(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第1測定子を前記第1面部分に当接させるための前記第1移動機構の制御処理と、前記第2測定子を前記第2面部分に当接させるための前記第2移動機構
の制御処理とを、前記第1面部分の直交方向における前記第1面部分と前記第2面部分と間の幅の中心を予め定められた位置に合わせた状態で実行する、請求項2または3に記載の測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークの内側の幅を測定する方法の一例として、測定装置は、各測定子を鉛直方向(第1方向)に駆動することでワークの内部に一対の測定子を挿入し、その後、各測定子を外側方向(第2方向)に移動することで各測定子をワークの内面に当接させる。当該測定装置は、各測定子がワークに当接した位置からワークの内面の幅を測定する。
【0006】
このような測定装置においては、第1方向に各測定子を移動するための機構と、第2方向に各測定子を移動するための機構とが必要となる。その結果、測定装置の構造が複雑になり、コストも高くなってしまう。
【0007】
本開示は上述のような問題点を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、ワークの内側の幅を測定するための機構をより簡素化した測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一例では、ワークの内側の第1面部分と第2面部分との間の幅を測定するための測定装置は、第1測定部を含む1つ以上の測定部を備える。上記第1測定部は、上記第1面部分に当接され得る第1測定子と、上記第1測定子の位置に相関する位置指標を検知するための第1センサと、上記第1面部分の直交方向に対して90度未満の所定角度傾いた第1方向に上記第1測定子を移動し、上記第1測定子を上記第1面部分に当接させるための第1移動機構とを含む。上記測定装置は、上記測定装置を制御するための制御装置をさらに備える。上記制御装置は、上記幅の中心を予め定められた位置に合わせた状態で上記第1移動機構を制御することで上記第1測定子を上記第1方向に移動し、上記第1測定子が上記第1面部分に当接している間に上記第1センサによって検知される上記第1測定子の位置指標に基づいて、上記幅を計測する。
【0009】
本開示の一例では、ワークの内側の第1面部分と第2面部分との間の幅を測定するための測定装置は、第1測定部と第2測定部とを含む2つ以上の測定部を備える。上記第1測定部は、上記第1面部分に当接され得る第1測定子と、上記第1測定子の位置に相関する位置指標を検知するための第1センサと、上記第1面部分の直交方向に対して90度未満の所定角度傾いた第1方向に上記第1測定子を移動し、上記第1測定子を上記第1面部分に当接させるための第1移動機構とを含む。上記第2測定部は、上記第2面部分に当接され得る第2測定子と、上記第2測定子の位置に相関する位置指標を検知するための第2センサと、上記第2面部分の直交方向に対して90度未満の所定角度傾いた第2方向に上記第2測定子を移動し、上記第2測定子を上記第2面部分に当接させるための第2移動機構とを含む。上記測定装置は、上記測定装置を制御するための制御装置をさらに備える。上記制御装置は、上記第1移動機構を制御することで上記第1測定子を上記第1方向に移動するとともに、上記第2移動機構を制御することで上記第2測定子を上記第2方向に移動し、上記第1測定子が上記第1面部分に当接している間に上記第1センサによって検知される上記第1測定子の位置指標と、上記第2測定子が上記第2面部分に当接している間に上記第2センサによって検知される上記第2測定子の位置指標とに基づいて、上記幅を計測する。
【0010】
本開示の一例、上記第1面部分の直交方向と上記第1方向との間の角度は、上記第2面部分の直交方向と上記第2方向との間の角度と等しい。
【0011】
本開示の一例、上記第1面部分と上記第2面部分との間の上記幅は、上記ワークに形成されている溝の幅である。
【0012】
本開示の一例、上記制御装置は、上記第1測定子を上記第1面部分に当接させるための上記第1移動機構の制御処理と、上記第2測定子を上記第2面部分に当接させるための上記第2移動機構の制御処理とを、上記幅の中心を予め定められた位置に合わせた状態で実行する。
【0013】
本開示の一例、上記第1面部分と上記第2面部分との間の上記幅は、上記ワークの内径である。
【0014】
