特許第6618619号(P6618619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618619
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】発音装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 31/00 20060101AFI20191202BHJP
   H04R 11/02 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H04R31/00 C
   H04R11/02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-522319(P2018-522319)
(86)(22)【出願日】2017年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2017007335
(87)【国際公開番号】WO2017212697
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-115471(P2016-115471)
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】沼田 大志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清
(72)【発明者】
【氏名】青木 大悟
(72)【発明者】
【氏名】松井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀治
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−027598(JP,A)
【文献】 特開2012−004851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 31/00
H04R 11/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームに取付けられた振動体と、前記振動体を駆動する駆動機構とが設けられた発音装置の製造方法について、
前記フレームは、開口部と、前記開口部の周囲の振動体取付け面とを有し、前記振動体は、振動板と、前記振動板を前記フレームに支持させる振動支持シートとを有しており、
(1)前記振動支持シートに張力を与えて、その周囲部分を、前記フレームの前記振動体取付け面に接着する工程と、
(2)前記フレームの前記開口部の範囲内で、前記振動体を前記振動支持シートに接着する工程と、
(3)前記(2)の工程と同時にまたはその後に、前記フレームと前記振動体との間において、前記振動支持シートに撓み部を形成する工程と、
を有することを特徴とする発音装置の製造方法。
【請求項2】
前記(1)の工程では、前記フレームの前記開口部内に第1の治具を挿入した状態で、張力を与えた前記振動支持シートを前記振動体取付け面に接着する請求項1記載の発音装置の製造方法。
【請求項3】
前記振動板の設置部と、前記撓みを成形する撓み成形部とが設けられた第2の治具を使用し、
前記(2)の工程で、前記振動板を前記設置部に設置して位置決めし、前記フレームを前記第2の治具に設置して、前記フレームに貼られている前記振動支持シートと前記振動板とを接着し、
前記(3)の工程で、前記振動支持シートを前記撓み成形部に加圧して、前記撓み部を成形する請求項1または2記載の発音装置の製造方法。
【請求項4】
前記振動板にリブが一体に形成されており、前記(2)の工程で、前記振動支持シートを前記振動板に加圧し、前記振動支持シートを前記リブの形状に倣うように接着する請求項3記載の発音装置の製造方法。
【請求項5】
前記(2)と(3)の工程を同時に行う請求項3または4記載の発音装置の製造方法。
【請求項6】
前記振動支持シートを、均一な圧力で前記振動板および前記撓み成形部に加圧する請求項5記載の発音装置の製造方法。
【請求項7】
前記(3)の工程で、前記振動支持シートを加熱する請求項3ないし6のいずれかに記載の発音装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板と振動支持シートから成る振動体がフレームに接着されて支持されており、前記振動体を駆動する駆動機構が設けられている発音装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電気音響変換器に関する発明が記載されている。
