(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618234
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】木製建具及び木製建具の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/10 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
E06B3/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-21671(P2013-21671)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-152474(P2014-152474A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月1日
【審判番号】不服2018-13212(P2018-13212/J1)
【審判請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145437
【氏名又は名称】株式会社ウッドワン
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】中本 祐昌
(72)【発明者】
【氏名】増田 望
(72)【発明者】
【氏名】原田 一宏
(72)【発明者】
【氏名】若木 智広
(72)【発明者】
【氏名】大津 克久
【合議体】
【審判長】
森次 顕
【審判官】
西田 秀彦
【審判官】
小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】
実開平1−119786(JP,U)
【文献】
実公昭27−7750(JP,Y1)
【文献】
実開平6−16689(JP,U)
【文献】
特開2010−101152(JP,A)
【文献】
特開平8−270331(JP,A)
【文献】
実開昭54−156417(JP,U)
【文献】
実開昭58−191297(JP,U)
【文献】
WOODONE,無垢の木の内窓MOKUサッシ,日本,2011年 7月,1−25頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B3/04−3/46、3/50−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦框と横框とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製サッシである木製建具であって、
前記縦框の長手方向の内側に、グレチャンを装着したガラスの固定用の溝及び前記横框に形成されたほぞが嵌合するほぞ穴が、幅及び深さが同一である実質的に同一の溝となるように形成されており、前記縦框の溝及びほぞ穴に防水性塗膜を形成する塗料による防水処理が施されていることを特徴とする木製建具。
【請求項2】
縦框と横框とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製サッシである木製建具の製造方法であって、
前記縦框の長手方向の内側に、グレチャンを装着したガラスの固定用の溝及び前記横框に形成されたほぞが嵌合するほぞ穴を、幅及び深さが同一である実質的に同一の溝となるように形成し、前記縦框の溝及びほぞ穴に防水性塗膜を形成する塗料による防水処理を施すことを特徴とする木製建具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木製サッシのような、縦框と横框とを連結して組み立てられる木質建具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、我が国では木製のサッシが主流を占めていたが、これらは強度や精度が低く、耐久性や気密性に劣ったものであった。これに対して、数十年前にアルミサッシが導入されると、強度に優れ、高精度で耐久性や気密性に優れた特長が注目され、大量生産により安価で提供されることもあって急速に普及し、現在は北海道等の寒冷地を除けば、アルミサッシが採用される場合が大半となっている。
【0003】
その後、木材の持つ風合いや断熱性をセールスポイントにしつつ木製サッシにも改良が加えられて、精度や気密性の面ではアルミサッシと比較して遜色ないレベルまで向上してきたが、価格面や耐久性がネックとなって、広く普及するには至っていない。このうち耐久性に関していえば、塗料自体の改良や製造時の精度向上、工場での一体接着製造方法等の改良が加えられ、かなりのレベルまで向上しているものの、アルミサッシのようなメンテナンスフリーには及んでいない。
【0004】
