特許第6618162号(P6618162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6618162
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】評価装置、及び評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20191202BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01N21/27 A
   G06T7/00 350B
   G06T7/00 610C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-106080(P2019-106080)
(22)【出願日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517198517
【氏名又は名称】クリスタルメソッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】河合 継
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2019/0147220(US,A1)
【文献】 特開2019−056966(JP,A)
【文献】 特許第6510134(JP,B1)
【文献】 特開2018−206085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 21/84 − G01N 21/958
G06F 1/00 − G06F 21/88
G06T 1/00 − G06T 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象物の表面状態に基づく3次元データを評価する評価装置であって、
前記評価対象物に対する3次元空間の座標を示す位置データ、及び前記評価対象物の前記位置データにおける色を示す色データを複数有する前記3次元データを取得する取得部と、
予め取得された過去の3次元データと、前記過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する学習モデルが記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記3次元データに対する評価結果を生成する評価部と、
を備え
前記評価部は、
複数の前記位置データに基づき、複数のサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成部と、
複数の前記サンプリングデータ、複数の前記位置データ、及び複数の前記色データのうち、同一又は類似するデータ毎に分類した複数のグループデータを生成するグループデータ生成部と、
前記参照データベースを参照し、複数の前記グループデータに基づき前記評価結果を生成する評価結果生成部と、
を有すること
を特徴とする評価装置。
【請求項2】
前記3次元データは、前記位置データ、及び前記色データの撮像された時間を示す時間データを有すること
を特徴とする請求項1記載の評価装置。
【請求項3】
前記3次元データは、前記評価対象物に対し、それぞれ異なる2方向以上から撮像された前記位置データ及び前記色データを有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の評価装置。
【請求項4】
前記3次元データは、前記評価対象物に対し、等しい距離で120度異なる3方向から撮像された前記位置データ及び前記色データを有すること
を特徴とする請求項3記載の評価装置。
【請求項5】
前記学習モデルは、前記過去の3次元データと、前記参照情報とを学習データとして用いた機械学習により構築されること
を特徴とする請求項1〜の何れか1項記載の評価装置。
【請求項6】
評価対象物の表面状態に基づく3次元データを評価する評価システムであって、
前記評価対象物に対する3次元空間の座標を示す位置データ、及び前記評価対象物の前記位置データにおける色を示す色データを複数有する前記3次元データを取得する取得手段と、
予め取得された過去の3次元データと、前記過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する学習モデルが記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記3次元データに対する評価結果を生成する評価手段と、
を備え
前記評価手段は、
複数の前記位置データに基づき、複数のサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成手段と、
複数の前記サンプリングデータ、複数の前記位置データ、及び複数の前記色データのうち、同一又は類似するデータ毎に分類した複数のグループデータを生成するグループデータ生成手段と、
前記参照データベースを参照し、複数の前記グループデータに基づき前記評価結果を生成する評価結果生成手段と、
を有することを特徴とする評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価対象物の表面状態に基づく3次元データを評価する評価装置、及び評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元物体等の評価対象物を評価する方法として、例えば特許文献1の3次元物体検出装置等が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された3次元物体検出装置は、3次元物体の距離画像を取得する距離画像取得部(カメラ)と、距離画像を用いて3次元物体に対応する3次元モデルの姿勢を算出する3次元モデル回転部と、3次元モデルを平面に投影して得られる投影画像のエッジを抽出する投影画像エッジ抽出部と、抽出されたエッジにおいてカメラに最も近い位置の点群から予め定めた距離内にある3次元モデルの点群をマッチング用点群として抽出し、抽出したマッチング点群と距離画像から得られたマッチング用点群を照合することで3次元物体の姿勢を検出するマッチング処理部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−60695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、評価対象物の表面状態を評価する方法について、評価精度の向上が求められている。