(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動手段は、前記複数の液晶表示素子のうち少なくとも一つの液晶表示素子を駆動する前記駆動信号の前記開始タイミングを遅延させる遅延回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
前記複数の液晶表示素子は、R帯域の光を変調する第1の液晶表示素子と、G帯域の光を変調する第2の液晶表示素子と、B帯域の光を変調する第3の液晶表示素子とを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、デジタル駆動方式で発生するカラーブレークを低減するために、特許文献1に開示されているフィールドシーケンシャルカラー方式の画像表示装置の構成を、デジタル駆動方式で複数の画像表示素子を駆動する画像表示装置に適用することはできない。
【0006】
そこで本発明は、デジタル駆動方式で発生するカラーブレークを低減することが可能な液晶表示装置およびその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての液晶表示装置は、光源からの光を色ごとに変調する複数の液晶表示素子と、
前記複数の液晶表示素子のそれぞれに関し、入力画像の階調に基づいて設定された駆動階調に応じて、1フレーム期間に含まれる複数のサブフレームのそれぞれをON期間またはOFF期間として設定した駆動信号を用いて前記複数の液晶表示素子を駆動する駆動手段とを有し、前記駆動手段は、前記複数の液晶表示素子に関し、
前記1フレーム期間に対応する
前記ON期間を互いに異ならせ所定のグレー階調を表示する際、前記複数の液晶表示素子のそれぞれから出力される色光の発光重心が互いに近づくように前記1フレーム期間に対応する前記駆動信号の開始タイミングを互いに
シフトさせる。
【0008】
本発明の他の側面としての液晶表示装置の制御方法は、
光源からの光を色ごとに変調する複数の液晶表示素子のそれぞれに関し、入力画像の階調に基づいて設定された駆動階調に応じて、1フレーム期間に含まれる複数のサブフレームのそれぞれをON期間またはOFF期間として設定した駆動信号を用いて複数の液晶表示素子を駆動することにより、光源からの光を色ごとに変調するステップと、前記変調された光を合成して投射するステップとを有し、前記複数の液晶表示素子を駆動する際に、前記1フレーム期間に対応する前記ON期間を互いに異ならせ所定のグレー階調を表示する際、前記複数の液晶表示素子のそれぞれから出力される色光の発光重心が互いに近づくように前記1フレーム期間に対応する前記駆動信号の開始タイミングを互いにシフトさせる。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デジタル駆動方式で発生するカラーブレークを低減することが可能な液晶表示装置およびその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、
図1および
図2を参照して、デジタル駆動方式による液晶表示素子の駆動について説明する。
図1は、デジタル駆動方式の一つであるPWM駆動方式の説明図である。
図2は、カラーブレーク(カラーブレーキング)発生の説明図である。
【0014】
液晶表示素子のデジタル駆動方式の一つとして、
図1に示されるようなPWM(Pulse Width Modulation)駆動方式が用いられる。
図1は、PWM駆動方式における1フレーム期間のうちの一部を示し、横軸は時間(time)、縦軸は明るさ(階調)をそれぞれ示している。
図1中のTsは液晶表示素子を駆動する駆動信号の開始タイミング(1フレーム期間に対応する駆動信号の開始タイミング)、Teは1フレーム期間の終了タイミングをそれぞれ示している。
【0015】
図1に示されるように、一般的なPWM駆動方式において、1フレーム期間(1フレーム画像を形成するための期間)は複数の期間(サブフレーム(SF)101a、101b、101c、101d、101e、…)に分割される。そして、映像信号(入力画像)の階調に基づいて設定された駆動階調に応じて、1フレーム期間に含まれる複数のサブフレーム101のそれぞれをON期間またはOFF期間として設定する(ON/OFF制御を行う)ことにより、階調表現を行うことができる。
