(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の構成では、アンクル真の軸方向に沿う断面視でのアンクルを含む調速脱進機の薄型化を図る点で未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、小型化及び薄型化が可能なアンクル、調速脱進機、トゥールビヨン、ムーブメント及び時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係るアンクルは、軸受に回動可能に支持されたアンクル真と、前記アンクル真に設けられたアンクル基部と、前記アンクル基部に取り付けられた一対のつめ石と、前記アンクル基部から前記アンクル真の径方向に延設された一対のクワガタと、前記アンクル真の軸方向から見た平面視で、前記一対のクワガタの内側に位置するとともに、前記径方向に延設された剣先と、前記径方向のうち前記剣先の延在方向を第1方向とすると、前記第1方向において、前記剣先の基端部よりも前記アンクル真側に配置されたアンクルサオと、を備え、前記第1方向及び前記軸方向に直交する方向を第2方向とすると、前記第2方向から見た側面視で、前記クワガタ及び前記一対のつめ石が前記第1方向に順に配置され、前記アンクル基部には、前記軸方向に窪むとともに、少なくとも前記軸受を収容する軸受収容部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、従来のようにアンクル基部の延在方向に交差する方向にアンクルサオを接続し、このアンクルサオの先端部にクワガタを接続する構成に比べて、アンクル真の軸方向から見た平面視において、アンクル基部の延在方向に交差する方向でのアンクルの小型化を図ることができる。
しかも、アンクル基部に形成された軸受収容部内に軸受が収容されるので、軸受とアンクル基部との軸方向の距離を縮小することができる。
【0010】
本発明に係るアンクルにおいて、前記側面視において、前記つめ石に対して前記第1方向の一方側に前記クワガタが配置され、前記つめ石に対して前記第1方向の他方側に前記アンクルサオが配置されていてもよい。
この構成によれば、クワガタから離れた位置にアンクルサオを配置することで、アンクルを調速脱進機に搭載した場合、てんぷのてん真から離れた位置にアンクルサオを配置することができる。これにより、アンクルサオのメンテナンスを行い易くなる。
【0011】
本発明に係るアンクルにおいて、前記アンクル基部、前記クワガタ及び前記アンクルサオが一体に形成されていてもよい。
この構成によれば、アンクル基部、クワガタ及びアンクルサオが一体に形成されているため、それぞれを別々に形成する場合に比べてアンクルを高精度に形成できる。
【0012】
本発明に係る調速脱進機は、上記本発明のアンクルと、往復回動可能に構成されるとともに、前記クワガタにより画成されたアンクルハコに係脱可能な振り石を有するてんぷと、回転可能に構成されるとともに、前記つめ石が係脱可能ながんぎ車と、を備えていてもよい。
この構成によれば、上記本発明のアンクルを備えているため、調速脱進機の小型化及び薄型化が可能になる。例えば、軸受が軸受収容部内に収容されるので、アンクル・がんぎ受とアンクルとの軸方向の距離を縮小することができる。その結果、てんぷとアンクルとを軸方向で接近させることができ、調速脱進機の薄型化が実現できる。
【0013】
本発明に係る調速脱進機において、前記アンクル真の軸方向から見た平面視で、前記アンクルサオの両側に配置されて前記アンクルの回動範囲を制限するドテピンを備え、前記ドテピンには、くびれ部が形成されていていてもよい。
この構成によれば、ドテピンにくびれ部が形成されているため、くびれ部を起点にドテピンを屈曲させ易くすることができる。これにより、ドテピンとアンクルサオとの間の間隔が調整し易くなり、アンクルの回動範囲(作動角)を容易に調整できる。その結果、メンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る調速脱進機において、前記てんぷは、往復回動可能なてん真と、前記てん真に設けられたてん輪と、を備え、前記振り石は、前記てん輪に設けられていてもよい。