このような耐久性の問題は、素材である木材の持つ特質に起因している。木材は乾燥した状態では極めて長期間安定した性能を保つことが可能で、この点、アルミサッシの素材であるアルミニウムに劣ることはない。しかし、一旦水分の影響を受けると、吸湿による寸法変化やその結果としての反りや狂い、割れ、腐朽菌侵入による変色、腐朽等が進行し、数年を経ずして、精度の低下、開閉や施錠の困難、外観の悪化、さらにはサッシとしての強度の低下まで発生してしまう。
【0005】
この劣化対策として、古くから塗装による表面保護が行われている。当初は数年毎に塗り替えの必要な、耐久性の劣る塗料が用いられたが、近年ではシリコン系やテフロン(登録商標)系等、10年近く塗り替えの不要な高耐久性塗料が用いられるようになっている。
【0006】
なお、木材自体の改質方法として、木材に樹脂を注入硬化させるWPC(Wood Plastic Combination)も考えられるが、重量増加が顕著な上に、断熱性が低下して、木材の持つ風合いが大きく損ねられ、外観がプラスチックに近似してしまうので、一般的とは言い難い。
【0007】
一方、製造面では、縦框及び横框にほぞ等の接合部分を高精度で加工し、接着一体化する方法が開発された。この方法によれば、隙間が殆ど無い高精度加工が可能で、接着一体化後に全体を塗装することで、木材内部に水分が浸入可能な微細な隙間に至るまで封印可能とされている。
【0008】
図9は、このような縦框と横框とを接着一体化するタイプの木製サッシを示す正面図であり、
図10は
図9のA−A拡大断面図である。
図9に示す木製サッシ1は、左右の縦框10,10と上下の横框20,20とを連結して組み立てられている。縦框10及び横框20には、図示しないほぞ及びほそ穴が形成されており、それらを嵌合させて接着剤で接着一体化するようになっている。
【0009】
なお、縦框10と横框20との連結段階では、縦框10及び横框20が接着一体化された状態であるが、ガラス2まで完全に一体化してしまうと、ガラス2が破損した場合に交換が不可能で、縦框10及び横框20ごと作り直す必要がある。そこで、これを避けるために、
図10に示すように、ガラス2の固定用に横框20に凹部26を設け、凹部26を利用してガラス2を面縁3で押さえる構造が用いられる。縦框10についても同様である。面縁3は、数回の着脱が可能なように、目立たないサイズの木ネジ4で縦框10及び横框20に固定されている。ガラス2が破損して交換する場合には、木ネジ4を緩めて面縁3と破損したガラス2を外し、新しいガラス2を装着後、再び面縁3を装着し木ネジ4を締めて固定する。
【0010】
また、ボルトナット等の金具を用いた組立方法も実施されている。この方法は、元々接着が不可能なアルミサッシの組立方法が木製サッシに応用されたもので、当初は縦框と横框とを木ネジ等の簡単な金具で固定するだけであった。しかしこれでは、一旦ガラス交換等で木ネジを緩めると、ネジ穴が拡大して再度木ネジを締めても強度が大幅に低下してしまう。そこで、数回の着脱が可能なように、一方の框材に予め削孔して特殊ナットや鬼目ナットと称されるアンカー効果のあるナットを埋設し、他方の框材にも削孔してボルトを挿入する方法が考案された(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0011】
図11は、このような縦框と横框とをボルトナット等の金具を用いて組み立てるタイプの木製サッシを示す正面図である。また、
図12は縦框と横框の連結部分を示す拡大断面図であり、
図13は
図11のB−B拡大断面図である。
図11に示す木製サッシ1は、左右の縦框10,10と上下の横框20,20とを連結して組み立てられている。縦框10及び横框20には、図示しないほぞ及びほそ穴が形成されており、それらを嵌合させて、金具を用いて連結するようになっている。
【0012】
図12に示すように、横框20には挿入穴23が削孔されており、外周に食込突起を有する鬼目ナット24が挿入穴23に埋設されている。一方、縦框10には挿入穴13が削孔されており、ボルト14が挿入穴13に挿入されるとともに、鬼目ナット24の内周に形成された雌ネジに嵌め合わされている。以上により、縦框10と横框20とが連結されている。
【0013】
この方法によれば、輸送時には縦框10と横框20とを分離した状態で運搬し、施工現場で別途手配したガラス2と組み合わせることが可能となる。また、ガラス交換等でボルト14を緩めて分解しても、再度締めれば元とかわらない強度が得られる。
【0014】
なお、ボルトナットによる組立の場合には、
図13に示すように、グレチャン5を装着したガラス2を横框10及び縦框20に形成された溝内に挿入し、組み合わせた状態でボルト14を締めることにより、ガラス2を固定することができる。従って、面縁を使用しなくてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実開昭60−11985号公報
【特許文献2】実開昭63−20514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
サッシは、暴風雨の風圧、雨水、直射日光、温度変化等、極めて過酷な条件下で使用されるものである。従って、従来の木製サッシには、以下のように水分吸収による腐朽発生の危険性があった。