本開示の一例、上記第1測定部は、第1軸部と、第2軸部とをさらに含み備える。上記第2軸部の一端は、上記第1軸部に繋がっている。上記第2軸部の他端は、上記第1測定子に繋がっている。上記第1軸部は、上記第1方向に沿って移動するように構成されている。上記第1面部分の直交方向と上記第2軸部の軸方向との間の角度は、上記第1面部分の直交方向と上記第1軸部の軸方向との間の角度よりも大きい。
【0015】
本開示の一例、上記制御装置は、上記第1測定子の移動を開始してから予め定められた時間が経過したタイミングにおいて、上記第1測定子が上記第1面部分に当接していると判断し、上記タイミングにおいて上記第1センサから得られた上記第1測定子の位置指標を上記幅の計測に用いる。
【0016】
本開示の一例、上記制御装置は、上記第1測定子の移動中に上記第1センサによって順次検知される上記第1測定子の位置指標の変化量が所定値を下回ったタイミングにおいて、上記第1測定子が上記第1面部分に当接していると判断し、上記タイミングにおいて上記第1センサから得られた上記第1測定子の位置指標を上記幅の計測に用いる。
【0017】
本開示の一例では、上記測定装置を備える工作機械が提供される。上記第1面部分および上記第2面部分を上記ワークに形成するための工具を備える。
【発明の効果】
【0018】
ある局面において、ワークの内側の幅を測定するための機構をより簡素化することができる。
【0019】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0022】
<A.測定装置100の概要>
まず、
図1を参照して、測定装置100の構成について説明する。
図1は、測定装置100の構成の一例を示す図である。
【0023】
測定装置100は、ワークの内側に形成された空間の幅(以下、「ワークの内側の幅」ともいう。)を測定するための装置である。ここでいう「ワークの内側の幅」とは、ワークの内面における第1面部分と第2面部分との間の空間の幅を意味する。第1面部分および第2面部分は、それぞれ、ワークの内面の一部であり、互いに対向している。
【0024】
以下の説明では、ワークの内径を測定する測定装置100について説明するが、測定装置100による測定対象の幅は、ワークの内径に限定されず、ワークに形成された溝の幅等、ワークの内側に形成された任意の幅を含む。
【0025】
図1に示されるように、測定装置100は、筐体20と、テーブル30と、測定部50A,50Bとを含む。
【0026】
以下では、説明の便宜のために、測定装置100の奥行き方向をY軸方向と定義し、鉛直方向をZ方向と定義し、Y軸方向およびZ軸方向に直交する方向をX方向と定義する。
【0027】
テーブル30は、少なくともY方向に駆動可能に構成される。好ましくは、テーブル30は、Y方向だけでなく、X方向、Z方向、Z方向を軸とする回転方向にも駆動可能に構成される。テーブル30には、ワークWが載置され得る。測定装置100は、ワーク内径の測定時において、テーブル30を筐体20内に移動し、予め定められた基準位置にワークWを移動する。
【0028】
筐体20の一方の側面には測定部50Aが取り付けられており、筐体20の他方の側面には測定部50Bが取り付けられている。以下では、測定部50A,50Bを総称して、測定部50ともいう。
【0029】
測定部50は、伸縮可能に構成される。測定部50は、予め定められた基準位置に設置されたワークWの測定部位に向かって伸びる。
【0030】
より具体的には、測定部50Aの先端には測定子51Aが設けられている。測定部50Aは、ワークWの内面の第1面部分に直交する方向に対して90度未満の所定角度傾いた方向に伸び、測定子51Aを当該第1面部分に当接させる。当該所定角度は、たとえば、30度〜60度である。典型的には、当該所定角度は、45度である。
【0031】
同様に、測定部50Bの先端には測定子51Bが設けられている。測定部50Bは、ワークWの内面の第2面部分に直交する方向に対して90度未満の所定角度傾いた方向に伸び、測定子51Bを当該第2面部分に当接させる。当該所定角度は、たとえば、30度〜60度である。典型的には、当該所定角度は、45度である。
【0032】
測定装置100は、測定子51AとワークWと当接位置と、測定子51BとワークWとの当接位置とに基づいて、ワーク内径を測定する。ワーク内径の測定方法の詳細については後述する。
【0033】
<B.測定部50の構成>
図2および
図3を参照して、上述の測定部50について説明する。
図2は、測定部50の外観の一例を示す図である。
図3は、測定部50の内部構造の一例を示す図である。
【0034】
