(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618405
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】撹拌脱泡機
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20191202BHJP
B01F 9/22 20060101ALI20191202BHJP
B01F 15/02 20060101ALI20191202BHJP
B01F 15/06 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
B01D19/00 102
B01F9/22
B01F15/02 A
B01F15/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-67396(P2016-67396)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-176990(P2017-176990A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岡島 英昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 全博
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−071264(JP,A)
【文献】
実開昭63−130129(JP,U)
【文献】
特開2013−244475(JP,A)
【文献】
特開2011−045873(JP,A)
【文献】
特開2016−016390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01F 9/22
B01F 15/00−06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空箱状のハウジングケース内の支持体に回転駆動可能な駆動モータと、この駆動モータの駆動軸に連結された公転軸とを立設し、この公転軸の先端にロータを取付けると共に、このロータ上に前記公転軸と回転伝達機構を介して連結された少なくとも一本以上の自転軸を配設し、この自転軸に設けたカップホルダーに被混練物を収容する撹拌容器を着脱可能に設置し、前記公転軸を介してロータを公転させながら自転軸の撹拌容器を自転させて撹拌容器に収容した被混練物の撹拌及び脱泡を行う撹拌脱泡機において、前記公転軸中心部内と自転軸の中心部とにエアー通路を形成し、前記公転軸下部のエアー通路端末部にロータリージョイント及びエアー供給配管回路を介してエアー供給制御装置を接続すると共に、公転軸の中心上部のエアー通路端末部と自転軸に形成したエアー通路下部端末部に設けたロータリージョイントとをエアー配管を介して気密的に接続し、前記撹拌容器に、該撹拌容器に収容した被混練物の撹拌時における温度を検出するための温度センサーを設け、前記エアー供給配管回路に、前記エアー供給制御装置から供給されるエアーを、加温エアー,冷風エアー,または常温エアーに調温するための加温冷風手段と、これらの各エアーを切り換え制御するための電磁切換え弁とを設け、前記切り換え制御された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかを前記カップホルダー内に収容されている撹拌容器の底面及び側面に供給して撹拌容器内の被混練物を所定温度に調温するように構成し、前記自転軸に形成したエアー通路のエアー噴出口と前記撹拌容器の底面との間に、制御供給された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかのエアーを前記撹拌容器の底面及び側面に沿ってエアーを分散供給するためのエアー分散供給手段を設け、前記エアー分散供給手段が多孔質エレメントであることを特徴とする撹拌脱泡機。
【請求項2】
中空箱状のハウジングケース内の支持体に回転駆動可能な駆動モータと、この駆動モータの駆動軸に連結された公転軸とを立設し、この公転軸の先端にロータを取付けると共に、このロータ上に前記公転軸と回転伝達機構を介して連結された少なくとも一本以上の自転軸を配設し、この自転軸に設けたカップホルダーに被混練物を収容する撹拌容器を着脱可能に設置し、前記公転軸を介してロータを公転させながら自転軸の撹拌容器を自転させて撹拌容器に収容した被混練物の撹拌及び脱泡を行う撹拌脱泡機において、前記公転軸中心部内と自転軸の中心部とにエアー通路を形成し、前記公転軸下部のエアー通路端末部にロータリージョイント及びエアー供給配管回路を介してエアー供給制御装置を接続すると共に、公転軸の中心上部のエアー通路端末部と自転軸に形成したエアー通路下部端末部に設けたロータリージョイントとをエアー配管を介して気密的に接続し、前記撹拌容器に、該撹拌容器に収容した被混練物の撹拌時における温度を検出するための