特許第6618383号(P6618383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618383
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】スカートガード取付構造
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/22 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   B66B23/22 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-28774(P2016-28774)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2017-145112(P2017-145112A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皿井 建樹
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−230700(JP,A)
【文献】 特開2012−162355(JP,A)
【文献】 特開平09−165185(JP,A)
【文献】 実開昭58−023874(JP,U)
【文献】 特開2008−17949(JP,A)
【文献】 米国特許第05601179(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物に固定されるスカートガード取付アングルに、ステップの外側に設けられたスカートガードが取り付けられた乗客コンベアのスカートガード取付構造であって、
前記スカートガード取付アングルは、スカートガード先端部収容溝と、前記スカートガード先端部収容溝に隣り合うように設けられて、スカートガード軸収容溝とを有し、
前記スカートガードは、板状の本体部と、前記本体部が前記ステップの側方に対向する通常状態で前記本体部の前記ステップ側とは反対側に設けられて、前記スカートガード軸収容溝に収容される軸部材とを有し、
前記軸部材が前記通常状態から前記本体部の上方側が下方側になるように前記本体部を回転させることによって、前記軸部材が前記スカートガード軸収容溝に収容された状態で、前記本体部の上方側の先端部を下方側に位置させて前記スカートガード先端部収容溝に収容させ、前記スカートガードが起立した状態で前記スカートガード先端部収容溝および前記スカートガード軸収容溝により支持される、スカートガード取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスカートガード取付構造において、
前記スカートガード軸収容溝の上方に位置して前記軸部材の上方への移動を規制する上側閉塞部を有し、
前記軸部材が前記通常状態から、上方に移動して前記上側閉塞部の下側に支持されている状態で、前記本体部の上方側が下方側になるように前記本体部を回転させることが可能である、スカートガード取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のスカートガード取付構造において、
前記スカートガードは、前記本体部における前記ステップ側とは反対側の裏側面から突出すると共に互いに間隔をおいて位置する一対の突出部を有し、
前記軸部材は、前記裏側面に対して間隔をおいた状態で前記一対の突出部の間に設けられる、スカートガード取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のスカートガード取付構造において、
前記スカートガード取付アングルよりも下部で被固定物に固定されると共に、上方に突出する上側突出部を有する下側スカートガード取付アングルを備え、
前記スカートガードは、前記通常状態で前記本体部の前記ステップ側とは反対側に前記上側突出部が収容される収容凹部を有する、スカートガード取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのスカートガードを含み、鉄骨等の被固定物に取り付けられるスカートガード取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータは、通常、駆動ユニットで駆動側スプロケットを回転させ、ステップが連結されたステップチェーンを駆動側スプロケットと従動側スプロケットの間を循環移動させることによって、ステップを循環移動させる。また、駆動側スプロケットからの動力を手すり駆動装置へ伝達し、移動手すりをステップと同一方向に同一速度で移動させる。
【0003】
ここで、ステップや手すりを移動させるため部材、例えば、上記駆動側スプロケットや加圧ローラ等は、摩擦によって磨耗等を起こすためメンテナンスが必要になる。しかし、これらの部材の多くは、ステップ側面に対向しているスカートガードの外側に設けられるため、メンテナンスを行う際には、特許文献1に記載されているようにスカートガードが取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−234774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のエスカレータでは、スカートガード外側の部材のメンテナンスを行う際、スカートガードが取り外されるので、スカートガードの置き場所をエスカレータの上端側または下端側にある乗降口付近に確保しなければならない。また、スカートガードを上記乗降口付近の置き場所まで持ち運ばなければならず、持ち運びに時間を要し、作業性が悪い。
