特許第6618538号(P6618538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6618538積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618538
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20191202BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20191202BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20191202BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   G02B5/30
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G09F9/00 366A
   G09F9/00 313
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-531048(P2017-531048)
(86)(22)【出願日】2016年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2016065277
(87)【国際公開番号】WO2017018036
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2017年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-148750(P2015-148750)
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】舛本 好史
(72)【発明者】
【氏名】小林 潔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正宜
【審査官】 岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−111896(JP,A)
【文献】 特開2003−240948(JP,A)
【文献】 特開2003−207640(JP,A)
【文献】 特開2014−142462(JP,A)
【文献】 特開2008−249943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041− 3/047
B32B 1/00−43/00
G02B 5/30
G09F 9/00
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサと、前記タッチセンサ上に設けられた光学機能層とを備える積層構造体であって、
前記タッチセンサは、基材と、前記基材上に設けられた透明電極層とを備え、
前記光学機能層は、透過光に位相差を与える位相差層と、前記位相差層上に設けられた直線偏光層とからなり、前記光学機能層の前記位相差層側の面が前記タッチセンサに対向するように、前記光学機能層は配置され、
前記積層構造体の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RR0.763未満であって、
前記積層構造体の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRは、前記光学機能層の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRよりも大きく、
前記位相差層は、透過光に1/4波長分の位相差を与える1/4λ位相差層と、前記1/4λ位相差層上に設けられ透過光に1/2波長分の位相差を与える1/2λ位相差層とからなり、前記1/2λ位相差層が前記直線偏光層に近位となるように配置され、
前記1/2λ位相差層の遅相軸と前記1/4λ位相差層の遅相軸とを含む前記光学機能層は、合成の遅相軸を有し、
前記基材の遅相軸は、前記光学機能層の前記遅相軸に沿った方向であること
を特徴とする積層構造体。
【請求項2】
前記基材の590nmにおけるリターデーションは10nm以下である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記基材は樹脂系材料からなり、可撓性を有する、請求項1または請求項2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記樹脂系材料はシクロオレフィン系樹脂を含む、請求項3に記載の積層構造体。
【請求項5】
タッチセンサと、前記タッチセンサ上に設けられた光学機能層とを備える積層構造体の製造方法であって、
前記積層構造体の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RR0.763未満であって、
前記積層構造体の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRは、前記光学機能層の590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRよりも大きく、
前記光学機能層は、透過光に位相差を与える位相差層と、前記位相差層上に設けられた直線偏光層とからなり、
前記位相差層は、透過光に1/4波長分の位相差を与える1/4λ位相差層と、前記1/4λ位相差層上に設けられ透過光に1/2波長分の位相差を与える1/2λ位相差層とからなり、前記1/2λ位相差層を前記直線偏光層に近位となるように配置し、
