特許第6618609号(P6618609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618609
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   F25B1/00 361Q
   F25B1/00 371F
   F25B1/00 371E
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-506645(P2018-506645)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2016058886
(87)【国際公開番号】WO2017163296
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐多 裕士
(72)【発明者】
【氏名】有井 悠介
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−234784(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094283(WO,A1)
【文献】 特開2011−237093(JP,A)
【文献】 特開2006−207983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 13/00
F24F 11/00 〜 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が配管で接続され、冷媒を循環させる冷媒回路と、
前記凝縮器に空気を供給する送風機と、
前記空気の温度を検知する温度センサと、
前記空気の温度に応じて、前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限を変化させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限値を設定する上限値設定部と、
前記上限値以下の範囲で前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を制御する運転制御部と、を備え、
前記上限値設定部は、
前記空気の温度が予め設定された温度以下の場合、前記上限値を低下させ、前記空気の温度が低いほど、前記上限値の低下量を大きくする
冷凍装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、
前記冷媒回路の熱負荷に応じて、前記上限値以下の範囲で前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を変更し、
前記上限値設定部は、
前記圧縮機及び前記送風機の少なくとも一方の運転容量が、前記上限値である状態が予め設定した時間経過した場合、前記上限値を上昇させる
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
記上限値設定部は、
前記上限値を上昇させる際、低下させた前記上限値を低下させる前の前記上限値に上昇させる
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記上限値設定部は、
前記上限値を低下させた後、
前記空気の温度が予め設定された温度を超えた場合、前記上限値を上昇させる
請求項1〜3の何れか一項に記載の冷凍装置。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が配管で接続され、冷媒を循環させる冷媒回路と、
前記凝縮器に空気を供給する送風機と、
前記空気の温度を検知する温度センサと、
前記空気の温度に応じて、前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限を変化させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限値を設定する上限値設定部と、
前記上限値以下の範囲で前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を制御する運転制御部と、
前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を変更する際の時間間隔を設定する変更サイクル設定部と、を備え、
前記上限値設定部は、
前記空気の温度が予め設定された温度以下の場合、前記上限値を低下させ、
前記運転制御部は、
前記時間間隔の経過ごとに、前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を変更し、
前記変更サイクル設定部は、
前記空気の温度が予め設定された温度以下の場合、前記時間間隔を長くし、
前記圧縮機及び前記送風機の少なくとも一方の運転容量が、前記上限値である状態が予め設定した時間経過した場合、前記時間間隔を短くする
冷凍装置。
【請求項6】
前記変更サイクル設定部は、
前記時間間隔を長くした後、
前記空気の温度が予め設定された温度を超えた場合、前記時間間隔を短くする
