(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の酸化物半導体層のエネルギーギャップG1、前記第2の酸化物半導体層のエネルギーギャップG2、前記中間酸化物半導体層のエネルギーギャップGmは、G2>Gm>G1を満たす、請求項1または2に記載の半導体装置。
前記第1の酸化物半導体層の厚さは1nm以上50nm以下、前記第2の酸化物半導体層の厚さは20nm以上130nm以下、前記中間酸化物半導体層の厚さは15nm以上80nm以下である、請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明者が検討によって見出した知見を説明する。
【0029】
前述したように、本発明者は、結晶質酸化物半導体を用いた2層チャネル構造TFTの特性を調べた。
【0030】
図9(a)は、結晶質酸化物半導体を用いた2層チャネル構造を有する参考例のTFT200を示す断面図である。
【0031】
参考例のTFT200は、基板1に支持されたゲート電極(またはゲート配線)3と、ゲート電極3を覆うゲート絶縁層5と、ゲート絶縁層5上に配置された積層半導体層27と、ソース電極8およびドレイン電極9とを有する。ソース電極8およびドレイン電極9は、積層半導体層27上に間隔を空けて配置されている。TFT200では、積層半導体層27のうち、ソース電極8とドレイン電極9との間に位置する部分にチャネルが形成される。
【0032】
積層半導体層27は、下層27aと、下層27a上に形成された上層27bとを含む。積層半導体層27は、例えば、基板1上に、下層27aとなる結晶質酸化物半導体膜と、上層27bとなる結晶質酸化物半導体膜との積層膜(以下、「酸化物半導体積層膜」)を形成した後、リン硝酢酸系エッチング液を用いて積層膜をパターニングすることによって形成される。
【0033】
本発明者が検討した結果、参考例のTFT200では、閾値電圧が負の方向にシフトしやすいことが分かった。また、同一基板上に複数のTFT200を形成すると、TFT間で閾値などの特性ばらつきが生じ得ることが分かった。
【0034】
上記のような問題が生じる要因は、結晶質酸化物半導体からなる2層27a、27bの界面における結晶格子のミスマッチに起因して、積層半導体層の加工性が低下したからと考えられる。以下、組成の異なる2つの結晶質In−Ga−Zn−O系半導体層からなる積層半導体層を例に、積層半導体層の加工性とTFT特性との関係を説明する。
【0035】
まず、分析用に、基板1上に積層半導体層27を形成し、その断面観察を行った。ここでは、下層27aとして、In:Ga:Znが5:1:4である結晶質In−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:10nm)を用いた。上層27bとして、In:Ga:Znが例えば1:3:6の結晶質In−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:50nm)を用いた。
【0036】
図9(b)は、パターニング後の積層半導体層27のSEM像を例示する図である。分かりやすさのため、積層半導体層27の輪郭に白い線を付している。
【0037】
図9(b)および(c)から分かるように、積層半導体層27の側面において、下層27aと上層27bとの界面にくびれ(凹部)28が生じている。このようなくびれ28は、上記とは組成の異なる結晶質酸化物半導体層からなる積層半導体層にも生じ得るが、アモルファス酸化物半導体層からなる積層半導体層には見られない。このことから、くびれ28の発生は、結晶質In−Ga−Zn−O系半導体層である下層27aと上層27bとの界面で、格子定数のずれによる結晶格子の不整合(ミスマッチ)が生じていることに起因すると推察される。すなわち、下層27aと上層27bとの界面近傍では、格子の不整合に起因して、横方向(基板1の水平方向)のエッチングレートが下層27aおよび上層27bの内部よりも高くなる。界面近傍で横方向に高いレートでエッチングが進む結果、界面近傍にくびれ28が生じたと考えられる。
【0038】
このような積層半導体層27を用いてTFTを形成すると、次のような問題が生じ得る。積層半導体層27を形成後、積層半導体層27を覆うようにソース用導電膜を形成し、ソース用導電膜のエッチングを行うことにより、ソースおよびドレイン電極が形成される。この工程は、「ソース・ドレイン分離工程」とも呼ばれる。このとき、
図9(c)に模式的に示すように、くびれ28の内部にソース用導電膜の一部(以下、「残渣部」)29が残ってしまう可能性がある(膜残り)。この結果、ソース電極とドレイン電極とがくびれ28内に残った残渣部29によって電気的に接続されてしまい、TFTの閾値電圧のマイナスシフト(デプレッション化)を引き起こす場合がある。これは、TFT間で、閾値電圧のばらつきが生じる要因になり得る。さらに、ソース・ドレイン分離工程において、移動度の高い下層27aが、上層27bで十分に保護されず、プロセスダメージを受けるおそれがある。このため、下層27aに酸素欠陥が生じて低抵抗化され、デプレッション化を引き起こす可能性もある。
【0039】
本発明者は、上記知見に基づいて、結晶質酸化物半導体層を用いた積層半導体層の加工性を高めることの可能な構造を詳細に検討した。この結果、2つの結晶質酸化物半導体層の間に、アモルファス酸化物半導体層などの中間酸化物半導体層を挿入することにより、加工性に優れた積層半導体層が得られることを見出した。本明細書では、2つの結晶質酸化物半導体層を、中間酸化物半導体層を挟んで積み重ねた構造を、「3層チャネル構造」、3層チャネル構造を有するTFTを「3層チャネル構造TFT」と呼ぶ。
【0040】
本発明の一実施形態では、3層チャネル構造TFTでは、積層半導体層は、2つの結晶質酸化物半導体膜の間に非晶質酸化物半導体膜を有する酸化物半導体積層膜を形成した後、酸化物半導体積層膜のパターニングを行うことによって形成される。2つの結晶質酸化物半導体膜間の界面が、非晶質酸化物半導体膜によって改善されるので、酸化物半導体積層膜のパターニング時に、積層半導体層の側面にくびれが生じることを抑制できる。つまり、パターニングによって形成される積層半導体層の側面はテーパ形状(順テーパ)を有し得る。このため、後のソース・ドレイン分離工程において、積層半導体層の側面にソース用導電膜の残渣部が残るのを抑制できる。また、結晶質酸化物半導体層の下層がプロセスダメージによって低抵抗化されることを抑制できる。従って、所望のTFT特性を安定して実現することが可能になる。
【0041】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、半導体装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態の半導体装置は、酸化物半導体TFTを備えていればよく、アクティブマトリクス基板などの回路基板、各種表示装置、電子機器などを広く含む。
【0042】
図1は、本実施形態の半導体装置における酸化物半導体TFT101の一例を示す模式的な断面図である。
【0043】
本実施形態の半導体装置は、基板1と、酸化物半導体TFT(以下、単に「TFT」と呼ぶ)101とを備える。
【0044】
TFT101は、基板1上に支持されたゲート電極3と、半導体層7と、半導体層7とゲート電極3との間に配置されたゲート絶縁層5と、半導体層7に電気的に接続されたソース電極8およびドレイン電極9とを備える。
【0045】
この例では、TFT101は、例えばチャネルエッチ型のボトムゲート構造TFTである。ゲート電極3は、半導体層7の基板1側に配置されている。ゲート絶縁層5はゲート電極3を覆っており、半導体層7は、ゲート絶縁層5を介してゲート電極3と重なるように配置されている。また、ソース電極8およびドレイン電極9は、それぞれ、半導体層7の上面と接するように配置されている。
