(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮断部材が前記シリンダ部と前記副貯留部との連通を遮断した状態を維持するための第2ロック機構を備える請求項7〜9のいずれか一項に記載の血液成分分離用装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記スライダを保持し且つ前記貯留槽外に導出された第1ロッドを更に備えていてもよい。この場合、前記流路は前記第1ロッド内に設けられうる。スライダを第1ロッドで保持することは、貯留槽内でのスライダの移動を容易に行うのに有利である。第1ロッド内に流路を設けることは、流路を構成するための別個の部材が不要になるので、装置の構成を簡単化するのに有利である。スライダ側に流路を設けることは、高純度の白血球成分を回収すること、及び、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記第1貯留部内の前記スライダが前記第2貯留部に向かって移動するのを規制する第1ロック機構を更に備えていてもよい。これは、意図せずにスライダが移動して第1貯留部と第2貯留部との連通を遮断してしまう事態が生じるのを防止するのに有利である。
【0017】
前記第2貯留部は、前記第1貯留部に隣接して配置されたシリンダ部を有していてもよい。この場合、前記シリンダ部の内周面と前記スライダとの間に前記液密なシール部が形成されることが好ましい。
【0018】
前記シリンダ部の内周面は円筒面であることが好ましい。これは、スライダとシリンダ部の内周面との間の液密なシールを簡単な構成で形成するのに有利である。
【0019】
前記第2貯留部は、前記シリンダ部を介して前記第1貯留部と連通する副貯留部を有しうる。この場合、前記副貯留部は、前記シリンダ部より大きな内径を有していてもよい。遠心分離後に赤血球成分が貯留される副貯留部が相対的に大きな内径を有するので、貯留槽及び装置の高さを小さくすることができる。
【0020】
前記第2貯留部は、前記シリンダ部を介して前記第1貯留部と連通する副貯留部を有しうる。この場合、前記シリンダ部と前記副貯留部との連通を遮断することができる遮断部材が、前記第2貯留部内に設けられていてもよい。これにより、遮断部材でシリンダ部と副貯留部との連通を遮断した状態で、スライダをシリンダ部に挿入して、シリンダ部内の白血球成分を貯留槽外に押し出すことができる。遮断部材でシリンダ部と副貯留部との連通を遮断すれば、シリンダ部内の白血球成分と副貯留部内の赤血球成分とが混じり合うことはない。従って、上記の好ましい構成によれば、白血球成分の回収率を安定的に向上させることができる。
【0021】
前記遮断部材は、前記副貯留部内で移動可能であってもよい。この場合、前記遮断部材が前記副貯留部内にあるとき、前記シリンダ部と前記副貯留部とは互いに連通していることが好ましい。前記副貯留部が前記シリンダ部の前記副貯留部側の開口に嵌入されると、前記遮断部材により前記シリンダ部と前記副貯留部との連通が遮断されることが好ましい。このような構成は、シリンダ部と副貯留部との連通とその遮断とを、比較的簡単な構成で確実に切り替えるのに有利である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記遮断部材を保持し且つ前記貯留槽外に導出された第2ロッドを更に備えていてもよい。この場合、前記流路は前記第2ロッド内に設けられうる。遮断部材を第2ロッドで保持することは、副貯留部内での遮断部材の移動を容易に行うのに有利である。第2ロッド内に流路を設けることは、流路を構成するための別個の部材が不要になるので、装置の構成を簡単化するのに有利である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記遮断部材が前記シリンダ部と前記副貯留部との連通を遮断した状態を維持するための第2ロック機構を備えていてもよい。これは、意図せずにシリンダ部と副貯留部とが連通してしまう事態が生じるのを防止するのに有利である。
【0024】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記第1貯留部と前記貯留槽外とを連通させる通気ポートを更に備えていてもよい。かかる好ましい構成によれば、スライダが第2貯留部内に侵入するのにしたがって、外気が通気ポートを通って第1貯留部内に流入する。これは、スライダを第2貯留部内で移動させることによって血液成分を貯留槽外に押し出す操作を容易にするのに有利である。
【0025】
前記第2貯留部に、前記貯留槽の容積を調整することができる容積調整機構が設けられていてもよい。かかる好ましい構成によれば、遠心分離される血液の血液量やヘマトクリット値に関わらず、遠心分離後の白血球成分層の位置を第2貯留部内の所望の領域(例えばシリンダ部)に一致させることができる。これは、白血球成分の回収率を向上させるのに有利である。
【0026】
本発明の一実施形態に係る装置は、前記流路を通って前記貯留槽外に押し出された前記血液成分を回収する血液成分回収器を更に備えていてもよい。この場合、前記回収器は、第1容器と、第2容器と、前記流路を前記第1容器及び前記第2容器のいずれかに選択的に連通させる切替機構とを備えていてもよい。かかる好ましい構成によれば、第2貯留部から流路を通って押し出される血液成分に応じて、流路を第1容器及び第2容器のいずれかに適切に連通させることができる。これは、血漿成分や赤血球成分が実質的に混入していない、高純度の白血球成分を回収するのに有利である。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。
【0028】
1.実施形態1
1.1.血液成分分離用装置の構成
本発明の実施形態1に係る血液成分分離用装置(以下、単に「装置」という)1の構成を説明する。
【0029】
図1は、装置1の斜視図である。
図2は、装置1の上下方向面に沿った断面斜視図である。
図2において、一点鎖線1aは、装置1の中心軸である。以下の説明の便宜のため、中心軸1aに平行な方向を「上下方向」といい、中心軸1aに直交する平面に平行な方向を「水平方向」という。中心軸1aに直交する直線に沿った方向を「半径方向」又は「径方向」といい、中心軸1aの周りを回転する方向を「周方向」という。
【0030】
図2に示すように、装置1は、血液を貯留するための血液貯留槽(以下、単に「貯留槽」という)20を備える。装置1は、貯留槽20内に貯留した血液を各血液成分に遠心分離するために用いられる。
【0031】
貯留槽20は、第1貯留部21と、第2貯留部22とを備える。第2貯留部22は、シリンダ部23と副貯留部24とを備える。上から下に向かって、第1貯留部21、シリンダ部23、副貯留部24がこの順に配置され、これらは互いに連通している。即ち、シリンダ部23は、第1貯留部21及び副貯留部24とそれぞれ連通し、第1貯留部21と副貯留部24とはシリンダ部23を介して連通している。装置1は、通常は、中心軸1aを鉛直方向にして、副貯留部24を下にして使用される。第1貯留部21の上面の中央から、略円筒形状の開口25が上方に向かって突出している。開口25、第1貯留部21、シリンダ部23、副貯留部24は、中心軸1aと同軸に配置されている。
【0032】
血液は開口25を介して貯留槽20内に注入される。貯留槽20内に血液を貯留した装置1は、
図1及び
図2の矢印Fの向きに遠心力が作用するように遠心分離機に搭載される。遠心分離時に各血液成分は、第1貯留部21からシリンダ部23を通って副貯留部24へ、またはその逆に、自由に移動することができる。遠心分離後に、相対的に比重が大きな赤血球成分が副貯留部24に貯留され、相対的に比重が小さな血漿成分が第1貯留部21に貯留され、白血球成分及び血小板を含むバフィーコート(白血球成分の層)がシリンダ部23に貯留される。第1貯留部21、シリンダ部23、副貯留部24の各容積は、血液を構成する各成分が遠心分離後に貯留槽20内の所定の部分内に貯留されるように設定されている。
【0033】
第1貯留部21は、中空の略円筒形状を有している。
【0034】
副貯留部24は、全体として中空の略円筒形状を有している。副貯留部24の外径及び内径は第1貯留部21の外径及び内径とそれぞれ略同一である。但し、副貯留部24の円筒形状の側壁に、上下方向に伸長及び/又は圧縮することができる蛇腹構造28が設けられている。蛇腹構造28は、副貯留部24の側壁をジグザグ状に周期的に折り曲げることにより形成されている。蛇腹構造28を上下方向に伸縮させることにより、副貯留部24の容積、更には貯留槽20の容積を増減することができる。即ち、蛇腹構造28は、貯留槽20の容積を調整することができる「容積調整機構」として機能する。
【0035】
シリンダ部23も、中空の略円筒形状を有している。シリンダ部23の内周面は、中心軸1a方向において内径が一定の円筒面である。これは、後述するように、スライダ30がシリンダ部23内を下方に向かって移動する際に、スライダ30とシリンダ部23の内周面との間に液密なシールを形成するのに有利である。また、遠心分離時に、各血液成分がシリンダ部23を通って上方または下方に向かって移動するのが容易になるので、各血液成分の分離能が向上し、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0036】
シリンダ部23の内径は、第1貯留部21及び副貯留部24の各内径より小さい。血液中の白血球成分の割合は相対的に小さいから、シリンダ部23の内径を小さくすることにより、遠心分離後のバフィーコートの厚さ(上下方向寸法)を比較的大きくすることができる。これは、白血球成分を効率よく回収するのに有利である。
【0037】
第1貯留部21の下側壁(シリンダ部23側の壁)21aの内面は、中心軸1aに近づくにしたがって下降する(シリンダ部23に近づく)ように傾斜した漏斗形状(即ち、円錐面形状又はテーパ面形状)を有していることが好ましい。これは、遠心分離時に第1貯留部21内の赤血球などの相対的に比重が大きな血球成分がシリンダ部23を通過して副貯留部24へ移動するのに有利である。