測定部50は、測定子51と、軸部52と、筒部53と、空気挿入口59とを含む。筒部53の内部には、ダンパー54と、バネ55と、ピストン56と、磁気スケール57と、磁気センサ58とが設けられている。
【0035】
測定子51は、軸部52の先端に取り付けられている。測定子51は、ワークWに向けて突出する凸面(球面)を有する。
【0036】
軸部52の周囲を囲うように、ダンパー54と、バネ55と、ピストン56とが取り付けられている。空気挿入口59には空気が送られる。これにより、筒部53の内圧が高まり、ピストン56が押される。その結果、バネ55およびダンパー54を介して、力が加えられ、軸部52がその軸方向に移動する。
【0037】
磁気スケール57は、磁気センサ58と対向して配置されている。磁気スケール57には、複数の磁石が配置されている。第1の磁石のN極は、第2の磁石のN極に対向している。第2の磁石のS極は、第3の磁石のS極に対向している。このように、複数の磁石は、磁気スケール57上において同じ極が対向するように配置されている。
【0038】
磁気スケール57は、筒部53の内部に固定されている。一方で、磁気センサ58は、軸部52に取り付けられており、軸部52と連動するように構成されている。すなわち、磁気スケール57と磁気センサ58との位置関係は、軸部52の移動に伴って変化する。磁気センサ58は、軸部52の位置に伴って変化する磁気スケール57の磁界の変化を検知する。
【0039】
より具体的には、磁気センサ58は、互いに位相が異なるA相,B相の2つの信号を検知する。磁気スケール57上の複数の磁石は、A相の信号とB相の信号との位相差が磁気スケール57と磁気センサ58との位置関係に応じて変化するように配置されている。典型的には、測定子51が磁気センサ58から離れる方向に移動するほど、A相の信号とB相の信号との位相差は大きくなる。あるいは、測定子51が磁気センサ58から離れる方向に移動するほど、A相の信号とB相の信号との位相差は小さくなる。
【0040】
磁気センサ58は、A相の信号とB相の信号との位相差に基づいて、測定子51の位置に相関する位置指標を検知する。ここでいう「位置指標」とは、測定子51の位置を表わす概念である。当該位置指標は、測定子51の3次元座標値で表されてもよいし、予め定められた基準位置から測定子51の位置までの長さ(以下、「測定部50の長さ」ともいう。)で表されてもよい。測定装置100内における測定部50の取り付け位置や測定部50の伸縮方向が既知であれば、測定部50の長さから測定子51の位置が特定され得る。
【0041】
以下では、測定子51の位置指標として、測定部50の長さを用いて説明を行なうが、測定子51の位置指標は、測定部50の長さに限定されない。測定子51の位置指標は、測定部50の位置で表されてもよいし、その他の指標で表されてもよい。
【0042】
なお、上述では、磁気センサ58を例に挙げたが、測定子51の位置指標を検知するためのセンサは、磁気センサ58に限定されない。たとえば、磁気センサ58の代わりに、光学センサが採用されてもよい。あるいは、磁気センサ58の代わりに、超音波センサが採用されてもよい。
【0043】
また、上述では、ダンパー54と、バネ55と、ピストン56とで構成される空気圧による移動機構(第1,第2移動機構)で測定子51を駆動する例について説明を行なったが、測定子51の移動方式は、空気圧による移動方式に限定されない。たとえば、サーボモータなどのモーター駆動による移動機構が採用されてもよい。
【0044】
<C.ワーク内径の測定方法>
図4および
図5を参照して、測定部50によるワーク内径の測定方法について説明する。
図4は、ワーク内径の測定過程をZ方向から表わした図である。
図5は、ワーク内径の測定過程をY方向から表わしたワークWの断面図である。当該断面図は、
図4に示されるV−V線に沿う断面を表わす。
【0045】
図4および
図5に示されるように、ワーク内径の測定時において、測定部50Aは、ワークWの内側の面部分AR1に直交する方向に対して所定角度θ1(<90度)傾いた方向D1に測定子51Aを移動し、測定子51Aを面部分AR1に当接させる。
【0046】
同様に、ワーク内径の測定時において、測定部50Bは、ワークWの内側の面部分AR2に直交する方向に対して所定角度θ2(<90度)傾いた方向D2に測定子51Bを移動し、測定子51Bを面部分AR2に当接させる。典型的には、角度θ2は、角度θ1と等しい。すなわち、測定部50A,50Bは、鉛直方向に対して左右対称に配置される。
【0047】