【0046】
本実施形態における半導体層7は、第1の酸化物半導体層71と、第2の酸化物半導体層72と、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72の間に配置された中間酸化物半導体層70とを含む積層構造を有している。第1の酸化物半導体層71は、第2の酸化物半導体層72よりもゲート絶縁層5側に位置している。この例では、半導体層7は、ゲート絶縁層5側から、第1の酸化物半導体層71、中間酸化物半導体層70、および第2の酸化物半導体層72がこの順に積み重ねられた3層構造を有している。なお、本実施形態の半導体層7は、上記3つの層以外の層をさらに含んでいてもよい。
【0047】
第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72は、例えば結晶質酸化物半導体層であり、中間酸化物半導体層は、例えば非晶質酸化物半導体層である。ここでいう「結晶質酸化物半導体層」は、結晶質状態の酸化物半導体を主に含む酸化物半導体層であればよく、微小な非晶質部分を含んでいてもよい。「非晶質酸化物半導体層」は、非晶質状態の酸化物半導体を主に含む酸化物半導体層であれはよく、微小な結晶質部分、例えば粒子サイズが1nm以上20nm以下の微結晶を含んでいてもよい。例えば、中間酸化物半導体層として用いられる非晶質酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72よりも小さい結晶サイズを有する微結晶を含んでいてもよい。
【0048】
第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72は、少なくともInおよびZnを含む。第1の酸化物半導体層71に含まれる全金属元素に対するInの原子数比はZnの原子数比よりも大きい。また、第2の酸化物半導体層72に含まれる全金属元素に対するZnの原子数比はInの原子数比よりも大きい。これにより、第1の酸化物半導体層71は、第2の酸化物半導体層72よりも高い移動度を有し、チャネル層として機能し得る。第2の酸化物半導体層72は、第1の酸化物半導体層71よりも高い結晶性を有し、エッチング耐性やバリア性に優れる。従って、例えばソース・ドレイン分離工程等において、第2の酸化物半導体層72は、第1の酸化物半導体層71の保護層および犠牲層として機能し得る。
【0049】
中間酸化物半導体層70は、特に限定しないが、例えばInおよびZnを含んでいてもよい。中間酸化物半導体層70に含まれる全金属元素に対するInの原子数比とZnの原子数比とは略等しくてもよい。中間酸化物半導体層70は、例えば、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との中間のエネルギーギャップを有していてもよい。
【0050】
本実施形態では、中間酸化物半導体層70、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72は異なる組成を有していてもよい。「組成が異なる」とは、各層に含まれる金属元素の種類または組成比が異なることをいう。
【0051】
第1の酸化物半導体層71は、半導体層7の最下層であり、ゲート絶縁層5の上面と接していてもよい。第2の酸化物半導体層72は半導体層7の最上層であり、半導体層7の上面を構成していてもよい。第2の酸化物半導体層72の上面は、ソース電極8、ドレイン電極9および層間絶縁層13と接していてもよい。中間酸化物半導体層70は、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との間に、第2の酸化物半導体層72および第2の酸化物半導体層72の両方と接するように配置されていることが好ましい。これにより、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との界面をより効果的に改善できる。
【0052】
半導体層7は、チャネル領域7cと、チャネル領域の両側に位置するソースコンタクト領域7sおよびドレインコンタクト領域7dとを有している。ソース電極8はソースコンタクト領域7sと接するように形成され、ドレイン電極9はドレインコンタクト領域7dと接するように形成されている。本明細書では、「チャネル領域7c」は、基板1の法線方向から見たとき、半導体層7のうちソースコンタクト領域7sとドレインコンタクト領域7dとの間に位置し、チャネルが形成される部分を含む領域を指す。本実施形態では、チャネル領域7cのうち、第1の酸化物半導体層71におけるゲート絶縁層5近傍にチャネルが形成され得る。
【0053】
TFT10は、層間絶縁層13で覆われている。層間絶縁層13は積層構造を有していてもよい。例えば、層間絶縁層13は、無機絶縁膜(パッシベーション膜)と、その上に配置された有機絶縁膜とを含んでいてもよい。パッシベーション膜は、半導体層7のチャネル領域と接するように配置されていてもよい。
【0054】
本実施形態のTFT101では、移動度の高い第1の酸化物半導体層71にチャネルが形成される。また、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との間に中間酸化物半導体層70が配置されているので、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との界面において結晶格子の不整合が生じるのを抑制できる。従って、酸化物半導体積層膜のエッチングによって、順テーパ形状を有する半導体層7が得られる。半導体層7の側面には
図9(b)に示すようなくびれ28が生じない。従って、ソース・ドレイン分離のためのエッチング工程において、ソース用導電膜の一部がくびれ28内に残ってしまう(膜残り)ことを抑制できる。また、このエッチング工程において、第1の酸化物半導体層71が受けるプロセスダメージを第2の酸化物半導体層72によって低減できる。従って、TFT特性のばらつきやTFTの閾値電圧のマイナスシフトが抑制され、高い移動度を有する信頼性に優れた酸化物半導体TFTを実現できる。
【0055】
<半導体層7の各層の組成および厚さ>
第1の酸化物半導体層71は、例えば第2の酸化物半導体層72よりも高い移動度を有する高移動度層であることが好ましい。第2の酸化物半導体層72は、例えば第1の酸化物半導体層71よりも高い結晶性を有する高結晶化層であることが好ましい。第1の酸化物半導体層71のエネルギーギャップG1は、第2の酸化物半導体層72よりもエネルギーギャップG2よりも小さくてもよい。
【0056】
中間酸化物半導体層70は、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72の界面を改善し得る層であればよい。中間酸化物半導体層70のエネルギーギャップGmは、第1の酸化物半導体層71のエネルギーギャップG1よりも大きく、かつ、第2の酸化物半導体層72よりもエネルギーギャップG2よりも小さくてもよい(G1<Gm<G2)。
【0057】
以下、各層の好ましい組成を説明する。以下の説明では、酸化物半導体を構成する全ての金属元素に対するInの原子数比(組成比)を「In比率」、酸化物半導体を構成する全ての金属元素に対するZnの原子数比を「Zn比率」と略する。例えばIn−Ga−Zn−O系半導体層のIn比率は、In、GaおよびZnの合計原子数に対するInの原子数の割合である。Inの原子数を[In]、Gaの原子数を[Ga]、亜鉛の原子数を[Zn]と表記すると、In比率は、[In]/([In]+[Ga]+[Zn])で表される。
【0058】