【0038】
同様に、副貯留部24の上側壁(シリンダ部23側の壁)24aの内面は、中心軸1aに近づくにしたがって上昇する(シリンダ部23に近づく)ように傾斜した漏斗形状(即ち、円錐面形状又はテーパ面形状)を有していることが好ましい。これは、遠心分離時に副貯留部24内の血漿などの相対的に比重が小さな成分がシリンダ部23を通過して第1貯留部21へ移動するのに有利である。
【0039】
貯留槽20の材料は、血液を貯留した状態においてその形状が変化しない(即ち、形状保持性を有する)程度の機械的強度を有することが好ましく、更には、遠心分離時に血液に作用する遠心力によっても変形が小さく抑えられるように比較的高い剛性を有することが好ましい。但し、蛇腹構造28は、伸縮することができる程度の柔軟性を有していることが好ましい。また、貯留槽20内の血液を外から視認することができるように透明性を有することが好ましい。このような観点から、制限はないが、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂)等の樹脂材料を用いることができる。
【0040】
貯留槽20の製造方法は、制限はないが、本実施形態では、樹脂材料を用いてブロー成形法等により、蛇腹構造28を含めて貯留槽20の全体が一部品として一体的に成形されている。別個に作成した複数の部品を接合した場合に比べて、貯留槽20が継ぎ目なく一体的に成形されていることは、遠心分離時の遠心力によって加圧された血液が貯留槽20外に漏れ出す可能性が低減するのに有利である。また、貯血槽20の製造の簡単化及びコストの低減にも有利である。
【0041】
もちろん、貯血槽20を、別個に作成した複数の部材を液密に結合し一体化して製造することもできる。シリンダ部23の内周面とスライダ30との間に液密なシールを形成する(詳細は後述する)ためには、シリンダ部23の内周面を構成する円筒面の精度を向上させることが望ましい。この観点からは、シリンダ部23の内周面を、射出成形法等により金型を用いて精度よく形成することが好ましい。これを実現するため、シリンダ部23全体を射出成形法で作成してもよく、あるいは、シリンダ部23の内周面を構成する円筒状の部材を射出成形法で作成し、当該部材を別にブロー成形法により作成した貯留槽20内に嵌入してもよい。射出成形法では、成形精度を向上させるために、相対的に硬質の材料、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0042】
図3は、装置1の分解斜視図である。
図1〜
図3から理解できるように、貯留槽20の外周面に支持部材90が装着される。支持部材90は、貯留槽20の外周面にほぼ沿った内周面を有し、貯留槽20の上端(開口25を取り囲む円筒形状部分)から蛇腹構造28までにわたって貯留槽20を覆う。支持部材90は、2つの支持半体91a,91bで構成される(
図3参照)。支持半体91a,91bは、その間に貯留槽20を挟むようにして、貯留槽20の外周面に装着される。その後、支持半体91a,91bに、これらの上方からロックリング98が外嵌される。かくして、貯血槽20上で支持半体91aと支持半体91bとが一体化される。その後、支持部材90の下端にボトムキャップ80が装着され、支持部材90の上端にトップキャップ60が装着される。
【0043】
支持部材90(支持半体91a,91b)は、その下端に、スカート部92を備える。スカート部92は、円筒形状を有し、貯留槽20の蛇腹構造28を取り囲んでいる。スカート部92の外周面には、雄ネジ93が形成されている。
【0044】
ボトムキャップ80は、有底円筒形状を有している。ボトムキャップ80の円筒部の内周面には雌ネジ83が形成されている。雌ネジ83は、支持部材90の雄ネジ93と螺合される。
【0045】
支持部材90に対してボトムキャップ80を回転させて、雄ネジ93を雌ネジ83に螺入していくにしたがって、貯留槽20の蛇腹構造28は、支持部材90とボトムキャップ80との間で上下方向に圧縮変形される。蛇腹構造28が圧縮変形すると、副貯留部24の容積が減少し、貯留槽20の容積が減少する。このように、雌ネジ83に対する雄ネジ93の螺入深さを調整することにより、蛇腹構造28の圧縮変形量を調整することができ、ひいては貯留槽20の容積を調整することができる。支持部材90の雄ネジ93と、ボトムキャップ80の雌ネジ83とは、蛇腹構造28の伸縮量を調整する「蛇腹調整機構」を構成する。ボトムキャップ80の回転位置、または、雄ネジ93と雌ネジ83との螺合深さを示す目盛りが、ボトムキャップ80又は支持部材90に設けられていてもよい。
【0046】
支持部材90及びボトムキャップ80は、遠心分離時に血液貯留槽20内の血液に作用する遠心力によって貯留槽20(特に蛇腹構造28やシリンダ部23)が変形するのを防止する。従って、支持部材90及びボトムキャップ80は、実質的に剛体とみなしうる程度の高い機械的強度を有することが好ましい。また、支持部材90及びボトムキャップ80を介して貯留槽20内の血液を透視することができるように、支持部材90及びボトムキャップ80は透明性を有していることが好ましい。このような観点から、支持部材90及びボトムキャップ80の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂材料を例示することができる。
【0047】
図2に示されているように、装置1は、第1貯留部21内にスライダ30を備える。スライダ30は、ロッド40の下端に保持されている。
【0048】
図4Aは、スライダ30及びロッド40の斜視図であり、
図4Bはその断面斜視図である。スライダ30は、略円板形状(または、薄い略円筒形状)を有する。スライダ30の円筒面状の外周面に、シール部材として環状のガスケット50が装着されている。スライダ30の中央に、スライダ30を上下方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0049】
ロッド40は、中空円筒形状を有する棒状部材である。ロッド40の下端はスライダ30の上面の中央に接続されている。
図4Bに示されているように、ロッド40の内腔と、スライダ30の貫通孔とが連通して流路40fが形成されている。流路40fは、スライダ30及びロッド40を上下方向に貫通している。ロッド40の外周面には、水平方向に延びた一対のロック溝40gが形成されている。なお、ロック溝40gは、周方向に分断されている必要はなく、例えば周方向に連続した環状の溝であってもよい。ロッド40の外周面にOリング53が装着されている。Oリング53は、ロック溝40gとスライダ30との間に位置している。
【0050】
本実施形態では、スライダ30(ガスケット50を除く)とロッド40とは全体として一部品として一体的に製造されているが、本発明はこれに限定されず、別個に製造されたスライダ30とロッド40とが組み合わされていてもよい。
【0051】
図5Aはトップキャップ60の斜視図、
図5Bはその断面斜視図である。トップキャップ60は、円形の天板61と、天板61の外周端縁から下方に向かって延びた円筒形状の外周壁62と、天板61の下面から下方に向かって延びた案内筒63とを備える。
【0052】
天板61の上面に、真っ直ぐに延びた溝65が設けられている。溝65の幅は一定ではなく、相対的に幅が広い広幅部65aと、相対的に幅が狭い狭幅部65bとを備える。広幅部65aは天板61の中央に設けられ、狭幅部65bが広幅部65aと天板61の外周端縁とをつないでいる。
【0053】
ガイド孔70が天板61及び案内筒63を上下方向に貫通している。ガイド孔70は、溝65の広幅部65a内に、天板61と同軸に設けられている。ガイド孔70の上方に向いた開口の端縁には、わずかに拡径されることによって環状の凹部が形成され、当該凹部内にはOリング54が装着されている。
【0054】
天板61に、天板61を上下方向に貫通する2つの貫通孔64a,64bが設けられている。貫通孔64a,64bは、天板61の溝65以外の領域に設けられている。
【0055】
貫通孔64aは、貯留槽20内に血液を注入するための注入ポートとして利用される。注入ポート64aは、血液を貯留槽20内に注入後、栓(図示せず)等で封止される。
【0056】
貫通孔64bは、通気ポートとして利用される。貫通孔64b内には、通気フィルタ68が設けられている。通気フィルタ68は、気体は通過させるが液体は通過させず、また、細菌等も通過させない性質を有するフィルタである。通気ポート64bは、通気フィルタ68を介して貯留槽20(特に、第1貯留部21)内と外界とを気体連通させる。
【0057】
外周壁62の内周面には、支持部材90(支持半体91a,91b)に設けられた雄ネジ99(
図3参照)と螺合する雌ネジ69が設けられている。
【0058】
図6は、ロック部材110の斜視図である。ロック部材110は、略矩形の薄板状の操作部111と、操作部111の一辺に設けられた略「U」字形状のフレーム112とを備える。フレーム112は、先端の拡径部114と、拡径部114と操作部111との間の互いに平行な2本のロックバー113とを備える。本実施形態では、拡径部114は略円形を有しているが、拡径部114の形状は、これに限定されず、楕円形、正六角形(後述する
図19参照)、正八角形など、任意の形状を有していもよい。拡径部114の内径(拡径部114の内接円の直径)は、ロッド40(
図4A参照)の外径とほぼ同じかこれよりわずかに大きい。拡径部114の外寸法は、2本ロックバー113の外寸法より大きい。2本ロックバー113間の間隔は、拡径部114の内径より小さく、また、ロッド40の外径よりも小さい。後述するように、2本のロックバー113は、ロッド40に形成されたロック溝40g(
図4A、
図4B参照)に係合することができるように構成されている。
【0059】
ロッド40に保持されたスライダ30、及び、トップキャップ60は、
図2及び
図3から理解できるように、概略、以下のようにして貯留槽20に組み付けられる。
【0060】
