(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<パーフルオロエラストマー組成物>
〔a〕パーフルオロエラストマー
パーフルオロエラストマーとしては特に制限されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体や、TFE−パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、他のパーフルオロモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。パーフルオロエラストマーを含むパーフルオロエラストマー組成物によれば、水素原子含有フッ素エラストマーを含む組成物に比べて、耐オゾン性をより高めることができる。パーフルオロエラストマー組成物は、パーフルオロエラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0019】
テトラフルオロエチレン(TFE)−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)は、アルキル基の炭素数が1〜5であることができ、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等であることができる。好ましくは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)である。
【0020】
TFE−パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)は、ビニルエーテル基(CF
2=CFO−)に結合する基の炭素数が3〜12であることができ、例えば
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OC
nF
2n+1、
CF
2=CFO(CF
2)
3OC
nF
2n+1、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2O)
mC
nF
2n+1、又は
CF
2=CFO(CF
2)
2OC
nF
2n+1
であることができる。上記式中、nは例えば1〜5であり、mは例えば1〜3である。
【0021】
パーフルオロエラストマーは架橋性を有することが好ましく、より具体的には、架橋部位モノマーをさらに共重合させたもの(架橋部位モノマー由来の構成単位をさらに含むもの)であることが好ましい。架橋部位とは、架橋反応可能な部位を意味する。架橋部位としては、例えば、ニトリル基、ハロゲン基(例えば、I基、Br基等)、パーフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0022】
架橋部位としてニトリル基を有する架橋部位モノマーの一例は、ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルである。ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、
CF
2=CFO(CF
2)
nOCF(CF
3)CN(nは例えば2〜4)、
CF
2=CFO(CF
2)
nCN(nは例えば2〜12)、
CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
m(CF
2)
nCN(nは例えば2、mは例えば1〜5)、
CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
m(CF
2)
nCN(nは例えば1〜4、mは例えば1〜2)、
CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
nCF
2CF(CF
3)CN(nは例えば0〜4)
等を挙げることができる。
【0023】
架橋部位としてハロゲン基を有する架橋部位モノマーの一例は、ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルである。ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上述のニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルの具体例において、ニトリル基をハロゲン基に置き換えたものを挙げることができる。
【0024】
架橋性のパーフルオロエラストマーは、2つの主鎖間を架橋する架橋構造を有していてもよい。
【0025】
パーフルオロエラストマーにおけるTFE由来の構成単位/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)由来の構成単位/架橋部位モノマー由来の構成単位の比は、モル比で、通常50〜74.8%/25〜49.8%/0.2〜5%であり、好ましくは60〜74.8%/25〜39.5%/0.5〜2%である。本発明のパーフルオロエラストマー組成物は、上記構成単位の比が異なる2種以上のパーフルオロエラストマーを含むこともできる。
【0026】
〔b〕ペリレン骨格を有する化合物
パーフルオロエラストマー組成物は、ペリレン骨格を有する化合物(以下、「ペリレン系化合物」ともいう。)を含有する。これにより、高温環境下における耐オゾン性を向上させることができる。ペリレン系化合物は、ペリレン及び3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド以外の化合物である限り特に制限されない。本発明で使用可能なペリレン系化合物の具体例は、例えば、以下のものを含む。パーフルオロエラストマー組成物は、ペリレン系化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0029】
