特許第6618188号(P6618188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618188
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/06 20060101AFI20191202BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20191202BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20191202BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20191202BHJP
【FI】
   C08L101/06ZBP
   C08K3/26
   C08L1/02
   !C08L101/16
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-158864(P2016-158864)
(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公開番号】特開2018-24809(P2018-24809A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 重樹
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−220340(JP,A)
【文献】 特開2016−056320(JP,A)
【文献】 特開2005−162972(JP,A)
【文献】 特開2007−092038(JP,A)
【文献】 特表2015−535501(JP,A)
【文献】 特開2013−023576(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060029(WO,A1)
【文献】 特開2016−094540(JP,A)
【文献】 NAM, Byeong-Uk et al.,Materials Letters,2015年 3月16日,150,p.118-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)、主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)及び無機粒子(C)を、それぞれ少なくとも一種含有し、
前記樹脂(A)がポリ乳酸であり、
前記無機粒子(C)が、前記樹脂組成物に対して50〜90質量%の炭酸カルシウムを含む、
樹脂組成物(ただし、アスファルト又はポリエステルと変性水添共役ジエンとのブロック共重合体を含むものを除く。)
【請求項2】
前記樹脂(B)が生分解性樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
セルロースナノファイバーを含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜いずれかの項記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 熱安定性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無機粒子を高充填した樹脂組成物を、溶融成形することが行われてきた(特許文献1)。溶融成形では、無機粒子を樹脂に均一に分散するため樹脂の融点以上の温度で混練することが通常行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−71378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら無機粒子によっては、粒子表面が活性であったり酸塩基性が一方に偏ったりと、表面状態が安定ではない。そのためポリエステル等の官能基を主鎖に有する樹脂と無機粒子を混練している最中に樹脂中の主鎖の分解により、分子量が低下して、所望の物性の得られないことがあった。
【0005】
本発明は、無機粒子の性質によらない安定した樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、下記によって達成された。
【0007】
(1)主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)、主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)及び無機粒子(C)を、それぞれ少なくとも一種含有する樹脂組成物。
(2)前記官能基が、エステル基、アミド基、イミド基、カーボネート基、エーテル基、チオエーテル基である前記1記載の樹脂組成物。
(3)前記無機粒子の含有量が30質量%以上である前記1または2記載の樹脂組成物。
(4)前記樹脂(A)、樹脂(B)の少なくとも一方が生分解性樹脂である前記1〜3記載の樹脂組成物。
(5)セルロースナノファイバーを含有する前記1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
(6)前記1〜5いずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無機粒子の性質の影響を受けにくい安定した樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に述べる。
本発明の樹脂組成物は、主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)、主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)及び無機粒子(C)を、それぞれ少なくとも一種含有することを特徴とする。
【0010】
<主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)>
本発明でいう官能基とは、無機粒子の性質によって分解する基をいい、エステル基、アミド基、イミド基、カーボネート基、エーテル基、チオエーテル基が典型性な基としてあげられる。
本発明の官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス(登録商標)ポリプラスチックス社製)、ポリエチレンナフタレート(テオネックス(登録商標)帝人社製)、ポリ乳酸(レイシア(登録商標)三井化学社製、エコディア(登録商標)東レ社製、テラマック(登録商標)ユニチカ社製)等、ポリアミド樹脂としては、6−ナイロン、6,6−ナイロン(アミラン(登録商標)東レ社製)等、ポリイミド樹脂としては、市販品としてユーピレックス(登録商標、宇部興産社製)、ベスベル(登録商標、デュポン社製)、イミダロイ(登録商標、京セラ社製)等、カーボネート樹脂としては、パンライト(登録商標、帝人社製)、ポリブチレンサクシネート(登録商標 ビオノーレ 昭和電工社製)、ポリエーテル樹脂としては、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテル等を挙げることができる。