測定装置100は、測定子51Aが面部分AR1に当接している間に測定部50Aの磁気センサ58によって検知される測定子51Aの位置指標と、測定子51Bが面部分AR2に当接している間に測定部50Bの磁気センサ58によって検知される測定子51Bの位置指標とに基づいて、ワーク内径Lを計測する。ワーク内径Lの計測方法の詳細については後述する。
【0048】
以上のように、測定子51AがワークWとの当接面に対して斜めに移動するように構成されることで、ワーク内径の計測が一方向の移動機構だけで実現され得る。すなわち、ワーク内に測定子51Aを移動するための移動機構と、測定子51Aをワーク内面に向けて移動するための移動機構との2つが測定装置100に設けられる必要がない。測定子51Bについても同様である。これにより、測定部50の機構をより簡素化することができる。結果として、測定部50を安価に製造することが可能になる。
【0049】
<D.測定装置100の機能構成>
図6を参照して、測定装置100の機能について説明する。
図6は、測定装置100の機能構成の一例を示す図である。
【0050】
図6に示されるように、測定装置100は、制御装置101を含む。制御装置101は、測定装置100内の各種機器を制御する。制御装置101は、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0051】
制御装置101は、機能構成として、移動制御部152と、検知部154A,154Bと、計測部156とを含む。以下では、これらの機能構成について順に説明する。
【0052】
(D1.移動制御部152)
移動制御部152は、ワーク内径の測定開始命令を受け付けたことに基づいて、測定部50Aおよび測定部50Bのそれぞれに移動指令を出力する。より具体的には、移動制御部152は、測定部50Aの測定子51Aを方向D1(
図4,
図5参照)に移動するための移動指令を測定部50Aに出力する。並行して、移動制御部152は、測定部50Bの測定子51Bを方向D2(
図4,
図5参照)に移動するための移動指令を測定部50Bに出力する。
【0053】
(D2.検知部154A)
検知部154Aは、測定部50A内の磁気センサ58による検知信号に基づいて、測定部50AがワークWに当接したときの測定部50Aの長さL1を検知する。
図6の例では、測定部50A内の磁気センサ58による検知信号が、長さL1(t)で表わされている。長さL1(t)は、時刻tにおける測定部50Aの長さを表わす。長さL1(t)は、測定部50A内の磁気センサ58によって周期的に検知され、検知部154Aに順次出力される。
【0054】
図7は、検知された長さL1(t)の一例をグラフで表わした図である。時刻T0は、移動制御部152が測定部50Aの移動を開始した時刻である。
【0055】
図7に示されるように、移動制御部152が測定部50Aを移動している間、長さL1(t)は増加していく。その後、測定部50AがワークWに接触し、測定部50Aの長さL1(t)が変化しなくなる。検知部154Aは、測定部50Aの測定子51Aの移動を開始してから予め定められた時間ΔTが経過したタイミングT1において得られた長さL1(T1)を、測定部50AがワークWに当接したときの測定部50Aの長さL1として検知する。
【0056】
時間ΔTは、測定部50AがワークWに当接するタイミングを含むように十分に長く設定される。時間ΔTは、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0057】
なお、測定部50Aの長さL1の検知方法は、
図7の例に限定されない。
図8は、検知された長さL1(t)の他の例をグラフで表わした図である。時刻T0は、移動制御部152が測定部50Aの移動を開始した時刻である。
【0058】
図8に示されるように、移動制御部152が測定部50Aを移動している間、長さL1(t)は増加していく。その後、測定部50AがワークWに接触し、測定部50Aの長さL1(t)が変化しなくなる。検知部154Aは、測定部50Aの長さL1(t)の変化量を周期的に算出し、当該変化量が所定値を下回ったタイミングT2において、測定部50Aの測定子51AがワークWの内面に当接したと判断する。すなわち、検知部154Aは、タイミングT2において得られた長さL1(T2)を、測定部50AがワークWに当接したときの測定部50Aの長さL1として検知する。
【0059】
(D3.検知部154B)
検知部154Bは、測定部50B内の磁気センサ58による検知信号に基づいて、測定部50BがワークWに当接したときの測定部50Bの長さL2を検知する。
