(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618253
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】施工具駆動用油圧装置
(51)【国際特許分類】
E21B 3/02 20060101AFI20191202BHJP
E02D 7/22 20060101ALI20191202BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
E21B3/02 Z
E02D7/22
F15B11/00 T
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-255348(P2014-255348)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113849(P2016-113849A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 真司
(72)【発明者】
【氏名】谷田 優也
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−227203(JP,A)
【文献】
特開平07−054568(JP,A)
【文献】
特開平08−089680(JP,A)
【文献】
特開昭61−022156(JP,A)
【文献】
特開2008−202302(JP,A)
【文献】
特開平05−149071(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0163921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 3/00−3/06
E02D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工具を駆動する油圧アクチュエータへの作動油の供給方向を正方向と逆方向と停止とに切り換えるソレノイド方向切換弁と、該ソレノイド方向切換弁を作動させる各ソレノイドへの通電を正方向と逆方向と停止とに切り換える切換スイッチと、ソレノイド方向切換弁が停止位置になったときに前記油圧アクチュエータからの作動油の流出を規制する絞りとを備えた施工具駆動用油圧装置において、前記切換スイッチと前記ソレノイド方向切換弁との間の電気回路に、前記切換スイッチを正方向又は逆方向に設定したときに、異なる方向の通電回路を遮断する接点をそれぞれ設けるとともに、前記切換スイッチの正方向又は逆方向の設定を解除したときに、前記接点をあらかじめ設定された時間だけ遮断状態に保持するオフディレータイマを設け、前記接点は通常時は通電状態を保持する常閉式であり、前記オフディレータイマの作動により接点が離れて前記通電回路を遮断し、前記ソレノイド方向切換弁を中立の停止位置に保持し、前記絞りは作動油の流出を規制することを特徴とする施工具駆動用油圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工具駆動用油圧装置に関し、詳しくは、鋼管杭やケーシングチューブ、ケリーバなどの施工具を回転させる施工具駆動用油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭やケーシングチューブを回転させながら地中に押し込むオーガ装置やチュービング装置、ケリーバを回転させながら地中に押し込むケリードライブ装置では、鋼管杭やケーシングチューブ、ケリーバといった施工具をチャック機構により把持あるいはロック機構により保持し、切換弁が介装された給排流路(油圧回路)を介して油圧モータに作動油を給排し、チャック機構あるいはロック機構を介して油圧モータにより施工具を回転させる施工具駆動用油圧装置が用いられている。
【0003】
このような施工具駆動用油圧装置において、油圧モータを停止させたときに、施工具に生じた捩りが戻ることによって油圧モータが逆方向に高速で回転することを防止するため、油圧モータからの作動油の急激な流出を規制する規制弁を介装すると共に、該規制弁と並列に絞りを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3535104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された施工具駆動用油圧装置は、油圧モータを停止させたときには有効であるが、油圧モータを急激に逆方向に回転させた場合は、油圧モータの給排流路が開いた状態になるため、油圧モータが逆方向に高速で回転してしまい、油圧モータの許容回転数を超えて油圧モータが破損するおそれがあり、さらに、チャック機構やロック機構などの装置各部が破損したり、騒音が発生したりすることもあった。
【0006】
