(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0021】
電源主回路PMは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する駆動信号Dvに従ってインバータ制御等による出力制御を行い、出力電圧Eを出力する。この電源主回路PMは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流器、整流された直流を平滑する平滑コンデンサ、平滑された直流を高周波交流に変換する上記の駆動信号Dvによって駆動されるインバータ回路、高周波交流を溶接に適した電圧値に降圧する高周波変圧器、降圧された高周波交流を直流に整流する2次整流器を備えている。
【0022】
リアクトルWLは、上記の出力電圧Eを平滑する。このリアクトルWLのインダクタンス値は、例えば200μHである。
【0023】
送給モータWMは、後述する送給制御信号Fcを入力として、正送と逆送とを周期的に繰り返して溶接ワイヤ1を送給速度Fwで送給する。送給モータWMには、過渡応答性の速いモータが使用される。溶接ワイヤ1の送給速度Fwの変化率及び送給方向の反転を速くするために、送給モータWMは溶接トーチ4の先端の近くに設置される場合がある。また、送給モータWMを2個使用して、プッシュプル方式の送給系とする場合もある。
【0024】
溶接ワイヤ1は、上記の送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。
【0025】
出力電圧設定回路ERは、予め定めた出力電圧設定信号Erを出力する。出力電圧検出回路EDは、上記の出力電圧Eを検出し平滑して、出力電圧検出信号Edを出力する。
【0026】
電圧誤差増幅回路EVは、上記の出力電圧設定信号Er及び上記の出力電圧検出信号Edを入力として、出力電圧設定信号Er(+)と出力電圧検出信号Ed(−)との誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。この回路によって、溶接電源は定電圧制御される。
【0027】
ホットスタート電流設定回路IHRは、予め定めたホットスタート電流設定信号Ihrを出力する。電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。
【0028】
電流誤差増幅回路EIは、上記のホットスタート電流設定信号Ihr及び上記の電流検出信号Idを入力として、ホットスタート電流設定信号Ihr(+)と電流検出信号Id(−)との誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。この回路によって、ホットスタート電流が通電する期間(ホットスタート期間)中は溶接電源は定電流制御される。
【0029】
電流通電判別回路CDは、上記の電流検出信号Idを入力として、この値がしきい値(10A程度)以上のときは溶接電流Iwが通電していると判別してHighレベルとなる電流通電判別信号Cdを出力する。
【0030】
電源特性切換回路SWは、上記の電流誤差増幅信号Ei、上記の電圧誤差増幅信号Ev及び上記の電流通電判別信号Cdを入力として、電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点から予め定めたホットスタート期間中は電流誤差増幅信号Eiを誤差増幅信号Eaとして出力し、それ以外の期間中は電圧誤差増幅信号Evを誤差増幅信号Eaとして出力する。
【0031】
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。短絡判別回路SDは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、この値が短絡判別値(10V程度)未満のときは短絡期間であると判別してHighレベルとなり、以上のときはアーク期間であると判別してLowレベルとなる短絡判別信号Sdを出力する。
【0032】
溶接開始回路STは、溶接電源を起動するときにHighレベルとなる溶接開始信号Stを出力する。この溶接開始回路STは、溶接トーチ4の起動スイッチ、溶接工程を制御するPLC、ロボット制御装置等が相当する。
【0033】
駆動回路DVは、上記の誤差増幅信号Ea及び上記の溶接開始信号Stを入力として、溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)のときは誤差増幅信号Eaに基づいてPWM変調制御を行い、上記の電源主回路PM内のインバータ回路を駆動するための駆動信号Dvを出力する。
【0034】
過渡溶接期間タイマ回路STKは、上記の電流通電判別信号Cd及び後述する送給速度設定信号Frを入力として、以下の1)〜4)の中から1つを選択して処理を行い、過渡溶接期間タイマ信号Stkを出力する。
1)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点でHighレベルにセットされ、それから所定期間が経過した後に、送給速度設定信号Frの正送期間又は逆送期間が終了した時点でLowレベルにリセットされる過渡溶接期間タイマ信号Stkを出力する。
2)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点でHighレベルにセットされ、それから送給速度設定信号Frが所定回数の正送期間又は所定回数の逆送期間を終了した時点でLowレベルにリセットされる過渡溶接期間タイマ信号Stkを出力する。