で表される化合物。式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。
【0032】
で表される化合物。
ペリレン系化合物は、好ましくは、式(1)で表される化合物を含む。
【0033】
式(1)におけるR
1、R
2を構成し得るアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜6)の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基及び2−エチルヘキシル基等の炭素数3〜20(好ましくは、炭素数3〜8)の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。
【0034】
上記アルキル基が有し得る置換基としては、ハロゲン基(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)等を挙げることができる。また当該置換基はアリール基であってもよく、すなわち、R
1、R
2は、それぞれ独立して、アラルキル基であってもよい。アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニルメチル基、3−メチルフェニルメチル基、4−メチルフェニルメチル基、2,3−ジメチルフェニルメチル基、2,4−ジメチルフェニルメチル基、2,5−ジメチルフェニルメチル基、2,6−ジメチルフェニルメチル基、3,4−ジメチルフェニルメチル基及びナフチルメチル基などが挙げられる。アリール基の芳香環にメトキシ基等の置換基が存在していてもよい。
【0035】
R
1、R
2を構成し得るアルコキシ基としては、上記アルキル基に酸素原子が結合した基を挙げることができ、より典型的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等である。アルコキシ基が有し得る置換基の例は、アルキル基が有し得る置換基と同様である。
【0036】
R
1、R
2を構成し得るアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。アリール基が有し得る置換基としては、ハロゲン基(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、アルキル基等を挙げることができる。当該アルキル基の具体例は上述したアルキル基の具体例と同様である。
【0037】
ペリレン系化合物は、有機顔料として公知である化合物であってもよい。例えば、式(1)で表される化合物として、C.I.ピグメントレッド123(式(1)においてR
1=R
2=エトキシ基である化合物);C.I.ピグメントレッド149(式(1)においてR
1=R
2=3,5−ジメチルフェニル基である化合物);C.I.ピグメントレッド178(式(1)においてR
1=R
2=4−(フェニルアゾ)フェニル基である化合物);C.I.ピグメントレッド179(式(1)においてR
1=R
2=メチル基である化合物);C.I.ピグメントレッド190(式(1)においてR
1=R
2=メトキシ基である化合物);C.I.ピグメントブラック31(式(1)においてR
1=R
2=フェニルエチル基である化合物);C.I.ピグメントブラック32(式(1)においてR
1=R
2=4−メトキシフェニルエチル基である化合物)等を用いることができる。
【0038】
また式(2)で表される化合物として、C.I.ピグメントレッド224を用いることができる。
【0039】
パーフルオロエラストマー組成物におけるペリレン系化合物(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、高温環境下における耐オゾン性を効果的に向上させる観点から、パーフルオロエラストマー100重量部あたり、好ましくは0.05重量部以上2重量部未満であり、より好ましくは0.05重量部以上1.8重量部以下であり、さらに好ましくは0.05重量部以上1.5重量部以下であり、なおさらに好ましくは0.05重量部以上1.3重量部以下(例えば0.05重量部以上1.1重量部以下)である。
【0040】
〔c〕架橋剤
パーフルオロエラストマー組成物は、パーフルオロエラストマーの架橋系に応じた架橋剤を含むことができる。パーフルオロエラストマーの架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾル架橋系、イミダゾル架橋系、チアゾール架橋系等であり得る。好ましくは、パーオキサイド架橋系である。架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
パーオキサイド架橋系で用いるパーオキサイド架橋剤(ラジカル重合開始剤)は、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(市販品の例:日油製「パーヘキサ25B」);ジクミルペルオキシド(市販品の例:日油製「パークミルD」);2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド;ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ブチルジクミルパーオキサイド;ベンゾイルペルオキシド(市販品の例:日油製「ナイパーB」);2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(市販品の例:日油製「パーヘキシン25B」);2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン;α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(市販品の例:日油製「パーブチルP」);t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート;パラクロロベンゾイルパーオキサイド等であることができる。
