【実施例】
【0113】
マグネシウムがドープされた窒化ガドリニウム薄膜(MgドープトGdN)を従来のAl、Ga、MgおよびGd蒸発セルを備えた分子線エピタキシー装置内で成長させた。受け取られただけのAl、Ga、MgおよびGd固体装入物の純度はそれぞれ6N5、7N5、5Nおよび3Nであった。アンモニア(NH
3)を成長表面上で熱活性化分解することによって原子窒素種が製造された。NH
3の純度は6N5であった。MgドープトGdNの成長前に、厚さ100nmのAlN緩衝層を(111)面に沿って配向された脱酸シリコン基材上に成長させた。
【0114】
NH
3およびGdについてそれぞれ1.9×10
−5トールおよび5×10
−8トールのビーム等価圧力(BEP)を使用してMgドープトGdN薄膜が650℃の基材温度で成長させられ、約0.12±0.01μm/hの成長速度となった。マグネシウムのビーム等価圧力は典型的に、10
−9〜5×10
−7トールの範囲であった。
【0115】
MgドープトGdN薄膜の厚さは、100nm〜200nmの範囲であった。MgドープトGdN層を厚さ60nmのGaN層でキャップし、空気中での分解を防いだ。
【0116】
上に記載した条件下で成長したアンドープトGdN薄膜は室温で約2×10
−3Ω.cmの抵抗率を有したが、他方、GdN層にMgを導入することによってより高い抵抗率をもたらした。約1×10
19原子/cm
3および約5×10
19原子/cm
3のMg濃度を有するMgドープトGdN層は、それぞれ約25Ω.cmおよび10
4Ω.cm超の抵抗率を有した。
【0117】
特に断りがない限り、抵抗率は、van der Pauw幾何学配置を使用して室温で測定された。
【0118】
上に記載した条件下で成長したアンドープトGdN薄膜の抵抗率は、4Kで約1.7×10
−3Ω.cmである。約1×10
19原子/cm
3および約5×10
19原子/cm
3のMg濃度を有するMgドープトGdN層は、それぞれ、4Kでの抵抗率が約4Ω.cmおよび10
4Ω.cm超であった。
【0119】
図1は、シリコン上に堆積された厚さ106nmのAlN緩衝層を含むと共に、厚さ64nmのGaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdNの厚さ140nmの層の構造を示す断面走査電子顕微鏡画像である。
【0120】
MgドープトGdN層の結晶秩序/特質は、同じ条件下で成長したアンドープトGdN層の結晶秩序/特質と同等である。
図2は、650℃で成長した5×10
19Mg原子/cm
3の濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層についての(111)X線ロッキング曲線半値全幅(FWHM)が、アンドープトGdN層についての半値全幅と同等であることを示す。
【0121】
図3は、シリコン上に堆積されたAlN緩衝層を含むと共に、GaNキャッピング層を有する、基材上のMgドープトGdN層の測定された二次イオン質量分析(SIMS)マグネシウムプロファイルを示す。マグネシウムの原子濃度は約1×10
19原子/cm
3である。
【0122】
図4に示される磁化曲線は、MgドープトGdN層の磁性がアンドープトGdN層の磁性と実質的に同じであることを裏づける。
図4(a)は、SIMSによって測定された時に約5×10
19原子/cm
3のMg濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層の250Oeの印加電界下での面内ゼロ磁場冷却(ZFC)磁化を示す。キューリー温度は、アンドープトGdN薄膜の通りに約70Kである。
図4(b)は、SIMSによって測定される時に約5×10
19原子/cm
3のMg濃度を有する厚さ140nmのMgドープトGdN層の5Kでの磁場依存磁化を示す。磁気モーメントは、アンドープトGdN薄膜の通りに約7ボーア磁子/ガドリニウムイオンであり抗電界が約100Oeである。
【0123】
抵抗率およびホール効果の測定が、様々なMg濃度を有するMgドープトGdN薄膜上で室温で行なわれた。
図5は、電子キャリア濃度の関数として厚さ100nmのMgドープトGdN層の抵抗率を示す。室温での抵抗率は、5桁にわたって電子密度に反比例して変化する。例えば、アンドープトGdN層は、約0.002Ω.cmの抵抗率および6.9×10
20cm
-3の電子キャリア濃度を有するが、他方、約5×10
19原子/cm
3のMg濃度を有するMgドープトGdN層は約10
4Ω.cmの抵抗率および6.6×10
15cm
-3の電子キャリア濃度を有する。
【0124】
本発明の様々な箇条は以下の箇条によって説明される:
1. 希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、マグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0125】
2. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する、箇条1のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0126】
3. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約25Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1または2のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0127】
4. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10
3Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1〜3のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0128】
5. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、約10
3Ω.cm〜約10
10Ω.cmの間の抵抗率を有する、箇条1〜4のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0129】
6. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10
10Ω.cmの抵抗率を有する、箇条1〜4のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0130】
7. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜6のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0131】
8. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜6のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0132】
9. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条1〜8のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0133】
10. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuNからなる群から選択される、箇条1〜7のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0134】
11. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbNからなる群から選択される、箇条1〜6および8のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0135】
12. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErNからなる群から選択される、箇条1〜11のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0136】
13. 希土類窒化物がGdNである、箇条1〜12のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0137】
14. 希土類窒化物が希土類窒化物合金である、箇条1〜9のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0138】
15. 希土類窒化物合金が、(Sm,Gd)N、(Gd,Ho)N、および(Gd,Dy)Nからなる群から選択される、箇条14のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0139】
16. マグネシウムを約10
18〜10
21原子/cm
3で含む、箇条1〜15のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0140】
17. 1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、箇条1〜16のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0141】
18. 付加的なドーパントまたは他の不純物を約10
21原子/cm
3未満で含む、箇条1〜17のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0142】
19. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約50K未満の強磁性である、箇条1〜18のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0143】
20. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約70K未満の強磁性である、箇条1〜19のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0144】
21. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、箇条1〜20のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0145】
22. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が薄い薄膜である、箇条1〜21のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0146】
23. 薄膜の厚さが約1〜2000nmである、箇条22のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0147】
24. 薄い薄膜が基材上にある、箇条22または23のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0148】
25. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材とエピタキシャルである、箇条24のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0149】
26. 基材が、マグネシウムドープト希土類窒化物材料と接触している緩衝層を含む、箇条24または25のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0150】
27. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がキャップされる、箇条1〜26のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0151】
28. キャッピング層がマグネシウムドープト希土類窒化物材料とエピタキシャルである、箇条27のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0152】
29. マグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法であって、希土類窒化物が、窒化ランタン(LaN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、および窒化ルテチウム(LuN)、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択され、方法が、
(a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、方法。
【0153】
30. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物材料と比較して増加した抵抗率を有する、箇条29の方法。
【0154】
31. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約25Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29または30の方法。
【0155】
32. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10
3Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29〜31の方法。
【0156】
33. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、約10
3Ω.cm〜約10
10Ω.cmの間の抵抗率を有する、箇条29〜32の方法。
【0157】
34. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が少なくとも約10