請求項5に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮器に空気を送風する送風機を備えた冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍装置は、外気温度、凝縮温度あるいは凝縮圧力を検出するセンサと、騒音センサを用いて周囲の騒音レベルに応じて送風機の運転設定値にディファレンシャルを持たせたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このような冷凍装置では、周囲の騒音レベルに応じて送風機の運転を制御し送風機の騒音を下げることを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−78859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷凍装置は、騒音センサが検知する周囲の騒音レベルに応じて送風機の運転設定値にディファレンシャルを持たせるため、冷凍装置自体の騒音を騒音センサが検知してしまい、送風機の運転を制御できないという問題点があった。また、冷凍装置の騒音は圧縮機の運転音の影響もあるため、送風機の運転設定にディファレンシャルを持たせるだけでは騒音を低減できないという問題点もあった。また、周囲の騒音レベルに応じて送風機の運転を制御すると、運転効率が悪くなると共に、冷却能力が不足するという問題点もあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、送風機及び圧縮機の運転により発生する音を低下できると共に、冷却能力が不足しない運転を行うことができる冷凍装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が配管で接続され、冷媒を循環させる冷媒回路と、前記凝縮器に空気を供給する送風機と、前記空気の温度を検知する温度センサと、前記空気の温度に応じて、前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限を変化させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記圧縮機及び前記送風機の運転容量の上限値を設定する上限値設定部と、前記上限値以下の範囲で前記圧縮機及び前記送風機の運転容量を制御する運転制御部と、を備え、前記上限値設定部は、前記空気の温度が予め設定された温度以下の場合、前記上限値を低下させ、前記空気の温度が低いほど、前記上限値の低下量を大きくするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、凝縮器に供給される空気の温度に応じて、圧縮機及び送風機の運転容量の上限を変化させる。このため、送風機及び圧縮機の運転により発生する音を低下できると共に、冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1における冷凍装置の構成図である。
図2】本発明の実施の形態1における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における冷凍装置の動作状態を示すモリエル線図である。
図4】本発明の実施の形態1における冷凍装置の外気温度と冷却能力との関係を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態1における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態2における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図8】本発明の実施の形態2における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態2における冷凍装置の外気温度と運転容量の制限値の関係を示す図である。
図11】本発明の実施の形態3における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
(構成)
図1は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の構成図である。
図1に示すように、冷凍装置100は、冷媒回路10、送風機20、温度センサ30、及び制御装置40を備える。
冷媒回路10は、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁4、及び蒸発器5が配管で接続され、冷媒を循環させる。
圧縮機1は、冷媒回路10を流れる冷媒を吸入し、その冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出する。この圧縮機1は、モータ等により駆動され、例えばインバータ回路等により回転数を制御し、冷媒の吐出量(運転容量)を調整できるタイプの圧縮機で構成する。
凝縮器2は、例えば伝熱管と多数のフィンにより構成されたフィンアンドチューブ型熱交換器により構成される。凝縮器2は、冷媒回路10を流れる冷媒と空気との間で熱交換を行い、冷媒を液状の冷媒にする。本実施の形態1では、外気と冷媒との熱交換を行う。
【0010】
膨張弁4は、冷媒回路10を流れる冷媒を減圧して膨張させるものである。例えば電子式膨張弁等の流量制御手段、毛細管(キャピラリ)、感温式膨張弁等の冷媒流量調節手段等の任意の減圧装置、絞り装置等で構成する。
蒸発器5は、例えば伝熱管と多数のフィンにより構成されたフィンアンドチューブ型熱交換器により構成される。蒸発器5は、例えば冷却対象との熱交換により冷媒回路10を流れる冷媒を蒸発させてガス状の冷媒にする。冷却対象は、冷媒との熱交換により、直接又は間接に冷却されることになる。本実施の形態1では、冷却対象は、冷蔵庫内の空気である。例えば、蒸発器5は、冷却対象が入れられる冷蔵庫の内部に配置される。また、凝縮器2は、冷蔵庫の外部、例えば屋外に配置される。
【0011】
送風機20は、凝縮器2に空気(外気)を供給し、凝縮器2の熱交換を促す。この送風機20は、ファンモータ等により駆動され、例えばインバータ回路等により回転数を制御し、風量(運転容量)を調整できるタイプの送風機で構成する。
【0012】