【0042】
パーオキサイド架橋系においては、パーオキサイド架橋剤とともに共架橋剤を併用することができる。共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(市販品の例:日本化成社製「TAIC」);トリアリルシアヌレート;トリアリルホルマール;トリアリルトリメリテート;N,N’−m−フェニレンビスマレイミド;ジプロパギルテレフタレート;ジアリルフタレート;テトラアリルテレフタルアミド等のラジカルによる共架橋が可能な化合物(不飽和多官能性化合物)を挙げることができる。共架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、反応性や、高温環境下での圧縮永久歪特性(高温環境下で使用される際の寿命の指標である。)を向上させる観点から、共架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートを含むことが好ましい。
【0043】
共架橋剤の他の好ましい例は、下記式(3):
CH
2=CH−(CF
2)
n−CH=CH
2 (3)
で表されるジオレフィン化合物である。式(3)におけるnは、好ましくは4〜12の整数であり、より好ましくは4〜8の整数である。上記トリアリルイソシアヌレート等とジオレフィン化合物とを併用してもよい。共架橋剤が上記ジオレフィン化合物を含むことは、高温環境下での圧縮永久歪特性が改善された架橋物を得るうえで有利である。
【0044】
オキサゾル架橋系で用いる架橋剤としては、例えば、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BOAP);4,4’−スルホニルビス(2−アミノフェノール)〔ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン〕、3,3’−ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノンを含む。好ましくは、BOAPが用いられる。
【0045】
なお、トリアジン架橋系においては、有機スズ化合物、4級ホスホニウム塩、尿素、窒化ケイ素等の架橋触媒が用いられる。
【0046】
パーフルオロエラストマー組成物における架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、パーフルオロエラストマー100重量部あたり、例えば0.01〜20重量部であり、高温環境下における耐オゾン性及び圧縮永久歪特性の向上の観点から、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。
【0047】
パーフルオロエラストマー組成物における共架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、パーフルオロエラストマー100重量部あたり、例えば0.1〜40重量部であり、高温環境下における耐オゾン性及び圧縮永久歪特性の向上の観点から、好ましくは0.2〜10重量部である。
【0048】
〔d〕その他の配合剤
パーフルオロエラストマー組成物は、加工性改善や物性調整等を目的として、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、加硫促進剤、加工助剤(ステアリン酸等)、安定剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、ワックス類、滑剤等の添加剤を含むことができる。添加剤の他の例は、フッ素系オイル(例えば、パーフルオロエーテル等)のような粘着性低減(防止)剤である。添加剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ただし、シール材を高温環境下で使用する場合などにおいては、揮発、溶出又は析出を生じるおそれがあることから、添加剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば、パーフルオロエラストマー100重量部あたり10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下)、添加剤を含有しないことが望ましい。
【0050】
また、パーフルオロエラストマー組成物は、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、クレー、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、金属粉、ガラス粉、セラミックス粉のような無機充填剤を含むことができる。
【0051】
ただし、無機充填剤は、上述のように、過酷なオゾン環境下で飛散するおそれがあることから、無機充填剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば、パーフルオロエラストマー100重量部あたり10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下)、無機充填剤を配合しないことが望ましい。なお、無機充填剤とは、金属元素(Ba、Ti、Zn、Al、Mg、Ca、Si等)を含有する充填剤をいう。
