(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618174
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】消音装置および消音方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20191202BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
G10K11/175
H04R3/00 320
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-222149(P2015-222149)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-90736(P2017-90736A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】岡部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山峯 直利
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴理
【審査官】
篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−037381(JP,A)
【文献】
特開2009−232205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/175
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備え、
前記制御部は、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作し、
さらに前記制御部は、フィードフォワード制御中またはフィードバック制御中にリファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御を維持し、またはフィードフォワード制御に切り替え、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御を維持し、またはフィードバック制御に切り替える、消音装置。
【請求項2】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備え、
前記制御部は、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作し、
さらに前記制御部は、入力される騒音信号の規則性を判別し、
規則性があると判断した場合にはフィードバック制御で動作し、
規則性がないと判断した場合にはフィードフォワード制御で動作する、消音装置。
【請求項3】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備え、
前記制御部は、自動切替えモードまたは手動選択モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、
ユーザにより自動切り替えモードが選択されている場合には、前記制御部は、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作すし、
ユーザにより手動選択モードが選択されている場合には、前記制御部は、フィードフォワード制御モードとフィードバック制御モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、
ユーザによりフィードフォワードモードが選択されている場合にはフィードフォワード制御で動作し、
ユーザによりフィードバックモードが選択されている場合にはフィードバック制御で動作する、消音装置。
【請求項4】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備える消音システムにおいて、
前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作し、
フィードフォワード制御中またはフィードバック制御中にリファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御を維持し、またはフィードフォワード制御に切り替え、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御を維持し、またはフィードバック制御に切り替える、消音方法。
【請求項5】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備える消音システムにおいて、
前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作し、
入力される騒音信号の規則性を判別し、
規則性があると判断した場合にはフィードバック制御で動作し、
規則性がないと判断した場合にはフィードフォワード制御で動作する、消音方法。
【請求項6】
リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、
スピーカを接続するスピーカ接続部と、
エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、
