(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヨークの両端部であって、前記コイルからの張り出し部には、上方に向けて立ち上がる立ち上げ部が形成されることを特徴とする請求項1記載のピックアップセンサ。
【背景技術】
【0002】
従来より、何らかの構造体の振動を測定する際には、ピックアップセンサが用いられている。ピックアップセンサとしては、種々の形態が存在するが、感度が良好な圧電素子(ピエゾ素子)が用いられた加速度センサが広く使用されている。
【0003】
このような加速度センサとしては、例えば、加速度を検出するセンサ素子とセンサ素子を固定する可撓部材を有するセンサ部と、センサ素子の出力信号を処理する回路基板とを有し、センサ部と回路基板とが離間して積層配置される加速度センサが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
ところで、このような加速度センサは、微振動を検知するために、極めて感度が高い。例えば、通常のセンサ部は、薄いシート状の圧電素子を電極で挟んだ構造であり、センサ部の重量は一般的に1gにも満たない。このように、従来の加速度センサは、センサ部が軽量であるため、微振動であっても検知することができる。
【0005】
しかし、このような従来のピックアップセンサは、測定対象である振動を検出するとともに、周囲の空気振動の影響も受けやすい。例えば、騒音の大きな場所で使用しようとすると、測定対象の構造体の持つ振動とともに、空気振動(ノイズ)も検出してしまうため、必ずしも正確な測定が可能ではなかった。
【0006】
一方、発明者らは、骨伝導スピーカをピックアップセンサとして利用することで、効率良く検査対象の振動のみを検知することができることを見出した。通常、骨伝導スピーカは、電気信号を振動に変換し、骨に直接振動を伝えることで、空気振動を介さずに音を聞くものである。このような骨伝導スピーカは、骨以外の振動対象へ振動を伝えることで、対象物全体をスピーカとして機能させることも可能である。
【0007】
発明者らは、これを逆に利用し、骨伝導スピーカを振動対象物へ接触させることで、振動を取得し、電気信号に変換することで、振動を検出することができることを見出した。この際、骨伝導スピーカであれば、周囲の空気振動(音)を拾わずに、振動対象物の振動のみを効率良く検出することが可能であることを見出した。
【0008】
通常の骨伝導スピーカは、振動部を対象物へ接触させなければ、空気を振動させて音を発することはほとんどない。すなわち、骨伝導スピーカは、何らかの振動対象物に接触させなければ、振動を音として空気中に発することはない。
【0009】
この性質を利用して、逆に、骨伝導スピーカをピックアップセンサとして使用すれば、周囲の空気振動を拾うことがないため、空気振動を電気信号に変換することはほとんどない。このため、騒音の大きな場所に配置された構造体にピックアップセンサを設置しても、周囲の騒音の影響を受けることがなく、対象物の機械的な振動のみを効率良く検出することができる。
【0010】
このような骨伝導スピーカとしては、例えば、ヨークに延長部を形成するとともに、上記ヨークに音声コイルと中心磁極を形成し、その上部には鉄片が付着された振動板が固定され、上記鉄片の上部に永久磁石を付着させたコンパクトな骨伝導スピーカが提案されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の骨伝導スピーカは、あくまでも骨などに振動を伝達して、音を認識できれば良いため、それほどの感度は必要がない。しかし、振動を検出するピックアップセンサとして使用するためには、ある程度の細かな感度も必要となる。すなわち、従来の圧電センサのような極めて高い感度までは不要であるが、従来の骨伝導スピーカに対しては、より高い感度が望まれる。
【0013】