【0017】
我が国のサッシの大半は、引違い型と称される左右に移動して開閉する構造であるため、開閉時には横方向の力が作用してサッシの枠組みを変形させる方向に外力が作用する。新品の頃は戸車も快適に回転し、開閉は極めてスムースであり、窓枠に歪もないので、この外力は極めて小さく問題にならない。しかし、長期間使用すると、戸車の潤滑油切れや枠自体の収縮・膨張に伴う歪その他で、サッシの枠組みを変形させる方向の外力が増大し、その力は縦框と横框との接合部分に集中して作用するようになる。
【0018】
すると、
図14に示すように、接合部分に隙間6が発生する。また、
図15に示すように、接合部分の表面に形成された塗膜7も、接合部分の動きに追従できずに、微細な割れが発生し、これが次第に成長して隙間6となる。いったん隙間6が発生すると、毛管現象によって水分の浸透が発生し、特に内部の無防備な木口を通ってさらに木材内部深くに浸透してしまう。こうなると、腐朽菌が繁殖して変色や腐朽が急激に進行してしまう。
【0019】
また、縦框と横框とを接着一体化するタイプの木製サッシの場合には、工場で製造された完成品を施工現場に輸送する必要があるため、輸送時に嵩張る上に破損しやすい。輸送中の破損を防止するためには、厳重な梱包が必要となる。なお、輸送時の破損は、接合部分の隙間の発生にも繋がりやすく、水分吸収による腐朽発生の原因となる。
【0020】
また、縦框と横框とを接着一体化するタイプの木製サッシの場合には、ガラスも完全に一体化してしまうと交換が困難になるため、ガラスの固定に面縁を用いる構造とせざるを得ない。その結果、ガラスを安定的に固定するために框部分の厚さを厚くする必要があり、また固定用の木ネジが目に付きやすいなど、アルミサッシと比較してデザイン上違和感がある。
【0021】
なお、これらの問題は、暴風雨の風圧、雨水、直射日光、温度変化等、極めて過酷な条件下で使用される木製サッシに顕著なものであるが、例えばガラスではなく鏡板を固定したような、屋外に面した場所で用いられる玄関ドア等の木製建具においても、起こり得る問題である。
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、水分吸収による腐朽発生を抑制するとともに、強度面やデザイン面にも優れた木製建具及び木製建具の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明の木製建具は、縦框と横框とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製建具であって、組立後に表面から隠れる部位に防水処理が施されていることを特徴とする。
【0024】
また好ましくは、前記部位が木口面であることを特徴とする。
【0025】
また好ましくは、木製サッシであることを特徴とする。
【0026】
また本発明の木製建具の製造方法は、縦框と横框とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製建具の製造方法であって、前記縦框及び前記横框を形状加工し、前記形状加工した縦框及び横框の組立後に表面から隠れる部位に防水処理を施し、前記防水処理を施した縦框及び横框を前記連結金具によって連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、縦框と横框とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製建具であるので、縦框及び横框を分離した状態で梱包して輸送することができる。従って、輸送時に嵩張ることがなく破損もしにくい。さらに、ガラス等の内側の板材を交換する際には、縦框と横框との連結金具を着脱することにより、容易に行うことができる。そして、ガラス等の内側の板材の固定に面縁を用いる必要がなく、框部分の厚さを通常のアルミサッシ程度とし、また固定用の木ネジを不要として、優れたデザインとすることができる。
【0028】
また、組立後に表面から隠れる部位に防水処理が施されているので、長期間の使用により縦框と横框との連結部分に隙間が生じて水分が入り込んだとしても、木材内部に浸透するのを防止し、水分吸収による腐朽発生を抑制することができる。
【0029】
また、木口面に防水処理を施すことにより、特に水分が浸透しやすい部位の防水効果を高めることができる。
【0030】
また、暴風雨の風圧、雨水、直射日光、温度変化等、極めて過酷な条件下で使用される木製サッシに適用することにより、顕著な効果が得られる。
【0031】
また本発明によれば、縦框及び横框を形状加工し、形状加工した縦框及び横框の組立後に表面から隠れる部位に防水処理を施し、防水処理を施した縦框及び横框を連結金具によって連結することにより、水分吸収による腐朽発生を抑制するとともに、強度面やデザイン面にも優れた木製建具を容易に製造することができる。
【0032】
