特許第6618189号(P6618189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618189
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】アームレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20191202BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20191202BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20191202BHJP
   B60N 3/10 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   B60N2/75
   A47C7/54 C
   A47C7/62 Z
   B60N3/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-186021(P2016-186021)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47869(P2018-47869A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】荒田 和善
(72)【発明者】
【氏名】服部 律恵
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−291436(JP,A)
【文献】 特開平07−329621(JP,A)
【文献】 特開平09−193704(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0012396(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 3/18
A47C 7/00 − 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が表皮で覆われており、
被収容物を収容する収容凹部の開口が前記表皮の一部に開いており、
前記収容凹部の開口を上に向けて横方向に延在する位置であるアームレスト使用位置と、縦方向に延在する位置であるアームレスト非使用位置との間で軸部材を中心として回動する、アームレストにおいて、
前記表皮で囲まれており、フック部を備えており、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である可動部材を有しており、
前記可動部材の第1の位置において前記フック部は前記収容凹部の反対側にある前記表皮に近い位置にあり、
前記可動部材の第2の位置において前記フック部は前記収容凹部の反対側にある前記表皮の外側へ出る位置にある
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
前記可動部材を前記第1の位置へ弾性的に付勢する弾性付勢部材を有することを特徴とする請求項1記載のアームレスト。
【請求項3】
前記軸部材に係合する係合位置と前記軸部材から離れる離隔位置との間で移動可能であるロック部材と、
前記可動部材と前記ロック部材とを連結する連結部材と、を有しており、
前記連結部材は、前記可動部材が前記第1の位置にあるときに前記ロック部材を前記離隔位置に置き、前記可動部材が前記第2の位置にあるときに前記ロック部材を前記係合位置に置くように、前記可動部材と前記ロック部材とを連結する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアームレスト。
【請求項4】
前記軸部材上に切欠き部材が設けられており、
前記ロック部材が前記切欠き部材に噛み合う位置が前記ロック部材の前記係合位置であり、前記ロック部材が前記切欠き部材から離れる位置が前記ロック部の離隔位置である
ことを特徴とする請求項3記載のアームレスト。
【請求項5】
前記連結部材は直線状で伸び縮みしないロッドであり、
前記可動部材が前記連結部材の一端に接続され、前記ロック部材が前記連結部材の他端に接続されている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のアームレスト。
【請求項6】
前記連結部材は前記収容凹部と前記軸部材との間に設けられた回動部材であり、
当該回動部材は支点を中心として回動可能であり、前記可動部材が前記回動部材の一端に設けられており、前記ロック部材が前記回動部材の他端に設けられている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のアームレスト。
【請求項7】
前記連結部材は前記収容凹部と前記軸部材との間に設けられた直線移動部材であり、