温度センサ30は、凝縮器2の内部冷媒と熱交換される空気(外気)の温度を検出する。温度センサ30は、例えばサーミスタによって構成される。以下、凝縮器2の内部冷媒と熱交換される空気(外気)の温度を、「外気温度」と称する。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して制御装置40について説明する。
制御装置40は、例えばマイクロコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を備えている。ROMには制御プログラム及び後述のフローチャートに対応したプログラム等が記憶されている。
【0014】
制御装置40には、温度センサ30の計測情報が入力される。また、制御装置40には、圧縮機1の吐出側の冷媒圧力を計測する高圧圧力センサ31、及び圧縮機1の吸入側の冷媒圧力を計測する低圧圧力センサ32など、冷凍装置100の運転制御に必要な各種の計測情報が入力される。
制御装置40は、各センサから入力された計測情報や、操作装置(図示せず)から使用者により指示された運転内容(設定温度等)などに基づいて、圧縮機1の運転周波数(運転容量)、膨張弁4の開度、送風機20の回転数(運転容量)などを制御する。
【0015】
また、制御装置40は、上限値設定部41と、運転制御部42とを備える。上限値設定部41は、温度センサ30が計測した温度に基づき、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を設定する。運転制御部42は、上限値設定部41によって設定された上限値以下の範囲で、圧縮機1及び送風機20の運転容量を制御する。詳細は後述する。
【0016】
(冷媒の動作)
図3は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の動作状態を示すモリエル線図である。図3を参照して、冷媒回路10の動きを説明する。
制御装置40は、蒸発器5による冷却が必要な場合、膨張弁4の入口の電磁弁(図示せず)を開とし冷媒回路10に冷媒が循環するようにして、圧縮機1と送風機20を運転させる。
圧縮機1に吸入された冷媒は、圧縮され高温高圧の冷媒となり、圧縮機1から吐出される(図3のB点)。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器2へ流入する。凝縮器2に流入した冷媒は、送風機20からの空気(外気)と熱交換して放熱し、温度が低下して過冷却状態の冷媒となる(図3のC点)。
【0017】
凝縮器2から流出した冷媒は、膨張弁4によって減圧されて気液二相状態の冷媒となる(図3のD点)。その後、冷媒は蒸発器5に流入する。蒸発器5に流入した冷媒は、冷却対象と熱交換して吸熱、蒸発し、ガス状態の冷媒となる(図3のA点)。蒸発器5から流出した冷媒は、圧縮機1へ吸入される。
制御装置40は、蒸発器5による冷却が不要となった場合、圧縮機1と送風機20の運転を停止させる。また、制御装置40は、膨張弁4の入口の電磁弁(図示せず)を閉とし冷媒回路10の冷媒の流れを止める。
【0018】
(制御装置の動作)
制御装置40は、冷媒回路10の熱負荷に応じて、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する。制御装置40は、例えば、圧縮機1のインバータ回路の出力をおよそ20〜100%の範囲で変更し、圧縮機1の運転容量を変更する。また、制御装置40は、送風機20のインバータ回路の出力をおよそ20〜100%の範囲で変更し、送風機20の運転容量を変更する。
【0019】
制御装置40は、冷媒回路10内の冷媒の圧力又は温度について、目標値が設定されている。例えば、図3に示したA点、B点、C点における冷媒の状態について、それぞれ目標値が設定されている。この目標値は、冷凍装置100に固有の値でも良いし、操作装置(図示せず)から指示された設定温度等に応じた値でも良い。
制御装置40は、冷媒回路10内の冷媒の圧力又は温度が、その目標値に近づけるように、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変化させる。
【0020】
例えば、制御装置40は、圧縮機1に吸入される冷媒(図3のA点)の圧力が目標値となるように、圧縮機1の運転容量を変更する。
即ち、圧縮機1に吸入される冷媒(図3のA点)の圧力が、目標値よりも上昇すると、能力不足と判定し圧縮機1の出力を増加させる。
また、圧縮機1に吸入される冷媒(図3のA点)の圧力が、目標値よりも低下すると、能力過剰と判定し圧縮機1の出力を低下させる。
この圧縮機1に吸入される冷媒(図3のA点)の圧力は、蒸発器5を流れる冷媒の圧力と同じ圧力である。圧縮機1の出力を変更することで、蒸発器5を流れる冷媒の圧力又は温度を目標値に近づけることができる。
【0021】
また例えば、制御装置40は、凝縮器2を流れる冷媒(図3のB点又はC点)の圧力が目標値となるように、送風機20の運転容量を変更する。
即ち、凝縮器2を流れる冷媒(図3のB点又はC点)の圧力が、目標値よりも上昇すると、送風機20の出力を増加させる。これにより、凝縮器2の熱交換量が増加し、冷媒の温度が低下し、凝縮器2に流れる冷媒の圧力が低下する。
また、凝縮器2を流れる冷媒(図3のB点又はC点)の圧力が、目標値よりも低下すると、送風機20の出力を低下させる。これにより、凝縮器2の熱交換量が減少し、冷媒の温度が上昇し、凝縮器2に流れる冷媒の圧力が上昇する。
このように、送風機20の出力を変更することで、凝縮器2を流れる冷媒の圧力又は温度を目標値に近づけることができる。
【0022】
ここで、蒸発器5で発揮される冷却能力は、蒸発器5の入口の冷媒と出口の冷媒のエンタルピ差(図3のD点−A点のエンタルピ差)と、冷媒回路10を循環する冷媒の循環量と積によって求められる。また、蒸発器5で発揮される冷凍能力は、外気温度によって変化する。