そこで本発明は、油圧モータなどの油圧アクチュエータを停止させたときの油圧アクチュエータの保護だけでなく、油圧アクチュエータを急激に逆方向に作動させようとした場合でも、油圧アクチュエータや装置各部を保護することができる施工具駆動用油圧装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の施工具駆動用油圧装置は、施工具を駆動する油圧アクチュエータへの作動油の供給方向を正方向と逆方向と停止とに切り換えるソレノイド方向切換弁と、該ソレノイド方向切換弁を作動させる各ソレノイドへの通電を正方向と逆方向と停止とに切り換える切換スイッチと、ソレノイド方向切換弁が停止位置になったときに前記油圧アクチュエータからの作動油の流出を規制する絞りとを備えた施工具駆動用油圧装置において、前記切換スイッチと前記ソレノイド方向切換弁との間の電気回路に、前記切換スイッチを正方向又は逆方向に設定したときに、異なる方向の通電回路を遮断する接点をそれぞれ設けるとともに、前記切換スイッチの正方向又は逆方向の設定を解除したときに、前記接点をあらかじめ設定された時間だけ遮断状態に保持するオフディレータイマを設け、前記接点は通常時は通電状態を保持する常閉式であり、前記オフディレータイマの作動により接点が離れて前記通電回路を遮断
し、前記ソレノイド方向切換弁を中立の停止位置に保持し、前記絞りは作動油の流出を規制することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の施工具駆動用油圧装置によれば、油圧アクチュエータを停止させたときには、絞りによって急激な逆方向への作動が抑えられ、油圧アクチュエータを急激に逆方向に作動させようとした場合は、オフディレータイマによって接点があらかじめ設定された時間だけ遮断状態に保持され、絞りによって急激な逆方向への作動を防止した後にソレノイド方向切換弁が切り換えられるようになるので、ソレノイド方向切換弁が切り換わったときに、油圧アクチュエータが急激に逆方向に作動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の施工具駆動用油圧装置の一形態例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す施工具駆動用油圧装置は、油圧モータ11によってケーシングチューブ12を回転駆動するためのものであって、油圧モータ11の回転方向を切り換えるための油圧回路13と電気回路14とを備えている。油圧回路13には、作動油を所定圧力、所定流量で供給する油圧ポンプ15と、電気回路14からの電気信号によって作動油の流れ方向を油圧モータ11の正回転(以下、右回転)、逆回転(以下、左回転)及び停止とに切り換えるソレノイド方向切換弁16と、ソレノイド方向切換弁16の切り換え状態に応じて作動するブレーキバルブ17と、所定位置に配置された複数のリリーフバルブ18,18と、タンク19とが設けられている。ソレノイド方向切換弁16は、通常、右回転側及び左回転側が連通した中央の停止位置に保持されており、右回転側ソレノイド16Rが通電状態になると右回転側流路に切り換わり、左回転側ソレノイド16Lが通電状態になると左回転側流路に切り換わる。同様に、ブレーキバルブ17は、通常、中央のブレーキ位置に保持されており、右回転側パイロット17Rに作動油の圧力が加わると右回転側流路に切り換わり、左回転側パイロット17Lに作動油の圧力が加わると左回転側流路に切り換わる。このブレーキバルブ17の停止位置には、油圧モータ11からの作動油の流出を防止する逆止弁17a,17aと、油圧モータ11からの作動油の流出量を規制する絞り17b,17bとが設けられている。
【0011】
また、電気回路14には、油圧モータ11の右回転、左回転及び停止を設定する切換スイッチ21と、右回転側ソレノイド16R及び左回転側ソレノイド16Lの通電回路22R,22Lを遮断する接点23R,23Lと、切換スイッチ21の切換方向とは異なる方向の接点23R,23Lを作動させるためのオフディレータイマ24R,24Lとが設けられている。
【0012】
接点23R,23Lは、通常時は通電状態を保持する常閉式であって、オフディレータイマ24R,24Lの作動により接点が離れて通電回路22R,22Lをそれぞれ遮断する。オフディレータイマ24R,24Lは、切換スイッチ21の操作で通電状態になったときに、即座に接点23R,23Lを遮断するように作動するとともに、通電が終了した後も、あらかじめ設定された時間だけ作動状態を継続し、接点23R,23Lによる通電回路22R,22Lの遮断状態を保持するように形成されている。
【0013】
このように形成した施工具駆動用油圧装置は、例えば、切換スイッチ21を右回転側21Rに操作すると、通電状態に保持されている右回転側の接点23Rを通してソレノイド方向切換弁16の右回転側ソレノイド16Rが通電状態となり、ソレノイド方向切換弁16の流路が右回転側に切り換わる。これにより、油圧ポンプ15から吐出された作動油は、ソレノイド方向切換弁16の右回転側流路を通り、ブレーキバルブ17に向かって流れる。同時に、左回転側のオフディレータイマ24Lに通電されて作動状態になるので、接点23Lが開いて左回転側ソレノイド16Rへの通電回路22Lが遮断される。
【0014】
