【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年11月8日、中国、河南省、中原、中原工学院で開催された「ICEERB2014:The 6th International Conference on Energy and Environment of Residential Buildings 平成26年(2014年)第6回居住建築のエネルギー及び環境に関する国際会議」において発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選定部は、新たに取得した故障データと前記第1区間の上下限値の位置関係と、新たに取得した故障データと前記第2区間の上下限値の位置関係を、チェビシェフの不等式を用いて評価するとともに、評価結果に基づいて、前記ベイズ法、前記ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の信頼性評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
(1)信頼性評価装置の構成
(1−1)信頼性評価装置の概略構成
本発明の第1実施形態に係る信頼性評価装置1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、信頼性評価装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0018】
本実施形態に係る信頼性評価装置1は、対象機器の信頼性を評価する。なお、本実施形態において、対象機器とは、プラント設備や建築設備などの設備機器が一例として挙げられるが、これに限定するものではない。
【0019】
ここで、本実施形態において、機器の信頼性とは、機器が故障せずに安定して運転させる度合い、又は性質を示す。本実施形態では、機器の信頼性は、保全性を含む概念である。
【0020】
また、
図1に示すように、第1実施形態に係る信頼性評価装置1は、通信部10と、記憶部20と、演算処理部30と、出力部40とを備える。なお、信頼性評価装置1は、ユーザが情報を入力するための入力部など、他の機能も備えているが、ここでは、他の機能についての説明を省略する。
【0021】
通信部10は、外部機器(不図示)との間で通信を行う。通信部10と外部機器との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよく、特に限定されない。通信部10は、外部機器から送信された故障データを受信する。通信部10によって受信された故障データは、記憶部20に記憶されるとともに、演算処理部30に入力される。
【0022】
記憶部20は、ハードディスクやメモリ等の記憶媒体によって構成される。記憶部20は、信頼性評価装置1における処理に必要な各種情報を記憶する。記憶部20は、演算処理部30が実行するプログラムを記憶すると共に、演算処理部30でのプログラム実行中にワークエリアとして使用される。また、記憶部20は、上述した故障データを記憶する。記憶部20に記憶される故障データ及びその他の情報は、演算処理部30によって参照される。
【0023】
演算処理部30は、信頼性評価装置1における各種機能を制御する。演算処理部30は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。この演算モジュールは、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、各部の動作制御やユーザ操作に対する種々の処理を行う。
【0024】
出力部40は、ディスプレイとして機能し、演算処理部30から出力された出力情報を表示する。なお、出力部40は、出力情報を印刷出力するように構成されていてもよいし、出力情報を外部装置(例えば、外部のPC)に送信するように構成されていてもよい。
【0025】
(1−2)演算処理部30の構成
次に、演算処理部30の構成について説明する。本実施形態に係る演算処理部30は、取得部31と、推定故障データ算出部32と、上下限値算出部33と、選定部34と、評価部35とを備える。
【0026】
取得部31は、複数の故障データを取得する。なお、取得部31は、通信部10を介して、外部機器から故障データを取得してもよいし、ユーザの入力によって故障データを取得してもよいし、記憶部20に記憶される故障データを取得してもよい。
【0027】
ここで、複数の故障データは、対象機器の故障時期を推定するための標本データである。例えば、故障データは、対象機器と同じ仕様の機器において、実測された故障時期を示す実績データである。