前記1/2λ位相差層の遅相軸と前記1/4λ位相差層の遅相軸とを含む前記光学機能層は、合成の遅相軸を有し、
前記光学機能層の前記位相差層側の面が前記タッチセンサに対向するとともに、前記タッチセンサの前記基材の遅相軸が、前記光学機能層の前記遅相軸に沿った方向になるように、前記タッチセンサと前記光学機能層とを積層すること
を特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項6】
前記光学機能層を形成するための液状組成物を前記タッチセンサ上に塗布することを含んで、前記タッチセンサ上に前記光学機能層を積層する、請求項5に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載される積層構造体と、前記積層構造体の前記タッチセンサ側の面上に設けられた画像表示部とを備える画像表示装置であって、
前記画像表示部の画像表示面が前記積層構造体に対向するように前記画像表示部は配置されること
を特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
前記画像表示部は、有機ELパネルからなる、請求項7に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置に関し、詳しくは、タッチセンサの上に設けられた光学機能層によって外光反射を抑制する積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの上にタッチセンサを搭載した表示装置において、タッチセンサの電極となる導電パターンによる外光の反射を防止して、導電パターンが見えないようにすることが望まれる。
【0003】
特許文献1では、透明基材および導電パターンを備える電極層の一方側に1/4波長分の位相差を与える光学機能層を備えたタッチパネル用電極部が開示される。このような構成により、外来光の反射によるタッチパネルの導電パターンの視認や不快な金属性の光沢によるぎらつき等の表示不良が改善される。
【0004】
ここで、タッチパネルに光学機能層を設けて外来光の反射を抑制する構成では、外来光および反射体で反射した光はタッチセンサを透過することになる。したがって、表示素子からの反射光の光学特性に対して、タッチパネルの基材の光学物性が当然に影響を及ぼす。この点に関し、特許文献1では、タッチセンサの基材のリターデーションを小さくすることにより、タッチセンサの基材が反射光の光学特性に与える影響を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−142462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タッチセンサと光学機能層とが積層されてなる構造体(積層構造体)であって、従来の積層構造体に比べて、反射光の光学特性の低下を抑制したり反射光の光学特性を向上させたりすることが可能な積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置を提供することを目的とする。なお、本明細書において、ことわりのない「反射光」とは、光学機能層を備える積層構造体の一方の主面から積層構造体内部側に入射した光が、積層構造体を通過したのち反射体により反射して、積層構造体を再度通過して上記の積層構造体の一方の主面から外側に出射した光を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者が検討した結果、タッチセンサの基材の光学物性を積極的に利用して、タッチセンサの基材と光学機能層とを光学的に相互作用させることにより、従来の積層構造体に比べて、反射光の光学特性の低下を抑制したり反射光の光学特性を向上させたりすることが可能であるとの新たな知見を得た。
【0008】
上記の知見に基づき完成された本発明は、一態様において、タッチセンサと、タッチセンサ上に設けられた光学機能層とを備える積層構造体であって、タッチセンサは、基材と、基材上に設けられた透明電極層とを備え、光学機能層は、透過光に位相差を与える位相差層と、位相差層上に設けられた直線偏光層とからなり、光学機能層の位相差層側の面がタッチセンサに対向するように、光学機能層は配置され、光学機能層は、590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRが0.763未満であって、基材の遅相軸は、光学機能層の遅相軸に沿った方向であることを特徴とする。
【0009】
光学機能層は、入射した自然光を円偏光とする機能を有する。このような構成によれば、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な配置関係の設定と、基材のリターデーションの制御によって、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な相互作用が発揮される。これにより、タッチセンサの基材に起因する反射光の光学特性の低下を抑制することが可能である。また、好ましい一形態においては、タッチセンサの基材を光学機能層と適切に光学的に相互作用させることにより、光学機能層単独の場合よりも反射光の光学特性を向上させることが可能である。
【0010】
本発明の積層体において、位相差層は、透過光に1/4波長分の位相差を与える1/4λ位相差層と、1/4λ位相差層上に設けられ透過光に1/2波長分の位相差を与える1/2λ位相差層とからなり、1/2λ位相差層が直線偏光層に近位となるように配置されてもよい。位相差層が上記の構成を有することにより、比率RRが0.763未満となる光学機能層が得られやすい。
