔曲折するように設けられ
前記気体原料混合部貫通孔は前記キャビティの底部と連通し、前記通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔は連通していることを特徴とする炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項7】
前記気体原料混合部貫通孔は前記キャビティの底部の中心に位置し、前記キャビティは上部が大きく下部が小さな逆円錐形であり、前記気体混合室は予備燃焼が可能な気体混合室であることを特徴とする請求項6に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項8】
前記キャビティの中央部に形成される石炭送入管と前記キャビティの上部に形成される高温気体原料案内管とを更に含み、前記石炭送入管はキャビティと連通し、前記高温気体原料案内管の入口はキャビティと連通し、その出口は排出装置と連通することを特徴とする請求項6に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項9】
前記キャビティ内に位置する前記高温気体原料案内管の入口に形成される原料案内部をさらに含み、前記原料案内部の表面は上に向かい、前記原料案内部の上表面は円弧面であり、前記円弧面と高温気体原料案内管の管内の底部の内壁は接続されることにより、キャビティ内の原料案内部に送入される原料は高温気体原料案内管の内壁により排出装置に送入されることを特徴とする請求項8に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項10】
前記気体混合室内の予備燃焼により生成された高温気体原料混合物は、通気孔の下端の気体入口から流入し、通気孔の上端の気体出口から排出された後、気体原料混合部貫通孔により集中されて前記キャビティ内に噴射され、気体原料混合部貫通孔からキャビティに送入された高温気体原料混合物の中央には中央の流速が大きくかつ辺縁部の流速が小さな不均等な風が送入されることにより、キャビティ内において中央の気流は上へ流動し、辺縁の気流は下へ遅く流動する内循環気流が形成されることを特徴とする請求項7に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項11】
前記気体混合室と連通している気化剤案内管をさらに含み、前記気化剤案内管は気化剤を前記気体混合室に送入することを特徴とする請求項10に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項12】
前記気体混合室に連通している粉末石炭の輸送管および/または石炭塵埃の輸送管をさらに含み、前記粉末石炭の輸送管は粉末石炭を前記気体混合室に送入することに用いられ、前記石炭塵埃の輸送管は石炭塵埃を前記気体混合室に送入することに用いられ、前記高温気体原料混合物は、前記気化剤と気化剤、石炭塵埃および粉末石炭燃焼することにより生成され高温の石炭塵埃含有する石炭ガスと、を含むことを特徴とする請求項11に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項13】
前記気体原料混合部貫通孔は円柱形孔と上が小さく下が大きな中空円錐部とを含み、前記円柱形孔の上端口は前記案内板本体の上面に位置し、その下端口は前記中空円錐部の上部の辺縁に接続され、前記中空円錐部は前記気体原料混合部貫通孔の接続部として前記複数個の通気孔の気体出口と連通していることを特徴とする請求項6に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項14】
記気体原料混合部貫通孔の底部は平面であり、該平面には原料阻止部が設けられるか、または、原料案内部の縦方向の断面は円形の一部分であり、前記内板の底面は内板側へ窪んでいる球面形面であることを特徴とする請求項13に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【請求項15】