入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、
前記騒音制御フィルタ部のフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、
を少なくとも備える消音システムにおいて、
自動切替えモードまたは手動選択モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、
ユーザにより自動切り替えモードが選択されている場合には、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、
前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、
前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作すし、
ユーザにより手動選択モードが選択されている場合には、フィードフォワード制御モードとフィードバック制御モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、
ユーザによりフィードフォワードモードが選択されている場合にはフィードフォワード制御で動作し、
ユーザによりフィードバックモードが選択されている場合にはフィードバック制御で動作する、消音方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音信号から生成した逆位相の疑似騒音信号を疑似騒音として出力し、騒音に重ね合わせることで消音する消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風路や電子機器、自動車の中を伝搬する騒音に対して、逆位相かつ同振幅の音波である疑似騒音を加えて消音するアクティブノイズコントロールと称する電子消音技術が用いられている。この消音技術では、一般的に、フィードフォワード制御と呼ばれる方式と、フィードバック制御と呼ばれる方式が存在する。
【0003】
フィードフォワード制御は、騒音の上流にてリファレンスマイクと呼ばれる集音器により騒音を収集し、スピーカより下流にてエラーマイクと呼ばれる集音器により打ち消された騒音を収集し、当該騒音の上流で収集した騒音をデジタル変換したリファレンス信号と下流で収集した騒音をデジタル変換したエラー信号とから、リファレンス信号の逆位相となる疑似騒音信号を生成し、リファレンスマイクとスピーカとの間の騒音の伝達時間に合わせて、スピーカから疑似騒音として出力することで騒音を打ち消すものである。騒音発生源とスピーカとの間にある程度距離が取れる送風路等に用いられることが多い。例えば、特許文献1のような場合である。
【0004】
フィードバック制御は、スピーカより下流にてエラーマイクと呼ばれる集音器により騒音を収集し、当該騒音をデジタル変換したエラー信号に基づき次に来る騒音を予測してエラー信号の逆位相となる疑似騒音信号を生成し、スピーカから逆位相音として出力することで騒音を打ち消すものである。また、他にも、騒音と相関のある機器などの動作、例えば自動車のエンジンの回転数やPCファンの回転数等、と騒音の特性との関係を記憶しておき、これらの数値を電子的に取得してまたはタイミングで、疑似騒音信号の生成と出力に用いる波形同期法と呼ばれるケースも存在する。騒音発生源とスピーカとの間にあまり距離が取れない電子機器や自動車等に用いられることが多い。例えば、特許文献2や特許文献3のような場合である。また、フィードバック制御には、他にも、ヘッドホンやイヤホンにも用いられる。例えば、特許文献4のような場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3397245号公報
【特許文献2】特開2002−055684号公報
【特許文献3】特開平8−076772号公報
【特許文献4】特許第5630538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したシステムにおいては、消音する対象となる設備や装置に応じて、フィードバック型システムとフィードバック型システムの内、より適した方のシステムが採用され、それ専用のユニットおよびシステムが設計、構築される。
【0007】
そのため、装置およびシステムを2種類設計、構築する必要があり、作業工数や費用が大きくなる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたものであり、フィードフォワード方式とフィードバック方式の双方に対応した消音ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る消音装置または消音方法では、リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、スピーカを接続するスピーカ接続部と、エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、前記騒音制御フィルタのフィルタ係数を更新する係数更新部と、各部を制御する制御部と、を少なくとも備え、前記制御部は、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作する。
【0010】