温度センサーを設け、前記エアー供給配管回路に、前記エアー供給制御装置から供給されるエアーを、加温エアー,冷風エアー,または常温エアーに調温するための加温冷風手段と、これらの各エアーを切り換え制御するための電磁切換え弁とを設け、前記切り換え制御された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかを前記カップホルダー内に収容されている撹拌容器の底面及び側面に供給して撹拌容器内の被混練物を所定温度に調温するように構成し、前記自転軸に形成したエアー通路のエアー噴出口と前記撹拌容器の底面との間に、制御供給された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかのエアーを前記撹拌容器の底面及び側面に沿ってエアーを分散供給するためのエアー分散供給手段を設け、前記エアー分散供給手段が、制御供給された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかのエアーを前記撹拌容器の周側面に沿ってスパイラル状または放射状に噴出する溝を備えたプレートまたは突起であることを特徴とする撹拌脱泡機。
【請求項3】
中空箱状のハウジングケース内の支持体に回転駆動可能な駆動モータと、この駆動モータの駆動軸に連結された公転軸とを立設し、この公転軸の先端にロータを取付けると共に、このロータ上に前記公転軸と回転伝達機構を介して連結された少なくとも一本以上の自転軸を配設し、この自転軸に設けたカップホルダーに被混練物を収容する撹拌容器を着脱可能に設置し、前記公転軸を介してロータを公転させながら自転軸の撹拌容器を自転させて撹拌容器に収容した被混練物の撹拌及び脱泡を行う撹拌脱泡機において、前記公転軸中心部内と自転軸の中心部とにエアー通路を形成し、前記公転軸下部のエアー通路端末部にロータリージョイント及びエアー供給配管回路を介してエアー供給制御装置を接続すると共に、公転軸の中心上部のエアー通路端末部と自転軸に形成したエアー通路下部端末部に設けたロータリージョイントとをエアー配管を介して気密的に接続し、前記撹拌容器に、該撹拌容器に収容した被混練物の撹拌時における温度を検出するための温度センサーを設け、前記エアー供給配管回路に、前記エアー供給制御装置から供給されるエアーを、加温エアー,冷風エアー,または常温エアーに調温するための加温冷風手段と、これらの各エアーを切り換え制御するための電磁切換え弁とを設け、前記切り換え制御された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかを前記カップホルダー内に収容されている撹拌容器の底面及び側面に供給して撹拌容器内の被混練物を所定温度に調温するように構成し、前記撹拌容器に、該撹拌容器の上面を覆い、かつ加温エアー,冷風エアー,または常温エアーを前記撹拌容器の周側面側に戻すガイド手段を備えた蓋状のアダプターを設けたことを特徴とする撹拌脱泡機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撹拌脱泡機に係わり、更に詳しくは粘性材料や流動性を有する材料(例えば半田ペースト,歯科用印象材料,油脂,樹脂,染料,顔料等、以下「被混練物または被撹拌材料」という)を収容した撹拌容器を駆動モータにより公転させながら自転させると共に被混練物中から気泡等を脱泡させ、効率良く撹拌脱泡することが出来る撹拌脱泡機において、撹拌運転中における撹拌容器の冷却や加温を効率良く行って撹拌している被混練物の物性を良好に担保することが出来る撹拌脱泡機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘性材料や流動性を有する材料から成る被混練物(被撹拌材料)を収容した撹拌容器を容器ホルダに保持して公転させながらその公転軌道上で自転させるように構成した撹拌脱泡装置が一般的に知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
自転公転機能を有する従来の撹拌脱泡装置では、撹拌容器に高い遠心力を掛けながら高速で撹拌するため被混練物(または被撹拌材料)の混練摩擦により発熱し、更に撹拌容器も発熱する。また被撹拌材料の隅々まで緻密に撹拌混合するため、短時間に反応熱を発したりする場合もある。このような作用により被撹拌材料は、本来的な材料の物性が変わってしまい、そのため従来から撹拌時に被撹拌材料の温度を制御する必要性が問われていた。
【0004】
また反対に、粘性(粘度)の高い被混練物の材料では、撹拌効率の高い撹拌脱泡装置を用いても撹拌力に負荷がかかって上手く撹拌することが出来ず、撹拌時間を要したり、混合できずに複数に分割してしまう物もある。このような被混練物の材料に対しては加熱し、粘度を下げることで撹拌可能としたり、撹拌時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0005】