この構成によれば、振り石をてん輪に設けることで、振り座の大つばに振り石を設ける場合に比べててんぷの薄型化を実現でき、ひいては調速脱進機の薄型化を図ることができる。
【0015】
本発明に係るトゥールビヨンは、上記本発明の調速脱進機と、前記調速脱進機が搭載されるとともに、キャリッジ軸周りに回転可能なキャリッジと、を備えていてもよい。
この構成によれば、トゥールビヨンのように部品点数が多く大型化しやすい構成に上記本発明の調速脱進機を採用することで、小型化及び薄型化が顕著に奏功される。
【0016】
本発明に係るムーブメントは、上記本発明のアンクルを備えていることを特徴とする。
本発明に係る時計は、上記本発明のムーブメントを備えていることを特徴とする。
この構成によれば、小型化及び薄型化を図ったムーブメント及び時計を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型化及び薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
[時計]
図1は、時計1の外観図である。なお、以下に示す各図では、図面を見やすくするため、時計用部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計用部品を簡略化して図示している。
図1に示すように、本実施形態の時計1は、時計ケース3内に、ムーブメント10や時刻に関する情報を示す目盛り等を有する文字板4(
図2参照)、各種指針(何れも不図示)等が組み込まれて構成されている。
【0020】
[ムーブメント]
ムーブメント10は、地板11(
図2参照)と、表輪列12と、トゥールビヨン13と、主に備えている。地板11の図示しない巻真案内穴には、巻真15が組み込まれている。巻真15は、その軸線周りに回転可能、かつ軸方向に移動可能とされている。なお、巻真15の一端部(ムーブメント10に対して突出した部分)には、時計ケース3の側方に位置するりゅうず16が取付けられている。なお、以下の説明では、ムーブメント10の基板を構成する地板11に対して文字板4側をムーブメント10の「裏側」と称し、文字板4側とは反対側をムーブメント10の「表側」と称する。また、以下で説明する各歯車は、何れもムーブメント10の表裏面方向を軸方向として設けられている。
【0021】
図2は、
図1のII−II線に相当する断面図である。
図1、
図2に示すように、表輪列12は、香箱車21と、二番車22と、三番車23と、四番車24と、を備えている。
図2に示すように、表輪列12のうち香箱車21は、地板11と、地板11に対して表側に対向配置された香箱受25と、の間で回転可能に支持されている。表輪列12のうち、二番車22、三番車23及び四番車24は、地板11と、地板11に対して表側に対向配置された輪列受26と、の間で回転可能に支持されている。
【0022】
香箱車21は、内部に時計の動力源となる図示しないぜんまいを有している。香箱車21のぜんまいは、巻真15を回転させることにより巻き上げられる。香箱車21は、ぜんまいが巻き戻される際の回転力により回転する。香箱車21の香箱歯車は、二番車22の二番かなに噛合している。
【0023】
二番車22は、香箱車21の回転によって1時間に1回転する。二番車22の二番歯車は、三番車23の三番かなに噛合している。二番車22の車軸のうち、裏側端部には筒かな31が取り付けられている。筒かな31には、図示しない分針が取り付けられている。また、筒かな31には、筒車32が外挿されている。筒車32は、日の裏車33(
図1参照)を介して筒かな31に接続されている。筒車32は、筒かな31の回転によって12時間に1回転する。筒車32における裏側端部には、図示しない時針が取り付けられている。
【0024】
三番車23は二番車22の回転によって回転する。三番車23の三番歯車は、四番車24の四番かなに噛合している。
四番車24は、三番車23の回転によって回転する。
【0025】
<トゥールビヨン>
図1に示すように、トゥールビヨン13は、キャリッジユニット41と、固定歯車42と、キャリッジユニット41と四番車24とを接続する五番車43と、を備えている。
【0026】
図3は、
図1のIII−III線に相当する断面図である。
図4は、