また、本発明に係る消音装置または消音方法では、さらに、前記制御部は、フィードフォワード制御中またはフィードバック制御中にリファレンスマイクの接続の有無を判別し、前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御を維持し、またはフィードフォワード制御に切り替え、前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御を維持し、またはフィードバック制御に切り替える。
【0011】
また、本発明に係る消音装置または消音方法では、さらに、前記制御部は、入力される騒音信号の規則性を判別し、規則性があると判断した場合、フィードバック制御で動作し、規則性がないと判断した場合、フィードフォワード制御で動作する。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る消音装置または消音方法では、リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、スピーカを接続するスピーカ接続部と、エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、前記騒音制御フィルタのフィルタ係数を更新する係数更新部と、各部を制御する制御部と、を少なくとも備え、前記制御部は、ユーザにより選択されたモードを確認し、ユーザによりフィードフォワードモードが選択されている場合にはフィードフォワード制御で動作し、ユーザによりフィードバックモードが選択されている場合にはフィードバック制御で動作する。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る消音装置または消音方法では、リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接続部と、スピーカを接続するスピーカ接続部と、エラーマイクを接続するエラーマイク接続部と、入力された騒音信号に対して逆特性の疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ部と、前記騒音制御フィルタのフィルタ係数を更新する係数更新部と、
各部を制御する制御部と、を少なくとも備え、前記制御部は、自動切替えモードまたは手動選択モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、ユーザにより自動切り替えモードが選択されている場合には、前記制御部は、前記リファレンスマイクの接続の有無を判別し、前記リファレンスマイクが接続されていると判別した場合にはフィードフォワード制御で動作し、前記リファレンスマイクが接続されていないと判別した場合にはフィードバック制御で動作すし、ユーザにより手動選択モードが選択されている場合には、前記制御部は、フィードフォワード制御モードとフィードバック制御モードの内、ユーザにより選択されたモードを確認し、ユーザによりフィードフォワードモードが選択されている場合にはフィードフォワード制御で動作し、ユーザによりフィードバックモードが選択されている場合にはフィードバック制御で動作する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、フィードバック制御とフィードフォワード制御の双方に対応した消音ユニットを提供することにより、消音システムの設計、構築に係る工数、費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例である消音ユニットの内部構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例である消音ユニットを用いたフィードフォワード型システムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例である消音ユニットを用いたフィードバック型システムの構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例である消音方式判別の処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施例である複合制御方式の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を、以下に図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する消音システムでは、アルゴリズムとして、Filtered−x法やFIRフィルタを使った場合にはFiltered−x LMS法等といった方法が用いられる。
【0017】
図1は、本発明の一実施例である消音ユニットの内部構成を示す図である。
図1において、1は消音ユニットであり、後述するリファレンスマイクやスピーカ、エラーマイク等が接続されて運用される。消音ユニット1は、リファレンスマイクを接続するリファレンスマイク接点1−1、リファレンスマイクの出力であるリファレンス信号と合成部1−8の出力である再現騒音信号を切り替えるスイッチ1−2、スピーカ3からエラーマイク4までの二次経路の伝達特性の変化を補償するために、学習用信号を生成する二次経路モデル1−3、エラー信号が最小となるように騒音制御フィルタ1−5のフィルタ係数を更新する係数更新部1−4、疑似騒音信号を生成する騒音制御フィルタ1−5、スピーカを接続するスピーカ接点1−6、エラーマイクを接続するエラーマイク接点1−7、エラーマイクの出力であるエラー信号と二次経路モデル1−9でフィルタリングされた疑似騒音信号とを合成して再現した再現騒音信号を出力する合成部1−8、エラー信号から騒音信号を再合成するために、疑似騒音信号をフィルタリングして出力する二次経路モデル1−9により構成され、図示しない制御部により各所が制御される。ここで二次経路モデルでは、離散時間システム等により二次経路の伝達関数をモデル化する。