【0011】
本発明の積層構造体において、基材の590nmにおけるリターデーションは10nm以下であってもよい。これにより、可視光領域での反射光の光学特性の低下を抑制したり反射光の光学特性を向上させたりすることがより安定的に実現される。
【0012】
また、基材は樹脂系材料からなり、可撓性を有していてもよい。樹脂系材料はシクロオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。これにより、湾曲可能なタッチセンサを用いた場合の反射光抑制を図ることができある。
【0013】
本発明は、他の一態様において、タッチセンサと、タッチセンサ上に設けられた光学機能層とを備える積層構造体の製造方法であって、光学機能層は、590nmにおけるリターデーションRe1に対する450nmにおけるリターデーションRe2の比率RRが0.763未満であって、光学機能層は、透過光に位相差を与える位相差層と、位相差層上に設けられた直線偏光層とからなり、光学機能層の位相差層側の面がタッチセンサに対向するとともに、タッチセンサの基材の遅相軸が、光学機能層の遅相軸に沿った方向になるように、タッチセンサと光学機能層とを積層することを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な配置関係を設定し、基材のリターデーションを制御することによって、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な相互作用の程度を制御することができる。これにより、タッチセンサの基材に起因する反射光の光学特性の低下を抑制することが可能である。また、好ましい一形態においては、タッチセンサの基材を光学機能層と適切に光学的に相互作用させることにより、光学機能層単独の場合よりも反射光の光学特性を向上させることが可能である。
【0015】
本発明の積層体において、位相差層は、透過光に1/4波長分の位相差を与える1/4λ位相差層と、1/4λ位相差層上に設けられ透過光に1/2波長分の位相差を与える1/2λ位相差層とからなり、1/2λ位相差層を直線偏光層に近位となるように配置してもよい。これにより、比率RRが0.763未満となる光学機能層を得ることが容易となる。
【0016】
本発明の積層構造体の製造方法において、光学機能層を形成するための液状組成物をタッチセンサ上に塗布することを含んで、タッチセンサ上に光学機能層を積層するようにしてもよい。これにより、液状組成物の塗布によって光学機能層の光学特性を制御することができる。
【0017】
別の一態様に係る本発明の積層構造体は、タッチセンサと、タッチセンサ上に設けられた光学機能層とを備える積層構造体であって、タッチセンサは、基材と、基材上に設けられた透明電極層とを備え、光学機能層は、透過光に1/4波長分の位相差を与える1/4λ位相差層と、1/4λ位相差層上に設けられ透過光に1/2波長分の位相差を与える1/2λ位相差層と、1/2λ位相差層上に設けられた直線偏光層とからなり、光学機能層の1/4λ位相差層側の面がタッチセンサに対向するように、光学機能層は配置され、積層構造体のタッチセンサ側に反射層を設けて直線偏光層側から光を入射して測定した反射光の彩度Cの、光学機能層からなる対比積層構造体の1/4λ位相差層側に反射層を設けて直線偏光層側から光を入射して測定した反射光の彩度Cに対する彩度比RCが1.1以下であることを特徴とする。
【0018】
彩度比RCが1.1以下であることにより、積層構造体からの反射光は、色味が少ない光となる。したがって、積層構造体と反射体との間に発光素子を備える場合(具体的には有機EL素子が例示される。)には、発光素子から生じた光と、積層構造体を通過して観察される光との色味変化が生じにくい。
【0019】
上記の本発明の積層構造体において、タッチセンサの基材の590nmにおけるリターデーションが2.5nm以上であってもよい。本発明の積層構造体では、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な相互作用により反射光の光学特性を制御する。したがって、タッチセンサの基材はある程度のリターデーションを有していることが反射光の光学特性の制御性を高める観点から好ましい場合もある。
【0020】
また、本発明の積層構造体において、タッチセンサの前記基材の590nmにおけるリターデーションが7.9nm以下であってもよい。この場合には、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な相互作用による有利な効果がより安定的に得られやすい。すなわち、反射光の光学特性を光学機能層単独の場合よりも向上させることがより安定的に生じやすい。
【0021】
また、本発明の積層構造体において、基材の遅相軸は、光学機能層の遅相軸に沿った方向または光学機能層の遅相軸に直交する方向であってもよい。基材の遅相軸と光学機能層の遅相軸との関係を直交または平行とする場合に、基材と光学機能層との光学的な相互作用を大きくすることが容易である。直交とすることが好ましいか平行とすることが好ましいかは、光学機能層の構成などによって決定される。
【0022】