図6の例では、測定部50B内の磁気センサ58による検知信号が、長さL2(t)で表わされている。長さL2(t)は、時刻tにおける測定部50Aの長さを表わす。長さL2(t)は、測定部50B内の磁気センサ58によって周期的に検知され、検知部154Bに順次出力される。
【0060】
検知部154Bによる長さL2の検知方法は、上述の検知部154Aによる長さL1の検知方法と同じである。そのため、検知部154Bによる長さL2の検知方法の説明については繰り返さない。
【0061】
(D4.計測部156)
図9および
図10を参照して、計測部156によるワーク内径の測定方法について説明する。
図9および
図10は、Z方向から表わしたワークWと、Y方向から表わしたワークWの断面とを示す図である。当該断面は、V−V線に沿う断面を表わす。
【0062】
まず、計測部156は、検知部154Aによって検知された測定部50Aの長さL1に基づいてワーク内径の一部である幅r1を計測する。より具体的には、計測部156は、検知部154Aによって検知された長さL1から基準の長さm1を差し引く。基準の長さm1は、測定部50の測定開始位置PA1から予め定められた基準位置PA2までの距離を表わす。基準位置PA2は、測定部50Aの測定子51Aと、測定部50Bの測定子51BとのX方向における座標が重なる点である。
【0063】
その後、計測部156は、下記式(1)に基づいて、ワーク内径の一部である幅r1を計測する。
【0064】
r1=(L1−m1)cosθ1・・・(1)
式(1)に示される角度θ1は、測定部50Aの測定子51Aの移動方向D1と、測定子51AによるワークWの当接面の直交方向D3との間の角度を表わす。
【0065】
同様に、計測部156は、検知部154Bによって検知された測定部50Bの長さL2に基づいてワーク内径の残りである幅r2を計測する。より具体的には、計測部156は、検知部154Bによって検知された長さL2から基準の長さm2を差し引く。基準の長さm2は、測定部50の測定開始位置PB1から予め定められた基準位置PB2までの距離を表わす。基準位置PB2は、測定部50Aの測定子51Aと、測定部50Bの測定子51BとのX方向における座標が重なる点である。すなわち、基準位置PB2の所定方向(たとえば、X方向)における座標値は、基準位置PA2の当該所定方向における座標値と重なる。
【0066】
その後、計測部156は、下記式(2)に基づいて、ワーク内径の残りである幅r2を計測する。
【0067】
r2=(L2−m2)cosθ2・・・(2)
式(2)に示される角度θ2は、測定部50Bの測定子51Bの移動方向D2と、測定子51BとワークWとの接触面の直交方向D4との間の角度を表わす。
【0068】
その後、計測部156は、下記式(3)に示されるように、式(1)に基づいて算出された幅r1と、式(2)に基づいて算出された幅r2とを加算し、当該加算結果をワーク内径Lとして計測する。
【0069】
L=r1+r2・・・(3)
なお、
図9および
図10の例では、測定装置100が2つの測定部50A,50Bで構成されている例について説明を行なったが、上述のように、測定装置100は、少なくとも1つの測定部50で構成されていればよい。測定装置100が1つの測定部50で構成されている場合、測定装置100は、ワーク内径の中心を予め定められた位置に合わせた状態でワーク内径の半径(上記幅r1に相当)を測定し、当該半径を2倍することでワーク内径を測定する。この場合、基準位置PA2は、ワーク内径の中心上の位置である。
【0070】
また、測定装置100が2つの測定部50A,50Bで構成されている場合であっても、測定装置100は、ワーク内径の中心を予め定められた位置に合わせた状態でワーク内径を測定してもよい。この場合、測定装置100の制御装置101は、測定部50Aの測定子51AをワークWの内面に当接させるための測定子51Aの移動制御処理と、測定部50Bの測定子51BをワークWの内面に当接させるための測定子51Bの移動制御処理とを、ワーク内径の中心を予め定められた位置に合わせた状態で実行する。測定部50Aによって計測される上記幅r1と、測定部50Bによって計測される上記幅r2とは、略同じになる。
【0071】
測定されたワーク内径Lは、様々な用途で用いられる。ある局面において、測定装置100は、測定したワーク内径Lが予め設定された許容範囲に含まれているか否かを判断する。測定装置100は、測定したワーク内径Lが予め設定された許容範囲に含まれていない場合には、ワークWが意図した通りに加工されていないものとして警告を出力する。
【0072】