高移動度層である第1の酸化物半導体層71のIn比率は、Zn比率よりも高い([In]>[Zn])。第1の酸化物半導体層71におけるIn比率は、例えば0.3超であってもよい。第1の酸化物半導体層71がIn−Ga−Zn−O系半導体層である場合、Ga比率、すなわちIn、GaおよびZnの合計原子数に対するGaの原子数の割合は、例えば、Zn比率およびIn比率よりも低い。Ga比率は0.3未満であってもよい。
【0059】
第1の酸化物半導体層71がIn−Ga−Zn−O系半導体層である場合の第1の酸化物半導体層71の好ましい組成範囲の一例は次の通りである。
[In]/([In]+[Ga]+[Zn])>0.3
[In]>[Ga]、[In]>[Zn]、[Zn]>[Ga]
[Ga]/([In]+[Ga]+[Zn])<0.3
【0060】
第1の酸化物半導体層71のIn、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znは約5:1:4(例えば4〜6:0.8〜1.2:3.2〜4.8)であってもよい。一例として、原子数比In:Ga:Znが5:1:4であるスパッタリングターゲットを用いて酸化物半導体膜を形成すると、プロセス上で誤差が生じたり、不純物をドープしたりしても、形成後の第1の酸化物半導体層71の組成は上記範囲に含まれ得る。
【0061】
一方、高結晶化層である第2の酸化物半導体層72のZn比率は、In比率よりも高い([Zn]>[In])。Zn比率は、例えば0.5超であってもよい。第2の酸化物半導体層72がIn−Ga−Zn−O系半導体層である場合、Zn比率は、Ga比率およびIn比率の合計よりも高くてもよい。また、Ga比率は、例えばIn比率よりも高くてもよい。
【0062】
第2の酸化物半導体層72がIn−Ga−Zn−O系半導体層である場合の第2の酸化物半導体層72の好ましい組成範囲の一例は次の通りである。
[Zn]/([In]+[Ga]+[Zn])>0.5
[Zn]>[In]+[Ga]
[In]<[Ga]
【0063】
第2の酸化物半導体層72のIn、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znは約1:3:6(例えば0.8〜1.2:2.4〜3.6:4.8〜7.2)であってもよい。一例として、原子数比In:Ga:Znが1:3:6であるスパッタリングターゲットを用いて酸化物半導体膜を形成すると、プロセス上で誤差が生じたり、不純物をドープしたりしても、形成後の第2の酸化物半導体層72の組成は上記範囲に含まれ得る。
【0064】
第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72にIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合の具体的な組成を以下に例示する。
【0065】
第1の酸化物半導体層71には、In:Ga:Zn=3:1:2(=3/6:1/6:2/6)、In:Ga:Zn=4:2:3(=4/9:2/9:3/9)、In:Ga:Zn=5:1:3(=5/9:1/9:3/9)、In:Ga:Zn=5:3:4(=5/12:3/12:4/12)、In:Ga:Zn=6:2:4(=6/12:2/12:4/12)、In:Ga:Zn=7:1:3(=7/11:1/11:3/11)、あるいはIn:Ga:Zn=5:1:4(=5/10:1/10:4/10)の組成(原子数比)のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物半導体を用いることができる。
【0066】
第2の酸化物半導体層72には、In:Ga:Zn=1:3:2(=1/6:3/6:2/6)、In:Ga:Zn=2:4:3(=2/9:4/9:3/9)、In:Ga:Zn=1:5:3(=1/9:5/9:3/9)、あるいはIn:Ga:Zn=1:3:6(=1/10:3/10:6/10)の組成(原子数比)のIn−Ga−Zn−O系酸化物やその組成の近傍の酸化物半導体を用いることができる。
【0067】
中間酸化物半導体層70は、特に限定しないが、結晶化されずに非晶質状態が維持され得る組成を有していてもよい。中間酸化物半導体層70がIn−Ga−Zn−O系半導体層である場合、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znは約1:1:1(例えば0.8〜1.2:0.8〜1.2:0.8〜1.2)であってもよい。一例として、原子数比In:Ga:Znが1:1:1であるスパッタリングターゲットを用いて中間酸化物半導体層70を形成すると、プロセス上で誤差が生じたり、不純物をドープしたりしても、形成後の中間酸化物半導体層70の組成は上記範囲に含まれ得る。
【0068】
なお、半導体層7の各層の組成は、上記組成に限定されない。例えばIn−Ga−Zn−O系半導体層の代わりに、In−Sn−Zn−O系半導体層、In−Al−Sn−Zn−O系半導体層などを用いることも可能である。また、半導体層7は第1の酸化物半導体層71、中間酸化物半導体層70および第2の酸化物半導体層72を所定の順序で含んでいればよく、4層以上の多層構造を有していてもよい。
【0069】
各層の厚さは特に限定しないが、第1の酸化物半導体層71の厚さは、例えば、1nm以上50nm以下が好ましい。第2の酸化物半導体層72の厚さは、例えば、20nm以上130nm以下が好ましい。中間酸化物半導体層70の厚さは、例えば15nm以上80nm以下が好ましい。第1の酸化物半導体層71の厚さが1nm以上であれば、第2の酸化物半導体層72よりも第1の酸化物半導体層71中を電子が優先的に移動するため、高い移動度のTFTを実現できる。一方、50nm以下であれば、ゲート電圧によってTFTのOn/Off動作をより高速で行うことが可能である。第2の酸化物半導体層72の厚さが20nm以上であれば、ソース・ドレイン分離工程における第1の酸化物半導体層71のプロセスダメージをより効果的に低減できる。一方、130nm以下であれば、第2の酸化物半導体層72によって生じる抵抗成分を小さくすることができ、TFTの移動度が低下することを抑制できる。さらに、中間酸化物半導体層70が15nm以上であれば、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との界面をより効果的に改善できる。一方、80nm以下であれば、中間酸化物半導体層70の挿入による閾値電圧の低下を抑制できる。
【0070】
<アクティブマトリクス基板の構造>
本実施形態は、例えば表示装置のアクティブマトリクス基板に適用され得る。本実施形態をアクティブマトリクス基板に適用する場合、アクティブマトリクス基板に設けられる複数のTFTの少なくとも一部が、上述した3層積層チャネル構造を有するTFT10であればよい。例えば、各画素に配置される画素TFTおよび/またはモノリシックドライバを構成するTFT(回路TFT)がTFT10であってもよい。
【0071】
アクティブマトリクス基板は、表示に寄与する表示領域(アクティブ領域)と、表示領域の外側に位置する周辺領域(額縁領域)とを有している。表示領域には、複数のゲートバスラインGと複数のソースバスラインSとが形成されており、これらの配線で包囲されたそれぞれの領域が「画素」となる。複数の画素はマトリクス状に配置されている。
【0072】
図2は、本実施形態のアクティブマトリクス基板100の一例を示す平面図である。
図2には、単一の画素のみを図示している。この例では、TFT10は画素TFTとして機能する。
【0073】
