(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618243
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】空気調和機のルーバー
(51)【国際特許分類】
F24F 13/14 20060101AFI20191202BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
F24F13/14 B
F24F1/0007 401C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-123938(P2014-123938)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-3807(P2016-3807A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月30日
【審判番号】不服2018-15497(P2018-15497/J1)
【審判請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】394001087
【氏名又は名称】株式会社京都プラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100098969
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 正行
(72)【発明者】
【氏名】谷 繁満
(72)【発明者】
【氏名】井手 敏明
【合議体】
【審判長】
山崎 勝司
【審判官】
松下 聡
【審判官】
槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−194921(JP,A)
【文献】
特開2009−63274(JP,A)
【文献】
実開昭63−83529(JP,U)
【文献】
特開2005−121306(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/060181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F13/14
F24F13/20
F24F1/0007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視ほぼ長方形で底部の周縁に壁を有する外部材と、
前記壁の内周面に嵌合する頂部を有し、外部材とで断熱空間を形成する内部材とを備え、
空気調和機における吹き出し口から吹き出される風の向きを規制するルーバーであって、
前記長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向とするとき、
前記内部材は、外部材との嵌合状態で、Y方向端部にて外側に張り出して前記壁の内周面に圧接するリブPと、前記Y方向端部付近にてZ方向に突き出して前記底部に圧接するリブQを有し、
前記外部材は、リブPが前記底部からZ方向に遠ざかることを阻む段差Tと、リブQが前記壁からY方向に遠ざかることを阻む段差Lを有する
ことを特徴とするルーバー。
【請求項2】
更に、前記内部材が、X方向端部付近にて前記底部に近づくZ方向に突き出すとともに前記壁の内周面に圧接するリブSを有する、請求項1に記載のルーバー。
【請求項3】
リブPが、前記Y方向端部にて前記頂部の厚さだけ前記底部側に降下した位置で外側に張り出しており、前記壁の内周面にリブPを受け入れる深溝が形成され、その深溝が段差Tとして機能する、請求項1又は2に記載のルーバー。
【請求項4】
前記外部材が、リブQの厚さだけY方向内側にシフトした位置にて前記底部より突き出すリブMを有し、リブMが段差Lとして機能する、請求項1〜3のいずれかに記載のルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機における吹き出し口から吹き出される風の向きを規制するルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ルーバーにおいては、冷風の当たらない面が結露するのを防ぐために、冷風の当たる面と当たらない面とを断熱する工夫が必要とされる。近年普及している断熱手段は、ルーバーを樹脂製且つ中空構造とするものである。即ち、ルーバーを、いずれも樹脂製の表面板もしくは外板と裏面板もしくは内板との二枚合わせとし、貼り合わせられるこれらの二枚の板で断熱空間を形成することにより、冷風の当たる裏面板(内板)と当たらない表面板(外板)との熱伝導が断熱空間にて遮断されている(特許文献1)。