【0006】
本発明の目的は、スカートガードを取り外して行うメンテナンスの作業性を向上できるスカートガード取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乗客コンベアのスカートガード取付構造は、被固定物に固定されるスカートガード取付アングルに、ステップの外側に設けられたスカートガードが取り付けられた乗客コンベアのスカートガード取付構造であって、前記スカートガード取付アングルは、スカートガード先端部収容溝と、前記スカートガード先端部収容溝に隣り合うように設けられて、スカートガード軸収容溝とを有し、前記スカートガードは、板状の本体部と、前記本体部が前記ステップの側方に対向する通常状態で前記本体部の前記ステップ側とは反対側に設けられて、前記スカートガード軸収容溝に収容される軸部材とを有し、前記軸部材が前記通常状態から前記本体部の上方側が下方側になるように前記本体部を回転させることによって、前記軸部材が前記スカートガード軸収容溝に収容された状態で、前記本体部の上方側の先端部を下方側に位置させて前記スカートガード先端部収容溝に収容させ、前記スカートガードが起立した状態で前記スカートガード先端部収容溝および前記スカートガード軸収容溝により支持される。
【0008】
本発明によれば、スカートガードを通常位置から本体部の上方側が下方側になるように回転させることによって、本体部の下方側の先端部をスカートガード先端部収容溝に収容させると、スカートガードをスカートガード先端部収容溝から上側に起立させることができる。そして、スカートガードをスカートガード先端部収容溝から上側に起立させるだけで、スカートガードをステップの側方に対向する位置から除去できる。よって、スカートガードをスカートガード取付アングルから取り外す必要がなく、スカートガードをスカートガード置き場へ持ち運ぶ必要もない。その結果、メンテナンスの作業性を向上できる。
【0009】
また、本発明において、前記スカートガード軸収容溝の上方に位置して前記軸部材の上方への移動を規制する上側閉塞部を有し、前記軸部材が前記通常状態から、上方に移動して前記上側閉塞部の下側に支持されている状態で、前記本体部の上方側が下方側になるように前記本体部を回転させることが可能であってもよい。
【0010】
この場合、スカートガードを通常位置から持ち上げて軸部材が上側閉塞部に支持されている状態で、スカートガードの本体部を軸部材を支点として本体部の上方側が下方側になるように回転させることによって、本体部の下方側の先端部をスカートガード先端部収容溝に収容させることができる。よって、単にスカートガードを移動不可になるまで持ち上げて回転させるだけでスカートガードを起立させることができるので、作業の効率性を大きく向上できる。
【0011】
また、本発明において、前記スカートガードは、前記本体部における前記ステップ側とは反対側の裏側面から突出すると共に互いに間隔をおいて位置する一対の突出部を有し、前記軸部材は、前記裏側面に対して間隔をおいた状態で前記一対の突出部の間に設けられてもよい。
【0012】
この場合、スカートガードの裏側面に簡易な構成で軸部材を設けることができる。したがって、製造コストを低減できる。
【0013】
また、本発明において、前記スカートガード取付アングルよりも下部で被固定物に固定されると共に、上方に突出する上側突出部を有する下側スカートガード取付アングルを備え、前記スカートガードは、前記通常状態で前記本体部の前記ステップ側とは反対側に前記上側突出部が収容される収容凹部を有してもよい。
【0014】
この場合、スカートガードの収容凹部が、通常状態で下側スカートガード取付アングルの上側突出部に支持される。したがって、スカートガードの通常状態での姿勢を安定させることができ、スカートガードが通常状態でステップに接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスカートガード取付構造によれば、スカートガード外側の部材のメンテナンスを行う際に、スカートガードの置き場を確保する必要がなくてスカートガードの持ち運びを行う必要もなく、メンテナンスの作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のエスカレータの部分斜視図である。
図2図1のA-A線断面図であり、エスカレータにおけるインナーデッキの取付部を傾斜路に直交する平面で切断したときの断面図である。
図3図1のB-B線断面図であり、エスカレータのスカートガード取付構造を通る箇所を傾斜路に直交する平面で切断したときの断面図である。
図4】(a)はスカートガードを裏側から見た時の模式図であり、(b)はスカートガード裏側の斜視図である。