図1において、白で示されるサブフレームはON期間、黒で示されるサブフレームはOFF期間を示している。例えば、階調0を表現する際には、サブフレーム101a〜101eの全てがOFF期間である。階調8を表現する際には、サブフレーム101a〜101c、101eがOFF期間であり、サブフレーム101dがON期間である。また、階調31を表現する際には、サブフレーム101a〜101eの全てがON期間である。
【0016】
このようなデジタル駆動方式で複数(3つ)の液晶表示素子を駆動する3LCD方式の液晶表示装置において、カラーブレーキングが発生することがある。例えばグレー階調を表示する場合、
図2に示されるように、PWM駆動方式におけるON/OFF期間が3つの液晶表示素子(R、G、B液晶表示素子:第1〜第3液晶表示素子)で大きく異なる場合がある。これは、光源のRGBのスペクトル強度の影響や、液晶表示素子における各波長帯域の光利用効率の違いのため、グレー階調を表示するために必要なPWM駆動制御のON/OFF期間がR、G、B液晶表示素子ごとに異なるためである。
【0017】
図2において、期間201は、R、G、B液晶表示素子の全てが発光しているON期間である。一方、期間202は、R、B液晶表示素子に関してON期間であるが、G液晶表示素子に関してOFF期間である。また、期間203は、R液晶表示素子のみがON期間である。このように期間202、203においては、液晶表示装置からの投射光がマゼンタや赤に近い色になり、このときにユーザが視線を振って投射画像を見ると、色割れや色ずれなどのカラーブレークが視認される。
【0018】
次に、
図3を参照して、本実施形態における画像表示システムについて説明する。
図3は、画像表示システムの概略図である。画像表示システムは、液晶プロジェクタ301(液晶表示装置)およびビデオプレーヤ302を備えて構成される。なお本実施形態において、液晶表示素子を用いた液晶表示装置の例として液晶プロジェクタ301について説明するが、本実施形態のカラーブレーク低減方法(映像信号生成方法)は、直視型モニタなど、液晶表示素子を用いた他の表示装置にも適用することができる。
【0019】
ビデオプレーヤ302から出力された映像信号(外部映像信号)は、ビデオケーブル303を介して液晶プロジェクタ301に入力される。液晶プロジェクタ301は、入力された映像信号(入力信号)から表示に適した映像信号(出力信号)を生成し、出力信号に対応する映像305をスクリーンなどの被投射面304に投射する。
【0020】
次に、
図4を参照して、液晶プロジェクタ301の構成について説明する。
図4は、液晶プロジェクタ301のブロック図である。液晶プロジェクタ301に入力された映像信号(入力画像)は、映像処理部401に入力される。映像処理部401は、入力画像に対して、ブライトネス補正、コントラスト補正、ガンマ変換、および、色変換などの各処理を行う。映像処理部401から出力された信号は、液晶駆動部403に入力される。
【0021】
液晶駆動部403(駆動手段)は、デジタル駆動方式(PWM駆動方式)による駆動信号を用いて複数の液晶表示素子404(R、G、B液晶表示素子、例えば液晶パネル)を駆動する。液晶表示素子404は、光源405からの光を色ごとに変調する。液晶表示素子404は、RGBの色ごとに1つずつ設けられており、それぞれの液晶表示素子404は、各色の映像(連続したフレーム画像)を生成する。光源405からの光は、照明光学系406によりRGBの3つの色光に分解されて3つの液晶表示素子404に入射し、3つの液晶表示素子404により変調される。変調された3つの色光は、1つの光に合成されて投射光学系407により投射される。
【0022】
