(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
<1.油圧ショベルのハードウェア構成>
図1は本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの概略構成図である。
図1において、油圧ショベルは、クローラ式の走行体401と、走行体401の上部に旋回可能に取り付けられた旋回体402を備えている。走行体401は、走行油圧モータ33によって駆動される。旋回体402は、旋回油圧モータ28の発生するトルクによって駆動され、左右方向に旋回する。
【0013】
旋回体402上には運転席403が設置され、旋回体402の前方には目標施工面の形成作業を行うことの可能な多関節型のフロント作業装置400が取り付けられている。
【0014】
フロント作業装置400は、ブームシリンダ33aによって駆動されるブーム405と、アームシリンダ33bによって駆動されるアーム406と、バケットシリンダ33cによって駆動されるバケット407とを備える。
【0015】
運転席403には、ブームシリンダ33a、アームシリンダ33b、バケットシリンダ33c、走行油圧モータ33及び旋回油圧モータ28に対する制御信号(ギヤポンプ24(
図2参照)から出力されるパイロット圧(以下ではPi圧とも称する))を操作方向及び操作量に応じて発生し、その制御信号によりブーム405、アーム406、バケット407、旋回体402及び走行体401を動作させるための操作レバー26と、エンジン21(
図2参照)の目標回転数を指令するエンジンコントロールダイヤル51(
図2参照)が設置されている。
【0016】
図2は
図1の油圧ショベルのシステム構成図である。本実施形態の油圧ショベルは、エンジン21と、エンジン21を制御するためのコンピュータであるエンジンコントロールユニット(ECU)22と、エンジン21の出力軸に機械的に連結されエンジン21によって駆動される油圧ポンプ23及びギヤポンプ(パイロットポンプ)24と、ギヤポンプ24から吐出される圧油を操作量に応じて減圧したものを、各油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cの制御信号として比例電磁弁27を介してコントロールバルブ25に出力する操作レバー26と、油圧ポンプ23から各油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cに導入される作動油の流量及び方向を、操作レバー26又は比例電磁弁27から出力される制御信号(パイロット圧(以下ではPi圧と称することがある))に基づいて制御する複数のコントロールバルブ25と、各コントロールバルブ25に作用するPi圧の圧力値を検出する複数の圧力センサ41と、フロント作業装置400の位置・姿勢及びその他の車体情報に基づいて補正目標Pi圧を算出し、その補正目標Pi圧が発生可能な指令電圧を比例電磁弁27に出力するコンピュータであるコントローラ(制御装置)20と、フロント作業装置400で形成する目標施工面の情報をコントローラ20に入力するための目標施工面設定装置50を備えている。
【0017】
油圧ポンプ23は、各油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cの目標出力(後述)の通りに車体が動作するよう、機械的にトルク・流量が制御されている。
【0018】
コントロールバルブ25は、制御対象の油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cと同数存在するが、
図2ではそれらをまとめて1つで示している。各コントロールバルブには、その内部のスプールを軸方向の一方又は他方に移動させる2つのPi圧が作用している。例えば、ブームシリンダ33a用のコントロールバルブ25には、ブーム上げのPi圧と、ブーム下げのPi圧が作用する。
【0019】
圧力センサ41は、各コントロールバルブ25に作用するPi圧を検出するもので、コントロールバルブの2倍の数が存在している。圧力センサ41は、コントロールバルブ25の直下に設けられており、実際にコントロールバルブ25に作用するPi圧を検出している。
【0020】
比例電磁弁27は複数存在するが、
図2中ではまとめて1つのブロックで示している。比例電磁弁27は2種類ある。1つは、操作レバー26から入力されるPi圧をそのまま出力又は指令電圧で指定される所望の補正目標Pi圧まで減圧して出力する減圧弁で、もう1つは、操作レバー26の出力するPi圧より大きなPi圧が必要な場合にギヤポンプ24から入力されるPi圧を指令電圧で指定される所望の補正目標Pi圧まで減圧して出力する増圧弁である。或るコントロールバルブ25に対するPi圧に関して、操作レバー26から出力されているPi圧より大きなPi圧が必要な場合には増圧弁を介してPi圧を生成し、操作レバー26から出力されているPi圧より小さなPi圧が必要な場合には減圧弁を介してPi圧を生成し、操作レバー26からPi圧が出力されていない場合には増圧弁を介してPi圧を生成する。つまり、減圧弁と増圧弁により、操作レバー26から入力されるPi圧(オペレータ操作に基づくPi圧)と異なる圧力値のPi圧をコントロールバルブ25に作用させることができ、そのコントロールバルブ25の制御対象の油圧アクチュエータに所望の動作をさせることができる。