この点、特許文献1では、3次元物体の実際の姿勢と、推定姿勢との間に誤差が生じていても、3次元物体の実際の姿勢を検出し得る技術について開示されているに留まり、表面状態の評価精度を向上することができない。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、評価精度の向上を図ることができる評価装置、及び評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る評価装置は、評価対象物の表面状態に基づく3次元データを評価する評価装置であって、前記評価対象物に対する3次元空間の座標を示す位置データ、及び前記評価対象物の前記位置データにおける色を示す色データを複数有する前記3次元データを取得する取得部と、予め取得された過去の3次元データと、前記過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する学習モデルが記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記3次元データに対する評価結果を生成する評価部と、を備え、前記評価部は、複数の前記位置データに基づき、複数のサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成部と、複数の前記サンプリングデータ、複数の前記位置データ、及び複数の前記色データのうち、同一又は類似するデータ毎に分類した複数のグループデータを生成するグループデータ生成部と、前記参照データベースを参照し、複数の前記グループデータに基づき前記評価結果を生成する評価結果生成部と、を有することを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る評価装置は、第1発明において、前記3次元データは、前記位置データ、及び前記色データの撮像された時間を示す時間データを有することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る評価装置は、第1発明又は第2発明において、前記3次元データは、前記評価対象物に対し、それぞれ異なる2方向以上から撮像された前記位置データ及び前記色データを有することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る評価装置は、第3発明において、前記3次元データは、前記評価対象物に対し、等しい距離で120度異なる3方向から撮像された前記位置データ及び前記色データを有することを特徴とする。
【0012】
発明に係る評価装置は、第1発明〜第発明の何れかにおいて、前記学習モデルは、前記過去の3次元データと、前記参照情報とを学習データとして用いた機械学習により構築されることを特徴とする。
【0013】
発明に係る評価システムは、評価対象物の表面状態に基づく3次元データを評価する評価システムであって、前記評価対象物に対する3次元空間の座標を示す位置データ、及び前記評価対象物の前記位置データにおける色を示す色データを複数有する前記3次元データを取得する取得手段と、予め取得された過去の3次元データと、前記過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する学習モデルが記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記3次元データに対する評価結果を生成する評価手段と、を備え、前記評価手段は、複数の前記位置データに基づき、複数のサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成手段と、複数の前記サンプリングデータ、複数の前記位置データ、及び複数の前記色データのうち、同一又は類似するデータ毎に分類した複数のグループデータを生成するグループデータ生成手段と、前記参照データベースを参照し、複数の前記グループデータに基づき前記評価結果を生成する評価結果生成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明〜第発明によれば、評価部は、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価結果を生成できるとともに、評価対象物に対する位置データに加えて、色データを評価対象とすることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0015】
特に、第2発明によれば、3次元データは、時間データを有する。このため、評価対象物の表面状態が経時変化する場合等においても、経時変化前後を踏まえた評価を実施することができる。これにより、評価条件を拡大させることが可能となる。
【0016】
特に、第3発明によれば、3次元データは、評価対象物に対し、それぞれ異なる2方向以上から撮像された位置データ及び色データを有する。このため、位置データ毎の相対的な位置関係の精度を向上させることができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0017】
特に、第4発明によれば、3次元データは、評価対象物に対し、等しい距離で120度異なる3方向から撮像された位置データ及び色データを有する。このため、評価対象物における全周の表面状態に基づく3次元データに対する評価を実施することができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0018】
