(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618148
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エンおよびフッ化水素の共沸組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 21/04 20060101AFI20191202BHJP
C07C 17/383 20060101ALN20191202BHJP
C11D 7/50 20060101ALN20191202BHJP
【FI】
C07C21/04
!C07C17/383
!C11D7/50
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-500657(P2016-500657)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公表番号】特表2016-510815(P2016-510815A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】US2014020688
(87)【国際公開番号】WO2014158887
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】13/798,318
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキ,コンスタンティン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,スティーヴン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ハン・ティー
【審査官】
西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−526624(JP,A)
【文献】
特開平11−199529(JP,A)
【文献】
特開平11−279088(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0059199(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0201853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜65重量パーセントのフッ化水素(HF)および35〜60重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなり0.0848〜0.0903MPa(12.3〜13.1psia)の圧力において0℃の沸点を有する共沸混合物または共沸混合物様組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびフッ化水素(HF)の共沸組成物または共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)ベースの化学物質は、産業界において取り分け冷媒、エアロゾル噴射剤、発泡剤および溶媒としての用途が含まれる様々な異なる用途で広く用いられてきた。しかし、特定のCFCは地球のオゾン層を破壊することが疑われている。従って、より環境に優しい代替品がCFCの代用品として導入されてきた。例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)は特定の産業用途、例えばフォーム用発泡剤および溶媒に関して好ましい物理特性を有するものと認識されており、従って以前にこれらの用途のために用いられていたCFCに関する優れた代替品であると考えられている。残念ながら、産業用途におけるHFC−245faが含まれる特定のハイドロフルオロカーボンの使用は今日では地球温暖化に寄与すると信じられている。従って、ハイドロフルオロカーボンに関するより環境に優しい代替品が今日探し求められている。
【0003】
HCFO−1233zdまたは単に1233zdとしても知られている化合物1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、発泡剤および溶媒としての使用が含まれる一部の用途においてHFC−245faの代用品とするための候補である。1233zdはZ異性体およびE異性体を有する。これらの2種類の異性体の間の物理特性の違いのため、純粋な1233zd(E)、純粋な1233zd(Z)、または2種類の異性体の特定の混合物は冷媒、噴射剤、発泡剤、溶媒としての特定の用途に、または他の使用に適している可能性がある。
【0004】
1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)は245faおよび1233zdの両方の生産における反応物であり、それはそれぞれ米国特許第5,763,706号および第6,844,475号において記載されているように当該技術において周知である。1233zdの場合、米国特許公開第2011−0201853号を参照。これらの文書を参照により本明細書に援用する。
【0005】
ここで、驚くべきことに、245faおよび1233zdの両方の生産における重要な供給原料は1,1,3,3−テトラ−クロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびフッ化水素(HF)の共沸混合物または共沸混合物様混合物であることが分かっている。この混合物は、一度形成されると、その後抽出物または蒸留技法により分離してその構成部分にすることができる。標準大気圧においてHCO−1230zaは約151℃の沸点を有し、HFは約20℃の沸点を有する。共沸組成物または共沸混合物様組成物は245faおよび1233zdの生産における反応器供給物として用いられるだけでなく、それらはさらに金属から表面酸化を除去するための溶媒組成物として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,763,706号