10Ω.cmの抵抗率を有する、箇条29〜32の方法。
【0158】
35. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜34の方法。
【0159】
36. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜34の方法。
【0160】
37. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErN、ならびにそれらの任意の2つ以上の合金からなる群から選択される、箇条29〜36の方法。
【0161】
38. 希土類窒化物が、LaN、PrN、NdN、SmN、GdN、TbN、DyN、HoN、ErN、TmN、およびLuNからなる群から選択される、箇条29〜35の方法。
【0162】
39. 希土類窒化物が、NdN、SmN、EuN、GdN、DyN、HoN、ErN、およびYbNからなる群から選択される、箇条29〜34および36の方法。
【0163】
40. 希土類窒化物が、NdN、SmN、GdN、DyN、HoN、およびErNからなる群から選択される、箇条29〜39の方法。
【0164】
41. 希土類窒化物がGdNである、箇条29〜40の方法。
【0165】
42. 希土類窒化物が希土類窒化物合金である、箇条29〜37の方法。
【0166】
43. 希土類窒化物合金が、(Sm,Gd)N、(Gd,Ho)N、および(Gd,Dy)Nからなる群から選択される、箇条42の方法。
【0167】
44. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がマグネシウムを約10
18〜10
21原子/cm
3で含む、箇条29〜43の方法。
【0168】
45. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、1つまたは複数の付加的なドーパントをさらに含む、箇条29〜44の方法。
【0169】
46. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が付加的なドーパントまたは他の不純物を約10
21原子/cm
3未満で含む、箇条29〜45の方法。
【0170】
47. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約50K未満の強磁性である、箇条29〜46の方法。
【0171】
48. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約70K未満の強磁性である、箇条29〜47の方法。
【0172】
49. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、アンドープト希土類窒化物と実質的に同じXRD測定値を有する、箇条29〜48の方法。
【0173】
50. (a)マグネシウム供給源の存在下で希土類と窒素供給源とを組み合わせ、マグネシウムドープト希土類窒化物材料を堆積させる工程を含む、箇条1〜23のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を作製する方法。
【0174】
51. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材上に堆積される、箇条29〜50の方法。
【0175】
52. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が基材とエピタキシャルである、箇条51の方法。
【0176】
53. (b)工程(a)において堆積されたマグネシウムドープト希土類窒化物上にキャッピング層を堆積させる工程をさらに含む、箇条29〜52の方法。
【0177】
54. キャッピング層がマグネシウムドープト希土類窒化物材料とエピタキシャルである、箇条53の方法。
【0178】
55. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が、超高真空技術を使用して堆積される、箇条29〜54の方法。
【0179】
56. 超高真空技術が、物理的蒸着(PVD)、パルス化レーザー堆積(PLD)、DC/RFマグネトロンスパッタリング、熱的蒸発、および分子線エピタキシー(MBE)からなる群から選択される、箇条55の方法。
【0180】
57. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がMBEによって堆積される、箇条29〜56の方法。
【0181】
58. マグネシウム供給源がマグネシウムである、箇条29〜57の方法。
【0182】
59. 窒素供給源が、高純度分子窒素、アンモニア、および活性窒素の供給源、またはそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、箇条29〜58の方法。
【0183】
60. 活性窒素の供給源が窒素プラズマまたはイオン化窒素である、箇条59の方法。
【0184】
61. 窒素供給源がアンモニアである、箇条29〜59の方法。
【0185】
62. 窒素供給源フラックスが、希土類フラックスよりも少なくとも100倍大きい、箇条29〜61の方法。
【0186】
63. マグネシウムドープト希土類窒化物材料がMBEによって堆積され、窒素供給源の分圧またはビーム等価圧力(BEP)が約10
−5〜10
−3トールである、箇条29〜62の方法。
【0187】
64. 希土類のビーム等価圧力が約10
−8〜10
−7トールである、箇条63の方法。
【0188】
65. マグネシウムのビーム等価圧力が約10
−9〜5×10
−6トールである、箇条63または64の方法。
【0189】
66. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約0.01〜1nm/秒の速度で堆積される、箇条29〜65の方法。
【0190】
67. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が周囲温度または高温で堆積される、箇条29〜66の方法。
【0191】
68. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜900℃の温度で堆積される、箇条29〜67の方法。
【0192】
69. マグネシウムドープト希土類窒化物材料が約500〜750℃の温度で堆積される、箇条29〜68の方法。
【0193】
70. 箇条29〜69の方法によって作製される時のマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0194】
71. 箇条29〜69の方法によって得ることができるマグネシウムドープト希土類窒化物材料。
【0195】
72. 箇条1〜28、70および71のマグネシウムドープト希土類窒化物材料を含むデバイス。
【0196】
本発明の範囲を上記の実施例だけに限定することを意図しない。当業者によって理解されるように、添付した特許請求の範囲に示される本発明の範囲から逸脱せずに多くの変型が可能である。