前記可動部材が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動するときに、前記直線移動部材が前記可動部材によって駆動されて直線移動し、
前記直線移動部材の前記軸部材側の一端に前記ロック部材が設けられている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のアームレスト。
【請求項8】
前記可動部材は、前記フック部の反対側に被押圧用突部を有しており、
前記可動部材の第1の位置において、前記被押圧用突部は前記収容凹部の内部へ突出する位置にあり、
前記可動部材の第2の位置において、前記被押圧用突部は前記収容凹部の内部から外に出る位置にある
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のアームレスト。
【請求項9】
搭乗者の臀部を受けるシートクッションと、
搭乗者の背中部を受けるシートバックと、
前記シートバックの側部に設けられるアームレストと、を有する車両用シートにおいて、
前記アームレストは請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のアームレストであることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの着座者が腕を載せる製品であるアームレストに関する。また、本発明はアームレストを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたアームレストが知られている。この従来のアームレストは、横方向に延在する位置であるアームレスト使用位置と、縦方向に延在する位置であるアームレスト非使用位置との間で回動する。この従来のアームレストは、アームレスト使用位置(すなわち横方向に延在する位置)に置かれたときの上面、すなわち着座者が腕を載せる面に、収容凹部であるカップホルダを有している。従って、アームレストがアームレスト使用位置に置かれた場合、着座者は被収容物、例えば飲料用容器をカップホルダへ入れることができる。
【0003】
この従来のアームレストにおいては、カップホルダの内部に押圧部材が設けられ、この押圧部材に物を吊り下げることができるようになっている。従って、この従来のアームレストによれば、アームレストがアームレスト非使用位置(すなわち縦方向に延在する位置)に置かれたときに、カップホルダの内部の押圧部材に物を吊り下げることができる。この場合、カップホルダが在るのは縦方向に延在するアームレストの背面であるので、物はアームレストの背面に吊り下げられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−291436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来のアームレストにおいては、アームレストがアームレスト非使用位置(すなわち縦方向に延在する位置)にあるときに、物をアームレストの背面に吊り下げることができるようになっていた。しかしながら、従来から、アームレスト非使用位置に置かれているアームレストの前面に物を吊り下げたいという要望があった。
【0006】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、アームレストがアームレスト非使用位置(すなわち縦方向に延在する位置)に置かれているときに、アームレストの前面(すなわち着座者が座っている側の面)に物を吊り下げることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアームレストは、表面が表皮で覆われており、被収容物を収容する収容凹部の開口が前記表皮の一部に開いており、前記収容凹部の開口を上に向けて横方向に延在する位置であるアームレスト使用位置と、縦方向に延在する位置であるアームレスト非使用位置との間で軸部材を中心として回動する、アームレストにおいて、前記表皮で囲まれており、フック部を備えており、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である可動部材を有しており、前記可動部材の第1の位置において前記フック部は前記収容凹部の反対側にある前記表皮に近い位置にあり、前記可動部材の第2の位置において前記フック部は前記収容凹部の反対側にある前記表皮の外側へ出る位置にあることを特徴とする。
【0008】
上記構成のアームレストによれば、カップホルダ等といた収容凹部を備えたアームレストにおいて、縦方向に延在する位置である非使用位置に置かれたアームレストの背面ではなく前面においてフック部によって物を吊り下げることができる。このことは着座者にとって非常に便利である。
【0009】
本発明に係るアームレストの第2の発明形態は、前記可動部材を前記第1の位置へ弾性的に付勢する弾性付勢部材を有する。弾性付勢部材は、例えばスプリングである。この発明態様によれば、フック部は自然状態で常に第1の位置に置かれるので、フック部が扱い易くなる。