従来の撹拌脱泡機では、ハウジングケース内に収容された撹拌容器をロータを回転させながら自転させる装置の構造上、撹拌容器を直接冷却や加熱することが難しく、ロータを包み込むように密閉した部屋(ケースまたはチャンバー)を設け、その中の雰囲気を冷却もしくは加熱したり、回転するロータに外部より大気温度のエアーを吹き付けたりするのが一般的であった。
【0006】
例えば、引用文献1の特許第5711425号(撹拌・脱泡装置およびその運転方法)の発明のケース(チャンバー)内に導入管を用いて外側からエアーを拭き当てる方法の場合には、容器のホルダーに容器の外周部が露出するような孔が形成されており、エアーが直接容器に当たるようになっている。
【0007】
しかしながら、この発明では回転する容器に外部よりエアーを拭き当てるため、断続的になってしまい冷却効率が極めて悪く、また容器と容器ホルダーは同じ位相で回転するため相対的に位置が変わらず、エアーの当たる位置が同じ位置になってしまい冷却ムラが出る可能性がある。
【0008】
また、引用文献2の特開2013−244475号公報(遠心機、それに用いられる制御機構、及び処理方法)の発明では、撹拌材料の温度情報を検知する検知部を持った撹拌脱泡機であって、材料温度が上限値以上と判断した場合は、自転体が低速回転になるか、若しくは停止する。また公転体は通常回転体と異なる回転速度となる(第1制御部)。
更に温度が下限位置と判断した場合は自転体、公転体が通常回転速度になる(第2制御部)。自転体は、公転体が回転することにより、熱媒体をその中空部に流入させる流入流出部が設けられ、回転体の回転方向の上流または下流に対向可能な自転体本体の壁面に設けられているが、具体的な構成が不明確であり実現性に乏しいものである。
【0009】
更に引用文献3の特許第407233号公報(被撹拌材の撹拌・脱泡方法とその装置)の発明にあっては、保冷材を外周面及び底面部分に収容したアダプターを介して容器をカップホルダーに嵌入し、温度制御しながら撹拌・脱泡する発明であるが、保冷材は時間の経過と共に徐々に昇温することから正確な温度コントロールや長時間冷却を維持することが不可能であると言う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5711425号公報
【特許文献2】特開2013−244475号公報
【特許文献3】特許第407233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明はかかる従来の課題に着目し、粘性材料や流動性を有する材料を収容した撹拌容器を駆動モータにより公転させながら自転させると共に被混練物の気泡を脱泡させ、効率良く撹拌脱泡することが出来る撹拌脱泡機において、ハウジングケース内で撹拌運転中の撹拌容器を個別に、または複数個同時に冷却や加温を効率良く行い、撹拌している被混練物材料の物性を変化させることなく良好に担保して混合,撹拌脱泡を行うことが出来る撹拌脱泡機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は上記目的を達成するため、公転軸中心部内と自転軸の中心部とにエアー通路を形成し、前記公転軸下部のエアー通路端末部にロータリ−ジョイント及びエアー供給配管回路を介してエアー供給制御装置を接続すると共に、公転軸の中心上部のエアー通路端末部と自転軸に形成したエアー通路下部端末部に設けたロータリ−ジョイントとをエアー配管を介して気密的に接続し、前記撹拌容器に、該撹拌容器に収容した被混練物の撹拌時における温度を検出するための温度センサーを設け、前記エアー供給配管回路に、前記エアー供給制御装置から供給されるエアーを、加温エアー,冷風エアー,または常温エアーに調温するための加温冷風手段と、これらの各エアーを切り換え制御するための電磁切換え弁とを設け、前記切り換え制御された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかを前記カップホルダ−内に収容されている撹拌容器の底面及び側面に供給して撹拌容器内の被混練物を所定温度に調温するように構成したことを要旨とするものである。
【0013】
ここで、前記撹拌容器の外周面とカップホルダーの内壁面との間に気密的空間または断熱材料から成る断熱層を形成した、前記自転軸に形成したエアー通路のエアー噴出口とカップホルダ−の底面との間に、制御供給された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかのエアーを撹拌容器の底面及び側面に沿ってエアーを分散供給するためのエアー分散供給手段を設けるものである。
【0014】
前記エアー分散供給手段が、多孔質エレメントまたは制御供給された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかのエアーを撹拌容器の周側面に沿ってスパイラル状または放射状に噴出する溝を備えたプレートまたは突起で構成するものである。
【0015】
