(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一パネル部と第二パネル部とは、間隙が塞ぎ部材によって塞がれていると共に、折曲部が連結部材で連結されていることを特徴とする請求項4記載のトンネル用の避難扉装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした避難扉は、ある程度の間隔を存して設置されることになるが、トンネルには、直線部分だけでなくカーブする部分もある。そして、トンネルに避難扉を設ける場合、設置条件としてトンネルの壁体までの距離や、車両が走行する道路の有効幅を確保する必要があるが、トンネルがカーブしている部分に避難扉を設けなければならないことがある。しかしながら、特許文献1のもののような避難扉は全長が長く、しかも直線状であるため、トンネルのカーブに沿って設置することが難しく、設置条件を満たせないことがあるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、車両が前後方向に通行するための車道と、該車道から避難する人が通る避難路と、車道の左右方向少なくとも一方の脇に設けられる監視員通路と、該監視員通路の一部を切り欠いて設けられる避難口と、該避難口から避難路に連通する連通路とを備えて構成されるトンネルにおいて、前記避難口を開閉するため前後方向にスライド移動する避難扉を備えて避難扉装置を構成するにあたり、該避難扉装置は、避難扉が前後方向に移動可能な範囲よりも前方又は後方の少なくとも一部に、左右方向に折曲した折曲部を有している
とともに、前記連通路は、避難口の前方又は後方に設けられており、前記避難扉は、避難口を開放するときに連通路が設けられていない方向に移動するものとし、前記折曲部は、避難口に対して連通路側に設けられていることを特徴とするトンネル用の避難扉装置である。
請求項2の発明は、
車両が前後方向に通行するための車道と、該車道から避難する人が通る避難路と、車道の左右方向少なくとも一方の脇に設けられる監視員通路と、該監視員通路の一部を切り欠いて設けられる避難口と、該避難口から避難路に連通する連通路とを備えて構成されるトンネルにおいて、前記避難口を開閉するため前後方向にスライド移動する避難扉を備えて避難扉装置を構成するにあたり、該避難扉装置は、避難扉が前後方向に移動可能な範囲よりも前方又は後方の少なくとも一部に、左右方向に折曲した折曲部を有しているとともに、前記連通路は、避難口の前方又は後方に設けられており、前記避難扉は、避難口を開放するときに連通路が設けられていない方向に移動し、該方向には避難扉が収納される扉袋が設けられているものとし、前記折曲部は、避難口に対して扉袋側に設けられていることを特徴とす
るトンネル用の避難扉装置である。
請求項3の発明は、前記避難扉装置は、前記避難扉の前後方向に天板と縦板とで逆L字形に構成されたパネル部を備え、前記避難扉は天板と縦板とで逆L字形に構成され、前記折曲部は前記パネル部に設けられていることを特徴とする請求項
1又は2記載のトンネル用の避難扉装置である。
請求項4の発明は、前記パネル部は、折曲部において、監視員通路側の第一パネル部と、避難口側の第二パネル部とに分割されており、該第一パネル部及び第二パネル部は、いずれも天板及び縦板が矩形であり、該第一パネル部の天板と第二パネル部の天板との折曲部における端縁同士は、左右方向一端側の間隙が狭く、他端側の間隙が広くなるよう互いに対向していることを特徴とする請求項3記載のトンネル用の避難扉装置である。
請求項5の発明は、第一パネル部と第二パネル部とは、間隙が塞ぎ部材によって塞がれていると共に、折曲部が連結部材で連結されていることを特徴とする請求項4記載のトンネル用の避難扉装置である。
請求項6の発明は、第一パネル部と第二パネル部とのあいだの間隙を
内面側から覆蓋する覆蓋板を備え、該覆蓋板は、第一パネル部又は第二パネル部の何れか一方の
