(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618554
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】漸進的厚みを有するセクター
(51)【国際特許分類】
B01D 33/21 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
B01D33/26
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-567350(P2017-567350)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公表番号】特表2018-524164(P2018-524164A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】FR2015051856
(87)【国際公開番号】WO2017005989
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】510066307
【氏名又は名称】ガウドフリン
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】ガウドフリン ギュイ
【審査官】
小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−10913(JP,U)
【文献】
特開昭59−186615(JP,A)
【文献】
国際公開第87/004640(WO,A1)
【文献】
特表平8−511465(JP,A)
【文献】
米国特許第5647982(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0000887(US,A1)
【文献】
特開昭63−219691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/21−33/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転フィルターのフィルターディスク用のフィルターセクターであって、
−構造要素(1)であって、リブの付いた内側のドレンサポート(2)と、前記ドレンサポート(2)を囲むフレーム(4)と、で構成され、前記構造要素には接続管(10)が備わっている、構造要素(1)と、
−前記構造要素(1)を覆う濾過織物(3)と、
を含み、
前記構造要素(1)は、前記接続管(10)に向かって漸進的に増加する厚みを有し、前記ドレンサポート(2)は、単一の金属板(20)で構成され、チャネル(22)は平行であり、前記ドレンサポート(2)は、チャネルの壁に位置づけられる整列した穴(21)によって穴をあけられ、その直径は、セクターの厚みと共に増加することを特徴とする、フィルターセクター。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルターセクターであって、前記フレーム(4)は、スタンピングによって作られる2つのシェル(40,41)のみで構成されることを特徴とする、フィルターセクター。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルターセクターであって、前記フレームの前記2つのシェル(40,41)は、漸進的長さの側部(43a)と共に“U”の形の外形を有することを特徴とする、フィルターセクター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルターセクターであって、前記ドレンサポート(2)は、“U”の形のチャネル(22)を有することを特徴とする、フィルターセクター。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルターセクターであって、前記ドレンサポート(2)は、“V”の形のチャネル(22)を有することを特徴とする、フィルターセクター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルターセクターが装備されている回転フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターディスク用セクターに関し、具体的には、真空下または圧力下での液体−固体分離の工業設備で使用される、少なくとも1つのディスクを含む、回転式フィルターのディスクを構成するために、同じ種類のセクターと組み合わせられるように設計されたセクターの形の構造要素に関する。
【0002】
