特許第6618275号(P6618275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618275
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20191202BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   B41J2/14 611
   B41J2/14 201
   B41J2/01 307
   B41J2/01 303
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-104492(P2015-104492)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-215533(P2016-215533A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】村岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】工藤 徳治
(72)【発明者】
【氏名】安間 弘雅
(72)【発明者】
【氏名】岩野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】林崎 公之
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05610635(US,A)
【文献】 特開2009−274267(JP,A)
【文献】 特開2006−015733(JP,A)
【文献】 特開2002−079655(JP,A)
【文献】 特開2004−042558(JP,A)
【文献】 特開2007−012899(JP,A)
【文献】 特開2013−043368(JP,A)
【文献】 特開平09−174822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置に設けられた接点と電気的に接続するための複数の端子と、前記液体吐出装置から伝送された制御信号に応じて液体を吐出するための液体吐出素子が形成されている液体吐出素子基板と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数の端子には、前記液体吐出素子を制御するための複数の信号端子および制御用グランド端子と、前記複数の信号端子および前記制御用グランド端子とは異なり、前記液体吐出素子を駆動するための駆動用電源端子または駆動用グランド端子である他の端子とが含まれており、
前記複数の信号端子および前記制御用グランド端子は、前記他の端子よりも前記液体吐出素子基板に近い位置に配置されており、
前記複数の信号端子の全ては、前記他の端子よりも前記液体吐出素子基板に近い位置に配置されている端子列に含まれていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
記信号端子と前記液体吐出素子基板とを接続する信号配線は、前記駆動用電源端子と前記液体吐出素子基板とを接続する電源配線および前記駆動用グランド端子と前記液体吐出素子基板とを接続するグランド配線の間の外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記制御用グランド端子は、複数の制御用グランド端子を含んでおり、
前記複数の制御用グランド端子は、その間に前記複数の信号端子を挟むように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液体吐出素子基板に一番近い位置に配置されている端子列および当該端子列の次に前記液体吐出素子基板に近い位置に配置されている端子列に、前記複数の信号端子の全ての端子が配置されており、
前記複数の制御用グランド端子は、前記一番近い位置に配置されている端子列の配列方向の両端に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記次に前記液体吐出素子に近い位置に配置されている端子列の端子の配列方向の両端には、前記液体吐出素子を制御するための制御用電源端子が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記信号端子の位置よりも前記液体吐出素子基板から遠い位置に前記液体吐出素子を駆動するための駆動用グランド端子が配置されており、
前記遠い位置よりもさらに遠い位置に前記液体吐出素子を駆動するための駆動用電源端子が配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記駆動用電源端子と前記駆動用グランド端子とは、隣接して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッドを装着するためのキャリッジを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