図5】(a)はエスカレータが稼動できる通常状態での図3に対応するスカートガード取付構造の模式断面図であり、(b)は軸部材が上部閉鎖部に支持されている状態での図3に対応するスカートガード取付構造の模式断面図である。また、(c)はスカートガードの下方側の先端部がスカートガード先端部収容溝に嵌り込んでスカートガードが起立している状態での図3に対応するスカートガード取付構造の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。また、以下において、上部、上側、下部、下側、水平方向等の鉛直方向に関係する文言が用いられた場合、その文言は、エスカレータ1が稼動位置に設置された状態で表現されている。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態のエスカレータ1の部分斜視図である。
【0019】
このエスカレータ1は、傾斜路に沿って縦列に連結されたステップ10と、傾斜路の両側に立設された内側板11と、内側板11よりも傾斜路側に設けられたスカートガード12と、スカートガード12の上部を覆うインナーデッキ13とを備える。
【0020】
内側板11は、図示しない手摺レールの下に設けられる欄干パネルである。また、スカートガード12は、内側板11の下部に設けられ、ステップ10の側面と僅かな隙間を保って対向している。また、インナーデッキ13の上部は、内側板11に当接している。インナーデッキ13は、スカートガード12よりも傾斜路内側に配置される突起部20を有する。この突起部20は、乗客の足がスカートガード12と接触するのを避けるために設けられる。スカートガード12は、全体として矩形(長方形)の板状の部材であって、傾斜路に沿って複数整列して配置されている。
【0021】
図2は、図1のA-A線断面図であり、エスカレータ1におけるインナーデッキ13の取付部を傾斜路に直交する平面での切断したときの断面図である。この例では、スカートガード12の傾斜路の延在方向における中央部に該当し、インナーデッキ13の取付部を1つだけ設けるように記載しているが、複数設けることが好ましい。また、図3は、図1のB-B線断面図であり、エスカレータ1のスカートガード取付構造50を通る箇所を傾斜路に直交する平面での切断したときの断面図である。この例では、スカートガード12の傾斜路の延在方向における一方の測端側に該当するが、他方側にも同様の構成が設けられる。
【0022】
図2に示すように、エスカレータ1は、傾斜路に略平行に延在するインナーデッキ固定用アングル15をスカートガード12の外側に備える。インナーデッキ固定用アングル15は、図示しない鉄骨等の被固定物(建物側の構造物)に固定されている。インナーデッキ13の下部には孔23が設けられ、インナーデッキ固定用アングル15にはネジ孔24が設けられる。スカートガード12をインナーデッキ13の下部とインナーデッキ固定用アングル15とで挟持した状態で、取付ネジ22を、インナーデッキ13の孔23に挿通した後、インナーデッキ固定用アングル15のネジ孔24に螺合する。このようにして、インナーデッキ13をスカートガード12と共にインナーデッキ固定用アングル15に固定する。
【0023】
次に、図3を参照して、スカートガード取付構造50の構成を説明する。図3に示すように、スカートガード取付構造50は、スカートガード12、スカートガード取付アングル30及び下側スカートガード取付アングル31を有する。スカートガード取付アングル30及び下側スカートガード取付アングル31の夫々は、図示しない鉄骨等の被固定物に固定されている。スカートガード12のステップ10側の表側面35は、矩形形状を有する。
【0024】
図3に示すように、スカートガード取付アングル30は、上方に向いた2つの溝として、表側面35の幅方向(紙面の上下方向)を深さ方向Zとして、X方向に延在するスカートガード先端部収容溝40と、スカートガード先端部収容溝40に隣り合うように延在するスカートガード軸収容溝41とを有する。図3に示すように、スカートガード軸収容溝41は、スカートガード先端部収容溝40に略平行に延在すると好ましい。図3は、エスカレータ1の傾斜路に垂直な図1のB-B線断面図である。その結果、図3の紙面で上下方向に延びる深さ方向Zは、鉛直成分の延在成分を含む。
【0025】
図3に示すように、スカートガード先端部収容溝40は、内側板11側の上部が開口している。また、スカートガード軸収容溝41は、スカートガード先端部収容溝40よりもステップ10側に配置されている。スカートガード取付アングル30は、スカートガード12の裏側面36に当接する側壁39と、側壁39の上部からスカートガード12の厚さ方向(以下、単に厚さ方向という)Yのスカートガード先端部収容溝40側に延びる上側閉塞部37とを有する。スカートガード軸収容溝41の上方には、スカートガード12の軸部材47の上方の移動を規制すると共に、下面で軸部材47を受け回転支持する上側閉塞部37が設けられている。スカートガード軸収容溝41の上側領域とスカートガード軸収容溝41の上側領域とは、厚さ方向Yに延在する通路38を介して連通している。この通路38の役割については後述する。また、スカートガード取付アングル30の傾斜路方向の幅(X方向長さ)は、軸部材47の長さより若干短い長さとされており、後述する一対の突出部60の内側に嵌まり込むようになっている。
【0026】
図3に示すように、下側スカートガード取付アングル31は、スカートガード取付アングル30よりも鉛直方向下側に設けられる。下側スカートガード取付アングル31は、上側に突出する上側突出部42を有する。
【0027】