【0010】
本発明に係るアームレストの第3の発明形態は、前記軸部材に係合する係合位置と前記軸部材から離れる離隔位置との間で移動可能であるロック部材と、前記可動部材と前記ロック部材とを連結する連結部材とを有する。前記連結部材は、前記可動部材が前記第1の位置にあるときに前記ロック部材を前記離隔位置に置き、前記可動部材が前記第2の位置にあるときに前記ロック部材を前記係合位置に置くように、前記可動部材と前記ロック部材とを連結する。
【0011】
上記第3の発明形態によれば、非使用位置に置かれたアームレストの前面においてフック部によって物を吊り下げた場合にも、ロック部材と切欠き部材との係合によってアームレスト動きをロックすることができるので、吊り下げた物の安全を確保できる。
【0012】
さらに、アームレスト使用位置における被収容物の収容凹部への収容時におけるアームレストのロックと、アームレスト非使用時におけるフック部への物の吊り下げ時におけるアームレストのロックとを、1つの可動部材によって実現できるようになった。このため、本実施形態のアームレストは構造が簡単であり、コストが非常に安い。
【0013】
本発明に係るアームレストの第4の発明形態においては、前記軸部材上に切欠き部材が設けられており、前記ロック部材が前記切欠き部材に噛み合う位置が前記ロック部材の前記係合位置であり、前記ロック部材が前記切欠き部材から離れる位置が前記ロック部の離隔位置である。
【0014】
本発明に係るアームレストの第5の発明態様において、前記連結部材は直線状で伸び縮みしないロッドであり、前記可動部材が前記連結部材の一端に接続され、前記ロック部材が前記連結部材の他端に接続されている。
【0015】
本発明に係るアームレストの第6の発明態様において、前記連結部材は前記収容凹部と前記軸部材との間に設けられた回動部材であり、当該回動部材は支点を中心として回動可能であり、前記可動部材が前記回動部材の一端に設けられており、前記ロック部材が前記回動部材の他端に設けられている。
【0016】
本発明に係るアームレストの第7の発明態様において、前記連結部材は前記収容凹部と前記軸部材との間に設けられた直線移動部材であり、前記可動部材が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動するときに、前記直線移動部材が前記可動部材によって駆動されて直線移動し、前記直線移動部材の前記軸部材側の一端に前記ロック部材が設けられている。
【0017】
本発明に係るアームレストの第8の発明態様において、前記可動部材は、前記フック部の反対側に被押圧用突部を有しており、前記可動部材の第1の位置において前記被押圧用突部は前記収容凹部の内部へ突出する位置にあり、前記可動部材の第2の位置において前記被押圧用突部は前記収容凹部の内部から外に出る位置にある。
【0018】
この発明態様によれば、アームレストの前面においてフック部によって物を吊り下げることができると共に、収容凹部に被収容物が入っているかどうかを、被押圧用突部によって検知できる。被押圧用突部による検知結果をどのように使うかは、色々とある。例えば、連結部材及びロック部材を使えば、収容凹部を用いたときのロックと、フック部を用いたときのロックとでロック構造を兼用できる。
【0019】
次に、本発明に係る車両用シートは、搭乗者の臀部を受けるシートクッションと、搭乗者の背中部を受けるシートバックと、前記シートバックの側部に設けられるアームレストと、を有する車両用シートにおいて、前記アームレストは上記第1から第8の発明形態のアームレストであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアームレストによれば、カップホルダ等といた収容凹部を備えたアームレストにおいて、縦方向に延在する位置である非使用位置に置かれたアームレストの背面ではなく前面においてフック部によって物を吊り下げることができる。このことは着座者にとって非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るアームレスト及び車両用シートの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のアームレストを非使用状態に移動させた状態を示す斜視図である。
図3図1のB−B線に従ったアームレストの断面図である。
図4図2のD−D線に従ったアームレストの断面図である。
図5】本発明に係るアームレストの他の実施形態を示す断面図である。
図6】本発明に係るアームレストのさらに他の実施形態を示す断面図である。
図7図2の状態のアームレストの使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るアームレスト及び車両用シートを実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係るアームレスト及び車両用シートの一実施形態を示している。図1において、全体を符号1で示す車両用シートは、車両の後列に設置されたシートを示している。この車両用シート1は、シートクッション2と、2つのシートバック3A及び3Bとを有している。