【0018】
消音ユニット1は、リファレンスマイク接点1−1にリファレンスマイク2が接続されているか否かを判別する。リファレンスマイク2が接続されている場合には、スイッチ1−2をエラーマイク出力側(上側)に切替えてフィードフォワード制御を開始し、リファレンスマイク2が接続されていない場合には、スイッチ1−2を再現騒音信号出力側(下側)に切替えてフィードバック制御を開始する。
【0019】
図2を用いて、リファレンスマイクが接続されていると判断された場合のフィードフォワード制御について説明する。ここで、フィードフォワード制御とは、リファレンスマイクで集音した騒音をベースに疑似騒音信号を生成し、前段のリファレンスマイク集音した騒音に対して後段のある地点(例えばエラーマイク設置位置)で音波が重なり合うように疑似騒音を出力することで消音する方式である。
図2は、本発明の一実施例である消音ユニットを用いたフィードフォワード型システムの構成を示す図である。
図2において、騒音をリファレンス信号として入力するリファレンスマイク2、疑似騒音信号を疑似騒音として出力するスピーカ3、および騒音と疑似騒音とが重なり合った音をエラー信号として入力するエラーマイク4であり、
図1と同じ構成要素については再度の説明を割愛する。なお、騒音は、矢印に示す通り、図の左から右へ伝達するものとし、騒音の通り道を一次経路、スピーカからエラーマイクまでの疑似騒音の通り道を二次経路と呼ぶことにする。
【0020】
リファレンスマイク接点1−1に接続されたリファレンスマイク2により、騒音が収集され、リファレンス信号として入力される。リファレンス信号は、スイッチ1−2を介して、二次経路モデル1−3および騒音制御フィルタ1−5に入力される。二次経路モデル1−3では、リファレンス信号が二次経路の伝達特性の変化を補償するようにフィルタリングされて、学習用信号が生成され、係数更新部1−4へ出力される。係数更新部1−4では、学習用信号およびエラー信号から、エラー信号が最も小さくなるように騒音制御フィルタ1−5で用いられる係数が算出されて、係数更新信号が生成され、騒音制御フィルタ1−5へ出力される。騒音制御フィルタ1−5では、リファレンス信号が係数更新信号によって更新された係数を用いてフィルタリングされて、疑似騒音信号が生成され、スピーカ接点1−6に接続されたスピーカ3へ出力される。スピーカ3では、入力された疑似騒音信号が、疑似騒音として、エラーマイク4の位置で逆位相となるように出力される。
【0021】
エラーマイク接点1−7に接続されたエラーマイク4により、騒音と疑似騒音とが重なり合って打ち消された音が収集され、エラー信号として入力される。エラー信号は係数更新部1−4へ入力される。係数更新部1−4では、学習用信号およびエラー信号から、エラー信号が最も小さくなる係数が算出されて、係数更新信号が生成され、騒音制御フィルタ1−5へ出力される。騒音制御フィルタ1−5では、リファレンス信号が係数更新信号によって更新された係数を用いてフィルタリングされて、疑似騒音信号が生成され、スピーカ接点1−6に接続されたスピーカ3へ出力される。スピーカ3では、入力された疑似騒音信号が、疑似騒音として、エラーマイク4の位置で逆位相となるように出力される。これを繰り返すことにより、最適な疑似騒音が生成され、騒音が動的に打ち消されることになる。
【0022】
アルゴリズムとしては、周知のFiltered−x法やFiltered−x LMS法等が用いられる。
【0023】
次に、
図3を用いて、リファレンスマイクが接続されていないと判断された場合のフィードバック制御について説明する。ここで、フィードバック制御とは、エラーマイクで集音した騒音をベースに疑似騒音信号を生成し、新たにやってくる騒音に対してある地点(例えばエラーマイク設置位置)で音波が重なり合うように疑似騒音を出力することで消音する方式である。
図2は、本発明の一実施例である消音ユニットを用いたフィードフォワード型システムの構成を示す図である。
図3において、既に全ての構成要素に関して説明しているため、個々の説明は割愛する。
【0024】
フィードバック制御においては、フィードフォワード制御と比べ、リファレンスマイクが接続されてない、または故障により検出されない(故障したことを検出した場合を含む)点で異なる。
【0025】
エラーマイク接点1−7に接続されたエラーマイク4により、騒音が収集され、エラー信号として入力される。エラー信号は、係数更新部1−4および、加算器1−8に入力される。加算器1−8では、エラー信号は、二次経路モデル1−9から出力されるフィルタード疑似騒音信号と加算されて、再現騒音信号として、スイッチ1−2を介して、二次経路モデル1−3および騒音制御フィルタ1−5に入力される。二次経路モデル1−3では、再現騒音信号が二次経路の伝達特性の変化を補償するようにフィルタリングされて、学習用信号が生成され、係数更新部1−4へ出力される。係数更新部1−4では、学習用信号およびエラー信号から、エラー信号が最も小さくなるように騒音制御フィルタ1−5で用いられる係数が算出されて、係数更新信号が生成され、騒音制御フィルタ1−5へ出力される。騒音制御フィルタ1−5では、エラー信号が係数更新信号によって更新された係数を用いてフィルタリングされて、疑似騒音信号が生成され、二次経路モデル1−9、およびスピーカ接点1−6に接続されたスピーカ3へ出力される。スピーカ3では、入力された疑似騒音信号は、疑似騒音として、エラーマイク4の位置で逆位相となるように出力される。二次経路モデル1−9では、疑似騒音信号が、エラー信号から騒音信号を再合成するためにフィルタリングされ、フィルタード疑似騒音信号として加算器1−8へ出力される。