【0021】
1つのコントロールバルブ25につき、減圧弁と増圧弁はそれぞれ最大で2つ存在し得る。本実施形態では、ブームシリンダ33aのコントロールバルブ25用に2つの減圧弁と2つの増圧弁が設けられている。具体的には、ブーム上げのPi圧を操作レバー26からコントロールバルブ25に導く第1管路に設けられた第1減圧弁と、ブーム上げのPi圧をギヤポンプ24から操作レバー26を迂回してコントロールバルブ25に導く第2管路に設けられた第1増圧弁と、ブーム下げのPi圧を操作レバー26からコントロールバルブ25に導く第3管路に設けられた第2減圧弁と、ブーム下げのPi圧をギヤポンプ24から操作レバー26を迂回してコントロールバルブ25に導く第4管路に設けられた第2増圧弁を油圧ショベルは備えている。
【0022】
本実施形態の比例電磁弁27は、ブームシリンダ33aのコントロールバルブ25用に設けられているのみであり、他のアクチュエータ28,33,33b、33cのコントロールバルブ25用の比例電磁27は存在しない。したがって、アームシリンダ33b、バケットシリンダ33c、旋回油圧モータ28及び走行油圧モータ33は、操作レバー26から出力されるPi圧に基づいて駆動される。
【0023】
なお、本稿では、ブームシリンダ33aのコントロールバルブ25に入力されるPi圧(ブームに対する制御信号)は全て「補正Pi圧」(又は補正制御信号)と称し、比例電磁弁27によるPi圧の補正の有無は問わないものとする。
【0024】
コントローラ20は、入力部と、プロセッサである中央処理装置(CPU)と、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)と、出力部とを有している。入力部は、コントローラ20に入力される各種情報を、CPUが演算可能なように変換する。ROMは、後述する演算処理を実行する制御プログラムと、当該演算処理の実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり、CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って入力部及びROM、RAMから取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力部からは、エンジン21を目標回転数で駆動するための指令や、比例電磁弁27に指令電圧を作用させるために必要な指令等が出力される。なお、記憶装置は上記のROM及びRAMという半導体メモリに限られず、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置に代替可能である。
【0025】
コントローラ20には、ECU22と、複数の圧力センサ41と、2本のGNSSアンテナ40と、バケット角センサ38と、アーム角センサ37と、ブーム角センサ36と、車体傾斜角センサ39と、各油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cの圧力を検出するための複数の圧力センサ42と、各油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cの動作速度を検出するための複数の速度センサ43と、目標施工面設定装置50が接続されている。
【0026】
コントローラ20は、GNSSアンテナ40から入力信号に基づいて目標施工面60に対する車体位置を算出し、バケット角センサ38、アーム角センサ37、ブーム角センサ36および車体傾斜角センサ39からの入力信号に基づいてフロント作業装置400の姿勢を算出する。つまり、本実施形態では、GNSSアンテナ40は位置センサとして機能し、バケット角センサ38、アーム角センサ37、ブーム角センサ36および車体傾斜角センサ39は姿勢センサとして機能している。なお、車体傾斜角は、2本のGNSSアンテナ40からの入力信号から算出しても良い。
【0027】
本実施形態では、油圧シリンダ33a,33b,33cの速度センサ43として、ストロークセンサを利用している。また、油圧シリンダ33a,33b,33cの圧力センサ42として、各油圧シリンダ33a,33b,33cにボトム圧検出センサとロッド圧検出センサを備えている。
【0028】
なお、本稿で説明する車体位置、フロント作業装置400の姿勢、各アクチュエータの圧力、各アクチュエータの速度の算出に際して利用する手段・方法は一例に過ぎず、公知の算出手段・方法が利用可能である。
【0029】
目標施工面設定装置50は、目標施工面60(
図15参照)に関する情報(各目標施工面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインターフェースである。目標施工面設定装置51は、グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標施工面の3次元データを格納した外部端末(図示せず)と接続され、その外部端末から入力される目標施工面の情報が目標施工面設定装置51を介してコントローラ20内の記憶装置に格納される。なお、目標施工面設定装置50を介した目標施工面の入力は、オペレータが手動で行っても良い。
【0030】
<2.コントローラ20の演算構成>