【0028】
なお、故障データは、乱数データであってもよい。例えば、故障データは、ベイズ型、ゴンベルツ型、対数正規型、ワイブル型、指数型、極値型の何れかに準じた乱数データであってもよい。このような乱数データは、機器仕様や故障率曲線における時期(例えば、初期故障期、偶発故障期、摩耗故障期など)が異なる様々なケースを対象としたシミュレーションを実行する場合に有効である。
【0029】
推定故障データ算出部32は、複数の故障データに基づいて、ベイズ法により推定される故障時期を示すベイズ推定故障データと、ゴンベルツ法により推定される故障時期を示すゴンベルツ推定故障データとを算出する。
【0030】
また、本実施形態では、ベイズ推定故障データは、平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure)を表現する分布データであり、ゴンベルツ推定故障データは、ゴンベルツ曲線を表現する関数データである。なお、ベイズ法により推定されるベイズ推定故障データの算出方法、及び、ゴンベルツ法により推定されるゴンベルツ推定故障データの算出方法については、詳細を後述する。
【0031】
上下限値算出部33は、ベイズ推定故障データに基づいて、所定の信頼水準によって規定される第1区間の上下限値を算出するとともに、ゴンベルツ推定故障データに基づいて、所定の信頼水準によって規定される第2区間の上下限値を算出する。
【0032】
ここで、所定の信頼水準は、分布の母平均の存在する信頼区間の水準値(信頼度)(%)を示す。本実施形態に係る所定の信頼水準は、±95%(±2σ)であることとする。なお、所定の信頼水準は、±95%(±2σ)に限定されない。所定の信頼水準は、正規分布の±3σの数値で規定してもよい。例えば、所定の信頼水準は、±80%に規定してもよいし、±60%としてもよい。すなわち、所定の信頼水準は、任意に設定可能である。
【0033】
また、第1区間の上下限値は、ベイズ法によって算出されるベイズ推定故障データにおける所定の信頼水準±95%の信頼区間(即ち、95%信頼区間)の上下限値を示す。同様に、第2区間の上下限値は、ゴンベルツ法によって算出されるゴンベルツ推定故障データにおける所定の信頼水準±95%の信頼区間(即ち、95%信頼区間)の上下限値を示す。
【0034】
上下限値算出部33は、上述のようにして算出した算出結果を記憶部20に記憶する。つまり、上下限値算出部33は、第1区間の上下限値と第2区間の上下限値とを記憶部20に記憶する。これにより、記憶部20には、上下限値算出部33によって算出された第1区間の上下限値と第2区間の上下限値とが、順次蓄積される。
【0035】
選定部34は、第1区間の上下限値と第2区間の上下限値とに基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。
【0036】
具体的に、選定部34は、第1区間の上下限値に基づいて、第1区間の変動量ΔBを算出し、第2区間の上下限値に基づいて、第2区間の変動量ΔGを算出する。なお、第1区間の変動量ΔBは、第1区間の上限値と下限値との上下間隔(差分)の変動量であり、第2区間の変動量ΔGは、第2区間の上限値と下限値との上下間隔(差分)の変動量である。
【0037】
そして、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1以上である場合、ベイズ法を選定する。つまり、選定部34は、「ΔB≧TH1」の関係を満たす際に、ベイズ法を選定する。
【0038】
また、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1未満であり、かつ、第2区間の変動量ΔGが、第1変動閾値TH1よりも小さい第2変動閾値TH2以上である場合、ゴンベルツ法を選定する。つまり、選定部34は、「ΔB<TH1」と、「ΔG≧TH2」の関係を満たす際に、ゴンベルツ法を選定する。なお、このとき、第1変動閾値TH1>第2変動閾値TH2である。また、第1変動閾値TH1及び第2変動閾値TH2は、「TH1>TH2」の関係を満たしていれば、任意の値を適用してもよい。
【0039】
また、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1未満であり、かつ、第2区間の変動量ΔGが第2変動閾値TH2未満である場合、最尤法を選定する。つまり、選定部34は、「ΔB<TH1」と、「ΔG<TH2」の関係を満たす際に、最尤法を選定する。
【0040】