第1発明〜第5発明によれば、評価部は、グループデータ生成部と、評価結果生成部とを有する。このため、位置データと色データとが紐づいた状態で、評価結果を生成することができる。これにより、評価対象物における配色の差異に対しても、評価することが可能となる。従って、評価することができる評価対象物の種類を飛躍的に増加させることができる。
【0019】
特に、第発明によれば、学習モデルは、過去の3次元データと、参照情報とを学習データとして用いた機械学習により構築される。このため、過去の3次元データとは異なる未知の3次元データを評価する場合においても、定量的な評価を実施することができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0020】
発明によれば、評価手段は、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価結果を生成できるとともに、評価対象物に対する位置データに加えて、色データを評価対象とすることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
また、第6発明によれば、評価手段は、グループデータ生成手段と、評価結果生成手段とを有する。このため、位置データと色データとが紐づいた状態で、評価結果を生成することができる。これにより、評価対象物における配色の差異に対しても、評価することが可能となる。従って、評価することができる評価対象物の種類を飛躍的に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態における評価システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、評価システムの動作の一例を示す模式図である。
図3図3(a)〜(c)は、評価システムにおける出力画面の一例を示す模式図である。
図4図4(a)は、本実施形態における評価装置の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、本実施形態における評価装置の機能の一例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態における参照データベースの一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態における参照データベースの第1変形例を示す模式図である。
図7図7は、本実施形態における参照データベースの第2変形例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態における評価システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態における評価手段の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した実施形態における評価システム、及び評価装置の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1を参照して、本実施形態における評価システム100、及び評価装置1の一例について説明する。
【0024】
本実施形態における評価システム100は、例えば図1に示すように、評価装置1を有する。評価装置1は、例えば撮像装置2と接続するほか、例えば通信網4を介して他の端末5やサーバ6に接続されてもよい。
【0025】
評価システム100は、評価対象物3の表面状態に基づく3次元データを評価する。評価システム100は、例えば評価対象物3を製造する際の検査機として用いられるほか、類似品の評価等に用いられ、立体構造を有するものを評価対象物3として評価することができる。なお、「表面状態」とは、評価対象物3の形状や配色を示すほか、例えばひび、汚れ、色ムラ、異物の付着等の欠陥を示す。
【0026】
評価システム100は、例えば図2に示すように、評価装置1が3次元データを取得したあと、後述する参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。評価システム100は、例えば評価結果に対応する出力情報を出力する(図2では出力情報「ウサギ」を出力)。3次元データは、位置データと、位置データに紐づく色データとを複数有する。
【0027】
位置データは、評価対象物3に対する3次元空間の座標を示し、例えば直交座標系におけるパラメータ「x、y、z」や、球面座標系におけるパラメータ「r、θ、φ」等を示す。色データは、評価対象物3の位置データ毎における色を示し、例えばRGBカラーモデルのパラメータ「r、g、b」等を示す。即ち、3次元データに含まれる複数の位置データ及び色データを用いることで、評価対象物3の表面状態を再現することができ、例えば、3次元データは、複数の位置データに対して色データの色で表現された点群(ポイントクラウド)で示される。
【0028】
3次元データは、例えば時間データを有してもよい。時間データは、位置データ、及び色データの撮像された時間を示す。この場合、評価対象物3の表面状態が経時変化する場合等においても、経時変化前後を踏まえた評価を実施することができる。
【0029】
3次元データは、例えば撮像装置2を用いて評価対象物3を撮像することによって生成され、例えば複数の撮像装置2を用いて1つの評価対象物3を撮像して生成された複数の3次元データを、1つの3次元データとして評価装置1が取得してもよい。撮像装置2は、例えば評価装置1に内蔵されてもよい。
【0030】
3次元データは、例えば評価対象物3に対し、それぞれ異なる2方向以上から撮像された位置データ、及び色データを有する。この場合、位置データ毎の相対的な位置関係の精度を向上させることができる。
【0031】
3次元データは、例えば評価対象物3に対し、等しい距離で任意の角度(例えばθ1、θ2、θ3)が異なる3方向から撮像された位置データ、及び色データを有する。特に、各角度θ1、θ2、θ3とする場合、撮像装置2の数を抑えた状態で、評価対象物3における全周の表面状態に基づく3次元データを生成することができる。