骨伝導スピーカの感度を向上させる方法としては、例えば、小さな振動でも電気信号として取り出せるように、内部の磁石の磁力を大きくして、小さな振動でも、磁界の変化による起電力を大きくすることで、感度を向上させる方法が考えられる。しかし、骨伝導スピーカの内部の磁石を大きくしていくと、装置が大型化するだけでなく、磁石の磁力が大きくなりすぎるため、構造上、振動板とコイルとが強く引きつけ合う。この結果、振動板が、かえって振動しにくくなり、感度が低下するおそれがある。このため、磁石を大きくすることなく、より感度の高い骨伝導スピーカタイプのピックアップセンサが望まれている。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、小型で感度の良好な骨伝導スピーカタイプのピックアップセンサ及び骨伝導スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、中心磁極を有するヨークと、前記中心磁極の周囲に配置されるコイルと、前記コイル及び前記中心磁極の上部に配置される振動板と、前記振動板の上部に固定される、磁性体からなる第1金属板と、前記第1金属板の上部に配置される永久磁石と、前記永久磁石の上部に配置され、磁性体からなる第2金属板と、を具備し、前記第1金属板及び前記第2金属板は、前記永久磁石よりもサイズが大きいことを特徴とするピックアップセンサである。
【0016】
前記ヨークの両端部であって、前記コイルからの張り出し部には、上方に向けて立ち上がる立ち上げ部が形成されてもよい。
【0017】
前記第1金属板と、前記第2金属板の長手方向が、互に略直交してもよい。
【0018】
第1の発明によれば、骨伝導スピーカタイプのピックアップセンサであるため、周囲の雑音の影響を受けにくく、振動対象の振動のみを効率良く検出することができる。このため、騒音の大きな場所でも、感度良く使用することができる。
【0019】
特に、第2金属板を設けることで、磁石のサイズを変えることなく、磁界を広げることができるため、より高い感度で振動を検出することができる。このため、従来の骨伝導スピーカと比較して、微振動であっても検出することができる。
【0020】
また、ヨークの両端部に立ち上げ部を形成することで、コイルの中心部分から立ち上げ部を通って磁場が形成されるため、より効率的に振動板の振動をコイルの電磁振動に変換することができる。
【0021】
また、第1金属板と第2金属板との長手方向の向きを略直交させることで、より効率良く磁界を広げることができる。
【0022】
第2の発明は、中心磁極を有するヨークと、前記中心磁極の周囲に配置されるコイルと、前記コイル及び前記中心磁極の上部に配置される振動板と、前記振動板の上部に固定される、磁性体からなる第1金属板と、前記第1金属板の上部に配置される永久磁石と、前記永久磁石の上部に配置され、磁性体からなる第2金属板と、を具備し、前記第1金属板及び前記第2金属板は、前記永久磁石よりもサイズが大きいことを特徴とする骨伝導スピーカである。
【0023】
第2の発明によれば、より鮮明な音を発生させることが可能な骨伝導スピーカを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型で感度の良好な骨伝導スピーカタイプのピックアップセンサ及び骨伝導スピーカを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るピックアップセンサ1の分解斜視図であり、
図2は、ピックアップセンサ1の平面図である。また、
図3は、
図2のA−A線断面図であり、
図4は、
図2のB−B線断面図である。なお、
図1においてはケースの図示を省略する。また、
図3、
図4において、ケース29は、一体で図示するが、ケースは、上部が開放した箱体と、箱体を塞ぐ蓋部とから構成されてもよい。また、以下の図において、配線などの図示を省略する。また、中心磁極11から見て、第2金属板25側を「上方」として説明する。
【0027】
ピックアップセンサ1は、主に、ヨーク3、中心磁極11、コイル13、振動板15、第1金属板17、永久磁石23、第2金属板25等から構成される。ヨーク3等は、ケース29内に収容される。
【0028】
ヨーク3の略中央部には、上方に向けて起立する中心磁極11が配置される。中心磁極11の周囲には、コイル13が設けられる。
【0029】