【0024】
シートクッション2は着座者の臀部を受ける部分である。シートバック3A,3Bは着座者の背中部分を受ける部分である。シートバック3A,3Bのそれぞれの頂部にはヘッドレスト4が設けられている。ヘッドレスト4は着座者の頭部を受ける部分である。
【0025】
2つのシートバック3A,3Bの間に空間Kが設けられている。アームレスト5Aがこの空間K内に設けられている。アームレスト5Aは軸部材9に回動可能に取付けられている。軸部材9はシートバック3Bに固定されている。軸部材9は他のシートバック3Aに固定されていても良い。アームレスト5Aはその先端部に収容凹部としてのカップホルダ10を有している。
【0026】
図1はアームレスト5Aが水平状態であるアームレスト使用位置に置かれた状態を示している。アームレスト5Aは着座者の手動によって軸部材9を中心として回動させることができる。アームレスト5Aを矢印Aで示すように軸部材9を中心として上方へ回動させることにより、アームレスト5Aを図2に示すようにアームレスト非使用位置に置くことができる。また、アームレスト5Aを手動により非使用位置(図2)から使用位置(図1)へ向けて下方へ回動させることができる。
【0027】
図1に示すアームレスト5Aの使用位置は、収容凹部であるカップホルダ10の開口が上方を向く略水平状態の位置である。図2に示すアームレスト5Aの非使用位置は縦方向に立った状態の位置である。このアームレスト5Aの非使用位置において、カップホルダ10の開口は横方向を向いている。
【0028】
アームレスト5Aが図1に示す使用位置に置かれているとき、着座者は被収容物としての容器11をカップホルダ10の内部に収容できる。容器11は例えば飲料液が入っている容器である。アームレスト5Aが図2の非使用位置に置かれているときは、容器11(図1参照)をカップホルダ10の内部へ収容することはできない。容器11がカップホルダ10から落ちたり、容器11の内部の飲料液が容器11からこぼれたりするからである。なお、被収容物は、飲料用の容器11に限られず、任意の物とすることもできる。
【0029】
図3図1のB−B線に従ってアームレスト5Aの断面構造を示している。図3において、アームレスト5Aは骨格構造であるサイドフレーム15a,15bを有している。サイドフレーム15a,15bは図1に示すように、アームレスト5Aの左右の側部に対応して互いに間隔をあけて設けられている。サイドフレーム15a,15bは軸部材9に回動可能に取付けられている。サイドフレーム15a,15bは、鋼材等といった金属や、硬質で機械的強度が比較的高い合成樹脂によって形成されている。
【0030】
サイドフレーム15aとサイドフレーム15bとの間に軸部材16が設けられている。この軸部材16上に可動部材17が回動可能に取付けられている。アームレスト5Aの回動中心である軸部材9上に切欠き部材18が固定されている。図3において、可動部材17のカップホルダ10側に被押圧用突部19が形成されている。また、可動部材17のカップホルダ10の反対側にフック部(すなわち、引掛け部)23が形成されている。被押圧用突部19はカップホルダ10に向かって突出する突部となっている。フック部23は物(例えば取っ手付き袋)の取っ手を吊り下げることができる形状となっている。
【0031】
アームレスト5Aの回動中心である軸部材9上に固定された切欠き部材18に対向してロック部材24が設けられている。ロック部材24は、サイドフレーム15a,15bに掛け渡された軸部材25に回転可能に取り付けられている。可動部材17の連結用端子とロック部材24の連結用端子とが連結部材としての連結ロッド26によって連結されている。連結ロッド26は鋼材、硬質樹脂、又はそれらと同等の材料によって形成された線材であって、伸びたり縮んだりしない部材である。
【0032】
アームレスト5Aは、骨格構造であるサイドフレーム15a,15bの周囲にパッド30を設け、さらにパッド30の周囲を表皮31で覆うことによって形成されている。パッド30はサイドフレーム15a,15bの間にも入り込んでおり、可動部材17、連結ロッド26、ロック部材24及び切欠き部材18の周囲にも存在している。パッド30は、弾性部材(例えばウレタンの発泡材)によって形成されている。表皮31は、通気性を有する材料、例えばファブリック、革、合成皮革等によって形成されている。
【0033】
カップホルダ10は軟質部材によって形成されている。軟質部材は、例えばエラストマ、軟質樹脂、成形不織布、又はそれらの同等品であって、自然状態で特定の形状を維持する性質である形状維持特性を有する軟質の材料である。ここで言う形状維持特性とは、硬くて全く変形しない特性ということではなく、特定の形状を維持するが机の上に置いたときには、自重によって若干の変形を呈するような軟質性をもっている特性のことである。
【0034】
