特許第6618483号(P6618483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6618483ドッグクラッチ用アクチュエータおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618483
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ドッグクラッチ用アクチュエータおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 28/00 20060101AFI20191202BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20191202BHJP
   H02P 7/06 20060101ALI20191202BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   F16D28/00 Z
   F16D11/10 A
   H02P7/06 G
   H02K7/10 C
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-568113(P2016-568113)
(86)(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公表番号】特表2017-506730(P2017-506730A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2015050812
(87)【国際公開番号】WO2015121021
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】1450150-6
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】593118656
【氏名又は名称】ボルグワーナー スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリンソン ラーシュ
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−144551(JP,U)
【文献】 特開2008−304062(JP,A)
【文献】 特開2011−101489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
F16D 28/00
H02K 7/10
H02P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能なクラッチスリーブ(3)によって2つの同軸シャフト(1,2)間でドッグクラッチを接続および非接続するアクチュエータ(4)であって、前記アクチュエータ(4)は、電気モータを備え、
前記モータのモータシャフト(8)が、回転アクチュエータロッド(7)に接続され、前記回転アクチュエータロッド(7)には、前記クラッチスリーブ(3)と協働する偏心ピン(5)がその端部で設けられ、前記クラッチスリーブ(3)の一方の軸方向端部位置に対応する回転位置から、前記クラッチスリーブ(3)の他方の軸方向端部位置に対応する回転位置への、モータによる180°以下の前記アクチュエータロッド(7)の回転が、前記ドッグクラッチの接続または非接続をもたらすようになっていることを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、前記偏心ピン(5)は、前記クラッチスリーブ(3)の周溝に配置されたシフトブッシング(6)の長孔に延びる、アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のアクチュエータであって、円筒状の前記アクチュエータロッド(7)は、前記ドッグクラッチにあるアクチュエータハウジング(10)で、または前記ドッグクラッチを囲むアクチュエータハウジング(10)で、軸支されている、アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータであって、前記モータシャフト(8)は、前記アクチュエータロッド(7)に直接接続されている、アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータであって、ばね減衰機構(9‐13)が、前記モータシャフト(8)と前記アクチュエータロッド(7)との間に配置されている、アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータであって、前記モータシャフト(8)に接続されたスプリングディスク(9)は、前記アクチュエータハウジング(10)に回転配置され、好ましくいくらかプレストレスを与えられた圧縮ばね(11)の対を含む接線ポケットが設けられ、前記圧縮ばね(11)の対は、ばねピン(12)と協働し、前記ばねピン(12)は、前記アクチュエータロッド(7)に接続されたロッドディスク(13)から2つの前記ばね間の自由空間に延びる、アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載のアクチュエータであって、3対のばね(11)がある、アクチュエータ。
【請求項8】
請求項3に記載のアクチュエータであって、ギアリダクションが、前記モータシャフト(8)と前記アクチュエータロッド(7)との間に設けられている、アクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載のアクチュエータであって、前記ギアリダクションは、プラネタリギア(16‐20)の形である、アクチュエータ。
【請求項10】
請求項9に記載のアクチュエータであって、前記モータシャフト(8)には、プラネタリギア(17)と係合するサンギア(16)が設けられ、前記プラネタリギア(17)は、例えば3つのプラネタリギアであり、前記アクチュエータハウジング(10)のリングギア(20)と係合し、前記プラネタリギア(17)は、ディスク状プラネタリキャリア(9)上のギアシャフト(18)上で回転可能であり、前記ディスク状プラネタリキャリ
ア(9)は、前記アクチュエータロッド(7)に接続されている、アクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータであって、前記プラネタリギア(16‐20)のギアリダクションは6である、アクチュエータ。
【請求項12】
請求項10に記載のアクチュエータであって、前記アクチュエータには、前記モータシャフト(8)と前記アクチュエータロッド(7)との間に配置されているばね減衰機構が設けられ、前記プラネタリキャリアはスプリングディスク(9)である、アクチュエータ。
【請求項13】
請求項3に記載のアクチュエータであって、少なくとも1つの解除可能一方向クラッチを含む軸方向一方向クラッチ配置(25)が、前記モータシャフト(8)から前記アクチュエータロッド(7)への力伝達経路に設けられている、アクチュエータ。
【請求項14】
請求項13に記載のアクチュエータであって、前記一方向クラッチ配置は、円筒内側ハブ(26)を備え、その中で前記モータシャフト(8)が内部係合し、サンギア(16)が、前記ハブ(26)の中間部分に回転配置され、プラネタリギア(16‐20)の一環であり、上係止ばね(29)が、前記ハブ(26)の上部および前記サンギア(16)と強固に係合し、下係止ばね(30)が、前記サンギア(16)および前記ハブ(26)の下部と強固に係合し、両方の係止ばね(29,30)が、同じ方向で巻かれている、アクチュエータ。
【請求項15】
請求項14に記載のアクチュエータであって、上係止ばねスリーブ(31)は、前記上係止ばね(29)を囲み、下係止ばねスリーブ(32)は、前記下係止ばね(30)を囲み、前記スリーブには、前記アクチュエータハウジング(10A)の各停止部材と係合するための外方向に延びるタブ(31’,32’)が設けられている、アクチュエータ。
【請求項16】
請求項3に記載のアクチュエータであって、到達した各端部位置で前記偏心ピン(5)を弾性的に保持するスナップリング機構が設けられている、アクチュエータ。
【請求項17】
請求項4,9および16のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、スナップピン(40)は、ロッドディスク(13)に取り付けられ、前記ロッドディスク(13)から前記アクチュエータロッド(7)が延び、部分円形端部止めばね(42)は、前記アクチュエータハウジング(10)の内側に対して配置され、および前記アクチュエータハウジング(10)に取り付けられ、前記ばね(42)には、前記スナップピン(40)と係合する2つの内方向に延びるばねボス(42’)が設けられ、前記ハウジング(10)には、前記ばねボス(42’)の近くにある前記スナップピン(40)のための2つの端部止め具(43’)が設けられている、アクチュエータ。