ヨーク3は、互い直交する方向の両端部に張り出し部7a、7bを有する。すなわち、ヨーク3は、4方向に張り出し部7a、7bが形成される。なお、対向する一対の張り出し部7aには、上方に向けて立ち上げ部5aが形成される。また、張り出し部7aと直交する方向に対して対向する一対の張り出し部7bには、上方に向けて立ち上げ部5bが形成される。立ち上げ部5bは、上面がコイル13および中心磁極11よりも高さが高くなるように形成される。立ち上げ部5bの上面には、ネジ孔9が形成される。なお、立ち上げ部5aは、必ずしも必要ではない。
【0030】
ヨーク3の上方には、振動板15が配置される。平面視において、振動板15は、ヨーク3と略同様の略十字形状を有する。すなわち、振動板15も4方向に張り出した形状を有する。振動板15の対向する一対の張り出し部には孔19が形成される。
【0031】
図4に示すように、孔19をヨーク3(立ち上げ部5b)のネジ孔9と重ね合わせ、ネジ35によって、振動板15がヨーク3に対して固定される。振動板15は、例えば薄い金属板であり、一部に貫通孔が形成される。振動板15の貫通孔の上部には、第1金属板17が配置される。第1金属板17は、振動板15の貫通孔の両側にまたがるように配置され、第1金属板17の両端が、振動板15に対して例えばスポット溶接で固定される。なお、第1金属板17は、略長方形であり、長手方向が、孔19の形成方向とは直交する方向に向くように配置される。すなわち、第1金属板17は、ヨーク3の張り出し部7aの上方をまたがるように配置される。
【0032】
第1金属板17の略中央の上方には、永久磁石23が配置される。すなわち、
図3、
図4に示すように、永久磁石23は、中心磁極11に対応する部位に配置される。なお、永久磁石23の形状は円形でなくてもよく、四角形等のいずれの形状であってもよい。
【0033】
永久磁石23の上方には、第2金属板25が配置される。第1金属板17と第2金属板25は略長方形であり、第1金属板17と第2金属板25のサイズは、永久磁石23よりも大きい。すなわち、永久磁石23に対して、第1金属板17と第2金属板25は、長手方向において、永久磁石23よりもはみ出すように配置される。なお、第1金属板17の長手方向と、第2金属板25の長手方向は、略直交する向きで配置される。すなわち、第1金属板17は、ヨーク3の両端の張り出し部7aの上方にまたがるように配置され、第2金属板25は、ヨーク3の両端の張り出し部7bの上方にまたがるように配置される。
【0034】
第1金属板17の両端部近傍には、ネジ孔21が形成される。
図3に示すように、ケース29に収容された際、第1金属板17は、ケース29に対してネジ31で固定される。なお、ヨーク3、第1金属板17、第2金属板25は、いずれの磁性体であり、それぞれの形状は、図示した形態には限られない。
【0035】
第2金属板25は、ケース29の内面と接触する。この際、ケース29の内面には、第2金属板25の形状に対応した凹部33が形成される。凹部33は、第2金属板25に対応した部位に形成され、第2金属板25は、凹部33に嵌まり込むようにして、凹部33の内面と接触する。このようにすることで、第2金属板25の向きが固定される。
【0036】
この際、
図3、
図4に示すように、振動板15の下面と、中心磁極11及びコイル13の上面との間にクリアランスが形成される。また、立ち上げ部5aと振動板15との間にもクリアランスが形成される。このように、振動板15は、立ち上げ部5bにおけるネジ35による固定部以外のヨーク3や、中心磁極11及びコイル13と接触せずに、振動可能である。
【0037】
図3、
図4に示すように、永久磁石23の両側に、第1金属板17及び第2金属板25がそれぞれ異なる方向に張り出しているため、永久磁石23の磁力線は、第1金属板17及び第2金属板25から、ヨーク3の張り出し部7a、7bを通り、中心磁極11を通過して再び永久磁石23に戻って磁界を形成する。この状態では、その磁力により一定の力で第1金属板17が中心磁極11に常に引き付けられている状態である。
【0038】
