【実施例】
【0017】
実施例に係る汎用エンジン用燃料供給装置について図面に基づき説明する。
【0018】
図1は、汎用エンジン10と、汎用エンジン用燃料供給装置30、つまり汎用エンジン10の吸排気ライン31,32と燃料供給ライン33とを模式的に示している。
【0019】
汎用エンジン10は、船外機や作業機等の汎用機に搭載されており、クランクケース11とシリンダブロック12とヘッドカバー13とクランク軸14とピストン15とを含む。シリンダブロック12には、ピストン15が往復動するシリンダ16が設けられている。ヘッドカバー13は、吸気口21と排気口22とを有する。吸気口21は、吸気弁23によって開閉される。排気口22は、排気弁24によって開閉される。
【0020】
吸気口21には、吸気ライン31が接続されている。排気口22には、排気ライン32が接続されている。吸気ライン31は、エアクリーナ41とキャブレタ42とインテークマニホールド43とを有する。クランクケース11には、連通口11aが設けられている。
【0021】
エアクリーナ41は、クリーナボックス51と、このクリーナボックス51に収納されたエアフィルタ52と、クリーナボックス51内がエアフィルタ52によって区画されることにより形成されたダスト室53及びクリーン室54とからなる。ダスト室53は、外気(エアフィルタ52によって濾過される前の空気)を導入するように前記エアクリーナ41の中、つまりクリーナボックス51内に形成された空間である。クリーン室54は、ダスト室53内の空気がエアフィルタ52によって濾過された後に流入するようにエアクリーナ41の中、つまりクリーナボックス51内に形成された空間である。クリーン室54には連通口54a(エアクリーナ41の連通口54a)が設けられている。
【0022】
キャブレタ42は、エアクリーナ41から汎用エンジン10の吸気口21までの吸気ライン31に介在している。
図1及び
図2に示されるように、キャブレタ42は、スロットルボデイ61と、このスロットルボデイ61内に設けられたスロットル弁62と、スロットルボデイ61の下部に設けられたフロート室63と、このフロート室63内の燃料Fuをスロットルボデイ61のベンチュリ部64に噴霧する噴霧ノズル65とを含む。霧化された燃料は、エアクリーナ
41から導入された燃焼用空気と共に汎用エンジン10の燃焼室25へ供給される。フロート室63は、溜められた燃料Fuのレベルを検出するためのフロート66を有する。フロート室63のなかの、溜められた燃料Fuの上限レベルよりも上位には、通気口63aが設けられている。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、燃料供給ライン33は、燃料タンク71と、この燃料タンク71からフロート室63へ燃料を供給する燃料供給管72とを含む。
【0024】
汎用エンジン用燃料供給装置30は、前記キャブレタ42と減圧用連通路81と制御弁82と減圧用ポンプ83と空燃比センサ84と制御部85とを備える。
【0025】
減圧用連通路81は、キャブレタ42のフロート室63とエアクリーナ41とを連通している。詳しく述べると、この減圧用連通路81は、エアクリーナ41の連通口54aとフロート室63の通気口63aとを連通している。この減圧用連通路81には、制御弁82と減圧用ポンプ83とが介在している。減圧用ポンプ83は、減圧用連通路81のなかの、制御弁82よりもエアクリーナ41の連通口54a側に介在することが好ましい。減圧用連通路81のなかの、フロート室63の通気口63aと制御弁82との間は分岐しており、エアフィルタ86を介して大気に開放されている。つまり、フロート室63の通気口63aは、減圧用連通路81によってエアクリーナ41に連通されるとともに、大気に開放されている。
【0026】
制御弁82は、全閉に制御可能且つ弁開度を連続して制御可能な構成である。この制御弁82は、ステッピングモータ等の電動モータによって、弁を全閉及び全開駆動できるとともに、弁開度を連続して変更可能に駆動(リニア駆動)できる、いわゆる電動弁である。
【0027】
減圧用ポンプ83は、フロート室63内を減圧するように吸引する構成である。この減圧用ポンプ83は、汎用エンジン10のクランクケース11の内部11b(クランク室11b)に交互に発生した負圧と正圧とに応動する、ダイヤフラムポンプによって構成されていることが好ましい。以下、減圧用ポンプ83のことを、適宜「ダイヤフラムポンプ83」と言い換える。
【0028】
ダイヤフラムポンプ83は、ハウジング91とダイヤフラム92とを含む。ハウジング91は、吸入室93と吐出室94とダイヤフラム室95とに区画されている。ダイヤフラム92は、ダイヤフラム室95をポンプ室96とエア室97とに区画している。エア室97は、連通管98によってクランクケース11の連通口11aに連通している。ダイヤフラム92は、クランク室11bに交互に発生した負圧と正圧とに応動してポンピング作用をなす。この結果、制御弁82が全閉以外の場合には、ダイヤフラム92は、フロート室63の空気を吸引する。この結果、フロート室63内を減圧することができる。
【0029】
このように、クランクケース11の内圧を利用してダイヤフラムポンプ83(減圧用ポンプ83)を駆動することができる。クランクケース11とダイヤフラムポンプ83とを連通する連通管98を設けるだけの簡単な構成ですむ。
【0030】
空燃比センサ84は、汎用エンジン10の燃焼室25から排出された排気の空燃比を検出するものであり、例えばO
2センサによって構成される。この空燃比センサ84は、例えば排気ライン32のエギゾーストマニホールド34に設けられている。
【0031】
制御部85は、空燃比センサ84の検出信号に基づいて、制御弁82を全閉及び全開制御し、しかも制御弁82の開度を連続して変更可能に制御(リニア制御)する構成である。つまり、制御
部85は、空燃比センサ84によって検出された排気の空燃比に基づいて、制御弁82の弁開度をフィードバック制御する。
【0032】
以上の説明をまとめると、次の通りである。汎用エンジン用燃料供給装置30は、フロート室63が減圧されていない基本状態(非減圧状態)での、キャブレタ42の燃料供給量が、理論空燃比よりもリッチに設定されることが前提とした構成である。
【0033】
エアクリーナ41の空気取り入れ口(ダスト室53の空気入口)は、大気に開放されている。キャブレタ42のフロート室63は、減圧用連通路81によって吸気ライン31のエアクリーナ41に連通している。この減圧用連通路81に、制御弁82と減圧用ポンプ83とを介在させた。この減圧用ポンプ83によって、フロート室63内を減圧するように吸引する。
【0034】
このため、減圧用ポンプ83の吸引能力を適切に設定することにより、フロート室63内の減圧の程度を最適化することができる。つまり、フロート室63内の減圧の程度は、キャブレタ42から汎用エンジン10の燃焼室25までの、吸気ライン31の負圧の影響を受けない。しかも、減圧用連通路81に介在している制御弁82の弁開度は、空燃比センサ84によって検出された排気の空燃比に基づいている。弁開度を連続的に制御することによって、減圧用連通路81を流れる空気の流量を連続的に調節することができる。この結果、フロート室63内の減圧速度を連続的に制御することができる。
【0035】
減圧用ポンプ83と制御弁82とによって、フロート室63内の減圧の程度と減圧速度とを、連続的に調節することができる。つまり、フロート室63とキャブレタ42のベンチュリ部64との圧力差を、連続的に調節することができる。そして、フロート室63が減圧されていない基本状態(非減圧状態)での空燃比から、リーン方向へ、空燃比を連続的に制御することができる。
【0036】
このように、減圧用ポンプ83と制御弁82とによって、フロート室63内の減圧の程度を、きめ細かく制御できる。フロート室63とキャブレタ42のベンチュリ部64との圧力差を、迅速に且つきめ細かく制御できるので、排気の空燃比を一層精度良く、一層きめ細かく制御することができる。空燃比センサ84によって検出された排気の空燃比に基づいて、制御弁82の弁開度をフィードバック制御することが可能である。また、理論空燃比の近くでのフィードバック運転が可能となれば、排気ライン32に三元触媒を設けることによって、排気を容易に浄化することができる。また、フロート室63内の減圧の程度を制御するので、メイン系統(スロットル系統)とアイドリング系統(スロー系統)の、どちらの燃料系統をも、同時に制御することが可能である。
【0037】
しかも、フィードバック制御を実行中に、汎用エンジン10の負荷が変動しても、制御部85によって制御弁82を全閉することにより、フロート室63を減圧されていない基本状態に迅速に戻すことができる。この結果、汎用エンジン10の負荷の変動に対し、速やかに応答して空燃比を変更することができる。