前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、垂直方向の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含み、または、前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含むことを特徴とする請求項6に記載の炉内自動循環流動層ガス化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化炉の技術分野に属し、特に、炉内自動循環流動層ガス化炉およびその多層風案内板に関し、石炭ガス化装置の専用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会の発展に伴い、熱エネルギーの需要が増加している。従来、熱獲得方法として通常、石炭を直接燃焼する方法が採用されている。しかしながら、石炭を直接燃焼することにより大量の汚染物が生成し、人々の生存の環境に大きな影響を与えるので、石炭を直接燃焼することにより熱を獲得することを禁止する様々な規定が出されている。そのため、発明者たちは石炭を石炭ガスに変換させる様々なガス化炉を発明し、石炭から変換された石炭ガスを燃焼することによりエネルギーを獲得する。例えば、固定層、循環流動層などにより石炭ガスを生成するガス化炉を採用することにより、石炭の燃焼が環境に与える汚染を低減することができる。従来の様々なガス化炉を研究してみた結果、様々なガス化炉の利点と欠点を見つけた。例えば、固定層ガス化炉は気化率と熱変換率はよいが、生成された石炭ガスにはコールタールなどの汚染物が多く含まれている。循環流動層ガス化炉は、コールタールなどの汚染物が含まれていない、きれいな石炭ガスを生成することができるが、石炭原料の熱変換率が低く、石炭の燃え殻にはコールタールが多く含まれているので、コールタールが含まれている石炭の燃え殻を燃焼の場所に搬送して再び燃焼させる必要がある。例えば発電所の燃焼の原料として採用することができる。前記問題を解決するため、石炭で石炭ガスを製造する当業者たちは、循環流動層と熱分解気化層が組み合わせられている組合式ガス化炉を発明し、これにより燃焼気化を行うとき、コールタールなどの汚染物が生成することを防止し、石炭の燃焼気化率を大幅に向上させることができる。しかしながら従来の技術は2つの欠点を有している。一つ目は、循環流動層の循環の回数が低下し、循環流動層のキャビティ内の気化温度を確保することができず、大粒子の石炭をコールタールが生成されない燃焼温度まで上昇させることができないことである。2つ目は、循環流動層のキャビティの底部に燃え殻の排出構造が設けられていないので、大粒子の非石炭がガス化炉の底部に容易に残されるおそれがあることである。
【0003】
したがって、前記問題を解決できる技術的事項を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、循環流動層ガス化炉内で複数回の自動循環燃焼気化を行い、炉内の気化の温度を確保し、石炭のガス化率を向上させることができ、塵埃の漏れが発生しない炉内自動循環流動層ガス化炉を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、多層風案内板の通気孔の直径が変化しかつ通気孔の気体出口がいずれも1つの大孔に連結されることにより、ガス化炉内に送入された風が多層風になることを確保し、かつキャビティ内の固定原料が気体混合室に入ることを有効に防止することができる、循環流動層ガス化炉の多層風案内板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、本発明は、循環流動層ガス化炉の多層風案内板を提供する。前記多層風案内板は、案内板本体と、前記案内板本体内に形成される気体原料混合部貫通孔および複数個の通気孔とを含む。前記気体原料混合部貫通孔は前記案内板本体の上面から前記案内板本体の内部に延伸し、前記複数個の通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔の底部は連通し、前記複数個の通気孔の気体入口は前記案内板本体の底面に位置する。前記通気孔の直径は変化する。
【0007】
好ましくは、前記気体原料混合部貫通孔は円柱形孔と上が小さく下が大きな中空円錐部とを含み、前記円柱形孔の上端口は前記案内板本体の上面に位置し、その下端口は前記中空円錐部の上部の辺縁に接続され、前記中空円錐部は前記気体原料混合部貫通孔の接続部として前記複数個の通気孔の気体出口と連通している。
【0008】
好ましくは、前記中空円錐部には蓋部が設けられ、前記気体原料混合部貫通孔の底部は平面であり、該平面には原料阻止部が設けられるか、または前記多層風案内板の底面は多層風案内板側へ窪んでいる球面形面である。
【0009】
好ましくは、前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、垂直方向の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含むか、または、前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含む。
【0010】
好ましくは、前記通気孔の各通気孔部分の傾斜は、所定の気体容量と気体速度により設けられ、かつ多層風案内板が位置するガス化炉内の固定粒子の沈降速度、固定粒子の直径および/または固定粒子の密度により設けられる。
