特許第6618237号(P6618237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618237
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20191202BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191202BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20191202BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   B41J2/01 301
   B41J2/01 401
   H02J1/00 304H
   H02J1/00 306G
   H02J1/00 307E
   H02J1/00 307F
   H02J1/00 308P
   H02J7/34 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-66428(P2014-66428)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189026(P2015-189026A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月28日
【審判番号】不服2018-11250(P2018-11250/J1)
【審判請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中山 淳平
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 吉村 尚
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254285(JP,A)
【文献】 特開2007−245358(JP,A)
【文献】 特開2003−312095(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0028246(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0021320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01
H02J 1/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力で駆動されて印刷を行う印刷機構と、前記印刷機構に電力を供給する電池とを備えた印刷装置であって、
前記印刷機構の動作中と待機時間の単位時間あたりの電力消費量を取得する電力消費量取得手段と、
前記印刷機構の動作中の所定の区切りごとに、前回の区切りから今回の区切りまでの期間における前記印刷機構の単位時間あたりの電力消費量の平均値が前記電池の定格電流に基づく供給可能電力量を超えるか否かを判断し、超えると判断したときには、前記印刷機構の動作を中断して前記待機時間を設けることで、前記印刷機構の前回の区切りから今回の区切りまでの期間と前記待機時間とを合計した時間における前記電力消費量の単位時間あたりの平均値が前記供給可能電力量以下となるようにする待機時間制御手段とを具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷機構は、印刷ヘッドを搭載するキャリッジを印刷媒体と交差する方向に往復動作させ、印刷媒体を送り動作させるものであり、
前記待機時間制御手段は、前記キャリッジが1パスの印刷が終了した後の区切り、あるいは、数パス毎の印刷の終了後の区切りに停止している際に待機させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数のインク滴を吐出させるものであり、
前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の数に応じて消費する電力消費量を取得することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数の大きさのインク滴を吐出させるものであり、
前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の大きさごとに別個に消費する電力消費量を取得することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記電池に加えて外部からの電力供給を受ける外部電源給電手段を備えており、
前記待機時間制御手段は、前記外部電源給電手段から電力が供給されており、前記外部からの電力供給の能力が前記印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きい場合は、前記待機時間を設けないことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