前記キャリッジには前記接点が設けられており、前記接点と対向する前記液体吐出ヘッドの面において前記駆動用グランド端子に近い側の端部を支点として前記前記液体吐出ヘッドを回動させることにより、前記信号端子よりも先にまたは同時に前記制御用グランド端子と前記接点とが電気的に接続されるように、前記液体吐出ヘッドが前記キャリッジに装着されることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記接点は、前記端子と対向する面から外側に向かって突出している電気接続ピンであり、
前記制御用グランド端子と電気的に接続する電気接続ピンは、他の電気接続ピンよりも外側に向かって突出していることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置本体と液体吐出ヘッドとを両者に設けられた接点を接触させて電気的に接続させる方法が知られている。この接続の際、液体吐出ヘッドに設けられている液体吐出素子を制御するための制御用のグランド系の接点が接続される前に制御用の信号系の接点が接続されてしまうと、いわゆるラッチアップが起こることがある。特許文献1には、グランド系の接続タイミングよりも信号系の接続タイミングを遅らせる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−174822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高速処理や高精細な画像の記録などのために、液体吐出ヘッドに設けられる液体吐出素子の個数は増加傾向にある。液体吐出素子の数が増加すると、液体吐出素子を駆動するための駆動用の配線に流れる電流量も増加する。この電流量が増加すると、この配線と液体吐出素子の制御用の配線とを並走させる構成において、液体吐出素子の制御信号へのノイズの影響も大きくなり、ノイズの影響によって所望の液体吐出動作が実行されないことがある。
【0005】
特許文献1においては、このようなノイズに対する対策が考慮されていないため、制御信号へのノイズの影響を抑制することができないおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものである。そして、その目的は、制御信号へのノイズの影響を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体吐出装置に設けられた接点と電気的に接続するための複数の端子と、前記液体吐出装置から伝送された制御信号に応じて液体を吐出するための液体吐出素子が形成されている液体吐出素子基板と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記複数の端子には、前記液体吐出素子を制御するための複数の信号端子および制御用グランド端子と、前記複数の信号端子および前記制御用グランド端子とは異なり、前記液体吐出素子を駆動するための駆動用電源端子または駆動用グランド端子である他の端子とが含まれており、前記複数の信号端子および前記制御用グランド端子は、前記他の端子よりも前記液体吐出素子基板に近い位置に配置されており、前記複数の信号端子の全ては、前記他の端子よりも前記液体吐出素子基板に近い位置に配置されている端子列に含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、制御信号へのノイズの影響を抑制することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の内部構成を示す概略斜視図である。
図2】液体吐出ヘッドを示す斜視図である。
図3】液体吐出ヘッドの駆動回路を示す回路図である。
図4】(a)および(b)はコンタクト基板を示す模式図である。
図5】端子および配線のレイアウトを示す模式図である。
図6】ノイズの影響を説明するための模式図である。
図7】(a)および(b)は液体吐出ヘッドの装着方法を示す図である。
図8】(a)〜(c)は端子のレイアウトの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は液体吐出ヘッド(以下「記録ヘッド」という)1を用いた液体吐出装置(以下「記録装置」という)10の内部構成を示す概略斜視図である。記録装置10はシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置である。記録ヘッド1には、シートSとの対向面に吐出口(不図示)が形成されている。吐出口から図中に示すz方向下方に向けて液体を吐出させることによって、シートSに液体が付与される。なお、ここでは、吐出口からインクを吐出させる場合について説明する。記録ヘッド1はキャリッジ2に搭載されている。キャリッジ2は、主走査方向(図中に示すx方向)に延在しているガイド軸3、4によって、x方向へ往復移動自在にガイドされる。
【0012】
シートSは、記録装置10に設けられた挿入口6から記録装置10内に挿入された後、その進行方向を反転させてから、ローラ5によって副走査方向(図中に示すy方向)に搬送される。記録装置10においては、キャリッジ2の移動に伴って記録ヘッド1からインクの吐出させる記録動作と、ローラ5によるシートSの搬送動作と、を繰り返すことによって、シートSに画像が記録される。
【0013】