例えば、圧縮機1と送風機20とが一定の運転容量で動作している場合、圧縮機1から吐出された冷媒(図3のB点)及び凝縮器2の出口の冷媒(図3のC点)の圧力は、外気の温度と、送風機20によって供給される外気の風量に応じた圧力となる。
すなわち、外気温度が低くなると、圧縮機1から吐出された冷媒及び凝縮器2の出口の冷媒の圧力が、図3のB2点−C2点に示す位置に低下する。
そうすると、蒸発器5の入口の冷媒と出口の冷媒のエンタルピ差(図3のD2点−A点のエンタルピ差)が、外気温度が高い場合と比較して大きくなる。このため、外気温度が低くなると、蒸発器5で発揮される冷凍能力は、外気温度が高い場合と比較して増加する。外気温度と冷却能力との関係を図4に示す。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の外気温度と冷却能力との関係を示す図である。
図4に示すように、外気温度が32℃の冷却能力を100%とした場合に、外気温度が低下する程、冷却能力が増加することがわかる。
【0024】
また、蒸発器5によって冷却対象を冷却する必要能力も外気温度によって変化する。即ち、外気温度が低いほど、蒸発器5が設置される冷蔵庫内への侵入熱量が減少するため、冷蔵庫内の必要能力も低下する。
【0025】
このように、外気温度が低下する程、蒸発器5で発揮される冷却能力が大きくなり、また、蒸発器5によって冷却対象を冷却する必要能力が低下する。このことから、外気温度が低い場合には、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限を低下させても、蒸発器5によって冷却対象を冷却することが可能である。
【0026】
本実施の形態1における冷凍装置100の制御装置40は、外気温度が予め設定された温度以下の場合、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させる。例えば、圧縮機1及び送風機20の運転容量の最大値に対して一定の割合だけ低減させ値を上限値とする。
よって、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させた分だけ、騒音を低減することが可能となる。
【0027】
ただし、外気温度が低い場合でも、例えば冷蔵庫内に冷却対象が多く入れられた場合など、多くの冷却能力が必要となる場合がある。このような場合に、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させた運転を続けると十分な冷却ができなくなる。
そこで、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させた運転中であっても、圧縮機1又は送風機20の運転容量が上限値である状態が予め設定した時間継続した場合には、冷却能力が不足と判断して運転容量の上限値を上昇させる(制限を解除する)ことが有効である。
【0028】
次に、制御装置40の動作の詳細を図5及び図6を参照して説明する。
図5及び図6は、本発明の実施の形態1における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
ステップS1にて、上限値設定部41は、温度センサ30が検知する外気温度が、予め設定された温度以下であるかどうかを判定する。例として、ステップS1では、外気温度が25℃以下かどうかを判定している。
【0029】
外気温度が予め設定された温度以下である場合、ステップS2へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させる(制限運転)。例えば圧縮機1及び送風機20の運転容量をインバータ回路によって制御する場合、インバータ回路への出力の上限値を制限する。例として、ステップS2では運転容量の上限値を最大値の80%としている。
運転制御部42は、冷媒回路10の熱負荷に応じて、上限値以下の範囲で圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する。例えば、圧縮機1に吸入される冷媒の圧力が目標値よりも上昇し圧縮機1の出力を増加させる場合、上限値設定部41によって設定された上限値以下に出力を制限する。
【0030】
その後、ステップS3にて、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の少なくとも一方の運転容量が、上限値である状態が予め設定した時間経過しているか否かを判定する。即ち、上限値設定部41は、ステップS2で制限されたインバータ回路への出力の上限値にて、予め設定した時間継続して運転しているかを判定する。例として、ステップS3では予め設定した時間を30分としている。
【0031】
上限値である状態が予め設定した時間経過している場合、ステップS4へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を上昇させる。即ち、上限値設定部41は、ステップS2にて制限した、圧縮機1と送風機20のインバータ回路への出力の上限値の制限を解除する。
【0032】
ステップS3にて、上限値である状態が予め設定した時間経過していない場合、ステップS5に進み、運転制御部42は、ステップS2にて設定された圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値のまま、圧縮機1及び送風機20の運転を継続する。
【0033】
ステップS1にて、外気温度が予め設定された温度以下でない場合、ステップS6へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させる制限運転を実施しているか否かを判定する。
【0034】