3)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点でHighレベルにセットされ、それから所定期間が経過した後に、送給速度設定信号Frの正送期間が終了した時点でLowレベルにリセットされる過渡溶接期間タイマ信号Stkを出力する。
4)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点でHighレベルにセットされ、それから送給速度設定信号Frが所定回数の正送期間を終了した時点でLowレベルにリセットされる過渡溶接期間タイマ信号Stkを出力する。
【0035】
平均送給速度設定回路FARは、予め定めた平均送給速度設定信号Farを出力する。周期設定回路TFRは、予め定めた周期設定信号Tfrを出力する。振幅設定回路WFRは、予め定めた振幅設定信号Wfrを出力する。
【0036】
定常溶接期間送給速度設定回路FCRは、上記の平均送給速度設定信号Far、上記の周期設定信号Tfr及び上記の振幅設定信号Wfrを入力として、振幅設定信号Wfrによって定まる振幅Wf及び周期設定信号Tfrによって定まる周期Tfで正負対象形状に変化する予め定めた台形波を、平均送給速度設定信号Farの値だけ正送側にシフトした波形となる定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。この定常溶接期間送給速度設定信号Fcrについては、
図3(B)で詳述する。
【0037】
過渡溶接期間送給速度設定回路FKRは、上記の電流通電判別信号Cd、上記の短絡判別信号Sdを入力として、
図2(B)で詳述する処理を行い、過渡溶接期間送給速度設定信号Fkrを出力する。
【0038】
送給速度設定回路FRは、上記の定常溶接期間送給速度設定信号Fcr、上記の過渡溶接期間送給速度設定信号Fkr、上記の溶接開始信号St、上記の電流通電判別信号Cd及び上記の過渡溶接期間タイマ信号Stkを入力として、以下の処理を行い、送給速度設定信号Frを出力する。
1)溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)になると、0から予め定めたスローダウン速度に切り換えられた送給速度設定信号Frを出力する。Fr=0のときは溶接ワイヤ1の送給は停止している。
2)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)になると、過渡溶接期間送給速度設定信号Fkrを送給速度設定信号Frとして出力する。
3)過渡溶接期間タイマ信号StkがLowレベルになると、定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを送給速度設定信号Frとして出力する。
【0039】
送給制御回路FCは、上記の送給速度設定信号Frを入力として、送給速度設定信号Frの値に相当する送給速度Fwで溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を示す、
図1の溶接電源における溶接開始時の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Stの時間変化を示し、同図(B)は送給速度Fwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(D)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(E)は電流通電判別信号Cdの時間変化を示し、同図(F)は短絡判別信号Sdの時間変化を示し、同図(G)は過渡溶接期間タイマ信号Stkの時間変化を示す。以下、同図を参照して溶接開始時における各信号の動作について説明する。
【0041】
同図(B)に示すように、送給速度Fwは、0よりも上側が正送期間となり、下側が逆送期間となる。正送とは溶接ワイヤ1を母材2に近づける方向に送給することであり、逆送とは母材2から離反する方向に送給することである。送給速度Fwは、台形波状に変化しており、正送側にシフトした波形となっている。このために、送給速度Fwの平均値は正の値となり、溶接ワイヤ1は平均的には正送されている。
【0042】
ここで、0を基準線として送給速度Fwの台形波を見ると、同図(B)に示すように、過渡溶接期間逆送期間は、所定の過渡溶接期間逆送加速期間、アーク再発生時点で終了する過渡溶接期間逆送ピーク期間、所定の過渡溶接期間逆送ピーク値及び所定の過渡溶接期間逆送減速期間から形成され、過渡溶接期間正送期間は、所定の過渡溶接期間正送加速期間、短絡発生時点で終了する過渡溶接期間正送ピーク期間、所定の過渡溶接期間正送ピーク値及び所定の過渡溶接期間正送減速期間から形成される。
【0043】
時刻t1において、溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)に変化すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは0から予め定めた正の値のスローダウン速度に変化し、溶接ワイヤ1は正送される。このスローダウン速度は、1m/min程度の小さな値に設定される。同時に、時刻t1において、溶接電源が起動されるので、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは最大出力電圧値の無負荷電圧値になる。