【0003】
そして、内板と外板とを貼り合わせるために、外板の周縁に壁を隆起させ、その壁の内側に内板を嵌め込み、嵌め合い部分を樹脂で封止する方法(例えば特許文献2)が汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3731299号公報
【特許文献2】特開2014−70745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、二枚の板の周縁部分は、幅が細くて長いことから、特許文献1のように直接貼り合わせるのは困難であるし、生産性も低い。また、特許文献2のように嵌め合い部分を樹脂で封止するには、二枚の板を成形する金型や成形機とは別に封止用の金型や成形機を要するうえ、金型の温度が常温近くに下がるまで製品を取り出すことができないので、多大のコストがかかる。
それ故、この発明の課題は、内部に断熱空間を有するルーバーを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明のルーバーは、
平面視ほぼ長方形で底部の周縁に壁を有する外部材と、前記壁の内周面に嵌合する頂部を有し、外部材とで断熱空間を形成する内部材とを備える。
そして、前記長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向とするとき、
前記内部材は、外部材との嵌合状態で、Y方向端部にて外側に張り出して前記壁の内周面に圧接するリブPと、
前記Y方向端部付近にてZ方向に突き出して前記底部に圧接するリブQを有し、
前記外部材は、リブPが前記底部からZ方向に遠ざかることを阻む段差Tと、リブQが前記壁からY方向に遠ざかることを阻む段差Lを有する
ことを特徴とする。
【0007】
この発明のルーバーは、外部材を寝かせて固定し、内部材を端から順に嵌め込むだけで、内部材と外部材の固着が完了する。固着に要する時間は短く、格別に高価な機械を要することもない。
内部材と外部材との嵌合状態で、リブPが前記壁の内周面に圧接しているので、前記壁から反力を受けて内部材がY方向にシフトしがちであるところ、リブQの同方向のシフトが段差Lにて阻止されている。このため、内部材は、Y方向のどちらの側にも動かない。
また、リブQが前記底部に圧接しているので、前記底部から反力を受けて内部材がZ方向に浮き上がりがちであるところ、リブPの同方向のシフトが段差Tにて阻止されている。このため、内部材が浮き上がることもない。
【0008】
前記内部材は、リブP及びリブQとは別に、好ましくはリブSを有する。リブSは、X方向両端部付近に各々設けられて、前記底部に近づくZ方向に突き出すとともに前記壁の内周面に圧接するものである。双方のリブSが両側の壁の内周面にそれぞれ圧接しているので、それぞれ壁から相反するX方向の反力を受ける。このため、ルーバーに何らかの外力が加わって内部材がX方向のいずれかにシフトしたとしても、前記反力のバランスを保とうとして定位置に復帰する。
【0009】
リブPと段差Tとの好ましい組み合わせは、リブPが、
前記Y方向端部にて前記頂部の厚さだけ前記底部側に降下した位置で外側に張り出しており、前記壁の内周面にリブPを受け入れる深溝が形成され、その深溝が段差Tとして機能するものである。このような構造であれば、内部材を外部材に嵌め込んだ後は深溝が前記底部から遠ざかる方向のリブPのシフトを阻むだけでなく、嵌め込む際に、外部材の壁及びその付近がY方向外側に撓む即ち弾性変形することによりリブPが壁の周縁部内側を乗り越え、復元力によりリブPが深溝に嵌るとともに、リブPの先端が深溝の底に圧接される。また、内部材を強い力で上から押し込んでもリブPと深溝との隙間以上に内部材が下に陥没することがないからである。
【0010】
また、リブQと段差Lとの好ましい組み合わせは、外部材が、リブQの厚さだけY方向内側にシフトした位置にて前記底部より突き出すリブMを有し、リブMが段差Lとして機能するものである。このような構造であれば、内部材を外部材に嵌め込んだ後はリブMによりリブQが前記壁から遠ざかるY方向にシフトすることが阻まれるだけでなく、嵌め込む際に、リブQがリブMに案内されて正確なY方向位置で内部材が外部材に嵌め込まれるからである。リブMの突き出し寸法は、前記内部材が外部材に嵌合される際に、リブPが前記壁に接するより先にリブMがリブQと接する程度に設計されるのが望ましい。