貯血槽20に支持部材90を装着する。ロッド40は、トップキャップ60のガイド孔70に下から挿入される。貯留槽20の開口25にスライダ30を挿入し、支持部材90の上端にトップキャップ60を螺着する。開口25は天板61で覆われる。ロッド40は、トップキャップ60を貫通して上方に向かって突出する。ロック部材110の拡径部114内にロッド40を挿入する。そして、ロック部材110を、トップキャップ60の上面に形成された溝65に嵌入させる。より詳細には、ロック部材110の拡径部114及び操作部111を、溝65の広幅部65a及び狭幅部65bにそれぞれ嵌入させる。ロッド40に設けられたロック溝40gがロック部材110と同じ高さになるように、ロッド40の上下方向の位置を調整する。そして、溝65内でロック部材110を移動させて、ロッド40のロック溝40gにロック部材110のロックバー113を嵌入させる。
【0061】
図7は、このようにして組み立てられた装置1の平面図である。ロッド40は、ロック部材110のロックバー113間に位置している。
図1及び
図2は、ロック部材110が
図7の位置にある装置1を示している。
図2に示されているように、ロックバー113がロッド40のロック溝40gに係合している。このため、ロッド40及びこれに保持されたスライダ30が下降するのが防止される。このように、ロック部材110とこれに係合するロッド40に設けられたロック溝40gとは、スライダ30が下降するのを防止する、「スライダ30のためのロック機構」を構成する。ロック機構によるロックの有効化/無効化の切り替えは、溝65内でロック部材110を水平方向に移動させることにより可能である。
図7のようにロッド40がロックバー113間に位置し、ロック溝40gにロックバー113が係合しているとき、ロック機構はロック状態となり、ロッド40が拡径部114内に位置するとき、ロック機構は非ロック状態となる。ロック部材110の移動は、操作部111に指を押し当てて行うことができる。
【0062】
ロック機構がロック状態のとき、
図2に示されているように、ロッド40の下端に保持されたスライダ30は、第1貯留部21の内周面に接触することなく、第1貯留部21内に浮かんでいる。
図2に示されたスライダ30の位置を、スライダ30の「初期位置」という。
【0063】
ロック部材110(ロックバー113)とロッド40との係合(ロック状態)が解除されない限り、ロッド40に下向きの力を加えても、あるいは重力や遠心力がロッド40及びスライダ30に作用しても、スライダ30は初期位置から下降することはない。ロック機構は、スライダ30を初期位置に安定的に保持するのに有利である。このため、第1貯留部21と第2貯留部22(シリンダ部23及び副貯留部24)との連通が保証される。これは、貯留槽20の開口25から血液を注入したときに血液を第1貯留部21から第2貯留部22へ確実に流入させるのに有利である。また、血液を、第1貯留部21内の血漿成分と、シリンダ部23内の白血球成分と、副貯留部24内の赤血球成分とに、遠心分離させるのに有利である。
【0064】
スライダ30が初期位置にあり、且つ、ロック部材110とロッド40とが係合した状態(ロック状態)を「初期状態」という(
図1、
図2、
図7)。
【0065】
Oリング53,54が、ロッド40の外周面とトップキャップ60のガイド孔70の内周面との間の隙間を液密に封止する。更に、トップキャップ60は貯留槽20の上端の開口25を液密に封止している。従って、貯留槽20内の空間は、スライダ30及びロッド40に設けられた流路40fと、トップキャップ60の貫通孔64a,64bとを除いて、液密に封止されている。
【0066】
スライダ30の材料は、ガスケット50がシリンダ部23の内周面との間で液密なシールを形成する(詳細は後述する)ことができるように、実質的に剛体とみなしうる硬質材料であることが好ましい。具体的には、スライダ30の材料として、例えばポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの樹脂材料を用いることができる。また、スライダ30への赤血球の付着を抑制するため、スライダ30の上面に円錐面等の傾斜面を設けたり、コーティングを施したりしてもよい。
【0067】
ガスケット50としては、一般的なシリンジのプランジャ(押し子)の先端に取り付けれるガスケットと同様のものを用いることができる。また、Oリング53,54としては、液密なシールを形成することができる汎用されているOリングを用いることができる。ガスケット50及びOリング53,54の材料は、特に制限はないが、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等のゴムや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等のゴム弾性を有する材料(エラストマーとも呼ばれる)を使用することができる。
【0068】
本実施形態では、スライダ30にシール材としてガスケット50を装着しているが、本発明はこれに限定されず、シリンダ部23の内周面との間で液密なシールを形成することができる任意のシール材をスライダ30に装着することができる。例えば、Oリング53,54と同様の任意のOリングをスライダ30の外周面に装着してもよい。
【0069】
1.2.使用方法
装置1の使用方法を説明する。
【0070】
最初に、遠心分離される血液(骨髄液)を採取する。採取方法は任意であり、例えば、事前にヘパリンで湿潤させたシリンジを骨髄に十数か所穿刺し、所定量(例えば100ml〜400ml程度)の骨髄液を採取することができる。
【0071】
次いで、採取した血液の血液量とヘマトクリット値を測定する。血液量及びヘマトクリット値から赤血球成分の量、血漿量を計算する。
【0072】
初期状態にある空の装置1(
図1、
図2、
図7参照)を準備する。ボトムキャップ80を回転させて、蛇腹構造28の圧縮変形量を調整する。圧縮変形量は、先に求めた赤血球成分量及び血漿量に基づいて、遠心分離後のバフィーコートが貯血槽20のシリンダ部23内に形成されるように決定される。ロッド40の上端には、流路40fを塞ぐキャップ(図示せず)が装着されている。
【0073】
次いで、注入ポート64aを介して、採取した血液を貯留槽20内に注入する。血液が注入されるのにともなって、貯留槽20内の空気は通気ポート64bを介して貯留槽20外に流出する。このため、流路40fが閉じられていても、血液の注入は容易である。その後、注入ポート64aを封止する。
【0074】
次いで、血液が充填された装置1を遠心分離機にかけ、遠心分離を行う。遠心力は、中心軸1aと平行に、
図1及び
図2の矢印Fの向きに作用する。血液は、第1貯留部21内の血漿成分と、シリンダ部23内のバフィーコート(白血球成分及び血小板)と、副貯留部24内の赤血球成分と、に遠心分離される。
【0075】
初期状態では、スライダ30を保持するロッド40にロック部材110が係合し、ロック機構が有効に機能したロック状態にある。このため、遠心分離時に遠心力Fが作用しても、スライダ30が初期位置から下方に移動することはない。
【0076】
遠心分離後、装置1を遠心分離機から取り出す。バフィーコートがシリンダ部23内に正確に配置されるように、遠心分離後に必要に応じてボトムキャップ80を回転させて、バフィーコートの上下方向位置を微調整してもよい。
【0077】
次いで、ロッド40の上端に、血液成分回収器150(
図11参照。詳細は後述する)を接続する。
【0078】
次いで、
図8に示すように、ロッド40が拡径部114内に位置するように、ロック部材110を溝65内で水平方向に移動させる。これにより、ロック部材110のロックレバー113と、ロッド40のロック溝40gとの係合が解除される(非ロック状態)。
【0079】
次いで、ロッド40を下方に押し下げる。ロッド40とともに、その下端に設けられたスライダ30も下方に移動する。
図9に示すように、スライダ30がシリンダ部23の上側(第1貯留部21側)の開口に嵌入する。スライダ30に設けられたガスケット50と、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールが形成される。この結果、第1貯留留21と第2貯留部22(シリンダ部23及び副貯留部24)との間の連通は、スライダ30によって液密に遮断される。
【0080】
更にロッド40を下方に押し下げる。スライダ30は、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールを維持しながら、シリンダ部23内を下方に向かって移動する。スライダ30がシリンダ部23内に侵入する(即ち、第1貯留部21から遠ざかる)のにともなって、第2貯留部22の容積が減少する。このため、スライダ30の下面に接する血液成分(例えば白血球成分)が、流路40fを通って貯留槽20外に流出する。スライダ30の下降にともない、外気が通気ポート64bを介して第1貯留部21内に流入し、第1貯留部21内が負圧になるのが防止される。このため、ロッド40及びスライダ30を押し下げる操作は容易である。
【0081】
シリンダ部23内の全ての白血球成分を貯留槽20外に流出させた時点で、スライダ30の下降を停止し、白血球成分の回収作業が終了する。
図10は、このときの装置1の断面図である。スライダ30が、シリンダ部23の下側(副貯留部24側)の開口またはその近傍に到達している。
【0082】
1.3.作用
以上のように、本実施形態1の装置1は、貯血槽20内に、第1貯留部21からシリンダ部23(第2貯留部22)へ移動可能なスライダ30を有する。スライダ30が第1貯留部21内にあるとき、第1貯留部21とシリンダ部23とは互いに連通している。スライダ30がシリンダ部23に挿入されると、スライダ30とシリンダ部23の内周面との間に液密なシールが形成され、スライダ30が第1貯留部21とシリンダ部23との連通を遮断する。スライダ30は、この液密なシールを維持しながらシリンダ部23内を移動することができる。このため、スライダ30を第1貯留部21内に保持して血液の遠心分離を行い、その後、スライダ30を第1貯留部21からシリンダ部23内に挿入すれば、スライダ30がシリンダ部23内に侵入するのにしたがって、シリンダ部23内の血液成分を流路40fを通じて貯留槽20外に押し出すことができる。スライダ30をシリンダ部23内に挿入する直前にシリンダ部23内に白血球成分が存在するように血液を遠心分離すれば、白血球成分を流路40fを通じて回収することができる。