【請求項18】
請求項14および16に記載のアクチュエータであって、概ね円形の本体(35)は、前記プラネタリギアのプラネタリギアシャフト(18)に搭載され、前記本体(35)は、前記アクチュエータハウジング(10A)の内周の各2つのくぼみ(37)のどちらかと係合する端部ノブを含む弾性アーム(36)を有する、アクチュエータ。
【請求項19】
請求項1に記載のアクチュエータを制御する方法であって
前記モータは、前記クラッチを接続するのにも非接続するのにも使用され、前記クラッチを接続および非接続するそれぞれいずれかの方向で前記モータのシャフト(8)の回転運動を前記クラッチスリーブ(3)の軸方向運動に変える手段が設けられ、実現された接続および非接続でのそれぞれのおよび/または前記モータの回転の際の前記モータ電流の
変化が、前記モータを制御するのに使用されることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、DCブラシモータの回転セグメント化整流子上のブラシの移行で生じる電流パルスの数は、検出される、方法。
【請求項21】
請求項4〜12のいずれか1項に記載のアクチュエータを制御する請求項19に記載の方法であって、実現された接続および非接続でそれぞれ生じる電流ピークは、検出される、方法。
【請求項22】
請求項13〜15のいずれか1項に記載のアクチュエータを制御する請求項19に記載の方法であって、実現された接続および非接続でそれぞれ生じる電流低下は、検出される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に移動可能なクラッチスリーブによって2つの同軸シャフト間でドッグクラッチを接続および非接続するアクチュエータに関し、アクチュエータは、電気モータを備える。それは、そのようなアクチュエータの制御方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類のドッグクラッチは、多くの用途で使用することができ、典型的な例はAWD(全輪駆動)車であり、その用途について以下で言及する。
【0003】
AWD車の駆動システムは、エンジン、ディファレンシャル付きの前車軸、中間シャフトまたはカルダンシャフト、およびディファレンシャル付きの後車軸を有し得る。走行状態に従ってトルクを前車軸だけでなく後車軸にも配分するのを制御するために、電子制御式湿式ディスクカップリングが、駆動ラインで後車軸に、しばしばディファレンシャルに近い中間シャフトに、配置される。
【0004】
AWDモードで運転する時のカップリングの機能は、別のところ(例えば特許文献1)に記載される。
【0005】
AWD車をFWD(前輪駆動)モードで運転することが望ましいとき、ディスクカップリングは非接続である、すなわち、そのディスクはトルクを伝達しないように離間している。カップリングは、非接続モードにあると言うことができる。この離間効果を高めるために、そのディスクを冷却および潤滑化するために通常カップリングに提供されるオイルを、カップリングから除去できる。中間推進シャフトの回転マスの加速を低減させるために、またベアリングおよびそのシーリングにおけるドラッグトルクを除去するために、クラッチを、望ましくは前車軸ディファレンシャルの近くに、設けることができ、中間シャフトを自動車のFWDモードで停止状態にする。
【0006】
このクラッチは、望ましくは、接続または非接続の2つの異なる位置を有するドッグクラッチである。接続または非接続される2つの同軸シャフトには、端部スプラインが設けられてよく、軸方向に移動可能なクラッチスリーブは、クラッチの機械的制御に使用されることができる。
【0007】
異なる特許文献は、ドッグクラッチの迅速で効率的な接続および非接続のためのアクチュエータを開示し、例えば特許文献2である。この設計では、クラッチスリーブは、応答要求が最も高い、クラッチを接続する方向に、ばねによって軸方向に移される。電気モータは、非接続運動に、およびばねをロードするのに、使用される。端部位置で、スナップ機構がスリーブを保持し、モータは停止する。クラッチの接続が再び望まれるとき、モータは、スナップ機能を解除するようにさらに回転し、クラッチスリーブが、ばねによってクラッチを接続するように軸方向に自由に動くことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2011/043722号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0089685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この技術に関する問題は、モータの回転が、クラッチスリーブの軸方向運動とは実際の関わりがなく、モータ回転が、クラッチスリーブの位置についての情報を全く提供しないことである。重要な、そしてこの場合不足している、情報は、スリーブの正確な端部位置に到達したか、または、スプライン歯が互いに当接して、ドッグクラッチの接続をブロックしているか、である。
