特許第6618481号(P6618481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6618481ドープト希土類窒化物材料および同材料を含むデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618481
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ドープト希土類窒化物材料および同材料を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/06 20060101AFI20191202BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 21/363 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   C01B21/06 A
   C23C14/06 A
   H01L21/363
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-560766(P2016-560766)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公表番号】特表2017-511294(P2017-511294A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】NZ2015050039
(87)【国際公開番号】WO2015152737
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】623339
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】516294539
【氏名又は名称】ナタリ フランク
(73)【特許権者】
【識別番号】317002814
【氏名又は名称】ルック ベンジャミン ジョン
(73)【特許権者】
【識別番号】516294551
【氏名又は名称】トロダール ハリー ジョセフ
(73)【特許権者】
【識別番号】516294573
【氏名又は名称】ベツィアン ステファン アンジュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナタリ フランク
(72)【発明者】
【氏名】ルック ベンジャミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】トロダール ハリー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベツィアン ステファン アンジュ
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170098(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020819(WO,A1)
【文献】 特開2010−059047(JP,A)
【文献】 特開平11−121215(JP,A)
【文献】 米国特許第05998232(US,A)
【文献】 PALGUEV, S.F., et al.,Ionic conductivity of nitrides,Solid State Ionics,NL,North Holland pub. Company,1986年,Vol.20,pp.255-258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/06
C23C 14/06
H01L 21/363
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択され、厚さが1〜2000nmの薄い薄膜である、マグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項2】
少なくとも25Ω.cmの抵抗率を有する、請求項1に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項3】
マグネシウムを1018〜1021原子/cmで含む、請求項1又は2に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項4】
1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項5】
70K未満の強磁性である、請求項1〜4の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項6】
アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項7】
前記薄い薄膜の厚さが1〜1000nmである、請求項1〜6の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項8】
前記薄い薄膜の厚さが10〜200nmである、請求項1〜の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【請求項9】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法であって、前記希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択され、方法が、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、方法。
【請求項10】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも25Ω.cmの抵抗率を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを1018〜1021原子/cmで含む、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、請求項11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が70K未満の強磁性である、請求項12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、請求項13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材上に堆積される、請求項14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
(b)工程(a)において堆積された前記マグネシウムドープト希土類窒化物上にキャッピング層を堆積させる工程をさらに含む、請求項15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記窒素供給源が、高純度分子窒素、アンモニア、および活性窒素の供給源、またはそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が0.01〜1nm/秒の速度で堆積される、請求項17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記マグネシウムドープト希土類窒化物材料が周囲温度または高温で堆積される、請求項18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜の何れか1項に記載のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を含むデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類窒化物半導体に関し、そしてより詳しくは、半絶縁性または絶縁性のものもある、マグネシウムドープト希土類窒化物材料に関する。本発明はさらに、材料を作製するための方法、および材料を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