【0011】
本発明の他の一側面によれば、本発明は、炉内自動循環流動層ガス化炉を提供する。前記炉内自動循環流動層ガス化炉は炉本体と該炉本体に覆われる炉内室とを含み、前記炉内室は上部に形成されるキャビティとキャビティの下方に形成される多層風案内板とを含む。前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記多層風案内板の下部に形成される気体混合室をさらに含む。前記多層風案内板は、案内板本体と、前記案内板本体内に形成される気体原料混合部貫通孔および複数個の通気孔とを含み、前記多層風案内板の上面は前記キャビティの底部の出口を詰め覆い、前記多層風案内板の底面は前記気体混合室の上部になる。前記気体原料混合部貫通孔は前記案内板本体の上面から前記案内板本体の内部に延伸し、前記複数個の通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔の底部は連通し、前記複数個の通気孔の気体入口は前記案内板本体の底面に位置し、前記通気孔の直径は変化する。前記気体原料混合部貫通孔は前記キャビティの底部と連通し、前記通気孔の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔は連通している。
【0012】
好ましくは、前記気体原料混合部貫通孔は前記キャビティの底部の中心に位置し、前記キャビティは上部が大きく下部が小さな逆円錐形であり、前記気体混合室は予備燃焼が可能な気体混合室である。
【0013】
好ましくは、前記炉内自動循環流動層ガス化炉はキャビティの中央部に形成される石炭送入管と前記キャビティの上部に形成される高温気体原料案内管とを更に含み、前記石炭送入管はキャビティと連通し、前記高温気体原料案内管の入口はキャビティと連通し、その出口は排出装置と連通する。
【0014】
好ましくは、前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記キャビティ内に位置する前記高温気体原料案内管の入口に形成される原料案内部をさらに含む。前記原料案内部の表面は上に向かい、前記原料案内部の上表面は円弧面であり、前記円弧面と高温気体原料案内管の管内の底部の内壁は接続されることにより、キャビティ内の原料案内部に送入される原料は高温気体原料案内管の内壁により排出装置に送入される。
【0015】
好ましくは、前記気体混合室内の予備燃焼により生成された高温気体原料混合物は、通気孔の下端の気体入口から流入し、通気孔の上端の気体出口から排出された後、気体原料混合部貫通孔により集中されて前記キャビティ内に噴射される。気体原料混合部貫通孔からキャビティに送入された高温気体原料混合物の中央には中央の流速が大きくかつ辺縁部の流速が小さな多層風が送入されることにより、キャビティ内において中央の気流は上へ流動し、辺縁の気流は下へ遅く流動する内循環気流が形成される。
【0016】
好ましくは、前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記気体混合室と連通している気化剤案内管をさらに含み、前記気化剤案内管は気化剤を前記気体混合室に送入する。
【0017】
好ましくは、前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記気体混合室に連通している粉末石炭の輸送管および/または石炭塵埃の輸送管をさらに含み、前記粉末石炭の輸送管は粉末石炭を前記気体混合室に送入することに用いられ、前記石炭塵埃の輸送管は石炭塵埃を前記気体混合室に送入することに用いられ、前記高温気体原料混合物に含まれる前記気化剤と気化剤、石炭塵埃および粉末石炭とが燃焼することにより高温の石炭塵埃含有石炭ガスが生成される。
【0018】
好ましくは、前記気体原料混合部貫通孔は円柱形孔と上が小さく下が大きな中空円錐部とを含み、前記円柱形孔の上端口は前記案内板本体の上面に位置し、その下端口は前記中空円錐部の上部の辺縁に接続され、前記中空円錐部は前記気体原料混合部貫通孔の接続部として前記複数個の通気孔の気体出口と連通している。
【0019】
好ましくは、前記中空円錐部には蓋部が設けられ、前記気体原料混合部貫通孔の底部は平面であり、該平面には原料阻止部が設けられるか、または、前記原料案内部の縦方向の断面は円形の一部分であり、前記多層風案内板の底面は多層風案内板側へ窪んでいる球面形面である。
【0020】
好ましくは、前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、垂直方向の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含むか、または、前記通気孔は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含む。