また、図3に示すように、スカートガード12は、板状の本体部46と、軸部材47とを有する。軸部材47は、本体部46と一体に構成される。本体部46と軸部材47とを一体とする構造については、後に図4を用いて説明する。図3に示すように、軸部材47は、スカートガード12がステップ側方に対向する通常状態で本体部46のステップ10側とは反対側に設けられている。軸部材47は、この通常状態でスカートガード軸収容溝41の下方に収容されている。
【0028】
スカートガード12は、下方側に開口する収容凹部63を有する。詳しくは、スカートガード12は、ステップ10側とは反対側の裏側面36から突出する凹部画定突出部52を有する。凹部画定突出部52は、厚さ方向Yに突出する厚さ方向突出部53と、その厚さ方向突出部53の先端側から下方に延在する下方側延在部54とを有する。下方側延在部54は、裏側面36に対して厚さ方向Yに間隔をおいて対向する。裏側面36、厚さ方向突出部53及び下方側延在部54は、下方側に開口する収容凹部63を画定する。収容凹部63に上記通常状態で上側突出部42を収容させることにより、エスカレータ1が駆動可能な通常状態でスカートガード12を確実に位置決めして、スカートガード12がステップ10に容易に接触しないようにしている。
【0029】
次に、図4を用いて軸部材47を本体部46と一体にする構造について説明する。図4(a)は、スカートガード12を裏側から見た時の模式図であり、図4(b)は、スカートガード12の裏側の斜視図である。
【0030】
図4(a),(b)に示すように、スカートガード12は、X方向(スカードガード12の長手方向に一致)の両側に各側1つずつ軸部材47を有する。また、スカートガード12は、X方向の両側に一対の突出部60を有する。軸部材47は、一対の突出部60と一体に構成され、裏側面36に対して厚さ方向Yに間隔をおいた状態で一対の突出部60の間を延在している。このようにして、スカートガード12の裏側面36に対して厚さ方向Yに間隔をおいた軸部材47を簡易な構成で設けている。
【0031】
図3及び図4を参照して、一対の突出部60間のX方向の長さは、スカートガード取付アングル30(図3参照)のX方向の寸法よりも長くなっている。その結果、スカートガード取付アングル30のスカートガード軸収容溝41に軸部材47を収容できるようになっている。
【0032】
次に、図1図2及び図5を参照して、スカートガード12の外側にある部材のメンテナンスを行う際にスカートガード12をいかに動作させるかについて説明する。
【0033】
先ず、図1及び図2を参照して、インナーデッキ13をインナーデッキ固定用アングル15に固定している取付ネジ22をインナーデッキ13から取り外し、インナーデッキ13をインナーデッキ固定用アングル15から取り外す。その後、取り外したインナーデッキ13をスカレータの上端側または下端側にある乗降口付近まで持ち運ぶ。
【0034】
続いて、インナーデッキ13が取り外されることによって下端から上端まで外部に露出しているスカートガード12を図5に示す手順でステップ10の側方に対向する位置から除去する。
【0035】
詳しくは、図5(a)に示す、スカートガード12がステップの側方に対向する通常状態からスカートガード12を深さ方向Zの上方側に持ち上げる。そして、図5(b)に示すように、凹部画定突出部52の収容凹部63から下側スカートガード取付アングル31の上側突出部42を離脱させると共に、スカートガード12の軸部材47をスカートガード軸収容溝41内で深さ方向Zの上方側に移動させて、軸部材47を上側閉塞部37に接触させる。
【0036】
続いて、軸部材47が上側閉塞部37に支持されている状態で軸部材47を支点として本体部46の下方側が上方側になるように本体部46を図5(b)に矢印Cで示す方向に回転させて、本体部46の下方側の先端部をスカートガード先端部収容溝40に収容させる。図5に示すように、上側閉塞部37の下方側の形状は、軸部材47に対応する湾曲形状(断面円弧状)になっていると本体部46を円滑に回転させることができて好ましいが、平面形状等からなってもよい。なお、上側閉塞部37がなくてもよく、その場合には軸部材47を支点として利用せずに本体部46を回転させたり、軸部材47をスカートガード軸収容溝41の底部で受けながら本体部46を回転させればよい。
【0037】
その後、図5(c)に示すように、本体部46の下方側の先端部57をスカートガード先端部収容溝40の下方側にある底部59に接触するまで収容すると、スカートガード12がスカートガード先端部収容溝40の下方側から深さ方向Zの上方側に起立した状態になる。図5(c)に示すスカートガード12が起立した状態では、軸部材47は、2つの溝40,41をつなぐ通路38よりも下方に配置され、スカートガード軸収容溝41の両側面に挟持され、厚さ方向Yに殆ど移動できない構成となっている。また、図5(c)に示すスカートガード12が起立した状態では、図5(a)に示す通常状態でスカートガード12の下方側に位置していた深さ方向Zの一方側の端部64が深さ方向Zの上方側に位置する。
【0038】