【0044】
時刻t2において、上記の正送によって溶接ワイヤ1が母材2と接触(短絡)すると、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減し、溶接電圧Vwの値が予め定めた短絡判別値(10V程度)未満になるので、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化する。同時に、時刻t2において、同図(C)に示すように、予め定めたホットスタート電流値(200〜500A程度)の溶接電流Iwが通電を開始し、同図(E)に示すように、電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化する。これに応動して、同図(G)に示すように、過渡溶接期間タイマ信号StkがHighレベルに変化し、後述するように時刻t12にLowレベルに戻る。この時刻t2〜t12の期間が過渡溶接期間Tkとなる。上記のホットスタート電流は、時刻t2〜t41の予め定めたホットスタート期間中通電する。
【0045】
[時刻t3〜t5の第1回目の過渡溶接期間逆送期間の動作]
時刻t2に電流通電判別信号CdがHighレベルに変化してから予め定めた遅延期間が経過した時刻t3において、同図(B)に示すように、送給速度Fwは正送から逆送に切り換えられて、予め定めた過渡溶接期間逆送ピーク値まで急加速し、過渡溶接期間逆送ピーク期間に入る。上記の遅延期間は1〜10ms程度に設定される。遅延期間を0にして、遅延しないようにしても良い。この遅延は、溶接ワイヤ1が母材2に接触したときに、初期アークを円滑に発生させるために設けている。
【0046】
時刻t4において上記のホットスタート電流の通電によって、アーク3が発生すると、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値に急増し、これに応動して、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはLowレベル(アーク)に変化する。過渡溶接期間逆送ピーク期間中に短絡判別信号SdがLowレベル(アーク)に変化すると、同図(B)に示すように、時刻t4〜t5の上記の過渡溶接期間逆送減速期間に入り、上記の過渡溶接期間逆送ピーク値から0へと減速する。時刻t4に過渡溶接期間逆送ピーク期間に入った時点において、既にアーク3が発生し短絡判別信号SdがLowレベル(アーク)であったときは、時刻t4時点から過渡溶接期間逆送減速期間に入ることになる。過渡溶接期間逆送減速期間中の時刻t41において、同図(C)に示すように、溶接電流Iwはホットスタート電流値からアーク負荷に応じて変化するアーク電流値に減少する。上述したように、時刻t2〜t41のホットスタート期間は所定値であるので、ホットスタート期間が終了する時点において、送給速度Fwがどの期間になっているかは不確定である。時刻t4〜t7の期間がアーク期間となる。
【0047】
[時刻t5〜t8の第1回目の過渡溶接期間正送期間の動作]
時刻t5において過渡溶接期間逆送減速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t5〜t6の上記の過渡溶接期間正送加速期間に入り、0から上記の過渡溶接期間正送ピーク値まで加速する。
【0048】
時刻t6において過渡溶接期間正送加速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは過渡溶接期間正送ピーク期間に入り、上記の過渡溶接期間正送ピーク値になる。
【0049】
時刻t7において正送によって短絡が発生すると、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減し、これに応動して、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはHighレベル(短絡)に変化する。同図(C)に示すように、溶接電流Iwは短絡期間中に次第に増加する。過渡溶接期間正送ピーク期間中に短絡判別信号SdがHighレベル(短絡)に変化すると、同図(B)に示すように、時刻t7〜t8の上記の過渡溶接期間正送減速期間に入り、上記の過渡溶接期間正送ピーク値から0へと減速する。時刻t7〜t10の期間が短絡期間となる。
【0050】
[時刻t8〜t11の第2回目の過渡溶接期間逆送期間の動作]
時刻t8において過渡溶接期間正送減速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t8〜t9の上記の過渡溶接期間逆送加速期間に入り、0から上記の過渡溶接期間逆送ピーク値まで加速する。
【0051】
時刻t9において過渡溶接期間逆送加速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは過渡溶接期間逆送ピーク期間に入り、上記の過渡溶接期間逆送ピーク値になる。
【0052】
時刻t10において逆送及び溶接電流Iwの通電によるピンチ力によってアーク3が発生すると、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値に急増し、これに応動して、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはLowレベル(アーク)に変化する。同図(C)に示すように、溶接電流Iwはアーク期間中に次第に減少する。過渡溶接期間逆送ピーク期間中に短絡判別信号SdがLowレベル(アーク)に変化すると、同図(B)に示すように、時刻t10〜t11の上記の過渡溶接期間逆送減速期間に入り、上記の過渡溶接期間逆送ピーク値から0へと減速する。