また前記エアー供給配管回路に設けた加温冷風手段が、エアークーラーであり、前記エアー供給制御装置は、外部エアーまたは内部コンプレッサーに接続してエアーを供給するように構成するものである。
【0016】
前記撹拌容器に、該撹拌容器の上面を覆い、かつ加温エアー,冷風エアー,または常温エアーを撹拌容器周側面側に戻すガイド手段を備えた蓋状のアダプターを設け、前記アダプターの内側面に、撹拌容器の被混練物及び雰囲気を測定する温度センサーを設け、この温度センサーで測定した温度を無線によりエアー供給制御装置に送信して加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの温度制御を行うようにするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明は上記のように、公転軸中心部内と自転軸の中心部とにエアー通路を形成し、前記公転軸下部のエアー通路端末部にロータリ−ジョイント及びエアー供給配管回路を介してエアー供給制御装置を接続すると共に、公転軸の中心上部のエアー通路端末部と自転軸に形成したエアー通路下部端末部に設けたロータリ−ジョイントとをエアー配管を介して気密的に接続し、前記撹拌容器に、該撹拌容器に収容した被混練物の撹拌時における温度を検出するための温度センサーを設け、前記エアー供給配管回路に、前記エアー供給制御装置から供給されるエアーを、加温エアー,冷風エアー,または常温エアーに調温するための加温冷風手段と、これらの各エアーを切り換え制御するための電磁切換え弁とを設け、前記切り換え制御された加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの何れかを前記カップホルダ−内に収容されている撹拌容器の底面及び側面に供給して撹拌容器内の被混練物を所定温度に調温するように構成したので、以下のような優れた効果を奏するものである。
(a).ハウジングケース内で撹拌運転中の撹拌容器を個別に、または複数個同時に冷却や加温を効率良く行い、撹拌している被混練物の材料の物性を変化させることなく良好に担保して撹拌脱泡を行うことが出来る。
(b).撹拌容器を加温,冷却することにより、収容する撹拌材料を効率良く撹拌出来ると共に、撹拌時間の短縮化を図ることが出来る。
(c).撹拌材料の温度を検出しながら加温エアー,冷風エアー,または常温エアーを切り換え制御して、カップ、カップホルダー内部の狭い空間で撹拌容器の外表面に均一に拭き付けるので、撹拌容器内の撹拌材料を効率良く冷却または加温することが出来る。
(d).カップホルダ−の上面を覆い、かつ加温エアー,冷風エアー,または常温エアーを撹拌容器周側面側に戻すガイド手段を備えたアダプターを設けるので、一度加温,冷却使用したエアーを更にリタンーンさせて内部の加温,冷却として無駄なく使用でき、撹拌容器の加温,冷却効率を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明を実施した撹拌脱泡機の全体を示す一部斜視図である。
【
図2】この発明を実施した撹拌脱泡機の一部縦断正面図である。
【
図3】
図2のカップホルダ−と撹拌容器との多孔質エレメントから成るエアー分散供給手段の一部拡大断面図である。
【
図4】この発明のエアー供給制御装置のエアー回路の説明図である。
【
図5】この発明の撹拌容器の底面及び側面に沿ってエアーを分散供給するための分散供給手段の他の実施形態を示す断面図である。
【
図7】カップホルダ−と撹拌容器との間の断熱空間層の断面図である。
【
図8】カップホルダ−の上面を覆うガイド手段を備えた蓋状のアダプターの断面図である。
【
図9】カップホルダ−の上面を覆うガイド手段を備えた蓋状のアダプターの他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、この発明を実施した被混練物(粘性材料や流動性を有する材料:例えば半田ペースト,歯科用印象材料,油脂,樹脂,染料,顔料等)を収容したロータ上に設置した容器Wを公転させながら自転させることにより、前記被混練物の撹拌及び脱泡を行う撹拌脱泡機の全体を示す一部斜視図、
図2は撹拌脱泡機の一部縦断正面図を示している。
【0021】
この発明の一実施形態例における撹拌脱泡機は、中空箱状のハウジングケース1内のプレート状の支持体2(取付板)に回転駆動可能な駆動モータ3と、この駆動モータ3の駆動軸4に駆動プーリ10及び公転従動プーリ11から成る伝達機構5を介して連結された公転軸6とを立設し、この公転軸6の先端にロータ7を取付けると共に、このロータ7上に前記公転軸6と回転伝達機構8を介して連結された少なくとも一本以上の自転軸9が配設してある。
【0022】
前記回転伝達機構8は、支持体2に取付けられた固定プーリ12と、前記ロータ7に設置された自動軸駆動プーリ11がベルト18を介して連結駆動され、自動軸駆動プーリ11と同軸に設けられた中間プーリ13を介して自転軸9の設けた有底筒状のカップホルダー14の外周の自転軸従動プーリ15を回転駆動するようになっている。
【0023】
