【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明
は、合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを金属微粒子の集まりで覆い、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法
であって、
熱分解で金属を析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合
し、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液
を作成
する第二の工程と、
合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬
し、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液
を均一に付着
させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
該ペレットの集まりを昇温して前記金属化合物を熱分解
させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該金属化合物の熱分解が完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子
の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った金属微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
これら4つの工程を連続して実施す
る、
合成樹脂の融点より低い温度
で合成樹脂のペレット
を金属微粒子の集まりで覆
い、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0008】
つまり、本製造方法によれば、次の4つの簡単な工程を連続して実施することで、合成樹脂の融点より低い温度で、合成樹脂のペレットが金属微粒子の集まりで覆われ、この金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合されたペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。第一の工程は、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを混合液に浸漬し、このペレットの集まりを取り出すだけの処理である。第四の工程は、ペレットの集まりを、合成樹脂の融点より低い温度で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、金属微粒子の集まりで覆われた合成樹脂のペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品であり、合成樹脂のペレットは汎用的な工業用素材である。さらに、熱分解で金属を析出する金属化合物は、様々な金属元素からなる金属を析出する。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ペレットの表面に、熱分解で金属を析出する金属化合物が均一に付着する。
この後、合成樹脂のペレットを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ペレットの表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす金属化合物の熱分解が始まり、合成樹脂の融点より低い温度で、金属化合物の熱分解が完了し、ペレットの表面に微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子が集まりをなして析出する。この際、金属化合物の熱分解で析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、ペレットを覆った金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。なお、ペレットを覆った金属微粒子の集まりは、金属微粒子が多層構造を形成してペレットの全体を覆い、多層構造の厚みは混合液の粘度に応じて変わる。
つまり、金属微粒子の原料である金属化合物を、アルコールに分散することで金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がペレットに付着する。このようなペレットの集まりを昇温してアルコールと有機化合物とを気化すれば、金属化合物の微細結晶がペレットの表面に析出し、微細結晶の集まりがペレットを覆う。さらに昇温して微細結晶からなる金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面を覆う。この際、金属微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ペレットを覆った金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このように、本製造方法は、第一に、金属微粒子の原料を液相化し、液相化された金属化合物をペレットに付着させ、第二に、金属化合物の微細結晶を析出させ、この微細結晶を熱分解して金属微粒子を析出させる特徴を有する。これによって、ペレットが金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このような工業用薬品を混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬した合成樹脂のペレットを、合成樹脂の融点より低い温度に昇温するだけで金属化合物が熱分解し、ペレットが金属結合した粒状の金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造できる。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0009】
前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法
において、
前記金属化合物が、無機物の分子ないしは
無機イオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、
前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、
前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0010】
つまり、無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気の180−220℃の比較的低い温度で熱分解が完了し金属を析出する。このため、融点が180−220℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが合成樹脂のペレットの表面に析出する。この際、析出した粒状の金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した粒状の金属微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、これによって、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、無機物の分子ないしは
無機イオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180−220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNH
3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンCl
−が、ないしは塩素イオンCl
−とアンモニアNH
3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CN
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBr
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンI
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。
また、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールの沸点より高く、かつ、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、分子量が小さいカルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属し、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、錯体のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、錯体の熱分解温度より融点が高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを還元雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に錯体の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす錯体の熱分解が始まり、180−220℃で錯体の熱分解が完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの粒状の金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。この際、熱分解で析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造される。従って、本製造方法における錯体と有機化合物とは、合成樹脂の融点より低い温度でペレットの集まりを製造する第一の原料になる。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、合成樹脂のペレットに錯体と有機化合物とからなる混合液を付着させ、ペレットの集まりを還元雰囲気の180−220℃の温度で熱処理するだけで、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決され、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0011】
前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法
において、
前記金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、
前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記カルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、
前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0012】
つまり、二つの特徴を持つカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃の温度で熱分解が完了し金属を析出する。従って、融点が290−430℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが合成樹脂のペレットの表面に析出する。この際、析出した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した粒状の金属微粒子の集まりで覆われ、また、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、このようなペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物においては、金属イオンが最も大きいイオンを形成し、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu
2Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu
2Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅Cu
2Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、10段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液に有機化合物を混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、融点がカルボン酸金属化合物の熱分解温度より高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなすカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、290−430℃の温度でカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの粒状の金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。この際、熱分解で析出した金属は不純物を持たないため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、カルボン酸金属化合物と有機化合物とは、ペレットの集まりを製造する第二の原料になる。
以上に説明したように、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物を原料として用い、合成樹脂のペレットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ペレットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0013】
前記した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、
前記した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う金属微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合
し、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方
法。
【0014】
つまり、本製造方法に依れば、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理を連続して行ない、このペレットの集まりを用いて、従来の製法に準じて成形体を成形すると、熱融解したペレットが金属微粒子の金属結合で結合され、また、金属結合した金属微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、金属の性質を持つ成形体が製造される。従って、様々な金属の性質を持ち、金属より軽量で腐食しない成形体が、従来の合成樹脂の成形体を成形する製法で安価に製造される。
つまり、ペレットの大きさに比べて金属微粒子が5桁も小さいため、多層構造をなしてペレット全体を覆った金属結合した金属微粒子の集まりは、ペレットが熱融解した際に、また、熱融解したペレットが変形した際に、ペレットの変形に追従して変形し、ペレット全体を覆う。また、金属微粒子の金属結合で熱融解したペレット同士が結合される。
すなわち、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理をすると、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このペレットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ペレットを熱融解させて所定の形状の成形体を成形する。最初にペレットが熱融解し、ペレットの体積がわずかに膨張する。いっぽう、金属結合した金属微粒子の集まりが多層構造を形成してペレットの全体を覆うため、ペレットがわずかに体積膨張すると、金属微粒子の集まりも追従してわずかに変形するが、金属微粒子の集まりは熱融解したペレットの全体を依然として覆う。なお、ペレットを覆った金属微粒子は、合成樹脂の融点より低い温度で生成されたため、合成樹脂の融点を超える温度に昇温されると、金属微粒子は隣接する金属微粒子を取り込んで成長してわずかに粗大化する。わずかに粗大化した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した金属微粒子の集まりは、依然として熱融解したペレットの全体を覆う。次に、熱融解したペレットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形するが、金属結合した金属微粒子の集まりも同様に変形し、融解ペレットを依然として覆う。また、金属微粒子同士が互いに金属結合することで、変形した融解ペレット同士が結合される。この後、熱融解したペレットが冷却されて、合成樹脂の成形体が成形される。従って、固化したペレットは、金属微粒子の金属結合で結合されるとともに、固化したペレットを覆う金属結合した金属微粒子が、成形体に連続した経路を形成し、成形体は金属微粒子を構成する金属の性質を持つ。さらに、金属微粒子は様々な金属元素によって構成されるため、様々な金属の性質を持ち、軽量で腐食しない様々な形状からなる成形体は様々な用途に用いられる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、6段落で説明した第三の課題を解決して、合成樹脂からなる成形体が製造される。
【0015】
本発明
は、合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを合金微粒子の集まりで覆い、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法
であって、
同一の温度で熱分解して互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該複数種類の金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合
し、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記複数種類の金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、
合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬
し、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液
を均一に付着
させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
該ペレットの集まりを昇温して前記複数種類の金属化合物を同時に熱分解
させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該複数種類の金属化合物
の熱分解が
同時に完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子
の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った合金微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
これら4つの工程を連続して実施す
る、
前記合成樹脂の融点より低い温度
で合成樹脂のペレット
を合金微粒子の集まりで覆
い、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0016】
つまり、本製造方法によれば、次の4つの簡単な工程を連続して実施することで、合成樹脂の融点より低い温度で、合成樹脂のペレットが合金微粒子の集まりで覆われ、この合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。第一の工程は、複数種類の金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを混合液に浸漬した後に、ペレットの集まりを取り出すだけの処理である。第四の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを、合成樹脂の融点より低い温度で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、合成樹脂のペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用の薬品であり、合成樹脂のペレットは汎用的な工業用素材である。また、熱分解で金属を析出する金属化合物は、様々な金属元素からなる金属を析出する。このため、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが析出する。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理で、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ペレットの表面に、同一の温度で熱分解し、互いに異なる金属を同時に析出する複数種類の金属化合物が均一に付着する。
この後、合成樹脂のペレットを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ペレットの表面に、複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、合成樹脂の融点より低い温度で、複数種類の金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、微細結晶をなす複数種類の金属化合物が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たず、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、合金微粒子の原料である複数種類の金属化合物を、アルコールに分散することで複数種類の金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がペレットに付着する。このようなペレットの集まりを昇温してアルコールと有機化合物とを気化すれば、複数種類の金属化合物の微細結晶がペレットの表面に析出し、ペレットは微細結晶の集まりで覆われる。さらに昇温して、微細結晶からなる複数種類の金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面を覆う。この際、粒状の合金微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ペレットを覆った合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが製造される。このように、本製造方法は、第一に、合金微粒子の原料を液相化し、液相化された複数種類の金属化合物をペレットに付着させ、第二に、複数種類の金属化合物の微細結晶を析出させ、この微細結晶を熱分解して合金微粒子を析出させる特徴を持つ。これによって、ペレットが合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このような汎用的な工業用薬品を混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬した合成樹脂のペレットを、合成樹脂の融点より低い温度に昇温するだけで、複数種類の金属化合物が同時に熱分解し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、安価な工業用薬品を用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、ペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレットが結合したペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決され、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0017】
前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法
において、
前記複数種類の金属化合物が、無機物の分子ないしは
無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体であり、
前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類の無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、
前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0018】