【0053】
時刻t11〜t12の期間は第2回目の過渡溶接期間正送期間となり、上述した時刻t5〜t8の動作と同一であるので、説明は繰り返さない。同図(G)に示すように、過渡溶接期間タイマ信号Stkは、時刻t2に電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点から所定期間が経過した後に、過渡溶接期間正送期間又は過渡溶接期間逆送期間が終了したタイミングに同期してLowレベル(定常溶接期間)に変化する。同図では、過渡溶接期間正送期間が終了する時刻t12において、過渡溶接期間タイマ信号StkがLowレベルに変化している。したがって、時刻t2〜t12の期間が過渡溶接期間Tkとなり、時刻t12以降の期間が定常溶接期間となる。ここで、過渡溶接期間Tkを、溶接電流が通電を開始した時点から所定回数の過渡溶接期間逆送期間又は所定回数の過渡溶接期間正送期間が終了した時点としても良い。
【0054】
さらに、過渡溶接期間Tkを、溶接電流が通電を開始した時点から所定期間が経過した後に、過渡溶接期間正送期間が終了した時点としても良い。さらに、過渡溶接期間Tkを、溶接電流が通電を開始した時点から所定回数の過渡溶接期間正送期間が終了した時点としても良い。このようにすると、定常溶接期間は、常に定常溶接期間逆送期間から開始することになり、定常溶接期間の溶接状態への移行が定常溶接期間正送期間から開始するよりも円滑になる。
【0055】
過渡溶接期間Tkは、定常溶接期間と同じ程度のサイズの溶融池が形成されるまでの期間として設定される。過渡溶接期間Tkは、50〜1000ms程度の範囲となる。同図では、過渡溶接期間Tk中に2周期分の波形を描画しているが、実際には5〜100周期分の波形が含まれる。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接制御方法を示す、
図1の溶接電源における定常溶接期間中の各信号のタイミングチャートである。同図は、
図2の過渡溶接期間Tkが時刻t12に終了した時点以降の定常溶接期間中の動作を示す。同図(A)は溶接開始信号Stの時間変化を示し、同図(B)は送給速度Fwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(D)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(E)は電流通電判別信号Cdの時間変化を示し、同図(F)は短絡判別信号Sdの時間変化を示し、同図(G)は過渡溶接期間タイマ信号Stkの時間変化を示す。以下、同図を参照して定常溶接期間中の動作について説明する。
【0057】
同図(B)に示す送給速度Fwは、
図1の送給速度設定回路FRから出力される送給速度設定信号Frの値に制御される。送給速度設定信号Frは、振幅設定信号Wfrによって定まる振幅Wf及び周期設定信号Tfrによって定まる周期Tfで正負対象形状に変化する予め定めた台形波を、平均送給速度設定信号Farの値だけ正送側にシフトした波形となる。このために、同図(B)に示すように、送給速度Fwは、平均送給速度設定信号Farによって定まる破線で示す平均送給速度Faを基準線として、上下に対象となる振幅Wf及び周期Tfで予め定めた台形波状の送給速度パターンとなる。すなわち、基準線から上側の振幅と下側の振幅とは同一値であり、基準線より上側の期間と下側の期間とは同一値となっている。
【0058】
ここで、0を基準線として送給速度Fwの台形波を見ると、同図(B)に示すように、時刻t12〜t16の定常溶接期間逆送期間は、それぞれ所定の定常溶接期間逆送加速期間、定常溶接期間逆送ピーク期間、定常溶接期間逆送ピーク値及び定常溶接期間逆送減速期間から形成され、時刻t16〜t20の定常溶接期間正送期間は、それぞれ所定の定常溶接期間正送加速期間、定常溶接期間正送ピーク期間、定常溶接期間正送ピーク値及び定常溶接期間正送減速期間から形成される。
【0059】
時刻t12において、同図(G)に示すように、過渡溶接期間タイマ信号StkがLowレベルに変化すると、定常溶接期間に移行する。この定常溶接期間中は、同図(A)に示すように、溶接開始信号StはHighレベル(溶接開始)のままとなり、同図(E)に示すように、電流通電判別信号CdもHighレベル(通電)のままとなる。
【0060】
[時刻t12〜t16の第1回目の定常溶接期間逆送期間の動作]
同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t12〜t13の上記の定常溶接期間逆送加速期間に入り、0から上記の定常溶接期間逆送ピーク値まで加速する。この期間中は、時刻t11〜t12の過渡溶接期間正送期間中に発生した短絡状態が継続しているので、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはHighレベル(短絡)となっている。
【0061】