評価部35は、選定部34によって選定された推定手法を用いて、複数の故障データから対象機器の故障時期を推定し、対象機器の信頼性を評価する。具体的に、評価部35は、選定部34によって、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中の何れかの推定手法が選定されると、選定された推定手法を用いて、複数の故障データから、対象機器の故障時期を推定する。そして、選定部34は、対象機器の故障時期が所定基準値以上であるか否か等に基づいて、対象機器の信頼性を評価する。このとき、評価部35は、例えば、平均故障間隔(MTBF)を算出してもよいし、所定期間当たりの故障率を算出してもよい。また、評価部35は、JISZ8115などに定義される信頼度を算出して、信頼性を評価してもよい。
【0041】
(2)信頼性評価装置の動作
次に、信頼性評価装置1の動作について説明する。
図2は、信頼性評価装置1が対象機器の故障時期を推定する際の動作を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS10において、信頼性評価装置1では、取得部31が、故障データを取得する。取得部31によって取得された故障データは、記憶部20に逐次記憶される。
【0043】
ステップS20において、信頼性評価装置1では、推定故障データ算出部32は、複数の故障データに基づいて、ベイズ法により推定される故障時期を示すベイズ推定故障データと、ゴンベルツ法により推定される故障時期を示すゴンベルツ推定故障データとを算出する。
【0044】
上下限値算出部33は、ベイズ推定故障データの所定の信頼水準95%に基づく第1区間の上下限値を算出するとともに、ゴンベルツ推定故障データの所定の信頼水準95%に基づく第2区間の上下限値を算出する。そして、上下限値算出部33は、算出した第1区間の上下限値及び第2区間の上下限値を記憶部20に記憶する。
【0045】
ここで、
図3には、第1区間の上下限値の一例を示すグラフ図が示されており、
図4には、第2区間の上下限値の一例を示すグラフ図が示されている。
図3〜4では、横軸にデータ数が示されており、縦軸にMTBFが示されている。なお、縦軸の平均故障間隔(MTBF)の値は、指数によって示されているため、例えば、「日数」を単位とする場合には、6倍した値を適用してもよい。
【0046】
図3〜4に示すように、第1区間の上下限値及び第2区間の上下限値は、故障データのデータ数に応じて、変化する。また、第1区間の変動量及び第2区間の変動量は、データ数が多くなるに従って、小さくなる。なお、
図3〜4に示すように、縦軸方向において、ゴンベルツ推定故障データの第2区間の上下限値の間隔は、ベイズ推定故障データの第1区間の上下限値の間隔に比べて、狭くなることに留意すべきである。
【0047】
ステップS30において、選定部34は、第1区間の上下限値に基づいて、第1区間の変動量ΔBを算出し、第2区間の上下限値に基づいて、第2区間の変動量ΔGを算出する。
【0048】
具体的に、選定部34は、ステップS20において、上下限値算出部33によって算出された第1区間の上下限値(以下、今回第1区間の上下限値として示す)を取得するとともに、前回に上下限値算出部33によって算出され、記憶部20に記憶されている第1区間の上下限値(以下、前回第1区間の上下限値として示す)を参照する。そして、選定部34は、今回第1区間の上下限値の上下間隔と、前回第1区間の上下限値の上下間隔との差分を、変動量ΔBとして算出する。
【0049】
また、選定部34は、上下限値算出部33によって算出された第2区間の上下限値(以下、今回第2区間の上下限値として示す)を取得するとともに、前回に上下限値算出部33によって算出され、記憶部20に記憶されている第2区間の上下限値(以下、前回第2区間の上下限値として示す)を参照する。そして、選定部34は、今回第2区間の上下限値の上下間隔と、前回第2区間の上下限値の上下間隔との差分を、変動量ΔGとして算出する。
【0050】
ステップS40において、選定部34は、第1区間の変動量ΔBと、第2区間の変動量ΔGとに基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。なお、ステップS40の詳細な動作は、後述する(
図6参照)。
【0051】
ステップS50において、評価部35は、選定部34によって選定された推定手法により、複数の故障データから対象機器の故障時期を推定し、対象機器の信頼性を評価する。
【0052】
なお、上述したステップS10〜S50の動作は、信頼性評価装置1の取得部31において、故障データが取得される度に実行される。
【0053】