【0010】
このため追加の軸方向位置センサが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
言及された種類の公知のアクチュエータに関する言及されたおよび他の問題は、本発明によって、モータのモータシャフトが、回転アクチュエータロッドに接続され、回転アクチュエータロッドには、クラッチスリーブと協働する偏心ピンがその端部で設けられ、クラッチスリーブの一方の軸方向端部位置に対応する回転位置から、クラッチスリーブの他方の軸方向端部位置に対応する回転位置への、モータによる180°以下のアクチュエータロッドの回転が、ドッグクラッチの接続または非接続をもたらすようになっていることから、防がれることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、偏心ピンは、クラッチスリーブの周溝に配置されたシフトブッシングの長孔に延びる。しかしながら、偏心ピンの回転運動をクラッチスリーブの軸方向運動に変える他の実際的な解決策が、実行可能である。
【0013】
この設計では、偏心ピンが、クラッチスリーブと協働し、180°以下(実際的な場合では約135°)で回転し、クラッチスリーブの所望の軸方向運動を実現し、接続および非接続位置に向かうおよび接続および非接続位置でのより短いレバーアームは、電気モータに電流の最大までの増加をもたらす。この電流ピークは、本発明の重要な態様によって、検知され、モータの電源を切る信号として使用される。検知電流ピークは、シフトブッシングおよび従ってドッグクラッチの正確に実現された端部位置の信頼性のある表示を提供する。
【0014】
円筒アクチュエータロッドは、好ましくは、ドッグクラッチにあるアクチュエータハウジングで、または前記ドッグクラッチを囲むアクチュエータハウジングで、軸支される。
【0015】
第1実施形態では、モータシャフトは、アクチュエータロッドに直接接続され、ギアリダクションがモータと偏心ピンとの間で達成されないようになっている。
【0016】
力伝達でおよび端部位置である程度の弾性を提供するように、ばね減衰機構が、モータシャフトとアクチュエータロッドとの間に配置されてよい。
【0017】
そのようなばね減衰機構の実際的な設計では、モータシャフトに接続されたスプリングディスクは、アクチュエータハウジングに回転配置され、好ましくいくらかプレストレスを与えられた圧縮ばねの対を含む接線ポケットが設けられ、圧縮ばねの対は、ばねピンと協働し、ばねピンは、アクチュエータロッドに接続されたロッドディスクから2つのばね間の自由空間に延びる。
【0018】
3対のばねが、設けられてよい。
【0019】
第2実施形態では、ギアリダクションが、モータシャフトとアクチュエータロッドとの間に設けられてよく、好ましくはプラネタリギアの形である。
【0020】
プラネタリギアを含む実際的な設計では、モータシャフトには、プラネタリギアと係合するサンギアが設けられ、プラネタリギアは、例えば3つのプラネタリギアであり、順にアクチュエータハウジングのリングギアと係合し、プラネタリギアは、ディスク状プラネタリキャリア上のギアシャフト上で回転可能であり、ディスク状プラネタリキャリアは、アクチュエータロッドに接続される。
【0021】
プラネタリギアのギアリダクションは、例えば4であってよい。
【0022】
また第2実施形態では、アクチュエータには、上記のようにばね減衰機構が設けられてよく、プラネタリキャリアはスプリングディスクである。
【0023】
第3実施形態では、少なくとも1つの解除可能一方向クラッチを含む軸方向一方向クラッチ配置が、モータシャフトからアクチュエータロッドへの力伝達チェーンに設けられる。
【0024】
2つの一方向クラッチを含む実際的な実施形態では、配置は、円筒内側ハブを備え、その中でモータシャフトが内部係合し、サンギアが、ハブの中間部分に回転配置され、上記のプラネタリギアの一環であり、上係止ばねが、ハブの上部およびサンギアと強固に係合し、下係止ばねが、サンギアおよびハブの下部と強固に係合し、両方の係止ばねが、同じ方向で巻かれる。