【0032】
3次元データは、公知の3次元カメラ(3Dカメラ)を用いて生成され、例えばReal Sense(登録商標)を用いて生成される。3次元データは、例えば公知の距離画像カメラを用いて生成された位置データと、公知のRGBカメラを用いて生成された色データとを有してもよい。
【0033】
評価装置1は、例えば図3(a)に示すように、取得した3次元データに基づき、複数の位置データを用いて、評価対象物3の表面状態を再現した画像を表示してもよい。また、評価装置1は、例えば図3(b)に示すように、取得した3次元データに基づき、複数の位置データ及び色データを用いて、評価対象物3の表面状態を再現した画像を表示してもよい。評価装置1は、例えば図3(c)に示すように、評価結果に対応する出力情報として、「検知結果」の詳細(例えば「正常」又は「異常」)や、評価対象物3の「種類」(例えば「ウサギ」)を表示してもよい。
【0034】
(評価装置1)
次に、図4を参照して、本実施形態における評価装置1の一例を説明する。図4(a)は、本実施形態における評価装置1の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、本実施形態における評価装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0035】
評価装置1として、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器が用いられるほか、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、IoT(Internet of Things)デバイス等の電子機器、Raspberry Pi(登録商標)等のシングルボードコンピュータが用いられてもよい。評価装置1は、例えば図4(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105〜107とを備える。各構成101〜107は、内部バス110により接続される。
【0036】
CPU101は、評価装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、3次元データや参照データベース等の各種情報が保存される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(solid state drive)やフロッピーディスク等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば評価装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。GPUを有することで、通常よりも高速演算処理が可能となる。
【0037】
I/F105は、撮像装置2との各種情報の送受信を行うためのインターフェースであるほか、例えばインターネット等の通信網4を介して、他の端末5やサーバ6等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースでもよい。I/F106は、入力部分108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108として、例えばキーボードが用いられ、評価装置1の管理者等は、入力部分108を介して、各種情報又は評価装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、出力部分109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109は、保存部104に保存された各種情報、又は評価装置1の処理状況等を出力する。出力部分109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0038】
<参照データベース>
保存部104に保存された参照データベースには、学習モデルが記憶される。学習モデルは、予め取得された過去の3次元データと、過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する。参照データベースには、例えば過去の3次元データ、及び参照情報が記憶されてもよい。学習モデルは、例えば過去の3次元データ、及び参照情報を一組の学習データとして、複数の学習データを用いた機械学習により構築される。学習方法として、例えば畳み込みニューラルネットワーク等の深層学習が用いられる。
【0039】
この場合、例えば連関性は、多対多の情報の間における繋がりの度合いを示す。連関性は、機械学習の過程で適宜更新される。このため、学習モデルは、例えば過去の3次元データ、及び参照情報に基づいて最適化された連関性(例えば関数)を有する分類器を示す。このため、過去に評価対象物3の表面状態を評価した結果を全て踏まえて構築された学習モデルを用いて、3次元データに対する評価結果が生成される。これにより、評価対象物3が複雑な表面状態を有する場合においても、最適な評価結果を生成することができる。また、3次元データが、過去の3次元データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、最適な評価結果を定量的に生成することができる。なお、機械学習を行う際に汎化能力を高めることで、未知の3次元データに対する評価精度の向上を図ることができる。
【0040】
なお、連関性は、例えば各過去の3次元データと各参照情報との間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えば学習モデルがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0041】
過去の3次元データは、上述した3次元データと同種の情報を示す。過去の3次元データは、例えば過去に評価対象物3を評価した際に取得された3次元データを複数含む。