時刻t13において定常溶接期間逆送加速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t13〜t15の上記の定常溶接期間逆送ピーク期間に入り、上記の定常溶接期間逆送ピーク値になる。この期間中の時刻t14において、逆送及び溶接電流Iwの通電によるピンチ力によってアーク3が再発生する。これに応動して、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値に急増し、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはLowレベル(アーク)に変化する。同図(C)に示すように、溶接電流Iwはこれ以降次第に減少する。過渡溶接期間Tk中は、アークの再発生をトリガとして本期間を終了していたが、定常溶接期間中は、アークの再発生とは無関係に所定期間が経過すると本期間を終了する点が異なる。
【0062】
時刻t15において定常溶接期間逆送ピーク期間が終了すると、同図(B)に示すように、時刻t15〜t16の上記の定常溶接期間逆送減速期間に入り、上記の定常溶接期間逆送ピーク値から0へと減速する。
【0063】
[時刻t16〜t20の第1回目の定常溶接期間正送期間の動作]
同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t16〜t17の上記の定常溶接期間正送加速期間に入り、0から上記の定常溶接期間正送ピーク値まで加速する。この期間中は、短絡状態のままである。
【0064】
時刻t17において定常溶接期間正送加速期間が終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t17〜t19の上記の定常溶接期間正送ピーク期間に入り、上記の定常溶接期間正送ピーク値になる。この期間中の時刻t18において、正送によって短絡が発生する。これに応動して、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減し、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdはHighレベル(短絡)に変化する。同図(C)に示すように、溶接電流Iwはこれ以降次第に増加する。過渡溶接期間Tk中は、短絡の発生をトリガとして本期間を終了していたが、定常溶接期間中は、短絡の発生とは無関係に所定期間が経過すると本期間を終了する点が異なる。
【0065】
時刻t19において定常溶接期間正送ピーク期間が終了すると、同図(B)に示すように、時刻t19〜t20の上記の定常溶接期間正送減速期間に入り、上記の定常溶接期間正送ピーク値から0へと減速する。
【0066】
これ以降の定常溶接期間中は、上記の定常溶接期間逆送期間及び上記の定常溶接期間正送期間の動作を繰り返すことになる。
【0067】
定常溶接期間中及び過渡溶接期間中の送給速度Fwの台形波の数値例を以下に示す。
(定常溶接期間中の台形波の数値例)
周期Tf=10ms、振幅Wf=60m/min、半周期の各傾斜期間=1.2ms、ピーク期間=2.6ms、ピーク値=30m/minの台形波に設定すると、この台形波を平均送給速度Fa=5m/minだけ正送側にシフトした波形となる。平均溶接電流は約250Aとなる。この場合の各波形パラメータは、以下のようになる。
定常溶接期間逆送期間=4.6ms、定常溶接期間逆送加速期間=1.0ms、定常溶接期間逆送ピーク期間=2.6ms、定常溶接期間逆送ピーク値=−25m/min、定常溶接期間逆送減速期間=1.0ms
定常溶接期間正送期間=5.4ms、定常溶接期間正送加速期間=1.4ms、定常溶接期間正送ピーク期間=2.6ms、定常溶接期間正送ピーク値=35m/min、定常溶接期間正送減速期間=1.4ms
(過渡溶接期間中の台形波の数値例)
過渡溶接期間逆送加速期間=1.0ms、過渡溶接期間逆送ピーク値=−17.5m/min、過渡溶接期間逆送減速期間=1.0ms、過渡溶接期間正送加速期間=1.4ms、過渡溶接期間正送ピーク値=24.5m/min、過渡溶接期間正送減速期間=1.4ms
【0068】
上記においては、送給速度Fwが台形波の場合について説明したが、正弦波、三角波等の周期的に繰り返す波形であれば良い。
【0069】
上述した実施の形態1では、溶接開始時は溶接ワイヤを正送し、溶接ワイヤが母材と接触して溶接電流が通電した後に、溶接ワイヤの逆送期間から正逆送給制御を開始する。これは、逆送期間から正逆送給制御を開始する方が、正送期間から正逆送給制御を開始するよりも初期アークの発生が円滑になるためである。
【0070】
上述した実施の形態1では、定常溶接期間に収束するまでの過渡溶接期間中は、逆送期間中にアーク期間になると正送期間に移行し、正送期間中に短絡期間になると逆送期間に移行し、定常溶接期間中は所定の正送期間と所定の逆送期間とを交互に切り換える。溶融池が充分に形成されていない過渡溶接期間中に、定常溶接期間のように所定の正送期間と所定の逆送期間とを交互に切り換えると、溶接状態が不安定になる。過渡溶接期間中は、逆送期間中にアークの再発生をトリガとして正送期間に移行し、正送期間中に短絡の発生をトリガとして逆送期間に移行することによって、溶接状態を安定化することができる。
【0071】