図1のIV−IV線に相当する断面図である。
図3、
図4に示すように、キャリッジユニット41は、地板11に対して表側に配置された表キャリッジ受45と、地板11に対して裏側に配置された裏キャリッジ受46と、の間で回転可能に支持されている。なお、各キャリッジ受45,46は、連結ピン50(
図3参照)によって地板11に固定されている。
【0027】
固定歯車42は、表キャリッジ受45に固定されている。
五番車43は、表キャリッジ受45と固定歯車42との間で回転可能に支持されている。五番車43は、四番車24の四番歯車に噛合している。したがって、五番車43は、四番車24の回転によって回転する。
【0028】
キャリッジユニット41は、キャリッジ地板51と、キャリッジ地板51に対して表側に位置する表キャリッジ52と、キャリッジ地板51に対して裏側に位置する裏キャリッジ53と、キャリッジ地板51に搭載された調速脱進機54と、を備えている。
【0029】
表キャリッジ52は、表キャリッジベース52aと、表キャリッジベース52aに固定された表キャリッジ軸52bと、を備えている。
表キャリッジベース52aは、キャリッジ地板51に表側から固定されている。
表キャリッジ軸52bは、固定歯車42を貫通するとともに、その表側端部が表キャリッジ受45に回転可能に支持されている。
図3に示すように、表キャリッジ軸52bのキャリッジかな52cは、五番車43に噛合している。したがって、キャリッジユニット41は、五番車43の回転によって回転する。
【0030】
裏キャリッジ53は、裏キャリッジベース53aと、裏キャリッジベース53aに固定された裏キャリッジ軸53bと、を備えている。
裏キャリッジベース53aは、後述するてんぷ受65に裏側から固定されている。
裏キャリッジ軸53bは、その裏側端部が裏キャリッジ受46に回転可能に支持されている。なお、各キャリッジ52,53は、それぞれのキャリッジ軸52b,53bが固定歯車42と同軸上に配置されている。
【0031】
<調速脱進機>
図1、
図3、
図4に示すように、調速脱進機54は、てんぷ61と、がんぎ車62と、アンクル63と、を備えている。
図3、
図4に示すように、てんぷ61は、キャリッジ地板51と、キャリッジ地板51に対して裏側に対向配置されたてんぷ受65と、の間で回転可能に支持されている。なお、てんぷ受65は、連結ピン60(
図3参照)によってキャリッジ地板51に連結されている。
てんぷ61は、てん真66と、てん真66を軸支する軸受67a,67bと、てん真66に取り付けられたてん輪67と、てん真66とてん輪67との間に配置されたひげぜんまい68と、を備えている。
【0032】
てん真66は、各キャリッジ52,53のキャリッジ軸52b,53bと同軸上に配置されている。てん真66は、ひげぜんまい68から伝えられた動力によって軸線周りに一定の振動周期で正逆回動(往復回動)する。てん真66は、表側端部が軸受67aを介してキャリッジ地板51に回転可能に支持され、裏側端部が軸受67bを介しててんぷ受65に回転可能に支持されている。てん真66のうち、てん輪67に対して表側に位置する部分には、振り座70が外装されている。振り座70のうち、てん真66の周方向における一部には径方向の内側に窪む月形71(
図4参照)が形成されている。
【0033】
てん輪67は、てん真66に圧入等によって固定されたハブ部73と、ハブ部73をてん真66の径方向外側から囲繞するリム部74と、ハブ部73及びリム部74間を連結する連結部75と、を備えている。ハブ部73には、振り石76が設けられている。振り石76は、ハブ部73から表側に突出している。
ひげぜんまい68は、てん真66の軸方向から見た平面視で渦巻状の平ひげである。ひげぜんまい68は、その内端部がひげ玉79を介しててん真66に連結され、外端部が図示しないひげ持に連結されている。
【0034】
図3に示すように、がんぎ車62は、キャリッジ地板51と、キャリッジ地板51に対して裏側に対向配置されたアンクル・がんぎ受81と、の間で回転可能に支持されている。なお、アンクル・がんぎ受81は、キャリッジ地板51とてんぷ受65との間に配置されている。
【0035】