【0011】
外部材の前記底部には、好ましくはリブQの先端部を受け入れる浅溝が形成されている。これにより、ルーバーに外力が加わってもリブQが前記壁に近づくY方向にシフトすることも阻止されるからである。また、内部材を外部材に嵌め込む際に、前記のように外部材の壁及びその付近がY方向外側に撓むことを必要とするところ、撓みの起点が壁と底部との稜線ではなく肉厚が薄くて弾性変形しやすい浅溝となる。従って、撓みの曲率が小さくなり、外部材が樹脂からなる場合に撓みによる応力集中で樹脂が白化することを防止できるからである。
【0012】
リブSの好ましい形状は、下端付近でX方向外側にZ方向断面視半円状に膨らんでおり、その膨らみ部分にて前記壁の内周面に対する前記圧接がなされるようなものである。X方向外側に半球状に膨らんでいることから、内部材を外部材に嵌め込む際に、リブSが前記壁の内周面に引っ掛かることがないからである。尚、リブSの下端は自由にされているので、嵌め込み後は前記膨らみ部分が片持ちバネ的に壁の内周面に圧接する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明のルーバーは、外部材を寝かせて固定し、内部材を端から順に嵌め込むだけで、内部材と外部材の固着が完了するので、固着に要する時間は短く、格別に高価な機械を要することもない。従って、この発明によれば、内部に断熱空間を有するルーバーを低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のルーバーを示し、(a)はその平面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。
【
図2】同ルーバーに適用される内部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を図面とともに説明する。
ルーバー1は、図略の回転軸を介して空気調和機の吹き出し口に取り付けられて、空気調和機の非稼働中は吹き出し口を閉じる機能を果たし、稼働中は前記回転軸を中心に回転して吹き出し口を開くとともに、その開き角度をもって吹き出し口から吹き出される風の向きを規制するものである。
【0016】
ルーバー1は、いずれもABS、PSなどの樹脂製の外部材2及び内部材3からなり、
図1(a)に示すように、いずれも平面視でほぼ長方形であって、四隅のうち一隅が長辺及び短辺に平行な二辺で切り取られた形状をなし、切り取り部分に前記回転軸の軸受けが配置される。以下、説明の便宜上、前記長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向とする。
【0017】
外部材2は、
図4及び
図5に示すように、底部4と、底部4の周縁に壁5を有する。底部4は側面視で弓のように小さい曲率で湾曲した形状をなし、壁5は底部4に対して角度を有するがZ方向に平行ではなく外側に開くように傾斜している。内部材3は、
図2、
図4及び
図5に示すように、底部4にほぼ倣うように湾曲した頂部6を有する。頂部6は、壁5の内周面に嵌合している。この嵌合状態で外部材2と内部材3とが、底部4、壁5及び頂部6で囲まれる断熱空間を形成する。また、嵌合状態では外部材2の開口端面すなわち壁5の上端面は、頂部6の上面と面一をなし、その上端面と内周面との稜線部分は大きく面取りされて斜面となっている。
【0018】
内部材3は、
図2〜
図8に示すように、Y方向端部にて頂部6の厚さだけ底部4側に降下した位置で外側に張り出すリブP1、P2、P3(以下、総称して「リブP」ともいう。)と、Y方向端部付近にて頂部6からZ方向に突き出すリブQ1、Q2、Q3(以下、総称して「リブQ」ともいう。)と、Y方向中間部にて頂部6からZ方向に突き出すリブ7を有する。
【0019】
リブP、リブQは、内部材3のX方向の周縁全長に亘って延びている。リブ7は、前記軸受けを配置する切り取り部分を除くX方向全長に亘って延びている。