本実施形態ではカップホルダ10が軟質部材によって形成されているので、可動部材17の被押圧用突部19がカップホルダ10の内部へ突出する部分においては、カップホルダ10が盛り上がっている。なお、カップホルダ10は硬くて変形しない合成樹脂によって形成することもできる。この場合には、可動部材17の被押圧用突部19がカップホルダ10の内部へ突出する部分のカップホルダ10に穴を開け、被押圧用突部19がこの穴を通過するように構成することが望ましい。
【0035】
カップホルダ10は、パッド16を発泡成形処理によって所定の形状に形成する際に金型内の所定位置に予め置いておいて、パッド16内の所定の位置に設けることができる。また、カップホルダ10は、パッド16を発泡成形処理によって所定の形状に形成した後に、パッド16内の所定の位置に組み付けることもできる。
【0036】
可動部材17は実線で示す第1の位置(アンロック位置)と破線で示す第2の位置(ロック位置)との間で軸部材16を中心として回動可能である。第1の位置(実線)において、被押圧用突部19はカップホルダ10の内部へ突出する位置にあり、フック部23はカップホルダ10の反対側の表皮31に近い位置にある。第2の位置(破線)において、被押圧用突部19はカップホルダ10の内部から外に出る位置にあり、フック部23は表皮31の外部へ出る位置にある。
【0037】
可動部材17が第1の位置(実線)に置かれているとき、連結ロッド26の働きにより、ロック部材24はアンロック位置にある。ロック部材24のアンロック位置とは、ロック部材24が切欠き部材18から離隔して互いに噛み合っていない位置のことである。一方、可動部材17が第2の位置(破線)に置かれているとき、連結ロッド26の働きにより、ロック部材24はロック位置にある。ロック部材24のロック位置とは、ロック部材24が切欠き部材18に噛み合っている(すなわち係合している)位置のことである。
【0038】
ロック部材24がアンロック位置にあって切欠き部材18に噛み合っていないと、フレーム15a,15bは切欠き部材18に拘束されることなく軸部材9の回りを自由に回動できる。従って、このアンロック位置において、着座者は、アームレスト5Aを図1に示す使用位置と図2に示す非使用位置との間で手動によって回動させることができる。
【0039】
図3において、ロック部材24がロック位置にあって切欠き部材18に噛み合っていると、フレーム15a,15bは切欠き部材18に拘束されて軸部材9に固定される。従って、このロック位置において、着座者は、アームレスト5Aを回動させることができない。
【0040】
本実施形態では可動部材17用の軸部材16の周りに弾性付勢部材としてのスプリング32が設けられている。スプリング32は自身のスプリング力により、可動部材17を矢印Cで示すように、第1の位置(実線)へ弾性的に付勢、すなわち押し付けている。
【0041】
(アームレストの動作/アームレスト使用時)
アームレスト5Aが図1に示す使用位置(すなわち横方向に延在する位置)にあるとき、着座者は自身の腕をアームレスト5Aの上面に休めることができる。このとき、図3の可動部材17は第1の位置(実線)にある。また、このとき、被押圧用突部19はカップホルダ10の内部へ突出する位置にある。また、このとき、ロック部材24はアンロック位置(切欠き部材18に噛み合わない位置)にある。この状態で、着座者は軸部材9を中心としてアームレスト5Aを自由に回動させることができる。
【0042】
アームレスト5Aが使用位置にあるとき、着座者は上方へ向けて開口しているカップホルダ10へ被収容物としての容器11を矢印Eのように入れることができる。このようにしてカップホルダ10の内部に容器11が収容されると、被押圧用突部19が下方へ押し下げられ、可動部材17は破線で示す第2の位置(ロック位置)へ回動する。
【0043】
すると、連結用ロッド26が図3の左方向へ引っ張られ、その結果、ロック部材24が軸部材9を中心として回動して切欠き部材18に係合する。ロック部材24が切欠き部材18に係合すると、フレーム15a,15bが軸部材9に固定され、そのため、アームレスト5Aが回動できないようになる。すなわち、アームレスト5Aがロックされる。従って、カップホルダ10の内部に容器11が収容されている状態において、着座者が誤ってアームレスト5Aを持ち上げてしまうことが防止される。これにより、容器11をカップホルダ10によって安全に保持できる。
【0044】
(アームレストの動作/アームレスト非使用時)
アームレスト5Aを使用しないとき着座者は、図3においてカップホルダ10に容器11が収容されていない状態で、アームレスト5Aを矢印Aのように持ち上げて、アームレスト5Aを図2に示す非使用位置(すなわち縦方向へ立った状態で延在する位置)へセットする。
【0045】