液晶駆動部403は、遅延回路402を有する。遅延回路402は、複数の液晶表示素子404のうち少なくとも一つの液晶表示素子を駆動する駆動信号の開始タイミングTsを遅延させる。すなわち遅延回路402は、RGBの少なくとも一つのPWM駆動の開始タイミング(駆動信号の出力タイミング)に対して所定の遅延時間を付与する。そして遅延回路402は、各出力階調に応じたON/OFF制御のPWMパターン(駆動信号)を生成して、対応する液晶表示素子404に出力する。このように本実施形態において、液晶駆動部403は、3つの液晶表示素子404に関し、1フレーム期間に対応する駆動信号の開始タイミングTsを互いにシフトさせる。メインコントローラとしてのCPU408(制御手段)は、映像処理部401や遅延回路402を制御するとともに、光源405の駆動や液晶駆動部403による液晶表示素子404の駆動を制御する。
【0023】
次に、
図5乃至
図8を参照して、比較例としての液晶表示装置を用いた場合におけるカラーブレークの発生について説明する。
図5は、液晶表示装置による投射光のスペクトルである。
図6は、
図5のスペクトルに対応する駆動信号(PWM駆動信号)の説明図である。
【0024】
図5中の501は、
図6(a)のようにB液晶表示素子を1フレーム期間の全てにおいてON駆動した場合(1フレーム期間の全てがON期間の場合)のスペクトルを示す。502は、
図6(b)のようにG液晶表示素子を1フレーム期間の全てにおいてON駆動した場合(1フレーム期間の全てがON期間の場合)のスペクトルを示す。503は、
図6(c)のようにR液晶表示素子を1フレーム期間の全てにおいてON駆動した場合(1フレーム期間の全てがON期間の場合)のスペクトルを示す。本実施形態において、緑(G)の積分強度を1.00とすると、赤(R)は0.40、青(B)は0.70となる。
【0025】
図7は、このようなスペクトル特性を有する液晶表示装置において、一般的な白色の色度(D65)を実現するように色調整した場合のPWM波形(駆動信号)のON/OFF期間を示している。
図8は、
図7のPWM波形(駆動信号)を用いて液晶表示素子を駆動した場合における液晶表示装置の光応答波形(液晶表示素子から出射した光の波形)を示している。
図8において、横軸は時間(1フレーム期間)、縦軸は強度をそれぞれ示している。801は赤(R)の光応答波形、802は青(B)の光応答波形、803は緑(G)の光応答波形を示しており、RGBの発光波形(光応答波形)の重心G1、G2、G3が互いに大きくずれている。光応答波形の重心が互いにずれることにより、光応答波形803のピークでは緑が顕著に見え、光応答波形802、801のピークではそれぞれ青、赤が顕著に見えることになる。これが、カラーブレークが顕著に見える原因である。
【0026】
次に、
図9乃至
図12を参照して、本実施形態における液晶表示装置を用いた場合におけるカラーブレークの低減について説明する。
図9は、本実施形態における液晶表示素子の駆動信号(ON/OFF期間)の説明図である。
図10は、
図9に示される駆動信号を用いた場合における液晶表示素子の光応答波形である。
【0027】
図9において、901は、遅延回路402によりG液晶表示素子の駆動信号に与えられた遅延時間(シフト時間)を示す。902は、遅延回路によりB液晶表示素子の駆動信号に与えられた遅延時間(シフト時間)を示す。
図9に示されるように、遅延時間901、902を与えることにより、RGBのON期間の中心903、904、905が互いに一致する。
図10において、1001は赤(R)の光応答波形、1002は青(B)の光応答波形、1003は緑(G)の光応答波形をそれぞれ示している。
図8に示される重心G1、G2、G3と比較して、発光波形(光応答波形)の重心G11、G12、G13が互いに揃っている(
図8の場合により各重心が近づいている)ため、カラーブレークを低減することができる。
【0028】
図9のように遅延時間901、902を与えることにより、カラーブレークを低減することは可能である。しかし、
図10のR、B、Gの発光波形1001、1002、1003の重心G11、G12、G13に着目すると、厳密には各重心が互いに一致していない。これは、液晶表示素子の応答性によるものであり、RGBの液晶表示素子がそれぞれ応答性の影響を受けるため、表現しようとするグレー階調の強度によっては、駆動信号のON/OFF期間の中心と発光波形(光応答波形)の重心とが互いに一致しないことがある。このような場合、