この電気音響変換器は、ダイヤフラムの上面に接着された樹脂フィルムの周囲部分が枠状のダイヤフラムフレームの上面に接着剤を介して固定されている。前記ダイヤフラムフレームは、2つのハウジングの開口端部に挟まれて、ダイヤフラムフレームとハウジングとがレーザー溶接で固定されている。ハウジング内には、アーマチュア部が設けられている。アーマチュア部は、磁石およびコイルと、前記コイルに与えられる電流で振動させられるアーマチュアとを有しており、前記アーマチュアの振動によって前記ダイヤフラム駆動される。
【0003】
この電気音響変換器のダイヤフラムと樹脂フィルムの組み付け方法は、図16に示されているように、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムの上面に接着剤を塗布した後に、樹脂フィルムを加熱して圧着し、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムを樹脂フィルムに接着して固定する。その後、COレーザーを用い、ダイヤフラムフレームの形状に沿って樹脂フィルムを切断する。このとき、ダイヤフラムフレーム上に接着剤と樹脂フィルムとが除去された除去部が形成される。この除去部において、ダイヤフラムフレームとハウジングとをレーザー溶接で固定することで、ダイヤフラムフレームとハウジングとの間に接着剤と樹脂フィルムとが挟まれて溶接されるのを防止し、溶接部に隙間が形成されるなどの現象を抑制しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−27598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明では、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムを樹脂フィルムに接着する際に、樹脂フィルムに張力を与える工程を備えていない。そのため、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムの上面に樹脂フィルムを接着する際に、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムとの間に位置している樹脂フィルムの張力が不均一になりやすく、ダイヤフラムフレーム内でのダイヤフラムの振動を均一化できず、製品によって振動特性にばらつきが発生する原因になる。
【0006】
また、特許文献1に記載された電気音響変換器では、図14図15に示すように、ダイヤフラムフレームとダイヤフラムとの間において、樹脂フィルムを凸または凹の円弧状部に形成することで、ダイヤフラムの振動時の振幅を確保できるようにしている。しかし、前述のようにダイヤフラムフレームとダイヤフラムとの間で樹脂フィルムの張力にばらつきがあると、前記凸または凹の円弧状部の成形精度が悪くなり、円弧状部の深さや幅寸法が場所によってばらつくようになり、これによってもダイヤフラムの振動特性にばたつきが生じやすくなる。
【0007】
さらに、特許文献1には、前記凸または凹の円弧状部をどのようにして、精度良く成形するかについて、なんら示されていない。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、フレームの開口部内に、振動支持シートを均一な張力で設置して、フレームと振動板との間において、振動支持シートに撓み部を均一に形成できるようにした発音装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フレームと、前記フレームに取付けられた振動体と、前記振動体を駆動する駆動機構とが設けられた発音装置の製造方法について、
前記フレームは、開口部と、前記開口部の周囲の振動体取付け面とを有し、前記振動体は、振動板と、前記振動板を前記フレームに支持させる振動支持シートとを有しており、(1)前記振動支持シートに張力を与えて、その周囲部分を、前記フレームの前記振動体取付け面に接着する工程と、
(2)前記フレームの前記開口部の範囲内で、前記振動体を前記振動支持シートに接着する工程と、