ステップS2の制限運転を実施している場合、ステップS7に進み、上限値設定部41は、外気温度がステップS1の判定で用いた外気温度よりも高く設定された温度以上かどうかを判定する。例として、ステップS7では外気温度が28℃以上かどうかを判定している。
【0035】
ステップS7の判定を満足する場合、ステップS8に進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を上昇させる。即ち、上限値設定部41は、ステップS2にて制限した、圧縮機1と送風機20のインバータ回路への出力の上限値の制限を解除する。
ステップS7の判定を満足しない場合、ステップS9に進み、運転制御部42は、ステップS2にて設定された圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値のまま、圧縮機1及び送風機20の運転を継続する。
【0036】
ステップS6の判定を満足しない場合、ステップS10へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を変更しない。即ち、圧縮機1及び送風機20のインバータ回路への出力の上限値を制限しない。
【0037】
なお、冷凍装置100の運転において定期的に蒸発器5の霜取りが必要となる。霜取りは蒸発器5にあらかじめ取り付けてあるヒータなどによって加熱することで行われる。
霜取り後には蒸発器5が温まっているため、冷却能力が一時的に必要となる。この時、一般的には圧縮機1や送風機20へのインバータ出力を上げて、冷却能力を上げる運転を行うが、この時に運転音と変動音が大きくなる場合がある。
しかしながら、本実施の形態1における冷凍装置100は、霜取り運転後においても、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値の設定を維持する。霜取りによる冷却能力の増加は一時的なものであるため、外気温度が低い場合は前述のように圧縮機1と送風機20へのインバータ出力の上限値を低下させて運転しても冷却には影響が少ないからである。
【0038】
以上のように本実施の形態1の冷凍装置100は、外気温度に応じて、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限を変化させる。このため、送風機20及び圧縮機1の運転音を低下できると共に、運転効率が良く冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【0039】
また、本実施の形態1の冷凍装置100においては、制御装置40は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を設定する上限値設定部41と、上限値以下の範囲で圧縮機1及び送風機20の運転容量を制御する運転制御部42と、を備える。上限値設定部41は、外気温度が予め設定された温度以下の場合、上限値を低下させる。このため、蒸発器5で発揮される冷却能力が大きく、蒸発器5によって冷却対象を冷却する必要能力が低下する場合に、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限を低下させることができ、送風機20及び圧縮機1の運転音を低下できると共に、運転効率が良く冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態1の冷凍装置100においては、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の少なくとも一方の運転容量が、上限値である状態が予め設定した時間経過した場合、上限値を上昇させる。このため、冷却能力が不足する場合には、運転容量の上限値の制限を解除して、熱負荷に応じた運転を行うことができる。
【0041】
実施の形態2.
上記実施の形態1で説明したように、蒸発器5で発揮される冷凍能力は、外気温度によって変化する。そして、外気温度が低下する程、蒸発器5で発揮される冷却能力が大きくなり、また、蒸発器5によって冷却対象を冷却する必要能力が低下する。
このことから、外気温度が低い場合には、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限を低下させても、蒸発器5によって冷却対象を冷却することが可能である。さらに、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する際の時間間隔を長くしても、蒸発器5の必要能力が減少している分、冷媒回路10における冷媒の目標圧力への追従性が低下しても、冷凍能力に与える影響が少ない。
このようなことから、本実施の形態2の制御装置40は、外気温度に応じて、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する際の時間間隔を長くする。
以下、本実施の形態2における冷凍装置100の構成及び動作を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0042】
図7は、本発明の実施の形態2における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、実施の形態2における制御装置40は、変更サイクル設定部43を備える。変更サイクル設定部43は、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する際の時間間隔を設定する。
運転制御部42は、変更サイクル設定部43から設定された時間間隔の経過ごとに、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する。