【0042】
参照情報は、過去の3次元データに紐づき、評価対象物3の表面状態に関する情報を示す。参照情報は、例えば評価対象物3の種類(例えば「ウサギ」や「カップラーメン」等)を示す種類情報や、評価対象物3の生産規格(例えば「規格内」、「規格外」、「異物あり」、「色ムラあり」、「ひびあり」等)の規格情報等を含む。なお、参照情報に含まれる具体的な内容は、任意に設定することができる。
【0043】
連関性は、例えば図5に示すように、過去の3次元データと参照情報との間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、過去の3次元データに含まれる複数のデータ(図5では「データA」〜「データC」)のそれぞれに対し、参照情報に含まれる複数のデータ(図5では「参照A」〜「参照C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、過去の3次元データに含まれる1つのデータに対して、参照情報に含まれる複数のデータを紐づけることができ、多角的な評価結果の生成を実現することができる。
【0044】
連関性は、例えば過去の3次元データに含まれる複数のデータと、参照情報に含まれる複数のデータとをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、過去の3次元データに含まれる「データA」は、参照情報に含まれる「参照A」との間の連関度AA「75%」を示し、参照情報に含まれる「参照B」との間の連関度AB「12%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。なお、上述した機械学習により学習モデルを構築する際、連関性が3段階以上の連関度を有するように設定してもよい。
【0045】
過去の3次元データは、例えば図6に示すように、過去の位置データと、過去の色データとを分割して、参照データベースに記憶されてもよい。この場合、過去の位置データ及び過去の色データの組み合わせと、参照情報との間の関係に基づいて、連関度が算出される。なお、過去の3次元データは、例えば上記に加え、過去の3次元データ及び過去の色データの少なくとも何れかを分割して、参照データベースに記憶されてもよい。
【0046】
例えば、過去の位置データに含まれる「位置A」、及び過去の色データに含まれる「色A」の組み合わせは、「参照A」との間の連関度AAA「63%」を示し、「参照B」との間の連関度ABA「63%」を示す。この場合、過去の位置データ及び過去の色データをそれぞれ独立してデータを記憶させることができる。このため、評価結果を生成する際、精度の向上及び選択肢の範囲を拡大させることが可能となる。
【0047】
連関性は、例えば図7に示すように、合成データと、類似度とを含んでもよい。合成データは、過去の位置データ又は過去の色データとの間における3段階以上の類似度により示される。合成データは、数値、行列、又はヒストグラム等の形式で参照データベースに記憶されるほか、例えば画像や文字列等の形式で記憶されてもよい。
【0048】
図4(b)は、評価装置1の機能の一例を示す模式図である。評価装置1は、取得部11と、記憶部12と、評価部13と、出力部14とを備え、例えば更新部15を有してもよい。なお、図4(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に保存されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能により制御されてもよい。
【0049】
<取得部11>
取得部11は、3次元データを取得する。取得部11は、撮像装置2等から3次元データを取得するほか、例えば内蔵された図示しない撮像部から、3次元データを取得する。なお、取得部11が3次元データを取得する頻度及び周期は、任意である。
【0050】
取得部11は、評価装置1に送信された各種情報を受信する。取得部11は、例えば通信網4及びI/F105を介して、他の端末5等の外部端末から送信された3次元データ等の各種情報を受信してもよい。
【0051】
<記憶部12>
記憶部12は、保存部104に保存された参照データベース等の各種情報を必要に応じて取出す。記憶部12は、各構成11、13〜15により取得又は生成された各種情報を、保存部104に保存する。
【0052】
<評価部13>
評価部13は、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。評価部13は、例えば3次元データを入力データとし、学習モデルに基づき算出された解に紐づく最適な参照情報を選択し、最適な参照情報に基づく評価結果を生成する。
【0053】
評価部13は、例えば図5に示した参照データベースを参照した場合、3次元データに含まれるデータと同一又は類似するデータ(例えば「データA」:第1データとする)を選択する。第1データとして、3次元データと一部一致又は完全一致するデータが選択されるほか、例えば類似するデータが選択される。3次元データが行列等の数値で表される場合、選択される第1データに含まれる数値範囲を、予め設定してもよい。
【0054】
評価部13は、選択した第1データに紐づく参照情報、及び選択した第1データと参照情報との間における連関度(第1連関度)を選択し、選択した参照情報及び第1連関度に基づき評価結果を生成する。なお、第1連関度は、予め構築された連関性から選択されるほか、評価部13によって算出されてもよい。
【0055】
例えば評価部13は、第1データ「データA」に紐づく参照情報に含まれるデータ「参照A」、及び「データA」と「参照A」との間における第1連関度(連関度AA)「75%」を選択する。なお、参照情報及び第1連関度は、複数のデータを含んでもよい。この場合、上述した「参照A」及び「75%」に加えて、第1データ「データA」に紐づく参照情報「参照B」、及び「データA」と「参照B」との間における第1連関度(連関度AB)「12%」を選択し、「参照A」及び「75%」、並びに、「参照B」及び「12%」に基づき評価結果を生成してもよい。