希土類は、57(La)から71(Lu)の原子番号を有し、4f軌道が満たされている元素:すなわち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)を含む。それらは原子配置[Xe]6s5d4fまたは[Xe]6s4fn+1を有し、nがLaについて0からLuについて14まで変化する。それらの最も一般的なイオン電荷状態は3+であり、4f準位はフェルミエネルギーに及ぶ。それらは、最低限よりも多く満たされたf殻電子軌道を有する安定な元素であり、結果として、それらは最大スピンおよび軌道モーメントを有する元素である。秩序化固体においてそれらは最強の強磁性材料に寄与し、強い永久磁石を必要とする技術においてそれらの実用性を確実にしている寄与となっている。それらの名称にもかかわらずそれらは、安定核同位体を有さないプロメチウムを例外として、決して珍しくない。
【0003】
LaNについて約5.3Å〜LuNについて約4.76Åの範囲の格子定数を有し、系列全体にわたって合計10%の差および隣接する原子種の窒化物の間に約0.7%の差がある面心立方NaCl構造に希土類窒化物が形成される。最初に希土類窒化物は1960年代に検討され、その時に技術開発は、希土類系列の化学的に似た要素を分離する際に直面する問題を克服した。希土類窒化物は、興味深い磁気および電子特性を有する。希土類窒化物は、典型的に1eVのオーダーの光学バンドギャップを有し、ほとんど全て強磁性であり、成長条件に強く依存して系列全体にわたりそして抗電界で強く変化する磁性状態を有する。例えば、SmNは唯一の公知のほぼ零モーメントの強磁性半導体であり、非常に大きな抗電界を有し、GdNは約三桁小さい抗電界を有する。
【0004】
希土類窒化物は、スピントロニクス、赤外線(IR)検知器、およびIII族窒化物半導体化合物への接点など多用な用途において有望である。例えば、希土類窒化物は、スピンフィルタージョセフソン接合および電界効果トランジスタ構造の製造において使用されている。
【0005】
また、希土類窒化物は、III族窒化物半導体に対してエピタキシー適合性材料であり、例えば、光電子デバイスおよび高出力トランジスタの製造用に技術的に重要な種類の材料である。また、希土類窒化物の性質は、III族窒化物の性質と相補的である。これらの2つの半導体を含むヘテロ接合は、多波長光デバイスおよびスピン発光ダイオードのために非常に魅力的な性質を有し得る。例えば、GdN量子ドットは、GaNトンネル接合の効果を高めることが示されている。
【0006】
半絶縁性および絶縁性希土類窒化物層は、特に、任意選択によりIII族窒化物と組合せて、例えば、スピントロニクス、電子および光電子デバイスの製造において有用であり得る。このような層は、例えば、このようなデバイスの漏れ電流または無線周波数性能の低下を回避する場合がある。
【0007】
超高真空(UHV)に基づいた方法、例えば分子線エピタキシー(MBE)、パルス化レーザー堆積法(PLD)、およびDC/RFマグネトロンスパッタリングを使用して希土類窒化物の高品質エピタキシャル薄膜を成長させることができる。しかしながら、このような超高真空に基づいた方法は典型的に、室温で0.05〜10mΩ.cmのオーダーの抵抗率および1020〜1022cm-3の範囲のバックグラウンド電子キャリア濃度に対応するn型残留ドーピング濃度(窒素空孔に起因し成長条件に依存する)を有する偶発的にドープされた薄膜をもたらす。
【0008】
したがって、上記の不利な点を避ける或る方法に至ること、および/または一般利用者に有用な選択を少なくとも提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明の他の目的は、例として与えられるにすぎない以下の説明から明らかになるであろう。
【0010】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等のいかなる考察も、本発明のために文脈を提供する目的のためにすぎない。これらの問題のいずれかまたは全てが先行技術の基礎の一部を形成するかまたは優先日の前にそれが存在するので本発明に関連する分野の共通の一般的情報であったことを認めるものとしてとられるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0012】
第2の態様において、本発明は、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法を提供する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、第2の態様の方法によって作製される時のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。
【0014】
また、本発明は、第2の態様の方法によって得ることができるマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。
【0015】
また、本発明は、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を含むデバイスを提供する。
【0016】
また、本発明は一般的に、個々にまたは一括して適用の明細に言及されるかまたは示される部分、要素および特徴、ならびに任意の2つ以上の前記部分、要素または特徴の任意のまたは全ての組合せに存すると言われてもよく、そして本発明が関連する本技術分野に公知の同等物を有する特定の完全体が本明細書において言及される場合、このような公知の同等物は、あたかも個々に示されるかのように本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0017】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループを用いて説明される場合、本発明はまた、マーカッシュグループの任意の個々の要素または要素のサブグループを用いてそれによって説明されることを当業者は理解するであろう。
【0018】
本明細書中で用いられるとき名詞の後の「(s)」は、名詞の複数形および/または単数形を意味する。
【0019】
本明細書中で用いられるとき用語「および/または」は、「および」または「または」または両方を意味する。
【0020】
本明細書において使用されるとき用語「含む(comprising)」は、「〜の少なくとも一部に存する(consisting at least in part of)」を意味する。用語「含む(comprising)」を包含する本明細書中の各々の言明を解釈するとき、この用語によって導入される特徴以外の特徴もまた、存在していてもよい。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの関連用語は同様に解釈されなければならない。