図2に示すように、各画素は、画素TFTであるTFT101と、画素電極19とを有している。画素電極19は、画素毎に分離されている。TFT101は、各画素において、複数のソースバスラインSと複数のゲートバスラインGとの各交点の付近に形成されている。TFT101のドレイン電極9は、対応する画素電極19と電気的に接続されている。画素電極19は、層間絶縁層13に設けられたコンタクトホールCH内でドレイン電極9と接していてもよい。ソースバスラインSは、TFT101のソース電極8に電気的に接続されている。ソースバスラインSとソース電極8とは一体的に形成されていてもよい。ゲートバスラインGは、TFT101のゲート電極3に電気的に接続されている。ゲートバスラインGとゲート電極3とは一体的に形成されていてもよい。アクティブマトリクス基板100は、画素電極19の上に、あるいは、層間絶縁層13と画素電極19との間に、共通電極として機能する他の電極層をさらに有していてもよい。
【0074】
<TFT101の製造方法>
以下、再び
図1を参照しながら、TFT101の製造方法をより具体的に説明する。
【0075】
まず、基板1上に、ゲート電極3およびゲートバスラインGを形成する。基板1としては、例えばガラス基板、シリコン基板、耐熱性を有するプラスチック基板(樹脂基板)などを用いることができる。ゲート電極3は、ゲートバスラインGと一体的に形成され得る。ここでは、基板(例えばガラス基板)1上に、スパッタ法などによって、図示しないゲート配線用金属膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成する。次いで、ゲート配線用金属膜をパターニングすることにより、ゲート電極3およびゲートバスラインGを得る。ゲート配線用金属膜として、例えば、厚さ300nmのW膜を上層、厚さ20nmのTaN膜を下層とする積層膜(W/TaN膜)を用いる。なお、ゲート配線用金属膜の材料は特に限定しない。アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。
【0076】
次いで、ゲート電極3およびゲートバスラインG上にゲート絶縁層5を形成する。ゲート絶縁層5は、CVD法等によって形成され得る。ゲート絶縁層5としては、酸化珪素(SiO
2)層、窒化珪素(SiNx)層、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)層、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)層等を適宜用いることができる。ゲート絶縁層5は積層構造を有していてもよい。例えば、基板側(下層)に、基板1からの不純物等の拡散防止のために窒化珪素層、窒化酸化珪素層等を形成し、その上の層(上層)に、絶縁性を確保するために酸化珪素層、酸化窒化珪素層等を形成してもよい。ここでは、厚さ50nmのSiO
2膜を上層、厚さ300nmのSiNx膜を下層とする積層膜を用いる。このように、ゲート絶縁層5の最上層(すなわち酸化物半導体層と接する層)として、酸素を含む絶縁層(例えばSiO
2などの酸化物層)を用いると、半導体層7に酸素欠損が生じた場合に、酸化物層に含まれる酸素によって酸素欠損を回復することが可能となるので、半導体層7の酸素欠損を低減できる。
【0077】
続いて、ゲート絶縁層5上に、ゲート絶縁層5側から第1の酸化物半導体層71、中間酸化物半導体層70および第2の酸化物半導体層72をこの順で含む半導体層7を形成する。
【0078】
半導体層7の形成は次のようにして行う。
【0079】
まず、例えば、スパッタ法を用いて、第1酸化物半導体膜、中間酸化物半導体膜、および第2酸化物半導体膜を含む酸化物半導体積層膜を形成する。第1酸化物半導体膜、中間酸化物半導体膜および第2酸化物半導体膜は、それぞれ、第1の酸化物半導体層71、中間酸化物半導体層70および第2の酸化物半導体層72に対応する組成および厚さを有する。第1および第2酸化物半導体膜は、例えば結晶質酸化物半導体膜であり、中間酸化物半導体膜は、例えば非晶質酸化物半導体膜であってもよい。なお、酸化物半導体膜が結晶質か非晶質であるかは、例えば、酸化物半導体の組成、成膜条件等で決まる。
【0080】
ここでは、第1酸化物半導体膜および第2酸化物半導体膜として結晶質In−Ga−Zn−O系半導体膜、中間酸化物半導体膜として非晶質In−Ga−Zn−O系半導体膜を形成する。
【0081】
第1酸化物半導体膜は、例えば原子数比In:Ga:Znが5:1:4であるターゲットを用いて、スパッタ法で形成する。スパッタリングガス(雰囲気)としては、アルゴン等の希ガス原子と酸化性ガスの混合ガスを用いることができる。酸化性ガスとはO
2、CO
2、O
3、H
2O、N
2O等が挙げられる。ここでは、Arガスおよび酸素(O
2)ガスを含む混合ガスを用いる。スパッタ法による成膜時の酸素ガスの割合は、例えば、分圧比で5%以上20%以下に設定される。また、成膜時の基板温度は、例えば100〜180℃に設定される。気体雰囲気の圧力(スパッタ圧力)は、プラズマが安定して放電できる範囲であれば特に限定されないが、例えば0.1〜3.0Paに設定される。
【0082】
中間酸化物半導体膜は、例えば原子数比In:Ga:Znが1:1:1であるターゲットを用いて、スパッタ法で形成する。スパッタリングガスとして、Arガスおよび酸素(O
2)ガスを含む混合ガスを用いる。スパッタ法による成膜時の酸素ガスの割合は、例えば、分圧比で0%超10%以下に設定される。成膜時の基板温度およびスパッタ圧力は、第1酸化物半導体膜を形成する際の基板温度及びスパッタ圧力と同じであってもよい。
【0083】
第2酸化物半導体膜は、例えば原子数比In:Ga:Znが1:3:6であるターゲットを用いて、スパッタ法で形成する。スパッタリングガスとして、Arガスおよび酸素(O
2)ガスを含む混合ガスを用いる。スパッタ法による成膜時の酸素ガスの割合は、中間酸化物半導体膜の成膜時の酸素ガスの割合よりも高く、例えば、分圧比で0%超20%以下に設定される。成膜時の基板温度およびスパッタ圧力は、第1酸化物半導体膜を形成する際の基板温度及びスパッタ圧力と同じであってもよい。
【0084】
各酸化物半導体膜の厚さは特に限定しないが、例えば、第1酸化物半導体膜の厚さは1nm以上50nm以下、中間酸化物半導体膜の厚さは15nm以上80nm以下、第2酸化物半導体膜の厚さは20nm以上130nm以下であってもよい。ここでは、第1酸化物半導体膜の厚さを10nm、中間酸化物半導体膜の厚さを40nm、第2酸化物半導体膜の厚さを50nmとする。
【0085】
次いで、酸化物半導体積層膜のアニール処理を行う。ここでは、大気雰囲気中、300℃以上500℃以下の温度で熱処理を行う。熱処理時間は、例えば30分以上2時間以下である。
【0086】
次いで、熱処理後の酸化物半導体積層膜のパターニングを行い、半導体層7を得る。酸化物半導体積層膜のパターニングは、例えばリン硝酢酸エッチング液を用いてウェットエッチングによって行う。これにより、ゲート絶縁層5側から、第1の酸化物半導体層71、中間酸化物半導体層70および第2の酸化物半導体層72をこの順で含む積層構造を有する半導体層7を得る。
【0087】
図3は、本パターニング工程で得られた半導体層7の断面のSEM像を例示する図である。分かりやすさのため、半導体層7の輪郭に白い線を付している。
図3から分かるように、半導体層7の側面は順テーパ形状を有し得る。本実施形態では、半導体層7における2層の結晶質酸化物半導体膜の界面に非晶質酸化物半導体膜が配置されている。このため、界面の結晶格子のミスマッチに起因して、界面近傍で横方向のエッチングレートが極端に高くなることが抑制される。この結果、本パターニング工程で得られる半導体層7の側面には、
図9(b)に示すようなくびれ28が生じないと考えられる。
【0088】