【0083】
スライダ30は、シリンダ部23の内周面との間で液密なシールが維持されるように内周面上を摺動する。このため、シリンダ部23の内周面に付着した白血球成分は、スライダ30が摺動することによって掻き取られる(または、削ぎ落とされる)。スライダ30が通過後、シリンダ部23の内周面には、白血球成分はほとんど残らない。従って、装置1は、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0084】
上述したように、従来の装置(特許文献1参照)を用いた場合には、白血球成分の回収率を向上させるためには、生理食塩水を用いた洗浄作業が必要であった。しかしながら、生理食塩水による洗浄のみでは、貯留槽の内周面に付着した白血球成分を十分に回収できない場合がある。これに対して本実施形態の装置1では、スライダ30がシリンダ部30に接触しながら移動(すなわち、摺動)するので、シリンダ部23の内周面に付着した白血球成分をより確実に回収することができる。従って、本実施形態では、従来に比べて、白血球成分の回収率が格段に向上する。
【0085】
また、従来の装置を用いた場合には、生理食塩水で貯血槽内を洗浄する工程に加えて、その後、白血球成分を含む生理食塩水を遠心分離する等して生理食塩水から白血球成分を分離し回収する工程が必要である。このため、白血球成分の回収率を向上させるために多大な手間がかかる。これに対して、本実施形態の装置1を用いた場合には、洗浄工程や生理食塩水の遠心分離工程を行うことなく、白血球成分の回収率を向上させることができる。従って、装置1を用いることにより、白血球成分を効率よく回収することができる。
【0086】
従来の装置は、貯留槽の第3貯留部(本実施形態1のシリンダ部23に相当する部分)の上下の開口を塞ぐために、貯留槽内で移動可能な2つの遮断部材を備える必要があった。また、従来の装置では、貯留槽の第3貯留部の上下の開口を塞いだ状態で第3貯留部内の白血球成分をシリンジに吸引するので、第3貯留部から白血球成分が流出するための流路に加えて、第3貯留部が負圧にならないように、白血球成分の流出にともなって第3貯留部内に空気が流入するための空気流路を設ける必要があった。これに対して、本実施形態では、貯留槽20内で移動可能な部材はスライダ30のみである。また、スライダ30で第2貯留部22内の白血球成分を押し出して回収するので、第2貯留部22に通じる空気流路は不要である。更に、白血球成分を流出させるための流路40fは、スライダ30を移動させるためのロッド40内に設けられている。これらの結果、本実施形態1の装置1は、従来の装置に比べて構造が格段に簡単である。
【0087】
従来の装置では、貯留槽の第3貯留部(本実施形態1のシリンダ部23に相当する部分)の上下の開口を2つの遮断部材で塞いだ状態で、第3貯留部の下側の開口を塞ぐ遮断部材(第1遮断部材)を保持するロッド内に設けられた流路を介して、第3貯留部内の白血球成分を回収した。第3貯留部から白血球成分を回収するのにともなって第3貯留部内に空気が流入するように構成されているので、白血球成分が流れる流路は、第3貯留部の下端に位置する第1遮断部材の近傍の位置に設けられた開口を介して第3貯留部と連通されていた。このため、流路が長くなるので、流路の内壁面に付着する白血球成分が多くなる。また、下側の第1遮断部材の表面にも白血球成分が付着する。このように白血球成分が付着する領域が広いので、白血球成分を十分に回収できないという課題があった。これに対して、本実施形態では、白血球成分を回収するための流路40fは、スライダ30を保持するロッド40に設けられているので、流路40fを従来の装置の流路に比べて短くすることが可能である。また、本実施形態では、従来の装置の第1遮断部材に相当する部材は存在しない。このように、本実施形態では、白血球成分が付着する領域が相対的に小さい。従って、本実施形態の装置1は、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0088】
従来の装置では、貯留槽の第3貯留部(本実施形態1のシリンダ部に相当する部分)の下側の開口及び上側の開口をそれぞれ遮断部材で順に塞いだ後、第3貯留部内の白血球成分を回収する。第3貯留部の下側の開口を遮断部材で塞ぐ際に、遮断部材が白血球成分の層と赤血球成分の層との境界をかき乱し、境界近傍で白血球成分と赤血球成分とが混じり合うことがある。その結果、回収した白血球成分中に赤血球成分が混入する、あるいは、全ての白血球成分を回収できない、等の問題が起こることがあった。これに対して本実施形態1では、シリンダ部23の下側(副貯留部24側)の開口を塞ぐ必要はない。また、スライダ30をシリンダ部23に上側の開口から挿入しても、シリンダ部23の下側の開口の近傍にある、白血球成分の層と赤血球成分の層との境界はほとんど影響を受けない。このため、従来の装置の上記の問題が解消される。この点からも、装置1は、白血球成分の回収率を向上に有利である。
【0089】
更に、本実施形態1では、白血球成分を回収するためには、遠心分離後、ロッド40を押し下げて、スライダ30を第1貯留部21からシリンダ部23へ移動させるだけでよい。ロッド40を押すことによって白血球成分が押し出される原理は、一般的なシリンジにおいて、プランジャを外筒内に押し込んで外筒内の液体が押し出される原理と基本的に同じである。ロッド40及びスライダ30を下方に向かって単に移動させるだけで白血球成分を回収できるので、誤操作をする可能性が低く、作業者の負担を軽減することができる。
【0090】
1.4.血液成分回収器
本実施形態1の装置1を用いて白血球成分を回収するのに好適な血液成分回収器を説明する。
【0091】
図11に血液成分回収器150の一例を示す。回収器150は、第1容器151及び第2容器152と、柔軟且つ透明なチューブ155とを備える。チューブ155は、主チューブ155cから2つの分岐チューブ155a,155bに、Y字状(またはT字状)に分岐している。主チューブ155cは、装置1のロッド40の上端(
図1、
図2参照)に接続される。分岐チューブ155a,155bは容器151,152にそれぞれ接続されている。分岐チューブ155a,155b上には、それぞれの流路を開閉するためのクランプ157a,157bが設けられている。容器151,152のキャップには、容器151,152の内外を気体連通させるための通気穴151a,152aが設けられている。通気穴151a,152aには、気体は通過させるが液体は通過させない通気フィルタ(図示せず)が設けられている。
【0092】
回収器150を用いた血液成分の回収作業は、以下のようにして行う。
【0093】
装置1内の血液を遠心分離した後、スライダ30が初期位置にある初期状態(
図2参照)で、主チューブ155cをロッド40の上端に接続する。その後、ロッド40を下降させ、スライダ30をシリンダ部23の上側の開口に嵌入させる(
図9参照)。
【0094】
支持部材90及び貯留槽20を介して、シリンダ部23内の血液成分を観察する。例えば、シリンダ部23内に、スライダ30の真下に薄い血漿成分の層が存在し、その下に白血球成分の層が存在する場合、クランプ157aを開き、クランプ157bを閉じる。そして、ロッド40を下降させる。スライダ30がシリンダ部23内を下降するのにしたがって、シリンダ部23から、ロッド40の流路40f及びチューブ155を通って、最初に血漿成分が流出し、次いで白血球成分が流出する。チューブ155を介してチューブ155を流れる血液成分を観察し、チューブ155を流れる血液成分が血漿成分から白血球成分に切り替わったときに、クランプ157aを閉じ、クランプ157bを開く。その後、引き続いてロッド40を下降させる。その後、チューブ155を流れる血液成分が白血球成分から赤血球成分に切り替わったときに(
図10参照)、クランプ157bを閉じ、ロッド40の下降操作を停止する。かくして、第1容器151に血漿成分を、第2容器152に白血球成分を、それぞれ回収することができる。
【0095】
このように、回収器150は、2つの容器151,152と、これらと装置1の流路40fとの連通を切り替える切替機構(クランプ157a,157b)とを備える。このような回収器150を用いることにより、スライダ30をシリンダ部23の上側の開口に嵌入させた時点で(
図9参照)、スライダ30の下側に血漿成分の層が存在していたり、シリンダ部23の下部に赤血球成分の層が入り込んでいたりしても、切替機構(クランプ157a,157b)で流路40fと容器151,152との連通を切り替えることにより、血漿成分や赤血球成分が実質的に混入していない、高純度の白血球成分を回収することができる。
【0096】
このため、回収器150を用いる場合には、遠心分離後のスライダ30が初期位置にある状態(
図2参照)で、白血球成分の層の上端及び下端が、シリンダ部23の上端及び下端にそれぞれ正確に一致している必要がない。白血球成分の層の全てがシリンダ部23内に存在していればよく、シリンダ部23内に血漿成分の層や赤血球成分の層が入り込んでいてもよい。このため、採取した血液の赤血球成分の量や血漿量を計算する工程を省略したり、蛇腹構造28の圧縮変形量の調整精度を緩和したりすることができ、白血球成分の回収作業を簡単化することができる。更には、蛇腹構造28のような容積調整機構を省略して、貯留槽20及び装置1の構成を更に簡単化することも可能である。
【0097】
上記の回収器150は、流路40fを、第1容器151及び第2容器152のいずれかに選択的に連通させるための切替機構として、クランプ157a,157bを備えるが、切替機構の構成はこれに限定されない。例えば、切替機構が、クランプ157a,157bに代えて、チューブ155のY字状(またはT字状)の分岐部分に設けられた三方活栓であってもよい。
【0098】