がんぎ車62は、平面視において、その一部がてんぷ61に重なり合っている。具体的に、がんぎ車62は、軸部82と、軸部82に形成されたがんぎかな83と、軸部82に外嵌固定されたがんぎ歯車部84と、を備えている。
【0036】
軸部82は、その表側端部が軸受を介してキャリッジ地板51に回転可能に支持され、裏側端部が軸受を介してアンクル・がんぎ受81に回転可能に支持されている。
がんぎ歯車部84は、その外周面に複数の歯部が設けられている。
がんぎかな83は、上述した固定歯車42に噛合している。したがって、がんぎ車62は、キャリッジユニット41の回転によって固定歯車42の周囲を公転しながら自転する。
【0037】
<アンクル>
図4に示すように、アンクル63は、てんぷ61とがんぎ車62との間を接続している。アンクル63は、キャリッジ地板51と、アンクル・がんぎ受81と、の間で往復回動可能に支持されている。具体的に、アンクル63は、アンクル真85と、アンクル真85に固定されたアンクル体86と、アンクル体86に固定されたつめ石87,88及び剣先89と、を備えている。
【0038】
アンクル真85は、その表側端部が軸受90aを介してキャリッジ地板51に回動可能に支持され、裏側端部が軸受90bを介してアンクル・がんぎ受81に回動可能に支持されている。なお、アンクル・がんぎ受81のうち、上述したてん真66と軸方向で重なる部分には、てん真66が通過する通過孔81aが形成されている。
【0039】
図5は、調速脱進機54を裏側から見た部分平面図である。
図6は、アンクル63を裏側から見た斜視図である。
図7は、アンクル63の断面図である。
図5〜
図7に示すように、アンクル体86は、アンクル基部93と、クワガタ接続部94と、クワガタ95と、アンクルサオ96と、を備えている。なお、これらアンクル基部93、クワガタ接続部94、クワガタ95及びアンクルサオ96は電鋳加工等によって一体で形成されている。
【0040】
アンクル基部93は、アンクル真85の径方向に沿って延在する板状に形成されている。アンクル基部93における延在方向の中央部には、アンクル真85が圧入等によって軸方向に貫通している。
図3、
図4に示すように、アンクル基部93は、アンクル真85の軸方向において、がんぎ車62のがんぎ歯車部84と同等の位置に配置され、がんぎ歯車部84と向かい合っている。
図5〜
図7に示すように、アンクル基部93のうち、延在方向の両端部には、がんぎ車62に向けて開口するつめ石取付部(入つめ石取付部100及び出つめ石取付部101)が形成されている。なお、以下の説明では、アンクル真85の軸方向を単に軸方向といい、アンクル真85の径方向(軸方向に直交する方向)を単に径方向という場合がある。
【0041】
各つめ石取付部100,101には、上述したつめ石87,88が各別に取付られている。つめ石87,88は、入つめ石取付部100に取り付けられた入つめ石87と、出つめ石取付部101に取り付けられた出つめ石88と、を備えている。各つめ石87,88は、アンクル63の回動によってがんぎ車62のがんぎ歯車部84(歯部)に係脱する。具体的に、入つめ石87は、出つめ石88に対してがんぎ車62の回転方向(
図5における矢印C参照)の手前側からがんぎ歯車部84に係脱する。出つめ石88は、入つめ石87に対してがんぎ車62の回転方向Cの奥側からがんぎ歯車部84に係脱する。
【0042】
クワガタ接続部94は、アンクル基部93のうち、入つめ石取付部100側の端部から径方向の外側に向けて延設されている。クワガタ接続部94は、平面視において先端部に向かうに従い漸次拡幅されている。
図7に示すように、クワガタ接続部94は、軸方向に沿う断面視において、アンクル基部93に対して裏側に突出している。したがって、クワガタ接続部94は、アンクル基部93に対して裏側にオフセットした位置で径方向に延在している。この場合、
図4に示すように、クワガタ接続部94の裏面は、アンクル・がんぎ受81の表面よりも裏側に位置している。すなわち、クワガタ接続部94の一部は、アンクル・がんぎ受81の上述した通過孔81a内に位置している。なお、クワガタ接続部94の厚さは、アンクル基部93の厚さと同等になっている。
【0043】
図5〜