なお、上記の回転駆動方法は上記のプーリやベルト等の構成に限定されるものでは無くギャー等で駆動することも可能であり、また駆動モータ3としては、通常の回転駆動のものや、正,逆回転駆動のもの、更に自転,公転をそれぞれ制御するもの等あらゆるものが使用できる。
【0024】
従って、駆動モータ3のからの回転駆動力を公転軸6や回転伝達機構8、ロータ7に設置された自動軸駆動プーリ11、更に自転軸従動プーリ15を介して自転軸9を回転駆動させ、ロータ7を公転させながら撹拌容器Wを自転させて撹拌容器Wに収容した被混練物Wxの撹拌及び密閉された中空箱状のハウジングケース1内で脱泡を行うものである。
【0025】
前記駆動軸4に連結された公転軸6の中心部内と前記自転軸9の中心部とには、貫通したエアー通路31,32が形成してあり、前記公転軸6下部のエアー通路端末部31aはロータリ−ジョイント33及びエアー供給配管回路34を介してエアー供給源等で構成されるエアー供給制御装置35に接続して構成し、一方公転軸6の中心上部のエアー通路端末部31bと自転軸9に形成したエアー通路下部端末部32aに設けたロータリ−ジョイント36aとを
図4に示すようなエアー配管36を介して気密的に接続してある。
【0026】
また前記カップホルダー14に装着する撹拌容器Wの上部開口部には、蓋状のアダプター37が設けてあり、このアダプター37には、撹拌容器Wに収容した被混練物Wxの撹拌時における温度を検出するための温度センサー38が設けてある。なお、38aは温度センサー38からの信号を受信する受信部を示している。
【0027】
前記蓋状のアダプター37は、
図8及び
図9に示すように、撹拌容器Wの上部開口部を覆い、かつ加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcの何れかを撹拌容器Wの周側面側に戻す内側に傾斜したガイド溝等から成るガイド手段37aが形成してあり、一度加温,冷却したエアーQをリタンーンさせて無駄なく使用でき、撹拌容器の加温,冷却効率を高めることが出来る。
【0028】
前記エアー供給配管回路34は、
図4に示すように前記エアー供給制御装置35のエアー供給源40(外部エアーGaまたは内部コンプレッサーKa)から供給されるエアーQをレギュレータ39Aを介して加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcに調温するためのエアークーラー等の加熱冷風手段39と、これらの各エアーを切り換え制御するための複数の電磁切換え弁41a,41b,41c(4方向4ポート電磁弁,4方向5ポート電磁弁等)とを設け、前記切り換え制御された加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcの何れかを公転軸6及び自転軸9のエアー通路31ね32及び前記エアー配管36を介して前記カップホルダ−14内に収容されている撹拌容器Wの底面及び側面に供給して撹拌容器W内の被混練物Wxを所定温度に加温または冷却するように構成するものである。
【0029】
なお、エアークーラー等の加熱冷風手段39は、片方から熱風が吹き出され、他方からは冷風が吹き出されるように加熱,冷風の手段を備えている。
【0030】
前記撹拌容器Wの外周面とカップホルダー14の内壁面との間には、
図7に示すように一重または二重以上の気密的空間(この実施形態では真空状態の気密的空間であるが市販されている断熱材料で構成しても良い)から成る断熱層42が形成してあり、撹拌容器11の底面及び側面を加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcに調温した際に断熱効果をもたらせ撹拌容器Wの冷却効率や加温効率を高めることが出来るように構成したものである。
【0031】
これにより制御供給された加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcによって撹拌容器Wを効率良く冷却したり加温し、被混練物Wxを所定温度に担保して材料の物性の変化を防止している。
【0032】
また前記自転軸9に形成したエアー配管36のエアー噴出口36とカップホルダ−14または撹拌容器11の底面との間には、制御供給された加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcの何れかのエアーを撹拌容器11の底面及び側面に沿ってエアーを分散供給するためのエアー分散供給手段43が設けてあり、この実施形態では、エアー分散供給手段43として、例えば、軽石のような連通孔を備えた多孔質物質から成る多孔質物質エレメントや、または
図6に示すように撹拌容器11の周側面に沿ってスパイラル状または放射状に噴出する溝や、それを備えたプレートまたは突起で構成しても良い。
【0033】
そして、この発明の実施形態では公転軸6を介してロータ1を公転させながら自転軸9にカップホルダー14を介して装着された撹拌容器Wを自転させて撹拌容器Wに収容した被混練物の撹拌及び脱泡を行うものである。