第1容器151及び第2容器152の構成は、上記の実施形態に限定されない。例えば、第1容器151及び/又は第2容器152は、柔軟性を有するシートを貼り合わせたバッグであってもよい。この場合、バッグには、通気穴151a,152aが設けられていなくてもよい。
【0099】
2.実施形態2
本発明の実施形態2について説明する。以下の説明において参酌する図面において、実施形態1で参酌した図面に示された部材または要素と同じ機能を有する部材または要素には、実施形態1と同じ符号が付してある。本実施形態2では、それらの部材または要素については、重複する説明を省略する。従って、必要に応じて実施形態1の説明を参酌する必要がある。以下、本実施形態2を、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0100】
2.1.血液成分分離用装置の構成
本発明の実施形態2に係る血液成分分離用装置(以下、単に「装置」という)2の構成を説明する。
【0101】
図12は、装置2の斜視図である。
図13は、装置2の上下方向面に沿った断面斜視図である。
図13において、一点鎖線2aは、装置2の中心軸である。
図14は、装置2の分解斜視図である。
【0102】
図13に示されているように、装置2は、第1貯留部21内にスライダ31を、副貯留部24内に遮断部材32を備える。スライダ31は、実施形態1のスライダ30と同様に機能する部材であって、2本の第1ロッド41の下端に保持されている。遮断部材32は、第2ロッド42の下端に保持されている。
【0103】
図15Aは、スライダ31及び第1ロッド41の斜視図であり、
図15Bはその断面図である。スライダ31は、略円板形状(または、薄い略円筒形状)を有する。スライダ31の中央に、スライダ31を上下方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。有底の円筒形状を有するガスケット51が、スライダ31の外周面及び下面を覆うように、スライダ31に装着されている。ガスケット51の、スライダ31の貫通孔31aに対応する位置に、ガスケット51の底板を上下方向に関する貫通孔51aが形成されている。貫通孔51aの開口径は、貫通孔31aの開口径よりわずかに小さいことが好ましい。
【0104】
第1ロッド41は、中実の棒状部材である。2本の第1ロッド41は、スライダ31の上面の、貫通孔31aに対して対称な位置に設けられている。2本の第1ロッド41は、互いに平行に上方に向かって延びている。
【0105】
各第1ロッド41の外周面には、水平方向に延びた一対の第1ロック溝41gが形成されている(
図15Aでは、第1ロッド41の背面側に設けられた第1ロック溝41gは見えない)。なお、第1ロッド41のそれぞれに設けられた第1ロック溝41gは、周方向に分断されている必要はなく、例えば周方向に連続した環状の溝であってもよい。
【0106】
本実施形態では、スライダ31(ガスケット51を除く)と第1ロッド41とは全体として一部品として一体的に製造されているが、本発明はこれに限定されず、別個に製造されたスライダ31と第1ロッド41とが組み合わされていてもよい。
【0107】
図16Aは、遮断部材32及び第2ロッド42の斜視図であり、
図16Bはその断面図である。遮断部材32は、略円板形状(または、薄い略円筒形状)を有する。遮断部材32の円筒面状の外周面に、Oリング52が装着されている。遮断部材32の上面に、4つの開口32aが形成されている。4つの開口32aは、遮断部材32内に形成された、略十字の平面視形状を有する流路32fを介して互いに連通している。開口32aの数は、4つである必要はなく、これより多くても少なくてもよい。
【0108】
第2ロッド42は、中空円筒形状を有する棒状部材である。好ましくは、第2ロッド42は、第1ロッド41(
図15A参照)と同じ外径を有する。第2ロッド42は、遮断部材32の上面の中央に設けられている。
図16Bに示されているように、第2ロッド42内の流路42fと遮断部材32内の流路32fとが連通している。従って、開口32a、流路32f、流路42fが、順に連通している。
【0109】
なお、遮断部材32の開口32a及び流路32fを省略し、第2ロッド42の遮断部材32近傍の位置に、流路42fと連通し、半径方向に沿った横孔を設けてもよい。
【0110】
第2ロッド42の外周面には、水平方向に延びた一対の第2ロック溝42gが形成されている(
図16Aでは、第2ロッド42の背面側に設けられた第2ロック溝42gは見えない)。なお、第2ロック溝42gは、周方向に分断されている必要はなく、例えば周方向に連続した環状の溝であってもよい。
【0111】
図17Aはトップキャップ260の斜視図、
図17Bはその断面斜視図である。トップキャップ260は、円形の天板61と、天板61の外周端縁から下方に向かって延びた円筒形状の外周壁62と、天板61の下面から下方に向かって延びた案内筒263とを備える。
【0112】
天板61の上面に、真っ直ぐに延びた溝67が設けられている。溝67の幅は一定ではなく、実施形態1の溝65(
図5A参照)と同様に、相対的に幅が広い広幅部67aと、相対的に幅が狭い狭幅部67bとを備える。広幅部67aは天板61の中央に設けられ、狭幅部67bが広幅部67aと天板61の外周端縁とをつないでいる。
【0113】
3つのガイド孔71a,71b,72が、天板61及び案内筒263を上下方向に貫通している。ガイド孔71a,71b,72は、溝67の長手方向と略直交する直線に沿って配置されている。第1ガイド孔71a,71bは、溝67を挟んでその両側に設けられ、第2ガイド孔72は、溝67の広幅部67a内に、天板61と同軸に設けられている。ガイド孔71a,71b,72の上側を向いた開口の端縁には、わずかに拡径されることによって環状の凹部が形成され、当該凹部内にはOリング55a,55b,56が装着されている。同様に、ガイド孔71a,71bの下側を向いた開口の端縁には、わずかに拡径されることによって環状の凹部が形成され、当該凹部内にはOリング57a,57bが装着されている。
【0114】
天板61の溝67以外の領域に、天板61を上下方向に貫通する2つの貫通孔64a,64bが設けられている。実施形態1と同様に、貫通孔64aは注入ポートとして利用され、貫通孔64bは通気ポートとして利用される。
【0115】
図18は、第1ロック部材210の斜視図である。第1ロック部材210は、略「C」字形状の操作部211と、操作部211の両端から延びた2本のロックバー213とを備える。2本のロックバー213は、その長手方向の略中間位置に設けられた拡幅部214を除いて、互いに平行に延びている。拡幅部214でのロックバー213間の間隔は、他の部分での間隔より大きい。拡幅部214の内径(拡幅部214の内接円の直径)は、第2ロッド42(
図16A参照)の外径とほぼ同じかこれよりわずかに大きい。拡幅部214以外での、2本のロックバー213間の間隔は、第1ロッド41(
図15A、
図15B参照)の外径より小さい。後述するように、2本のロックバー213の拡幅部214を除く部分は、第1ロッド41に形成された第1ロック溝41g(
図15A参照)に係合することができるように構成されている。
【0116】
図19は、第2ロック部材220の斜視図である。第2ロック部材220は、実施形態1のロック部材110(
図6参照)と同様に、略矩形の薄板状の操作部221と、略「U」字形状のフレーム222とを備える。フレーム222は、拡径部224と、拡径部224と操作部221との間の互いに平行な2本のロックバー223とを備える。本実施形態では、拡径部224は略正六角形を有しているが、拡径部224の形状は、これに限定されず、円形(
図6参照)、楕円形、正八角形など、任意の形状を有していもよい。拡径部224の内径(拡径部224の内接円の直径)は、第2ロッド42(
図16A参照)の外径とほぼ同じかこれよりわずかに大きい。拡径部224の外寸法は、2本ロックバー223の外寸法より大きい。2本ロックバー223間の間隔は、拡径部224の内径より小さく、また、第2ロッド42の外径よりも小さい。後述するように、2本のロックバー223は、第2ロッド42に形成された第2ロック溝42g(
図16A参照)に係合することができるように構成されている。
【0117】
第1ロッド41に保持されたスライダ31、第2ロッド42に保持された遮断部材32、及び、トップキャップ260は、
図13及び
図14から理解できるように、概略、以下のようにして貯留槽20に組み付けられる。
【0118】
貯留槽20に支持部材90を装着する。遮断部材32は、開口25から貯留槽20内に挿入される。第2ロッド42を使って、遮断部材32は、第1貯留部21からシリンダ部23を通って、副貯留部24内に移動される。第2ロッド42は、ガスケット51の貫通孔51a及びスライダ31の貫通孔31aに順に挿入される。更に、第2ロッド41は、トップキャップ260の第2ガイド孔72に下から挿入される。また、2本の第1ロッド41は、トップキャップ260の第1ガイド孔71a,71bに下から挿入される。支持部材90の上端にトップキャップ260を螺着する。開口25は天板61で覆われる。ロッド41,41,42は、トップキャップ260を貫通して上方に向かって突出する。
【0119】
第2ロック部材220の拡径部224内に第2ロッド42を挿入する。そして、第2ロック部材220を、トップキャップ260の上面に形成された溝67に嵌入させる。より詳細には、第2ロック部材220の拡径部224及び操作部221を、溝67の広幅部67a及び狭幅部67bにそれぞれ嵌入させる(
図20参照)。
【0120】
次いで、第1ロック部材210の2本のロックバー213間に、ロッド41,41,42を挿入する。第2ロッド42が拡幅部214内に位置するように、第1ロック部材210の水平方向位置を調整する。そして、ロックバー213を、第1ロッド41に設けられた第1ロック溝41gに嵌入させる。第1ロック部材210を、トップキャップ260の天板61上に載置する。
【0121】
図20は、このようにして組み立てられた装置2の平面図である。第2ロッド42は、第2ロック部材220の拡径部224内に位置し、且つ、第1ロック部材210の拡幅部214内に位置している。第1ロッド41は、第1ロック部材210のロックバー213間に位置している。