アームレスト5Aが非使用位置に置かれた場合には、着座者はアームレスト5Aに腕を休めることはできない。一方、アームレスト5Aの前面の表皮31の上部にはフック部23が表皮31に設けた開口を通して外部に露出している。図4図2のD−D線に従って非使用位置にあるアームレスト5Aの断面構造を示している。図4に示すように、収容凹部としてのカップホルダ10に容器11(図3参照)が収容されていない場合には、可動部材17はスプリング32のスプリング力(=弾性付勢力)により実線で示す第1の位置(アンロック位置)に置かれている。
【0046】
可動部材17が第1の位置(実線)にあるとき、フック部23はその表面がカップホルダ10の反対側の表皮31の表面とほぼ同じ位置、いわゆる面一(ツライチ)の関係にある。すなわち、フック部材23は表皮31に近い位置にある。フック部23がこの位置にあるとき、フック部23は着座者の邪魔になることがない。
【0047】
着座者がフック部23を矢印Fのようにスプリング32のバネ力に抗して前方向へ引っ張り出すと、図7に示すように、物の持ち手部分(例えば、樹脂袋43の持ち手部分)をそのフック部23に引っ掛けることができる。本実施形態ではこのようにアームレスト5Aの背面ではなく前面に物を引っ掛けることができるので、着座者にとって非常に便利である。
【0048】
フック部23に物を吊り下げると、可動部材17は吊り下げた物の重量のために破線で示す第2の位置(ロック位置)に保持される。可動部材17がこの第2の位置(破線)に置かれると、連結ロッド26の働きによりロック部材24が軸部材9上の切欠き部材18に係合する。ロック部材24が切欠き部材18に係合すると、フレーム15a,15bが軸部材9に固定、すなわちロックされる。
【0049】
つまり、フック部23に物が吊り下げられると、アームレスト5Aはロックされて動かなくなる。こうして、フック部23に物が吊り下げられた場合には、アームレスト5Aが誤って動かされることを防止でき、吊り下げられた物の安全を保持できる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、収容凹部としてのカップホルダ10を備えたアームレスト5Aにおいて、フック部23によってアームレスト5Aの前面において物を吊り下げることができるようになった。
【0051】
しかも、物を吊り下げた場合にも、ロック部材24と切欠き部材18との係合によってアームレスト5Aの動きをロックすることができるので、吊り下げた物の安全を確保できる。
【0052】
さらに、アームレスト使用位置(図1)における容器11のカップホルダ10への収容時におけるアームレスト5Aのロックと、アームレスト非使用時(図2)におけるフック部23への物の吊り下げ時におけるアームレスト5Aのロックとを、1つの可動部材17によって実現できるようになった。このため、本実施形態のアームレスト5Aは構造が簡単であり、コストが非常に安い。
【0053】
(第2の実施形態)
図5は本発明に係るアームレストの他の実施形態を示している。図5に示すアームレスト5Bが図3に示したアームレスト5Aと異なる点は、図3の連結ロッド26に代えて図5において連結部材として細長いプレート状の回動部材33を用いたことである。図5において図3で示した部材と同じ部材は同じ符号で示すことにする。
【0054】
図5において、回動部材33は支点34を中心として回動可能である。回動部材33の左側の一端に可動部材17が形成されている。また、回動部材33の右側の一端にロック部材24が形成されている。回動部材33は鋼材のような金属や硬質の合成樹脂等によって形成されている。本実施形態では、回動部材33は支点34の所で下側へ折れ曲がった形状となっている。
【0055】
回動部材33は、実線で示す第1の位置と破線で示す第2の位置との間で回動できる。第1の位置(アンロック位置)は、(1)可動部材17の被押圧用突部19が収容凹部としてのカップホルダ10の内部へ突出し、(2)可動部材17のフック部23がカップホルダ10と反対側の表皮31に近い位置にあり、そして(3)ロック部材24が切欠き部材18から外れた離隔位置にある、という位置である。
【0056】
回動部材33の破線で示す第2の位置(ロック位置)は、(1)可動部材17の被押圧用突部19が収容凹部としてのカップホルダ10の内部から外に出る位置にあり、(2)可動部材17のフック部23がカップホルダ10と反対側の表皮31の外側へ出る位置にあり、そして(3)ロック部材24が切欠き部材18に噛み合う(すなわち係合する)位置にある、という位置である。
【0057】
回動部材33の支点34の周りには弾性付勢部材としてのスプリング32が設けられている。スプリング32は自身のスプリング力により、回動部材33及び可動部材17を矢印Cで示すように、第1の位置(実線)へ弾性的に付勢、すなわち押し付けている。
【0058】
(アームレストの動作/アームレスト使用時)
アームレスト5Bが図1に示す使用位置(すなわち横方向に延在する位置)にあるとき、着座者は自身の腕をアームレスト5Bの上面に休めることができる。このとき、図5の可動部材17は第1の位置(実線)にある。また、このとき、被押圧用突部19はカップホルダ10の内部へ突出する位置にある。また、このとき、ロック部材24はアンロック位置(切欠き部材18に噛み合わない位置)にある。この状態で、着座者は軸部材9を中心としてアームレスト5Bを自由に回動させることができる。