電力で駆動されて印刷を行う印刷機構と、前記印刷機構に電力を供給する電池とを備えた印刷装置の印刷制御方法であって、
前記印刷機構の動作中と待機時間の単位時間あたりの電力消費量を取得する工程と、
前記印刷機構の動作中の所定の区切りごとに、前回の区切りから今回の区切りまでの期間における前記印刷機構の単位時間あたりの電力消費量の平均値が前記電池の定格電流に基づく供給可能電力量を超えるか否かを判断し、超えると判断したときには、前記印刷機構の動作を中断して前記待機時間を設けることで、前記印刷機構の前回の区切りから今回の区切りまでの期間と前記待機時間とを合計した時間における前記電力消費量を前記供給可能電力量以下となるようにさせる工程とを具備することを特徴とする印刷装置の印刷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷制御方法に関し、特に、電池を備えた印刷装置および印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池で駆動する印刷装置が利用されている。
コンピューター(PC)の周辺装置として、PCからのデータを取得して機能をするとともに、充電可能な電池も備えており、同PCからの電力供給を受けて充電するものとして、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示すものでは、データを受信しているか否かを検知し、データを受信していない間に充電電池に充電している。すなわち、充電時に消費電力が過大にならないようにしつつ充電を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許6357011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電電池に限らず、搭載する電池は、通常、印刷機構で必要とする電力を十分に満足する容量とする。しかし、コストやサイズ等の制約によって、設計上、そのような十分な容量を持つ電池を配置できない場合もある。
上述した特許文献1に開示される印刷装置では、印刷機構で単位時間あたりに消費する電力よりも、充電電池のような電池が単位時間あたりに供給可能な電力の方が小さい場合の対策はなかった。
【0005】
本発明は、電池が単位時間あたりに供給可能な電力が印刷機構で単位時間あたりに消費する電力よりも小さくても印刷可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電力で駆動されて印刷を行う印刷機構と、前記印刷機構に電力を供給する電池とを備えた印刷装置であって、前記印刷機構の動作中と待機時間の単位時間あたりの電力消費量を取得する電力消費量取得手段と、印刷機構の動作中の所定の区切りごとに、前回の区切りから今回の区切りまでの期間における印刷機構の単位時間あたりの電力消費量の平均値が電池の定格電流に基づく供給可能電力量を超えるか否かを判断し、超えると判断したときには、印刷機構の動作を中断して待機時間を設けることで、前記印刷機構の前回の区切りから今回の区切りまでの期間と前記待機時間とを合計した時間における前記電力消費量の単位時間あたりの平均値が前記供給可能電力量以下となるようにする待機時間制御手段とを具備する構成としてある。
【0007】
前記構成において、本印刷装置は、電池を備えており、この電池が供給する電力で印刷機構は駆動され、印刷を行う。ここで、電力消費量取得手段は、前記印刷機構の動作中と待機時間の単位時間あたりの電力消費量を取得し、待機時間制御手段は、前記印刷機構の動作中の所定の区切りごとに、前回の区切りから今回の区切りまでの期間における前記印刷機構の単位時間あたりの電力消費量の平均値が電池の定格電流に基づく供給可能電力量を超えるか否かを判断し、超えると判断したときには、前記印刷機構の動作を中断して待機時間を設けることで、前記印刷機構の前回の区切りから今回の区切りまでの期間と前記待機時間とを合計した時間における前記電力消費量の単位時間あたりの平均値が前記供給可能電力量以下となるようにする。

【0008】
電池からの単位時間あたりの供給可能な電力量が、印刷機構における単位時間あたりの消費電力量よりも小さいとしても、待機時間を設ければ、印刷機構による単位時間あたりの消費電力量は下がるので、電力消費量を供給可能電力量が許容可能な程度に維持させることが可能となる。
【0009】
本発明の他の態様として、前記印刷機構は、印刷ヘッドを搭載するキャリッジを印刷媒体と交差する方向に往復動作させ、印刷媒体を送り動作させるものであり、前記待機時間制御手段は、前記キャリッジが1パスの印刷が終了した後の区切り、あるいは、数パス毎の印刷の終了後の区切りに停止している際に待機させる構成としても良い。
前記構成において、印刷機構では、印刷ヘッドを搭載するキャリッジを印刷媒体と交差する方向に往復動作させるとともに、印刷媒体を送り動作させ、前記待機時間制御手段は、前記キャリッジが1パスの印刷が終了した後の区切り、あるいは、数パス毎の印刷の終了後の区切りに停止している際に待機させる。