【0021】
本明細書において使用されるとき用語「半絶縁性(semi−insulating)」は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が室温で約10Ω.cm〜約1010Ω.cmの間の抵抗率を有することを意味する。
【0022】
本明細書において使用されるとき用語「絶縁性(insulating)」は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が室温で約1010Ω.cm超の抵抗率を有することを意味する。
【0023】
本明細書に開示される数の範囲(例えば、1〜10)への言及もまた、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)そしてまたその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2〜8、1.5〜5.5および3.1〜4.7)への言及を包含することが意図され、したがって、本明細書に明白に開示される全ての範囲の全ての部分範囲がこれによって明白に開示される。これらは明確に意図されるものの例にすぎず、列挙される最小値と最高値との間の数値の全ての可能な組合せが同様な方法で本出願において明白に言明されると考えられなければならない。
【0024】
本発明は一般的に上に定義された通りであるが、本発明はそれに限定されず、また、本発明は、以下の説明が例を示す実施形態を包含すると当業者は理解するであろう。
【0025】
本発明は図を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】シリコン上に堆積されたAlN緩衝層を含むと共に、GaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdNの層の構造を示す断面走査電子顕微鏡画像である。
図2】MgドープトGdN層およびアンドープトGdN層の(111)X線ロッキング曲線を示す。
図3】シリコン上に堆積されたAlN緩衝層を含むと共に、GaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdN層の測定された二次イオン質量分析マグネシウムプロファイルを示す。
図4a】MgドープトGdN層の面内ゼロ磁場冷却磁化を示す。
図4b】MgドープトGdN層の磁場依存磁化を示す。
図5】電子キャリア濃度の関数としてMgドープトGdN層の抵抗率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
公知の超高真空に基づいた方法を使用して半絶縁性および絶縁性希土類窒化物材料を成長させることは難しい。このような超高真空に基づいた方法は典型的に、エピタキシャルである時に室温で0.05〜10mΩ.cmのオーダーの抵抗率および1020〜1022cm-3の範囲のバックグラウンド電子キャリア濃度に対応するn型残留ドーピング濃度(それは窒素空孔に起因し成長条件に依存する)を有する偶発的にドープされた薄い薄膜をもたらす。
【0028】
しかしながら、本発明は、半絶縁性および絶縁性であるものもある、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。また、本発明は、成長希土類窒化物材料にマグネシウム(アクセプタードーパント種であり、ドナー種を補償し、抵抗率を増加させる)をドープすることによってこのような材料を作製するための方法を提供する。本発明の方法は、n型から半絶縁性および絶縁性までの希土類窒化物材料の導電率の制御を可能にする。
【0029】
したがって、第1の態様において、本発明は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0030】
また、本発明は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択され、そしてマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する。
【0031】
また、本発明は、半絶縁性または絶縁マグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0032】
また、本発明は、少なくとも約25Ω.cmの抵抗率を有するマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0033】
また、本発明は、少なくとも約10Ω.cmの抵抗率を有するマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0034】
また、本発明は、約10Ω.cm〜約1010Ω.cmの間の抵抗率を有するマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0035】
また、本発明は、少なくとも約1010Ω.cmの抵抗率を有するマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供し、そこで希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約5×10Ω.cmの抵抗率を有する。いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10Ω.cmの抵抗率を有する。
【0037】
対照的に、アンドープトGdNは典型的に約2×10−3Ω.cmの抵抗率を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、EuN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、YbN、およびLuNからなる群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuNからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbNからなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErNからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物が希土類窒化物合金である。いくつかの実施形態において、希土類窒化物合金が、(Sm,Gd)N、(Gd,Ho)N、および(Gd,Dy)Nからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、希土類窒化物合金が(Sm,Gd)Nである。いくつかの実施形態において、希土類窒化物合金が(Gd,Ho)Nである。いくつかの実施形態において、希土類窒化物合金が(Gd,Dy)Nである。
【0046】
いくつかの実施形態において、希土類窒化物がGdNである。
【0047】
驚くべきことに、マグネシウムは、希土類窒化物中の残留ドナー種(すなわち、窒素空孔)を補償し、いくつかの実施形態において、少なくとも半絶縁性である希土類窒化物材料を製造するのに有効であることがわかった。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを約1018〜1021原子/cmで含む。いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを約1018〜5×1020原子/cmで含む。いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを約1019〜5×1020原子/cmで含む。