セクターは、濾過織物で覆われる構造要素で一般に構成される。構造要素は、一方では、濾過織物を支え、濾過液の流れを保証する、剛性内側ドレンサポートを含み、他方では、ドレンサポートを画定し、濾液の回収もセクターの回転も保証するシャフトへの接続用の管が備わっている、フレームを含む。ドレンサポートの厚みは、一般に一定である。
【0003】
知られている実施形態は、特に、唯一の起伏のある金属板を使用し、径方向の起伏が、一定の深さのチャネルを構成し、一定の深さのチャネルは、ドレンサポートの内容積を画定し、液体の流れを保証する。
【0004】
特許文献1では、変化する厚みのセクターを実現することによって、この技術状態を改善することになっている。
【0005】
より正確には、それぞれのセクターのドレンサポートは、外縁と言われる、ディスクの中心から最も遠く離れたその縁から、シャフトへの接続用のその管の口まで、増加していく厚みを呈する。
【0006】
この特徴の究極目的は、回転シャフトへの接続用の管の口で十分な通路の断面を保証するために、および従って液相の排水量を最適化するために、その半径に沿ってセクターの厚みを漸進的に増加させることである。
【0007】
この文献では、この目的は、セクターの内部区画を画定する2つの面がパネル(例えば、起伏のある金属板)で構成される、実施形態によって達成され、そのパネルは、求められる厚みの変化を得るために、互いに対して傾けて取り付けられ、ブレースによって保持される。
【0008】
この種の変化する厚みのセクターは、濾過プロセスの性能および収率を改善するが、それは、濾過織物の支え用の金属板から成る2つのパネルを備えるために、非常に重いままである。
【0009】
この種のセクターでは、その重さの理由で、維持、および、特にディスクでの交換の段階は、難しくて手間のかかる作業であり、それは、設備の制約を生じさせ、少なくとも2人のオペレーターの存在を必要とする強化された安全対策を取ることを生じさせる。
【0010】
このセクターの重さは、その大きさを制限し、従ってそれが置かれるフィルターの大きさも制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2567039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、これらの技術的問題を、セクターの構造を、その厚みの変化に関係づけられる水力の利点を維持しながら、簡略化するおよび軽くすることができるようにする解決策を提示することによって、十分におよび効果的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、発明に従って、以下を備える回転フィルターのフィルターディスク用のフィルターセクターによって、達成される:
−構造要素であって、リブの付いた内側のドレンサポートと、接続管が備わっているドレンサポートを囲むフレームと、で構成される構造要素と、
−構造要素を覆う濾過織物と、を含み、
構造要素は、接続管に向かって漸進的に増加する厚みを有し、ドレンサポートは、単一の金属板で構成されることを特徴とする。ドレンサポートは、チャネルが交互になっている、リブの付いた単一の金属板で構成され、その深さは、その管の口に近づくにつれて増加する。
【0014】
回転ディスクでフィルターを使用する液体−固体分離プロセスの枠組みでの発明の使用は、濾液の排出流量を最適化しながら、およびそれによってプロセスの収率を改善しながら、フィルターのセクターを軽くすることができるようにする。さらに、セクターの重さの減少によって、維持作業が、単純および容易になる。また、セクターの薄い外形は、それにフレキシビリティを与え、荷重下でのセクターの破砕のおそれを減らす。
【0015】
有利には、ドレンサポートは、整列した穴によって穴があけられ、その直径は、セクターの厚みと同じく増加する。これらの穿孔は、セクターでの液体の流れを促進し、チャネルの壁に位置づけられる。液体、または濾過液の流量は、接続管に近づくにつれて増加し、同じ方向の穴の直径の増加は、この流れを改善する。
【0016】
有利には、フレームは、スタンピングによって2つのシェルのみで構成される。ドレンサポートを構成するリブの付いた金属板の周囲は、前記の周辺フレームで覆われる。
【0017】
有利には、フレームの2つのシェルは、漸進的長さの側部と共に“U”の形の外形を有する。フレームの“U”の形の断面の側部の高さは、リブの付いた金属板のチャネルの深さのように、外縁から管の口に向かって増加する。好ましくは、フレームは、リブの付いた金属板を閉じ込めながら、セクターの中心軸に従って固定される同一の2つのシェルで構成される。フレームの横の2つのシェルは、リブの付いた金属板の両側に配置された少なくとも2つの横補強材によって、互いに接続される。
【0018】
フレームの“U”の形の外形は、コアを構成し、その幅は、従ってセクターの厚みと同じく増加する。外縁から口の方へのフレームの“U”の形の断面のコアの幅の増加は、フレームが最も応力を受ける箇所で補強することができるようにする。