次に、ステップS40における動作について具体的に説明する。
図4は、ステップS40において、信頼性評価装置1が推定手法を選定する際の動作を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS41において、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1以上であるか否かを判定する。
【0055】
ステップS42において、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1以上である場合、ベイズ法を選定する。
【0056】
一方、ステップS43において、選定部34は、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1以上でないと判定した場合、すなわち、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1未満である場合、第2区間の変動量ΔGが、第1変動閾値TH1よりも小さい第2変動閾値TH2以上であるか否かを判定する。
【0057】
ステップS44において、選定部34は、第2区間の変動量ΔGが、第2変動閾値TH2以上であると判定した場合、ゴンベルツ法を選定する。
【0058】
一方、ステップS45において、選定部34は、第2区間の変動量ΔGが、第1変動閾値TH1よりも小さい第2変動閾値TH2以上でないと判定した場合、すなわち、第2区間の変動量ΔGが第2変動閾値TH2未満であると判定した場合、最尤法を選定する。
【0059】
以上のようにして、信頼性評価装置1では、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。
【0060】
(3)推定手法
次に、ベイズ法、ゴンベルツ法、最尤法のそれぞれの推定手法について簡潔に説明する。
【0061】
(3−1)ベイズ法
ベイズ法は、標本データのデータ数が数個〜20個程度の時に用いられることが好ましいとされている。まず、ベイズ法の基本となるベイズの定理を下記に示す。
【0062】
ベイズの定理、対象となる母数Hを一元化すると、母数Hの事前分布は、g(θ)として示され、母集団分布f(t|θ)は、f(t
1、…、t
n|θ)として示される。
【0063】
また、事前分布g(θ)及び母集団分布f(t
1、…、t
n|θ)からのn個のサンプルの同時分布は、下記の式(1)によって示され、母数Hの事後分布は、下記の式(2)によって示される。
【0064】
【数1】
ここで、事前分布g(θ)は、母数Hについて利用できる主観的情報の総量を示すものと考えられ、標本データT=(t
1、…、t
n)とは独立であるとみなす。
【0065】
一方、母集団分布f(t
1、…、t
n|θ)は、母数Hによって左右されるので、条件付き分布f(T|θ)の形で与えられる。母数Hの事前分布g(θ)は、標本データTが観測された後には事後分布g(θ|T)に更新されることとなる。
【0066】
したがって、ベイズの定理によって、事後分布g(θ|T)は、下記式(3)によって示される。
【0067】
【数2】
上記式(3)によって示される事後分布g(θ|T)は、標本データTである故障データに基づいて、ベイズ法によって算出したベイズ推定故障データとなる。そして、事後分布g(θ|T)に基づいて、所定の信頼水準(例えば、±95%)によって規定される第1区間の上下限値が算出される。
【0068】
一方、偶発故障期間を対象とした場合には、母集団分布の確率密度関数を指数分布として論理を展開する。つまり、母集団分布f(t|λ)が下記式(4)によって示される。
【0069】
f(t|λ)=λexp(−λt) (t≧0、λ=0) ・・・式(4)
また、データT=(t
1、…、t
n)が観測された後のΛの事後分布(λ|T)を、ベイズの定理によって求めると、下記式(5)によって示される。
【0070】
【数3】
なお、事後分布g(λ|T)は、母数(α+T)、(β+n)のガンマ分布となる。上記式(5)によって示される事後分布g(λ|T)は、ベイズ法によって算出したベイズ推定故障データとしてもよい。
【0071】
(3−2)ゴンベルツ法
一般的に、ゴンベルツ法は、標本データのデータ数が20〜50個程度の時に用いられることが好ましい。ゴンベルツ曲線と呼ばれるグラフは、xとyの関数である下記式(6)をグラフ化したものである。
【0072】
y=Kb
e−cx ・・・式(6)
式(6)において、xは時間を示し、yは故障累積値を示し、Kは故障累積値の増加が収束する定数値を示し、b及びcは、係数を示す。