図12及び
図13は、第1及び第2ロック部材210,220が
図20の位置にある装置2を示している。
【0122】
図12に示されているように、第1ロック部材210のロックバー213(拡幅部214を除く)が第1ロッド41の第1ロック溝41gに係合している。このため、第1ロッド41及びこれに保持されたスライダ31が下降するのが防止される(
図13参照)。このように、第1ロック部材210とこれに係合する第1ロッド41に設けられた第1ロック溝41gとは、スライダ31が下降するのを防止する、「スライダ31のためのロック機構」(以下、「第1ロック機構」という)を構成する。第1ロック機構によるロックの有効化/無効化の切り替えは、第1ロッド41に対する第1ロック部材210の着脱により可能である。
図20のように第1ロッド41がロックバー213間に位置し、第1ロック溝41gにロックバー213が係合しているとき、第1ロック機構はロック状態となり、第1ロック部材210が第1ロッド41から引き取られると(後述する
図22参照)、第1ロック機構は非ロック状態となる。第1ロック部材210の第1ロッド41からの引き取りは、操作部211に指を入れて、ロッド41,42,41の配列方向に第1ロック部材210を引っ張ることにより行うことができる。
【0123】
第1ロック機構がロック状態のとき、
図13に示されているように、第1ロッド41の下端に保持されたスライダ31は、第1貯留部21の内周面に接触することなく、第1貯留部21内に浮かんでいる。
図13に示されたスライダ31の位置を、スライダ31の「初期位置」という。
【0124】
第1ロック部材210(ロックバー213)と第1ロッド41との係合(ロック状態)が解除されない限り、第1ロッド41に下向きの力を加えても、あるいは重力や遠心力が第1ロッド41及びスライダ31に作用しても、スライダ31は初期位置から下降することはない。第1ロック機構は、スライダ31を初期位置に安定的に保持するのに有利である。このため、第1貯留部21と第2貯留部22(シリンダ部23)との連通が保証される。これは、貯留槽20の開口25から血液を注入したときに血液を第1貯留部21から第2貯留部22へ確実に流入させるのに有利である。また、血液を、第1貯留部21内の血漿成分と、シリンダ部23内の白血球成分と、副貯留部24内の赤血球成分とに、遠心分離させるのに有利である。
【0125】
図20に示されているように、第2ロック部材220の拡径部224の内径は、第2ロッド42の外径と同じかこれより大きい。また、第1ロック部材210の拡幅部214の内径は、第2ロッド42の外径と同じかこれより大きい。このため、
図13において、第2ロッド42及びこの下端に保持された遮断部材32は、貯留槽20に対して上下方向に移動可能である。
【0126】
一方、第2ロック溝42gが第2ロック部材220と同じ高さになるように、第2ロッド42を上昇させると、第2ロッド42の第2ロック溝42gに第2ロック部材220のロックバー223を嵌入させることができる(後述する
図21A及び
図21B参照)。
【0127】
ロックバー223が第2ロック溝42gに係合すると、第2ロッド42及びこれに保持された遮断部材32が下降するのが防止される。このように、第2ロック部材220とこれに係合する第2ロッド42に設けられた第2ロック溝42gとは、遮断部材32が下降するのを防止する、「遮断部材32のためのロック機構」(以下、「第2ロック機構」という)を構成する。第2ロック機構によるロックの有効化/無効化の切り替えは、溝67内で第2ロック部材220を水平方向に移動させることにより可能である。
図20のように第2ロッド42が拡径部224内に位置するとき、第2ロック機構は非ロック状態となり、第2ロッド42がロックバー223間に位置し、第2ロック溝42gにロックバー223が係合しているとき(後述する
図21A及び
図21B参照)、第2ロック機構はロック状態となる。第2ロック部材220の移動は、操作部221に指を押し当てて行うことができる。
【0128】
図13では、遮断部材32は、副貯留部24の底板24bに接している。
図13に示された遮断部材32の位置を、遮断部材32の「初期位置」という。
【0129】
本発明では、スライダ31及び遮断部材32がいずれも上記の初期位置にあり、且つ、第1ロック部材210と第1ロッド41とが係合し(ロック状態)、且つ、第2ロック部材220と第2ロッド42とが係合していない(非ロック状態)状態を、「初期状態」という(
図12、
図13、
図20)。
【0130】
第1ロッド41の外周面と、トップキャップ260に保持されたOリング55a,55b,57a,57bとの間に液密なシールが形成され、第2ロッド42の外周面と、スライダ31に設けられたガスケット51及びトップキャップ260に保持されたOリング56との間に液密なシールが形成される。更に、トップキャップ260は貯留槽20の上端の開口25を液密に封止している。従って、貯留槽20内の空間は、流路32f,42fと、トップキャップ260の貫通孔64a,64b(
図17A参照)とを除いて、液密に封止されている。
【0131】
スライダ31及び遮断部材32の材料は、ガスケット51及びOリング52がシリンダ部23の内周面との間で液密なシールを形成する(詳細は後述する)ことができるように、実質的に剛体とみなしうる硬質材料であることが好ましい。スライダ31及び遮断部材32の材料に関して、実施形態1のスライダ30に関する説明が適用しうる。
【0132】
ガスケット51及びOリング52,55a,55b,56,57a,57bの材料に関しては、実施形態1のガスケット50及びOリング53,54に関する説明が適用しうる。
【0133】
本実施形態では、スライダ31にシール材としてガスケット51を装着しているが、本発明はこれに限定されず、シリンダ部23の内周面との間で液密なシールを形成することができる任意のシール材をスライダ31に装着することができる。例えば、実施形態1のガスケット50と同様の、底板を有しない環状のガスケットをスライダ31の外周面に装着してもよい。あるいは、Oリング52と同様の任意のOリングをスライダ31の外周面に装着してもよい。これらの場合、第1ロッド41の外周面との間で液密なシールを形成することができるOリングを、スライダ31の貫通孔31aの内周面、または、トップキャップ260の第2ガイド孔72の内周面の下端に装着することが好ましい。
【0134】
2.2.使用方法
装置2の使用方法を説明する。
【0135】
採取した血液を、初期状態にある空の装置2(
図12、
図13、
図20参照)の貯留槽20に注入する。次いで、遠心分離を行う。血液は、第1貯留部21内の血漿成分と、シリンダ部23内のバフィーコート(白血球成分及び血小板)と、副貯留部24内の赤血球成分と、に遠心分離される。以上の操作は、実施形態1と実質的に同じである。
【0136】
初期状態では、スライダ31を保持する第1ロッド41に第1ロック部材210が係合し、第1ロック機構が有効に機能したロック状態にある。また、遮断部材32は、副貯留部24の底板24bに接している。このため、遠心分離時に遠心力F(
図13参照)が作用しても、スライダ31及び遮断部材32が初期位置から移動することはない。
【0137】
遠心分離後、第2ロッド42の上端に、実施形態1で説明した血液成分回収器(
図11参照)の主チューブ155cを接続する。
【0138】
次いで、第2ロッド42の上端を掴み、第2ロッド42を上方に引き上げる。このとき、上昇する第2ロッド42と一緒にスライダ31が上昇しないように、必要に応じて第2ロッド42を掴んだ手とは別の手で、第1ロッド41又は第1ロック部材210を下方に向かって押さえてもよい。第2ロッド42を引き上げると、第2ロッド42の下端に取り付けられた遮断部材32が副貯留部24内で上方に向かって移動する。そして、
図21Aに示すように、遮断部材32が、シリンダ部23の副貯留部24側の開口に嵌入し、当該開口を塞ぐ。遮断部材32に装着されたOリング52は、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールを形成する。この結果、シリンダ部23と副貯留部24との連通が、遮断部材32によって液密に遮断される。
【0139】
遮断部材32がシリンダ部23の下側の開口を塞いだ状態で、
図21Bに示すように、第2ロッド42が2本のロックバー223間に位置するように、第2ロック部材220を水平方向に移動させる。第2ロッド42の第2ロック溝42g(
図16A参照)は、遮断部材32がシリンダ部23の下側の開口を塞いだとき、第2ロック部材220と同じ高さになるような位置に設けられている。従って、
図21Aに示されているように、第2ロック部材220のロックバー223が第2ロック溝42gに嵌入し、第2ロック機構はロック状態になる。第2ロック機構のロック状態を解除しない限り、第2ロッド42に下向きの力を印加しても、遮断部材32が下降してシリンダ部23の下側の開口が開放されることはない。
【0140】
なお、上記とは異なり、第2ロッド42を上方に移動させる前に、上記と同様に、第2ロッド42が2本のロックバー223間に位置するように、第2ロック部材220を水平方向に移動させてもよい。第2ロッド42によって、2本のロックバー223の間隔が拡大するように第2ロック部材220のフレーム222(
図19参照)は弾性的に変形される。この状態で、第2ロック部材220が上昇しないように第1ロック部材210を介して第2ロック部材220を押さえながら、第2ロッド42を上昇させる。第2ロック溝42gがロックバー223の位置に上昇すると、フレーム222が弾性復帰して、ロックバー223が第2ロック溝42gに嵌入し、第2ロック機構がロック状態になる。これと同時に、遮断部材32は、シリンダ部23の副貯留部24側の開口を液密に塞ぐ。この方法は、ロックバー223を第2ロック溝42gに嵌入させれば、シリンダ部23の下側の開口は遮断部材32で液密に塞がれることになるので、作業者の熟練度に関わらず、シリンダ部23と副貯留部24との連通を遮断する作業を容易且つ安定的に行うことができる。