【0025】
さらに、この実際的な実施形態では、上係止ばねスリーブは、上係止ばねを囲み、下係止ばねスリーブは、下係止ばねを囲み、スリーブには、アクチュエータハウジングの各停止部材と係合するための外方向に延びるタブが設けられる。
【0026】
好ましくは、到達した各端部位置で偏心ピンを弾性的に保持するスナップリング機構が設けられる。これによって、端部位置は、衝撃および振動の際でも維持される。
【0027】
2つの第1実施形態では、スナップピンは、ロッドディスクに取り付けられてよく、ロッドディスクからアクチュエータロッドが延び、部分円形端部止めばねは、アクチュエータハウジングの内側に対して配置されてよく、およびアクチュエータハウジングに取り付けられてよく、ばねには、スナップピンと係合する2つの内方向に延びるばねボスが設けられ、ハウジングには、ばねボスの近くにあるスナップピンのための2つの端部止め具が設けられる。
【0028】
第3実施形態では、概ね円形の本体は、プラネタリギアのプラネタリギアシャフトに搭載されてよく、その本体は、アクチュエータハウジングの内周の各2つのくぼみのどちらかと係合する端部ノブを含む弾性アームを有する。
【0029】
本発明は、アクチュエータの電気モータによって軸方向に移動可能なクラッチスリーブによって、2つの同軸シャフト間でドッグクラッチを接続および非接続するアクチュエータを、制御する方法にも関する。
【0030】
本発明によると、モータは、クラッチを接続するのにも非接続するのにも使用され、クラッチを接続および非接続するそれぞれいずれかの方向でモータのシャフトの回転運動をクラッチスリーブの軸方向運動に変える手段が設けられる。さらに、実現された接続および非接続でのそれぞれのおよび/またはモータの回転の際のモータ電流の変化が、モータを制御するのに使用される。
【0031】
さらに、DCブラシモータの回転セグメント化整流子上のブラシの移行で生じる電流パルスの数は、モータ回転の測定として検出できる。
【0032】
上記の2つの第1実施形態では、実現された接続および非接続でそれぞれ生じる電流ピークは、検出でき、モータの電源を切るのに使用できる。
【0033】
上記の第3実施形態では、実現された接続および非接続でそれぞれ生じる電流低下は、検出でき、モータの電源を切るのに使用できる。
【0034】
本発明は、添付図面を参照して以下でより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるアクチュエータを含むドッグクラッチの部分断面全体図である。
図2】本発明によるアクチュエータの第1実施形態の部分断面等角図である。
図3図2に示されているアクチュエータの一部の部分断面等角図である。
図4】本発明によるアクチュエータの第2実施形態の部分断面等角図である。
図5図4に示されているアクチュエータの一部の部分断面等角図である。
図6】本発明によるアクチュエータの第3実施形態の一部の部分断面等角図である。
図7図6に示されているアクチュエータの構成部品である一方向クラッチの部分断面等角図である。
図8図6に示されているアクチュエータの一部の部分断面等角図である。
図9図2‐5に示されているアクチュエータの一部の下からのおよび部分断面の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
AWD(全輪駆動)車の駆動システムは、当該技術分野で周知である。典型的な例は、特許文献1に示されている。そのようなシステムは、エンジン、ディファレンシャル付きの前車軸、中間シャフトまたはカルダンシャフト、およびディファレンシャル付きの後車軸を有する。走行状態に従ってトルクを前車軸だけでなく後車軸にも配分するために、電子制御式湿式ディスクカップリングが、駆動ラインで後車軸に、しばしばリアディファレンシャルに近い中間シャフトに、配置される。
【0037】
車両をAWDモードで駆動するときのカップリングの機能は、別のところで記載され、例えば特許文献1で言及されている。
【0038】
AWD車をFWD(前輪駆動)モードで駆動することが望ましいとき、ディスクカップリングは非接続である、すなわち、そのディスクはトルクを伝達しないように離間している。カップリングは、非接続モードにあると言うことができる。この離間効果を高めるために、そのディスクを冷却および潤滑化するために通常カップリングに提供されるオイルを、カップリングから除去できる。中間推進シャフトの回転マスの加速を低減するために、またベアリングおよびそのシーリングにおけるドラッグトルクを除去するために、クラッチを、望ましくは前車軸ディファレンシャルの近くに、設けることができ、中間シャフトを自動車のFWDモードで停止状態にする。