他の局面において、測定装置100は、測定部50をワークWの内面に当接した状態でワークWを回転し、順次計測されるワーク内径Lに基づいて、ワークWの内面形状を表わすプロファイルを出力する。測定装置100は、計測対象のワークWのプロファイルと基準ワークのプロファイルとを比較し、当該比較結果に基づいて、計測対象のワークWが意図した通りに加工されているか否かを判断する。
【0073】
<E.測定装置100の装置構成>
図11を参照して、測定装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
図11は、測定装置100の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
【0074】
測定装置100は、測定部50と、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、表示インターフェイス105と、入力インターフェイス109と、サーボドライバ111A,111Bと、サーボモータ112A,112Bと、エンコーダ113A,113Bと、ボールねじ114A,114Bと、記憶装置120とを含む。
【0075】
制御装置101は、ワーク内径を測定するための測定プログラム122など各種プログラムを実行することで測定装置100の動作を制御する。制御装置101は、測定プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120からROM102に測定プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、測定プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0076】
通信インターフェイス104には、LANやアンテナなどが接続される。測定装置100は、通信インターフェイス104を介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、ワークWを加工する工作機械や、サーバーや、その他の通信端末などを含む。測定装置100は、当該通信端末から測定プログラム122をダウンロードできるように構成されてもよい。
【0077】
表示インターフェイス105は、ディスプレイ130などの表示機器と接続され、制御装置101などからの指令に従って、ディスプレイ130に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。ディスプレイ130は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、またはその他の表示機器である。
【0078】
入力インターフェイス109は、入力デバイス131に接続され得る。入力デバイス131は、たとえば、ディスプレイ130に設けられるタッチパネル、マウス、キーボード、またはユーザ操作を受け付けることが可能なその他の入力機器である。
【0079】
サーボドライバ111Aは、制御装置101から目標回転速度(または目標位置)の入力を逐次的に受け、サーボモータ112Aが目標回転速度で回転するようにサーボモータ112Aを制御する。より具体的には、サーボドライバ111Aは、エンコーダ113Aのフィードバック信号からサーボモータ112Aの実回転速度(または実位置)を算出し、当該実回転速度が目標回転速度よりも小さい場合にはサーボモータ112Aの回転速度を上げ、当該実回転速度が目標回転速度よりも大きい場合にはサーボモータ112Aの回転速度を下げる。このように、サーボドライバ111Aは、サーボモータ112Aの回転速度のフィードバックを逐次的に受けながらサーボモータ112Aの回転速度を目標回転速度に近付ける。サーボドライバ111Aは、ボールねじ114Aに接続されるテーブル30(
図1参照)をX軸方向に沿って移動し、テーブル30をX軸方向の任意の位置に移動する。
【0080】
同様のモータ制御により、サーボドライバ111Bは、ボールねじ114Bに接続されるテーブル30を駆動し、テーブル30をY軸方向の任意の位置に移動する。
【0081】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置120は、測定プログラム122、パラメータ124、幅情報126などを格納する。パラメータ124は、たとえば、角度θ1,θ2(