ここで、記録ヘッド1は、インクを吐出するためのエネルギとして、記録素子である電気熱変換体(ヒータ)から発生する熱エネルギを利用するものとする。この場合、ヒータの発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギによって、吐出口からインクを吐出させる。なお、記録素子としてピエゾ素子などを用いてもよい。
【0014】
図2は記録ヘッド1を示す斜視図である。同図に示すように、記録ヘッド1は、筐体11とコンタクト基板20と配線部材15と記録素子基板ユニット12とを備えている。コンタクト基板20、配線部材15、および記録素子基板ユニット12は、筐体11に対して固定されている。筐体11には、インクを収容するインクタンク(不図示)が搭載されており、筐体11の内部には、インクタンクから記録素子基板ユニット12へインクを供給するための流路が設けられている。
【0015】
記録素子基板ユニット12は記録素子基板(液体吐出素子基板)13を備えている。記録素子基板13はSi基板であり、記録素子基板13には異方性エッチングによってインク流路となる開口が形成されている。また、記録素子基板13には、記録素子としてのヒータが複数設けられている。記録素子基板13には、樹脂材料を用いてフォトリソグラフィによって形成されたインク流路および吐出口が複数設けられている。筐体11の流路と記録素子基板13の流露とを連通させることによって、インクタンク内のインクは、流路を通り、吐出口へ向かう。なお、1つの記録素子基板13にはインク流路となる開口が4つ形成されており、1つの記録素子基板13において、4列の吐出口列から異なる色のインクが吐出可能となっている。
【0016】
記録素子基板ユニット12は、アルミナ材料からなる支持部材14を有しており、記録素子基板13は支持部材14に支持されている。なお、図3においては、3つの記録素子基板13を用いる場合を図示しているが、用いることができる記録素子基板の個数は3つに限定されるものではない。また、図2においては、1つの記録素子基板13に対して、4列の吐出口列が形成されている場合を図示しているが、吐出口列の列数も4列に限定されるものではない。
【0017】
配線部材15は、記録素子基板13の電極部とコンタクト基板20における端子とを電気的に接続する。記録装置10からの信号は、コンタクト基板20および配線部材15を介して記録素子基板ユニット12の記録素子基板13へ伝送される。配線部材15には、記録素子基板13が配置される位置に対応する位置に開口部が設けられており、開口部の開口形状は長方形となっている。開口部の短辺付近には、記録素子基板13の電極部と電気的に接続する電極部が設けられている。また、配線部材15には、コンタクト基板20の接続部と電気的に接続するための接続部が設けられている。なお、配線部材15としては、電気配線テープ等を用いることができる。
【0018】
詳細は図4等を参照して後述するが、コンタクト基板20には、各種端子が設けられている。また、図7(a)および(b)を参照して後述するが、キャリッジ2には、記録ヘッド1を搭載した際にコンタクト基板20の端子と接触する位置に電気接続ピン30が設けられている。電気接続ピン30は、記録装置10側の制御回路に電気的に接続されている。コンタクト基板20の端子と電気接続ピン30とが接点接続すると、コンタクト基板20と記録装置10側の制御回路(不図示)とが電気的に接続し、コンタクト基板20を介して記録素子基板13へ記録装置10側から電力が供給され、信号が伝送される。ここでは、信号の伝送方式として、低電圧差動信号伝送方式(LVDS)を用いるものとするが、他の伝送方式を用いてもよい。記録装置10の制御回路から伝送された信号に基づいてインクの吐出が制御され、シートSに画像が記録される。
【0019】
図3は記録ヘッド1の駆動回路を示す回路図である。記録素子基板13には、ヒータ50、駆動素子51、および駆動信号生成回路52が設けられている。駆動信号生成回路52は、シフトレジスタ回路(不図示)、ラッチ回路(不図示)、およびデコード回路(不図示)等を有しており、記録装置10の制御回路からの信号に基づいて駆動素子の駆動信号を生成する。生成された駆動信号に従って駆動素子51がONとなると、ヒータ50に電圧が印加される。
【0020】
図3に示すように、VH配線およびGNDH配線は、記録素子基板13においてはブロック毎に分かれて配線されているが、コンタクト基板20においては夫々1つの配線となっている。この配線によると、記録素子の数が増えるにつれてコンタクト基板20におけるVH配線およびGNDH配線に流れる電流量が多くなる。この場合、DATA配線によって伝送される制御信号(データ信号)にノイズが入り、所望の記録動作が実行されないことがある。そこで、ここでは、データ信号へのノイズの影響を抑えるように、端子を配置する。詳細は、図5および図6を参照して後述する。
【0021】