【0019】
第1変形によると、ドレンサポートは、“U”の形のチャネルを有する。
【0020】
第2変形によると、ドレンサポートは、“V”の形のチャネルを有する。この場合、起伏の頂部は、リブの付いた金属板の両面で同じ曲率半径を有する。好ましくは、この変形によると、起伏のピッチは、10〜20mmに含まれる。
【0021】
第1実施形態によると、ドレンサポートのチャネルは、放射状である。この実施形態は、小さい直径(直径で4m未満)のフィルターディスクについて有利である。全てのチャネルが、セクターの口の方に直接濾液を送るからである。この場合、チャネルの壁に穴をあける必要はない。
【0022】
第2実施形態によると、ドレンサポートのチャネルは、平行である。この第2実施形態は、大きい直径(直径で4mを上回る)のフィルターディスクについて第1のものよりも適合する。直径で4mを超えると、管の口からセクターの外部に向かって増加する放射状チャネルのピッチは、濾過織物を正確に支えるには大きすぎるからである。
【0023】
発明は、先の特徴の少なくとも1つを呈するフィルターセクターが装備されている回転フィルターにも関する。
【0024】
他の利点は、例として提供される添付図面によって示される、以下の例を読むことで当業者にさらに明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】発明によるセクターのフレームの透視図を表す。
【
図5】発明のセクターのドレンサポートの透視図である。
【
図6】スタンピング前の
図4のフレームのシェルの1つの図である。
【
図7】その変形前のドレンサポートの金属板の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
説明の続きでは、「内部」は、フィルターの軸の近くに配置されるセクターの側(すなわち接続管の側)を示し、「外部」は、前記の軸の反対側である。
【0027】
図1に表されるセクターは、同一の他のセクターと関連付けられるように設計され、同一の他のセクターは、濾過液の排水を保証するフィルターの回転駆動および支持シャフト(図示せず)に全て接続される。
【0028】
それぞれのセクターは、構造要素1を含み、構造要素1は、リブの付いた剛性のドレンサポート2と、ドレンサポート2を取り囲み、接続管が備わっている、フレーム4と、で構成される。構造要素1は、濾過織物3(
図2で断面のみで表される)の支えおよび台の役目を果たす。ドレンサポート2に支えられる濾過織物3は、液体−固体分離のサイクルを実施する時の濾過液の流れのためのフィルターセクターの内容積30を画定する。
【0029】
リブの付いた金属板で構成されるドレンサポート2の周囲は、“U”の形の横断面40aの周辺フレーム4で覆われ、それは、ドレンサポート2の剛性化および保持を保証する。
【0030】
フレーム4は、ウイング42が付いた左右対称の2つのシェル40および41で構成され、それは、補強材を構成し、互いに溶接される。それぞれのシェル40または41は、
図6による切り抜かれた平らな金属板から作られ、それから“U”の形を作るためにプレスされ、それから溶接される。
図6に示されるシェル40は、コア43および4つのウイング42を含む。シェル40および41は、多かれ少なかれ4つのウイングを含み得る。長さIのシェル40および41の端44は、フレーム4の端を構成するためにプレスの後で折り曲げられる。
【0031】
フレーム4の2つのシェル40および41は、セクターの変形のおそれを回避するために横断補強材を構成する、ウイング42によって、およびフレーム4の折り曲げられた縁44によって、接続される。
【0032】
フレーム4のそれぞれのシェル40または41のコア43の幅は、ドレンサポート2に沿ってチャネル22の深さhの変化に従うために、フレーム4の横縁で、増加する。コア43が折り曲げられると、それは、2つの側部43aと共に“U”の形を呈する。
【0033】
フレーム4の“U”の形の断面の側部43aの高さHも、セクターの管10の口に径方向に近づくにつれて、フレームの横縁で増加する。この高さHは、例えば15〜45mmの間で変わることができる。
【0034】
好ましくは、フレーム4は、同一の、平らな金属板をプレスすることによって得られる、2つのシェルで構成され、それは、例えば溶接によって、セクターの中心軸に従って固定され、ドレンサポート2を閉じ込める。
【0035】
セクターの重さを削減し、濾過液の流れを改善するするために、ドレンサポート2は、チャネルまたは溝22が交互になっている、リブの付いた単一の金属板20で構成され、その深さhは、図に表されるように、管10の口に近づくにつれて増加する。管10の口での深さh0は、端11での深さh1よりも大きい。