本発明の積層構造体の製造方法は、タッチセンサが備える基材の遅相軸と光学機能層の遅相軸とが作る角度が、彩度比RCを1.1以下にする角度となるように、タッチセンサと光学機能層とを積層することを特徴とする。これにより、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な配置関係を設定し、基材のリターデーションを制御することによって、タッチセンサの基材と光学機能層との光学的な相互作用の程度を制御することができる。これにより、タッチセンサの基材に起因する反射光の光学特性の低下を抑制することが可能である。また、好ましい一形態においては、タッチセンサの基材が光学機能層と適切に相互作用することにより、反射光の光学特性を光学機能層単独の場合よりも向上させることが可能である。
【0023】
本発明の積層構造体の製造方法において、光学機能層を形成するための液状組成物をタッチセンサ上に塗布することを含んで、タッチセンサ上に光学機能層を積層してもよい。これにより、液状組成物の塗布によって光学機能層の光学特性を制御することができる。
【0024】
本発明は、上記の積層構造体と、積層構造体のタッチセンサ側の面上に設けられた画像表示部とを備える画像表示装置であって、画像表示部の画像表示面が積層構造体に対向するように画像表示部は配置されることを特徴とする。画像表示部は有機ELパネルであってもよい。このような構成によれば、タッチセンサの基材に起因する反射光の光学特性の低下を抑制することが可能である。また、好ましい一形態においては、タッチセンサの基材が光学機能層と適切に相互作用することにより、反射光の光学特性を光学機能層単独の場合よりも向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、反射光の光学特性の低下を抑制したり反射光の光学特性を向上させたりすることが可能な積層構造体、積層構造体の製造方法および画像表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】画像表示装置の構成を例示する断面図である。
図2】タッチセンサおよび光学機能層の構成例を示す分解斜視図である。
図3】タッチセンサおよび光学機能層の構成例を示す分解斜視図である。
図4】(a)および(b)は、リターデーションにおける比率RRの波長依存について示す図である。
図5】反射光における彩度の測定結果を示す図である。
図6】彩度比RCのグラフ表示を示す図である。
【発明を実施するため最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0028】
(画像表示装置の構成)
図1は、画像表示装置の構成を例示する断面図である。
画像表示装置1は、液晶や有機EL(Electro Luminescence)などを用いた画像表示部10と、画像表示部10の上に設けられた積層構造体20とを備える。積層構造体20は、タッチセンサ30と、タッチセンサ30上に設けられた光学機能層40とを備える。すなわち、本実施形態に係る画像表示装置1は、タッチパネルディスプレイである。
【0029】
タッチセンサ30は、基材31と、基材31上に設けられた透明電極層32とを有する。基材31には可撓性を有する樹脂系材料(例えば、PC(polycarbonate)、COP(Cyclo Olefin Polymer)、TAC(Triacetylcellulose))が用いられる。特に、基材31に用いられる樹脂系材料として、シクロオレフィン系樹脂を含む材料が光学的な特性の観点から望ましい。また、基材31の590nmにおけるリターデーションは10nm以下であることが望ましい。
【0030】
透明電極層32は、互いに交差する複数の第1電極321と複数の第2電極322とを有する。ここで「透明」とは、可視光領域の光を十分に(例えば、50%以上)透過することをいう。透明電極層32には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。透明電極層32の上にはカバー33が設けられる。タッチセンサ30においては、例えば指を接近させた際の静電容量の変化を検出することでタッチセンサ30上の指の位置を検出する。
【0031】
光学機能層40は、1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43を備える。1/4λ位相差層41は、透過光に1/4波長分の位相差を与える。1/2λ位相差層42は、透過光に1/2波長分の位相差を与える。直線偏光層43は、透過光を吸収軸に直交する方向に沿った偏光軸を有する直線偏光にする。なお、光学機能層40を構成する層のうち、位相差を与えるために設けられた層を位相差層と総称する場合もある。本実施形態に係る光学機能層40では、位相差層は1/4λ位相差層41と1/2λ位相差層42とからなる。光学機能層40は、タッチセンサ30側から1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43の順に配置される。すなわち、光学機能層40は、1/4λ位相差層41がタッチセンサ30と対向するように配置され、1/4λ位相差層41の上に1/2λ位相差層42が配置され、1/2λ位相差層42の上に直線偏光層43が配置される。
【0032】
本実施形態において、590nmにおけるリターデーションをRe1、450nmにおけるリターデーションをRe2、Re1に対するRe2の比率をRRとした場合、光学機能層40のリターデーションにおける比率RRは、0.763未満になっている。比率RRが0.763である場合には、円偏光をもたらす光学素子(円偏光素子)の理想的な波長分散特性を有している可能性が高い。また、タッチセンサ30の基材31における複屈折の遅相軸は、光学機能層40の複屈折における遅相軸に沿った方向になっている。