図4(a)および(b)はコンタクト基板20の端子が設けられている面を示す模式図である。図4(a)および(b)に示すように、コンタクト基板20には、複数の端子21〜23が設けられており、x方向に沿って配置された複数の端子によって構成された端子列を6列有している。図4(a)および(b)に示すコンタクト基板20には、124個の端子が設けられている。端子には、記録素子(ヒータ)電源端子(VH)23、ヒータグランド端子(GNDH)22、データ信号端子(DATA)21、ロジック電源端子(VDD)25、およびグランド端子(VSS)24が含まれている。VH(駆動用電源端子)23はヒータの駆動電源である。GNDH(駆動用グランド端子)22はヒータのグランドである。DATA(信号端子)21は各ヒータを個別にON/OFFするためのシリアルデータを転送する端子である。VDD(制御用電源端子)25はロジック信号用の電源であり、VSS(制御用グランド端子)24はロジック信号用のグランドである。つまり、VH23およびGNDH22はヒータを駆動するための素子駆動用の端子であり、DATA21、VDD25、およびVSS24はヒータを制御するための素子制御用の端子である。ここでは、VH23、GNDH22には32Vの電圧がかかり、VDD25、VSS24には3.3Vの電圧がかかるものとする。
【0022】
図4(a)および(b)に示すように、配線部材15(記録素子基板13)に近い位置から順に、複数のDATA21を含む2列の端子列、複数のGNDH22を含む2列の端子列、複数のVH23を含む2列の端子列が配置されている。また、図4(a)および(b)に示すように、DATA21を含む端子列のうち、z方向最下方の端子列の端子の配列方向(x方向)の両端にはVSS24が配置されている。また、図4(b)において、DATA21の端子列のうち、z方向下方から2番目の端子列のx方向の両端にはVDD25が配置されている。
【0023】
ここで、図3を再び参照して、端子から入力された信号による記録素子の駆動の流れについて説明する。図3に示す構成においては、16個の記録素子を1つのブロックとして、記録素子をブロック毎に順次駆動していく時分割駆動方式を用いる。図3に示すCLKは、DATA21に入力されたシリアルデータの転送の同期をとるためのクロック信号を転送する端子である。LATは、記録素子基板内でシリアルデータを保持回路に移動するトリガとなるラッチ信号を転送する端子である。BLKは、駆動するブロックを選択するためのブロック選択信号を転送する端子である。HEATは、記録素子に対するVH印加時間をパルス長で制御するためのパルス信号を転送する端子である。
【0024】
DATA21を介して入力されたシリアルデータは、クロック信号に同期して記録素子基板13内のシフトレジスタ回路(不図示)に転送される。シフトレジスタ回路に入力されたデータ群はラッチ信号の入力によってラッチ回路(不図示)に保持され、この保持データとパルス信号とブロック選択信号とをAND処理することでパルス状の駆動信号が生成される。この駆動信号によって駆動素子51がON/OFFされ、それによってヒータ50(記録素子)の駆動がON/OFFされる。
【0025】
図5は端子および配線のレイアウトを示す模式図である。なお、図2、4に示すようにコンタクト基板20に端子を設けることは必須ではなく、配線部材15に端子をパターニングしてもよい。図5においては、配線部材15に端子および配線がパターニングされている場合を図示している。図5においても図4(a)および(b)と同様に、記録素子基板13に近い位置から順に、DATA21の端子列、GNDH22の端子列、VH23の端子列が配置されている。この場合、簡単な配線構成とすると、図5に示すような構成となる。DATA21は記録素子基板13に一番近い位置に配置されているため、図5に示すようにDATA配線の長さは考えうる構成の中で一番短い距離となる。
【0026】
図6はノイズの影響を説明するための模式図である。図6に示すように、VH配線(電源配線)およびGNDH配線(グランド配線)において信号の流れは逆向きとなっている。磁場の強さは、電流の大きさに比例し、距離に反比例する。図6に示すように、VH配線とGNDH配線とが並走している場合、両者から生じる磁場は、VH配線とGNDH配線と間の領域である領域26において強めあい、VH配線とGNDH配線との間の領域でない領域27において弱めあう。そのため、VH配線とGNDH配線との間に、DATA配線(信号配線)を配置すると、データ信号へのノイズの影響が大きくなってしまう。これに対して、ここでは、図5に示すように、記録素子基板13に最も近い位置にDATA21を配置することによって、VH配線とGNDH配線との間にDATA配線を配置せずにVH配線とGNDH配線とを並走させる。そのため、本実施形態においては、データ信号へのノイズの影響を抑制できる。
【0027】
このように、ここでは、他の端子よりも記録素子基板13に近い位置にDATA21を配置することによって、DATA配線を比較的短くして他の配線との並走距離を短くする。この場合、VH配線とGNDH配線とを並走させ且つVH配線とGNDH配線との間の外にDATA配線を配置することができる。これによって、データ信号へのノイズの影響を抑え、記録装置10側から記録素子基板13へのデータ信号の伝送性能を確保することができる。なお、図5に示すように、GNDH22とVH23とを隣接して配置すると、複雑な配線構成とすることなくVH配線とGNDH配線とを並走して配置することができる。
【0028】
図7(a)および(b)はキャリッジ2への記録ヘッド1の装着方法を説明するための図である。図7(a)は回動装着する場合を、図7(b)はスライド装着する場合を、夫々示している。図7(a)および(b)に示すように、キャリッジ2に設けられている電気接続ピン30と記録ヘッド1のコンタクト基板20とを対向させ、キャリッジ2に記録ヘッド1を装着する。ここでは、何れの方法においても、z方向最下方に配置されている端子は電気接続ピン30と最初に接続されるようになっている。