【0056】
評価結果は、3次元データを含んでもよい。また、第1連関度は、例えば百分率等の3段階以上で示される。
【0057】
評価部13は、例えば予め保存部104等に記憶された出力用フォーマット等の形式データを用いて、上述選択した参照情報及び第1連関度等を、ユーザが理解できる形式(例えば文字列)を示す評価結果を生成する。なお、評価結果を生成する際における形式の設定等は、例えば公知の技術を用いてもよい。
【0058】
評価部13は、例えば選択した第1連関度に基づいて、評価結果の内容を決定する。例えば評価部13は、「50%」以上の第1連関度に紐づく参照情報に基づいて、評価結果を生成し、「50%」未満の第1連関度に紐づく参照情報を評価結果に反映しないように設定されてもよい。なお、第1連関度に基づく判定基準は、例えば管理者等が予め閾値等を設定してもよく、閾値の範囲等は任意に設定できる。また、評価部13は、例えば2以上の第1連関度を演算した結果や、2以上の第1連関度の比較に基づいて、評価結果の内容を決定してもよい。
【0059】
評価部13は、例えば図9に示すように、サンプリングデータ生成部13aと、グループデータ生成部13bと、評価結果生成部13cとを有してもよい。
【0060】
<<サンプリングデータ生成部13a>>
サンプリングデータ生成部13aは、複数の位置データに基づき、複数のサンプリングデータを生成する。サンプリングデータ生成部13aは、予め設定されたアルゴリズムによって選択された点の位置データから、サンプリングデータとして生成する。アルゴリズムとして、例えば公知の技術(例えばFarthest Point Samplingアルゴリズム等)が用いられる。
【0061】
<<グループデータ生成部13b>>
グループデータ生成部13bは、複数のサンプリングデータ、複数の位置データ、及び複数の色データのうち、同一又は類似するデータ毎に分類した複数のグループデータを生成する。グループデータ生成部13bは、例えば各サンプリングデータから一定距離内に含まれる位置データ及び色データを、それぞれグループデータとして複数生成する。この場合、例えば1つのグループデータには、1つのサンプリングデータ、複数の位置データ、及び複数の色データが含まれる。
【0062】
<<評価結果生成部13c>>
評価結果生成部13cは、参照データべースを参照し、複数のグループデータに基づき評価結果を生成する。評価結果生成部13cは、例えばグループデータ毎に2次元畳み込み処理、及びグループデータ毎にプーリング処理を行い、処理結果に対応する評価結果を生成する。評価結果生成部13cは、例えば処理結果に対応する参照情報を選択し、参照情報に基づく評価結果を生成する。
【0063】
なお、各生成部13a、13b、13cは、例えばPointNet等の3次元データに対応し得る深層学習フレームワークを用いて構築された学習モデルを参照して、上述した処理を実行してもよい。
【0064】
<出力部14>
出力部14は、評価結果を出力する。出力部14は、I/F107を介して出力部分109に評価結果を送信するほか、例えばI/F105を介して、他の端末5等に評価結果を送信する。出力部14は、例えば図3に示した評価対象物3の表面状態を再現した画像を表示するデータを、出力部分109等に出力する。
【0065】
<更新部15>
更新部15は、例えば参照データベースを更新する。更新部15は、過去の3次元データと、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させる。例えば評価部13により生成された評価結果を踏まえ、管理者等が評価結果の内容における精度を判定し、判定結果を評価装置1が取得した場合、更新部15は、判定結果に基づき参照データベースに含まれる連関性を更新する。
【0066】
<通信網4>
通信網4は、例えば評価装置1等が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。通信網4は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信網で実現してもよい。
【0067】
<他の端末5>
他の端末5として、例えば評価装置1と同様に電子機器で具現化されたものが用いられる。他の端末5は、例えば複数の評価装置1と通信可能な中央制御装置等を示す。
【0068】
<サーバ6>
サーバ6には、例えば上述した各種情報が記憶される。サーバ6には、例えば通信網4を介して送られてきた各種情報が蓄積される。サーバ6には、例えば保存部104と同様の情報が保存され、通信網4を介して評価装置1と各種情報の送受信が行われてもよい。即ち、評価装置1は、保存部104の代わりにサーバ6を用いてもよい。
【0069】
(評価システム100の動作の一例)
次に、本実施形態における評価システム100の動作の一例について説明する。図8は、本実施形態における評価システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0070】
<取得手段S110>
図8に示すように、3次元データを取得する(取得手段S110)。取得部11は、位置データと、色データとを含む3次元データを、例えば撮像装置2から取得する。取得部11は、例えば記憶部12を介して、3次元データを保存部104に保存する。
【0071】
例えば複数の撮像装置2を用いて1つの評価対象物3を撮像した場合、取得部11は、複数の撮像装置2によって生成された複数の3次元データを、1つの3次元データとして取得する。取得部11は、3次元データが生成される度に取得するほか、例えば任意の期間に生成された3次元データを取得してもよい。
【0072】
<評価手段S120>