この状態で振動が加えられると、振動板15とコイル13との距離が変化して、周囲の磁界が変化する。これにより、中心磁極11を通過する磁力が変化して、これがコイル13に加わることで、起電力が発生して、コイル13に電流が流れる。このように、振動を電気信号に変換することで、振動を検出することができる。
【0039】
ここで、発明者は、磁力を変えなくても、磁界の範囲を広げることで、ピックアップセンサの感度を向上させることができることを見出した。すなわち、第2金属板25を配置することで、永久磁石23の上方からヨーク3の張り出し部7b(立ち上げ部5b)への磁界をより広げることができ、これにより、ピックアップセンサの感度が向上することを見出した。
【0040】
例えば、第2金属板25が配置されていない状態では、第1金属板17(又は永久磁石23)とヨーク3の張り出し部7aとの間に磁界が発生するが、張り出し部7bの方向へは磁界を広げることができない。これに対し、第2金属板25を配置すると、第1金属板17(又は永久磁石23)に加え、さらに、ヨーク3の張り出し部7bと、高さ方向に離れた部位である第2金属板25の端部との間にも磁界が発生する。この結果、第2金属板25がない場合と比較して、磁界をより広げることができ、より小さな振動でも、磁界が変化しやすくなる。このため、第2金属板25によって感度を向上させることができるものと考えられる。
【0041】
以上、本実施の形態によれば、骨伝導スピーカとして使用可能な媒体をピックアップセンサとして使用するため、周囲の雑音やノイズの影響を受けにくいピックアップセンサを得ることができる。この際、永久磁石23の上方(中心磁極11とは逆側)に第2金属板25を配置することで、磁界を広げ、感度を向上させることができる。
【0042】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5(a)は、第2の実施形態に係るピックアップセンサ1aのヨーク3等の平面図(振動板15等の透視図)、
図5(b)は、ピックアップセンサ1aの断面図(
図3に対応する)である。なお、以下の説明において、ピックアップセンサ1と同様の機能を奏する構成については、
図1〜
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
ピックアップセンサ1aは、ピックアップセンサ1と略同様の構成であるが、中心磁極11及びコイル13が2つ併設される点で異なる。
【0044】
ヨーク3の張り出し部7aの方向には、中心磁極11が2つ併設され、それぞれの中心磁極11の外周にコイル13が配置される。ヨーク3の上方には、二つのコイル13にまたがるように、第1金属板17が配置される。
【0045】
なお、中心磁極11及びコイル13の併設数は、二つには限られない。例えば、
図6に示すピックアップセンサ1bのように、3つ併設してもよい。また、中心磁極11及びコイル13の併設方向を、第1金属板17の長手方向と直交する方向としてもよい。
【0046】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、ヨーク3に、中心磁極11とコイル13とを複数配置してもよい。
【0047】
次に、上述したピックアップセンサの利用方法について説明する。
図7は、ピックアップセンサ1を用いた消音システム40を示す図である。なお、以下の説明では、ピックアップセンサ1を用いた例を説明するが、ピックアップセンサ1a、1bも適用可能である。
【0048】
消音システム40は、主に、構造体41a、41b、ピックアップセンサ1、骨伝導スピーカ45、アンプ49等から構成される。消音システム40は、例えば、空間47が部屋であり、騒音発生部43が、隣接する他の空間(例えば外部の道路など)である例を示す。なお、騒音発生部43とは、必ずしも騒音の発生源そのものでなくてもよく、騒音が生じている空間や場所などのすべてを含むものとする。
【0049】