(3)前記(2)の工程と同時にまたはその後に、前記フレームと前記振動体との間において、前記振動支持シートに撓み部を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の発音装置の製造方法は、前記(1)の工程では、前記フレームの前記開口部内に第1の治具を挿入した状態で、張力を与えた前記振動支持シートを前記振動体取付け面に接着することが好ましい。
【0011】
本発明の発音装置の製造方法は、前記振動板の設置部と、前記撓みを成形する撓み成形部とが設けられた第2の治具を使用し、
前記(2)の工程で、前記振動板を前記設置部に設置して位置決めし、前記フレームを前記第2の治具に設置して、前記フレームに貼られている前記振動支持シートと前記振動板とを接着し、
前記(3)の工程で、前記振動支持シートを前記撓み成形部に加圧して、前記撓み部を成形するものである。
【0012】
本発明の発音装置の製造方法では、前記振動板にリブが一体に形成されており、前記(2)の工程で、前記振動支持シートを前記振動板に加圧し、前記振動支持シートを前記リブの形状に倣うように接着することが可能である。
【0013】
本発明の発音装置の製造方法は、前記(2)と(3)の工程を同時に行うことが好ましい。
【0014】
この場合に、本発明の発音装置の製造方法は、前記振動支持シートを、均一な圧力で前記振動板および前記撓み成形部に加圧することが好ましい。
【0015】
本発明の発音装置の製造方法は、前記(3)の工程では、前記振動支持シートを加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発音装置の製造方法は、振動支持シートを、張力を与えてフレームに接着することで、振動支持シートで振動板を安定して支持することができる。また、フレームと振動板の間に形成される振動支持シートの撓み部を、均一に成形することができ、振動板の振動特性を安定させることができる。
【0017】
また、フレームの開口部内に第1の治具を装着した状態で、振動支持シートに張力を与えてフレームに接着することで、振動支持シートの張力で、フレームが歪んだり、開口部が狭められた状態で接着が行われるのを防止でき、振動支持シートをフレームの開口部内に均一な張力で貼り付けることができる。
【0018】
また、第2の治具に振動板の設置部と、撓み部を形成する撓み成形部を設け、第2の治具に振動板を位置決めして、振動支持シートを押し付けることで、振動板と撓み部の相対位置を高精度に決めて、振動体を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態の製造方法で製造された発音装置の外観を示す斜視図、
図2図1に示す発音装置の分解斜視図、
図3図1に示す発音装置をIII−III線で切断した断面図、
図4図3に示す発音装置の組立作業を示す断面図、
図5】フレームに振動板と上部ヨークおよびアーマチュアが取り付けられた状態を示す平面図、
図6図3に示すVI−VI線の断面図、
図7】本発明の実施の形態のフレームと振動体との組立状態を示す斜視図、
図8】本発明の実施の形態のフレームと振動体との組立状態を示す分解斜視図、
図9】本発明の実施の形態の発音装置の製造方法において、フレームに振動支持シートを接着する工程を工程別に示す説明図、
図10】本発明の実施の形態の発音装置の製造方法において、振動支持シートに振動板を接着し同時に撓み部を形成する工程を工程別に示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1ないし図4に本発明の実施の形態の発音装置1が示されている。
発音装置1は、ケース2を有している。図1図2に示すように、ケース2は下ケース3と上ケース4とから構成されている。下ケース3と上ケース4は合成樹脂製または非磁性材料または磁性の金属材料を使用しダイキャスト法で形成されている。あるいは、非磁性または磁性金属板を使用してプレス加工で形成されている。下ケース3が第1のケースであり、上ケース4が第2のケースである。
【0021】
図2に示すように、下ケース3は、底部3aと、4側面を囲む側壁部3bと、側壁部3bの上端の開口端部3cを有している。上ケース4は天井部4aと、4側面を囲む側壁部4bと、側壁部の下端の開口端部4cを有している。下ケース3の内部空間は、上ケース4の内部空間よりも広く、上ケース4は下ケースの蓋体として機能している。