【0141】
次いで、
図22に示すように、操作部211を掴んで、第1ロック部材210を水平方向に引っ張り、第1ロッド41から引き取る。これにより、第1ロック部材210と第1ロック溝41gとの係合が解除され、第1ロック機構は非ロック状態となる。
【0142】
次いで、2本の第1ロッド41を一緒に下方に押し下げる。第1ロッド41とともに、その下端に設けられたスライダ31も下方に移動する。
図23に示すように、スライダ31がシリンダ部23の上側(第1貯留部21側)の開口に嵌入する。スライダ31に設けられたガスケット51と、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールが形成される。この結果、第1貯留留21と第2貯留部22(シリンダ部23)との間の連通は、スライダ31によって液密に遮断される。
【0143】
更に第1ロッド41を下方に押し下げる。スライダ31は、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールを維持しながら、シリンダ部23内を下方に向かって移動する。スライダ31がシリンダ部23内に侵入する(即ち、第1貯留部21から遠ざかる)のにともなって、シリンダ部23の容積が減少する。このため、シリンダ部23内の血液成分(例えば白血球成分)が、遮断部材32の開口32aに流入し、流路32f,42f(
図16A、
図16B参照)を通って貯留槽20外に流出する。スライダ31の下降にともない、外気が通気ポート64b(
図17A参照)を介して第1貯留部21内に流入する。このため、第1ロッド41及びスライダ31を押し下げる操作は容易である。
【0144】
上述したように、第2ロック部材220と第2ロッド42の第2ロック溝42gとが係合し、第2ロック機構は依然としてロック状態にある。従って、第1ロッド41を押し下げる際に誤って第2ロッド42に下向きの力を加えてしまっても、あるいは、スライダ31がシリンダ部23内を下降する過程でシリンダ部23内の圧力が上昇しても、遮断部材32がシリンダ部23の下側の開口から抜け出てしまうという操作ミスは生じない。
【0145】
シリンダ部23内の全ての白血球成分を貯留槽20外に流出させた時点で、スライダ31の下降を停止し、白血球成分の回収作業が終了する。
図24は、このときの装置2の断面図である。スライダ31(またはガスケット51)が、遮断部材32に接近または当接している。
【0146】
流路42fを通ってシリンダ部23から流出した血液成分は、回収器150(
図11参照)に流れる。チューブ155を流れる血液成分に応じてクランプ157a,157bの開閉を切り替えることにより、第2容器152に白血球成分を回収することができる。シリンダ部23の下側の開口を遮断部材32で塞ぎ、シリンダ部23の上側の開口にスライダ31を挿入したとき(
図23参照)、遮断部材32の真上に薄い赤血球成分の層が存在し、スライダ31の真下に薄い血漿成分の層が存在し、これらの間に白血球成分の層が存在する場合が起こりうる。実施形態1の装置1とは異なり、装置2では、シリンダ部23内の血液成分は、遮断部材32の開口32aを通って回収器150へ流れる。従って、上記の場合、シリンダ部23から、赤血球成分、白血球成分、血漿成分がこの順に流出する。チューブ155を白血球成分が流れるときのみ、クランプ157aを閉じ、クランプ157bを開くことにより、第2容器152に白血球成分を回収することができる。
【0147】
2.3.作用
以上のように、本実施形態2の装置2は、貯留槽20内に、スライダ31に加えて、シリンダ部23と副貯留部24との連通を液密に遮断することができるように構成された遮断部材32を有する。遠心分離後、遮断部材32でシリンダ部23と副貯留部24との連通を遮断する。その後、スライダ31を第1貯留部21からシリンダ部23内に挿入する。スライダ30がシリンダ部23内に侵入するのにしたがって、シリンダ部23内の、スライダ31と遮断部材32との間に存在する血液成分を流路32f,42fを通じて貯留槽20外に押し出すことができる。スライダ30をシリンダ部23内に挿入する直前にシリンダ部23内に白血球成分が存在するように血液を遠心分離すれば、白血球成分を流路32f,42fを通じて回収することができる。
【0148】
実施形態1と同様に、スライダ31は、シリンダ部23の内周面との間で液密なシールが維持されるように内周面上を摺動する。このため、シリンダ部23の内周面に付着した白血球成分は、スライダ31が摺動することによって掻き取られる(または、削ぎ落とされる)。スライダ31が通過後、シリンダ部23の内周面には、白血球成分はほとんど残らない。従って、装置2は、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0149】
また、従来の装置(特許文献1参照)を用いた場合に行っていた、生理食塩水を用いた洗浄工程や、洗浄後に回収した生理食塩水の遠心分離工程を、本実施形態2では行うことなく、白血球成分の回収率を向上させることができる。従って、装置2を用いることにより、白血球成分を効率よく回収することができる。
【0150】
従来の装置では、貯留槽の第3貯留部(本実施形態1のシリンダ部23に相当する部分)の上下の開口を塞いだ状態で第3貯留部内の白血球成分をシリンジに吸引するので、第3貯留部から白血球成分が流出するための流路に加えて、第3貯留部が負圧にならないように、白血球成分の流出にともなって第3貯留部内に空気が流入するための空気流路を設ける必要があった。これに対して、本実施形態では、スライダ30で白血球成分を押し出して回収するので、第2貯留部22(シリンダ部23)に通じる空気流路は不要である。この結果、本実施形態2の装置2は、従来の装置に比べて構造が簡単である。
【0151】
装置2に回収器150(
図11参照)を接続することにより、実施形態1と同様に、白血球成分を回収することができる。シリンダ部23の下側の開口を遮断部材32で塞ぎ、その上側の開口にスライダ31を挿入したとき(
図23参照)、遮断部材32の真上に赤血球成分の層が存在していても、また、スライダ31の真下に血漿成分の層が存在していても、切替機構(クランプ157a,157b)を適切に切り替えることにより、第2容器152に、赤血球成分や血漿成分が実質的に混入していない、高純度の白血球成分を回収することができる。このため、実施形態1と同様に、採取した血液の赤血球成分の量や血漿量を計算する工程を省略したり、蛇腹構造28の圧縮変形量の調整精度を緩和したりすることができ、白血球成分の回収作業を簡単化することができる。
【0152】
本実施形態2の装置2は、実施形態1と異なり、シリンダ部23と副貯留部24との連通を遮断する遮断部材32を備える。このため、遮断部材32でシリンダ部23と副貯留部24との連通を遮断してしまえば、その後、装置2の姿勢(傾き)の変化や、スライダ31のシリンダ部23内への侵入等によって、シリンダ部23内の白血球成分と副貯留部24内の赤血球成分とが混じり合うことはない。このため、装置2を用いれば、熟練していない作業者であっても、白血球成分の回収率を安定的に向上させることができる。
【0153】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が本実施形態2に適宜適用されうる。
【0154】
3.各種変更実施形態
上記の実施形態1,2は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1,2に限定されず、適宜変更することができる。
【0155】
上記の実施形態1,2では、第2貯留部22が、内径が異なるシリンダ部23と副貯留部24とで構成されたが、第2貯留部22は、このような内径が異なる部分を有している必要はない。
【0156】
例えば、遮断部材32を備えない実施形態1では、副貯留部24がシリンダ部23と同じ内径を有していてもよい。この場合、シリンダ部23と副貯留部24との外見上の区別はなくなり、第2貯留部22の内径は、中心軸1a方向において一定となる(但し、蛇腹構造28を除く)。このような場合であっても、遠心分離後に、第2貯留部22内を、白血球成分の層と赤血球成分の層との境界までスライダ30を移動させれば、白血球成分を回収することができる。但し、血液は白血球成分より赤血球成分を多く含むから、上記の実施形態1のように、第2貯留部22に、シリンダ部23より大径の副貯留部24を設けることは、貯留槽20及び装置1の高さ(中心軸1aに沿った寸法)を小さくするのに有利である。
【0157】
実施形態2では、遠心分離後に、白血球成分の層と赤血球成分の層との境界またはその近傍で第2貯留部22を液密に分割する手段として、第2貯留部22内で移動可能な遮断部材32を用いたが、本発明はこれに限定されない。
【0158】
例えば、第2貯留部22を二分割する手段を、水平方向に膨張可能なバルーンで構成してもよい。バルーンは、白血球成分の層と赤血球成分の層との境界の位置近傍に予め固定しておく。バルーンが萎んだ状態で血液の遠心分離を行い、その後、バルーンを膨らませ、バルーンと第2貯留部22の内周面との間に液密なシールを形成させて、第2貯留部22内を二分割する。バルーンを膨らませるための空気又は液体(水、生理食塩水など)は、装置2の外からチューブ等を介して供給することができる。この構成のように、副貯留部24内を昇降する遮断部材32を用いない場合には、実施形態2においても、第2貯留部22の内径を、シリンダ部23と副貯留部24とで異ならせる必要はない。
【0159】
貯留槽20の内外を連通させ、白血球成分を回収するための流路を、実施形態1ではスライダ30を保持するロッド40内に設け、実施形態2では遮断部材32を保持する第2ロッド42内に設けたが、本発明の流路はこれらに限定されない。
【0160】
例えば、実施形態1,2において、スライダ30,31に、これを上下方向に貫通する貫通孔を設け、当該貫通孔に柔軟なチューブを接続し、当該チューブを貯留槽20外に導出してもよい。このように、流路をロッド40,42外に設けることは、ロッド40,42として中実の部材を用いることが可能になるので、ロッド40,42の強度の向上に有利である。