次いで、ソース電極8およびドレイン電極9を、半導体層7の上面と接するように形成する。ソース電極8およびドレイン電極9は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。ここでは、ソース配線用金属膜として、半導体層7の側からTi膜(厚さ:30nm)、Al(厚さ:300nm)、およびTi膜(厚さ50nm)の3層、あるいはTi膜(厚さ:30nm)、Cu膜(厚さ:300nm)の2層をこの順で積み重ねた積層膜を形成する。ソース配線用金属膜は、例えばスパッタ法などによって形成される。
【0089】
続いて、ソース配線用金属膜をパターニングすることによってソース電極8およびドレイン電極9を得る(ソース・ドレイン分離)。本実施形態では、
図3を参照しながら上述したように、半導体層7の側面はくびれ等の凹部を有していない。このため、ソース配線用金属膜のパターニング工程で膜残りが生じ難い。
【0090】
ソース電極8は半導体層7のソースコンタクト領域、ドレイン電極9は半導体層7のドレインコンタクト領域と接するように配置される。半導体層7のうちソース電極8とドレイン電極9との間に位置する部分はチャネル領域となる。この工程で、第2の酸化物半導体層72の表面部分もエッチングされる(オーバーエッチング)場合がある。この後、半導体層7のチャネル領域に対し酸化処理、例えばN
2Oガスを用いたプラズマ処理を行ってもよい。このようにして、TFT101を得る。
【0091】
次に、TFT10のチャネル領域と接するように、層間絶縁層13を形成する。層間絶縁層13は、無機絶縁層(パッシベーション膜)とその上に配置された有機絶縁層とを含んでいてもよい。無機絶縁層は、例えば、酸化珪素(SiO
2)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等であってもよい。ここでは、無機絶縁層として、CVD法により、厚さが例えば300nmのSiO
2層を形成する。無機絶縁層の形成温度は、例えば200℃以上450℃以下であってもよい。続いて、無機絶縁層上に有機絶縁層を形成する。ここでは、厚さが例えば2000nmのポジ型の感光性樹脂膜を形成する。
【0092】
(積層構造を有する半導体層の分析結果)
上記方法では、組成および成膜条件を制御することで、結晶質酸化物半導体膜と非晶質酸化物半導体膜とを含む積層膜を形成している。上記方法における成膜直後(アニール処理前)の酸化物半導体膜の結晶状態を確認するために、本発明者は次のような分析を行った。
【0093】
まず、単層の半導体膜を有するサンプル基板1〜3を作製した。サンプル基板1は、ガラス基板上に、スパッタ法で第1酸化物半導体膜を形成することによって作製した。同様に、サンプル基板2、3は、それぞれ、中間酸化物半導体膜および第2酸化物半導体膜をガラス基板上に形成することによって作製した。ここでは、第1酸化物半導体膜、中間酸化物半導体膜および第2酸化物半導体膜として、In−Ga−Zn−O系半導体膜を形成した。In−Ga−Zn−O系半導体膜の厚さは、いずれも、100nmとした。In−Ga−Zn−O系半導体膜を形成する際に用いるターゲットの組成、In−Ga−Zn−O系半導体膜の成膜条件を表1に示す。
【0095】
次いで、得られた各サンプル基板のX線回折(XRD)分析を行った。サンプル基板1〜3のX線回折パターンを、それぞれ、
図4(a)〜(c)に示す。
【0096】
図4から分かるように、全サンプル基板のX線回折パターンは、2θ=20〜25°にブロードなピークP1を有している。これは、ガラス基板に起因するピークと考えられる。
図4(a)に示すように、サンプル基板1のX線回折パターンは、ガラス基板のピークP1に加えて、2θ=30°近傍に結晶性のピークP2を有している。また、
図4(c)に示すように、サンプル基板3のX線回折パターンは、ガラス基板のピークP1に加えて、2θ=32°近傍に結晶性のピークP3を有している。従って、サンプル基板1およびサンプル基板3の半導体膜は、いずれも、結晶質であることが確認できる。サンプル基板3のピークP3の方が、サンプル基板1のピークP2よりも鋭い(ピーク幅が小さい)ことから、サンプル基板3の半導体膜の方が高い結晶性を有することが分かる。一方、サンプル基板2には、結晶性のピークが見られないことから、サンプル基板2上の半導体膜が非晶質であることが確認される。
【0097】
なお、サンプル基板2に対して、上述したアニール処理を行っても、中間酸化物半導体膜は非晶質状態のまま維持される。サンプル基板1、3に対してアニール処理を行うと、第1および第2酸化物半導体膜の結晶性がさらに高くなる場合がある。
【0098】
上記では、基板上に単層の半導体膜を形成し、その結晶状態を調べた。しかしながら、複数の半導体膜を積み重ねて積層半導体層を形成した場合には、XRD分析によって各半導体膜の結晶状態を個々に調べることは困難である。積層半導体層における各層の結晶状態は、例えば、積層半導体層の断面のTEM観察によって調べることが可能である。また、積層半導体層における各層の組成は、例えばXPS、AES等により分析可能である。
【0099】
(TFT特性の評価)
本発明者は、複数のTFTを備えたサンプル基板A、Bを作製し、各サンプル基板におけるTFT特性のばらつきを調べたので、その結果を説明する。
【0100】
まず、上述したTFT101(
図1)の製造方法と同様の方法で、複数のTFTをガラス基板上に同時に形成することで、サンプル基板Aを作製した。サンプル基板AにおけるTFTは、第1の酸化物半導体層として、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znが約5:1:4であるIn−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:10nm)、第2の酸化物半導体層として、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znが約1:3:6であるIn−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:50nm)、中間酸化物半導体層として、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znが約1:1:1であるIn−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:40nm)を含む3層チャネル構造を有する。
【0101】
また、中間酸化物半導体層を形成しない点以外は、サンプル基板Aと同様の方法で、複数のTFTをガラス基板上に同時に形成し、サンプル基板Bを作製した。サンプル基板BのTFTは、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znが約5:1:4であるIn−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:10nm)と、In、GaおよびZnの原子数比In:Ga:Znが約1:3:6であるIn−Ga−Zn−O系半導体層(厚さ:50nm)とからなる2層チャネル構造を有する(
図9(a)参照)。
【0102】
続いて、各サンプル基板に形成された複数のTFTのI−V特性を測定した。測定結果を
図5(a)および(b)に示す。
図5では、ゲート電圧Vgをマイナス側からプラス側に変化させて測定した結果を実線、プラス側からマイナス側に変化させて測定した結果を破線で示している。
【0103】
測定結果から、サンプル基板Aでは、サンプル基板Bよりも、TFT特性のばらつきが抑制されていることが確認される。特に、サンプル基板Bには、閾値電圧が特に大きくマイナスシフトしたTFTが含まれていることが分かる。これは、前述したように、ソース・ドレイン分離工程において、半導体層の側面のくびれ内に膜残りが生じたためと考えられる。
【0104】