内面側に設けられた補助板を介して設けられていて、他方の第二パネル部又は第一パネル部とのあいだにスペースが形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載のトンネル用の避難扉装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、2の発明とすることにより、トンネルのカーブに沿って避難扉装置を折曲させることができるため、トンネルがカーブしている部分に避難扉装置を設置する場合であっても、避難扉からトンネル壁面までの距離や、車道の有効幅を確保することが可能となる。また、避難扉が前後に移動する範囲外で避難扉装置が折曲部を有することにより、避難扉の開閉が折曲部によって妨げられることがない。
請求項3の発明とすることにより、避難扉の開放方向とは反対方向に折曲部を有することとなるため、避難口の近傍であっても折曲部を設けることができる。
請求項4の発明とすることにより、矩形の天板、縦板からなる逆L字形の2つのパネル部をく字状に設けることで折曲部を形成することができるため、容易に折曲部を形成することが可能となる。
請求項5の発明とすることにより、第一パネル部と第二パネル部とのあいだの間隙が塞がれるため、第一パネル部と第二パネル部との間隔が維持され、水漏れ等も防ぐことができる。
請求項6の発明とすることにより、補助板が設けられていない第一パネル部又は第二パネル部と覆蓋板とのあいだにスペースが存するため、折曲部における折曲の角度を調整する場合であっても、補助板が設けられていないパネル部と覆蓋板とが当接して干渉することがなく、取り付け時の誤差を吸収することができ、容易な施工が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトンネル(坑道)であって、例えばシールド工法により形成された円筒状をし、車両が通過する車道2が上半部に形成され、該車道2の路面で仕切られる状態で下半部に避難路3が形成されている。以下、車両が車道2を通過する方向を前後方向とし、車道2の幅方向を左右方向とする。ただし、これに限定されるものではない。車道2の左右端部(車道の幅方向の左右何れか一方または両方)には監視員通路4が段差状に高く形成されているが、該監視員通路4は、適間隔を存して切欠かれ、該切欠き部が後述するよう避難口8となって本発明が実施されたトンネル用の避難扉装置5が設けられている。
【0009】
前記避難扉装置5は、監視員通路4に続く状態で逆L字形に形成された前後のパネル部である連通路パネル部6及び扉袋パネル部7と、該連通路パネル部6、扉袋パネル部7のあいだに形成される避難口8を前後方向開閉自在に移動するスライド式の避難扉9とを備えて構成されている。連通路パネル部6は、避難口8と避難路3とを連通するための連通路(本実施の形態では滑り台となっているが、階段や坂道等、避難者が通れるものであればよい。)10を覆蓋する。また、扉袋パネル部7は避難扉9を開放した場合に該避難扉9を収容する扉袋となっている。尚、
図3における避難扉9は進行方向前方側にスライドして開放し、連通路10はその反対側に設けられているが、連通路10を進行方向前方側に設けて、避難扉9をその反対側に開放するようにしてもよい。
【0010】
連通路パネル部6は、監視員通路4側の第一パネル部61と、避難口8側の第二パネル部62とが、連結部材63によって連結されて構成されている。そして、第一、第二パネル部61、62はそれぞれ矩形の天板61a、62aと、縦板61b、62bとによって逆L字状に形成されている。連結部材63は、第一パネル部61の天板61aと、第二パネル部62の天板62aとの対向する端縁部の上面を跨いで設けられているが、トンネル1のカーブ方向に応じて、車道2側又はトンネル1の避難口側の壁体1a側に設けられる。すなわち、トンネル1におけるトンネル用の避難装置5の設置部分がカーブしている場合において、車道2が壁体1aに対してカーブの内周側になる場合(例えば、
図1に示すように車道2の左端部に避難扉装置5を設け、トンネル1が進行方向前方に対して右カーブしている場合)には、
図2(A)に示すように、連結部材63は車道2側に設けられる。一方、車道2が壁体1aに対してカーブの外周側になる場合(例えば、車道2の左端部に避難扉装置5を設け、トンネル1が進行方向前方に対して左カーブしている場合)には、