【0010】
本発明の他の態様として、前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数のインク滴を吐出させるものであり、前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の数に応じて消費する電力消費量を取得する構成としても良い。
前記構成において、前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数のインク滴を吐出させるものであり、前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の数に応じて消費する電力消費量を取得する。
本発明の他の態様として、前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数の大きさのインク滴を吐出させるものであり、前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の大きさごとに別個に消費する電力消費量を取得する構成としても良い。
前記構成において、前記印刷機構は、前記印刷ヘッドから複数の大きさのインク滴を吐出させる。前記電力消費量取得手段は、吐出するインク滴の大きさごとに別個に消費する電力消費量を取得する。
【0011】
本発明の他の態様として、前記電池に加えて外部からの電力供給を受ける外部電源給電手段を備えており、前記待機時間制御手段は、前記外部からの電力供給の能力が前記印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きい場合は、前記待機時間を設けない構成としても良い。
前記構成において、外部電源給電手段によって電池に加えて外部からの電力供給を受けるので、前記外部からの電力供給の能力が前記印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きい場合は、前記待機時間を設けない。
【0012】
本発明の他の態様として、前記電力消費量取得手段は、前記印刷機構での単位時間あたりの電流値と使用時間を求め、前記待機時間制御手段は、前記印刷機構での動作中の単位時間あたりの電流値と、前記印刷機構での待機中の単位時間あたりの電流値と、動作中と待機中の時間と、目標電流値と、電池電圧値とに基づいて、前記待機時間を演算する構成としても良い。
電圧値が一定であれば、電力の演算は電流値に置き換えて演算することも可能である。前記構成において、前記電力消費量取得手段は、前記印刷機構での単位時間あたりの電流値と使用時間を求め、前記待機時間制御手段は、前記印刷機構での動作中の単位時間あたりの電流値と、前記印刷機構での待機中の単位時間あたりの電流値と、動作中と待機中の時間と、目標電流値と、電池電圧値とに基づいて、前記待機時間を演算する。このように、請求の範囲における電力の取得とは、電流値等の電力に関係するものの取得を行うことで、実質的に電力量を取得していることに相当する取得を含むものとする。
本発明にかかる技術的思想は印刷装置という形態のみで実現されるものではなく、例えば、上述した印刷装置が実行する印刷制御方法の発明や、上述した印刷装置において実現される処理をハードウェア(コンピューター)に実行させるプログラムの発明としても、把握することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池が単位時間あたりに供給可能な電力が印刷機構で消費する単位時間あたりの電力よりも小さくても印刷可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例にかかる印刷装置のブロック図である。
図2】駆動波形の一例を示す図である。
図3】印刷処理を示す簡易的なフローチャートである。
図4】本印刷装置の印刷処理を示すフローチャートである。
図5】使用電流と電池制限との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷装置をブロック図により示している。
同図において、本印刷装置10は、電源供給路とデータ線とを備えたコネクターとしてUSBコネクター11を備えている。USBコネクター11の場合、電源供給路としての電源ライン(+−)(P,G)と、データを送受信するためのデータ線(D+,D−)とを備えている。なお、電源ラインは、接続先に応じて電源供給能力が定められている。本実施例では、電源ラインは有線であるが、無線による電源ラインとなっても構わない。また、本実施例では、USBコネクター11であるが、他の電源供給とデータの送受信とが並行して行われる通信規格のコネクターにも適用可能である。なお、USBコネクターの場合は、電源供給能力のネゴシエーションを最初に行うなど、電源管理が可能であり、充電時間の短縮も効果的に行える。
【0016】