上記の分析では、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72として結晶質酸化物半導体層、中間酸化物半導体層70として非晶質酸化物半導体層を用いた。なお、各層の組成および結晶状態は上記例に限定されない。移動度が高く、チャネル層として機能する第1の酸化物半導体層71と、バリア性やエッチング耐性の高い第2の酸化物半導体層72との間に、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との中間の組成を有する、または、第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72との中間のエネルギーギャップを有する中間酸化物半導体層(例えばIn比率とZn比率とが略等しい酸化物半導体層)を配置することにより、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72のそれぞれの機能を確保しつつ、これらの層の界面を改善することが可能である。
【0105】
<TFT構造について>
本実施形態のチャネル構造は、
図1に示すように、トップコンタクト構造を有するチャネルエッチ型のTFTに好適に適用され得る。このようなTFTに適用すると、ソース・ドレイン分離工程で生じる膜残りや第1の酸化物半導体層に対するプロセスダメージを抑制できるので、より顕著な効果が得られる。
【0106】
なお、本実施形態のチャネル構造を適用可能なTFTの構造は特に限定されない。
図1に示すTFT101は、ソースおよびドレイン電極が半導体層の上面と接するトップコンタクト構造を有しているが、ソースおよびドレイン電極が半導体層の下面と接するボトムコンタクト構造を有していてもよい。ボトムコンタクト構造を有するTFTでは、上述した膜残りの問題は生じない。しかしながら、半導体層の側面にくびれが生じていると、半導体層側面上でパッシベーション膜などの絶縁膜の被覆性が低下し、信頼性の高いTFTが得られないことがある。
【0107】
また、本実施形態のTFTはチャネルエッチ構造を有してもよいし、エッチストップ構造を有していてもよい。チャネルエッチ型のTFTでは
図1に示すように、チャネル領域上にエッチストップ層が形成されておらず、ソースおよびドレイン電極のチャネル側の端部下面は、酸化物半導体層の上面と接するように配置されている。チャネルエッチ型のTFTは、例えば酸化物半導体層上にソース・ドレイン電極用の導電膜を形成し、ソース・ドレイン分離を行うことによって形成される。ソース・ドレイン分離工程において、チャネル領域の表面部分がエッチングされる場合がある。
【0108】
エッチストップ型のTFTでは、チャネル領域上にエッチストップ層が形成されている。ソースおよびドレイン電極のチャネル側の端部下面は、例えばエッチストップ層上に位置する。エッチストップ型のTFTは、例えば酸化物半導体層のチャネル領域となる部分を覆うエッチストップ層を形成した後、酸化物半導体層およびエッチストップ層上にソース・ドレイン電極用の導電膜を形成し、ソース・ドレイン分離を行うことによって形成される。エッチストップ型のTFTでは、エッチストップ層で半導体層の側面を覆うことで、上述した膜残りの発生を抑制できる。しかしながら、半導体層の側面にくびれが生じていると、半導体層側面上でエッチストップ層の被覆性が低下し、信頼性の高いTFTが得られないことがある。
【0109】
図1に示すTFT101は、半導体層7と基板1との間にゲート電極3が配置されたボトムゲート構造TFTであるが、半導体層7の基板1と反対側にゲート電極3が配置されたトップゲート構造TFTであってもよい。
【0110】
図6は、本実施形態におけるTFTの変形例を示す断面図である。
図6では、
図1と同様の構成要素には同じ参照符号を付している。
【0111】
変形例のTFT102は、ボトムコンタクト型であり、かつ、トップゲート構造を有する。TFT102では、ソース電極8およびドレイン電極の上面と接するように半導体層17が配置されている。半導体層17は、ゲート絶縁層5で覆われている。ゲート絶縁層5には、基板1の法線方向から見たとき、半導体層17の少なくとも一部(ソース電極8とドレイン電極9との間に位置する部分)と重なるようにゲート電極3が設けられている。
【0112】
TFT102の半導体層17では、第1の酸化物半導体層71は、第2の酸化物半導体層72よりも上方(すなわちゲート絶縁層5側)に配置される。この例では、半導体層17は、基板1側から第2の酸化物半導体層72、中間酸化物半導体層70および第1の酸化物半導体層71をこの順で含む積層構造を有する。第1の酸化物半導体層71の上面はゲート絶縁層5と接している。
【0113】
トップゲート構造TFTでは、半導体層の側面にくびれが生じていると、半導体層側面上でゲート絶縁層の被覆性が低下するおそれがある。これに対し、TFT102では、半導体層17の加工性が高められているので、ゲート絶縁層5の被覆性の低下が抑制され、高い信頼性が得られる。
【0114】
<酸化物半導体について>
半導体層7に含まれる酸化物半導体としては、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などが挙げられる。第1の酸化物半導体層71と第2の酸化物半導体層72とは異なる結晶構造を有していてもよい。第2の酸化物半導体層72のエネルギーギャップは、第1の酸化物半導体層71のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、第1の酸化物半導体層71のエネルギーギャップが、第2の酸化物半導体層72のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。
【0115】
非晶質酸化物半導体および上記の各結晶質酸化物半導体の材料、構造、成膜方法、積層構造を有する酸化物半導体層の構成などは、例えば特開2014−007399号公報に記載されている。参考のために、特開2014−007399号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0116】
第1の酸化物半導体層71、第2の酸化物半導体層72および中間酸化物半導体層70は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、第1の酸化物半導体層71、第2の酸化物半導体層72および中間酸化物半導体層70は、例えば、In−Ga−Zn−O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む。ここで、In−Ga−Zn−O系の半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。第1の酸化物半導体層71、第2の酸化物半導体層72および中間酸化物半導体層70は、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。
【0117】
結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体の結晶構造は、例えば、上述した特開2014−007399号公報、特開2012−134475号公報、特開2014−209727号公報などに開示されている。参考のために、特開2012−134475号公報および特開2014−209727号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。In−Ga−Zn−O系半導体層を有するTFTは、高い移動度(a−SiTFTに比べ20倍超)および低いリーク電流(a−SiTFTに比べ100分の1未満)を有しているので、駆動TFT(例えば、複数の画素を含む表示領域の周辺に、表示領域と同じ基板上に設けられる駆動回路に含まれるTFT)および画素TFT(画素に設けられるTFT)として好適に用いられる。
【0118】