【発明の効果】
【0021】
従来の技術と比較してみると、本発明の実施例において、多層風案内板は通気孔の直径が変化しかつ通気孔の気体出口がいずれも1つの大孔に連結されることにより、ガス化炉内に送入された風が多層風になることを確保し、かつキャビティ内の固定原料が気体混合室に入ることを有効に防止することができる。本発明の他の実施例において、上が大きく下が小さいキャビティが設けられかつ中央の流速が大きな多層風が形成されることにより、キャビティ内の燃焼原料がキャビティ内で自動的に循環することを確保し、循環流動層ガス化炉の燃焼が必要である気温温度を確保することができる。これにより、本発明の炉内自動循環流動層ガス化炉は、キャビティ内で複数回の循環燃焼分解気化を行い、炉内の気化の温度を確保し、石炭のガス化率を向上させることができ、塵埃の漏れがないという利点などを有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施例の技術的事項をより詳細に説明するため、以下、本発明の実施例に記載されている図面を簡単に説明する。下記の図面は本発明の一部分の図面にしか過ぎず、本発明のすべての図面を示すものでない。本技術分野の技術者は創造的な研究をせずに容易に想到できる他の図面があれば、これらが本発明に含まれることは勿論である。
図1】本発明の実施例に係る炉内自動循環流動層ガス化炉を示す縦方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、特徴および発明の効果をより詳細に理解するため、以下、図面と具体的な実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0024】
本明細書中の「1つの実施例」または「実施例」は本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれている所定の特徴、構造または特性を含むことができる。本明細書の様々な箇所に記載されている「1つの実施例」とは、同一の実施例を指すものでなく、他の実施例または所定の実施例を排斥する実施例を指すものでもない。特別な説明がない場合、本明細書において、電気的接続を意味する連結、接続、接触という用語は、直接または間接的に電気接続されていることを意味する。
【0025】
発明者の発見によると、従来の技術の第一課題を解決する1つ目の方法において、石炭は循環流動層ガス化炉内で複数回、自動循環燃焼気化される。この目的を達成するため、ガス化炉の炉内室に送入される気体または気体原料混合物は不均等であり、風は内部循環が可能な多層風でなければならない。従来の風案内板において、気体を気体収納部からガス化炉の炉内室に均等に送入させるため風案内板に対して様々な改良をしてきた。この目的はガス化炉の炉内室に送入される気体をガス化炉の炉内室の各位置に均等に送入することにある。従来の風案内板において、蓋部の設計が合理的でないことにより、塵埃の漏れが多く生じ、風室のつまりが生じるおそれがある。そのため、従来の風案内板の構造を改良することが求められている。
【0026】
従来の技術の第一課題を解決する2つ目の方法において、循環流動層に送入される気化剤を加熱するか或いは初期の燃焼をすることにより、炉内室に大量の熱を送入し、炉内室の気化温度を上昇させることができる。従来の技術の第二課題を解決する方法において、異なる風案内板を設ける。新型の循環流動層と加熱分解気化層とが組み合わせられる組合式ガス化炉を採用するとき、炉内室で複数回の自動循環燃焼気化を行うガス化炉と、これに適合する多層風を形成する風案内板とを設けなければならない。
【0027】
図1を参照すると、この図は本発明の実施例に係る炉内自動循環流動層ガス化炉を示す縦方向の断面図である。図1に示される炉内自動循環流動層ガス化炉は炉本体(図示せず)と該炉本体に覆われる炉内室(図示せず)とを含む。例えば、炉本体はケースであり、炉内室は炉本体に覆われる中空部である。前記炉内室は上部に形成されるキャビティ1とキャビティ1の下方に形成される多層風案内板2(または風案内板2)とを含む。前記炉内自動循環流動層ガス化炉は前記多層風案内板2の下部に形成される気体混合室301をさらに含む。前記多層風案内板2の上面は前記キャビティ1の底部の出口を覆い、前記多層風案内板2の底面は前記気体混合室301の上部になる。
【0028】