【0029】
図7(a)に示す回動装着する場合は、記録ヘッド1の電気接続ピン30との対向面におけるz方向下方の端部を電気接続ピン30に近づけ、この端部を支点として図面正面視から時計回り方向へ回動させる。これによって、電気接続ピンに対して、z方向下方に配置されているVSS24を最初にまたはDATA21と同時に接続させる。
【0030】
図7(b)に示すスライド装着する場合は、VSS24と接続する電気接続ピンを他の電気接続ピンよりもy方向に(外側に)向かって突出させる構成とすることによって、電気接続ピンに対して、VSS24を最初にまたはDATA21と同時に接続させる。この場合、VSS24と接続する電気接続ピンは、DATA21と接続する電気接続ピンと同じ長さまたはこれよりも長い長さとする。
【0031】
図4(a)および(b)を参照して説明した端子の配置において、図7(a)および(b)を参照して説明した装着方法とすると、電気接続ピン30に、VSS24が最初に接続され、これと同時または次いでDATA21が接続される。これによって、電気接続ピン30に、DATA21が接続された後に、VSS24が接続された場合等に起こるラッチアップを防止することができる。このように、ここでは、電気接続ピン30に最初に又はDATA21と同時にVSS24を接続させる装着方法とすることによって、ラッチアップを防止することができる。
【0032】
なお、図4(a)および(b)に示す何れの構成においても、z方向最下方の端子列の両端にVSS24を配置している。このようにVSS24を配置することによって、キャリッジ2に記録ヘッド1を装着する際に、キャリッジ2に記録ヘッド1が片当たりしたとしても、両端何れかのVSS24に電気接続ピン30を最初にまたはDATA21と同時に接続させることができる。
【0033】
図4(b)は、z方向最下方の端子列の次に記録素子基板13に近い位置にある端子列のx方向の両端にVDD25を配置した構成を示している。この構成の場合、図7(a)に示すように回動装着すると、電気接続ピン30に、VSS24が最初に接続され、次いでVDD25が接続され、DATA21へ論理電圧が印加される状態となってから、GNDH22、VH23が接続される。このように、ここでは、VH23およびGNDH22よりも先に電気接続ピン30にVSS24およびVDD25を接続させることができる。なお、VDD25の配置は図4(b)に示す位置に限定されず、VSS24よりも後に電気接続ピン30に接続する位置であれば、どこに配置されていてもよい。
【0034】
以上のように、ここでは、電気接続ピンにグランド系の接点が接続される前に信号系の接点が接続されること等に起因するラッチアップの発生を防止することができる。
【0035】
図8(a)〜(c)は端子のレイアウトの他の例を示す模式図である。具体的には、図5に示す構成と同様な構成におけるDATA21とVSS24との位置関係の例を示す模式図である。図8(a)〜(c)においては、夫々4個の端子によって構成された3列の端子列を示している。なお、図8(a)〜(c)においては、配線の図示を省略している。また、図8(a)〜(c)に示す場合においても、図7(a)または(b)にて説明した装着方法によって、キャリッジ2に記録ヘッド1が装着されるものとする。
【0036】
図8(a)は端子列のx方向の中央部において、DATA21の隣に1つのVSS24が配置されている例を示している。この配置であっても、DATA21と同時またはDATA21よりも先にVSS24を電気接続ピン30に接続させることができる。図8(b)はDATA21の両隣にVSS24が配置されている例を示している。また、図8(c)はx方向の両端にVSS24が配置されている例を示している。キャリッジ2へ記録ヘッド1を装着する際の片当たり等を考慮すると、図8(b)および(c)のようにDATA21を挟むように2つ以上のVSS24を配置することがより好ましい。
【0037】
(他の実施形態)
上述した記録ヘッドは、複写機、通信システムを有するファクシミリ、記録部を有するワードプロフェッサなどの装置、各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置などにも用いることができる。
【0038】
上記実施形態においては、液体吐出ヘッドとして、記録装置に用いる記録ヘッドについて説明したが、本発明は、記録ヘッド以外の各種液体吐出ヘッドにも適用することができる。また、上記実施形態においては、液体吐出ヘッドから吐出させる液体としてインクを用いる場合について説明したが、液体としてインク以外の各種処理液等の液体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
10 記録装置(液体吐出装置)
13 記録素子基板(液体吐出素子基板)
21 DATA(信号端子)
24 VSS(制御用グランド端子)
30 電気接続ピン(接点)
50 ヒータ(液体吐出素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8