USBコネクター11の電源供給路は充電制御IC12に接続されている。充電制御IC12は充電可能な充電電池13に対する充電の制御とともに印刷機構14に対する電源供給路を管理する。本実施例においては、印刷機構14は、印刷ヘッド15を搭載するキャリッジ16を往復駆動させるキャリッジ駆動機構17と、印刷媒体である印刷用紙を紙送りするためのプラテン18を適宜回転駆動させる紙送り機構19と、印刷ヘッド15とキャリッジ駆動機構17と紙送り機構19とを電気的に制御して駆動する制御回路20を備えている。
【0017】
制御回路20は、内部にCPUやROMやRAMに相当する回路を備えており、また、印刷ヘッド15で印刷する画像データを一時的に記憶するバッファメモリーや、同印刷ヘッド15を駆動する際に必要な駆動波形を出力する駆動信号も生成する。印刷ヘッド15は、所定の駆動波形に従って圧電素子を駆動することで、インク滴を吐出して印刷を行う。
【0018】
次に、前記構成からなる本実施形態の動作を説明する。
図2は、駆動波形の一例を示しており、図3は、印刷処理を簡易的なフローチャートにより示している。
図2に示す駆動波形は、一画素に対して二種類の大きさの異なるドットを付すためのものであり、以下、単に小ドットと大ドットと呼ぶ。第一の駆動波形だけでインク滴を吐出させれば小ドットのインク滴となり、第一の駆動波形と第二の駆動波形の両方でインク滴を吐出させれば大ドットのインク滴となる。
【0019】
一般的には、図3に示す印刷処理では、外部のパーソナルコンピューターで以下の処理を実行する。画像データは一般的にはRGBデータで表されていることが多く、ステップS100にて、多階調のRGB画像データを、インク色に相当する多階調のCMYKインクデータに変換する。次に、ステップS110にて、小ドットと大ドットで印刷できるようにドット振り分けテーブルを参照してインク毎に小ドットと大ドットのインクデータに変換する。その後、ステップS120にて、各ドットを画素毎に付すか否かを表すために二値化するハーフトーン処理を行い、ステップS130にて、印刷ヘッド15にノズル列に合わせてデータ転送するためのラスタライズ処理を行う。ラスタライズ処理されたデータ群は本印刷装置10に転送され、制御回路20の制御のもとで印刷ヘッド15から印刷媒体の所定の位置にインク滴を吐出して印刷が完了する。
【0020】
印刷ヘッド15を駆動して小ドットと大ドットを吐出する際、それぞれで電力の消費量も異なる。印刷ヘッド15での電力の消費量は、吐出したインク滴の数(ショット数とも呼ぶ)と、吐出したドットの大きさに基づいて、演算することができる。従って、印刷ヘッド15を駆動する制御回路20によって演算することが可能である。
また、印刷の実行には印刷ヘッド15が搭載されるキャリッジを駆動させるキャリッジ駆動機構17に通電する電圧と電流と時間、また、プラテン18を回転駆動させる紙送り機構19に通電する電圧と電流と時間により、それぞれで消費する電力量を演算できる。
【0021】
図4は、本印刷装置の印刷処理をフローチャートにより示している。
制御回路20は、ステップS200にて、1パス印刷を行ない、その間に必要な電力を計測する。本実施例においては、キャリッジ駆動電力計測と、キャリッジ駆動時間計測と、ヘッド打ち込み量算出を行なう。
キャリッジ駆動電力計測では、キャリッジモーターの駆動電力を計測するものであり、キャリッジ駆動機構17に通電する電圧と電流と時間とを計測する。制御回路20はキャリッジ駆動機構17を駆動する際、キャリッジモーターに対して目標駆動速度となるようにPWM制御で電力を制御している。PWM制御のデューティ(単位時間あたりにオンとなって電力を供給する割合)が決まれば、あとはその出力時間であるキャリッジ駆動時間を計測することで消費電力は計算可能となる。
【0022】
ヘッド打ち込み量算出は、1パスで印刷ヘッド15から吐出したインク滴の吐出数(ショット数)に基づいて計算可能である。インク滴あたりの消費電力は、予め計測しておく。例えば、一定数だけインク滴を吐出し、そのときの電流値や電圧値を計測することで演算可能である。本実施例の場合、インク滴は小ドットと大ドットとがあり、図2に示すように駆動波形も異なっており、消費電流は相違する。従って、予めそれぞれの消費電流を個別に計測しておき、1パスの印刷中に印刷ヘッド15に対してインク滴を吐出させる際に小ドットと大ドットのインク滴の吐出数(ショット数、打ち込み量)をカウントしておく。
【0023】
このように、印刷機構は、印刷ヘッド15から複数のインク滴を吐出させるものであり、吐出するインク滴の数に応じて消費する電力消費量を取得する。また、印刷ヘッド15から複数の大きさのインク滴を吐出させるものであり、吐出するインク滴の大きさごとに別個に消費する電力消費量を演算している。なお、以下において電力消費量と呼ぶ場合、特に説明する場合を除き電力消費量の時間平均を指すことにする。 1パスの印刷後、紙送りを行う。このため、制御回路20は、ステップS210にて、紙送り中にペーパーフィード電力計測、ペーパーフィード駆動時間計測を行なう。
【0024】