図7に示すように、クワガタ95は、クワガタ接続部94から径方向の外側に向けて突設されている。クワガタ95は、クワガタ接続部94において幅方向に並んで一対で設けられている。各クワガタ95の先端面は、クワガタ接続部94における幅方向の内側に向けて傾斜する傾斜面になっている。そして、各クワガタ95及びクワガタ接続部94で画成された部分は、アンクル真85の径方向の外側に向けて開口するアンクルハコ105を形成している。アンクルハコ105は、上述したてんぷ61が回動することにより振り石76が係脱可能に収容される。なお、図示の例において、クワガタ95はクワガタ接続部94よりも薄肉に形成されている。
【0044】
クワガタ接続部94には、上述した剣先89が表側から取り付けられている。具体的に、剣先89は、剣先本体89aと、剣先本体89aの基端部に一体で形成された取付凸部89bと、を備えている。取付凸部89bは、上述したクワガタ接続部94に表側から圧入等により固定されている。剣先本体89aは、平面視において、各クワガタ95の間に位置する部分(アンクルハコ105の内側)を径方向の外側に延在している。剣先本体89aの幅は、先端側に向かうに従い漸次縮小している。
図5に示すように、剣先89は、アンクル63の誤回動を防止するためのものである。すなわち、剣先89は、振り石76がアンクルハコ105から離脱した状態において、振り座70の外周面のうち月形71以外の部分に摺接可能とされている。一方で、剣先89は、アンクルハコ105と振り石76とが係合しているときに、振り座70の月形71内に収容される。なお、
図4の例において、剣先89の表面は、アンクル基部93の表面よりも裏側に位置している。
【0045】
図5〜
図7に示すように、アンクルサオ96は、アンクル基部93のうち、出つめ石取付部101から径方向の外側に向けて突設されている。また、アンクルサオ96は、軸方向に沿う断面視において、アンクル基部93に対して裏側に突出している。したがって、アンクルサオ96は、アンクル基部93に対して裏側にオフセットした位置で径方向に延在している。この場合、
図4に示すように、アンクルサオ96の裏面は、アンクル・がんぎ81受の表面よりも裏側に位置している。すなわち、アンクルサオ96の一部は、径方向から見てアンクル・がんぎ受81と重なり合っている。なお、アンクルサオ96の厚さは、アンクル基部93の厚さと同等になっている。
【0046】
図4、
図5に示すように、上述したキャリッジ地板51のうち、平面視でアンクルサオ96を間に挟んで両側に位置する部分(アンクル真85の周方向両側)には、一対のドテピン114,115が設けられている。ドテピン114,115は、キャリッジ地板51から裏側に向けて立設されている。ドテピン114,115の裏側端部には、アンクル63の回動によってアンクルサオ96が当接可能とされている。これにより、アンクル63の回動範囲(作動角)が制限される。
【0047】
また、
図4に示すように、各ドテピン114,115のうち、延在方向の中央部(アンクルサオ96の当接箇所よりも表側であって、キャリッジ地板51への連結部分よりも裏側に位置する部分)には、くびれ部116が形成されている。なお、
図4では、ドテピン114のくびれ部116のみを示している。くびれ部116は、各ドテピン114,115のうち、表側端部及び裏側端部よりも縮径している。ドテピン114,115は、くびれ部116を起点として屈曲変形が可能になっている。
【0048】
ここで、
図5〜
図7に示すように、上述したアンクル63は、アンクル真85に対して径方向の両側に入つめ石87及び出つめ石88がそれぞれ配置されている。さらに、各つめ石87,88に対してアンクル真85側とは反対側(径方向の外側)にクワガタ95及びアンクルサオ96がそれぞれ配置されている。したがって、
図7に示すように、径方向のうち、剣先89の延在方向(
図5における直線P1(第1方向))及び軸方向に直交する方向(
図5における直線Q(第2方向))から見た側面視において、クワガタ95、入つめ石87、アンクル真85、出つめ石88及びアンクルサオ96が剣先89の延在方向P1に沿って順番に並んでいる。特に、本実施形態では、剣先89の延在方向P1と、アンクルサオ96の延在方向P2と、がアンクル真85を通る同一直線上に配置されている。
【0049】