以上、本発明によれば、水分吸収による腐朽発生を抑制するとともに、強度面やデザイン面にも優れた木製建具及び木製建具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る木製建具の横框と縦框の連結方法を示す斜視図である。
【
図2】横框と縦框の連結部分を示す拡大断面図である。
【
図3】縦框を示す(a)左上からの斜視図、(b)右上からの斜視図である。
【
図4】縦框を示す(a)正面図、(b)左側面図、(b)右側面図である。
【
図5】横框を示す(a)右上からの斜視図、(b)右下からの斜視図である。
【
図6】横框を示す(a)正面図、(b)底面図、(c)右側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る木製建具の製造方法を示す工程図である。
【
図12】横框と縦框の連結部分を示す拡大断面図である。
【
図14】横框と縦框の連結部分を示す拡大正面図である。
【
図15】横框と縦框の連結部分を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、
図1乃至
図8を参照して、本発明の実施形態に係る木質建具及び木質建具の製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る木製建具の横框と縦框の連結方法を示す斜視図である。また
図2は、横框と縦框の連結部分を示す拡大断面図である。
【0035】
本実施形態に係る木製建具の全体構成は、
図11に示す縦框と横框とをボルトナット等の金具を用いて組み立てるタイプの木製サッシ1と同様であり、左右の縦框10,10と上下の横框20,20とを連結して組み立てられている。そして、
図1及び
図2に示すように、縦框10に形成されたほぞ穴11と横框20に形成されたほぞ21とを嵌合させて、連結金具であるボルト14と鬼目ナット24とにより連結されている。また、ガラス2の固定方法も、
図13に示すように、グレチャン5を装着したガラス2を横框10及び縦框20に形成された溝内に挿入し、組み合わせた状態でボルト14を締めることにより行う。
【0036】
横框20には挿入穴23が削孔されており、外周に食込突起を有する鬼目ナット24が挿入穴23に埋設されている。一方、縦框10には挿入穴13が削孔されており、ボルト14が挿入穴13に挿入されるとともに、鬼目ナット24の内周に形成された雌ネジに嵌め合わされている。以上により、縦框10と横框20とが着脱可能に連結されている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、縦框10には、長手方向の内側にガラス固定用の溝12が形成されている。また、溝12の下方には、横框20に形成されたほぞ21が嵌合するほぞ穴11が形成されている。なお、本実施形態では、溝12とほぞ穴11の幅及び深さは同一であり、溝12とほぞ穴11は実質的に同一の溝になっている。なお、溝12とほぞ穴11の幅や深さは異なっていてもよい。
【0038】
また、縦框10に削孔された挿入穴13は、ほぞ穴11に対応する位置にあり、ボルト14の頭部が嵌合するための大径部と、ボルト14の脚部が挿入される小径部から構成されている。
【0039】
図5及び
図6に示すように、横框20には、長手方向の内側にガラス固定用の溝22が形成されている。また、溝22の端部(
図5及び
図6における右側)には、縦框10に形成されたほぞ穴12に嵌合するほぞ21が形成されている。なお、本実施形態では、溝22とほぞ21の幅が同一であり、溝22の底とほぞ21の上面が同じ高さになっている。なお、溝22とほぞ21の幅は異なっていてもよいし、溝22の底とほぞ21の上面の高さは異なっていてもよい。
【0040】
また、横框20に削孔された挿入穴23は、ほぞ21に対応する位置にあり、鬼目ナット24がねじ込まれて固定されるように、必要な深さまで削孔されている。
【0041】
また、横框20の底面には、金具埋込部25が形成されている。金具埋込部25は、略直方体形状の空洞部であり、戸車ユニット等の金具を取り付けるためのものである。
【0042】
縦框10及び横框20の表面には、防水処理が施されている。この防水処理は、木製サッシの組立後に外側から見える部位だけではなく、組立後に表面から隠れる部位についても行われている。組立後に表面から隠れる部位としては、縦框10のほぞ穴11、溝12、挿入穴13が挙げられる。また、横框20のほぞ21、溝22、挿入穴23、金具埋込部25が挙げられる。なお、従来の縦框と横框を接着一体化するタイプの木製サッシの場合には、組立時の接着力に影響するため接着面を防水処理できない。また仮に接着できたとしても、使用中に接着が剥がれたときに同時に防水能力も低下する可能性がある。
【0043】
これらの組立後に表面から隠れる部位は、防水処理を行うことによりそれぞれの部位からの水分の浸透を防止することができるが、もちろん組立後に表面から隠れる部位の全てについて防水処理することが好ましい。
【0044】