図2(B)に示すように、連結部材63は壁体1a側に設けられる。このようにすることで、連結部材63が設けられた側が支点となり、第一パネル部61と、第二パネル部62から扉袋パネル部7までとが、く字状(又は逆く字状)に折曲して連結可能となり、トンネル1のカーブ形状に沿って避難扉装置5を設置可能としている。
【0011】
このように、第一パネル部61と、第二パネル部62とが連結する部分は、避難扉装置5の折曲部Aとなっており、第一パネル天板61aと第二パネル天板62aの折曲部Aにおける端縁同士は、連結部材63が設けられている側で近接し、連結部材63が設けられていない側ほど離間するように間隙Bを有して構成されている。
図6は、このことを模式的に表したものである。折曲部Aにおける折曲の角度は、天板61a、62a間の連結部材63が設けられていない側(カーブの外周側)が離間するほど大きくなり、当該角度を適宜調節することにより、避難扉装置5の設置に要求される設置条件を満たすことができる。また、当該角度の調節に加えて、第二パネル部62の前後方向の長さを変更して、折曲部Aの位置を調節することによっても、設置条件を満たすようにすることができる。
【0012】
なお、本実施の形態では連通路パネル部6を第一、第二パネル部61、62の2つのパネル部からなるものとして、折曲部Aを1つとしているが、必要に応じて3つ以上のパネル部からなるものとして、それぞれを連結させ、2以上の折曲部Aを有するものとしてもよい。また、連通路パネル部6でなく、扉袋パネル部7を同様に連結した2つ以上のパネル部として折曲部Aを設けてもよいが、この場合には、後述の避難扉9が避難口8を最も開放した状態での、避難扉9と扉袋パネル部7とのオーバーラップ部分よりも、扉袋パネル部7に連接する監視員通路4側に折曲部Aを設ける必要がある。すなわち、折曲部Aは避難扉9が前後方向に移動する範囲外に設ける必要がある。
【0013】
第一パネル部61と第二パネル部62とは、折曲部Aにおいて、各パネル同士が当接しないよう間隙Bを有して連結されている。そして、該間隙Bは塞ぎ部材64によって塞がれている。より具体的には、間隙Bの内側(連通路10側)にはバックアップ材64aが詰め込まれ、詰め込まれたバックアップ材64aの外側にはシール部材64bによってシーリングがされており、これらを塞ぎ部材64として、間隙Bを塞いでいる。この際、第一パネル天板61aと第二パネル天板62aとの端縁間の幅は、連結部材63が設けられた側に対して左右方向反対側に向けて幅広となるが、対向する端縁部の全長にわたってバックアップ材64aの詰め込み及びシール部材64bによるシーリングがなされている。また、第二パネル天板62aの連通路10側の内面(下面)の端縁部には、その左右方向にわたって、補助板65が溶接して設けられている。そして、塞ぎ部材64によって塞がれた間隙Bを覆蓋する覆蓋板66が、該補助板65の下面に、同じく左右方向にわたって溶接されている。このようにすることで、天板61aと覆蓋板66とのあいだに補助板65の板厚分のスペースSが確保されることとなり、連結部材63を設けて折曲部Aを形成することに伴い形成される間隙Bを、覆蓋板66を用いて覆蓋するに際して、天板61aの内面と覆蓋板66とが当接して干渉することがなく、取り付け時の誤差を吸収することができる。なお、補助板65は第一パネル天板61aの内面の端縁部に設けてもよい。また、天板61a、62aは、監視員がトンネル1内で点検作業を行う際の通路としても機能するため、補助板65及び覆蓋板66を内側(連通路10側)に設けることにより、監視員が移動時に躓いてしまうようなことがない。
【0014】
一方、第一パネル縦板61bと第二パネル縦板62bとの間の間隙Bも、内側(連通路10側)にバックアップ材64aが詰め込まれ、その外側にシール部材64bによるシーリングがされることで、塞ぎ部材64によって塞がれている。そして、天板62aと同様に、第二パネル縦板62bの連通路10側の内面には、その高さ方向にわたって、補助板65が溶接して設けられており、塞ぎ部材64によって塞がれた間隙Bを覆蓋する覆蓋板66が、同じく高さ方向にわたる状態で該補助板65に溶接されている。このようにすることで、縦板61bと覆蓋板66とのあいだに補助板65の板厚分のスペースSが確保されることとなり、連結部材63を設けて折曲部Aを形成することに伴い形成される間隙Bを、覆蓋板66を用いて覆蓋するに際して縦板61bの内面と覆蓋板66とが当接して干渉することがなく、取り付け時の誤差を吸収することができる。なお、補助板65は第一パネル縦板61bの内面の端縁部に設けてもよい。