上述した実施の形態1では、送給速度の波形パラメータを、過渡溶接期間中は定常溶接期間中とは異なる値に設定する。波形パラメータは、逆送加速期間、逆送ピーク値(逆送振幅)、逆送減速期間、正送加速期間、正送ピーク値(正送振幅)又は正送減速期間である。これらの波形パラメータの少なくとも1つを、過渡溶接期間中は定常溶接期間中とは異なる値に設定する。これにより、過渡溶接期間中の溶接状態が安定化する。このときに、過渡溶接期間中の送給速度の平均値が定常溶接期間中の送給速度の平均値よりも小さくなるように、波形パラメータを設定することが望ましい。このようにすると、過渡期間中の溶接状態がより安定化する。ここで、振幅とは、過渡溶接期間中は過渡溶接期間正送ピーク値と過渡溶接期間逆送ピーク値(絶対値)との合計値となり、定常溶接期間中は定常溶接期間正送ピーク値と定常溶接期間逆送ピーク値(絶対値)との合計値となる。振幅を過渡溶接期間中は定常溶接期間中よりも小さな値に設定することが望ましい。このようにすると、過渡溶接期間中の溶接状態がより安定化する。さらに、正送振幅(正送ピーク値)を過渡溶接期間中は定常溶接期間中よりも小さな値に設定することが望ましい。このようにすると、過渡溶接期間中の溶接状態がより安定化する。
【0072】
[実施の形態2]
実施の形態2の発明は、実施の形態1の正逆送給制御を行うプル側送給モータに加えて正送送給制御を行うプッシュ側送給モータを備え、プッシュ側送給モータは溶接電流が通電を開始した時点から予め定めた加速期間中は傾斜を有して加速する。
【0073】
図4は、本発明の実施の形態2に係るアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図は上述した
図1と対応しており、同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は繰り返さない。同図は、
図1にプッシュ側送給モータWM2、加速期間設定回路TUR、第2送給速度設定回路FR2及び第2送給制御回路FC2を追加したものである。以下、同図を参照してこれらのブロックについて説明する。
【0074】
送給モータWMがプル側送給モータとなり、送給系の下流側に設置されている。この送給モータWMに対する正逆送給制御については実施の形態1と同一である。プッシュ側送給モータWM2が新たに送給系の上流側に設置されている。このプッシュ側送給モータWM2は、後述する第2送給制御信号Fc2によって正送送給制御される。
【0075】
加速期間設定回路TURは、予め定めた加速期間設定信号Turを出力する。第2送給速度設定回路FR2は、この加速期間設定信号Tur、平均送給速度設定信号Far、溶接開始信号St及び電流通電判別信号Cdを入力として、以下の処理を行い、第2送給速度設定信号Fr2を出力する。
1)溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)になると、0から予め定めた第2スローダウン速度に切り換えられた第2送給速度設定信号Fr2を出力する。Fr2=0のときは溶接ワイヤ1の送給は停止している。
2)電流通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点から加速期間設定信号Turによって定まる加速期間Tu中は、上記の第2スローダウン速度から傾斜を有して平均送給速度設定信号Farの値まで加速する第2送給速度設定信号Fr2を出力する。
3)その後は、平均送給速度設定信号Farの値となる第2送給速度設定信号Fr2を出力する。
【0076】
第2送給制御回路FC2は、上記の第2送給速度設定信号Fr2を入力として、第2送給速度設定信号Fr2の値に相当する送給速度で溶接ワイヤ1を送給するための第2送給制御信号Fc2を上記のプッシュ側送給モータWM2に出力する。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態2に係るアーク溶接制御方法を示す、
図4の溶接電源における溶接開始時の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Stの時間変化を示し、同図(B)はプル側の送給速度Fwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(D)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(E)は電流通電判別信号Cdの時間変化を示し、同図(F)は短絡判別信号Sdの時間変化を示し、同図(G)は過渡溶接期間タイマ信号Stkの時間変化を示し、同図(H)はプッシュ側送給速度Fw2の時間変化を示す。同図は上述した
図2と対応しており、
図2に同図(H)に示すプッシュ側送給速度Fw2を追加したものである。このプッシュ側送給速度Fw2以外の各信号の動作は
図2と同一であるので、説明は繰り返さない。以下、同図を参照して、溶接開始時におけるプッシュ側送給速度Fw2の動作について説明する。
【0078】
時刻t1において、溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)に変化すると、同図(H)に示すように、プッシュ側送給速度Fw2は0から予め定めた正の値の第2スローダウン速度に変化し、溶接ワイヤ1は正送される。この第2スローダウン速度は、同図(B)に示す送給速度Fwのスローダウン速度と同一値に設定される。
【0079】
時刻t2に同図(E)に示す電流通電判別信号CdがHighレベルに変化してから上記の遅延期間が経過した時刻t3において、同図(H)に示すように、プッシュ側送給速度Fw2は傾斜を有して加速し、時刻t11と時刻t12との間の時刻t111において平均送給速度設定信号Farの値となる。すなわち、時刻t3〜t111の予め定めた加速期間Tu中は、プッシュ側送給速度Fw2は傾斜を有して加速する。この加速期間Tuは、