【特許文献2】米国特許第6,844,475号
【特許文献3】米国特許公開第2011−0201853号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、本質的に1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびフッ化水素(HF)からなる不均質な共沸組成物を提供する。
本発明はさらに、本質的に約0.2〜約99重量パーセントのフッ化水素および約99.8〜約1重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる共沸組成物または共沸混合物様組成物を提供し、その組成物は約13.0psiaの圧力において約0℃の沸点を有する。
【0008】
本発明は、本質的に約0.2〜約97重量パーセントのフッ化水素および約99.8〜約3重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)をブレンドすることからなる不均質な共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成する方法も提供し、その組成物は約13.1psia〜の圧力において約0℃〜の沸点を有する。
【0009】
本発明は、本質的に約1〜約99重量パーセントのフッ化水素および約99〜約1重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)をブレンドすることからなる不均質な共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成する方法も提供し、その組成物は約13.1psia〜の圧力において約0℃〜の沸点を有する。
【0010】
本発明が関連する技術分野(単数または複数)における当業者は、本発明のあらゆる特定の観点および/または態様に関して本明細書で記載される特徴の全ては、本明細書で記載される本発明のあらゆる他の観点および/または態様の他の特徴の全ての1以上と、組み合わせの適合性を確実にするために適宜修正して組み合わせることができることを理解するべきである。そのような組み合わせは本開示により意図される本発明の一部であると考えられる。
【0011】
前記の一般的な記述および下記の詳細な記述は両方とも典型的および説明的なものにすぎず、特許請求されるような本発明を制限するものではないことは理解されるべきである。他の態様は本明細書で開示される本発明の明細および実施の考察から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は0℃において測定した場合の実施例1で形成された混合物の蒸気圧のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことに、1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびHFを反応器に供給した場合、1230zaがHFとの共沸混合物または共沸混合物様混合物を形成することが発見されている。未反応の1230za/HF混合物が生成物流中に見出された。
【0014】
流体の熱力学的状態はその圧力、温度、液体組成および蒸気組成により定義される。真の共沸組成物に関して、液体組成物および蒸気相は所与の温度および圧力において本質的に等しい。実際面で、これはその成分を相変化の間に分離することができないことを意味する。
【0015】
本発明の目的に関して、共沸混合物は周囲の混合組成物の沸点と比較して最大または最小の沸点を示す液体混合物である。共沸混合物または共沸混合物様組成物は、所与の圧力の下で液体形態である際に実質的に一定の温度で沸騰するであろう2種類以上の異なる成分の混合物であり、その温度はその成分の沸騰温度よりも高くても低くてもよく、それは沸騰を起こしている液体組成物と本質的に同一の蒸気組成を提供するであろう。
【0016】
本発明の目的に関して、共沸組成物には共沸混合物様組成物が含まれるように定義されており、それは共沸混合物のように振る舞う、すなわち定沸点特性または沸騰もしくは蒸発の際に分留しない傾向を有する組成物を意味する。従って、沸騰または蒸発の間に形成される蒸気の組成は元の液体組成物と同じまたは実質的に同じである。従って、沸騰または蒸発の間に液体の組成は(それが変化するとしても)最小限または無視できる程度までしか変化しない。これは、沸騰または蒸発の間に液体組成が実質的な程度まで変化する非共沸混合物様組成物とは対照的である。
【0017】
従って、共沸混合物または共沸混合物様組成物の本質的な特徴は、所与の圧力において液体組成物の沸点が一定であり、沸騰している組成物の上方の蒸気の組成が本質的に沸騰している液体組成物の組成である、すなわち本質的に液体組成物の成分の分留が起こらないことである。共沸組成物の沸点およびそれぞれの成分の重量百分率は両方とも、共沸混合物または共沸混合物様液体組成物が異なる圧力において沸騰を起こす際に変化し得る。
【0018】
従って、共沸混合物または共沸混合物様組成物は、その成分の間に存在する関係の点から、またはその成分の組成範囲の点から、または特定の圧力における一定の沸点により特性付けられる組成物のそれぞれの成分の正確な重量百分率の点から定義することができる。
【0019】
本発明は、共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成するための有効量のフッ化水素および1230zaを含む組成物を提供する。有効量により、その他の成分と組み合わせた際に結果として共沸混合物または共沸混合物様混合物の形成をもたらすそれぞれの成分の量を意味する。本発明の組成物は、好ましくは本質的にフッ化水素と1230zaのみの組み合わせからなる二元共沸混合物である。