【0036】
セクターで管10の口から端11まで延びるこれらのチャネル22の並列は、濾過液の流れのためのドレンサポート2を全体的に構成する。
【0037】
チャネル22の深さは、管の口に近づくにつれて増加する。チャネル22を構成する起伏の頂部23は、濾過織物3の支えを局部的に保証する。
【0038】
1.5〜2.5mに含まれる長さのセクターに関して、ドレンサポート2のチャネル22の深さhは、例えば5mm〜35mmで変わることができる。
【0039】
図によって示される実施形態では、チャネル22は、ほぼ“V”の形の断面の一連の平行な起伏を構成し、そのそれぞれの頂部23は、2〜3mmに含まれる曲率半径の丸い外形を有する。
【0040】
起伏のピッチ(すなわち、連続する2つの頂部23を隔てる距離)は、10〜20mmに含まれ、この場合ドレンサポート2の長さにわたって変わらないままである。
【0041】
しかしながら、表されていない実施形態では、ドレンサポート2の起伏が、セクターの外縁とその口との間で変化するピッチを有し、それらが従って必ずしも平行でないことが、可能であり、例えば放射状であり得る。
【0042】
チャネル22は、鋼鉄の平らな金属板の変形および/またはスタンピングによって作られ、その厚さは、0.5〜1.5mmに含まれる。
【0043】
ドレンサポート2の実施形態は、平行であるまたは平行でない、漸進的高さのチャネル22を構成する起伏のある金属板を得るように、平らな金属板20を折り曲げることおよび穴をあけることで構成され、その壁24は、穴21を備えている。上述の穴の直径は、金属板20の一方の縁から他方までその長さに沿って増加することが、気づかれる。最後に、穴21は、濾液の流れを容易にするように、チャネル22の壁24に配置される。
【0044】
ステップ1は、穴21のラインおよび折り曲げの母線201のトレースで構成される。このトレースは、一方では、チャネル22の壁24の中央への穴21の位置決めを保証しなければならず、他方では、起伏の規則正しさを保証しなければならない。
【0045】
チャネル22の漸進的深さを考慮に入れて、理論的縮閉線は、金属板20の長さにわたって一方の縁から他方まで一定でないクリープ係数によって修正される。
【0046】
材料、厚みおよび/または熱処理に応じて変わるクリープ係数は、一連の成形試験によって調整される。
【0047】
ステップ2は、例えばレーザーまたは押し抜き機によって、金属板20を切り抜くことおよび金属板20に穴をあけることで構成される。このステップで、ガイドタング200は、折り曲げの母線201の端で切り取られもする。
【0048】
ステップ3は、例えば押し抜き機および型を備えたスタンピング工具によって、起伏を形成することで構成される。
【0049】
押し抜き機の高さおよび型の深さは、増加していく厚みのチャネルを形成するために、工具の長さにわたって一方の端から他方まで漸進的に増加する。
【0050】
そのことにより、金属板20との押し抜き機の接触は、工具の一方の端から他方まで漸進的に行われる。従って、チャネル22の形成の最初から最後まで金属板を完全にガイドする必要がある。それぞれの折り曲げの母線201の端に設けられたガイドタング200は、工具の型に刻まれた溝で垂直に滑り、従って金属板20のあらゆる横移動を妨げる。チャネル22は、従って、起伏の規則正しさを保証しながら、次々に形成される。
【0051】
液体−固体分離のサイクルをこれから次のように説明する:
【0052】
取り囲む織物によって画定されるフィルターセクターの内容積30は、濾過される溶液にセクターが浸されるときに、濾過段階中、低圧に保たれる。
【0053】
この段階の間、濾過織物3は、ドレンサポート2に張りつき、液体は、接続管10に向かって、セクター30の内容積の方へ濾過織物3を介して吸い込まれ、それから、フィルターの軸に位置するコレクタシャフトによって排水される一方で、固体物質は、「ケーキング」の形で濾過織物3の外面に対して押し当てられるままである。
【0054】
ディスクの回転によって、濾過−吸引の段階の後に、濾過織物3のクリーニング−ブローの段階が続き、その間、フィルターセクターの内容積30は、圧縮空気の圧力がかけられ、それは、濾過織物3を通り過ぎることによってケーキングをはがす。
【0055】
濾過流量および収率は、セクターの内容積30の全体的な減少によって最適化され、それは、コレクタシャフトへのその接続管10の口で十分な断面を維持するが、セクターの外縁11でその厚みを減らすことによっている。
【0056】
フィルターセクターの内容積30の厚みは、従って、セクターの径方向長さ全体的にわたって続けて変わり、外縁11から管10の口まで増加する。
【0057】
ドレンサポートの外形および従ってセクターは、このようにブレードまたはウイングのように先細になる。