【0039】
本発明は、そのような接続/非接続ドッグクラッチに関する。
【0040】
図1は、回転可能に軸支された、通常シャフト1および中空シャフト2を、接続または非接続するドッグクラッチ配置の全体図である。通常シャフト1には、外スプラインが設けられ、それとクラッチスリーブ3の内スプラインが協働する。クラッチスリーブ3にも、外歯が設けられ、中空シャフト2の内歯と協働する。クラッチスリーブが図1に示されている左にあれば、2つのシャフト1および2の間のドッグクラッチは、接続される。一方、クラッチスリーブ3が図1の右に運ばれると、2つのシャフト1および2の間のドッグクラッチは、非接続である。
【0041】
本発明は、接続位置と非接続位置との間でのクラッチスリーブ3の軸方向運動を実現する手段に関する。
【0042】
回転式のクラッチアクチュエータ4または要するに回転クラッチアクチュエータは、ドッグクラッチを囲むハウジングで固定され、偏心ピン5で終端し、偏心ピン5は、示されている実施形態では、シフトブッシング6に延び、シフトブッシング6は、ハウジングによって導かれ、クラッチスリーブ3の周溝に配置される。シフトブッシング6は、偏心ピン5が動くための長孔を有する。偏心ピン5は、アクチュエータハウジングで軸支された円筒アクチュエータロッド7の端部に偏心して搭載される。ピン5、ブッシング6、およびロッド7の1つまたは全ては、図2‐6で見える。
【0043】
偏心ピン5の回転運動をクラッチスリーブ3の軸方向運動に変えるための他の実際的な解決策が、実行可能である。
【0044】
ロッド7がその偏心ピン5と共に、ピン5が完全に左にあり、ドッグクラッチがその完全に接続された状態である、図1のその位置から180°回転するとき、ピン5は、ドッグクラッチが完全に非接続であるその完全に右の位置に到達する。
【0045】
偏心ピン5の180°よりも小さい回転(例えば135°)が許容され得る。しかしながら、クラッチスリーブ3へのモータからの力が、非接続運動の最初でその最大であるように、ピン5は、ドッグクラッチの接続位置で完全に左にあることが、重要である。また、接続運動は、より短い回転(例えば135°)で、より速い。
【0046】
回転クラッチアクチュエータ4の第1実施形態が、図2および3に示されている。電気モータは、その中に搭載され、そのモータシャフト8だけが図2に示されている。この実施形態では、モータシャフト8からアクチュエータロッド7へのギアリダクションはないが、これらの部材は、特に図3に関して記載されるばね減衰機構によって好ましく接続される。
【0047】
スプリングディスク9は、アクチュエータハウジング10に回転配置され、モータシャフト8に接続される(図2)。適切な接線ポケットでは、従って、スプリングディスク9に、好ましくいくらかプレストレスを与えられた圧縮ばね11の対が備わっており、圧縮ばね11の対は、ばねピン12と協働し、ばねピン12は、アクチュエータロッド7に接続されたロッドディスク13から2つのばね11間の自由空間に延びる。示されている例では、3対のばね11がある。
【0048】
その結果として、アクチュエータロッド7は、モータシャフト8の回転運動に通常従う。しかしながら、記載されたばね減衰機構は、力伝達でおよび端部停止でいくらかの弾性を提供する。とりわけ、その機構は、スプライン係合での歯対歯での接続動作で有用である。
【0049】
本発明によるアクチュエータの第2実施形態が、図4および5に示されている第1実施形態に対する主な違いは、モータシャフト8とアクチュエータロッド7との間のギアリダクションの提供である。このギアリダクションは、ここではプラネタリギアで例示されるが、他のギア構成が同様に実行可能である。
【0050】
サンギア16は、モータシャフト8に接続される。例えば3つのプラネタリギア17が、プラネタリキャリアに回転可能に軸支され、プラネタリキャリアは、第1実施形態に関して記載されたスプリングディスク9である。ギアシャフト18上で回転可能な2つのプラネタリギア17だけが、図5に示されている。第3ギアシャフト18は、それがロッドディスク13の長孔19の中に延び、スプリングディスク9とロッドディスク13との間の相対回転運動が制限されるようになっていることを示すために、プラネタリギアなしで示されている。リングギア20は、アクチュエータハウジング10に接続される。