【0052】
パーフルオロエラストマー組成物は、フッ素樹脂をさらに含むことができる。これにより、パーフルオロエラストマー組成物の架橋物の耐オゾン性や機械的強度をさらに向上させ得る。フッ素樹脂の形態は特に制限されないが、例えばフッ素樹脂粒子としてパーフルオロエラストマー組成物に含有させることができる。
【0053】
フッ素樹脂は、分子内にフッ素原子を有する樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF−HFP共重合体)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(VDF−HFP−TFE共重合体)等であることができる。フッ素樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記の中でも、高温環境下で樹脂が溶融して圧縮永久歪等の特性が損なわれることを防ぐ観点から、PFA、PTFE等の融点が比較的高いフッ素樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
フッ素樹脂は、官能基を含有するものであってもよい。官能基は、例えば当該官能基を有するモノマーを共重合させることによって導入できる。官能基を有するモノマーとして上述の架橋部位モノマーを共重合させると、上記架橋剤によってフッ素樹脂とパーフルオロエラストマーとの架橋も進行するので、パーフルオロエラストマー組成物の架橋物の機械的強度等をさらに高め得る。官能基を含有するフッ素樹脂の例として、特開2013−177631号公報に記載されるニトリル基含有ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。
【0056】
また、フッ素樹脂は、例えば「TFM変性PTFE」(ダイニオン社製)のような、変性されたフッ素樹脂であることもできる。
【0057】
フッ素樹脂を用いる場合、パーフルオロエラストマー組成物におけるフッ素樹脂の含有量(2種以上のフッ素樹脂を用いる場合はその合計量)は、架橋物の機械的強度等を効果的に高める観点から、パーフルオロエラストマー100重量部あたり、好ましくは1〜100重量部であり、より好ましくは5〜50重量部である。フッ素樹脂の含有量が過度に多いと、弾性を示すパーフルオロエラストマーの含有量が相対的に減少して、圧縮永久歪特性が悪化する。
【0058】
〔e〕パーフルオロエラストマー組成物の調製
パーフルオロエラストマー組成物は、パーフルオロエラストマー、ペリレン系化合物、架橋剤(あるいは架橋剤と共架橋剤、又は架橋触媒)、及び必要に応じて添加されるその他の配合剤を均一に混練りすることにより調製できる。混練り機としては、例えば、オープンロールのようなミキシングロール;ニーダー、バンバリーミキサーのようなミキサー等の従来公知のものを用いることができる。これらの配合剤は、一度に混合して混練されてもよいし、一部の配合剤を混練した後、残りの配合剤を混練するといったように複数段に分けてすべての配合剤を混練するようにしてもよい。
【0059】
パーフルオロエラストマーとフッ素樹脂との混練に関していえば、例えば、1)パーフルオロエラストマー粉末とフッ素樹脂粉末とをミキシングロールを用いて混練する方法、2)パーフルオロエラストマー粉末又はペレットとフッ素樹脂粉末又はペレットとをミキサーや二軸押出機等の装置を用いて溶融混練する方法のほか、3)パーフルオロエラストマーの調製段階でフッ素樹脂を添加する方法を用いることができる。
【0060】
上記3)の方法としては、いずれも乳化重合法で得られたパーフルオロエラストマーの水性分散液とフッ素樹脂の水性分散液とを混合した後、共凝析によりパーフルオロエラストマーとフッ素樹脂との混合物を得る方法を挙げることができる。
【0061】
<シール材>
上記パーフルオロエラストマー組成物を架橋成形(加硫成形)することにより、シール材のような架橋成形物を得ることができる。すなわち、シール材は、パーフルオロエラストマー組成物の架橋物からなる。架橋成形は、必要に応じてパーフルオロエラストマー組成物を予備成形した後、金型を用いてプレス成形することにより行うことができる。成形温度は、例えば150〜220℃程度である。送りプレス成形、インジェクション成形、押出成形等により成形を行ってもよい。必要に応じて、150〜320℃程度の温度で二次架橋を行ってもよい。
【0062】
上記のような架橋成形(プレス成形等)を行った後に、さらに電離性放射線を照射して架橋させる工程を設けてもよい。これにより、圧縮永久歪特性をさらに向上させ得る。電離性放射線としては、電子線やγ線を好ましく用いることができる。
【0063】
シール材は、パッキンやガスケット等であることができる。シール材の形状はその用途に応じて適宜選択され、その代表例は、断面形状がO型であるOリングである。本発明に係るシール材は、高温環境下においても良好な耐オゾン性及び圧縮永久歪特性を示すため、半導体装置やフラットパネルディスプレイの製造における成膜工程で使用される装置など、高温環境下でオゾンを使用する装置内の真空度を保持するためのシール材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1〜11、比較例1〜3>
次の手順に従って、パーフルオロエラストマー組成物を調製し、次いでシール材を作製した。まず、表1に示される配合組成に従って(表1における配合量の単位は重量部である)、各配合剤の所定量をオープンロールにより混練した。次に、得られたパーフルオロエラストマー組成物を、下記の条件でプレス成形した後、下記の条件で熱による2次架橋を行ってシール材(Oリング)を得た。