例えば、圧縮機1及び送風機20のインバータ回路の出力を変更する際、目標に早く近づけるためにはインバータ回路の出力を、早く変動させることが望ましい。しかし、インバータ回路の出力の変動をさせすぎると、インバータ回路の部品の寿命が低下する場合があるため、インバータ回路の出力を変化させる間隔である時間間隔(変更サイクル)に、制限を設けている。例えば、制限を設けていない通常運転時の場合には、時間間隔を20秒に設定する。即ち、制御装置40の運転制御部42は、圧縮機1の運転容量を変更する際、制限を設けていない通常運転時の場合には20秒毎に運転容量を変更する。なお、運転容量を変更する際、1回の変更サイクルでの変動量を、現在の出力値から20%以上は変動させない制限を設けても良い。
【0043】
次に、本実施の形態2における制御装置40の動作の詳細を、図8及び図9を参照し、上記実施の形態1との相違点について説明する。
図8及び図9は、本発明の実施の形態2における冷凍装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
ステップS21は、実施の形態1(図5)のステップS1と同様である。
【0044】
ステップS21にて、外気温度が予め設定された温度以下である場合、ステップS22へ進み、上限値設定部41は、上記実施の形態1と同様に、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させる(制限運転)。
変更サイクル設定部43は、外気温度が予め設定された温度以下の場合、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する時間間隔(変更サイクル)を長くする。例えば、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する時間間隔を2倍に設定する。即ち、運転容量が変更されるスピードを、変更前の標準の変更サイクルと比較して50%低下させる設定にする。
運転制御部42は、冷媒回路10の熱負荷に応じて、上限値以下の範囲で圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する。また、運転制御部42は、運転制御部42は、変更サイクル設定部43から設定された時間間隔の経過ごとに、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する。
【0045】
ステップS23は、実施の形態1(図5)のステップS3と同様である。
【0046】
ステップS23にて、上限値である状態が予め設定した時間経過している場合、ステップS24へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を上昇させ、インバータ回路への出力の上限値の制限を解除する。
また、変更サイクル設定部43は、運転容量を変更する時間間隔を短く設定する。例えば、ステップS22における変更前の時間間隔に戻し、変更サイクルの制限も解除する。
【0047】
ステップS23にて、上限値である状態が予め設定した時間経過していない場合、ステップS25に進み、運転制御部42は、ステップS22にて設定された圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値のまま、圧縮機1及び送風機20の運転を継続する。
また、変更サイクル設定部43は、運転容量を変更する時間間隔の設定を維持し、変更サイクルを長く設定した制限運転を継続させる。
【0048】
ステップS21にて、外気温度が予め設定された温度以下でない場合、ステップS26へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を低下させる制限運転を実施しているか否かを判定する。
また、変更サイクル設定部43は、運転容量を変更する時間間隔を長くした制限運転を実施しているか否かを判定する。
【0049】
ステップS22の制限運転を実施している場合、ステップS27に進む。ステップS27は、実施の形態1(図6)のステップS7と同様である。
【0050】
ステップS27の判定を満足する場合、ステップS28に進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を上昇させる。
また、変更サイクル設定部43は、運転容量を変更する時間間隔を短く設定する。例えば、ステップS22における変更前の時間に戻し、変更サイクルの制限も解除する。
【0051】
ステップS27の判定を満足しない場合、ステップS29に進み、運転制御部42は、ステップS22にて設定された圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値、及び標準の時間間隔まま、圧縮機1及び送風機20の運転を継続する。
【0052】
ステップS26の判定を満足しない場合、ステップS30へ進み、上限値設定部41は、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を変更しない。
また、変更サイクル設定部43は、運転容量を変更する時間間隔を変更しない。即ち、圧縮機1及び送風機20のインバータ回路への出力の上限値と、変更サイクルの制限を制限しない。
【0053】
なお、本実施の形態2の冷凍装置100は、霜取り運転後においても、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値の設定、及び運転容量を変更する時間間隔の設定を維持する。霜取りによる冷却能力の増加は一時的なものであるため、外気温度が低い場合は前述のように圧縮機1と送風機20へのインバータ出力の上限値を低下させ、変更サイクルを長くして運転しても冷却には影響が少ないからである。
【0054】