図3はコントローラ20の演算構成図である。コントローラ20は、油圧シリンダ33a,33b,33c及び旋回油圧モータ28の目標出力をそれぞれ演算するアクチュエータ目標出力演算部3aと、ブームシリンダ33a(ブーム405)の補正目標Pi圧を算出する補正目標Pi圧演算部3bと、補正目標Pi圧を基にブームシリンダ33a用の4つの比例電磁弁27(第1及び第2減圧弁と第1及び第2増圧弁)の指令電圧(比例電磁弁指令電圧)を算出する比例電磁弁指令電圧演算部3cと、ECU22に出力されるエンジン出力指令を算出するエンジン出力指令演算部3dとを備えている。
【0031】
<2.1.アクチュエータ目標出力演算部3a>
図4はアクチュエータ目標出力演算部3aの詳細図である。アクチュエータ目標出力演算部3aは、最大出力演算部4aと、旋回基本出力演算部4bと、ブーム基本出力演算部4cと、アーム基本出力演算部4dと、バケット基本出力演算部4eと、旋回ブーム出力配分演算部4fと、アームバケット出力配分演算部4gとを有し、油圧シリンダ33a,33b,33c及び旋回油圧モータ28の目標出力を算出する。
【0032】
図5は最大出力演算部4aの詳細図である。最大出力演算部4aは、ECU22からエンジン目標回転数を入力する。最大出力演算部4aは、エンジン目標回転数をエンジン回転数最大トルクテーブル5aに入力して得られる最大トルクとエンジン目標回転数の積に出力の次元に変換する係数をGain部5bで作用させ、補機(油圧ショベルに搭載されるエアコン、ラジオなど)の消費出力を引いたものにさらにEff部5cで効率を乗じることでアクチュエータの最大出力を算出する。Eff部5cで利用する「効率」は、油圧ポンプ23に入力された出力がアクチュエータの仕事に変換される効率の典型的な値から決定することができるが、より詳細にはエンジン出力を入力とする効率テーブルで決定することもできる。以上の演算により、アクチュエータの合計最大出力が算出される。
【0033】
図6は旋回基本出力演算部4bの詳細図である。旋回基本出力演算部4bは、圧力センサ41から取得した旋回体402の右旋回Pi圧(右旋回操作量)及び左旋回Pi圧(左旋回操作量)、速度センサ43から取得した旋回体402の旋回速度を入力し、旋回単独操作である時の目標出力である旋回基本出力を算出する。まず、左右の旋回Pi圧の最大値を旋回最大基本出力テーブル6aに入力して旋回最大基本出力を決定する。このテーブルは旋回Pi圧の増加に対して旋回最大基本出力が単調増加するように設定されている。次に、旋回速度を旋回出力減少ゲインテーブル6bに入力して出力減少ゲインを決定し、これと旋回最大基本出力との積をとることで旋回基本出力を決定する。旋回出力減少ゲインテーブル6bは、旋回速度の増加に対して出力減少ゲインが単調減少するように設定しているが、これは、旋回は動き始めに一番出力が必要で、動き始めてからは徐々に必要な出力が減少するからである。したがって、旋回操作感がスムーズになるよう、チューニングを行っておくことが好ましい。
【0034】
図7はブーム基本出力演算部4cの詳細図である。ブーム基本出力演算部4cは、ブーム上げPi圧(ブーム上げ操作量)と、ブーム下げPi圧(ブーム下げ操作量)を入力し、ブーム基本出力を算出する。ブーム上げPi圧とブーム下げPi圧はそれぞれ専用のブーム上げ基本出力テーブル7aとブーム下げ基本出力テーブル7bに入力してブーム上げ基本出力とブーム下げ基本出力に変換し、両者のうち大きい方の値をブーム基本出力とする。旋回の場合と同様、Pi圧(操作量)の増加に対して基本出力が単調増加するように設定してあり、各基本出力は単独動作の時に必要な出力を示す。
【0035】
アーム基本出力演算部4dとバケット基本出力演算部4eは、ブーム基本出力演算部4cと同様の計算をしてそれぞれの基本出力を決定する。両演算部4d,4eの演算は、
図7中の「ブーム」という文字を「アーム」又は「バケット」と読み替えたものに相当するため説明は省略する。
【0036】
図8は旋回ブーム出力配分演算部4fの詳細図である。旋回ブーム出力配分演算部4fは、最大出力演算部4aで算出した最大出力と、4つの基本出力演算部4b,4c,4d,4eで算出した旋回基本出力、ブーム基本出力、アーム基本出力及びバケット基本出力を入力として、旋回目標出力とブーム目標出力を算出する。
【0037】
まず、旋回ブーム出力配分演算部4fは、アーム基本出力とバケット基本出力の合計値をアームバケット配分出力テーブル8aに入力して、アームバケット配分出力を算出する。アームバケット配分出力テーブル8aも入力である基本出力の増加に対して出力が単調増加するように設定するが、出力は入力よりも常に小さい値とする。これは、本実施形態のシステムではブームと旋回の出力をアームとバケットの出力よりも優先するため、これらが同時に操作された場合に、予めアームとバケットのためにある程度出力を確保しておく、という意図に基づく。
【0038】
次に、旋回ブーム出力配分演算部4fは、旋回基本出力とブーム基本出力の合計に対する旋回基本出力の比を旋回比率演算部8bで算出し、旋回基本出力とブーム基本出力の合計に対するブーム基本出力の比をブーム比率演算部8cで算出する。そして、最大出力演算部4aから入力される最大出力から、テーブル8aの出力であるアームバケット配分出力を引く。その結果得られる値と旋回基本出力のうち小さい方を、比率演算部8b,8cで算出した比に基づいて旋回とブームに配分して、旋回目標出力とブーム目標出力を決定する。
【0039】