ただし、水分の浸透防止という観点からは、特に木口面(木材を横に切った断面)を防水処理することが重要である。木口面は、木材の繊維方向に垂直な断面であるため、特に水分が浸透しやすい。例えば、
図5における横框20の木口面は、20a及び21aの部位であり、21bの部位よりは水分が浸透しやすいといえる。また、縦框10についていえば、挿入穴13の内周面が該当する。この挿入穴13の内周面は、ボルト14が挿通しやすいようにボルト14の径よりも少し大きく形成されるので、特に外部から水分が浸入しやすい部位であるといえる。
【0045】
防水処理の方法としては、塗料やパラフィン等の防水性塗膜を形成するものを用いて行う。単なる撥水効果のみで通気性のあるものは含まない。また、同様の防水効果が期待できるような、樹脂含浸、コーキングや、ゴム等のシートを貼り付けるか、パッキンを用いてもよい。例えば、
図7に示すような、金具埋込部25に合わせたパッキン8a、横框20のほぞ21に合わせたパッキン8b、縦框10の挿入穴13に合わせたパッキン8c等を用いるとよい。ただし、この場合には、パッキン8を挟み込むだけでなく、容易に脱落、剥離しないように接着剤等を用いて密着一体化しておく必要がある。
【0046】
次に、
図8を参照して、本発明の実施形態に係る木製建具の製造方法について説明する。
【0047】
(形状加工100)
まず、縦框10及び横框20について、ほぞ穴11、溝12、挿入穴13、ほぞ21、溝22、挿入穴23、金具埋込部25等の形状加工を行う。
【0048】
(防水処理200)
次に、形状加工した縦框10及び横框20の組立後に表面から隠れる部位に防水処理を施す。このとき、木製サッシの組立後に外側から見える部位についても同時に防水処理を施すこともできるし、組立後に外側から見える部位については組立後に別途処理してもよい。
【0049】
(金具連結300)
最後に、防水処理を施した縦框10及び横框20を連結金具であるボルト14と鬼目ナット24により連結する。
【0050】
本実施形態に係る木製建具によれば、縦框10と横框20とを着脱可能な連結金具によって連結してなる金具組立式の木製サッシ1であるので、縦框10及び横框20を分離した状態で梱包して輸送することができる。従って、輸送時に嵩張ることがなく破損もしにくい。さらに、ガラス2を交換する際には、縦框10と横框20との連結金具14,24を着脱することにより、容易に行うことができる。そして、ガラス2の固定に面縁を用いる必要がなく、框部分の厚さを通常のアルミサッシ程度とし、また固定用の木ネジを不要として、優れたデザインとすることができる。
【0051】
また、組立後に表面から隠れる部位に防水処理が施されているので、長期間の使用により縦框10と横框20との連結部分に隙間が生じて水分が入り込んだとしても、木材内部に浸透するのを防止し、水分吸収による腐朽発生を抑制することができる。
【0052】
また、木口面に防水処理を施すことにより、特に水分が浸透しやすい部位の防水効果を高めることができる。
【0053】
また、暴風雨の風圧、雨水、直射日光、温度変化等、極めて過酷な条件下で使用される木製サッシ1に適用することにより、顕著な効果が得られる。
【0054】
また、縦框10及び横框20を形状加工し、形状加工した縦框10及び横框20の組立後に表面から隠れる部位に防水処理を施し、防水処理を施した縦框10及び横框20を連結金具14,24によって連結することにより、水分吸収による腐朽発生を抑制するとともに、強度面やデザイン面にも優れた木製建具を容易に製造することができる。
【0055】
以上、本発明によれば、水分吸収による腐朽発生を抑制するとともに、強度面やデザイン面にも優れた木製建具及び木製建具の製造方法を提供することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように種々の変更が可能である。
【0057】
本実施形態では、木製建具のうち木製サッシについて説明したが、例えばガラスではなく鏡板を固定したような、屋外に面した場所で用いられる玄関ドア等の木製建具においても、効果が得られる。また一方で、木製サッシであっても二重窓の場合には、内窓に適用するよりもより過酷な条件下で使用される外窓に適用することが効果的である。
【0058】
また、組立後に表面から隠れる部位として、縦框10のほぞ穴11、溝12、挿入穴13、及び横框20のほぞ21、溝22、挿入穴23、金具埋込部25を挙げたが、これらに限定されるものではなく、その他の形状加工により形成される部位についても適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 木製サッシ
2 ガラス
3 面縁
4 木ネジ
5 グレチャン
6 隙間
7 塗膜
8 パッキン
10 縦框
11 ほぞ穴
12 溝
13 挿入穴
14 ボルト
20 横框
21 ほぞ
22 溝
23 挿入穴
24 鬼目ナット
25 金具埋込部
26 凹部
100 形状加工
200 防水処理
300 金具連結