次に、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する(評価手段S120)。評価部13は、取得部11により取得された3次元データを取得し、例えば保存部104に保存された参照データベースを取得する。評価部13は、例えば3次元データを入力データとし、関数等で示された連関性に基づき算出された解に紐づく最適な参照情報を選択し、最適な参照情報に基づく評価結果を生成する。
【0073】
評価部13は、1つの3次元データに対して1つの評価結果を生成するほか、例えば複数の3次元データに対して1つの評価結果を生成してもよい。評価部13は、例えば保存部104に保存された出力用フォーマット等の形式データを用いて、評価結果を生成する。評価部13は、例えば記憶部12を介して、評価結果を保存部104に保存する。
【0074】
なお、評価手段S120では、例えば上述したサンプリングデータ生成部13aが複数のサンプリングデータを生成し、グループデータ生成部13bがグループデータを生成し、評価結果生成部13cが評価結果を生成してもよい。
【0075】
その後、例えば評価結果を出力してもよい(出力手段S130)。出力部14は、評価結果を出力部分109等に出力するほか、例えば通信網4を介して他の端末5に出力する。
【0076】
<更新手段S140>
なお、例えば過去の3次元データと、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させてもよい(更新手段S140)。例えば評価部13により生成された評価結果を踏まえ、管理者等が評価結果の精度を判定した判定結果を評価装置1が取得した場合、更新部15は、判定結果に基づき参照データベースに含まれる連関性を更新する。
【0077】
これにより、本実施形態における評価システム100の動作が終了してもよい。なお、更新手段S140を実施する場合のタイミングは、任意である。
【0078】
本実施形態によれば、評価部13は、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価結果を生成できるとともに、評価対象物3に対する位置データに加えて、色データを評価対象とすることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態によれば、3次元データは、時間データを有する。このため、評価対象物3の表面状態が経時変化する場合等においても、経時変化前後を踏まえた評価を実施することができる。これにより、評価条件を拡大させることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態によれば、3次元データは、評価対象物3に対し、それぞれ異なる2方向以上から撮像された位置データ及び色データを有する。このため、位置データ毎の相対的な位置関係の精度を向上させることができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、3次元データは、評価対象物3に対し、等しい距離で120度異なる3方向から撮像された位置データ及び色データを有する。このため、評価対象物3における全周の表面状態に基づく3次元データに対する評価を実施することができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態によれば、評価部13は、グループデータ生成部13bと、評価結果生成部13cとを有する。このため、位置データと色データとが紐づいた状態で、評価結果を生成することができる。これにより、評価対象物3における配色の差異に対しても、評価することが可能となる。従って、評価することができる評価対象物3の種類を飛躍的に増加させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、学習モデルは、過去の3次元データと、参照情報とを学習データとして用いた機械学習により構築される。このため、過去の3次元データとは異なる未知の3次元データを評価する場合においても、定量的な評価を実施することができる。これにより、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態によれば、評価手段S120は、参照データベースを参照し、3次元データに対する評価結果を生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価結果を生成できるとともに、評価対象物3に対する位置データに加えて、色データを評価対象とすることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0085】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 :評価装置
2 :撮像装置
3 :評価対象物
4 :通信網
5 :端末
6 :サーバ
10 :筐体
11 :取得部
12 :記憶部
13 :評価部
13a :サンプリングデータ生成部
13b :グループデータ生成部
13c :評価結果生成部
14 :出力部
15 :更新部
100 :評価システム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部分
109 :出力部分
110 :内部バス
S110 :取得手段
S120 :評価手段
S130 :出力手段
S140 :更新手段
【要約】
【課題】評価精度の向上を図ることができる評価装置、及び評価システムを提供する。
【解決手段】評価対象物3の表面状態に基づく3次元データを評価する評価装置1であって、前記評価対象物3に対する3次元空間の座標を示す位置データ、及び前記評価対象物の前記位置データにおける色を示す色データを複数有する前記3次元データを取得する取得部と、予め取得された過去の3次元データと、前記過去の3次元データに紐づく参照情報との間における連関性を有する学習モデルが記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記3次元データに対する評価結果を生成する評価部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9