【0049】
しかしながら、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含んでもよい。一般的に、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、付加的なドーパントまたは他の不純物を約1021原子/cm未満で含む。いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、付加的なドーパントまたは他の不純物を約1020原子/cm未満で含む。いくつかの実施形態において、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、付加的なドーパントまたは他の不純物を約1019原子/cm未満で含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が薄い薄膜である。
【0051】
いくつかの実施形態において、薄膜の厚さが約1〜2000nmである。いくつかの実施形態において、薄膜の厚さが約5〜2000nmである。いくつかの実施形態において、薄膜の厚さが約1〜1000nmである。いくつかの実施形態において、薄膜の厚さが約5〜1000nmである。いくつかの実施形態において、薄膜の厚さが約10〜200nmである。
【0052】
有利には、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する。しかしながら、マグネシウムドープト希土類窒化物材料の磁性は一般的に、アンドープト希土類窒化物材料の磁性と実質的に異なっていない。
【0053】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料の磁性は、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)などの公知の技術および計器装備を使用して測定され得る。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料は約50K未満、好ましくは約70K未満の強磁性である。
【0054】
さらに、マグネシウムドープト希土類窒化物材料の構造特性は一般的に、アンドープト希土類窒化物材料の構造特性と実質的に異なっていない。
【0055】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料の構造特性は、公知の技術および計器装備、例えばX線回折(XRD)測定を使用して測定され得る。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料は、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材上の薄い薄膜を含む。
【0057】
適した基材は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料と非反応性であり、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製するために使用される加工条件の間安定している。
【0058】
いくつかの実施形態において、基材が導体である。他の実施形態において、基材が半導体である。他の実施形態において、基材が絶縁体である。
【0059】
いくつかの実施形態において、基材が結晶質であるが、本発明はそれに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材とエピタキシャルである。他の実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が多結晶質である。
【0061】
いくつかの実施形態において、基材がAlN、GaNまたは(Al,In,Ga)N合金である。
【0062】
他の適した基材には、限定されないが、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)およびMgOなどが含まれる。
【0063】
さらに適した基材には、限定されないが、Al、W、Cr、Cu、Gd、Mg、TaN、NbN、GaAs、およびMgFなどが含まれる。
【0064】
適した基材は複数層構造材料をも含有する。例えば、複数層構造基材は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料と接触している緩衝層を含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、複数層構造材料が、アンドープト希土類窒化物の緩衝層を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、基材が、任意選択によりAlNまたはGaNの緩衝層と共にSiまたはAlを含む。他の実施形態において、緩衝層が(Al,In,Ga)N合金である。
【0067】
いくつかの実施形態において、基材が、(111)面に沿って配向された脱酸シリコン(deoxidized silicon)を含む。いくつかの実施形態において、基材が、エピタキシャルAlN緩衝層と共に(111)面に沿って配向された脱酸シリコンを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料がキャップされる。
【0069】
空気中でそれらが分解するために、基材上の希土類窒化物の薄い薄膜は一般的に、周囲大気との反応を避けるために有効キャッピング層で不動態化される。
【0070】
適したキャッピング層は、マグネシウムドープト希土類窒化物材料と非反応性である。
【0071】
キャッピング層は、多結晶質、または非晶質のマグネシウムドープト希土類窒化物材料とエピタキシャルであってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、キャッピング層が導体である。他の実施形態において、キャッピング層が半導体である。他の実施形態において、キャッピング層が絶縁体である。
【0073】
キャッピング層のための適した材料には、限定されないが、Al、W、Cr、Cu、Gd、Mg、TaN、NbN、Si、YSZ、GaN、GaAs、AlN、(Al,In,Ga)N合金、およびMgFなどが含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態において、キャッピング層がAlN、GaN、(Al,In,Ga)N合金、およびSiから選択される。
【0075】
いくつかの実施形態において、キャッピング層がAlNおよびGaNから選択される。有利には、AlNおよびGaNは透明であり、光学測定を可能にする。AlNおよびGaNの他の利点には、それらの成長の容易性および経時的な良好な化学安定性などが含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態において、キャッピング層がGaNである。