つまり、複数種類の無機金属化合物からなる錯体を還元雰囲気で熱処理すると、錯体が10段落で説明した錯体で構成されるため、180−220℃の比較的低い温度で同時に熱分解し、融点が180−220℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状微粒子が、複数種類の金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金微粒子の集まりがペレットの表面に析出する。この際、析出した粒状の合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、複数種類の金属化合物が、10段落で説明した無機物の分子ないしは
無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合する互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物
からなる錯体で構成される。このため、還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の錯体の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数の金属に分解され、無機物の分子量に応じて、無機物が180−220℃の温度で気化が完了し、錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出する。これら金属は不純物を持たない活性状態にあるため、錯体のモル濃度の比率に応じた組成からなる合金が析出する。
また、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、かつ、複数種類の無機金属化合物からなる錯体が同時に熱分解する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、分子量が小さいカルボン酸エステル類、ないしは、分子量が小さいグリコールエーテル類であり、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、複数種類の無機金属化合物からなる錯体のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、複数種類の錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを還元雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、複数種類の錯体の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類の錯体の熱分解が同時に始まり、合成樹脂の融点より低い180−220℃の温度で複数種類の錯体の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、微細結晶をなす複数種類の錯体が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の錯体のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状微粒子をなして析出する。また、合金微粒子は不純物を持たないため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、複数種類の錯体と有機化合物とは、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりを製造する製造方法における第一の原料になる。さらに、複数種類の錯体における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の錯体のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりがペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である複数種類の無機金属化合物からなる錯体と、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、合成樹脂のペレットに錯体と有機化合物とからなる混合液を付着させ、ペレットの集まりを還元雰囲気の180−220℃の温度で熱処理するだけで、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0019】
前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法
において、
前記複数種類の金属化合物が、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物であり、
前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類のカルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、
前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
法。
【0020】
つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸金属化合物が12段落で説明したカルボン酸金属化合物であるため、290−430℃で同時に熱分解し、融点が290−430℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状微粒子が、複数種類の金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金の粒状微粒子の集まりとしてペレットの表面に析出する。この際、析出した合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で、同一の飽和脂肪酸と異なる金属とに同時に分解し、さらに、飽和脂肪酸の分子量と数とに応じて飽和脂肪酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため合金が生成される。このため18段落で説明した複数種類の無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価なカルボン酸金属化合物を用いて様々な合金が生成される。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、かつ、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より融点が高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が同時に始まり、290−430℃の温度で複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たないため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりが合成樹脂のペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とは、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりを製造する製造方法における第二の原料になる。さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である複数種類のカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物を用い、合成樹脂のペレットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ペレットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、合金微粒子の集まりがペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレットが結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
【0021】
前記
した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、
前記した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う合金微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合
し、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方
法。
【0022】
つまり、本製造方法に依れば、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理を連続して行ない、このペレットを用いて、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法に準じて成形体を成形すると、熱融解したペレットは合金微粒子の金属結合で結合され、また、金属結合した合金微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、合金の性質を持つ成形体が製造される。従って、様々な合金の性質を持ち、合金より軽量で腐食しない様々な形状からなる成形体が、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法で安価に製造される。
つまり、ペレットの大きさに比べ合金微粒子が5桁も小さいため、多層構造をなしてペレット全体を覆った金属結合した合金微粒子の集まりは、ペレットが熱融解した際に、また、熱融解したペレットが変形した際に、ペレットの変形に追従して変形し、ペレット全体を覆う。また、合金微粒子の金属結合で熱融解したペレット同士が結合される。
すなわち、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理をすると、ペレットが金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、ペレットを覆った合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このペレットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ペレットを熱融解させて所定の形状の成形体を成形する。最初にペレットが熱融解し、ペレットの体積がわずかに膨張する。いっぽう、金属結合した合金微粒子の集まりが多層構造を形成してペレットの全体を覆うため、ペレットがわずかに体積膨張すると、合金微粒子の集まりも追従してわずかに変形し、合金微粒子の集まりは熱融解したペレットの全体を依然として覆う。なお、ペレットを覆った合金微粒子は、合成樹脂の融点より低い温度で生成されたため、合成樹脂の融点を超える温度に昇温されると、合金微粒子は隣接する合金微粒子を取り込んで成長してわずかに粗大化する。わずかに粗大化した合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、合金微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した合金微粒子の集まりは、依然として熱融解したペレットの全体を覆う。次に、熱融解したペレットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する。この際、金属結合した合金微粒子の集まりも同様に変形し、融解ペレットを依然として覆う。また、合金微粒子が接触部位で互いに金属結合し、変形した融解ペレット同士が結合される。この後、熱融解したペレットが冷却されて、成形体が成形される。従って、固化したペレットは、金属微粒子の金属結合で結合されるとともに、固化したペレットを覆う金属結合した金属微粒子が、成形体に連続した経路を形成し、成形体は合金微粒子を構成する合金の性質を持つ。さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が形成され、様々な合金の性質を持ち、合金より軽量で腐食しない成形体は様々な用途に用いられる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、6段落で説明した第三の課題を解決して、合成樹脂からなる成形体が製造される。
【0023】
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【0024】
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【0025】
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【0026】
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