【0022】
図3図6に示すように、下ケース3の開口端部3cと上ケース4の開口端部4cとの間にフレーム5の周囲の被挟持部6が挟まれている。下ケース3と上ケース4との間に被挟持部6が挟まれた状態で、下ケース3と上ケース4と被挟持部6とがレーザースポット溶接によって互いに固定されている。
【0023】
図2に示すように、フレーム5は、Z方向の厚さ寸法が均一な非磁性材料のあるいは磁性材料製の金属板材で枠形状に形成されている。フレーム5は、図示下側の平面が駆動側取付け面5aで、上側の平面が振動体取付け面5bとなっている。図5にも示すように、フレーム5の中央部に、開口部5cが上下に貫通して形成されている。開口部5cは矩形状の穴である。前記振動体取付け面5bは、開口部5cの周囲を囲むように形成されている。
【0024】
この構造のフレーム5は、厚さ寸法が均一な金属板材をプレス加工することで製造される。開口部5cは、金属板材を打ち抜くことで形成される。また、振動体取付け面5bの周囲の全体を、Z方向の下向きに突き出し加工することで、振動体取付け面5bの周囲に、段差部7を介して、一段低くなった被挟持部6が形成される。この突き出し加工を行うことで、被挟持部6を形成することができ、さらに突き出し加工を行うことで、フレーム5の剛性を高めることもできる。
【0025】
図2に示すように、発音装置1には振動体10が設けられている。振動体10は振動板11と振動支持シート12とで構成されている。
【0026】
振動板11はアルミニウムやSUS304などの薄い金属材料で形成されている。図8に示すように、振動板11の面積は、フレーム5の開口部5cの開口面積よりも小さい。振動板11は矩形状であり、X方向(幅方向)の両側にY方向(縦方向)に延びる両縁部11a,11aが形成され、Y方向の一方の縁部が自由端部11bで、他方の縁部が支点側端部11cとなっている。振動板11には曲げ強度を増強するためのリブ11dがプレス成形されている。複数のリブ11dは、X方向に間隔を空けてY方向に直線状に平行に形成されている。図6の断面図に示すように、リブ11dは上ケース4の内部空間に向けて突状に形成されている。
【0027】
振動支持シート12は振動板11よりも撓み変形しやすいものであり、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やナイロンあるいはポリウレタンなどの樹脂シート(樹脂フィルム)である。
【0028】
図6図7に示すように、振動板11は振動支持シート12の下面に接着されて固定され、振動支持シート12の周囲部分12aが、フレーム5の枠部の上面である振動体取付け面5bに接着剤を介して固定されている。その結果、振動板11は、振動支持シート12を介してフレーム5に振動自在に支持されている。また、図3図4および図6に示すように、振動板11は、フレーム5の開口部5cの内部に位置し、フレーム5の厚さ寸法の範囲内に位置している。
【0029】
図5図6および図8に示すように、振動板11の面積は、フレーム5の開口部5cの開口面積よりも小さいが、振動支持シート12の面積は振動板11よりも大きい。そのため、振動板11のX方向(幅方向)の両縁部11a,11aとフレーム5の開口部5cの内縁部との間に隙間(i)が形成されている。図3図4図5および図8に示すように、振動板11の自由端部11bとフレーム5の開口部5cの内縁部との間に隙間(ii)が形成されている。振動板11の支点側端部11cとフレーム5の開口部5cの内縁部との間には、前記隙間(ii)よりも狭い隙間(iii)が形成され、あるいはほとんど隙間が形成されていない。
【0030】
図5図8に示すように、振動板11の4辺と開口部5cの内縁部との間の各隙間(i)(ii)(iii)は振動支持シート12で塞がれている。隙間(i)(ii)に対応する部分では、振動支持シート12に撓み部12bが形成されている。撓み部12bは、振動支持シート12を構成している樹脂シート(樹脂フィルム)を加熱して変形させたものである。撓み部12bは、撓み用変形部あるいは撓み用隆起部として機能するものであり、図3図6において、撓み部12bとなる樹脂シートの断面に現れている部分の述べ長さが、前記断面での前記隙間(i)(ii)の幅よりも長くなっている。この撓み部12bの存在により、振動板11は、支点側端部11cを支点として、自由端部11bがZ方向へ変位するように振動可能となっている。
【0031】