【0073】
この式(6)は、下記式(7)によって示される微分方程式から得られる。
【0074】
dy/dx = Ay×e
−Bx ・・・式(7)
なお、式(7)において、dy/dxは、yの増加率を示し、yの増加率は、直前のyに比例して増加する要因や時間xに伴い指数的に減少する要因に関係することを表している。
【0075】
標本データである複数の故障データを、上述の式(6)によってグラフ化することによって、ゴンベルツ曲線を表現するゴンベルツ推定故障データを算出する。そして、K=1(100%)とした場合に、故障累積値yである所定の信頼水準(例えば、±95%)によって規定される時間xの区間が、所定の信頼水準によって規定される第2区間の上下限値として算出される。
【0076】
(3−3)最尤法
一般的に、最尤法は、標本データのデータ数が50個以上の時に適用できる手法である。これは、データ数が50個未満の場合には、誤差が大きくなることから、予測推定に向いていないためである。最尤法は、統計学において、与えられたデータからそれが従う確率分布の母数について推測するために最も用いられる手法の一つであり、尤度の概念を利用するものである。具体的に、統計的な推定を行う際、実際に得られた標本データがあるとき、それが得られる確率が最大となるような母数の値をその推定値とする。最尤法は母数の一番尤もらしい値を探す手法である。すなわちグラフは正規分布で表しつつ、故障時期を推定する手法である。なお、尤度関数は、下記式(8)のように定義される。
【0077】
lik(θ)=f
D(x
1,x
2,…,x
n|θ) ・・・式(8)
【0078】
(4)作用・効果
図6には、ベイズ法、ゴンベルツ法、最尤法のそれぞれの推定手法において、データ数と推定精度との関係を表すイメージ図が示されている。
図6に示すように、データ数に応じて推定精度の高い推定手法が変わることはわかっているが、最適な推定手法を選定するためのデータ数の境界は、明確でない。
【0079】
そこで、本実施形態に係る信頼性評価装置1では、選定部34が、第1区間の上下限値と第2区間の上下限値とに基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。すなわち、本実施形態に係る信頼性評価装置1によれば、推定手法を選定するための新たな選定指標として、第1区間の上下限値と第2区間の上下限値とを用いて、推定精度の高い推定方法を選定する。
【0080】
具体的に、選定部34は、ベイズ法により推定されたベイズ推定故障データに基づく第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1以上である場合、ベイズ法を選定し、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1未満であり、かつ、ゴンベルツ法により推定されるゴンベルツ推定故障データに基づく第2区間の変動量ΔGが、第1変動閾値TH1よりも小さい第2変動閾値TH2以上である場合、ゴンベルツ法を選定し、第1区間の変動量ΔBが、第1変動閾値TH1未満であり、かつ、第2区間の変動量ΔGが第2変動閾値TH2未満である場合、最尤法を選定する。そして、評価部35は、選定部34によって選定された推定手法によって、故障データから対象機器の故障時期を推定する。
【0081】
このように、本実施形態に係る信頼性評価装置1によれば、推定手法を選定するための新たな選定指標として、第1区間の変動量ΔBと第2区間の変動量ΔGとを規定し、当該第1区間の変動量ΔBと第2区間の変動量ΔGとに基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。
【0082】
これにより、対象機器の故障時期を推定する際に、第1区間の変動量ΔBと第2区間の変動量ΔGとに基づいて、ベイズ法及びゴンベルツ法による推定結果(算出結果)の安定性を判断しつつ、推定精度の高い推定手法を選定できる。すなわち、かかる信頼性評価装置1によれば、最適な推定手法を選定することによって、故障時期の推定精度を確保して、信頼性を正確に評価することができる。
【0083】
なお、上述した第1変動閾値TH1及び第2変動閾値TH2には、任意の値を適用してもよい。但し、第1変動閾値TH1及び第2変動閾値TH2は、小さいほど、ベイズ法が選定されやすくなる一方、ゴンベルツ法及び最尤法が選定されにくくなる。このため、第1変動閾値TH1及び第2変動閾値TH2は、信頼性を評価する上で、適宜最適な値を適用することが望まれる。
【0084】