【0026】
エラーマイク接点1−7に接続されたエラーマイク4により、騒音と疑似騒音とが重なり合って打ち消された音が収集され、エラー信号として入力される。エラー信号は係数更新部1−4、および加算器1−8へ入力される。加算器1−8では、エラー信号がフィルタード疑似騒音信号と加算されて、再現騒音信号として、スイッチ1−2を介して、二次経路モデル1−3および騒音制御フィルタ1−5に入力される。二次経路モデル1−3では、再現騒音信号が二次経路の伝達特性の変化を補償するようにフィルタリングされて、学習用信号が生成され、係数更新部1−4へ出力される。係数更新部1−4では、学習用信号および再現騒音信号から、エラー信号が最も小さくなるように騒音制御フィルタ1−5で用いられる係数が算出されて、係数更新信号が生成され、騒音制御フィルタ1−5へ出力される。騒音制御フィルタ1−5では、再現騒音信号が係数更新信号によって更新された係数を用いてフィルタリングされて、疑似騒音信号が生成され、二次経路モデル1−9、およびスピーカ接点1−6に接続されたスピーカ3へ出力される。スピーカ3では、入力された疑似騒音信号が、疑似騒音として、エラーマイク4の位置で逆位相となるように出力される。これを繰り返すことにより、最適な疑似騒音が生成され、騒音が動的に打ち消されることになる。
【0027】
アルゴリズムとしては、周知のFiltered−x法やFiltered−x LMS法等が用いられる。
【0028】
図4を用いて、フィードフォワード制御とフィードバック制御の選択または切替について説明する。
図4は、本発明の一実施例である消音方式判別の処理を示すフローチャートである。
【0029】
各機器が現場に設置され、起動されると、消音ユニット1は、リファレンスマイク接点1−1にリファレンスマイクが接続されているかを判別する(S1)(S2)。S2でリファレンスマイク接続ありと判別した場合(Yes)、フィードフォワード制御で動作するよう自身を設定し(S3)、フィードフォワード制御を開始する(S4)。一方、S2でリファレンスマイク接続なしと判別した場合(No)、フィードバック制御で動作するよう自身を設定し(S5)、フィードバック制御を開始する(S6。)フィードフォワード制御中、再度リファレンスマイクの接続を判別し(S1)、リファレンスマイクが取り外された場合や、リファレンスマイクが故障した場合に、フィードバック制御に切り替わるようにしている。また、フィードバック制御中、再度リファレンスマイクの接続を判別し(S1)、リファレンスマイクが取り付けられた場合や、リファレンスマイクが故障から復帰した場合に、フィードフォワード制御に切り替わるようにしている。なお、このとき、新たにリファレンスマイクの接続があっても、フィードフォワード制御に切り替わらないように設定されてもよい。
【0030】
以上により、1つのユニットで、フィードフォワード制御とフィードバック制御に対応することができ、消音システムの設計、構築に係る工数、費用を低減することができる。さらには、顧客のシステム構築自由度や、製品価格の低減による顧客の導入コストの低減に貢献することができる。
【0031】
また、リファレンスマイクが故障しても、フィードフォワード制御からフィードバック制御に自動で切り替えることができ、消音システムの運用を維持することができる。
【0032】
以上のシステムではリファレンスマイクの接続の有無を自動で判別してフィードフォワード制御とフィードバック制御を選択または切り替えるようにしているが、フィードフォワード制御とフィードバック制御とをユーザが手動により選択する方法も考えられる。
【0033】
ユーザによる手動選択の場合、2パターンが考えられ、1つはスイッチを筐体に設けて物理的に選択する方法で、もう1つはコンピュータ等から消音装置にアクセスし電気的に選択する方法である。
【0034】
物理的に選択する方法では、筐体に設けられたスイッチをユーザが所望のモードに切り替えると、消音ユニット内の制御部が選択されたフィードフォワード制御モードまたはフィードバック制御モードで動作するように各部を制御する。
【0035】
電気的に選択する方法では、消音ユニット1に直接またはネットワークを介してコンピュータを接続し、コンピュータ上でのGUI操作によりユーザが所望のモードに切り替えると、コンピュータから消音ユニット1へモード選択信号が送信され、消音ユニット内の制御部が選択されたフィードフォワード制御モードまたはフィードバック制御モードで動作するように各部を制御する。
【0036】
これらの場合、フィードフォワード制御中またはフィードバック制御中に、物理的または電気的にモードを切り替えることが可能であり、基本的には自動的にモードが切り替わるようなことはない。ただし、例えば、ネットワークを介して遠隔で消音状態を監視しているような場合に、リファレンスマイクの接続の有無を検出し、モード切り替えを促すような表示がなされるようにしてもよい。または、運用中はモードの切り替えを禁止することとしてもよい。