ペーパーフィード電力計測では、ペーパーフィードモーターの駆動電力を計測するものであり、紙送り機構19に通電する電圧と電流と時間とを計測する。制御回路は紙送り機構19を駆動する際、ペーパーフィードモーターに対して目標駆動速度となるようにPWM制御で電力を制御している。PWM制御のデューティが決まれば、あとはその出力時間であるペーパーフィード駆動時間を計測することで消費電力は計算可能となる。
【0025】
1パスのキャリッジ移動とその後の紙送りによって一つの区切りとし、ステップS220にて、制御回路20はこの間での消費した電力である消費電力量を演算する。区切りの設定は、各種の方法が考えられる。例えば、一定時間を区切りとし、それまでの消費電力を演算しても良い。一定時間の区切りであれば、充電電池13が供給可能な電力は一定であるから、消費電力だけを監視して平均値が一定値となるように待機時間を設定すればよい。一方、1パスの印刷が終了した後の区切り、あるいは、数パス毎の印刷の終了後の区切りとした場合、待機時間を設けるには好適なタイミングである。この期間はキャリッジが停止している期間であり、印刷への影響が最も少ないタイミングといえる。なお、ステップS200〜ステップS220にて、印刷機構14の使用状態に基づく電力消費量を取得するので、電力消費量取得手段に相当する。
【0026】
このように、印刷機構は、印刷ヘッド15を搭載するキャリッジを印刷媒体と交差する方向に往復動作させ、印刷媒体を送り動作させるものであり、キャリッジが停止している際に待機させる。
消費電力量について、本実施例では、主に、メカ電力算出、ヘッド電力算出、ロジック電力算出を実施する。メカ電力とはキャリッジ駆動電力とペーパーフィード駆動電力の合計を指しており、ヘッド電力算出とは打ち込み量算出を指しており、ロジック電力算出とは制御回路20自身の電力算出を指している。1パスの印刷後にそれぞれの消費電力を演算して積算するその後、制御回路20は、ステップS230にて、待機時間算出を行なう。
【0027】
ここで、待機時間算出の一例を説明する。
Pdrv :動作中の電力
PCR:キャリッジモーターの駆動電力 Dutyに基づいて演算
TCR:キャリッジモーターの駆動時間
PPF:紙送りモーターの駆動電力 Dutyに基づいて演算
TPF:紙送りモーターの駆動時間
PH :印刷ヘッドの駆動電力 ドット数カウントから演算
TH :印刷ヘッドの駆動時間
VBAT :電池電圧
IDRV :電池電流
PLG:ロジック電力
とする。
【0028】
キャリッジモーターの駆動電力(PCR)と紙送りモーターの駆動電力(PPF)については、上述したようにデューティに基づいて演算できる。印刷ヘッドの駆動電力(PH )についても、ドット数のカウントから演算できる。キャリッジモーターの駆動時間(TCR)と紙送りモーターの駆動時間(TPF)と印刷ヘッドの駆動時間(TH )については、それぞれの期間を計測しておく。ロジック電力(PLG)は、制御回路20自身の消費電力である。
【0029】
本実施例の場合、印刷機構での単位時間あたりの電流値と使用時間を求め、印刷機構での動作中の単位時間あたりの電流値と、前記印刷機構での待機中の単位時間あたりの電流値と、動作中と待機中の時間と、目標電流値と、電池電圧値とに基づいて、待機時間を演算するものとする。
【0030】
1.使用電力算出:単位時間あたりの動作中の電力(Pdrv)は、次式のように表される。
Pdrv =(PCR×TCR+PPF×TPF+PH×TH)/(TCR+TPF)
2.電池電流算出:動作中と待機中とに分けて、次式のように表される。
動作中は、
IDRV =(Pdrv+PLG)/VBAT
待機中は、
Iwait=PLG/VBAT
待機時間を設けることで、電池電流の平均値が、定格電流以下となるようにすることが目標となる。ただし、電池電流の平均値が概ね定格電流以下となればよいのであり、厳格に定格電流以下としなければならないわけではなく、言い換えると電力消費量の観点としても、この電力消費量は、供給可能電力量が許容可能な範囲に維持させるものであればよい。
【0031】
図5は、使用電流と電池制限との関係をグラフにより示している。
なお、電圧が一定であるので、使用電流は電力消費量に相当し、電池制限の電流は供給可能電力量に相当する。
今、目標電流値(Itarget)は5アンペアである。印刷中の消費電流が10アンペアであるとする。単純計算としては、1分印刷すれば、1分待機するというように待機時間を設ければ、2分間の平均電流は5アンペアになる。電池電圧値(VBAT )が一定であれば、電力量は電流値だけで監視しても構わない。図5には、電池制限として5アンペア、使用電流として10アンペアであるとしても、1秒間印刷して、1秒間待機すれば2秒間での平均使用電流は5アンペアとなることを示している。
【0032】
次に、具体的に待機時間の演算は、次式で示すようにして算出することができる。
上述したように、動作中の電池電流(IDRV )と、目標電流値(Itarget)とを対比し、
IDRV ≦Itarget
なら、待機時間はなし。すなわち、
Twait=0
とする。しかし、
IDRV >Itarget
なら、待機時間(Twait)は、