図5参照)と、測定開始位置PA1,PB1と、基準位置PA2,PB2とを含む。幅情報126には、測定されたワーク内径Lの履歴情報である。測定プログラム122、パラメータ124、および幅情報126の格納場所は、記憶装置120に限定されず、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュ領域など)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0082】
測定プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う測定プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、測定プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが測定プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で測定装置100が構成されてもよい。
【0083】
<F.測定部50の変形例1>
図12は、上述の測定部50の変形例を示す図である。
図12には、測定部50の変形例である測定部50Cが示されている。
【0084】
測定部50Cは、軸部61(第1軸部)および軸部62(第2軸部)をさらに含む。軸部62の一端は、軸部61に繋がっている。軸部62の他端は、測定子51に繋がっている。軸部61は、方向D1に沿って移動するように構成されている。測定子51によるワークWの当接面の直交方向D5と軸部62の軸方向との間の角度θ1は、直交方向D5と軸部61の軸方向との間の角度θ2よりも大きい。
【0085】
角度θ1が角度θ2よりも大きいため、測定装置100は、測定子51をワークWのより奥に挿入することができ、より深い部分の幅を計測することができる。
【0086】
<G.測定部50の変形例2>
上述の例では、測定部50の軸部52(
図3参照)が固定されている前提で説明を行なったが、測定部50の軸部52は、任意の方向に駆動可能に構成されてもよい。これにより、測定装置100は、ワークWの形状や測定位置に合わせて軸部52の角度を調整することができ、様々な形状のワークWの幅を計測することができる。
【0087】
<H.測定装置100の変形例>
上述の測定装置100は、ワークWを加工するための工作機械に搭載されてもよい。当該工作機械は、マシニングセンタであってもよいし、旋盤であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。
【0088】
工作機械には、ワークWを加工するための種々の工具が搭載されている。当該工具がワークWを加工することで、ワークWの内側に第1面部分と第2面部分とが形成される。工作機械によって加工されたワークWは、測定装置100に搬送される。測定装置100は、工作機械によって形成されたワークWの第1面部分と当該第2面部分との間の幅を計測する。
【0089】
このように、測定装置100と工作機械とが一体的に構成されることで、ワークWを加工しながらワーク内径を測定できるなど、ワークWの加工時における利便性が改善される。
【0090】
<I.まとめ>
以上のようにして、測定部50の移動機構は、ワークWとの接触面の直交方向に対して所定角度(<90度)傾いた方向に測定子51を移動する。このように、測定子51がワークWとの当接面に対して斜めに移動するように構成されることで、ワーク内径の計測が一方向の移動機構だけで実現され得る。すなわち、鉛直方向に測定子51を移動する移動機構と、ワークWの当接面に向けて測定子51を移動する移動機構との2つが測定装置100に設けられる必要がない。これにより、測定部50の機構をより簡素化することができる。結果として、測定部50を安価に製造することが可能になる。
【0091】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】ワークの内側の第1面部分と第2面部分との間の幅を測定するための測定装置は、第1測定部を含む1つ以上の測定部を備える。第1測定部は、第1面部分に当接され得る第1測定子と、第1測定子の位置に相関する位置指標を検知するための第1センサと、第1面部分の直交方向に対して90度未満の所定角度傾いた第1方向に第1測定子を移動し、第1測定子を第1面部分に当接させるための第1移動機構とを含む。測定装置は、測定装置を制御するための制御装置をさらに備える。制御装置は、幅の中心を予め定められた位置に合わせた状態で第1移動機構を制御することで第1測定子を第1方向に移動し、第1測定子が第1面部分に当接している間に第1センサによって検知される第1測定子の位置指標に基づいて、幅を計測する。