空間47と騒音発生部43とは、構造体41a、41bで仕切られている。図示したように、構造体41aと構造体41bは別体であり、構造体41bは、構造体41aから離間して空間47に近い側にほぼ平行に配置される。構造体41a、41bは、略同サイズであり、例えば部屋の壁である。なお、構造体41aが、部屋の壁部であって、構造体41bが壁部の空間47内に配置された簡易壁やパーテションであってもよい。また、部屋の壁が中空壁の場合には、構造体41aが外壁部であり、構造体41bが内壁部であってもよい。また、構造体41a、41bが2重窓であってもよい。すなわち、本実施形態における構造体41a、41bは、空間47と騒音発生部43の少なくとも一部を仕切るものであればいずれの形態であってもよく、天井や床などの上下の仕切り部も含み、また、壁の一部の構造も含むものである。
【0050】
構造体41a、41bは、それぞれ、空間47を覆う他の構造体(壁や天井、床を構成する構造体)に対して、縁切り部51a、51bを介して接続される。縁切り部51a、51bは、例えば、制振部材や弾性体であり、構造体41a、41bの振動が、他の構造体へ伝達することを抑制する。
【0051】
構造体41aには、ピックアップセンサ1が取り付けられる。前述したように、ピックアップセンサ1は、構造体41aの振動を取得して電気信号に変換する。
【0052】
ピックアップセンサ1はアンプ49に接続される。アンプ49は、ピックアップセンサ1で取得した振動情報に対して、位相を調整可能な増幅回路を有する。なお、処理時間を早めるためには、デジタル回路であってもよく、アナログ回路であってもよい。アンプ49では、ピックアップセンサ1で取得した振動を逆位相に変換して、増幅させて電気信号を発生させる。
【0053】
アンプ49には、骨伝導スピーカ45が接続される。アンプ49から出力された電気信号は骨伝導スピーカ45に伝達され、骨伝導スピーカ45を振動させる。骨伝導スピーカ45は、構造体41bに取り付けられる。したがって、骨伝導スピーカ45によって、構造体41bの全体を振動させることができる。なお、骨伝導スピーカ45は、ピックアップセンサ1と同様の構造を有し、構造体41b全体をスピーカとして機能させることができる。
【0054】
なお、アンプ49は、構造体41a、41bの距離や材質などに応じて、電気信号の増幅量や、必要に応じて、振動の遅延時間等の調整やフィルターを行うことができる。例えば、アンプ49は、構造体41aと構造体41bの距離に応じた時間差で、構造体41bを振動させることが望ましい。
【0055】
次に、消音システム40の機能について説明する。騒音発生部43で発生した騒音は、構造体41a、41b等の壁を介して空間47に侵入する。その際、騒音発生部43における振動源の振動が、空気振動で構造体41a、41bに伝わり、構造体41a、41bの振動によって、空間47内の空気を振動させる。
【0056】
これに対し、消音システム40は、部屋の室外からの音による構造体41aの振動をピックアップセンサ1で取得し、アンプ49で位相を反転させて骨伝導スピーカ45を振動させる。この際、構造体41aから空気振動により伝わった、構造体41bの振動と、骨伝導スピーカ45による構造体41bの振動とが打ち消し合うことで、構造体41bの振動を抑制することができる。したがって、室外から、構造体41a、41bを介して空間47内へ侵入する騒音を低減することができる。
【0057】
このように、消音システム40によれば、騒音発生部43で発生した騒音が空間47へ侵入することを抑制することができる。この際、従来のように、騒音の空気振動を取得して、これと逆位相の振動を、スピーカによる空気振動でノイズキャンセルする場合と比較して、騒音の侵入部の構造体自体を振動させるため、空間47の全体に対して、効率良く消音することができる。
【0058】
また、構造体41aは、縁切り部51aによって、他の構造体への振動の伝達が抑制される。このため、構造体41aの振動が、部屋の他の壁等へ伝達することを抑制することができる。同様に、構造体41bは、縁切り部51bによって、他の構造体への振動の伝達が抑制される。このため、骨伝導スピーカ45によって生じる振動も、縁切り部51bによって、部屋の他の壁等へ伝達することを抑制することができる。
【0059】
次に、他の利用方法について説明する。