【0077】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料は、マグネシウム原子の存在下で希土類窒化物を成長させることによって作製されてもよい。しかしながら、本発明はそれに限定されず、マグネシウムドープト希土類窒化物材料は、限定されないが注入および拡散方法などの当業者に公知の他の方法によって作製されてもよい。
【0078】
したがって、第2の態様において、本発明は、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材上に堆積される。適した基材が上に考察される。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を基材上に堆積させる工程を含む、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態において、方法は、
(b)工程(a)において堆積されたマグネシウムドープト希土類窒化物上にキャッピング層を堆積させる工程をさらに含む。
【0082】
適したキャッピング層が上に考察される。
【0083】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料、および任意選択のキャッピング層が、当業者に公知の超高真空技術を使用して堆積され得る。適した技術には、限定されないが、パルス化レーザー堆積(PLD)およびDC/RFマグネトロンスパッタリングなどの物理的蒸着(PVD)、熱的蒸発、および分子線エピタキシー(MBE)などが含まれる。限定されないが金属有機化学蒸着(MOCVD)などの他の技術もまた使用されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料および任意選択のキャッピング層が分子線エピタキシーによって順次に堆積される。これらの実施形態のいくつかにおいて、反射高エネルギー電子回折(RHEED)が層の成長をモニタするために使用される。
【0085】
MBE装置のベース圧力は典型的に約10−8トール以下である。
【0086】
マグネシウム供給源は、成長表面に気体マグネシウム原子を提供することができるマグネシウム含有物質である。いくつかの実施形態において、マグネシウム供給源はマグネシウムである。
【0087】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料がMBEによって堆積されるそれらの実施形態において、マグネシウム供給源は、堆積中に蒸発される、固体マグネシウムを含有するエフュージョンセルであり得る。
【0088】
同様に、希土類は、堆積中に蒸発される、固体希土類を含有するエフュージョンセルなどの希土類元素の供給源から提供され得る。
【0089】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料中のドーピング量は、マグネシウムおよび希土類の蒸発の相対的速度を制御することによって制御され得ることを当業者は理解するであろう。
【0090】
窒素供給源が、成長表面に反応性窒素原子を提供する。いくつかの実施形態において、窒素供給源が、高純度分子窒素、アンモニア、および活性窒素の供給源、例えば窒素プラズマまたはイオン化窒素、またはそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、窒素供給源が、高純度分子窒素、アンモニア、および活性窒素の供給源、例えば窒素プラズマまたはイオン化窒素からなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態において、窒素供給源がアンモニアである。
【0093】
窒素供給源フラックスは典型的に、希土類フラックスよりも少なくとも100倍大きい。窒素供給源フラックスの、希土類フラックスに対する比が約100より小さい場合、得られた薄膜は、窒素空孔によって濃くドープされる可能性が高い。
【0094】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料が分子線エピタキシーによって堆積されるいくつかの実施形態において、窒素供給源の分圧またはビーム等価圧力(BEP)が約10−5〜10−3トール、好ましくは約10−5〜10−4トールである。
【0095】
いくつかの実施形態において、窒素供給源のビーム等価圧力が約1.9×10−5トールである。
【0096】
いくつかの実施形態において、希土類のビーム等価圧力が約10−8〜10−7トールである。
【0097】
いくつかの実施形態において、希土類のビーム等価圧力が約5×10−8トールである。
【0098】
いくつかの実施形態において、マグネシウムのビーム等価圧力が約10−9〜5×10−6トール、好ましくは約10−9〜5×10−7トールである。
【0099】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料が典型的に、約0.01〜1nm/秒の速度で堆積される。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約0.01〜0.5nm/秒の速度で堆積される。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約0.01〜0.15nm/秒の速度で堆積される。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約0.01〜0.1nm/秒の速度で堆積される。
【0100】
いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が周囲温度または高温で堆積される。
【0101】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料は一般的に、材料が、それが上に堆積される基材とエピタキシャルであることが望ましい場合、高温で堆積される。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜900℃の温度で堆積される。いくつかの実施形態において、マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜750℃の温度で堆積される。
【0103】
しかしながら、マグネシウムドープト希土類窒化物材料は、特に多結晶質が望ましい場合、上記の温度よりも低い温度、またはさらに周囲温度で堆積されてもよい。マグネシウムドープト希土類窒化物材料をより低い温度で堆積させることによって典型的に、より少ない窒素空孔をもたらす。
【0104】
堆積中の温度は、光高温計、または本技術分野に公知の他の適した装置、例えば熱電対によって測定されるのが便利である場合がある。
【0105】
いくつかの実施形態において、2つ以上の稀土類元素が、上に記載したような、窒素供給源およびマグネシウム供給源の存在下で同時に蒸発され、希土類窒化物が合金である本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。
【0106】
同様に、基材および/またはキャッピング層がIII族窒化物を含むそれらの実施形態において、III族窒化物の合金もまた考えられる。
【0107】
マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積する間に1つまたは複数のドーパントが導入されてもよいことを当業者は理解するであろう。このようなドーパントは、得られたマグネシウムドープト希土類窒化物材料の磁気および/または電気的性質を変えることができる。