また、本実施形態で説明した信頼性評価装置1は、コンピュータにより実現可能である。また、信頼性評価装置1を構成する各機能をプログラムとして構築し、信頼性評価装置1として利用されるコンピュータにインストールして実行させることや、通信ネットワークを介して流通させることが可能である。例えば、このプログラムは、信頼性評価装置1が備える記憶部20に記憶させることも可能であるし、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することや、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0085】
[その他の実施形態]
次に、本発明のその他の実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、選定部34が、第1区間の上下限値に基づいて、第1区間の変動量ΔBを算出し、第2区間の上下限値に基づいて、第2区間の変動量ΔGを算出するとともに、第1区間の変動量ΔBと第2区間の変動量ΔGとに基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定していたが、これに限定されない。
【0086】
例えば、選定部34は、新たに取得した故障データと第1区間の上下限値の位置関係と、新たに取得した故障データと第2区間の上下限値の位置関係とを、チェビシェフの不等式を用いて評価するとともに、評価結果に基づいて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定してもよい。
【0087】
チェビシェフの不等式は、確率変数Xが平均値μから標準偏差σのk(k>0)倍以上離れている確率P(|X−μ|≧kσ)が、全体の1/k
2以下であることを表しており、次式で示される。
【0088】
P(|X−μ|≧kσ)≦1/k
2 ・・・式(9)
この場合、選定部34は、新たに取得した故障データをチェビシェフの不等式の確率変数Xに適用する。そして、新たに取得した故障データと第1区間の上下限値の位置関係を評価する。同様に、新たに取得した故障データと第2区間の上下限値の位置関係を評価する。なお、このような定量的な評価手法については、ビックデータのデータの選別、グループ化等にも適用できる。
【0089】
これにより、新たに取得した故障データが、第1〜2区間の上下限値のそれぞれにどれだけ近いのか遠いのか、その位置を定量的に評価できる。さらに、新たに取得した故障データが、第1区間内のどこに位置しているかの評価に適用するとともに、新たに取得した故障データが、第2区間内のどこに位置しているかを評価できる。
【0090】
そして、選定部34は、第1区間における位置関係の評価結果を第1区間評価値とし、第2区間における位置関係の評価結果を第2区間評価値として、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。
【0091】
例えば、選定部34は、第1区間評価値が第1位置閾値以上である場合、ベイズ法を選定し、第1区間評価値が第1位置閾値未満であり、かつ、第2区間評価値が第1位置閾値よりも小さい第2位置閾値以上である場合、ゴンベルツ法を選定し、第1区間評価値が、第1位置閾値未満であり、かつ、第2区間評価値が第2位置閾値未満である場合、最尤法を選定する。
【0092】
このようにして、選定部34は、チェビシェフの不等式を用いて、ベイズ法、ゴンベルツ法、又は、最尤法の中から何れか一つの推定手法を選定する。なお、選定部34は、上述した第1区間の変動量ΔB及び第2区間の変動量ΔGに加え、チェビシェフの不等式の評価結果を組み合わせて、推定手法を選定してもよい。
上述した第1実施形態では、ベイズ推定故障データが、平均故障間隔(MTBF)の分布データであるとしたが、これに限定されない。例えば、平均故障寿命(MTTF:Mean Time To Failure)であってもよい。
【0093】
また、標本データである故障データは、故障時期を示すビックデータに基づいて作成してもよい。具体的に、ビックデータを複数のグループに分類し、それぞれのグループに含まれる複数のデータによって示される故障時期の平均値を故障データとしてもよい。或いは、ビックデータからランダムに抽出した複数のデータを故障データとしてもよい。
【0094】
なお、ベイズ法及び最尤法を用いた処理は、例えば、「建築設備における信頼水準の評価に関する研究(空気調和・衛生工学会論文集No.64、1997年1月)」等に記載される技術を適用してもよい。
【0095】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。