まず、前記キャビティ1について説明する。前記キャビティ1の中央部には石炭送入管aが形成され、石炭送入管aはキャビティ1と連通している。前記キャビティ1の上部には高温気体原料案内管bが形成され、前記高温気体原料案内管bの入口はキャビティ1と連通し、その出口は排出装置(図示せず)と連通している。前記キャビティ1は上部が大きく下部が小さな構造を有し、図1に示される実施例において、前記キャビティ1は上部が大きく下部が小さな逆円錐形の構造を有している。前記キャビティ1の上部は上へ突出している球面形の構造である。前記キャビティ1が前記形状を有する原因は次のとおりである。
【0029】
前記キャビティ1内に位置する高温気体原料案内管bの入口には原料案内部が形成されている。図1に示される実施例において、前記原料案内部の表面(の方向)は上に向かい、原料案内部の上表面(の断面)は円弧面である。前記円弧面と高温気体原料案内管bの管内の底部の内壁が連通していることにより、キャビティ1内の原料案内部に送入される原料は高温気体原料案内管bの内壁により排出装置に送入される。好ましい実施例において、前記原料案内部の縦方向の断面は円形の一部分である。
【0030】
次に、前記多層風案内板2について説明する。前記多層風案内板2は、案内板本体200と、案内板本体200内に形成される気体原料混合部貫通孔203および複数個の通気孔201とを含む。前記気体原料混合部貫通孔203は前記案内板本体200の上面(或いは多層風案内板2の上面)から前記案内板本体200の内部に延伸し、前記気体原料混合部貫通孔203はキャビティ1の底部と連通している。具体的には、前記気体原料混合部貫通孔203は前記キャビティ1の底部の中心に位置する。前記通気孔201の上端の気体出口と前記気体原料混合部貫通孔203の底部は連通し、前記通気孔201の下端の気体入口と前記案内板本体200の底面(或いは多層風案内板2の底面)に位置し、前記通気孔201の下端の気体入口は前記気体混合室301と連通している。前記通気孔201は直径が変化するように設けられている。
【0031】
図1に示される実施例において、前記気体原料混合部貫通孔203は、円柱形孔205と、上が小さく下が大きな中空円錐部204とを含む。前記円柱形孔205の上端口は前記案内板本体200の上面に位置し、その下端口は前記中空円錐部204の上部の辺縁に接続される。前記中空円錐部204は前記気体原料混合部貫通孔203の接続部として前記通気孔201の上端の気体出口と連通している。前記中空円錐部204に蓋部を設けることができる。前記気体原料混合部貫通孔203の底部は平面であり、該平面には原料阻止部202が設けられている。図1に示される実施例において、前記多層風案内板2の底面は上へ突出している球面形面205(或いは前記多層風案内板2の底面は多層風案内板2側へ窪んでいる球面形面)である。すなわち前記気体混合室301の上部は上へ窪んでいる球面形面205である。
【0032】
図1に示される実施例において、前記通気孔201は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、垂直方向の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含む。他の実施例において、前記通気孔201は、この気体出口から気体入口までの方向に貫通している放射形の通気孔部分と、水平の通気孔部分とを含むことができる。すなわち、本発明の通気孔201は直径が変化するものであればいずれでもよい。本発明の実施例において、前記通気孔201の各通気孔部分の傾斜は、所定の気体容量と気体速度により設けられ、かつ多層風案内板2が位置するガス化炉内の固定粒子の沈降速度、固定粒子の直径および/または固定粒子の密度により設けられる。
【0033】
最後に、前記気体混合室301について説明する。図1に示される実施例において、気体混合室301の中央部には粉末石炭の輸送管cと石炭塵埃の輸送管dとが形成され、粉末石炭の輸送管cおよび石炭塵埃の輸送管dは気体混合室301と連通している。気体混合室301の底部には気化剤案内管eが形成され、気化剤案内管eは気体混合室301と連通している。気体混合室301は予備燃焼が可能な気体混合室である。すなわち、気化剤、石炭塵埃および粉末石炭は前記気体混合室301内で予備燃焼をすることができる。注意されたいことは、他の実施例において、1つの粉末石炭の輸送管cのみを設けるか或いは1つの石炭塵埃の輸送管dのみを気体混合室301に連通させることができることである。
【0034】
本発明の技術を容易に理解するため、以下、図1により本発明の炉内自動循環流動層ガス化炉の作動の原理を具体的に説明する。
【0035】