【0020】
好ましい態様において、本発明の組成物は約99〜約1重量パーセント、好ましくは約90重量パーセント〜約20重量パーセント、最も好ましくは約65重量パーセント〜約40重量パーセントのHFを含有する。
【0021】
別の好ましい態様において、本発明の組成物は約1〜約99重量パーセント、好ましくは約10重量パーセント〜約80重量パーセント、最も好ましくは約35重量パーセント〜約60重量パーセントの1230zaを含有する。
【0022】
本発明の好ましい組成物は約13.1psiaの圧力において約0℃の沸点を有する。約62±2重量パーセントのHFおよび約38±2重量パーセントの1230zaを有する共沸組成物または共沸混合物様組成物は13.1psiaにおいて約0℃で沸騰することが分かっている。
【0023】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するために役立つ。
【実施例】
【0024】
実施例1
17.4gの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)を15.4gのHFと組み合わせて不均質な共沸混合物を形成させた。この実験は0℃で、そして13.1psiaで行われた(目視観察による)。
【0025】
実施例2
1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびHFのみを含有する二元組成物をブレンドして異なる組成における不均質な共沸混合物を形成させる。その混合物の蒸気圧を0℃において測定し、以下の結果が認められている。
【0026】
表1は約0℃の一定温度における重量パーセントHFの組成の関数としての1230zaおよびHFの蒸気圧測定値を示す。表1からのデータを
図1においてグラフ形式で示す。
【0027】
【表1】
【0028】
1230za/HF混合物の共沸組成物を蒸気−液体−液体平衡(VLLE)実験によっても検証する。13.9gの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)を0℃において13.8gのHFと組み合わせて不均質な混合物(目視観察)を形成させた。その混合物の蒸気組成物を0℃の温度で、そして13.1psiaの圧力で試料採取した。その結果は、その共沸組成が0℃において約62±2重量%HFであることを示している。この混合物は0℃の温度および13.1psiaの圧力において不均質な共沸混合物であることが観察されている。
【0029】
本明細書で用いられる際、単数形“a”、“an”および“the”には、文脈が別途明確にそうではないと指示しない限り、複数が含まれる。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、または上側の好ましい値および下側の好ましい値のリストのいずれかとして与えられた場合、これは、範囲が個々に開示されたかどうかにかかわらず、あらゆる上側の範囲限界または好ましい値およびあらゆる下側の範囲限界または好ましい値のあらゆる対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものと理解されるべきである。数値の範囲が本明細書において列挙された場合、別途記載しない限り、その範囲にはその終点、ならびにその範囲内の全ての整数および分数が含まれることが意図されている。本発明の範囲が範囲を定める際に列挙された特定の値に限定されることは意図されていない。
【0030】
前記の記載は本発明を説明するだけのものであることは理解されるべきである。当業者は、本発明から逸脱することなく様々な代替物および修正を考案することができる。従って、本発明は添付された特許請求の範囲内に入る全てのそのような代替物、修正および変動を包含することが意図されている。
本発明は以下の態様を含む。
[1] 本質的に1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)およびフッ化水素からなる共沸混合物または共沸混合物様混合物。
[2] 本質的に約0.2〜約99重量パーセントのフッ化水素および約99.8〜約1重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる[1]に記載の組成物であって、該組成物が約13.3psiaの圧力において約0℃〜の沸点を有する、前記組成物。
[3] 本質的に約99重量パーセント〜約1重量パーセントのフッ化水素からなる、[1]に記載の組成物。
[4] 本質的に約90重量パーセント〜約20重量パーセントのフッ化水素からなる、[1]に記載の組成物。
[5] 本質的に約65重量パーセント〜約40重量パーセントのフッ化水素からなる、[1]に記載の組成物。
[6] 本質的に約1重量パーセント〜約99重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる、[1]に記載の組成物。
[7] 本質的に約10重量パーセント〜約80重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる、[1]に記載の組成物。
[8] 本質的に約35重量パーセント〜約60重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる、[1]に記載の組成物。
[9] 本質的に約62±2重量パーセントのフッ化水素および約38±2重量パーセントの1,1,3,3−テトラクロロプロパ−1−エン(HCO−1230za)からなる[1]に記載の組成物であって、該組成物が約13.3psiaの圧力において約0℃の沸点を有する、前記組成物。