図8は、トランシーバ50を示す図である。トランシーバ50は、例えば、ヘッドセットにピックアップセンサ1が固定されており、顔の骨の部位に接触される。使用者がこの状態でしゃべると、骨の振動をピックアップセンサ1が検出して、電気信号に変換する。すなわち、ピックアップセンサ1は、マイクとして利用することができる。一方、利用者は、ピックアップセンサ1の機能を切り替えて、スピーカとして使用することもできる。すなわち、ピックアップセンサ1を骨伝導スピーカとして使用することができる。
【0060】
より詳細には、利用者が、ピックアップセンサ1を着用した状態でしゃべると、骨の振動をピックアップセンサ1で検出することができる。得られた電気信号は、図示を省略した無線通信部を介して、他の者の無線通信部へ音声情報が送信される。他の者は、同様にして装着されたピックアップセンサ1を骨伝導スピーカとして機能させることで、音声を、顔の骨を介して聞くことができる。このように、ピックアップセンサ1を、マイク(振動を取得する)機能と、スピーカ(振動を発生させる)機能とで切り替えることで、会話が可能となる。
【0061】
このようなトランシーバ50によれば、騒がしい場所であってもピックアップセンサ1は、接触している顔の骨の振動のみを検出するため、周囲の雑音の影響を受けずに確実に音声のみを検出し、これを聞くことができる。このため、従来の音声マイクを利用したトランシーバと比較して、騒音の大きな場所でも鮮明に音声のみを送受信することができる。
【0062】
なお、ピックアップセンサ1の利用方法は上述した例には限られない。例えば、配管やコンクリート構造物の非破壊検査のためのピックアップセンサとしても利用できる。また、例えば工場内の設備や、自動車などの乗り物などの振動を継続的に検出することで、異常をより早く検知することができる。この際、本発明のピックアップセンサは、周囲の空気振動による音の影響を受けにくいため、従来の加速度センサを用いた方法と比較して、騒音のある場所でも、効率良く検査対象の振動を検出することができる。
【実施例】
【0063】
従来のピックアップセンサと本発明に係るピックアップセンサの感度について比較した。
図9は、評価装置60を示す概略図である。加振機63で加振される振動体に、ピックアップセンサ100とピックアップセンサ1とを配置して、アナライザ61によって、検出される波形を確認した。
【0064】
加振機63は、20〜20kHzで振動を変化させた。ピックアップセンサ100は、ピックアップセンサ1に対して、第2金属板を有さない構成であり、おおよそ特許文献2に記載の構造の骨伝導スピーカをピックアップセンサとして用いた。
【0065】
この結果、ピックアップセンサ1は、ピックアップセンサ100と比較して、検出された音圧が約3割増加した。
【0066】
同様に、加振機63を停止させ、ピックアップセンサ1、100を骨伝導スピーカとして機能させ、圧電センサで振動を測定した。この結果、ピックアップセンサ1を用いた場合には、ピックアップセンサ100を用いた場合と比較して、3dB以上の向上が確認された。また、音声の明瞭度が若干向上した。個人差もあるが、特に、子音は大幅に聞き取りやすくなった。このように、本発明に係るピックアップセンサは、従来の用途である骨伝導スピーカとして使用しても、より鮮明な音声を発することが可能となる。
【0067】
これは、前述したように、永久磁石23の上方に、永久磁石23からはみ出すようにして配置された第2金属板25によって、磁界が広げられ、この結果、感度等が上昇したことによるものと考えられる。
【0068】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【解決手段】 ヨーク3の上方には、振動板15が配置される。振動板15の上面には、凹部19が形成される。凹部19には、第1金属板17が配置される。第1金属板17の略中央の上方には、永久磁石23が配置される。また、永久磁石23の上方には、第2金属板25が配置される。なお、第1金属板17と第2金属板25のサイズは、永久磁石23よりも大きい。すなわち、永久磁石23に対して、第1金属板17と第2金属板25は、長手方向において、永久磁石23よりもはみ出すように配置される。