【0015】
このように、第二パネル部62の内側には、補助板65が設けられており、該補助板65を介して、間隙Bを覆蓋する補助板66が設けられている。そして、補助部材63は、ボルト63aによって天板61a、62aに固定されており、折曲部Aにおける折曲の角度を調整する場合には、ボルト63aを緩めた状態で行うことができる。このような調整を行って間隙Bが広がった場合であっても、広がった間隙Bを覆蓋できるよう、覆蓋板66は十分な前後幅を有していることが好ましい。
【0016】
このように、折曲部Aにおいて、連結部材63によって連結される第一パネル部61と、第二パネル部62とのあいだに間隙Bが設けられるが、該間隙Bを、塞ぎ部材64であるバックアップ材64a、シール部材64bによって塞ぐことにより、第一、第二パネル部61、62をく字状に連結させる際に、連結部材63が設けられる支点部分で、各パネルの端部同士が当接して干渉してしまうことを防止することができるとともに、水が間隙Bから内部に流れ落ちないように配慮されている。
【0017】
因みに第一、第二パネル部61、62及び扉袋パネル部7は、それぞれのパネル天板61a、62a、7aがそれぞれのパネル縦板61b、62b、7b側(車道側)に至るほど僅かではあるが低くなるよう傾斜(例えば斜度1%)する設定になっており、これによって地下水等の水がパネル天板61a、62a、7a上に溜まることなく、パネル縦板61b、62b、7b側に流れ落ちるように設定されている。
【0018】
さらに、第二パネル部62と、扉袋パネル部7の避難扉側端部には、それぞれ端縁部を覆うようにゴム等からなる保護部材62c、7cが設けられている。この保護部材62c、7cを設けることにより、避難者が避難扉9を開けて避難口8から避難路3へと移動する際に、パネル部の端部と接触した場合であっても緩衝されるため、安全に移動することができる。
【0019】
また、第一パネル部61には、
図7に示すように、長尺状の補強部材61cの両端部と着脱可能に係止する係止部61d、61eを、天板61a及び縦板61bの内面に設けてもよい。該補強部材61cの両端をそれぞれの係止部61d、61eに係止することで、補強部材61cによって天板61aと縦板61bとのあいだの距離を維持できるように補強されることとなるため、長尺の第一パネル部61をトンネル内に搬入し、取り付け作業をする際に、パネルの撓みや反りを抑えることが可能となる。なお、補強部材61cは、避難扉装置5の設置後等、適宜取り外しておくことで、避難時の障害とはならないものである。また、同様の係止部及び補強部材は、第一パネル部61に限らず、第二パネル部62、扉袋パネル部7、避難扉9に設けてもよく、各部材に複数設けてもよい。
【0020】
避難扉9は、天板11と縦板12とによって逆L字形に構成されるが、常時は避難口8を閉鎖しており、避難口8を開放した場合には扉袋パネル部7内に収容されるようになっている。これら天板11、縦板12は、格子状の骨材11a、12aによって裏面側(避難口内側)が補強されている。天板11、縦板12は、前後方向長さが避難口8の前後長さよりも長くなっており、これによって、
図8に示されるように、避難扉9は避難口8を閉鎖した状態で、連通路パネル部6の第二パネル部62及び扉袋パネル部7の開口端部内側にオーバーラップする状態となって避難口8を閉鎖するように設定されている。
【0021】
天板11の左右方向外端部(トンネル1の壁体1a側端部)の上面には、L字形をした水切り板11bが設けられていて、水が天板11の左右方向外端側に流れないよう配慮されている。
さらに、避難扉9についても、天板11は、各パネル部の天板61a、62a、7aと同様、縦板12側が僅かに低くなるよう傾斜(例えば1%の斜度)していて水が縦板12側に流れ落ちるように配慮されている。