また、本実施形態のアンクル63は、上述したようにクワガタ接続部94(及びクワガタ95)と、アンクルサオ96と、がアンクル基部93に対して裏側にオフセットしている。すなわち、アンクル基部93の裏面は、クワガタ接続部94(及びクワガタ95)及びアンクルサオ96の裏面に対して表側に窪んでいる。この場合、
図4に示すように、アンクル基部93、クワガタ接続部94及びアンクルサオ96で画成された部分は、上述した軸受90bを収容する軸受収容部120を構成している。
【0050】
なお、本実施形態では、軸受収容部120がアンクル基部93の全体に形成された構成について説明したが、軸受収容部120の形成範囲は適宜設計変更が可能である。例えば、アンクル基部93の一部のみに形成しても構わない。また、軸受収容部120は、少なくとも一部がアンクル基部93に形成されていれば、クワガタ接続部94やアンクルサオ96に跨って形成されていても構わない。また、軸受収容部120を複数設けても構わない。
【0051】
なお、上述したトゥールビヨン13は、次のように動作する。
図1に示すように、香箱車21からの動力が表輪列12を伝って五番車43に伝達されると、五番車43が回転する。五番車43の動力は、キャリッジかな52cに伝達されることで、キャリッジユニット41全体がキャリッジ52,53のキャリッジ軸52b,53b周りに回転する。キャリッジユニット41が回転することで、キャリッジ軸52b,53bと同軸上に配置されたてんぷ61がキャリッジ軸52b,53b周りに自転する。これにより、てんぷ61に作用する重力の方向の影響を平準化することができ、重力の方向によりてんぷ61の振動周期が変化するのを抑制する。なお、キャリッジユニット41は、60秒に1回転するように設定されている。
【0052】
また、
図1、
図3、
図4に示すように、キャリッジユニット41が回転することで、がんぎ車62は固定歯車42の周りを公転しながら自転する。さらに、
図5、
図8に示すように、てんぷ61のてん真66周りの自由振動にともなってアンクル63がアンクル真85周りに回動すると、入つめ石87及び出つめ石88ががんぎ車62のがんぎ歯車部84に対して交互に係脱する。がんぎ車62は、入つめ石87及び出つめ石88の一方ががんぎ歯車部84に係合しているとき、一時的に回転が停止する。また、がんぎ車62は、入つめ石87及び出つめ石88ががんぎ歯車部84から離脱しているとき、回転する。これらの動作が連続的に繰り返されることにより、時計1が時を刻む。
【0053】
このように、本実施形態では、剣先89の延在方向P及びアンクル63の軸方向に直交する方向Qから見た側面視において、クワガタ95、入つめ石87、出つめ石88及びアンクルサオ96が剣先89の延在方向Pに沿って順番に並んでいる構成とした。
この構成によれば、従来のようにアンクル基部93の延在方向に交差する方向にアンクルサオ96を接続し、このアンクルサオ96の先端部にクワガタ95を接続する構成に比べて、軸方向から見た平面視において、アンクル基部93の延在方向に交差する方向でのアンクル63の小型化を図ることができる。
しかも、本実施形態では、アンクル基部93に形成された軸受収容部120に軸受90bが収容されるので、軸受90bとアンクル基部93との軸方向の距離を縮小できる。
【0054】
また、本実施形態では、アンクルサオ96がアンクル基部93のうちクワガタ95側とは反対側に形成されているため、アンクル63を調速脱進機54に搭載した場合、てん真66から離れた位置にアンクルサオ96を配置することができる。これにより、アンクルサオ96のメンテナンスを行い易くなる。
【0055】
さらに、本実施形態では、アンクル基部93、クワガタ接続部94、クワガタ95及びアンクルサオ96がアンクル体86として一体に形成されているため、それぞれを別々に形成する場合に比べてアンクル63を高精度に形成できる。
【0056】
本実施形態の調速脱進機54では、上述したアンクル63を備えているため、調速脱進機54の小型化及び薄型化が可能になる。例えば、軸受90bが軸受収容部120内に収容されるので、アンクル・がんぎ受81とアンクル63との軸方向の距離を縮小することができる。その結果、てんぷ61とアンクル63とを軸方向で接近させることができ、調速脱進機54の薄型化が実現できる。
【0057】