【0066】
実施例1〜9、比較例1:プレス成形条件 165℃×20分;2次架橋条件 230℃×16時間、
実施例10、比較例2:プレス成形条件 165℃×10分;2次架橋条件 150℃×7時間、次いで300℃×4時間の2段階、
実施例11、比較例3:プレス成形条件 188℃×15分;2次架橋条件 250℃×24時間。
【0067】
【表1】
【0068】
上記の実施例及び比較例で用いた各配合剤の詳細は次のとおりである。
〔1〕FFKM1:テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−ヨウ素原子含有パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であるパーフルオロエラストマーと、上記式(3)で表される共架橋剤と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含む組成物〔ソルベイスペシャリティポリマーズ社製「Tecnoflon PFR5910M」)。表1には、「FFKM1」の欄に、FFKM1に含まれるパーフルオロエラストマーの含有量(重量部)を示し、「フッ素樹脂1」の欄に、FFKM1に含まれるフッ素樹脂の含有量(重量部)を示し、「共架橋剤」の欄に、FFKM1に含まれる上記式(3)で表される共架橋剤の含有量(重量部)を示している。
〔2〕FFKM2:パーフルオロエラストマー〔3M社製「PFE 191TZ」〕。
〔3〕FFKM3:パーフルオロエラストマーとフッ素樹脂とを含む組成物〔3M社製「PFE 133TBZ」〕。表1には、「FFKM3」の欄に、FFKM3に含まれるパーフルオロエラストマーの含有量(重量部)を示し、「フッ素樹脂3」の欄に、FFKM3に含まれるフッ素樹脂の含有量(重量部)を示している。
〔4〕FFKM4:パーフルオロエラストマーとトリアジン触媒とを含む組成物〔3M社製「PFE 01CZ」〕。表1には、「FFKM4」の欄に、FFKM4に含まれるパーフルオロエラストマーの含有量(重量部)を示し、「トリアジン触媒2」の欄に、FFKM4に含まれるトリアジン触媒の含有量(重量部)を示している。
〔5〕架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン〔日油製「パーヘキサ25B」〕。
〔6〕トリアジン触媒1:3M社製「PFE 300C」。
〔7〕カーボンブラック:N−990 MT。
〔8〕シリカ:日本アエロジル社製「アエロジルR972」。
〔9〕ペリレン系化合物A:C.I.ピグメントレッド149(上記式(1)においてR
1=R
2=3,5−ジメチルフェニル基である化合物)。
〔10〕ペリレン系化合物B:C.I.ピグメントレッド178(上記式(1)においてR
1=R
2=4−(フェニルアゾ)フェニル基である化合物)。
【0069】
(シール材の評価)
得られた架橋成形品(シール材)について、下記の項目を測定、評価した。結果を表1に示す。
【0070】
〔1〕耐オゾン性の評価
シール材を、オゾン濃度200g/m
3、温度160℃の環境下に72時間置くオゾン暴露試験を行った。試験前後のシール材の重量を測定し、下記式:
重量減少率(%)={(試験前の重量−試験後の重量)/(試験前の重量)}×100に従って重量減少率を求めた。
【0071】
〔2〕シール材の圧縮永久歪
JIS K6262に準拠し、200℃×72時間、圧縮率25%、及び260℃×72時間、圧縮率25%のそれぞれの条件で、線径φ3.53 Oリングを使用して圧縮永久歪を測定した。
【0072】
<実施例12〜13、比較例4〜7>
次の手順に従って、パーフルオロエラストマー組成物を調製し、次いでシール材を作製した。まず、表2に示される配合組成に従って(表2における配合量の単位は重量部である)、各配合剤の所定量をオープンロールにより混練した。次に、得られたパーフルオロエラストマー組成物を、下記の条件でプレス成形した後、下記の条件で熱による2次架橋を行ってシール材(Oリング)を得た。
【0073】
プレス成形条件 165℃×20分;2次架橋条件 230℃×16時間
【0074】
【表2】
【0075】
上記の実施例及び比較例で用いた各配合剤の詳細は次のとおりである。
〔1〕FFKM1:テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−ヨウ素原子含有パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であるパーフルオロエラストマーと、上記式(3)で表される共架橋剤と、ポリテトラフルオロエチレン粒子とを含む組成物〔ソルベイスペシャリティポリマーズ社製「Tecnoflon PFR5910M」)。表2には、「FFKM1」の欄に、FFKM1に含まれるパーフルオロエラストマーの含有量(重量部)を示し、「フッ素樹脂1」の欄に、FFKM1に含まれるフッ素樹脂の含有量(重量部)を示し、「共架橋剤」の欄に、FFKM1に含まれる上記式(3)で表される共架橋剤の含有量(重量部)を示している。
〔2〕架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン〔日油製「パーヘキサ25B」〕。
〔3〕ペリレン系化合物A:C.I.ピグメントレッド149(上記式(1)においてR
1=R
2=3,5−ジメチルフェニル基である化合物)。
〔4〕ペリレン系化合物C:C.I.ピグメントレッド179(上記式(1)においてR
1=R
2=メチル基である化合物)。
【0076】
(シール材の評価)
得られた架橋成形品(シール材)について、実施例1〜11、比較例1〜3と同様にして耐オゾン性及び圧縮永久歪を測定、評価した。結果を表2に示す。