図4の加速期間設定信号Turによって設定される。この加速期間Tuは、時刻t2〜t12の過渡溶接期間Tkと略等しくなるように設定される。時刻t111以降のプッシュ側送給速度Fw2は、予め定めた平均送給速度設定信号Farの値で定速送給される。
【0080】
また、時刻t111以降のプッシュ側送給速度Fw2を、プル側の送給速度Fwの平均値を検出し、この平均値と等しくなるようにフィードバック制御しても良い。
【0081】
上述した実施の形態2によれば、正逆送給制御を行うプル側送給モータに加えて、正送送給制御を行うプッシュ側送給モータを備え、プッシュ側送給モータは溶接電流が通電を開始した時点から予め定めた加速期間中は傾斜を有して加速する。これにより、送給系にプッシュプル送給系を使用する場合において、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0082】
[実施の形態3]
実施の形態3の発明は、実施の形態1において、
図2の過渡溶接期間中の動作は同一であり、
図3の定常溶接期間中の動作が異なるものである。すなわち、実施の形態1の発明では、定常溶接期間中は所定パターンの送給速度の波形となっており、アーク発生及び短絡発生がトリガーとなって送給速度の正送期間と逆送期間とが切り換えられることはない。これに対して、実施の形態3の発明では、過渡溶接期間中と同様に、定常溶接期間中も、アーク発生及び短絡発生をトリガーとして、送給速度の正送期間と逆送期間とが切り換えられる。
【0083】
図6は、本発明の実施の形態3に係るアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図は上述した
図1と対応しており、同一ブロックには同一符号を付して、それらの説明は繰り返さない。同図は、
図1の平均送給速度設定回路FAR、周期設定回路TFR及び振幅設定回路WFRを削除している。そして、正送加速期間設定回路TSUR、正送減速期間設定回路TSDR、逆送加速期間設定回路TRUR、逆送減速期間設定回路TRDR、正送振幅設定回路WSR及び逆送振幅設定回路WRRを追加している。さらに、
図1の定常溶接期間送給速度設定回路FCRを第2定常溶接期間送給速度設定回路FCR2に置換している。以下、同図を参照して、これらのブロックについて説明する。
【0084】
正送加速期間設定回路TSURは、予め定めた正送加速期間設定信号Tsurを出力する。正送減速期間設定回路TSDRは、予め定めた正送減速期間設定信号Tsdrを出力する。
【0085】
逆送加速期間設定回路TRURは、予め定めた逆送加速期間設定信号Trurを出力する。逆送減速期間設定回路TRDRは、予め定めた逆送減速期間設定信号Trdrを出力する。
【0086】
正送振幅設定回路WSRは、正送ピーク値を設定するための予め定めた正送振幅設定信号Wsrを出力する。逆送振幅設定回路WRRは、逆送ピーク値を設定するための予め定めた逆送振幅設定信号Wrrを出力する。
【0087】
第2定常溶接期間送給速度設定回路FCR2は、上記の正送加速期間設定信号Tsur、上記の正送減速期間設定信号Tsdr、上記の逆送加速期間設定信号Trur、上記の逆送減速期間設定信号Trdr、上記の正送振幅設定信号Wsr、上記の逆送振幅設定信号Wrr及び上記の短絡判別信号Sdを入力として、以下の処理によって生成された送給速度パターンを定常溶接期間送給速度設定信号Fcrとして出力する。この定常溶接期間送給速度設定信号Fcrが0以上のときは正送期間となり、0未満のときは逆送期間となる。
1)逆送加速期間設定信号Trurによって定まる逆送加速期間Tru中は0から逆送振幅設定信号Wrrによって定まる負の値の逆送ピーク値Wrpまで直線状に加速する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
2)続いて、逆送ピーク期間Trp中は、上記の逆送ピーク値Wrpを維持する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
3)短絡判別信号SdがHighレベル(短絡期間)からLowレベル(アーク期間)に変化すると、逆送減速期間設定信号Trdrによって定まる逆送減速期間Trdに移行し、上記の逆送ピーク値Wrpから0まで直線状に減速する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
4)続いて、正送加速期間設定信号Tsurによって定まる正送加速期間Tsu中は0から正送振幅設定信号Wsrによって定まる正の値の正送ピーク値Wspまで直線状に加速する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
5)続いて、正送ピーク期間Tsp中は、上記の正送ピーク値Wspを維持する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
6)短絡判別信号SdがLowレベル(アーク期間)からHighレベル(短絡期間)に変化すると、正送減速期間設定信号Tsdrによって定まる正送減速期間Tsdに移行し、上記の正送ピーク値Wspから0まで直線状に減速する定常溶接期間送給速度設定信号Fcrを出力する。
7)上記の1)〜6)を繰り返すことによって正負の台形波状に変化する送給パターンの定常溶接期間送給速度設定信号Fcrが生成される。
【0088】
本発明の実施の形態3に係るアーク溶接制御方法を示す、
図6の溶接電源における溶接開始時(過渡期間中)の各信号のタイミングチャートは、
図2と同一であるので、説明は繰り返さない。