図6図7および図8に示すように、振動板11の上に振動支持シート12が接着される際に、振動支持シート12に、振動板11のリブ11dに倣うように変形した変形部12cが形成される。特に、振動板11と振動支持シート12とを接着するときに振動支持シート12を加熱することで、変形部12cをリブ11dに完全に倣う形状に成形しやすくなる。なお、実施の形態では、振動板11のリブ11dおよび振動支持シート12の撓み部12bと変形部12cが、上ケース4の内部空間に向けて突状に隆起しているが、これらのいずれかが、または全てが、下ケース3の内部空間に向けて突状に隆起していてもよい。
【0032】
図3図4および図6に示すように、フレーム5の駆動側取付け面5aに磁界発生ユニット20が取り付けられている。図2に示すように、磁界発生ユニット20は、上部ヨーク21と下部ヨーク22とを有している。上部ヨーク21と下部ヨーク22は、磁性材料で形成されており、例えばSPCCに代表される冷間圧延鋼板などの鋼板やNi−Fe合金などで形成されている。
【0033】
図2に示すように、下部ヨーク22はU字形状に曲げられており、底面部22aと、X方向の両側で上向きに折り曲げられた一対の側面部22b,22bとが一体に形成されている。側面部22b,22bの上端部が、平板形状の上部ヨーク21の内面21aに接合され、レーザースポット溶接などで、上部ヨーク21と下部ヨーク22とが固定されている。上部ヨーク21と下部ヨーク22とが固定されると、下部ヨーク22の底面部22aの内面と、上部ヨーク21の内面21aとが平行に対向する。上部ヨーク21の幅寸法は、X方向の両端部が、下部ヨーク22の側面部22b,22bの側外面よりも両側へ突出するように形成されている。
【0034】
図2ないし図4に示すように、磁界発生ユニット20では、上部ヨーク21の内面21aに上部磁石24が固定され、下部ヨーク22の底面部22aの内面に下部磁石25が固定されている。図3図6に示すように、上部磁石24の下面24aと下部磁石25の上面25aとの間にZ方向のギャップδが形成されている。上部磁石24の下面24aと下部磁石25の上面25aは、互いに逆の極性となるように、各磁石24,25が着磁されている。
【0035】
図2図3に示すように、磁界発生ユニット20と並ぶ位置にコイル27が設けられている。コイル27はY方向に延びる巻き軸を中心として導線が周回するように巻かれている。後に説明するように、コイル27の巻き中心部の空間27cにアーマチュア32の可動部32aが挿入されるが、コイル27の導線はアーマチュア32の可動部32aの周囲を周回するように巻かれている。
【0036】
図3図4に示すように、コイル27のY方向の左側に向く端面が接合面27aとなっており、この接合面27aが磁界発生ユニット20の上部ヨーク21と下部ヨーク22のY方向に向く側面に接着剤などで固定されている。このとき、コイル27の巻き中心線が、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδの中心に一致するように位置決めされて互いに固定される。
【0037】
図2図3および図4に示すように、発音装置1にアーマチュア32が設けられている。アーマチュア32は厚さが均一な磁性材料の板材で形成されており、例えば、Ni−Fe合金で形成されている。アーマチュア32はプレス加工され、可動部32aと固定部32bと曲げ部32cを有するU字形状に曲げ加工されている。可動部32aと固定部32bは、Z方向に間隔を空けて互いに平行に対向している。図2に示すように、アーマチュア32の可動部32aのY方向に向く先部32dはX方向の幅寸法が小さくなっており、先部32dに連結穴32eが上下に貫通して形成されている。
【0038】
図3図4および図5に示すように、アーマチュア32の固定部32bは、上部ヨーク21の上向きの外面である接合面21bに固定されている。また、アーマチュア32の可動部32aは、コイル27の空間27cの内部に挿入され、さらに上部磁石24と下部磁石25との間のギャップδ内に挿入されている。そして、アーマチュア32の先部32dは、前記ギャップδ内からY方向の前方に飛び出している。
【0039】
図3図4に示すように、上部ヨーク21の上面の接合面21bは平面であり、この接合面21bがフレーム5の下面の駆動側取付け面5aに接合されて固定されている。図6に示すように、上部ヨーク21は、フレーム5の開口部5cをX方向へ横断するように設置され、上部ヨーク21のX方向の両端部が、フレーム5の駆動側取付け面5aに接合されて、上部ヨーク21とフレーム5とがレーザースポット溶接などで固定される。