【0034】
前記エアー供給制御装置35は、
図4に示すように外部エアーGaまたは内部コンプレッサーKaに接続してエアーQを供給するようにし、また前記カップホルダ−Wの上面は、カップホルダ−Wの上面の覆い、かつ加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcを撹拌容器Wの周側面側に戻すガイド手段37aを備えた蓋状のアダプター37が設けてあり、前記アダプター37に、撹拌容器W内の被混練物Wxの温度を測定する温度センサー38を設け、この温度センサー38で測定した温度を無線により送信して受信部38aにより受信し、更にエアー供給制御装置35に送信して加温エアー,冷風エアー,または常温エアーの温度制御を行うようにしたものである。
【0035】
次に、被混練物Wxの撹拌運転時における撹拌容器Wの冷却,加温制御について説明する。
【0036】
被混練物の撹拌運転時は、従来と同様に駆動モータ3により公転軸6を介してロータ7を公転させながら少なくとも一本以上に配設された自転軸9にカップホルダー14を介して装着された撹拌容器Wを自転させ、撹拌容器Wに収容した被混練物Wxの撹拌,脱泡を行うものである。
【0037】
そして、自転公転機能を有する撹拌脱泡機では、撹拌容器Wに高い遠心力を掛けながら高速で撹拌するため被混練物Wx(または被撹拌材料)の混練摩擦により発熱し、更に撹拌容器Wも発熱する。このような状態を放置すると、被混練物は更に高温に発熱したりする場合があり、被撹拌材料Wは、本来的な材料の物性が変わってしまうため、この発明では、撹拌時に被撹拌材料Wxを収容した撹拌容器Wの温度をアダプター37に設けた温度センサー38により常時検出している。
【0038】
撹拌容器Wの温度が設定温度以上または設定温度以下になると、温度センサー38から異状信号(無線)がエアー供給制御装置35に発信され、設定温度以上の場合には、エアー供給制御装置35からレギュレ−タ−39Aを介して供給されるエアーQがエアークーラー39で冷却された後に噴射される。
【0039】
冷風エアーQaは、各エアーを切り換え制御するための複数の電磁切換え弁41a,41b,41c(4方向4ポート電磁弁,4方向5ポート電磁弁等)を介して公転軸4の中心部内と自転軸18の中心部とに形成されたエアー通路31,32、及びエアー回路Gを構成するエアー供給配管34を介して撹拌容器Wの底面及び外周面とカップホルダー14の内壁面との間に噴射され、撹拌容器Wを冷却した後、撹拌容器Wの外部に排気される。
【0040】
またその一部は、ガイド手段37aを備えた蓋状のアダプター37を介して撹拌容器Wの内側に戻されて再利用されることになる。
【0041】
このようにして、撹拌容器Wの温度を一定の温度に担保することで被混練物Wxの物性を変化させることなく良好な撹拌作業を行うことができる。
【0042】
この発明の実施形態では上記のように構成することで、ハウジングケース1内で撹拌運転中の撹拌容器Wを個別に、または複数個同時に冷却や加温を効率良く行い、撹拌している被混練物Wxの材料の物性を変化させることなく良好に担保して撹拌脱泡を行うことが出来、撹拌容器Wを常時加温,冷却することにより、収容する撹拌材料Wxを効率良く撹拌出来ると共に、撹拌時間の短縮化を図ることが出来るものである。
【0043】
また同時に、撹拌材料の温度を検出しながら加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcを切り換え制御して撹拌容器の外表面に均一に拭き付けるので、撹拌容器W内の撹拌材料Wxを効率良く冷却または加温することが出来、更にカップホルダ−14の上面を覆い、かつ加温エアーQa,冷風エアーQb,または常温エアーQcを撹拌容器Wの周側面側に戻すガイド手段37aを備えたアダプター37を設けるので、一度加温,冷却したエアーを排気することなくリタンーンさせて無駄なく使用でき、撹拌容器の加温,冷却効率を高めることが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1 ハウジングケース
2 支持体
3 駆動モータ
4 駆動軸
5 伝達機構
6 公転軸
7 ロータ
8 回転伝達機構
9 自転軸
10 駆動プーリ
11 自転軸駆動プーリ
12 固定プーリ
13 中間プーリ
14 カップホルダー
15 自転軸従動プーリ
31 エアー通路
32 エアー通路
31a エアー通路端末部
31b エアー通路端末部
33 ロータリ−ジョイント
34 エアー供給配管回路
35 エアー供給制御装置
36 エアー配管
36a ロータリ−ジョイント
37 アダプター
37a ガイド手段
38 温度センサー
39 エアークーラー
38a 受信部
39A レギュレータ
40 エアー供給源
41a〜41c 電磁切換え弁(4方向4ポート電磁弁,4方向5ポート電磁 弁等) Q エアー
Qa 加温エアー
Qb 冷風エアー
Qc 常温エアー
W 撹拌容器
Wx 被混練物
Ga 外部エアー
Ka 内部コンプレッサー