図9はアームバケット配分出力演算部4gの詳細図である。アームバケット配分出力演算部4gは、最大出力演算部4aで算出した最大出力と、旋回ブーム出力配分演算部4fで算出した旋回目標出力及びブーム目標出力と、アーム基本出力演算部4dで算出したアーム基本出力、バケット基本出力演算部4eで算出したバケット基本出力を入力して、アーム目標出力とバケット目標出力を算出する。
【0040】
アームバケット配分出力演算部4gは、アーム基本出力とバケット基本出力の合計に対するアーム基本出力の比をアーム比率演算部9bで算出し、アーム基本出力とバケット基本出力の合計に対するバケット基本出力の比をバケット比率演算部9cで算出する。そして、最大出力から旋回目標出力とブーム目標出力の合計値を引き、その結果得られる値とアーム基本出力のうち小さい方を、比率演算部9b,9cで算出した比に基づいてアームとバケットに配分し、アーム目標出力とバケット目標出力を決定する。
【0041】
<2.2.補正目標Pi圧演算部3b>
図10は補正目標Pi圧演算部3bの詳細図である。補正目標Pi圧演算部3bは、出力補正Pi圧演算部10aと、軌跡補正Pi圧演算部10bと、補正目標Pi圧選択部10cとを備えている。補正目標Pi圧演算部3bは、アーム406又はバケット407の出力を適切にするためのブームシリンダ33a(ブーム405)の補正目標Pi圧(「出力補正Pi圧」と称する)と、フロント作業装置400の動作軌跡を目標施工面60の上方に保持するためのブームシリンダ33a(ブーム405)の補正目標Pi圧(「軌跡補正Pi圧」と称する)をそれぞれ計算し、両者のうち所定の条件に基づいて選択した1つをブームシリンダ33a(ブーム405)の補正目標Pi圧として出力する。ただし、以下では、ブーム上げを指令するPi圧を「正」とし、ブーム下げを指令するPi圧を「負」とする。
【0042】
<2.2.1.出力補正Pi圧演算部10a>
図11は出力補正Pi圧演算部10aの詳細図である。出力補正Pi圧演算部10aは、アクチュエータ出力演算部11aと、アームによる出力補正目標ブームPi圧演算部11bと、バケットによる出力補正目標ブームPi圧演算部11cと、出力補正目標ブームPi圧選択部11dとを備えており、アーム406又はバケット407の出力を適切にするためのブームシリンダ33a(ブーム405)の補正Pi圧(出力補正目標Pi圧)を算出する。
【0043】
出力補正Pi圧演算部10aは、下記の(1)―(4)の方針に基づいた演算がなされるように構成されている。
【0044】
(1)掘削時(アームクラウドとバケットクラウドの少なくとも一方が行われている時(以下同じ))、アーム406及びバケット407の目標アクチュエータ出力(目標出力)と実際のアクチュエータ出力(実出力)の差が所定の出力値W1より小さい時は、アーム406及びバケット407による作業を適切な負荷で行っている状態とみなし、コントローラ20によるブーム405の自動上げ下げ(マシンコントロール)による負荷調整は行わない。つまり、この場合、ブーム405のPi圧は補正しない。
【0045】
(2)掘削時、アーム406及びバケット407の目標アクチュエータ出力とアクチュエータ出力の差が所定の出力値P1より大きく、アーム406及びバケット407のアクチュエータ33b,33cのボトム圧(駆動圧)が所定の圧力値P1より小さい場合は、負荷が小さすぎてアクチュエータ33b,33cが十分に仕事を行っていない状態とみなし、ブーム下げを自動で行ってアクチュエータ33b,33cの仕事率(所定の時間に掘削できる土砂量)を増加させる。つまり、この場合、ブーム405のPi圧を負の値に補正する。
【0046】
(3)掘削時、アーム406及びバケット407の目標アクチュエータ出力とアクチュエータ出力の差が所定の出力値W1より大きく、アーム406及びバケット407のアクチュエータ圧が所定の圧力値P1より大きい場合は、負荷が大きすぎてアクチュエータ33b,33cが仕事をできていない状態とみなし、ブーム上げを自動で行ってアクチュエータ33b,33cの負荷を小さくすることでアクチュエータ33b,33cの仕事率(所定の時間に掘削できる土砂量)を増加させる。つまり、この場合、ブーム405のPi圧を正の値に補正する。
【0047】
(4)操作レバー26による操作指示に旋回体402に対する旋回指示が含まれるときは、上記(2)と(3)の制御は行わない。つまり、ブーム405のPi圧は補正しない。これは、掘削動作に旋回動作を加えることでバケット407を側面に押し付けながら掘削を行う溝掘りなどの場合を考えると、自動でブーム405が動作することはオペレータにとって不都合となり得るからである。
【0048】
次に各演算部11a,11b,11c,11dにおける演算の詳細を説明する。
アクチュエータ出力演算部11aは、速度センサ43の出力から算出されたアームシリンダ速度及びバケットシリンダ速度と、圧力センサ42の出力から算出されたアームシリンダ33bのボトム圧及びロッド圧並びにバケットシリンダ33cのボトム圧及びロッド圧とを入力し、アーム406とバケット407の実出力(実際のアクチュエータ33b,33cの出力)を算出する。実際のアクチュエータ出力(ActPwr)は、一般に、シリンダのロッド半径をR
rod、ボトム半径をR
btm、シリンダ速度をV
syl、シリンダボトム圧をP
btm、シリンダロッド圧をP