【0059】
アームレスト5Bが図1の使用位置にあるとき、着座者は図5において上方へ向けて開口しているカップホルダ10へ被収容物としての容器11を矢印Eのように入れることができる。このようにしてカップホルダ10の内部に容器11が収容されると、被押圧用突部19が下方へ押し下げられ、可動部材17及び回動部材33は破線で示す第2の位置(破線)へ回動する。
【0060】
すると、ロック部材24が切欠き部材18に係合する。ロック部材24が切欠き部材18に係合すると、フレーム15a,15bが軸部材9に固定され、そのため、アームレスト5Bが回動できないようになる。すなわち、アームレスト5Bがロックされる。従って、カップホルダ10の内部に容器11が収容されている状態において、着座者が誤ってアームレスト5Bを持ち上げてしまうことが防止される。これにより、容器11をカップホルダ10によって安全に保持できる。
【0061】
(アームレストの動作/アームレスト非使用時)
アームレスト5Bを使用しないとき着座者は、図5においてカップホルダ10に容器11が収容されていない状態で、アームレスト5Bを矢印Aのように持ち上げて、アームレスト5Bを図2に示す非使用位置(すなわち縦方向へ立った状態で延在する位置)へセットする。
【0062】
アームレスト5Bが図2に示す非使用位置に置かれた場合には、着座者はアームレスト5Bに腕を休めることはできない。一方、アームレスト5Bの前面の表皮31の上部にはフック部23が表皮31に設けた開口を通して外部に露出している。収容凹部としてのカップホルダ10に容器11(図5参照)が収容されていない場合には、図5の可動部材17はスプリング32のスプリング力(=弾性付勢力)により実線で示す第1の位置(アンロック位置)に置かれている。
【0063】
可動部材17が実線で示す第1の位置(=アンロック位置)にあるとき、フック部23はその表面が表皮31の表面とほぼ同じ位置、いわゆる面一(ツライチ)の関係にある。すなわち、フック部材23は表皮31に近い位置にある。フック部23がこの位置にあるとき、フック部23は着座者の邪魔になることがない。
【0064】
着座者がフック部23を矢印Fのようにスプリング32のバネ力に抗して前方向へ引っ張り出すと、図7に示すように、このフック部23に物の持ち手部分(例えば、樹脂袋43の持ち手部分)を引っ掛けることができる。アームレスト5Bの背面ではなくその前面に物を引っ掛けることができるので、着座者にとって非常に便利である。
【0065】
フック部23に物を吊り下げると、可動部材17は吊り下げた物の重量のために破線で示す第2の位置(ロック位置)に保持される。可動部材17が第2の位置(ロック位置)に置かれると、回動部材33の働きによりロック部材24が軸部材9上の切欠き部材18に係合する。ロック部材24が切欠き部材18に係合すると、フレーム15a,15bが軸部材9に固定、すなわちロックされる。
【0066】
つまり、フック部23に物が吊り下げられると、アームレスト5Bはロックされて動かなくなる。こうして、フック部23に物が吊り下げられた場合には、アームレスト5Bが誤って動かされることを防止でき、吊り下げられた物の安全を保持できる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、収容凹部としてのカップホルダ10を備えたアームレスト5Bにおいて、フック部23によってアームレスト5Bの背面ではなくて前面において物を吊り下げることができるようになった。
【0068】
しかも、物を吊り下げた場合にも、ロック部材24と切欠き部材18との係合によってアームレスト5Bの動きをロックすることができるので、吊り下げた物の安全を確保できる。
【0069】
さらに、アームレスト使用位置(図1)における容器11のカップホルダ10への収容時におけるアームレスト5Bのロックと、アームレスト非使用時(図2)におけるフック部23への物の吊り下げ時におけるアームレスト5Bのロックとを、1つの可動部材17によって実現できるようになった。このため、本実施形態のアームレスト5Bは構造が簡単であり、コストが非常に安い。
【0070】
(第3の実施形態)
図6は本発明に係るアームレストのさらに他の実施形態を示している。図6に示すアームレスト5Cが図3に示したアームレスト5Aと異なる点は、図3の連結ロッド26に代えて図6において連結部材として細長いプレート状の直線移動部材38を用いたことである。図6において図3で示した部材と同じ部材は同じ符号で示すことにする。
【0071】
図6において、サイドフレーム15a,15bの間にガイド部材39a,39bが設けられている。直線移動部材38はガイド部材39a,39bに案内されて図6の矢印G−G’に示すように左右方向へ往復直線移動可能である。直線移動部材38の左方位置であって収容凹部としてのカップホルダ10の下方位置に可動部材17が設けられている。アームレスト5Cは軸部材9を中心として着座者の手動によって回動する。