第1の酸化物半導体層71、第2の酸化物半導体層72および中間酸化物半導体層70は、In−Ga−Zn−O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn−Sn−Zn−O系半導体(例えばIn
2O
3−SnO
2−ZnO;InSnZnO)を含んでもよい。In−Sn−Zn−O系半導体は、In(インジウム)、Sn(スズ)およびZn(亜鉛)の三元系酸化物である。あるいは、第1の酸化物半導体層71および第2の酸化物半導体層72は、In−Al−Zn−O系半導体、In−Al−Sn−Zn−O系半導体、In−Zn−O系半導体、Zr−In−Zn−O系半導体、Hf−In−Zn−O系半導体などを含んでいてもよい。一方、中間酸化物半導体層70は、In−Al−Zn−O系半導体、In−Al−Sn−Zn−O系半導体、Zn−O系半導体、In−Zn−O系半導体、Zn−Ti−O系半導体、Cd−Ge−O系半導体、Cd−Pb−O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg−Zn−O系半導体、In−Ga−Sn−O系半導体、In−Ga−O系半導体、Zr−In−Zn−O系半導体、Hf−In−Zn−O系半導体、Al−Ga−Zn−O系半導体、Ga−Zn−O系半導体などを含んでいてもよい。
【0119】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、TFTの半導体層がIn、ZnおよびSnを含む点で、第1の実施形態と異なる。
【0120】
第2の実施形態におけるTFTは、
図1に示すTFT101と同様の構造を有する。ただし、第1の酸化物半導体層71として、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体層を用いる。例えば、In−Sn−Zn−O系半導体層またはIn−Al−Sn−Zn−O系半導体層を用いてもよい。第1の酸化物半導体層71は結晶質であってもよい。
【0121】
第2の酸化物半導体層72は、In、Znを含み、かつ、Snを含まない酸化物半導体層であってもよい。第2の酸化物半導体層72として、例えば、第1の実施形態と同様のIn−Ga−Zn−O系半導体層を用いることができる。第2の酸化物半導体層72は結晶質であってもよい。
【0122】
In−Sn−Zn−O系半導体などのSnを含む酸化物半導体は、In−Ga−Zn−O系半導体よりも高い移動度を有し得る。このため、第1の酸化物半導体層71に用いると、より高い移動度を有するTFTが得られる。一方、第2の酸化物半導体層72は、還元されやすいSnを含まないことが好ましい。Snを含まない酸化物半導体では、金属の還元による酸素濃度の低下が生じにくい。このため、Snを含まない酸化物半導体層(例えばIn−Ga−Zn−O系半導体層)は、Snを含む酸化物半導体層よりも低抵抗化されにくく、第1の酸化物半導体層71の保護層である第2の酸化物半導体層72に好適に用いられ得る。
【0123】
中間酸化物半導体層70の組成は特に限定しない。中間酸化物半導体層70は非晶質であってもよい。中間酸化物半導体層70として、例えば、第1の実施形態と同様の酸化物半導体層を用いることができる。
【0124】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による半導体装置の第3の実施形態を説明する。本実施形態の半導体装置は、同一基板上に形成された酸化物半導体TFTと結晶質シリコンTFTとを備えるアクティブマトリクス基板である。
【0125】
アクティブマトリクス基板は、画素毎にTFT(画素用TFT)を備えている。画素用TFTとしては、例えばIn−Ga−Zn−O系の半導体膜を活性層とする酸化物半導体TFTが用いられる。
【0126】
画素用TFTと同一基板上に、周辺駆動回路の一部または全体を一体的に形成することもある。このようなアクティブマトリクス基板は、ドライバモノリシックのアクティブマトリクス基板と呼ばれる。ドライバモノリシックのアクティブマトリクス基板では、周辺駆動回路は、複数の画素を含む領域(表示領域)以外の領域(非表示領域または額縁領域)に設けられる。周辺駆動回路を構成するTFT(回路用TFT)は、例えば、多結晶シリコン膜を活性層とした結晶質シリコンTFTが用いられる。このように、画素用TFTとして酸化物半導体TFTを用い、回路用TFTとして結晶質シリコンTFTを用いると、表示領域では消費電力を低くすることが可能となり、さらに、額縁領域を小さくすることが可能となる。
【0127】
画素用TFTとして、第1および第2の実施形態のTFT101(
図1)を適用することが可能である。この点については後述する。
【0128】
次に、本実施形態のアクティブマトリクス基板のより具体的な構成を、図面を用いて説明する。
【0129】
図7は、本実施形態のアクティブマトリクス基板700の平面構造の一例を示す模式的な平面図、
図8は、アクティブマトリクス基板700における結晶質シリコンTFT(以下、「第1薄膜トランジスタ」と称する。)710Aおよび酸化物半導体TFT(以下、「第2薄膜トランジスタ」と称する。)710Bの断面構造を示す断面図である。
【0130】
図7に示すように、アクティブマトリクス基板700は、複数の画素を含む表示領域702と、表示領域702以外の領域(非表示領域)とを有している。非表示領域は、駆動回路が設けられる駆動回路形成領域701を含んでいる。駆動回路形成領域701には、例えばゲートドライバ回路740、検査回路770などが設けられている。表示領域702には、行方向に延びる複数のゲートバスライン(図示せず)と、列方向に延びる複数のソースバスラインSとが形成されている。図示していないが、各画素は、例えばゲートバスラインおよびソースバスラインSで規定されている。ゲートバスラインは、それぞれ、ゲートドライバ回路の各端子に接続されている。ソースバスラインSは、それぞれ、アクティブマトリクス基板700に実装されるドライバIC750の各端子に接続されている。
【0131】
図8に示すように、アクティブマトリクス基板700において、表示領域702の各画素には画素用TFTとして第2薄膜トランジスタ710Bが形成され、駆動回路形成領域701には回路用TFTとして第1薄膜トランジスタ710Aが形成されている。
【0132】
アクティブマトリクス基板700は、基板711と、基板711の表面に形成された下地膜712と、下地膜712上に形成された第1薄膜トランジスタ710Aと、下地膜712上に形成された第2薄膜トランジスタ710Bとを備えている。第1薄膜トランジスタ710Aは、結晶質シリコンを主として含む活性領域を有する結晶質シリコンTFTである。第2薄膜トランジスタ710Bは、酸化物半導体を主として含む活性領域を有する酸化物半導体TFTである。第1薄膜トランジスタ710Aおよび第2薄膜トランジスタ710Bは、基板711に一体的に作り込まれている。ここでいう「活性領域」とは、TFTの活性層となる半導体層のうちチャネルが形成される領域を指すものとする。
【0133】
第1薄膜トランジスタ710Aは、下地膜712上に形成された結晶質シリコン半導体層(例えば低温ポリシリコン層)713と、結晶質シリコン半導体層713を覆う第1の絶縁層714と、第1の絶縁層714上に設けられたゲート電極715Aとを有している。第1の絶縁層714のうち結晶質シリコン半導体層713とゲート電極715Aとの間に位置する部分は、第1薄膜トランジスタ710Aのゲート絶縁膜として機能する。結晶質シリコン半導体層713は、チャネルが形成される領域(活性領域)713cと、活性領域の両側にそれぞれ位置するソース領域713sおよびドレイン領域713dとを有している。この例では、結晶質シリコン半導体層713のうち、第1の絶縁層714を介してゲート電極715Aと重なる部分が活性領域713cとなる。第1薄膜トランジスタ710Aは、また、ソース領域713sおよびドレイン領域713dにそれぞれ接続されたソース電極718sAおよびドレイン電極718dAを有している。ソースおよびドレイン電極718sA、718dAは、ゲート電極715Aおよび結晶質シリコン半導体層713を覆う層間絶縁膜(ここでは、第2の絶縁層716)上に設けられ、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホール内で結晶質シリコン半導体層713と接続されていてもよい。