スカートガード先端部収容溝40は、スカートガード12の本体部46に対応する形状を有し、スカートガード12の本体部46の厚さよりも僅かに大きい厚さ方向Yの寸法を有する。このようにして、スカートガード12の本体部46がスカートガード先端部収容溝40に密着した状態で嵌合するようにして、スカートガード12が起立している状態でスカートガード12がスカートガード先端部収容溝40から外れることを防止している。特に、スカートガード12のスカートガード12の先端部をスカートガード先端部収容溝40に嵌め込んで下側から受け、軸部材47をスカートガード軸収容溝41に嵌め込んで溝内面で受けることで(軸部材47を溝の下側から受ける構成がより好ましい)、スカートガード12をその自重より自立して保持することができる。
【0039】
図5(c)に示す状態では、スカートガード12がスカートガード先端部収容溝40の下方側から深さ方向Zの上方側に起立しているので、ステップ10の側方側には外側に通じる大きな開口が生じる。この開口を介して外側に配置される部材、例えば、駆動側スプロケットや加圧ローラ等のメンテナンスを行うことができる。
【0040】
なお、2つの溝40,41をつなぐ通路38は、スカートガード12を取り替える際に使用する。すなわち、スカートガード12は、ステップ10との接触によって削られる場合があり、取替えが必要な場合がある。スカートガード12を取り替える場合には、例えば、図5(b)に示す状態から本体部46が傾斜路に略平行になる状態まで本体部46を矢印Cで示す方向に回転させる。続いて、軸部材47を通路38を通過させてスカートガード先端部収容溝40に位置させる。その後、軸部材47をスカートガード先端部収容溝40内を深さ方向Zの上方側に移動させてスカートガード先端部収容溝40から離脱させると、スカートガード12がスカートガード取付アングル30から取り外される。
【0041】
上記実施形態によれば、スカートガード12を通常位置から本体部46の上方側が下方側になるように回転させることによって、本体部46の下方側の先端部をスカートガード先端部収容溝40に収容させると、スカートガード12をスカートガード先端部収容溝40から上側に起立させることができる。そして、スカートガード12をスカートガード先端部収容溝40から上側に起立させるだけで、スカートガード12をステッ10プの側方に対向する位置から除去できる。よって、スカートガード12をスカートガード取付アングル30から取り外す必要がなく、スカートガード12をスカートガード置き場へ持ち運ぶ必要もない。その結果、メンテナンスの作業性を向上できる。
【0042】
また、スカートガード12を通常位置から持ち上げて軸部材47が上側閉塞部37に支持されている状態で、スカートガード12の本体部46を軸部材47を支点として本体部46の上方側が下方側になるように回転させることによって、本体部46の下方側の先端部57をスカートガード先端部収容溝40に収容させることができる。よって、単にスカートガード12を移動不可になるまで持ち上げて回転させるだけでスカートガード12を起立させることができるので、作業の効率性を大きく向上できる。
【0043】
更には、図5(c)に示すスカートガード12が起立している状態で、スカートガード12の下方側が収容されるスカートガード先端部収容溝40が深さ方向Z(鉛直方向成分を含む一方向)にある程度の深さを有しているので、地震で縦揺が生じた場合でもスカートガード12がスカートガード先端部収容溝40から容易に離脱することがない。また、図5(c)に示すスカートガード12が起立している状態で、スカートガード12の本体部46がスカートガード先端部収容溝40の両側面に挟持され、軸部材47もスカートガード軸収容溝41の両側面に挟持されるので、地震で横揺が生じた場合でもスカートガード12がスカートガード取付アングル30から離脱することがない。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、スカートガード12が鉄骨等の被固定物に固定されたアングルに嵌合するだけで、締結部材などで固定されていない。しかし、スカートガード12は、鉄骨等の被固定物に固定されたアングルに締結部材で固定されてもよい。
【0046】
また、スカートガード取付構造50がスカートガード取付アングル30の下側に下側スカートガード取付アングル31を有する場合について説明した。しかし、スカートガード取付構造は、スカートガード取付アングルの下側に下側スカートガード取付アングルを有さなくてもよい。
【0047】
また、乗客コンベアであるエスカレータ1が、インナーデッキ13を有する場合について説明したが、エスカレータは、インナーデッキを有さなくてもよい。また、乗客コンベアがエスカレータ1である場合について説明したが、乗客コンベアは、乗客が乗る複数のステップが水平方向に連なる動く歩道であってもよい。なお、乗客コンベアが動く歩道である場合、スカートガード先端部収容溝が延在する深さ方向が鉛直方向に略一致することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 エスカレータ、 10 ステップ、 12 スカートガード、 30 スカートガード取付アングル、 31 下側スカートガード取付アングル、 36 裏側面、 37 上側閉塞部、 40 スカートガード先端部収容溝、 41 スカートガード軸収容溝、 42 上側突出部、 46 本体部、 47 軸部材、 50 スカートガード取付構造、 57 本体部の先端部、 60 一対の突出部、 63 収容凹部。
図1
図2
図3
図4
図5