Twait=(TCR+TPF)×(Itarget−IDRV)/(Iwait−Itarget)
となる。
【0033】
ここでは、印刷機構での単位時間あたりの電流値(IDRV,Iwait)と使用時間(TCR+TPF)を求めておき、電池電圧(VBAT )が一定であるとの前提のもとで、印刷機構での動作中の単位時間あたりの電流値(IDRV)と、前記印刷機構での待機中の単位時間あたりの電流値(Iwait)と、動作中と待機中の時間(TCR+TPF)と、目標電流値(Itarget)とに基づいて、待機時間(Twait)を演算している。
【0034】
制御回路20は、ステップS240にて、待機が必要(IDRV >Itarget)か判断する。そして、必要であれば、ステップS250にて、待機時間(Twait)だけ待機する。
そして、ステップS260にて、印刷終了と判断されるまで、各パス毎に以上の処理を繰り返して必要ならば待機を実施する。なお、ステップS230〜ステップS250の処理は、待機時間を求めて待機させる処理であり、待機時間制御手段に相当する。
【0035】
ところで、ステップS240では、待機が必要か判断しているが、例えば、充電電池に加えて外部からの電力供給を受ける場合がある。このような手段(外部電源給電手段)を備えている場合は、電池の電力供給の能力を十分に補充できることが想定されている。従って、充電電池に加えて外部からの電力供給を受ける場合は、外部からの電力供給の能力が印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きい場合と考えられ、待機時間を設けないようにしてもよい。具体的に、外部からの電力供給の能力が印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きいか判断しなくても、外部からの電力供給を受けている場合は、外部からの電力供給の能力が印刷機構で必要とする電力消費量よりも大きいとみなしても構わない。
【0036】
上述した実施例では、充電電池13が供給可能な電力量について、単位時間あたりの平均電流値である目標電流値を想定し、電池電圧も一定値として演算している。しかし、さらに詳細に電池が単位時間あたりに供給可能な電力量を演算するようにしても良い。
上述した実施例では、待機が必要か否かは、判定式(IDRV >Itarget)によって画一的に決めている。しかし、多少の誤差があっても構わない。例えば、1枚のプリントだけで印刷が終わることが分かっているのであれば、(IDRV )>(1.2×Itarget)というように目標電流値に係数をかけるということも可能である。この例では、係数として1.2を与え、目標値を20%だけ超過していたとしても許容することを示している。この場合、短期間に限ることを条件にしてもよい。例えば、主に文字だけの一枚だけの印刷が分かっているような場合にこのようにしてもよい。
【0037】
一方、画像によって係数を変えても良い。先の例では文書であったが、写真のようにインクデューティーの高いもの(ベタの印刷に近いようなもの)では、たとえ、一枚だけの印刷でも20%の超過を認めると、印刷完了時に大幅に目標電流値を下回る可能性がある。
【0038】
このように、本実施例では、印刷機構14による基準時からの所定の区切り(例えば、1パス毎)ごとに使用状態に基づく第1電力消費量を演算し、基準時から現時点までの前記電池(例えば、充電電池13)によって供給可能な第1供給可能電力量を演算し(例えば、目標電流値)、前記所定の区切りごとに、前記第1電力消費量が前記第1供給可能電力量を超えるときには、前記第1供給可能電力量が前記第1電力消費量を超えるまで前記印刷機構14に待機させる。
本実施例では、電池として、充電可能な充電電池であるが、目標電流値があるものにおいては、同様に適用可能である。
消費電力量を取得する方法は、様々な方法を採用することができる。全てを実際に測定して消費電力量を取得してもよいし、少なくとも一部を動作毎に決まっている数値を用いる等によって推測することによって消費電力量を取得してもよい。また、厳密な意味での電力量そのものを取得しなくても、電力量に対応する電流や時間等を取得することで実質的に電力量を取得してもよい。
上述した実施例では、印刷装置10での電力消費に関して説明している。しかし、印刷機能以外の機能をも有する印刷装置や、印刷機能を有しない装置においても、電力消費量の時間平均を電池が許容する電力消費量の範囲に収まるように適宜待機時間を確保するようにすることで適用可能である。なお、この待機時間とは、電力消費量を低下させる時間であり、何も動作を行わない時間に限られるものではない。
【0039】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0040】
10…印刷装置、11…USBコネクター、12…充電制御IC、13…充電電池、14…印刷機構、15…印刷ヘッド、16…キャリッジ、17…キャリッジ駆動機構、18…プラテン、19…紙送り機構、20…制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5