【0033】
このようなタッチセンサ30と光学機能層40との光学的な配置関係や、光学機能層40のリターデーションの設定によって、反射光の光学特性の低下を抑制することができる。本実施形態の好ましい一例では、タッチセンサ30の基材31のリターデーションと、光学機能層40のリターデーションとを積極的に利用して、基材31と光学機能層40との光学的な相互作用を発揮させることにより、反射光の光学特性を、光学機能層40単独の場合よりも向上させることが可能になる。
【0034】
(各層の構成)
図2および図3は、タッチセンサおよび光学機能層の構成例を示す分解斜視図である。
図2および図3に示す構成例においては、画像表示部10の上にタッチセンサ30が配置される。説明の便宜上、図2および図3においてはタッチセンサ30の基材31のみが示される。基材31の上には、光学機能層40として、1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43がこの順に設けられる。
【0035】
直線偏光層43の吸収軸の角度は45°、1/2λ位相差層42の遅相軸の角度は150°、1/4λ位相差層41の遅相軸の角度は30°である。光学機能層40の全体としては、逆波長分散特性を示す1/4λ位相差となり、合成の遅相軸の角度は0°となる。
【0036】
図2では、このような光学機能層40に対してタッチセンサ30の基材31の遅相軸の角度が0°となるように配置された構成である。すなわち、タッチセンサ30の基材31の遅相軸が光学機能層40の遅相軸に沿った方向になっている場合が示される。本実施形態では、この場合を平行配置ということにする。
【0037】
図3では、光学機能層40に対してタッチセンサ30の基材31の遅相軸の角度が90°となるように配置された構成である。すなわち、タッチセンサ30の基材31の遅相軸が光学機能層40の遅相軸に直交する方向に沿っている場合が示される。本実施形態では、この場合を直交配置ということにする。
【0038】
図4(a)および(b)は、リターデーションにおける比率RRの波長依存について示す図である。図4(b)には図4(a)の一部の拡大図が示される。
図4において、データD0は、反射光を抑制するための理想的な円偏光素子におけるリターデーション比率RR、データD1は、タッチセンサ30の基材31におけるリターデーション比率RR、データD2は、光学機能層40におけるリターデーション比率RR、データD3は、平行配置の場合の光学機能層40および基材31を含めたリターデーション比率RR、データD4は、直交配置の場合の光学機能層40および基材31を含めたリターデーション比率RRが示される。データD0は光学シミュレーションによる計算結果であり、データD1からデータD4は実測データである。
【0039】
図4(b)に示すように、本実施形態に係る光学機能層40においては、平行配置(データD3)のほうが、直交配置(データD4)よりも理想状態(データD0)に近づくことが分かる。特に、平行配置(データD3)のほうが、光学機能層40単独の場合(データD2)よりも理想状態(データD0)に近づいている。したがって、上記の光学機能層40の構成(1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43)においては、タッチセンサ30の基材31を平行配置にすることで、光学機能層40単独の場合よりも、理想的な円偏光素子のリターデーションの波長分散特性に近づけることが可能となる。したがって、本実施形態に係る積層構造体20を用いることにより、反射光の光学特性の低下が抑制されたり、反射光の光学特性が向上したりすることが期待される。
【0040】
図5は、反射光の光学特性の一つである彩度の測定結果を示す図である。
彩度はL色空間におけるC=((a+(b)^0.5を用いている。図5では、平行配置された積層構造体(平行積層構造体)および直交配置された積層構造体(直交積層構造体)のそれぞれについて、タッチセンサ30側に反射層を設けて、直線偏光層43側から光を入射して測定した反射光の彩度Cを求めた。また、対比積層構造体(本実施形態に係る積層構造体20が備える光学機能層40と同じ構成の光学機能層からなる積層構造体、すなわち、本実施形態に係る積層構造体20においてタッチセンサ30を設けない構造を有する積層構造体)を用意し、この対比積層構造体における1/4λ位相差層側に反射層を設けて、直線偏光層側から光を入射して測定した反射光の彩度Cを求めた。
【0041】
先ず、対比積層構造体(光学機能層40のみからなる積層構造体)の反射光における彩度Cは、4.48であった。平行積層構造体および直交積層構造体のそれぞれの反射光における彩度Cについては、タッチセンサ30の基材31の波長590nmでのリターデーション(図5のReの列)を2.5nm〜13.2nmまで変えて、平行配置の場合(平行積層構造体)および直交配置の場合(直交積層構造体)のそれぞれについて測定した。また、図5には、彩度Cと、対比積層構造体の場合の彩度Cを基準とした彩度比RCとが示される。
【0042】
また、図6は、図5に示される彩度比RCのグラフ表示を示す図である。図6において、データD10はタッチセンサ30が設けられていない場合(対比積層構造体)の彩度比RCを示し、データD11は平行積層構造体の彩度比RCを示し、データD12は直交積層構造体の彩度比RCを示す。
【0043】
この測定結果から、本実施形態に係る積層構造体20に相当する平行積層構造体では、直交積層構造体に比べて、反射光の彩度Cの増大を効果的に抑制できることが分かる。反射光のCの増大は色ずれの顕在化を意味することから、平行積層構造体は、直交積層構造体に比べて、反射光の光学特性の低下が抑制されているといえる。