【0134】
第2薄膜トランジスタ710Bは、下地膜712上に設けられたゲート電極715Bと、ゲート電極715Bを覆う第2の絶縁層716と、第2の絶縁層716上に配置された酸化物半導体層717とを有している。図示するように、第1薄膜トランジスタ710Aのゲート絶縁膜である第1の絶縁層714が、第2薄膜トランジスタ710Bを形成しようとする領域まで延設されていてもよい。この場合には、酸化物半導体層717は、第1の絶縁層714上に形成されていてもよい。第2の絶縁層716のうちゲート電極715Bと酸化物半導体層717との間に位置する部分は、第2薄膜トランジスタ710Bのゲート絶縁膜として機能する。酸化物半導体層717は、チャネルが形成される領域(活性領域)717cと、活性領域の両側にそれぞれ位置するソースコンタクト領域717sおよびドレインコンタクト領域717dを有している。この例では、酸化物半導体層717のうち、第2の絶縁層716を介してゲート電極715Bと重なる部分が活性領域717cとなる。また、第2薄膜トランジスタ710Bは、ソースコンタクト領域717sおよびドレインコンタクト領域717dにそれぞれ接続されたソース電極718sBおよびドレイン電極718dBをさらに有している。尚、基板711上に下地膜712を設けない構成も可能である。
【0135】
薄膜トランジスタ710A、710Bは、パッシベーション膜719および平坦化膜720で覆われている。画素用TFTとして機能する第2薄膜トランジスタ710Bでは、ゲート電極715Bはゲートバスライン(図示せず)、ソース電極718sBはソースバスライン(図示せず)、ドレイン電極718dBは画素電極723に接続されている。この例では、ドレイン電極718dBは、パッシベーション膜719および平坦化膜720に形成された開口部内で、対応する画素電極723と接続されている。ソース電極718sBにはソースバスラインを介してビデオ信号が供給され、ゲートバスラインからのゲート信号に基づいて画素電極723に必要な電荷が書き込まれる。
【0136】
なお、図示するように、平坦化膜720上にコモン電極として透明導電層721が形成され、透明導電層(コモン電極)721と画素電極723との間に第3の絶縁層722が形成されていてもよい。この場合、画素電極723にスリット状の開口が設けられていてもよい。このようなアクティブマトリクス基板700は、例えばFFS(Fringe FieldSwitching)モードの表示装置に適用され得る。FFSモードは、一方の基板に一対の電極を設けて、液晶分子に、基板面に平行な方向(横方向)に電界を印加する横方向電界方式のモードである。この例では、画素電極723から出て液晶層(図示せず)を通り、さらに画素電極723のスリット状の開口を通ってコモン電極721に出る電気力線で表される電界が生成される。この電界は、液晶層に対して横方向の成分を有している。その結果、横方向の電界を液晶層に印加することができる。横方向電界方式では、基板から液晶分子が立ち上がらないため、縦方向電界方式よりも広視野角を実現できるという利点がある。
【0137】
本実施形態の第2薄膜トランジスタ710Bとして、
図1、
図6を参照しながら前述したTFT101、102を用いることができる。
図1に示すTFT101を適用する場合、TFT101におけるゲート電極3、ゲート絶縁層5、半導体層7、ソース電極8、およびドレイン電極9を、それぞれ、
図7に示すゲート電極715B、第2の絶縁層(ゲート絶縁層)716、酸化物半導体層717、ソース電極718sB、およびドレイン電極718dBに対応させてもよい。
【0138】
また、
図7に示す検査回路770を構成するTFT(検査用TFT)として、酸化物半導体TFTである薄膜トランジスタ710Bを用いてもよい。
【0139】
なお、図示していないが、検査TFTおよび検査回路は、例えば、
図7に示すドライバIC750が実装される領域に形成されてもよい。この場合、検査用TFTは、ドライバIC750と基板711との間に配置される。
【0140】
図示する例では、第1薄膜トランジスタ710Aは、ゲート電極715Aと基板711(下地膜712)との間に結晶質シリコン半導体層713が配置されたトップゲート構造を有している。一方、第2薄膜トランジスタ710Bは、酸化物半導体層717と基板711(下地膜712)との間にゲート電極715Bが配置されたボトムゲート構造を有している。このような構造を採用することにより、同一基板711上に、2種類の薄膜トランジスタ710A、710Bを一体的に形成する際に、製造工程数や製造コストの増加をより効果的に抑えることが可能である。
【0141】
第1薄膜トランジスタ710Aおよび第2薄膜トランジスタ710BのTFT構造は上記に限定されない。例えば、これらの薄膜トランジスタ710A、710Bは同じTFT構造を有していてもよい。あるいは、第1薄膜トランジスタ710Aがボトムゲート構造、第2薄膜トランジスタ710Bがトップゲート構造を有していてもよい。また、ボトムゲート構造の場合、薄膜トランジスタ710Bのようにチャネルエッチ型でもよいし、エッチストップ型でもよい。
【0142】
第2薄膜トランジスタ710Bのゲート絶縁膜である第2の絶縁層716は、第1薄膜トランジスタ710Aが形成される領域まで延設され、第1薄膜トランジスタ710Aのゲート電極715Aおよび結晶質シリコン半導体層713を覆う層間絶縁膜として機能してもよい。このように第1薄膜トランジスタ710Aの層間絶縁膜と第2薄膜トランジスタ710Bのゲート絶縁膜とが同一の層(第2の絶縁層)716内に形成されている場合、第2の絶縁層716は積層構造を有していてもよい。例えば、第2の絶縁層716は、水素を供給可能な水素供与性の層(例えば窒化珪素層)と、水素供与性の層上に配置された、酸素を供給可能な酸素供与性の層(例えば酸化珪素層)とを含む積層構造を有していてもよい。
【0143】
第1薄膜トランジスタ710Aのゲート電極715Aと、第2薄膜トランジスタ710Bのゲート電極715Bとは、同一層内に形成されていてもよい。また、第1薄膜トランジスタ710Aのソースおよびドレイン電極718sA、718dAと、第2薄膜トランジスタ710Bのソースおよびドレイン電極718sB、718dBとは、同一の層内に形成されていてもよい。「同一層内に形成されている」とは、同一の膜(導電膜)を用いて形成されていることをいう。これにより、製造工程数および製造コストの増加を抑制できる。
【0144】
本実施形態は、酸化物半導体TFTを用いたアクティブマトリクス基板に好適に適用される。アクティブマトリクス基板は、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置などの種々の表示装置、および表示装置を備えた電子機器等に用いられ得る。アクティブマトリクス基板では、酸化物半導体TFTは、各画素に設けられるスイッチング素子として使用されるだけでなく、ドライバなどの周辺回路の回路用素子として用いることもできる(モノリシック化)。このような場合、本発明における酸化物半導体TFTは、高い移動度(例えば10cm
2/Vs以上)を有する酸化物半導体層を活性層として用いているので、回路用素子としても好適に用いられる。