rodとして下記の式で表される。この式を用いて、アクチュエータ出力演算部11aはアーム406とバケット407の実出力をそれぞれ算出する。なお、アームダンプとバケットダンプのときは、後続の演算部11bによる演算との関係上、出力の演算を省略しても良い。
ActPwr={R
btm2×P
btm−(R
btm2−R
rod2)×P
rod}×2πV
syl
【0049】
図12はアームによる出力補正目標ブームPi圧演算部11bの詳細図である。アームによる出力補正目標ブームPi圧演算部11bは、アームクラウド時のアーム406の目標出力と実出力の差と、アームボトム圧(アームシリンダ33bの駆動圧)と、アームによる出力補正目標ブームPi圧テーブル12aとから、ブーム上げ及び下げを行うためのブーム405の出力補正目標Pi圧(アームによる出力補正目標ブームPi圧)を演算する。
【0050】
アームによる出力補正目標ブームPi圧テーブル12aは、上記の方針(1)−(3)に基づいて作成されており、第1の入力をアーム目標出力とアーム実出力の差分、第2の入力をアームボトム圧とする3次元テーブルであり、アームによる出力補正目標ブームPi圧を出力する。テーブル12a中の縦軸の+側がブーム上げの補正目標Pi圧を、−側がブーム下げの補正目標Pi圧を表す。アーム目標出力とアーム実出力の差分が出力値W1を越えるとブーム405の補正目標Pi圧が発生する。テーブル12a中の実線はアームボトム圧がリリーフ圧にあるとき(すなわち、アームボトム圧が最大値のとき)で、アームボトム圧が小さくなるに応じて点線の方にシフトする。テーブル12a中の点線は空荷かつ空中動作時のアームボトム圧に当たる(すなわち、アームボトム圧が最小値のときに当たる)。テーブル12aは、アームボトム圧が圧力値P1のとき、補正目標ブームPi圧を規定するグラフがテーブル12aの横軸と一致するように構成されている。これにより、ブームが自動的に動作する場合、アームボトム圧が圧力値P1より大きいときはブーム上げとなり、圧力値P1より小さいときはブーム下げとなる。アーム目標出力とアーム実出力の差分が出力値W1を越えると、アームによる出力補正目標ブームPi圧の大きさは所定の値に達するまで単調に増加するように設定されている。この「所定の値」としては、例えば、操作レバー26をフル操作の半分だけ操作したときに出力されるPi圧相当の値が利用可能である。
【0051】
アームによる出力補正目標ブームPi圧演算部11bは、アームクラウドPi圧を入力している。アームクラウドPi圧が0のときはアームダンプ動作を行っているとき(掘削していないとき)であり本制御の狙いから外れるので、アーム目標出力とアーム実出力の差を0に固定している。この場合、テーブル12aにより、アームによる出力補正目標ブームPi圧も0になる。
【0052】
バケットによる出力補正目標ブームPi圧演算部11cは、アームによる出力補正目標ブームPi圧演算部11bと同様の計算をしてバケットによる出力補正目標ブームPi圧を決定する。バケットによる出力補正目標ブームPi圧演算部11cの演算は、
図12中の「アーム」という文字を「バケット」に読み替えたものに相当するため説明は省略する。なお、バケットによるブーム出力補正目標Pi圧演算部11cも
図12のテーブル12aと同様のテーブルを利用するが、そのテーブルはテーブル12aと異なる特性を持たせても良い。
【0053】
図13は出力補正目標ブームPi圧選択部11dの詳細図である。出力補正目標ブームPi圧選択部11dでは、演算部11bで算出したアームによる出力補正目標ブームPi圧と演算部11cで算出したバケットによる出力補正目標ブームPi圧のいずれか一方を選択して補正目標Pi圧選択部10cに出力する。
【0054】
油圧ショベルでは掘削時(アームクラウド時)にアーム406が過負荷により動かなくなることが少なくない。そこで、本実施形態では、演算部11bでの算出値を優先的に選択して、アーム406の要求するブーム動作を優先している。具体的には、アームによるブーム出力補正目標Pi圧が0以上、すなわちブーム上げを要求している場合は、アームによるブーム出力補正目標Pi圧とバケットによるブーム出力補正目標Pi圧の最大値を選択してブーム出力補正目標Pi圧とする。一方、アームによるブーム出力補正目標Pi圧が負、すなわちブーム下げを要求している場合は、両者の最小値を選択してブーム出力補正目標Pi圧とする。このように構成すると、アームによるブーム出力補正目標Pi圧とバケットによるブーム出力補正目標Pi圧の正負が異なる場合には、常にアームによるブーム出力補正目標Pi圧が選択されることになる。ただし、操作レバー26を介して旋回操作が入力されているときは、上記方針(4)に基づきブーム出力補正目標Pi圧を0とする。
【0055】
<2.2.2.軌跡補正目標Pi圧演算部10b>
図14は軌跡補正目標Pi圧演算部10bの詳細図である。軌跡補正目標Pi圧演算部10bは、目標施工断面演算部14aと、ベクトル制限値演算部14cと、軌跡補正目標ブームPi圧演算部14bを有し、フロント作業装置400の動作軌跡が目標施工面の上方に保持されるようにフロント作業装置400から目標施工面までの距離Dに基づいてブームシリンダ33a(ブーム405)の補正目標Pi圧(軌跡補正目標ブームPi圧)を算出する。
【0056】