図11に示されるように、遅延回路402を用いて遅延時間1101、1102を付与する。その結果、
図12に示されるように、発光波形1201、1202、1203の重心G21、G22、G23を互いに一致させる(極めて近づける)ことができる。
図11は、本実施形態における駆動信号の説明図である。
図12は、
図11の駆動信号を用いた場合における液晶表示素子の光応答波形である。
【0029】
このように本実施形態において、液晶駆動部403は、複数の液晶表示素子404のそれぞれから出力される複数色の発光重心(光応答波形の重心)が互いに近づくように、駆動信号の開始タイミングを互いにシフトさせる。より好ましくは、複数色の発光重心が互いに一致するように開始タイミングを互いにシフトさせる。最適な遅延時間は、液晶表示装置が表示する色や階調に応じて異なる。このため遅延回路402は、色または階調に応じて遅延時間を制御(変更)することが好ましい。
【0030】
本実施形態において、複数の液晶表示素子404は、R帯域の光を変調する第1の液晶表示素子と、G帯域の光を変調する第2の液晶表示素子と、B帯域の光を変調する第3の液晶表示素子とを含む。液晶駆動部403は、第1の液晶表示素子の開始タイミングに対して、第2の液晶表示素子の開始タイミングを遅延させる。また液晶駆動部403は、第3の液晶表示素子の開始タイミングに対して、第2の液晶表示素子の開始タイミングを遅延させる。また液晶駆動部403は、第1の液晶表示素子の開始タイミングに対して、第3の液晶表示素子の開始タイミングを遅延させる。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、カラーブレークの発生を低減するために各液晶表示素子の開始タイミングの関係を任意に変更することが可能である。
【0031】
ここで、複数の液晶表示素子のうち少なくとも一つの液晶表示素子に関し、1フレーム期間に対応する駆動信号の開始タイミングのシフト時間(遅延時間)をΔT、1フレーム期間のうち1フレーム期間の終了タイミングまでの連続したOFF期間をTaとする。このとき、ΔT≦Taを満たす必要がある。以下、
図13を参照して、これに関して説明する。
【0032】
図13は、本実施形態において設定可能な遅延時間の説明図であり、2フレーム期間における最大入力時の駆動信号(PWM波形)のON/OFF期間を示している。
図13(a)、(b)、(c)は、ΔT=0、ΔT≦Ta、ΔT>Taの場合をそれぞれ示している。
図13(c)に示されるようにΔT>Taとすると、本来1フレーム期間において発光するべき期間が2フレーム目にかかってしまう。その結果、液晶表示素子を駆動した際に画像が破たんする可能性がある。このためシフト時間ΔTは、ΔT≦Taを満たすように設定されることが好ましい。
【0033】
また、前述のように液晶表示素子の応答性を考慮すると、駆動信号のON期間の中心を互いに一致させるために必要なシフト時間(遅延時間)よりもさらにシフト(遅延)させることが好ましい。すなわち、遅延回路402により与えられるシフト時間ΔTは、ΔT≧Ta/2を満たすことが好ましい。以上より、シフト時間ΔTは、Ta/2≦ΔT≦Taなる条件式を満たすことが好ましい。
【0034】
本実施形態によれば、デジタル駆動方式で発生するカラーブレークを低減することが可能な液晶表示装置およびその制御方法を提供することができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0036】
本実施形態では、デジタル駆動方式としてPWM駆動方式を用いて液晶表示素子を駆動しているが、これに限定されるものではなく、PWM駆動方式以外のデジタル駆動方式を用いてもよい。また本実施形態では、少なくとも一つの液晶表示素子に関し、遅延回路を用いて1フレーム期間に対応する駆動信号の開始タイミングをシフト(遅延)させているが、これに限定されるものではない。例えば、CPU408によるシフト制御などの他の手法により、開始タイミングをシフトさせてもよい。