【0161】
実施形態2において、実施形態1と同様に、スライダ31及びこれを保持する第1ロッド41内に流路を形成してもよい。
【0162】
一般に、実施形態1のように白血球成分の層に対して上側に位置するスライダ30側から白血球成分を回収する構成は、実施形態2のように白血球成分の層に対して下側に位置する遮断部材32側から白血球成分を回収する構成より、流路内での白血球成分に対する異血液成分の混入が少なくなるので、高純度の白血球成分を回収するのに有利である。即ち、実施形態1では、スライダ30がシリンダ部23内を下降するのにしたがって、流路40fを、最初に血漿成分が、次いで白血球成分が、流れる場合があり、この場合、流路40f内での白血球成分に対する血漿成分の混入は比較的少ない。これに対して、実施形態2では、スライダ31がシリンダ部23内を下降するのにしたがって、流路32f,42fを、最初に赤血球成分が、次いで白血球成分が、流れる場合があり、この場合、流路32f,42f内での白血球成分に対する赤血球成分の混入は比較的多い。この違いは、定かではないが、比重や粘度等の血液成分の物性の相違に起因すると考えられる。従って、実施形態2において、実施形態1と同様に、スライダ31を介した流路を設ける構成は、高純度の白血球成分を回収するのに有利でありうる。また、スライダ31を保持する第1ロッド41内に流路を設ける構成は、遮断部材32を保持する第2ロッド42内に流路を設ける実施形態2の構成に比べて、流路を短くすることができる。これは、流路の内壁面に付着する白血球成分を少なくすることができるので、白血球成分の回収率の向上に有利である。
【0163】
スライダ30,31及び遮断部材32のためのロック機構の構成は、上記の実施形態1,2に限定されない。例えば、スライダ30,31が初期位置にある状態(
図1、
図2、
図12、
図13参照)において、トップキャップ60,260から上方に突出したロッド40,41の部分に半径方向に沿って突出した突起を設け、当該突起とトップキャップ60,260の天板61との間に、着脱可能なスペーサ部材を装着する。スライダ30,31を下降させるときには、スペーサ部材は取り外される。この構成は、ロッド40,41にロック溝40g,41gを設ける必要がなくなるので、ロック溝40g,41gを設けたことによるロッド40,41の強度の低下や、ロック溝40g,41gがOリング54,55a,55b,57a,57bと干渉することによるスライダ30,31を下降させる作業の操作性の低下、等の問題を解消しうる。同様に、遮断部材32がシリンダ部23の下側の開口を塞いだ状態(
図21A、
図21B)において、トップキャップ260から上方に突出した第2ロッド42の部分に半径方向に沿って突出した突起を設け、当該突起とトップキャップ260の天板61との間に、着脱可能なスペーサ部材を装着してもよい。この構成も、第2ロッド42に第2ロック溝42gを設ける必要がなくなるので、第2ロック溝42gを設けたことによるロッド42の強度の低下や、第2ロック溝42gがOリング56と干渉することによる遮断部材32を上昇させる作業の操作性の低下、等の問題を解消しうる。
【0164】
スライダ30,31及び遮断部材32を保持するロッドの数は、上記の実施形態に限定されず、任意に変更しうる。例えば、実施形態2において、スライダ31を1本の第1ロッド41で保持し、遮断部材32を2本の第2ロッド42で保持してもよい。
【0165】
上記の実施形態1,2では、シリンダ部23の内周面との間に液密なシールを形成するために、スライダ30,31にはガスケット50,51が装着され、遮断部材32にはOリング52が装着されていた。但し、スライダ30,31及び遮断部材32自身をゴム弾性を有する材料(エラストマーとも呼ばれる)で構成することにより、ガスケット50,51及びOリング52を省略することができる。この場合、使用可能なゴム弾性を有する材料としては、特に制限はないが、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等のゴムや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0166】
上記の実施形態1,2では、血液を、トップキャップ60,260に設けられた注入ポート64aを介して貯留槽20に注入した。しかしながら、血液を注入する方法はこれに限定されない。例えば、血液を、白血球成分を回収するための流路40f,42f,32fを介して注入してもよく、トップキャップ60,260を貯留槽20に装着する前に、貯留槽20の開口25を介して注入してもよい。これらの場合、注入ポート64aを省略することができる。
【0167】
白血球成分を回収する容器は、
図11に示した回収器150以外の任意の容器であってもよい。
【0168】
上記の実施形態1,2では、蛇腹調整機構は、蛇腹構造28を上下方向に圧縮し、その圧縮量を調整するように構成されていたが、蛇腹構造28を上下方向に伸長させ、その伸長量を調整するように構成されていてもよい。
【0169】
上記の実施形態1,2では、蛇腹構造28の伸縮量を調整する蛇腹調整機構を構成する雄ネジ93及び雌ネジ83が支持部材90及びボトムキャップ80にそれぞれ形成されていたが、支持部材90に雌ネジが形成され、ボトムキャップ80に雄ネジが形成されていてもよい。
【0170】
雄ネジ93が支持部材90以外の部材に設けられていてもよく、また、雌ネジ83がボトムキャップ80以外の部材に設けられていてもよい。例えば、蛇腹調整機構を構成する雄ネジ93及び雌ネジ83の少なくとも一方を貯留槽20に設けてもよい。例えば、雄ネジ93を貯留槽20の蛇腹構造28よりも上側の位置に設けることができる。この場合、貯留槽20が、遠心分離時の遠心力によって変形しない程度の強度を有する場合には、支持部材90を省略することができる。あるいは、雄ネジ93を、貯留槽20の蛇腹構造28よりも下側の位置に設けることができる。支持部材90のスカート部92を下方に延長し、その内周面に雌ネジを形成しうる。貯留槽20に対して支持部材90を回転させて蛇腹構造28の伸長量を調整することができる。この場合、ボトムキャップ80を省略することができる。
【0171】
上記の実施形態1,2では、蛇腹調整機構は、支持部材90とボトムキャップ80との回転位置や雄ネジ93と雌ネジ83との螺合深さによって蛇腹構造28の圧縮量を調整するよう構成されていたが、これ以外の方法で蛇腹構造28の圧縮量を調整してもよい。たとえば、ボトムキャップ80の底板80bと貯留槽20の底板24bとの間に、蛇腹構造28の必要な圧縮量に応じた厚みを有する板状部材を介在させて、支持部材90とボトムキャップ80とを嵌合させる方法が考えられる。蛇腹構造28の圧縮量は、板状部材の積層数を変えることにより、または、厚みが異なる板状部材に交換することにより、調整することができる。この方法では、板状部材によってボトムキャップ80の底板80bが実質的に底上げされるため、螺合深さを調節せずとも、支持部材90にボトムキャップ80を装着した時点で蛇腹構造28を所望量圧縮させることができる。
【0172】
貯留槽20の容積を調整するための容積調整機構は、蛇腹構造28に限定されない。例えばダイアフラム、ピストン、バルーンなどで容積調整機構を構成することができる。容積調整機構は、例えば副貯留部24内に又はこれに隣接して設けることができる。遠心分離前に血液のヘマトクリット値を求め、遠心分離後にバフィーコートがシリンダ部23内に形成されるように、容積調整機構を用いて貯留槽20の容積を調整することができる。
【0173】
実施形態1の上述した使用方法では、白血球成分を貯血槽20外に押し出すために、スライダ30をシリンダ部23で下降させた。しかしながら、実施形態1の装置1を用いて白血球成分を貯血槽20外に回収する方法は、これに限定されない。即ち、
図9に示すようにスライダ30をシリンダ部23の上側(第1貯留部21側)の開口に嵌入させて第1貯留留21と第2貯留部22との間の連通を遮断した状態で、容積調整機構(蛇腹構造28)を用いて第2貯留部22の容積を減少させてもよい。第2貯留部22の容積が減少するのにしたがって、スライダ30の下面に接する血液成分(例えば白血球成分)を、流路40fを通って貯留槽20外に流出させることができる。装置1のこの使用方法(以下「別の使用方法」という)では、スライダ30を、スライダ30とシリンダ部23の内周面との間に液密なシールを維持しながらシリンダ部23内を移動させる必要がない。これは、シリンダ部23の内周面の精度を緩和することを可能にするので、貯血槽20の全体を例えばブロー成形法等により効率よく且つ安価に製造するのに有利である。なお、別の使用方法では、スライダ30がシリンダ部23内を移動しないので、実施形態1の上記使用方法とは異なり、スライダ30が、シリンダ部23の内周面に付着した白血球成分を掻き取ることはない。しかしながら、シリンダ部23の下側(副貯留部24側)の開口を開放した状態で容積調整機構を用いて副貯留部24の容積を減少させるので、白血球成分と赤血球成分とが混じり合う可能性は低い。この観点から、装置1の別の使用方法は、従来の装置を使用する場合に比べて、白血球成分の回収率を向上させることが可能である。
【0174】
本発明では、貯留槽20の容積を調整する容積調整機構を省略してもよい。但し、装置1を用いて上記の別の使用方法を行う場合には、容積調整機構を省略することはできない。
【0175】
貯留槽20の形状を維持するための支持部材90の構成は、上記の例に限定されず、任意である。例えば、支持部材は、上記の実施形態1,2のように周方向に2分割されたものに限定されず、周方向に3以上に分割された3以上の部材で構成されていてもよい。支持部材が、周方向において互いに離間した複数の柱状の部材で構成されていてもよい。貯留槽20を構成する部品に支持部材を一体的に形成するなどによって、貯留槽20が、遠心分離時の遠心力によって変形しない程度の強度を有する場合には、貯留槽20とは別部材としての支持部材を省略してもよい。