【0040】
図5に示すように、アーマチュア32の固定部32bは、フレーム5の開口部5cの開口面積よりも小さく、上部ヨーク21の上面の接合面21bが、フレーム5の下面である駆動側取付け面5aに直接に固定されると、図3図6に示すように、前記接合面21bに固定されているアーマチュア32の固定部32bが、フレーム5の開口部5cの内部に入り込む。固定部32bのZ方向の厚さ寸法は、フレーム5のZ方向の厚さ寸法よりも小さい。よって、同じく開口部5c内に位置する振動板11と、アーマチュア32の固定部32bとの間には、振動板11がZ方向に振動できるようにZ方向の隙間が空けられる。
【0041】
図3に示すように、振動板11の自由端部11bと、アーマチュア32の先部32dとが、伝達体33で連結されている。伝達体33は金属または合成樹脂で形成された針状部材であり、例えばSUS202のピン材で形成されている。伝達体33の上端33aは振動板11に形成された取付け穴11eに挿入されて、振動板11と伝達体33とが接着剤または半田付けで固定されている。図7図8に示すように、振動支持シート12には、振動板11と伝達体33との接合部を避けるように逃げ穴12dが形成されている。伝達体33の下端部33bは、アーマチュア32の先部32dに形成された連結穴32eに挿入されて、伝達体33と先部32dとがレーザー溶接あるいは接着剤または半田付けで固定されている。伝達体33はフレーム5の開口部5c内を上下に横断しており、伝達体33の一部が開口部5cの内部に位置している。
【0042】
発音装置1では、磁界発生ユニット20とコイル27とアーマチュア32および伝達体33とで、振動体10を振動させるための駆動機構が構成されている。
【0043】
図3図6に示すように、フレーム5の外周部分は、下ケース3の開口端部3cと上ケース4の開口端部4cとの間に挟まれて固定されている。ただし、フレーム5の振動体取付け面5bに接合されている振動支持シート12の周囲部分12aおよび接着剤層は、ケース2の内面から内側に離れており、周囲部分12aは、下ケース3の開口端部3cと上ケース4の開口端部4cとの間に挟まれていない。下ケース3と上ケース4との間に振動支持シート12および接着剤が挟まれないので、ケース3,4を互いに強固に固定できる。また下ケース3と上ケース4をレーザー溶接などで固定するときに、振動支持シート12が熱で損傷し、あるいは変形するのを防止することができる。
【0044】
下ケース3と上ケース4との間にフレーム5の被挟持部6が挟まれて固定されると、振動板11と振動支持シート12とからなる振動体10によって、ケース2の内部の空間が上下に区分される。振動体10よりも上側であって上ケース4の内部の空間が発音側空間であり、発音側空間は、上ケース4の側壁部4bに形成された発音口4dから外部空間に通じている。図3に示すように、ケース2の外側には、前記発音口4dに通じる発音ノズル41が固定されている。
【0045】
図2図3に示すように、下ケース3の底部には吸排気口3dが形成されており、振動体10よりも下側であって下ケース3の内部空間が、吸排気口3dによって外気に通じている。図2に示すように、下ケース3の側壁部3bには一対の配線穴3eが開口しており、図3に示すように、コイル27を構成する導線の一対の端末部27bがそれぞれ配線穴3eから外部に引き出されている。ケースの側壁部3bの外部には基板42が固定され、端末部27bが基板42に形成された小穴内を通過しこの小穴が塞がれることで、配線穴3eが外側から閉鎖されている。
【0046】
発音装置1の組立作業(製造方法)は以下の通りである。
図4に示すように、この発音装置1は、フレーム5を基準として各部品が組み込まれている。
【0047】
図9に、フレーム5に振動支持シート12を接着する工程が示されている。この工程には第1の治具50が使用される。図9(A)に示すように、第1の治具50は、フレーム設置面51と、中央嵌合突部52とを有している。中央嵌合突部52は、フレーム5の開口部5cにほぼ隙間なく嵌めこむことができるよう断面が四角形状に形成されている。フレーム設置面51は、中央嵌合突部52の周囲全周において同一平面となるように形成されている。