【0072】
直線移動部材38の軸部材9側の端部にロック部材24が形成されている。ロック部材24に対向する軸部材9の軸上に切欠き部材18が固定されている。直線移動部材38が図6の右側へ移動したとき、ロック部材24が切欠き部材18に噛み合う(すなわち係合する)。直線移動部材38が図6の左側へ移動したとき、ロック部材24が切欠き部材18から離れる。直線移動部材38が図6の左側へ移動するとき、パッド30の弾力性が、ロック部材24が切欠き部材18から外れることの手助けとなる。
【0073】
可動部材17は一方側に被押圧用突部19を有し、その反対側にフック部23を有している。本実施形態の可動部材17は直線移動部材38の直線移動方向G−G’に対して直角方向H−H’へ直線移動可能である。つまり、可動部材17はカップホルダ10が開口する側の表皮31の面とその反対側の面との間で直線移動可能である。また、可動部材17は、直線移動部材38に対向する面に、押圧部40を有している。押圧部40は直線移動部材38に対向する面が傾斜面となっている。
【0074】
直線移動部材38は弾性付勢部材としてのスプリング32によって軸部材9から離れる方向(G’方向)へ弾性的に付勢されている。このとき、可動部材17は直線移動部材38に押されて実線で示す第1の位置に配置される。可動部材17のこの第1の位置は、被押圧用突部19がカップホルダ10の内部へ突出する位置にあり、フック部23が表皮31に近い位置にある、という位置である。
【0075】
カップホルダ10の内部に容器11を入れて被押圧用突部19を押し下げたとき、又は着座者がフック部23を摘んで表皮31の外側へ引き出したとき、可動部材17は破線で示す第2の位置へ移動する。可動部材17のこの第2の位置は、被押圧用突部19がカップホルダ10の内部から外に出る位置にあり、フック部23が表皮31の外側へ出る位置にある、という位置である。可動部材17が破線で示す第2の位置に移動するとき、直線移動部材38は可動部材17の押圧部40に押されてスプリング32のスプリング力に抗して右方向(G方向)へ移動する。直線移動部材38がG方向へ移動すると、その先端のロック部材24が軸部材9上の切欠き部材18に係合する。ロック部材24が切欠き部材18に係合することにより、サイドフレーム15a,15bが軸部材9に固定されて動かなくなり、従ってアームレスト5Cがロックされる。
【0076】
以上のように、本実施形態によれば、カップホルダ10を備えたアームレスト5Cにおいて、カップホルダ10が開口する面と反対側の表皮31の面(すなわち、非使用位置に立っている状態のアームレストの背面ではなくて前面)において、図7に示すように、フック部23によって物43を吊り下げることができるようになった。
【0077】
しかも、物を吊り下げた場合にも、ロック部材24と切欠き部材18との係合によってアームレスト5Cの動きをロックすることができるので、吊り下げた物の安全を確保できる。
【0078】
さらに、アームレスト使用位置(図1に示す水平状態の位置)における容器11のカップホルダ10への収容時におけるアームレスト5Cのロックと、アームレスト非使用時(図3に示す縦方向に延在する位置)におけるフック部23への物の吊り下げ時におけるアームレスト5Cのロックとを、1つの可動部材17によって実現できるようになった。このため、本実施形態のアームレスト5Cは構造が簡単であり、コストが非常に安い。
【0079】
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0080】
本発明は、アームレスト5A,5B,5Cが縦方向に延在する位置であるアームレストの非使用位置において、アームレストの背面ではなくて前面にフック部材が設けられており、そのフック部材が表皮に近い位置と表皮の外側へ出る位置との間で移動できるようになっていることを要旨とするものである。従って、連結部材(ロッド26(図3)、回動部材33(図5)、及びロック部材は必ずしも設けなくても良い。
【符号の説明】
【0081】
1.車両用シート、 2.シートクッション、 3A,3B.シートバック、 4.ヘッドレスト、 5A,5B,5C.アームレスト、 9.軸部材、 10.カップホルダ(収容凹部)、 11.容器(被収容物)、 15a,15b.サイドフレーム、 16.軸部材、 17.可動部材、 18.切欠き部材、 19.被押圧用突部、 23.フック部(引掛け部)、 24.ロック部材、 25.軸部材、 26.連結ロッド(連結部材)、 30.パッド、 31.表皮、 32.スプリング(弾性付勢部材)、 33.回動部材(連結部材)、 34.支点、 38.直線移動部材(連結部材)、 39a,39b.ガイド部材、 40.押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7