目標施工断面演算部14aは、目標施工面設定装置50を介して入力された目標施工面の情報と、GNSSアンテナ40からの入力に基づいて算出される車体の位置情報と、角度センサ36,37,38,39からの入力に基づいて算出されるフロント作業装置400の姿勢情報及び位置情報を入力する。目標施工断面演算部14aは、これらの入力情報から旋回軸に平行でバケット407の重心を通る平面で目標施工面60を切断したときに得られる目標施工面の断面図を作成し、この断面においてバケット407の爪先位置と目標施工面60の距離Dを算出する。
【0057】
ベクトル制限値演算部14cは、距離Dと
図15のテーブルを基にバケット407の爪先の速度ベクトルの目標施工面60に垂直な成分(以下、「垂直成分」と略する)の制限値V1’yを算出する。制限値V1’yは、距離Dが0のとき0であり、距離Dの増加に応じて単調に減少するように設定されており、距離Dが所定の値d1を越えると−∞に設定される。制限値の決め方は
図15のテーブルに限らず、少なくとも距離Dが0から所定の正の値に至るまでの範囲で、制限値が単調減少するものであれば、代替可能である。
【0058】
図16に示すように、本実施形態では、バケット407の爪先の速度ベクトルV1に対してブーム上げで発生する速度ベクトルV2を加えることで、バケット407の爪先の速度ベクトルの垂直成分が制限値V1’y以上に保持されるようにバケット407の爪先の速度ベクトルを補正してV1’とする。軌跡補正目標ブームPi圧演算部14bでは、ブーム上げにより速度ベクトルV2を発生するために必要なブームシリンダ33aの補正目標Pi圧(軌跡補正目標ブームPi圧)を算出する。また、予めブーム上げ特性を測定しておくことで軌跡補正目標ブームPi圧とV2の相関を取得しておいても良い。なお、本実施形態では軌跡補正目標ブームPi圧は0以上の値となる。
【0059】
例えば、
図16のAの場合において、ベクトルV1は、フロント作業装置400の姿勢情報や各シリンダ速度から算出される補正前のバケット爪先速度ベクトルである。このベクトルV1の垂直成分は制限値V1’yと方向が同じで、その大きさが制限値V1’yの大きさを超えているので、ブーム上げで発生する速度ベクトルV2を加えて、補正後のバケット爪先速度ベクトルの垂直成分がV1’yとなるようにベクトルV1を補正しなければならない。ベクトルV2の方向は、ブーム405の回動中心からバケット爪先407aまでの距離を半径とする円の接線方向であり、そのときのフロント作業装置400の姿勢から算出できる。そして、この算出した方向を有するベクトルであって、補正前のベクトルV1に加えることで補正後のベクトルV1’の垂直成分がV1’yになるような大きさを有するベクトルをV2として決定する。このベクトルV2は一意に決まるので、軌跡補正目標ブームPi圧演算部14bはベクトルV2の発生に必要なブームシリンダ33aの補正目標Pi圧(軌跡補正目標ブームPi圧)を算出できる。
【0060】
図16のBの場合、距離Dが0であるため制限値V1’yは
図15のテーブルから0となり、補正後のベクトルV1’は目標施工面60に沿ったベクトルとなる。ベクトルV1’を発生するためには、ベクトル演算により、爪先速度ベクトルV1にベクトルV2を加えて補正すればよいから、ベクトルV2の発生に必要なブーム上げのPi圧(軌道補正目標ブーム上げPi圧)を算出する。なお、V2の大きさは、V1とV1’の大きさと、V1とV1’のなす角θを用いて余弦定理を適用することにより求めても良い。
【0061】
図15のテーブルのように爪先速度ベクトルの制限値を決定すると、バケット爪先407aが目標施工面60に近づくにつれて、爪先速度ベクトルの垂直成分が徐々に0に近づくので、目標施工面60の下方に爪先407aが侵入することを防止できる。
【0062】
なお、ベクトルV1の垂直成分が上向きの場合や、ベクトルV1の垂直成分が下向きであってもその大きさが制限値V1’yよりも小さい場合には補正は行わず、軌跡補正目標ブームPi圧は0とする。
【0063】
<2.2.3.補正目標Pi圧選択部10c>
図17は補正目標Pi圧選択部10cの詳細図である。補正目標Pi圧選択部10cは、フロント作業装置400の動作軌跡を目標施工面60の上方に保持するための軌跡補正目標ブームPi圧と、フロント作業装置400による仕事率が向上するようにアーム406又はバケット407の出力を調整するための出力補正目標ブームPi圧のいずれか一方を選択することで最終的なブームの補正Pi圧(補正目標Pi圧)を決定する。
【0064】
補正目標Pi圧選択部10cは、下記の(I)―(II)の方針に基づいたPi圧選択がなされるように構成されている。
【0065】
(I)軌跡補正目標ブームPi圧と出力補正目標ブームPi圧が共にブーム上げを要求している場合(つまり、両者の符号が正の場合)は、値の大きい方を採用する。
【0066】
(II)軌跡補正目標ブームPi圧が0(要求無し)の場合は、出力補正目標ブームPi圧値を採用する。
【0067】
<2.3.比例電磁弁指令電圧演算部3c>
ここで
図3に戻る。比例電磁弁指令電圧演算部3cは、補正目標Pi演算部3bで算出した補正目標Pi圧から比例電磁弁への指令値を決定し、油圧アクチュエータ(ここではブームシリンダ33a)のPi圧を増圧しフロント作業装置400の動作を補正する。比例電磁弁指令電圧演算部3cは、油圧アクチュエータに対応する比例電磁弁27がどの程度電圧をかければ目標とするPi圧を得られる開口となるかの特性マップを保持しており、その特性マップに基づいて比例電磁弁27の指令値を算出する。