【0048】
図9(B)に示すように、フレーム5を第1の治具50に設置する。このとき、フレーム5の開口部5cを中央嵌合突部52に嵌入し、フレーム5の被挟持部6の下面を、フレーム設置面51に突き当てるように設置する。第1の治具50にフレーム50が設置された状態で、中央嵌合突部52の表面52aが、フレーム5の上面である振動体取付け面5bと同一面か、あるいはフレーム設置面51側へ少し低くなっていることが好ましい。
【0049】
図9(B)において、第1の治具50にフレーム5を設置した後に、フレーム5の上面である振動体取付け面5bに接着剤を塗布する。フレーム5の周囲に突き出し加工で段差部7を形成することで、接着剤は、振動体取付け面5bにおいて、開口部5cの内縁部から段差部7までの幅寸法Wの範囲に塗布することができ、接着剤が被挟持部6まではみ出すのを防止できるようになる。よって、被挟持部6が下ケース3と上ケース4とで挟まれてレーザースポット溶接されるときに、接着剤が、被挟持部6と上ケース4の開口端4cとの間に挟まれるのを防止しやすくなる。
【0050】
図9(C)では、フレーム5の振動体取付け面5bの幅寸法Wの領域に振動支持シート12となる樹脂シートを接着する。このとき、樹脂シートに均一な張力Tを与えながら接着する。張力Tの作用方向は少なくともX方向であり、好ましくは、X方向とY方向に均一に与えられる。接着剤は例えばUV硬化性である。接着剤が硬化するまでの間、フレーム5の開口部5cに第1の治具50の中央嵌合突部52が嵌合している。そのため、前記張力Tの反作用により、フレーム5が歪んだり、あるいはフレーム5が開口部5cの幅寸法が狭まるように変形するのを防止できるようになる。接着が完了した後に、図9(D)に示すように、フレーム5を第1の治具50から離脱させる。
【0051】
図10に、振動支持シート12に振動板11を接着する工程が示されている。この工程では、図10(A)に示す第2の治具60が使用される。第2の治具60は、振動板11の位置決め部である振動板設置部61と、振動板設置部61の全周を囲む撓み成形部62を有している。振動板設置部61のX方向の幅寸法W0とY方向の幅寸法は、振動板11の平面形状のそれぞれの幅寸法とほぼ一致している。第2の治具60では、撓み成形部62の外周にフレーム装着面63が形成されている。フレーム装着面63は撓み成形部62の周囲全長において同一平面である。
【0052】
図10(B)の工程では、第2の治具60の振動板設置部61に振動板11を設置して位置決めする。振動板11の図示上向きの面には予め接着剤を塗布しておく。接着剤は振動板11の上面の全面に塗布し、または間欠的に塗布する。次に、図10(C)に示すように、フレーム5をフレーム装着面63に向けて装着する。第2の治具60の撓み成形部62の外側面62aの間隔は、フレーム5の開口部5cの設計上の開口幅寸法と一致している。そのため、開口部5cを撓み成形部62の外側面62aに嵌め込むことで、フレーム5に接着されている振動支持シート12に適正な張力が与えられる。
【0053】
図10(D)の工程で、振動支持シート12を加熱しながら、振動支持シート12に対して第2の治具60に向かう均一な圧力Pを与える。この圧力Pは、例えば第2の治具60が存在する環境での空気圧を上昇させる、いわゆる圧空成形を行うことで設定できる。または、弾性体の内部に空気を封入した加圧部材を第2の治具60に押し付けることで設定される。あるいはシリコンゴムなどの弾性体を第2の治具60に押し付けることにより設定される。振動支持シート12の加熱は、第2の治具60を加熱することで設定され、または環境温度を高めることで行われる。
【0054】
図10(D)の工程では、圧力Pによって、フレーム5の周囲の挟持部6の下面がフレーム装着面63に押し付けられる。同時に、撓み成形部62によって、フレーム5の開口部5cの内縁部と振動板11との間に位置する振動支持シート12が部分的に変形させられて撓み部12bが成形される。さらに、同時に、振動支持シート12に、振動板11のリブ11dに倣うように変形部12cが形成される。図10(D)の工程の後で、図9(B)(C)に示す幅寸法Wの接着領域よりも外周側の振動支持シート12をトリミングし、図10(E)に示すように、フレーム5を第2の治具60から離脱させる。
【0055】