本実施形態の調速脱進機54では、ドテピン114,115にくびれ部116が形成されているため、くびれ部116を起点にドテピン114,115を屈曲させ易くすることができる。これにより、各ドテピン114,115間の間隔が調整し易くなり、アンクル63の回動範囲を容易に調整できる。その結果、メンテナンス性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態の調速脱進機54では、振り石76をてん輪67に設けることで、振り座70の大つばに振り石76を設ける場合に比べててんぷ61の薄型化を実現でき、ひいては調速脱進機54の薄型化を図ることができる。
【0059】
本実施形態では、トゥールビヨン13のように部品点数が多く大型化しやすい構成に上述したアンクル63及び調速脱進機54を採用することで、上述した小型化及び薄型化が顕著に奏功される。
【0060】
そして、本実施形態のムーブメント10及び時計1では、上述したアンクル63を備えているため、小型化及び薄型化を図ったムーブメント10及び時計1を提供できる。
【0061】
(変形例)
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、剣先89の延在方向P1と、アンクルサオ96の延在方向P2と、がアンクル真85を通る同一直線上に配置された構成について説明したがこれに限られない。剣先89の延在方向P1及びアンクル63の軸方向に直交する方向Qから見た側面視において、クワガタ95、つめ石87,88及びアンクルサオ96が剣先89の延在方向P1に沿って順番に並んでいれば構わない。
例えば、
図9に示すアンクル150のように、剣先89の延在方向P1と、アンクルサオ96の延在方向P2と、が交差していても構わない。また、剣先89の延在方向P1は、アンクル基部93の延在方向や径方向に一致していなくても構わない。すなわち、剣先89の延在方向P1は、アンクル基部93の延在方向や径方向に交差していても構わない。
【0062】
また、
図10に示すアンクル151のように、アンクルサオ96をアンクル基部93における入つめ石取付部100側の端部に形成しても構わない。また、アンクル151において、クワガタ接続部155は、アンクル基部93における延在方向の中央部(各つめ石取付部100,101間に位置する部分)からアンクル基部93における延在方向に交差する方向に延設されている。クワガタ接続部155の先端部には、上述したクワガタ95や剣先89が設けられている。
【0063】
図10に示す構成においても、剣先89の延在方向P1及びアンクル63の軸方向に直交する方向Qから見た側面視において、クワガタ95、つめ石87,88及びアンクルサオ96が剣先89の延在方向P1に沿って順番に並ぶことになる。そのため、アンクルサオ96からクワガタ95を突設させる構成に比べて、アンクル基部93の延在方向に交差する方向でのアンクル63の小型化を図ることができる。
【0064】
さらに、上述した実施形態及び変形例では、アンクルサオ96がアンクル基部93のうち、アンクル真85を間に挟んでクワガタ95側とは反対側の端部に設けられた構成について説明したが、これに限られない。アンクルサオ96は、剣先89の基端部(クワガタ接続部94やクワガタ接続部の基端部)よりもアンクル真85側に配置されていれば構わない。例えば、アンクル基部93のうち各つめ石取付部100,101間に位置する部分等にアンクルサオ96を配置しても構わない。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、トゥールビヨン13を備えたムーブメント10に本発明のアンクルを備えた調速脱進機を搭載した構成について説明したが、これに限られない。
また、ムーブメント10において、各歯車のレイアウト等は適宜変更が可能である。
【0066】
上述した実施形態では、軸受収容部120が表側に窪んだ構成について説明したが、これに限らず、裏側に窪んでも構わない。
また、上述した実施形態では、軸受収容部120が軸受90bとアンクル・がんぎ受81の一部を収容する構成について説明したが、少なくとも軸受90bの一部を収容していれば構わない。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。