【0068】
<3.動作>
次に上記のように構成される油圧ショベルで目標施工面の形成作業を行った場合の典型的な動作について説明する。ここでは説明を簡略化するため、演算部11bで算出されるバケットによる出力補正目標ブームPi圧は0に保持されているものとする。
【0069】
[3.1.爪先407aから目標施工面60までの距離Dがd1を越えているとき]
まず、バケット爪先407aから目標施工面60までの距離がd1(
図15参照)を越えている掘削開始時の場合には、爪先407aから目標施工面60までの距離が十分あるためフロント作業装置400が目標施工面60の下方に侵入する可能性がなく、軌跡補正Pi圧演算部10bで算出される軌跡補正目標ブームPi圧は0に保持される。そのため、ブーム405の補正目標Pi圧は出力補正Pi圧演算部10aだけで生成されることになる。したがって、
図12のテーブル12aに基づいて、アーム406の目標出力と実出力の差分と、アームボトム圧(アームクラウド時のアームシリンダ33bの駆動圧)の組合せに応じて出力補正目標ブームPi圧が生成されることになる。
【0070】
[3.1.1.アーム406の目標出力との実出力の差分がW1以下のとき]
距離Dがd1を越えており、アーム406の目標出力との実出力の差分がW1以下のときは、想定どおりの作業が行われているとみなして、テーブル12aにより出力補正目標ブームPi圧は0に保持され、強制的なブームの上げ・下げは行われない。
【0071】
[3.1.2.アーム406の目標出力との実出力の差分がW1を越えるとき]
しかし、アーム406の目標出力と実出力の差分がW1を越える場合には、想定どおりの作業が行われていないとみなして、アームボトム圧に応じて出力補正目標ブームPi圧を算出して強制的なブーム405の上げ・下げが行われる。
【0072】
[3.1.2.1.アームボトム圧が所定値P1より大きいとき]
まず、出力の差分がW1を越えかつアームボトム圧が所定値P1より大きい場合には、バケット407が硬い地盤に当たる等してアームシリンダ33bに負荷が掛かりすぎているとみなして、出力補正目標ブームPi圧として正の値を出力し、フロント作業装置400の動作にブーム上げを自動的に加える。このブーム上げによってフロント作業装置400の操作は地表から浅い部分を掘削する動作に自動的に変更されるため、アームシリンダ33bの負荷が低減して油圧ポンプ23出力の無駄使いが抑制され、結果的に燃料消費量を抑制できる。
【0073】
ところで、この場合、掘削動作を繰り返して施工対象を掘り進めると距離Dがd1以下に達して、軌跡補正Pi圧演算部10bが軌跡補正目標ブームPi圧を発生可能となる。軌跡補正目標ブームPi圧が発生した場合、軌跡補正目標ブームPi圧と出力補正目標ブームPi圧はともに正になるので、補正目標Pi圧選択部10cが選択するのは2つの補正目標ブームPi圧のうち値が大きい方となる。例えば、軌跡補正目標ブームPi圧が選択された場合には、掘削時に爪先407aが目標施工面60に沿うようにフロント作業装置400が動作し、精度良く目標施工面を形成できる。反対に出力補正目標ブームPi圧が選択された場合には、掘削時に爪先407aが目標施工面60から離れるようにフロント作業装置400が動作し、燃料消費量を抑制できる。したがって、いずれの場合も爪先407aが目標施工面60の下方に侵入することなく可能な限り目標施工面60に沿った掘削ができ、アームシリンダ33bに負荷が掛かり過ぎる場合にはブーム上げが自動的に加えられて負荷が小さくなるので無駄な燃料消費を抑制できる。
【0074】
[3.1.2.2.アームボトム圧が所定値P1より小さいとき]
一方、出力の差分がW1を越えかつアームボトム圧が所定値P1より小さい場合には、バケット407が軟らかい地盤を掘削している等してアームシリンダ33bの負荷が軽すぎるとみなして、出力補正目標ブームPi圧として負の値を出力し、フロント作業装置400の動作にブーム下げを自動的に加える。このブーム下げによって地表から深い部分を掘削する動作に自動的に変更されるため、アームシリンダ33bの仕事量が増加することで掘削回数が低減され、燃料消費量を抑制できる。
【0075】
ところで、この場合、掘削動作を繰り返して施工対象を掘り進めると距離Dがd1以下に達して、軌跡補正Pi圧演算部10bが軌跡補正目標ブームPi圧を発生可能となる。しかし、軌跡補正目標ブームPi圧が発生した場合、軌跡補正目標ブームPi圧は正で、出力補正目標ブームPi圧は負となるので、補正目標Pi圧選択部10cが選択するのは常に軌跡補正目標ブームPi圧となる。軌跡補正目標ブームPi圧に基づいてブームシリンダ33aを制御すると、掘削時に爪先407aが目標施工面60に沿うようにフロント作業装置400が動作し精度良く目標施工面を形成できる。
【0076】
<4.特徴と効果>
上記の実施形態の特徴と効果をまとめる。