図9に示した接着工程で、振動支持シート12に均一な張力Tを与え、図10(D)の工程で、振動支持シート12の表面から第2の治具60に向けて各部分で均一な圧力Pを与えることで、図7に示すように、撓み部12bを各所において均一な幅で均一な隆起高さとなるように成形することができる。また、振動支持シート12と振動板11とを接着する工程と、振動支持シート12に撓み部12bを成形する工程とを同時に行うことが可能になる。さらに、第2の治具60に、振動板11を位置決めする振動板設置部61と撓み成形部62とが形成されているため、フレーム5と振動板11との相対位置を高精度に設定でき、振動板11と撓み部12bとの相対位置も高精度に決めることができる。
【0056】
さらに発音装置1の製造方法では、上部ヨーク21の内面21aに上部磁石24を接合し、下部ヨーク22の底面部22aの上面に下部磁石25を接合し、上部ヨーク21と下部ヨーク22とをレーサースポット溶接などで固定して、磁界発生ユニット20を組み立てる。また、コイル27の接合面27aを上部ヨーク21と下部ヨーク22のY方向に向く側面に接着剤で固定する。このとき、位置決め治具を用いて、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδのZ方向での中心と、コイル27の空間27cのZ方向の中心を一致させる。
【0057】
アーマチュア32は、プレス加工で形成し、可動部32aと固定部32bとがZ方向で平行にまたはほぼ平行に対向できるように曲げ部32cを加工する。アーマチュア32の可動部32aを、コイル27の中心と、磁石24,25間のギャップδの中心に挿入し、固定部32bを、上部ヨーク21の上面である接合面21bに直接に突き当ててレーザースポット溶接などで固定する。
【0058】
次に、ヨーク21,22と磁石24,25とから成る磁界発生ユニット20にコイル27とアーマチュア32が組み込まれた部分組立体を、フレーム5の駆動側取付け面5aに固定する。上部ヨーク21の接合面21bをフレーム5の駆動側取付け面5aに突き当て、レーザースポット溶接などで固定する。
【0059】
駆動側取付け面5aに磁界発生ユニット20とコイル27およびアーマチュア32を組み込んだ後に、アーマチュア32の可動部32aの先部32dと振動板11との間を伝達体33で連結し、駆動機構の組立を完了する。
【0060】
その後、下ケース3の開口端部3cと上ケース4の開口端部4cとの間に、フレーム5の周縁部を挟むようにし、下ケース3とフレーム5と上ケース4をレーザースポット溶接で固定する。また、コイル27の導線の端末部27bは下ケース3の配線穴3eから外部に引出し、配線穴3eを基板42で覆う。さらにケース2に発音ノズル41を固定して組立を完了する。
【0061】
次に、発音装置1の動作を説明する。
発音装置1の動作は、ボイス電流がコイル27に与えられると、アーマチュア32に磁界が誘導される。アーマチュア32に誘導される磁界と、上部磁石24と下部磁石25とのギャップδ内に生成される磁界とで、アーマチュア32の可動部32aにZ方向への振動が発生する。この振動が伝達体33を介して振動板11に伝達される。このとき、振動支持シート12で支持されている振動板11は、支点側端部11cを支点として自由端部11bがZ方向へ振れて振動する。振動板11の振動により、上ケース4の内部の発音空間に音圧が生成され、この音圧が発音口4dから外部へ出力される。
【0062】
この発音装置1では、図9図10の組立工程において、フレーム5の開口部5cの内縁部と振動板11との隙間(i)(ii)で、振動支持シート12に撓み部12bを均一な幅で均一な隆起高さで成形でき、さらに、振動板11と撓み部12bとの相対位置も高精度に決めることができる。そのため、振動板11の振動特性が良好であり、発音特性のばらつきを抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 発音装置
2 ケース
3 下ケース
4 上ケース
5 フレーム
5b 振動体取付け面
5c 開口部
6 被挟持部
10 振動体
11 振動板
11a 縁部
11b 自由端
11c 支点側端部
11d リブ
12 振動支持シート
12a 周囲部分
12b 撓み部
12c 変形部
21 上部ヨーク
22 下部ヨーク
24 第1の磁石
25 第2の磁石
32 アーマチュア
50 第1の治具
60 第2の治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10