【0037】
以上により、手動でユーザがモードを選択または切り替えることで、ユーザの求めに応じて消音システムの運用の自由度を向上させることができる。
【0038】
また、リファレンスマイクの有無を判別してフィードフォワード制御とフィードバック制御を切り替える自動切替モードと、ユーザの選択によりフィードフォワード制御とフィードバック制御を切り替える手動選択モードと、をユーザにより選択できるようにしてもよい。この場合、上述の手動選択の場合と同様に、物理的な方法または電気的な方法により切り替えることができる。これにより、さらにユーザの求めに応じて消音システムの運用の自由度を向上させることができる。
【0039】
図5を用いて、本発明の他の実施例である、騒音特性に応じた制御方式の切り替え(複合制御)について説明する。
図5は、本発明の一実施例である復号制御方式の処理を示すフローチャートである。
【0040】
消音効果を更に高めるために、本発明の他の実施形態では、騒音の特性に応じて、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを適応的に切り替える複合制御を行う。例えば、本実施例の場合には、騒音の特性を判別し、周期的に一定の規則性を持った周期音が続く場合にはフィードバック制御へ切り替え、周期音が続かない場合にはフィードフォワード制御へ切り替える。このとき、騒音特性の判別は、図示しない制御部等が実施する。
【0041】
ここで、周期的な規則性がある騒音とは、例えば、飛行機や自動車のエンジン音、電子機器等のファンやラジエータやコンプレッサの音等が考えられ、周期的な規則性がない騒音とは、例えば、工事現場の音、楽器の演奏音、人間の話し声、動物の鳴き声、自動車のクラクションやドアの開閉音等の突発音等が考えられるが、これらに限られない。
【0042】
各機器が現場に設置され、起動されると、消音ユニット1は、リファレンスマイク接点1−1にリファレンスマイクが接続されているかを判別する(S1)(S2)。S2でリファレンスマイク接続ありと判別した場合(Yes)、フィードフォワード制御で動作するよう自身を設定し(S3)、フィードフォワード制御を開始する(S4)。一方、S2でリファレンスマイク接続なしと判別した場合(No)、フィードバック制御で動作するよう自身を設定し(S5)、フィードバック制御を開始する(S6。)
【0043】
フィードフォワード制御中、またはリファレンスマイクの接続がある状態でのフィードバック制御中に、消音ユニット1は、騒音信号に周期的な規則性があるかを判別する(S7)(S8)。
S2で周期的な規則性があると判別した場合(Yes)、フィードバック制御で動作するよう自身を設定し(S9)、フィードバック制御を開始する(S10)。一方、騒音に周期的な規則性がないと判別した場合(No)、フィードフォワード制御で動作するよう自身の設定を維持し(S11)、フィードフォワード制御を継続する(S12)。S10でフィードバック制御中またはS12でフィードフォワード制御中に、再度リファレンスマイクの接続を判別し(S1)、リファレンスマイクが取り付けられた場合や、リファレンスマイクが故障から復帰した場合に、フィードフォワード制御に切り替わるようにしている。または、S10でフィードバック制御中またはS12でフィードフォワード制御中に、再度騒音の規則性を判別し(S7)、騒音特性に応じた制御方式切替ループを繰り返すようにしてもいい。
【0044】
以上により、騒音の特性に適した制御に適応的に切り替えることで、より状況に合った高い消音効果を得ることができる。
【0045】
また、騒音の特性が変化した場合でも、変化に対応して消音方式を切り替えることで、騒音の特性が変化するような現場にもより高い消音効果をもたらすことができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
【0047】
例えば、自動車のエンジン音の場合にはエンジンの回転数のデータ、電子機器のファン音の場合にはファンの回転数のデータといった騒音に相関のあるデータを取得して消音ユニット1内の係数更新部1−4に入力し、フィルタ係数の算出に用いるようにしてもいい。
【0048】
その場合、自動車のエンジンの回転数やPCファンの回転数等の外部入力接点を設け、外部入力の有無により、フィードフォワード制御方式かフィードバック制御方式か、波形同期法方式帰化を選択するようにしてもよく、その場合、物理的または電気的にユーザが選択するようにしてもよい。
【0049】
なお、上述の消音ユニット内の構成は、Filtered−xアルゴリズムまたはFiltered−x LMSアルゴリズムに対応した構成であるため、他のアルゴリズムを用いる場合には、内部構成の増減や変更がある場合があるが、その場合であっても、本発明を適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、送風路、電子機器、自動車、重機、飛行機、家電、工場、工事現場などの騒音が発生するものに対して適用可能であり、効果的である。
【符号の説明】
【0051】
1:消音ユニット、2:リファレンスマイク、3:スピーカ、4:エラーマイク、
1−1:リファレンスマイク接点、1−2:スイッチ、1−3:二次経路モデル、1−4:係数更新部、1−5:騒音制御フィルタ、1−6:スピーカ接点、1−7:エラーマイク接点、1−8:加算器、1−9:二次経路モデル。