【0089】
図7は、本発明の実施の形態3に係るアーク溶接制御方法を示す、
図6の溶接電源における定常溶接期間中の各信号のタイミングチャートである。同図は、
図2の過渡溶接期間Tkが時刻t12に終了した時点以降の定常溶接期間中の動作を示す。同図(A)は溶接開始信号Stの時間変化を示し、同図(B)は送給速度Fwの時間変化を示し、同図(C)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(D)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(E)は電流通電判別信号Cdの時間変化を示し、同図(F)は短絡判別信号Sdの時間変化を示し、同図(G)は過渡溶接期間タイマ信号Stkの時間変化を示す。以下、同図を参照して定常溶接期間中の動作について説明する。
【0090】
同図(B)に示す送給速度Fwは、
図6の送給速度設定回路FRから出力される送給速度設定信号Fr(定常溶接期間送給速度設定信号Fcr)の値に制御される。送給速度Fwは、
図6の逆送加速期間設定信号Trurによって定まる定常溶接期間逆送加速期間Tru、アークが発生するまで継続する定常溶接期間逆送ピーク期間Trp、
図6の逆送減速期間設定信号Trdrによって定まる定常溶接期間逆送減速期間Trd、
図6の正送加速期間設定信号Tsurによって定まる定常溶接期間正送加速期間Tsu、短絡が発生するまで継続する定常溶接期間正送ピーク期間Tsp及び
図6の正送減速期間設定信号Tsdrによって定まる定常溶接期間正送減速期間Tsdから形成される。さらに、定常溶接期間逆送ピーク値Wrpは
図6の逆送振幅設定信号Wrrによって定まり、定常溶接期間正送ピーク値Wspは
図6の正送振幅設定信号Wsrによって定まる。この結果、送給速度Fwは、正負の台形波状に変化する送給パターンとなる。
【0091】
時刻t12において、同図(G)に示すように、過渡溶接期間タイマ信号StkがLowレベルに変化すると、定常溶接期間に移行する。この定常溶接期間中は、同図(A)に示すように、溶接開始信号StはHighレベル(溶接開始)のままとなり、同図(E)に示すように、電流通電判別信号CdもHighレベル(通電)のままとなる。
【0092】
[時刻t12〜t15の定常溶接期間逆送期間の動作]
同図(B)に示すように、送給速度Fwは時刻t12〜t13の所定の定常溶接期間逆送加速期間Truに入り、0から所定の定常溶接期間逆送ピーク値Wrpまで加速する。この期間中は短絡期間が継続している。
【0093】
時刻t13において定常溶接期間逆送加速期間Truが終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは定常溶接期間逆送ピーク期間Trpに入り、上記の定常溶接期間逆送ピーク値Wrpになる。この期間中も短絡期間が継続している。
【0094】
時刻t14においてアークが発生すると、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdがLowレベル(アーク期間)に変化する。これに応動して、時刻t14〜t15の所定の定常溶接期間逆送減速期間Trdに移行し、同図(B)に示すように、送給速度Fwは上記の定常溶接期間逆送ピーク値Wrpから0まで減速する。同時に、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値に急増し、同図(C)に示すように、溶接電流Iwはアーク期間中次第に減少する。
【0095】
[時刻t15〜t18の定常溶接期間正送期間の動作]
時刻t15において定常溶接期間逆送減速期間Trdが終了すると、時刻t15〜t16の所定の定常溶接期間正送加速期間Tsuに移行する。この定常溶接期間正送加速期間Tsu中は、同図(B)に示すように、送給速度Fwは0から上記の定常溶接期間正送ピーク値Wspまで加速する。この期間中はアーク期間が継続している。
【0096】
時刻t16において定常溶接期間正送加速期間Tsuが終了すると、同図(B)に示すように、送給速度Fwは定常溶接期間正送ピーク期間Tspに入り、上記の定常溶接期間正送ピーク値Wspになる。この期間中もアーク期間が継続している。
【0097】
時刻t17において短絡が発生すると、同図(F)に示すように、短絡判別信号SdがHighレベル(短絡期間)に変化する。これに応動して、時刻t17〜t18の所定の定常溶接期間正送減速期間Tsdに移行し、同図(B)に示すように、送給速度Fwは上記の定常溶接期間正送ピーク値Wspから0まで減速する。同時に、同図(D)に示すように、溶接電圧Vwは数Vの短絡電圧値に急減し、同図(C)に示すように、溶接電流Iwは短絡期間中次第に増加する。
【0098】
これ以降の定常溶接期間中は、上記の定常溶接期間逆送期間及び上記の定常溶接期間正送期間の動作を繰り返すことになる。
【0099】
上記は、実施の形態1を基礎としているが、実施の形態2を基礎とした場合も同様である。
【0100】
実施の形態3の発明では、過渡溶接期間と同様に、定常溶接期間中もアーク発生をトリガーとして定常溶接期間逆送期間から定常溶接期間正送期間へと切り換わり、短絡発生をトリガーとして定常溶接期間正送期間から定常溶接期間逆送期間へと切り換わる。これにより、実施の形態3の発明では、実施の形態1と同様に過渡溶接期間中の溶接状態を安定化することができる。定常溶接期間については、実施の形態1の制御でも実施の形態3の制御でも溶接状態は安定している。