気体混合室301の中央部に形成された粉末石炭の輸送管cと石炭塵埃の輸送管dにより粉末石炭と石炭塵埃を気体混合室301内に送入し、気体混合室301の底部に形成された気化剤案内管eにより気化剤を気体混合室301内に送入することができる。粉末石炭および石炭塵埃と気化剤は気体混合室301内で燃焼させて気化させ、気体混合室301内の高温気体原料混合物(例えば、気化剤と気化剤、石炭塵埃および粉末石炭とが燃焼することにより高温の石炭塵埃含有石炭ガスが生成される)は多層風案内板2によりキャビティ1内に入る。これによりキャビティ1内に大量の熱を送入し、キャビティ1内の気化の温度を向上させることができる。
【0036】
具体的には、気体混合室301内の気化剤と燃焼によって生成された高温の石炭塵埃含有石炭ガスは、通気孔201の下端の気体入口から流入し、通気孔201の上端の気体出口から排出された後、気体原料混合部貫通孔203により集中されてガス化炉のキャビティ1内に噴射される。気体原料混合部貫通孔203の直径は大きく、気体原料混合部貫通孔203内で流動する気体の量が多いことにより、気体原料混合部貫通孔203からキャビティ1側に噴射される気体原料混合物の流速は異なっており、中央の流速が大きくかつ辺縁部の流速が小さな多層風が形成される。したがって、キャビティ1に送入される気化剤と高温の石炭塵埃含有石炭ガスとは、ガス化炉のキャビティ1内で上へ迅速に流動し、キャビティ1の中央部に形成された石炭送入管aによりキャビティ1内に送入される石炭は迅速に燃焼して分解、気化する。
【0037】
キャビティ1には中央の流速が大きくかつ辺縁部の流速が小さな多層風が形成され、キャビティ1は上部が大きく下部が小さな逆円錐形の構造を有しているので、ガス化炉のキャビティ1内の原料と気流により上から下へ向かう菊(或いは噴水)のような内循環現象が発生する。これにより石炭はガス化炉のキャビティ1内で複数回、循環燃焼分解気化され、キャビティ内の気化温度を確保し、石炭の気化率を向上させることができる。多層風案内板が設けられることにより高速の気流は循環流動層ガス化炉のキャビティ1内の高温気体原料混合物の中央に送入される。気体原料混合部貫通孔203に入った大直径の原料は高速の気流に吹き飛ばされ、高速の気流と共に上へ迅速に移動し、複数回循環した大直径の原料は高温気体原料案内管bにより排出装置に排出される。これにより従来の循環流動層ガス化炉において質量が大きな非石炭がガス化炉の底部に残されることを解決することができる。
【0038】
注意されたいことは、本発明の多層風案内板2は非金属耐高温材料で製造することができることである。多層風案内板2はガス化炉の壁部と一体に成型された構造であることができる。多層風案内板2とガス化炉の壁部は、別々に成型され、かつ連結構造により一体に接続されることもできる。
【0039】
以上のとおり、本発明は設けられた気体混合室301により循環流動層に送入された気化剤を加熱または初期の燃焼をし、これによりキャビティ1に大量の熱を送入し、キャビティ1内の気化温度を上昇させることができる。本発明の多層風案内板2は多層風案内板の通気孔201の直径が変化しかつ通気孔201の気体出口がいずれも1つの大孔(すなわち気体原料混合部貫通孔203)に連結されることにより、キャビティ1に送入された風が多層風になることを確保し、かつキャビティ1内の固定原料が気体混合室に入ることを有効に防止することができる。本発明の炉内自動循環流動層ガス化炉は、多層風案内板2が設けられ、かつ上が小さく下が大きな中空円錐部が設けられるキャビティにより、キャビティ1内において中央の気流は上へ流動し、辺縁の気流は下へ遅く流動する内循環気流が形成される。これにより石炭はキャビティ1内で複数回、循環燃焼分解気化され、炉内の気化の温度を確保し、石炭のガス化率を向上させることができる。また、多層風案内板2が設けられることにより高速の気流は循環流動層ガス化炉のキャビティ1内の高温気体原料混合物の中央に送入され、気体原料混合部貫通孔203に入った大直径の原料は高速の気流に吹き飛ばされ、高速の気流と共に上へ迅速に移動し、複数回循環した大直径の原料は高温気体原料案内管bにより排出装置に排出される。
【0040】
本発明において、「連結」、「接続」、「繋がる」、「当接」などは連結されることを意味する用語であり、特別な説明がない場合、直接または間接的に連結されることを意味する。
【0041】
注意されたいことは、この技術分野を熟知する技術者は本発明の特許請求の範囲が定めた範囲を逸脱しない範囲において本発明の具体的な実施形態を自由に変更することができることである。すなわち、本発明の特許請求の範囲が定めた範囲は上述した具体的な実施形態にのみ限定されるものでない。
【符号の説明】
【0042】
1 キャビティ
2 多層風案内板
3 予備加熱装置
200 案内板本体
201 通気孔
202 原料阻止部
203 気体原料混合部貫通孔
204 中空円錐部
205 円柱形孔
301 気体混合室
a 石炭送入管
b 高温気体原料案内管
c 粉末石炭の輸送管
d 石炭塵埃の輸送管
e 気化剤案内管
図1