【0022】
13は天板11の左右方向外端部の下面にブラケット13aを介して着脱自在に取付けられた上側ローラであって、該上側ローラ13は、トンネル1の壁体1a側に設けた取付け金具14aを介して取付けた上側レール14を走行するようになっている。本実施の形態では、上側ローラ13は、後述の補助ローラ13b、レール底ローラ13cとともに、天板11の扉先側及び扉尻側の左右方向外端部にそれぞれ1つずつ、前後対称に設けられている。尚、天板11の左右方向外端部と取付け金具14aとは接触しないよう隙間Cが設けられているが、取付け金具14aには、前記天板11に設けた水切り板11bよりも上方に位置する状態で左右方向内端側に延出されたカバー体14bが設けられており、これによって水が水切り板11bよりも左右方向内端側に流れ落ちるように配慮されている。
【0023】
またブラケット13aには、上側ローラ13よりも上側に位置する状態で補助ローラ13bが設けられているが、該補助ローラ13bは、車道2において火災等の異常が発生した場合に、これを図示しない異常検知器が検知することに連動して避難路3に設けた図示しない送風機が駆動することで避難路3内の気圧を上昇させ、これにより避難扉9を開放したとき、車道2内で発生している煙や炎が避難路3に進入しないよう配慮されているが、このとき避難扉9が閉鎖状態にあると、避難扉9は前記高くなった気圧を受けて持ち上がることが想定され、この場合に、補助ローラ13bが取付け金具14aに設けた持ち上がり防止体14cに当接して避難扉9が持ち上がるのを規制して前記上側ローラ13や後述する下側ローラ17が上側レール14や下側レール18から外れることがないように配慮されている。
【0024】
ブラケット13aには、さらに、レール底ローラ13cを備えた補助ブラケット13dが着脱可能に設けられている。レール底ローラ13cは、回転軸が鉛直方向であり、ローラの外周が上側ローラ13よりも取付け金具14a側に突出するように設けられている。このようにすることで、上側ローラ13が上側レール14の長尺方向に対して必ずしも平行に進行しない場合であっても、上側ローラ13の上側レール14の側壁等への接触を防止することができる。すなわち、製造、施工上の誤差等により、上側ローラ13又は上側レール14が、進行方向に対して左右に傾いてしまう場合があり、避難扉9を開閉する際に、上側ローラ13が上側レール14の長手方向に対して斜めに進行してしまうことがある。そして、上側ローラ13が進行するにつれて上側レール14の取付け金具14a側(トンネルの壁体1a側)に寄っていくと、上側ローラ13の側面部が上側レール14を取付け金具14aに取り付けるためのビス14dの頭部に接触してしまい、上側ローラ13の損耗や、避難扉9の開閉の際に異音、抵抗増大が生じることがある。そこで、上述のレール底ローラ13cを設けることにより、レール底ローラ13cが上側レール14の側壁に当接して滑ることとなるため、上側ローラ13が上側レール14の側壁や、ビス14dに当接することがなくなり、スムースに避難扉9の開閉が可能となる。
【0025】
また、図示はしないが、レール底ローラ13cは、上側レール14の取付け金具14a側側面と対向する下側辺14eの上端よりも下方で、上側レール14の取付け金具14a側側面と下側辺14eとのあいだに位置するように設けてもよい。このようにすると、上側ローラ13が進行するにつれて上側レール14の取付け金具14aと反対側(車道2側)に寄ってしまう場合であっても、上側ローラ13のフランジ部が上側レール14の下側辺14eと当接せずに、レール底ローラ13cが下側辺14eと当接して滑ることとなるため、スムースに避難扉9の開閉が可能となる。
【0026】
また、レール底ローラ13cは、上側ローラ13よりも避難扉9の前後方向外側に位置するように設けることが好ましい。すなわち、レール底ローラ13cは、避難扉9の扉先側(連絡路パネル部6側)の上側ローラ13に対しては、扉先側に設けられる一方、避難扉9の扉尻側(扉袋パネル部7側)の上側ローラ13に対しては、扉尻側に設けられる。このようにすることで、上側ローラ13が上側レール14の長手方向に対して平行に進行しない場合であっても、レール底ローラ13cが上側ローラ13よりも進行方向の先側に位置することとなるため、上側ローラ13がレール底ローラ13cよりも先に上側レール14の側壁やビス14dに当接してしまうことを防止できる。