(1)上記の実施形態に係る油圧ショベルは、目標施工面60の形成作業を行う多関節型のフロント作業装置(作業装置)400と、Pi圧(制御信号)に基づいてフロント作業装置400を駆動する複数の油圧アクチュエータ33a,33b,33cと、フロント作業装置400の動作軌跡が目標施工面60の上方に保持されるように、複数の油圧アクチュエータ33a,33b,33cに含まれるブームシリンダ(補正対象油圧アクチュエータ)33aの制御信号である軌跡補正Pi圧を作業装置400から目標施工面60までの距離Dに基づいて算出する軌跡補正Pi圧演算部10bを有するコントローラ20とを備え、コントローラ20は、複数の油圧アクチュエータ33a,33b,33cに含まれるアームシリンダ33b又はバケットシリンダ33c(特定油圧アクチュエータ)の目標出力と実出力の差分が所定の出力値W1よりも大きいとき、アームシリンダ33b又はバケットシリンダ33cの仕事率(所定時間に掘削できる土砂量)が増加するように、アームシリンダ33b又はバケットシリンダ33c(特定油圧アクチュエータ)のボトム圧(駆動圧)に基づいてブームシリンダ33a(補正対象油圧アクチュエータ)の制御信号である出力補正Pi圧を算出する出力補正Pi圧演算部10aをさらに有し、ブームシリンダ33a(補正対象油圧アクチュエータ)は、アームシリンダ33b又はバケットシリンダ33c(特定油圧アクチュエータ)の動作中、出力補正Pi圧と軌跡補正Pi圧のうち大きい方に基づいて制御されることとした。
【0077】
このようにブームシリンダ33aを制御すると、フロント作業装置400を目標施工面60の下方に侵入させることなく可能な限り目標施工面60に沿った掘削ができるとともに、アームシリンダ33bまたはバケットシリンダ33cに負荷が掛かり過ぎる場合にはブーム上げが自動的に加えられて負荷が小さくなるので無駄な燃料消費を抑制できる。したがって、目標施工面の施工精度と燃料消費量の低減の両立が可能になる。
【0078】
(2)上記(1)の油圧ショベルにおいて、出力補正Pi圧演算部10aは、アームシリンダ33bまたはバケットシリンダ33c(特定油圧アクチュエータ)のボトム圧(駆動圧)が所定の圧力値P1よりも大きいとき、ブームシリンダ33a(補正対象油圧アクチュエータ)の動作により作業装置400が目標施工面60から遠ざかるように出力補正Pi圧を算出することとした。
【0079】
これにより、アームシリンダ33bまたはバケットシリンダ33cが掘削時に過負荷で仕事をしていないときには、自動で負荷を抜くような動作が入るため、油圧ポンプ23の出力を無駄にすることがなく、燃料消費量を抑制できる。
【0080】
(3)上記(1)または(2)の油圧ショベルにおいて、出力補正Pi圧演算部10aは、アームシリンダ33bまたはバケットシリンダ33c(特定油圧アクチュエータ)のボトム圧(駆動圧)が所定の圧力値P1よりも小さいとき、ブームシリンダ33a(補正対象油圧アクチュエータ)の動作により作業装置400が目標施工面60に近づくように出力補正Pi圧を算出することとした。
【0081】
これにより、アームシリンダ33bまたはバケットシリンダ33cの負荷が掘削時に軽すぎた場合には、目標施工面60に侵入しない範囲で自動で負荷をかけるような動作が入るため、掘削回数を無駄に増やすことがなく、燃料消費量を抑制できる。
【0082】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの油圧ショベルにおいて、コントローラ20は、旋回油圧モータ28の制御信号が出力されているとき、軌跡補正Pi圧演算部10b及び出力補正Pi圧演算部10aによる出力補正Pi圧及び出力補正Pi圧の算出を中断することとした。
【0083】
これにより、溝掘りなどで側面に押し付けながら掘削を行うような場合でのオペレータの操作違和感を抑えることが可能になった。
【0084】
<5.その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0085】
上記では各アクチュエータの制御信号が油圧制御信号(Pi圧)の場合を例に挙げて説明したが、制御信号は油圧信号に限られず電気信号でも良い。
【0086】
上記では、
図11に示すように出力補正目標Pi圧演算部10aに演算部11bと演算部11cを備えたが、演算部11cは省略しても構わない。この場合、
図13の出力補正目標ブームPi圧選択部11dでは、旋回操作の無い場合、常にアームによる出力補正目標ブームPi圧が出力補正目標Pi圧として選択されることになる。
【0087】
図12のテーブル12aでは、アームシリンダ33bのボトム圧が圧力値P1より小さい場合、アームシリンダ33bの目標出力と実出力の差が所定の出力値W1を越えないとブーム下げ用の出力補正目標ブームPi圧を発生しない構成としたが、W1以下でもブーム下げ用の出力補正目標ブームPi圧を発生するように構成しても良い。また、この場合、アームシリンダ33bの目標出力と実出力の差の増加に応じて出力補正目標ブームPi圧の大きさを増加させなくても良い。例えば、アームシリンダ33bの目標出力と実出力の差に関係なく、アームボトム圧の減少に応じて出力補正目標ブームPi圧の大きさを増加させるように構成しても良い。
【0088】
また、上記では、軌跡補正目標Pi圧演算部10bでの制限値V1’yの算出について説明する箇所において、バケット爪先407aから目標施工面60までの距離を距離Dとすることとしたが、フロント作業装置400側の基準点(制御点)はバケット爪先407aに限らず、フロント作業装置400上の任意の点に設定できる。
【0089】
また、上記では、油圧ショベルに搭載された複数の油圧アクチュエータ28,33,33a,33b,33cの中で、ブームシリンダ33aを自動的に作動させる場合について説明したが、その他の油圧アクチュエータを自動的に作動させても構わない。