【0051】
示されている例では、選ばれたギアリダクションは6であり得るが、他のリダクションが同様に実行可能である。
【0052】
図4および5による第2実施形態には、第1実施形態と同じ種類のばね減衰機構が提供されているように見えるが、明確にするために、この配置に全ての符号が図4および5で使用されているわけではない。
【0053】
本発明によるアクチュエータの第3実施形態が、図6‐8に示されている。アクチュエータ全体が図6に示されておらず、適切な一般的理解に重要であるその部分だけである。この実施形態では、第2実施形態と同じ種類のプラネタリギアを使用することができる。一方、第3実施形態は、第1および第2実施形態のようにばね減衰機構が設けられて示されていない。その理由は、明らかなように、モータが端部位置で解除されるためである。しかしながら、接続で歯対歯の状況が依然として生じることがあり、それは、追加の一方向スリップカップリングが、モータシャフト8上でまたは他の部分で設けられる必要があるかもしれないことを意味する。代替的に、ばね機構が設けられてよい。
【0054】
また、第2および第3実施形態では、ばね減衰機構が、プラネタリギアの他の部分で設けられてよい。
【0055】
図6に示されているのは、特に図7に関して記載される一方向クラッチ配置25の中に延びるモータシャフト8である。サンギア16Aは、一方向クラッチ配置25の一部であり、プラネタリキャリア9A上のプラネタリギア17Aとギア係合し、プラネタリキャリア9Aは、円筒アクチュエータロッド7に順に接続される。プラネタリギア17Aは、またアクチュエータハウジング10Aの中のリングギア20Aとギア係合する。
【0056】
一方向クラッチ配置25は、図7に示され、円筒内側ハブ26を有する。製造理由のために、このハブ26は、第1ハブ26’と第2ハブ26”とである2つの部分で構成され、この2つの部分は、ピン27によって互いに回転係止される。
【0057】
サンギア16Aは、ハブ26の中間部分に回転配置される。サンギア16Aは、両方向で軸方向に延びる円筒サンギアフランジ16A’を有する。これら2つのフランジ16A’の外径は、ハブ26の外径と同じである。
【0058】
ハブ26には、係合手段28が設けられ、モータシャフト8が共同で回転するように係合する。
【0059】
上係止ばね29は、上サンギアフランジ16A’およびハブ26の上部と強固に係合し、その一方で、下係止ばね30は、下サンギアフランジ16A’およびハブ26の下部と強固に係合する。両方の係止ばね29,30が、右巻きであってよい。
【0060】
上係止ばね29の上端は、上係止ばねスリーブ31(上係止ばね29を囲んでいる)と係合し、その一方で、その下端は、上サンギアフランジ16A’と係合する。対応して、下係止ばね30の下端は、下係止ばねスリーブ32(下係止ばね30を囲んでいる)と係合し、その一方で、その上端は、下サンギアフランジ16A’と係合する。
【0061】
上係止ばねスリーブ31には、外方向に延びるタブ31’が設けられ、アクチュエータハウジング10Aの第1停止部材と係止ばね開口係合し、その一方で、下係止ばねスリーブ32には、外方向に延びるタブ32’が設けられ、アクチュエータハウジング10Aの第2停止部材と係止ばね開口係合する。
【0062】
当該技術分野で周知のように、本出願で使用される種類の係止ばねは、1つの回転方向の周りに巻かれて2つの部材間で回転係止と、逆の回転方向で低摩擦トルクを有するフリーホイール効果と、を提供する。
【0063】
ハブ26がモータシャフト8の作用で一方向に回転するとき、関連するスリーブ31または32のタブ31’または32’がアクチュエータハウジング10Aのその停止部材に到達するまで、係止ばね29または30の一方は、サンギア16Aにトルクを伝達し、関連する係止ばね29または30の係止効果が消失するようになっている。サンギア16Aは、その回転を停止し、ハブ26は、ある程度の摩擦だけで回転し得る(係止ばねはフリーホイール方向に滑り込む)。
【0064】
今やモータ電流は急激に低下し、それは、端部位置に到達したという表示である。モータは、停止することができる。
【0065】
モータがその後他の方向に回転すると、他方のタブ31’または32’がアクチュエータハウジング10Aのその停止部材に到達するまで、係止ばね29または30の他方は、サンギア16Aにトルクを伝達する。2つのタブ31’および32’間の回転距離は、320°であってよい。