以上のように本実施の形態2の冷凍装置100は、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
さらに、本実施の形態2の冷凍装置100は、外気温度が予め設定された温度以下の場合、圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更する時間間隔を長くする。このため、運転容量の変更に伴い生じる音の発生頻度を低減することができる。よって、送風機20及び圧縮機1の運転音を低下できると共に、運転効率が良く冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【0055】
また、本実施の形態1の冷凍装置100においては、変更サイクル設定部43は、圧縮機1及び送風機20の少なくとも一方の運転容量が、上限値である状態が予め設定した時間経過した場合、運転容量を変更する際の時間間隔を短くする。
このため、冷却能力が不足する場合には、変更サイクルを短くすることができ、冷媒回路10における冷媒の目標圧力への追従性を向上することができる。
【0056】
(変形例)
上記の説明においては、外気温度と予め設定した一つの温度とを比較して、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を設定する動作、又は変更サイクルを設定する動作を説明したが、本発明はこれに限定されない。
外気温度と比較する判定値を複数個設けて、それぞれの温度との比較に応じて、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値、及び変更サイクルの少なくとも一方を設定するようにしても良い。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態2における冷凍装置の外気温度と運転容量の制限値の関係を示す図である。
図10において、外気温度の判定値として、25℃、及び15℃の2つ設ける。即ち、外気温度が、25℃を超える範囲、25℃以下かつ15℃以上の範囲、及び15℃未満の範囲の何れに属するか否かを判定する。
図10において、運転容量の上限値は、運転容量の最大値を100%として、外気温度の範囲ごとに、上限値の低下割合を示している。運転容量の上限値は、外気温度が低いほど、低下量が大きく設定されている。
また、図10において、運転容量の変化スピードは、運転容量が変更されるスピードを示し、運転容量を変更する際の時間間隔を制限しない状態を100%として、外気温度の範囲ごとに、運転容量が変更されるスピードの低下割合を示している。即ち、時間間隔が2倍に長くなると変化スピードが50%遅くなることを示している。運転容量の変化スピードは、外気温度が低いほど、低下量が大きく設定されている。即ち、外気温度が低いほど、運転容量を更新する際の時間間隔が長く設定されている。
制御装置40の上限値設定部41及び変更サイクル設定部43の少なくとも一方は、図10に示すような情報のテーブルを予め記憶し、外気温度と複数の判定値との比較結果に応じて、運転容量の上限値及び時間間隔の少なくとも一方を設置するようにしても良い。
【0058】
このような動作を行うことで、外気温度に応じた冷却能力を設定することができ、送風機20及び圧縮機1の運転音を低下できると共に、運転効率が良く冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【0059】
なお、上記実施の形態1においても、外気温度と比較する判定値を複数個設けて、それぞれの温度との比較に応じて、圧縮機1及び送風機20の運転容量の上限値を設定するようにしても良い。
【0060】
実施の形態3.
上記実施の形態1及び2では、運転容量の上限値以下の範囲で圧縮機1及び送風機20の運転容量を変更した。また、上記実施の形態2では、運転容量を変更する際の時間間隔を設定した。
本実施の形態3の制御装置40は、圧縮機1及び送風機20の運転容量を、最大値よりも小さい運転容量で一定に制御する。
以下、本実施の形態3における冷凍装置100の構成及び動作を、実施の形態1及び2との相違点を中心に説明する。
【0061】
図11は、本発明の実施の形態3における冷凍装置の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図11に示すように、本実施の形態3における制御装置40は、上限値設定部41及び変更サイクル設定部43に代えて、温度判定部44を備えている。
温度判定部44は、温度センサ30が検知する外気温度が、予め設定された温度以下であるかどうかを判定する。
運転制御部42は、温度判定部44によって外気温度が予め設定された温度以下であると判定された場合、圧縮機1及び送風機20の運転容量を、最大値よりも小さい運転容量で一定に制御する。例えば、運転制御部42は、運転容量の最大値の80%の運転容量に固定して圧縮機1及び送風機20を運転させる。
【0062】
このように、圧縮機1及び送風機20の運転容量を低下させた状態で固定することによって、運転時の最大騒音を低下できると共に、運転容量の変更に伴い生じる変動音の発生を無くすことができる。よって、送風機20及び圧縮機1の運転音を低下できると共に、運転効率が良く冷却能力が不足しない運転を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 圧縮機、2 凝縮器、4 膨張弁、5 蒸発器、10 冷媒回路、20 送風機、30 温度センサ、31 高圧圧力センサ、32 低圧圧力センサ、40 制御装置、41 上限値設定部、42 運転制御部、43 変更サイクル設定部、44 温度判定部、100 冷凍装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11