【0027】
さらに取付け金具14aには上側レール14よりも下方に位置する状態で近接スイッチユニット15が設けられている一方、上側ローラ13のブラケット13aには、避難扉9が閉鎖している状態で前記近接スイッチユニット15に設けた近接スイッチ15aと対向するマグネット16が取付け金具16aを介して設けられている。そして避難扉9が閉鎖している状態ではマグネット16が近接スイッチ15aと対向することになるが、この状態から避難扉9を開放すると、マグネット16が近接スイッチ15aから離間し、これによって避難扉9が開放作動されていることを検知し、例えば管理室に開信号を送り、ランプ点灯やブザー吹鳴等により開扉されたことを通報するようになっている。因みに上側レール14は、避難口8から扉袋パネル部7にまで至る長いものであるが、該上側レール14は、避難口8部位と扉袋パネル部7部位とで二分されており、常時、避難扉9が閉姿勢になっていることで損耗しやすい避難口8側のレール部位のみを取り外して交換できるようになっている。
【0028】
17は下側ローラであって、該下側ローラ17は、車軸17aに設けた取付け金具17bを縦板12の骨材12aの裏側面に着脱自在に固定され、車道2の左右方向内端部に設けた下側レール18を前後方向に走行することになるが、下側レール18は、取付け板18aに固定され、該取付け板18aがトンネル1側に設けた下板1bに着脱自在に固定されたものであるが、下側レール18についても避難口8側部位と扉袋パネル部7側部位とに二分され、常時、避難扉9が閉姿勢になっていることで損耗しやすい避難口8側部位のみを取り外して交換できるようになっている。尚、17cは下側ローラ17のベアリングである。
【0029】
連通路パネル部6の第二パネル部62の開口端部には避難扉9が全閉したときに避難扉9の扉先側端縁が当接する柱状のストッパ体62dが設けられるが、該ストッパ体62dには避難扉9が全閉したときの衝撃を緩衝する緩衝部材62e、避難扉9の扉先側端縁と第一パネル部62の開口端縁とを封止する封止材62fが設けられている。
また、
図8に示すように、天板11、縦板12の扉先側端部には、第二パネル部62の裏側面に向けて突出した突起11c、12cが設けられており、これによって天板11、縦板12を流れ落ちる水が突起11c、12cよりも扉先側に行かないよう配慮されている。さらに天板11、縦板12には扉尻側にも水切り11d、12dが設けられていて、水が扉尻側に行かないよう配慮されている。
さらに天板11、縦板12の扉尻側端部には扉尻側封止材11e、12eが設けられており、避難扉9が全閉した場合に、扉袋パネル部7の開口端部裏面に設けた封止受け材7dに当接して封止をするようになっている。
【0030】
尚、避難扉9の縦板12の扉先側の車道側面には把手9aが設けられており、該把手9aを把持して扉袋パネル部7側に引き操作することにより図示しない施錠装置が施錠状態から解錠されて避難扉9のスライド移動ができるようになっており、このようにすることにより常時は施錠装置は施錠状態に維持されて避難扉9の不用意な開放を防止するよう配慮されている。
【0031】
19はバランサーであって、該バランサー19は、避難扉9の開閉負荷を低減(例えば開閉負荷を零、あるいは数キログラムに低減)させるため扉袋パネル部7内に設けられるものであり、引っ張り機構が内装された汎用のものが採用されているが、避難扉9が水平姿勢(床面傾斜なし)での開閉をする場合には開閉負荷が小さいため原則的に不要(避難扉9の重量が重く、開閉負荷が大きい場合には設けてもよい。)であるが、傾斜があって開閉負荷が大きい場合や勝手に開放してしまう場合に設けられる。扉先側が低くなる傾斜の場合には、