【0066】
係止ばね29および30が右巻きであるならば、下係止ばね30は係止され、上記の通りモータが時計回りに回転するならば、逆もまた同様である。
【0067】
第3実施形態では、示されて記載されたような2つの一方向クラッチが提供されている。変更が可能である。しかしながら、クラッチ接続での安全信号を得られるように、少なくとも1つの一方向クラッチが解除可能である。
【0068】
図6に示されているのは、弓形の要素33であり、弓形の要素33は、アクチュエータハウジング10Aに搭載され、内方向に延びるノブ33’が備わっており、内方向に延びるノブ33’は、下タブ32’用の停止部材を構成する。
【0069】
第3実施形態用のスナップリング機構が図8に、あまり明確ではないが図6にも、示されている。この機構の意義は、弾性端部止め具を提供すること、および、モータがゼロ電流を有するときに、例えば振動および衝撃に対して、到達した各端部位置で偏心ピン5を弾性的に保持すること、である。
【0070】
この機構は、概ね円形の本体35で構成されることができ、概ね円形の本体35は、3つのギアシャフト18上に搭載され、3つのアーム36を有し、それぞれ、偏心ピン5の各端部位置でアクチュエータハウジング10Aの内周の2つのくぼみ37のどちらかと係合する端部ノブを有する。スナップリング機構は、好ましくはアーム36にある程度の弾性を提供するようにプラスチックで作ることができるが、所望の弾性を別の仕方で実現することができる。3つのギアシャフト18へのその機構の搭載により、それは、偏心ピン5に回転接続される。
【0071】
図2‐5による2つの第1実施形態用の少し異なるスナップリング機構が、図9に示されている。この機構の意義は、図8に示されているものと概して同じである。
【0072】
この機構は、以下に示される。図9で見えるのは、アクチュエータハウジング10、アクチュエータロッド7、偏心ピン5、およびロッドディスク13である。
【0073】
好ましくは回転リング40’が設けられているスナップピン40が、ロッドディスク13に取り付けられている。大体の部分が円形の端部止めばね42は、アクチュエータハウジング10の内側に対して配置され、アクチュエータハウジング10に取り付けられている。ばね42には、180°弱の互いからの角距離で2つの内方向に延びるばねボス42’が設けられている。
【0074】
アクチュエータハウジング10には、内部ハウジング部分43が設けられ、それはアクチュエータロッド7を囲み、それに沿ってスナップピンがアクチュエータロッド7の回転で移動する。ハウジング部分43には、180°強の互いからの角距離で2つの端部止め具43’ が設けられている。
【0075】
ばねボス42’を通過した後、回転アクチュエータロッド7のスナップピン40は、各端部止め具43’によって止められ、各ばねボス42’によってこの位置で弾性的に保持される。
【0076】
示されて記載されたクラッチアクチュエータ4で使用される電気モータは、好ましくは両方向で回転するDCモータであり、偏心ピン5が、クラッチスリーブ3を軸方向に接続位置と非接続位置との間を行ったり来たり移動させることができるようになっている。使用されるモータは、整流子と係合するブラシ(通常2つのブラシ)によって電流が回転部に伝達されるブラシモータである。整流子は、複数のセグメントを有する。セグメント間のブラシの移行では、特定の電流ピークまたはパルスが生じ、それは、アクチュエータと関連するECUで検出できる。
【0077】
第1および第2実施形態では、完全に接続されたクラッチは、以下の1つ以上によって検出できる:
整流子パルスを数える(例えば18パルス);
電圧および電流の測定から回転を算出する;
端部位置で高電流を測定する;およびセンサによってプロペラまたはカルダンシャフトの速度を検知する。
【0078】
完全に非接続されたクラッチは、以下によって検出できる:
プロペラシャフトの速度を検知する;および
整流子パルスを数える、端部位置で高電流および回転を算出する。
【0079】
第1および第2実施形態では、各端部位置に到達したときに、動きを止める弾性停止手段がある。
【0080】
第3実施形態では、各端部位置に到達したときに、一方向クラッチは非接続である。モータは、回転し続けることができるが、実際には、端部位置に到達したときに、電流降下のために電源が切られる。
【0081】
添付の請求項の範囲内で変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9