リブQの突き出し寸法は、嵌合状態における底部4の上面と頂部6の下面との間隔より僅かに大きく、リブ7のそれは、同間隔に等しい。また、内部材3は、X方向両端部付近に各々設けられて、Z方向に突き出すリブS1、S2(以下、総称して「リブS」ともいう。)をも有する。リブSの突き出し寸法は、嵌合状態における底部4の上面と頂部6の下面との間隔よりやや小さい。そして、リブSのX方向側面は下端に達する前の位置にてZ方向断面視で壁5側に半円状に膨らんでいる。
【0020】
外部材2は、
図2、
図3〜
図8に示すように、壁5の内周面にリブP1、P2、P3をそれぞれ受け入れる深溝51、52、53と、リブQの厚さだけY方向内側にシフトした位置にて底部4より突き出すリブM1、M2、M3(以下、総称して「リブM」ともいう。)と、リブMに隣接する壁5側の位置に浅溝41、42、43を有する。深溝51、52、53の深さは、リブPの突き出し寸法にほぼ等しい。
【0021】
ルーバー1を組み立てる際は、外部材2を寝かせて固定し、その上に内部材3を置き、先ずリブSを壁5の内側に挿入することにより外部材2に対する内部材3のX方向の位置を決める。挿入に伴ってリブSの膨らみが壁5の内周面に圧接し、リブSが反力を受けて内側に撓む。
【0022】
リブSが反力を受け始めるのとほぼ同時にリブQの下端がリブMの上端に当たる。続いて少し強い力を加えると、リブQが壁5に近づく方向に撓み、リブMの外側即ち壁5側の面に沿って案内されながら、内部材3が下降する。リブQがリブMに案内されるので、Y方向の位置も正確に決まる。リブPが壁5の上端面に達したところで、内部材3にX方向の端から順に更に強い力を上から加える。壁5及び底部4が浅溝41、42、43付近からY方向外側に撓むことによりリブPが壁5の斜面に沿って下がり、続いて壁5の内側に嵌る。更に下降すると復元力によりリブP1、P2、P3がそれそれ深溝51、52、53に嵌り、深溝51、52、53の底に圧接する。同時にリブQ1、Q2、Q3の先端がそれぞれ浅溝41、42、43に嵌り、圧接する。
【0023】
嵌合時には壁5及び底部4が浅溝41、42、43付近から撓むので、撓みの曲率が小さい。しかも浅溝41、42、43部分の肉厚は薄くて弾性変形しやすい。このため、樹脂が白化することはない。また、内部材3を強い力で上から押し込んでもリブPと深溝との隙間以上に内部材3が下に陥没することはないし、リブQ付近で撓むこともないので、押し込みに際してあまり神経を使わなくても良い。こうして内部材3と外部材2の固着が完了する。固着に要する時間は短く、格別に高価な機械を要することもない。
【0024】
ルーバー1は、内部材3と外部材2との嵌合状態で、リブPが壁5の内周面(前記深溝の底)に圧接しているので、壁5から反力を受けて内部材3がY方向にシフトしがちであるところ、リブQの同方向のシフトがリブMにて阻止されている。このため、内部材3は、Y方向のどちらの側にも動かない。また、リブQが底部4(前記淺溝の底)に圧接しているので、底部4から反力を受けて内部材3がZ方向に浮き上がりがちであるところ、リブPの同方向のシフトが深溝51、52、53にて阻止されている。このため、内部材3が浮き上がることもない。しかもリブQが淺溝41、42、43に係っているので、ルーバー1に外力が加わってもリブQが壁5に近づくY方向にシフトすることもない。
【0025】
更に、ルーバー1のY方向中間部に圧力が加わってもリブ7が底部4に圧接しているので、頂部6が撓むことはない。X方向に関しては、双方のリブSの膨らみが両側の壁5の内周面にそれぞれ片持ちバネ的に圧接しているので、それぞれ壁5から相反するX方向の反力を受ける。このため、ルーバー1に何らかの外力が加わって内部材3がX方向のいずれかにシフトしたとしても、前記反力のバランスを保とうとして定位置に復帰する。
【0026】
以上のように、ルーバー1は、外部材2と内部材3とで内部に断熱空間を形成しているだけでなく、不測の外力が加わっても外部材2と内部材3との固着状態がしっかりと保たれる。
尚、この実施形態では、リブP、リブQ、リブM、深溝51、52、53、浅溝41、42、43、及びリブ7は、いずれもX方向に一様に延びているが、これに限定されることなく、X方向に間欠的に設けられていても良い。リブSもY方向に間欠的に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 ルーバー
2 外部材
3 内部材
4 底部
5 壁
6 頂部
7 リブ
P1、P2、P3 リブ
Q1、Q2、Q3 リブ
S1、S2
M1、M2、M3