図14、15に示すように、避難扉9に連結されるワイヤ19aを第一、第二滑車19b、19cにより避難扉9を開放側に引っ張るように接続されている。逆に扉尻側が低くなる傾斜の場合には、第二滑車19cを用いず、ワイヤ19aを第一滑車19bにより避難扉9を閉鎖側に引っ張るように接続されている。
【0032】
また20は自閉装置であって、該自閉装置20は、避難扉9が開放された場合に、該開放されてから所定時間(例えば60秒)経過後、避難扉9を自動的に閉鎖すべくワイヤ20aを介して避難扉9に接続されたものであり、これについても汎用のものが採用されている。
【0033】
叙述の如く構成された本実施の形態において、トンネル1がカーブしている部分に避難扉装置5を設けるに際して、連通路パネル部6が第一パネル部61と第二パネル部62とがく字状に連結されることにより、避難扉装置5がトンネルのカーブに沿ってく字状に折曲することとなり、折曲部Aの位置及び角度を調節することにより、避難扉装置5をトンネル1に設置するに際して要求される、避難扉9からトンネルの壁体1aまでの距離及び車道2の有効幅を確保することが可能となる。
【0034】
また、扉袋パネル部7内には、上側レール14と、下側レール18と、バランサー19と、自閉装置20とが配設されており、一方で連通路パネル部6内には、ストッパ体62dが設けられているほかは、避難扉9の移動に関する部材等は殆ど配設されていない。このようにすることにより、避難者が避難口8を通り連通路10を通過する際に、連通路パネル部6内ではバランサー19や自閉装置20と避難扉9とを接続するワイヤ19a、20a等に引っ掛かってしまうことがなく、かつ、連通路パネル部6は避難扉9を収納等しないため、適宜折曲部Aを設けても安全に避難できると共に、避難扉9のスライド移動を妨げることがない。
【0035】
また、第一パネル部61及び第二パネル部62は、それぞれ矩形の天板61a、62a、縦板61b、62bによって逆L字状に構成されており、第一パネル部61の天板61aと第二パネル部62の天板62aとの折曲部Aにおける端縁同士は、左右方向一端側の間隙が狭く、他端側の間隙が広くなるよう互いに対向しているため、当該間隙の広さを調節することで折曲部Aの角度を調節可能であり、また、各パネル部をカーブに沿った特殊な形状にすることなく折曲部Aを設けることができるため、容易に折曲部Aを設けることができる。加えて、第一パネル部61と第二パネル部62のあいだの間隙Bは塞ぎ部材64であるバックアップ材64a及びシール部材64bによって塞がれており、第一パネル部61と第二パネル部62とは、間隙が狭い側が連結部材63で連結されているため、連通路10が設けられている内側に間隙Bを通じて水等が流れ落ちることがなく、避難扉装置5を設置するに際して折曲部Aを安定して設けることができる。
【0036】
さらに、第一パネル部61と第二パネル部62のあいだの間隙Bを連通路10側から覆蓋する覆蓋板66が、第二パネル部62の天板62a及び縦板62bの連通路10側に設けられた補助板65を介して設けられており、覆蓋板66と第一パネル部61の天板61a、縦板61bとのあいだにスペースSが形成されているため、折曲部Aにおける折曲の角度を調整する場合であっても、覆蓋板66と、天板61a及び縦板61bとが当接して干渉せず、取り付け時の誤差を吸収することができるとともに、監視員等が天板61a、62aを通行する際に、補助板65や覆蓋板66に躓いてしまうことがなく、安全性を高めることができる。
【0037】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、例えば、
図16に示されるように、天板11、縦板12を、前後方向長さが避難口8の前後長さよりも短いものとし、このものの前後方向一側方(
図16では扉袋パネル部7側端縁。両側方に設けてもよい。)の端部に、補助扉体として補助天板21、補助縦板22を着脱自在に取付けることにより、避難扉9の前後長さを避難口8の前後長さよりも長くなるものとしてもよい。このように補助扉体を設けた場合、天板11、縦板12からそれぞれ補助天板21、補助縦板22を取り外すことで避難扉9の扉本体である天板11、縦板12を避難口8から車道2側に取り出し、交換する等、必要なメンテナンスを行うことができることとなる。