【0012】
本発明の主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂は、官能基を有していない繰り返し単位を含んでいてもよく、主鎖に含まれる官能基を有する繰り返し単位は、全繰り返し単位の30モル%以上、好ましくは50モル%以上含まれる。
【0013】
<主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)>
本発明の官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等、ABS樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0014】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAPエーストマンケミカル社製)、セルロースアセテートブチレート(CABイーストマンケミカル社製)、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0015】
主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂は、実質的に主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含まないことを特徴とするが、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば10モル%以内で主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含んでもよい。
【0016】
本発明の樹脂(A)、樹脂(B)の少なくとも一方は、生分解性樹脂であることが好ましい。ここで生分解性樹脂とは、自然界の微生物によって完全に消費され最終的に水と二酸化炭素に分解される樹脂をいう。具体的には、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、セルロースエステル等を挙げることができる。
【0017】
<無機粒子(C)>
本発明の無機粒子は特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、酸化亜鉛、ドロマイト、ガラス繊維、中空ガラス等を挙げることができる。好ましくは炭酸カルシウムである。
【0018】
無機粒子の形状は、粒状、針状、偏平状いずれも使用することができる。平均粒径は、0.01〜20μmのものを適宜使用することができる。
【0019】
<本発明の樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)、主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)及び無機粒子(C)を、それぞれ少なくとも一種含有するが、主鎖に官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)が3〜80質量%、好ましくは、5〜50質量%であり、主鎖に官能基を有していない繰り返し単位からなる樹脂(B)は、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜50質量%であり、無機粒子(C)は、30〜95質量%であり、好ましくは、50〜90質量%である。好ましい範囲では、本発明の効果がより得られる。
【0020】
本発明の(A)、(B)、(C)は同時に混合して加熱、混練してもよいが、(B)と(C)を先に混合、混練した後に(A)を混合することもできる。また(C)に(B)をスプレードライ等の方法により表面にコーティングした後、(A)と混合、混練することも可能である。その場合コーティング膜厚は粒径の5〜40%の範囲であることが好ましい。例えば、平均粒径が5μmの無機粒子であれば、0.025〜2μmである。膜厚は、スプレーする量によって適宜調整することができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物においては、(A)、(B)、(C)の成分はそれぞれ2種以上含有させてもよく、A)、(B)、(C)成分の他に、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色用顔料、分散剤、相溶化剤、帯電防止剤、難燃剤等の中から選ばれる1種以上の補助剤を、目的に反しない範囲で添加することができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物を構造体として強度の必要な使用をするときは、セルロースナノファイバー等の補強用繊維を含有させることも好ましい。セルロースナノファイバーは、幅4〜100nm、長さ5〜500μmのものを好ましく使用することができる。含有量は、用途によって適宜定めることができる
【0023】
<本発明の樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、シート、射出成形用途等、通常の熱可塑性組成物の用途に適用することができる。また(A)、(B)に生分解性樹脂を選択することで環境にやさしい樹脂組成物とすることができる。
【実施例】
【0024】
以下実施例によって具体的に説明する。
下記の通り(数値は質量%)ポリ乳酸(レイシア(登録商標)H−100三井化学社製)、セルロースアセテートブチレート(CAB−551イーストマンケミカル社製)、平均粒子径(d50)が1.0μmで、粒子径50μm以上の粒子を含有しない炭酸カルシウム(ソフトン2200(登録商標)白石カルシウム製)と、カルシウムステアレート(日油社製)3質量%を、小型二軸押出機(スクリュー径=ψ25mm,L/D=41、パーカーコーポレーション社製)を使用してスクリュー回転数50rpm、200℃で混練し、混練開始1分と10分のトルクを測定、1分からの変化量が±15%を超えた場合を×、超えない場合を○と判定した。
【0025】
なお、実施例2ではセルロースアセテートブチレートと炭酸カルシウムとをあらかじめ混練状態にしてその後ポリ乳酸を加えてさらに混練した。ポリ乳酸の投入時を時間ゼロとした。また実施例3ではセルロースアセテートブチレートを炭酸カルシウムに流動層造粒乾燥装置でコーティングを施したものを用いた。
【0026】
【表1】