【0044】
具体的には、本実施形態に係る積層構造体20の光学機能層40のように、円偏光を実現するための光学機能層が1/4λ位相差層41と1/2λ位相差層42とを備える場合には、基材31のリターデーションが高くても(例えば10nm以上)、平行配置であれば彩度比RCは1.1以下となる。これに対し、直交積層構造体の場合には、基材31のリターデーションを低くしても(例えば5nm以下)、彩度比RCを1.1以下とすることは容易でない。
【0045】
基材31のリターデーションを低くするためには、基材31の厚さを特に薄くするか、基材31中の複屈折分布が少なくなるような製造上の工夫(無延伸など)が必要である。このため、リターデーションが低い基材を用いると、基材の取扱い性の低下に伴う積層構造体の生産性の低下や積層構造体の品質の低下、さらには基材を含む積層構造体の製造コストの上昇が生じやすい。本実施形態に係る積層構造体20は、リターデーションが低い基材を特に備えなくても、反射光の光学特性の低下を抑制することができる。
【0046】
本実施形態に係る積層構造体20は、平行配置であるため、基材31のリターデーションが10nm以下であれば、彩度比RCは1.0以下となる。すなわち、基材31のリターデーションが10nm以下であることにより、反射光は、タッチセンサ30を備えない場合と同等かそれ以上の光学特性を有する。
【0047】
特に、本実施形態に係る積層構造体20は、基材31の590nmにおけるリターデーションが2.5nm以上7.2nm以下であれば、彩度比RCが1.00未満となる。したがって、本実施形態に係る積層構造体20では、タッチセンサ30を設けない場合(対比積層構造体)よりも反射光の色味が少なくなっている。このように、本実施形態に係る積層構造体20では、光学機能層40とタッチセンサ30の基材31との光学的な相互作用を積極的に利用することで、タッチセンサ30を有しない場合よりも、反射光の光学特性を向上させることが実現されている。反射光の光学特性を向上させることをより安定的に実現させる観点から、基材31の590nmにおけるリターデーションは、2.5nm以上6.3nm以下であることが好ましく、3.4nm以上6.3nm以下であることがより好ましい。
【0048】
(積層構造体の製造方法)
本実施形態に係る積層構造体20は、例えば次のような方法によって製造されうる。
先ず、タッチセンサ30の基材31の上に、透明電極層32となる第1電極321および第2電極322を形成する。第1電極321および第2電極322は絶縁層を介して互いに交差して形成される。次に、透明電極層32の上にカバー33を形成する。これによりタッチセンサ30が形成される。
【0049】
次に、タッチセンサ30の上に光学機能層40を形成する。光学機能層40は、タッチセンサ30の上に、1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43をこの順に積層していく。1/4λ位相差層41、1/2λ位相差層42および直線偏光層43のそれぞれは、延伸などの方法により所望の光学特性が付与された配向膜から構成されていてもよい。この場合には複数の配向膜を接着剤や粘着剤を用いて積層することにより光学機能層40を形成することができる。あるいは、位相差に応じた配向方向を有する配向膜を用意し、この配向膜の上に液状組成物(例えば、液晶)を塗布することにより光学機能層40が形成されてもよい。光学的に透明な材料を用いてタッチセンサ30と光学機能層40とを固定(接着・粘着)してもよいし、光学機能層40の一部となる材料を用いてタッチセンサ30に対する光学機能層40の固定(接着・粘着)が行われてもよい。これにより、タッチセンサ30の上に光学機能層40を積層した積層構造体20が完成する。
【0050】
以上説明したように、実施形態によれば、タッチセンサ30の基材31に起因する反射光の光学特性の低下が抑制された積層構造体20が提供されうる。また、好ましい一形態においては、タッチセンサ30の基材31が光学機能層40と適切に相互作用することにより、反射光の光学特性が光学機能層40単独の場合のよりも向上した積層構造体20が提供されうる。さらに、本実施形態によれば、積層構造体20の製造方法および画像表示装置1を提供することが可能になる。
【0051】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0052】
例えば、上記の実施形態では1/4λ位相差層41と1/2λ位相差層42と構成されている位相差層は、単相構成であってもよいし、3層以上から構成されていてもよい。光学機能層40の比率RRが0.763未満であることを容易に実現する観点から、位相差層は複層構成であることが好ましい。したがって、光学機能層を構成する層数を可能な限り少なくしつつ、光学機能層40の比率RRが0.763未満であることを容易に実現する観点から、位相差層は、上記の実施形態のように1/4λ位相差層41と1/2λ位相差層42とから構成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1…画像表示装置
10…画像表示部
20…積層構造体
30…タッチセンサ
31…基材
32…透明電極層
33…カバー
40…光学機能層
41…1/4λ位相差層
42…1/2λ位相差層
43…直線偏光層
321…第1電極
322…第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6