ブレーキバルブ17が中央のブレーキ位置にある場合、ソレノイド方向切換弁16を通過して供給される右回転側の作動油は、ブレーキバルブ17の右回転側パイロット17Rに流れ、この作動油の流れ込みによる圧力でブレーキバルブ17が右回転側流路に切り換わる。これにより、ソレノイド方向切換弁16を通過した所定圧力、所定流量の作動油がブレーキバルブ17の右回転側流路を通り、油圧モータ11の右回転側11Rに流入し、油圧モータ11が右方向に回転し、減速歯車11a及びチャック機構12aを介してケーシングチューブ12を右方向に回転させる。また、油圧モータ11の左回転側11Lからは圧力が低下した作動油が流出し、ブレーキバルブ17の右回転側流路及びソレノイド方向切換弁16の右回転側流路における戻り流路をそれぞれ通過してタンク19に戻る。
【0015】
切換スイッチ21が右回転側21Rにあり、ケーシングチューブ12が右方向に回転している状態で、切換スイッチ21を右回転側21Rから左回転側21Lに急激に切り換えた場合、ソレノイド方向切換弁16の右回転側ソレノイド16Rへの通電が断たれるとともに、オフディレータイマ24Lの遅延動作によって左回転側の接点23Lが遮断状態に保持されているため、両方向のソレノイド16R,16Lへの通電が断たれた状態になり、切換スイッチ21が左回転側21Lに切り換えられていても、ソレノイド方向切換弁16は中立の停止位置を保持する。
【0016】
ソレノイド方向切換弁16が停止位置に戻ると、油圧ポンプ15側の供給流路とタンク19側の戻り流路とがソレノイド方向切換弁16内で連通した状態になることから、ブレーキバルブ17の両方向のパイロット17R,17Lが同じ圧力になり、ブレーキバルブ17は、中立のブレーキ位置に戻る。このとき、ケーシングチューブ12に生じた捻りが戻ることによって油圧モータ11に左回転方向の力が作用していた場合でも、油圧モータ11の右回転側11Rから流出する高圧の作動油は、ブレーキバルブ17のブレーキ位置に設けられた絞り17bを通って少量ずつ流出するので、油圧モータ11が急激に回転することを防止できる。
【0017】
所定時間経過後にオフディレータイマ24Lが作動を終了し、接点23Lが復帰して通電回路22Lから左回転側ソレノイド16Lに通電されると、ソレノイド方向切換弁16が停止位置から左回転側流路に切り換わり、左回転側パイロット17Lに作動油の圧力が作用してブレーキバルブ17の流路も左回転側に切り換わることにより、油圧モータ11が左回転を開始する。
【0018】
ここで、接点23R,23L及びオフディレータイマ24R,24Lが設けられていない場合は、切換スイッチ21を右回転側21Rから左回転側21Lに急激に切り換えると、右回転側ソレノイド16Rへの通電が断たれた直後に左回転側ソレノイド16Lが通電状態になるため、ソレノイド方向切換弁16が右回転側流路から左回転側流路に切り換わり、同時に、左回転側パイロット17Lに作動油の圧力が作用してブレーキバルブ17の流路も左回転側に切り換わる。このとき、ケーシングチューブ12から油圧モータ11に左回転方向の力が作用していた場合、油圧モータ11の右回転側11Rから流出する作動油が、ソレノイド方向切換弁16及びブレーキバルブ17の左回転側の戻り流路を戻ることになり、油圧モータが逆方向に高速で回転してしまうため、油圧モータ11やチャック機構12aなどの装置各部が破損したり、騒音が発生したりするおそれがある。
【0019】
したがって、前述のような接点23R,23L及びオフディレータイマ24R,24Lを設けておくことにより、切換スイッチ21を右回転側21Rから左回転側21Lに、あるいは、左回転側21Lから右回転側21Rに急激に切り換えても、油圧モータ11から流出する作動油は、ブレーキバルブ17の絞り17bを通って少量ずつ流出するので、油圧モータが高速で回転することを防止でき、油圧モータ11やチャック機構12aなどの装置各部を保護することができ、騒音が発生することもなくなる。
【0020】
なお、切換スイッチ21を中立位置に戻したときには、前記特許文献1と同様にして油圧モータ11の高速回転を防止できる。
【0021】
また、本発明における施工具は、前記ケーシングチューブに限るものではなく、鋼管杭やケリーバであってもよい。さらに、油圧アクチュエータも、前記油圧モータに限らず、例えば、正方向、逆方向に作動する揺動シリンダであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…油圧モータ、11a…減速歯車、11R…右回転側、11L…左回転側、12…ケーシングチューブ、12a…チャック機構、13…油圧回路、14…電気回路、15…油圧ポンプ、16…ソレノイド方向切換弁、16R…右回転側ソレノイド、16L…左回転側ソレノイド、17…ブレーキバルブ、17a…逆止弁、17b…絞り、17R…右回転側パイロット、17L…左回転側パイロット、18…リリーフバルブ、19…タンク、21…切換スイッチ、21R…右回転側、21L…左回転側、22R,22L…通電回路、23R,23L…接点、24R,24L…オフディレータイマ