【0108】
第3の態様において、本発明は、第2の態様の方法によって作製される時のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。
【0109】
また、本発明は、第2の態様の方法によって得ることができるマグネシウムドープト希土類窒化物材料を提供する。
【0110】
本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料は、例えば、スピントロニクス、電子デバイスおよび光電子デバイスの製造において有用である場合がある。
【0111】
したがって、また、本発明は、本発明のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を含むデバイスを提供する。
【0112】
以下の非限定的な実施例が本発明を説明するために提供されるが、決してそれらの範囲を限定しない。
【実施例】
【0113】
マグネシウムがドープされた窒化ガドリニウム薄膜(MgドープトGdN)を従来のAl、Ga、MgおよびGd蒸発セルを備えた分子線エピタキシー装置内で成長させた。受け取られただけのAl、Ga、MgおよびGd固体装入物の純度はそれぞれ6N5、7N5、5Nおよび3Nであった。アンモニア(NH)を成長表面上で熱活性化分解することによって原子窒素種が製造された。NHの純度は6N5であった。MgドープトGdNの成長前に、厚さ100nmのAlN緩衝層を(111)面に沿って配向された脱酸シリコン基材上に成長させた。
【0114】
NHおよびGdについてそれぞれ1.9×10−5トールおよび5×10−8トールのビーム等価圧力(BEP)を使用してMgドープトGdN薄膜が650℃の基材温度で成長させられ、約0.12±0.01μm/hの成長速度となった。マグネシウムのビーム等価圧力は典型的に、10−9〜5×10−7トールの範囲であった。
【0115】
MgドープトGdN薄膜の厚さは、100nm〜200nmの範囲であった。MgドープトGdN層を厚さ60nmのGaN層でキャップし、空気中での分解を防いだ。
【0116】
上に記載した条件下で成長したアンドープトGdN薄膜は室温で約2×10−3Ω.cmの抵抗率を有したが、他方、GdN層にMgを導入することによってより高い抵抗率をもたらした。約1×1019原子/cmおよび約5×1019原子/cmのMg濃度を有するMgドープトGdN層は、それぞれ約25Ω.cmおよび10Ω.cm超の抵抗率を有した。
【0117】
特に断りがない限り、抵抗率は、van der Pauw幾何学配置を使用して室温で測定された。
【0118】
上に記載した条件下で成長したアンドープトGdN薄膜の抵抗率は、4Kで約1.7×10−3Ω.cmである。約1×1019原子/cmおよび約5×1019原子/cmのMg濃度を有するMgドープトGdN層は、それぞれ、4Kでの抵抗率が約4Ω.cmおよび10Ω.cm超であった。
【0119】
図1は、シリコン上に堆積された厚さ106nmのAlN緩衝層を含むと共に、厚さ64nmのGaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdNの厚さ140nmの層の構造を示す断面走査電子顕微鏡画像である。
【0120】
MgドープトGdN層の結晶秩序/特質は、同じ条件下で成長したアンドープトGdN層の結晶秩序/特質と同等である。図2は、650℃で成長した5×1019Mg原子/cmの濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層についての(111)X線ロッキング曲線半値全幅(FWHM)が、アンドープトGdN層についての半値全幅と同等であることを示す。
【0121】
図3は、シリコン上に堆積されたAlN緩衝層を含むと共に、GaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdN層の測定された二次イオン質量分析(SIMS)マグネシウムプロファイルを示す。マグネシウムの原子濃度は約1×1019原子/cmである。
【0122】
図4に示される磁化曲線は、MgドープトGdN層の磁性がアンドープトGdN層の磁性と実質的に同じであることを裏づける。図4(a)は、SIMSによって測定された時に約5×1019原子/cmのMg濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層の250Oeの印加電界下での面内ゼロ磁場冷却(ZFC)磁化を示す。キューリー温度は、アンドープトGdN薄膜の通りに約70Kである。図4(b)は、SIMSによって測定される時に約5×1019原子/cmのMg濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層の5Kでの磁場依存磁化を示す。磁気モーメントは、アンドープトGdN薄膜の通りに約7ボーア磁子/ガドリニウムイオンであり抗電界が約100Oeである。
【0123】
抵抗率およびホール効果の測定が、様々なMg濃度を有するMgドープトGdN薄膜上で室温で行なわれた。図5は、電子キャリア濃度の関数として厚さ100nmのMgドープトGdN層の抵抗率を示す。室温での抵抗率は、5桁にわたって電子密度に反比例して変化する。例えば、アンドープトGdN層は、約0.002Ω.cmの抵抗率および6.9×1020cm-3の電子キャリア濃度を有するが、他方、約5×1019原子/cmのMg濃度を有するMgドープトGdN層は約10Ω.cmの抵抗率および6.6×1015cm-3の電子キャリア濃度を有する。
【0124】
本発明の様々な箇条は以下の箇条によって説明される:
1. 希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、マグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0125】
2. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する、箇条1のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0126】
3. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約25Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1または2のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0127】
4. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1〜3のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0128】
5. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、約10Ω.cm〜約1010Ω.cmの間の抵抗率を有する、箇条1〜4のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0129】
6. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約1010Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1〜4のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0130】
7. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜6のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0131】
8. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜6のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0132】
9. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜8のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0133】
10. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuNからなる群から選択される、箇条1〜7のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0134】
11. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbNからなる群から選択される、箇条1〜6および8のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0135】
12. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErNからなる群から選択される、箇条1〜11のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0136】
13. 希土類窒化物がGdNである、箇条1〜12のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0137】
14. 希土類窒化物が希土類窒化物合金である、箇条1〜9のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0138】
15. 希土類窒化物合金が、(Sm,Gd)N、(Gd,Ho)N、および(Gd,Dy)Nからなる群から選択される、箇条14のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0139】
16. マグネシウムを約1018〜1021原子/cmで含む、箇条1〜15のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0140】
17. 1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、箇条1〜16のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0141】
18. 付加的なドーパントまたは他の不純物を約1021原子/cm未満で含む、箇条1〜17のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0142】
19. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約50K未満の強磁性である、箇条1〜18のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0143】
20. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約70K未満の強磁性である、箇条1〜19のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0144】
21. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、箇条1〜20のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0145】
22. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が薄い薄膜である、箇条1〜21のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0146】
23. 薄膜の厚さが約1〜2000nmである、箇条22のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0147】
24. 薄い薄膜が基材上にある、箇条22または23のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0148】
25. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材とエピタキシャルである、箇条24のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0149】
26. 基材が、マグネシウムドープト希土類窒化物材料と接触している緩衝層を含む、箇条24または25のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0150】
27. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がキャップされる、箇条1〜26のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0151】
28. キャッピング層がマグネシウムドープト希土類窒化物材料とエピタキシャルである、箇条27のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0152】
29. マグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法であって、希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択され、方法が、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、方法。
【0153】
30. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する、箇条29の方法。
【0154】
31. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約25Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29または30の方法。
【0155】
32. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29〜31の方法。
【0156】
33. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、約10Ω.cm〜約1010Ω.cmの間の抵抗率を有する、箇条29〜32の方法。
【0157】
34. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約1010Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29〜32の方法。
【0158】
35. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜34の方法。
【0159】
36. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜34の方法。
【0160】
37. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜36の方法。
【0161】
38. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuNからなる群から選択される、箇条29〜35の方法。
【0162】
39. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbNからなる群から選択される、箇条29〜34および36の方法。
【0163】
40. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErNからなる群から選択される、箇条29〜39の方法。
【0164】
41. 希土類窒化物がGdNである、箇条29〜40の方法。
【0165】
42. 希土類窒化物が希土類窒化物合金である、箇条29〜37の方法。
【0166】
43. 希土類窒化物合金が、(Sm,Gd)N、(Gd,Ho)N、および(Gd,Dy)Nからなる群から選択される、箇条42の方法。
【0167】
44. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを約1018〜1021原子/cmで含む、箇条29〜43の方法。
【0168】
45. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、箇条29〜44の方法。
【0169】
46. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が付加的なドーパントまたは他の不純物を約1021原子/cm未満で含む、箇条29〜45の方法。
【0170】
47. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約50K未満の強磁性である、箇条29〜46の方法。
【0171】
48. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約70K未満の強磁性である、箇条29〜47の方法。
【0172】
49. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、箇条29〜48の方法。
【0173】
50. (a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、箇条1〜23のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法。
【0174】
51. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材上に堆積される、箇条29〜50の方法。
【0175】
52. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材とエピタキシャルである、箇条51の方法。
【0176】
53. (b)工程(a)において堆積されたマグネシウムドープト希土類窒化物上にキャッピング層を堆積させる工程をさらに含む、箇条29〜52の方法。
【0177】
54. キャッピング層がマグネシウムドープト希土類窒化物材料とエピタキシャルである、箇条53の方法。
【0178】
55. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、超高真空技術を使用して堆積される、箇条29〜54の方法。
【0179】
56. 超高真空技術が、物理的蒸着(PVD)、パルス化レーザー堆積(PLD)、DC/RFマグネトロンスパッタリング、熱的蒸発、および分子線エピタキシー(MBE)からなる群から選択される、箇条55の方法。
【0180】
57. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がMBEによって堆積される、箇条29〜56の方法。
【0181】
58. マグネシウム供給源がマグネシウムである、箇条29〜57の方法。
【0182】
59. 窒素供給源が、高純度分子窒素、アンモニア、および活性窒素の供給源、またはそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、箇条29〜58の方法。
【0183】
60. 活性窒素の供給源が窒素プラズマまたはイオン化窒素である、箇条59の方法。
【0184】
61. 窒素供給源がアンモニアである、箇条29〜59の方法。
【0185】
62. 窒素供給源フラックスが、希土類フラックスよりも少なくとも100倍大きい、箇条29〜61の方法。
【0186】
63. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がMBEによって堆積され、窒素供給源の分圧またはビーム等価圧力(BEP)が約10−5〜10−3トールである、箇条29〜62の方法。
【0187】
64. 希土類のビーム等価圧力が約10−8〜10−7トールである、箇条63の方法。
【0188】
65. マグネシウムのビーム等価圧力が約10−9〜5×10−6トールである、箇条63または64の方法。
【0189】
66. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約0.01〜1nm/秒の速度で堆積される、箇条29〜65の方法。
【0190】
67. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が周囲温度または高温で堆積される、箇条29〜66の方法。
【0191】
68. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜900℃の温度で堆積される、箇条29〜67の方法。
【0192】
69. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜750℃の温度で堆積される、箇条29〜68の方法。
【0193】
70. 箇条29〜69の方法によって作製される時のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0194】
71. 箇条29〜69の方法によって得ることができるマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0195】
72. 箇条1〜28、70および71のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を含むデバイス。
【0196】
本発明の範囲を上記の実施例だけに限定することを意図しない。当業者によって理解されるように、添付した特許請求の範囲に示される本発明の範囲から逸脱せずに多くの変型が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5